特許第6540788号(P6540788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6540788
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20190628BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20190628BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-255176(P2017-255176)
(22)【出願日】2017年12月29日
【審査請求日】2018年8月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 正人
(72)【発明者】
【氏名】川中子 知久
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−144518(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/025224(WO,A1)
【文献】 特開2013−188761(JP,A)
【文献】 特表2007−532321(JP,A)
【文献】 特開2018−111117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含み、
10mgの当該フラックスを、N雰囲気下で、25℃〜250℃まで昇温速度1℃/secにて加熱した後の重量が、加熱前の重量の15%以下である
ことを特徴とするフラックス。
【請求項2】
溶剤を85wt%以上95wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
さらに他の有機酸を0wt%以上5wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
さらにロジンを0wt%以上10.0wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項5】
ロジンを非含有とする
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項6】
さらにアミンを0wt%以上5wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項7】
さらに有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項8】
さらにアミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上1wt%以下含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項9】
さらにベース材、界面活性剤、チキソ剤、酸化防止剤のうち、少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のフラックスとはんだ粉末を混合した
ことを特徴とするソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス及びこのフラックスを用いたソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだと接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
近年、小型情報機器の発達により、搭載される電子部品では急速な小型化が進行している。電子部品は、小型化の要求により接続端子の狭小化や実装面積の縮小化に対応するため、裏面に電極が配置されたボールグリッドアレイ(BGA)が適用されている。
【0004】
BGAの電極には、はんだバンプが形成されている。はんだバンプを作る方法として、フラックスを塗布した電極に、はんだボールを搭載して加熱する方法が採られていた。近年、電子部品の小型化により、電子部品のはんだ付け部位である電極ピッチの狭小化が進行している。電極ピッチの狭小化により、電極に搭載するはんだボールの径も、小型化が進んでいる。
【0005】
はんだボールを使用したはんだ付けでは、はんだの濡れ性が確保できないと、電極上ではんだが均等にぬれ広がらず、電極に対してはんだボールの位置がずれ、はんだボールが電極パッドから外れた状態(ボールミッシング)が発生するという課題が提示されている(例えば、特許文献1参照)。このような課題は、電極のピッチの狭小化により顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6160788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
はんだ付けを行う場合、溶融したはんだが十分にぬれ広がることが求められ、このため、フラックスには金属酸化膜を除去できる活性が求められる。
【0008】
しかし、活性剤としてフラックスに添加される一般的な有機酸では、活性が十分とは言えず、添加する量が少ないと濡れ性が確保できず、濡れ性を確保するために添加する量を増やすと、残渣量が多くなる。
【0009】
残渣量が多くなると、はんだ付け後の残渣を洗浄しないで使用する無洗浄用途に不適格となる場合があり。低残渣のフラックスが求められる。
【0010】
このため、はんだ付け後に無洗浄で使用する用途では、活性剤として機能する成分が少量でも、十分な活性が得られることが好ましく、とりわけ、電極ピッチの狭ピッチ化に伴いはんだボールが小径化し、さらに、はんだパウダと称すサイズにまではんだボールが微細化すると、フラックスにより活性が必要となる。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、はんだの濡れ性が確保でき、かつ、はんだ付け後の残渣量を抑制して無洗浄で使用する用途に適用できるような低残渣を実現可能なフラックス、及び、このフラックスを使用したソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、及びその水添物、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、及びその水添物は、少量の添加でも十分な活性が得られることを見出した。
【0013】
そこで、本発明は、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含み、10mgの当該フラックスを、N雰囲気下で、25℃〜250℃まで昇温速度1℃/secにて加熱した後の重量が、加熱前の重量の15%以下であるフラックスである。
【0014】
本発明のフラックスは、溶剤を85wt%以上95wt%以下含むことが好ましく、さらに他の有機酸を0wt%以上5wt%以下含むことが好ましい。さらにロジンを0wt%以上10.0wt%以下含んでもよいが、ロジンは非含有であることが好ましい。
【0015】
本発明のフラックスは、さらにアミンを0wt%以上5wt%、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上1wt%以下含むことが好ましい。
【0016】
本発明のフラックスは、さらにベース材、界面活性剤、チキソ剤、酸化防止剤のうち、少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上述したフラックスと、金属粉を含むソルダペーストである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%含むことで、はんだの濡れ性を得ることができる。また、残渣の量を抑制して低残渣を実現でき、はんだ付け後に無洗浄で使用する用途に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本実施の形態のフラックスの一例>
本実施の形態のフラックスは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含む。
【0021】
本実施の形態のダイマー酸は、オレイン酸とリノール酸の反応物で、炭素数が36の2量体である。また、本実施の形態のトリマー酸は、オレイン酸とリノール酸の反応物で、炭素数が54の3量体である。オレイン酸とリノール酸の反応物である本実施の形態のダイマー酸及びトリマー酸は、はんだ付けで想定される温度域までの加熱に対して耐熱性を有し、はんだ付け時に活性剤として機能する。
【0022】
オレイン酸とリノール酸の反応物で炭素数が36のダイマー酸及びその水添物と、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸及びその水添物より炭素数が少ない有機酸をそれぞれ同量添加した2つのフラックスを考えた場合、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸及びその水添物は分子量が大きく、添加量が同じであっても酸価が小さくなる。このため酸化膜除去(速度)は炭素数の少ない有機酸の方がより高活性となる。しかしながら、低残渣のフラックスを実現するため、すべての成分を揮発しやすい構成とすると、有機酸もリフロー中に揮発する設計となり、ロジン等の耐熱成分による保護も受けられないため、とりわけ炭素数の少ない有機酸は揮発・分解してしまう。
【0023】
これに対して、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸及びその水添物は分子量が大きく、耐熱性を持ち、比較的少量で活性を有するために、はんだ濡れ性が向上する。オレイン酸とリノール酸の反応物で炭素数が54のトリマー酸及びその水添物の場合も同様である。
【0024】
これにより、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸及びその水添物、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸及びその水添物は、フラックスに含まれる量が少なくてもはんだ付け時に活性剤として機能し、また、フラックス中の量が少ないことで、はんだ付け後の残渣量を抑制して低残渣が実現でき、はんだ付け後に無洗浄で使用する用途に適用できる。
【0025】
オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸を添加する量が多いと、はんだ付け後の残渣量が多くなる。
【0026】
そこで、本実施の形態のフラックスは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは。オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を、1wt%以上13wt%以下含む。
【0027】
また、本実施の形態のフラックスは、溶剤を65wt%以上99wt%以下、より好ましくは溶剤を85wt%以上95wt%以下含む。
【0028】
また、本実施の形態のフラックスは、活性剤としてさらに他の有機酸を0wt%以上5wt%以下含む。本実施の形態のフラックスは、さらにロジンを0wt%以上10.0wt%以下含む。なお、ロジンは非含有であることが好ましい。
【0029】
また、本実施の形態のフラックスは、活性剤としてさらにアミンを0wt%以上5wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上1wt%以下含む。
【0030】
なお、本実施の形態のフラックスは、添加剤としてベース材、界面活性剤、チキソ剤、酸化防止剤のうち、少なくとも1種を含んでも良い。
【0031】
本実施の形態のフラックスは、熱重量測定法による測定で、10mgの当該フラックスを、N雰囲気下で、25℃〜250℃まで昇温速度1℃/secにて加熱した後の重量が、加熱前の重量の15%以下であることが好ましい。加熱した後の重量が、加熱前の重量の15%以下であれば、無洗浄の用途で使用可能な低残渣と見なすことができる。なお、加熱した後の重量が、加熱前の重量の10%以下であることがより好ましく、さらに、加熱した後の重量が、加熱前の重量の5%以下であることがより好ましい。
【0032】
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはエタノール、工業用エタノール(エタノールにメタノール及び/またはイソプロピルアルコールを添加した混合溶剤)、イソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これら溶剤の中で、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等、常温で粘度が高い溶剤を含むことが好ましい。
【0033】
他の有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、4−tert−ブチル安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0034】
また、他の有機酸としては、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸として、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述したオレイン酸とリノール酸の反応物以外のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物以外のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸等が挙げられる。
【0035】
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0036】
本実施の形態のフラックスは、ロジンに加えてさらに他の樹脂を含んでも良く、他の樹脂としては、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、及び変性キシレン樹脂から選択される少なくとも一種以上の樹脂をさらに含むことができる。変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等を使用することができる。なお、ロジンの全量を100とした場合、他の樹脂の量は40wt%以下であることが好ましく、より好ましくは20wt%以下である。
【0037】
アミンとしては、モノエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0038】
有機ハロゲン化合物としては、有機ブロモ化合物であるtrans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、cis−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、テトラブロモフタル酸、ブロモコハク酸等が挙げられる。また、有機クロロ化合物であるクロロアルカン、塩素化脂肪酸エステル、ヘット酸、ヘット酸無水物等が挙げられる。
【0039】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物であり、アニリン塩化水素、アニリン臭化水素等が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩のアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでも良く、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
【0040】
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としてはラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。
【0041】
ベース剤としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。界面活性剤としては、ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0042】
<本実施の形態のソルダペーストの一例>
本実施の形態のソルダペーストは、上述したフラックスと、金属粉を含む。金属粉は、Pbを含まないはんだであることが好ましく、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだの粉体で構成される。
【0043】
<本実施の形態のフラックス及びソルダペーストの作用効果例>
オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下含むフラックス、及び、このフラックスを用いたソルダペーストでは、はんだの濡れ性を得ることができる、また、残渣の量を抑制して低残渣を実現できる。
【0044】
本実施の形態のフラックスを電極に塗布し、フラックスを塗布した電極にはんだボールを載せてはんだバンプを形成する場合、はんだが均等に濡れ広がることで、電極に対してはんだボールの位置ずれが抑制され、ボールミッシングの発生を抑制できる。
【実施例】
【0045】
以下の表1に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合して、はんだの濡れ広がり性と残渣量について検証した。なお、表1における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0046】
<はんだの濡れ広がり評価>
(1)検証方法
Cu板上に直径φ0.34mm、厚さt=0.2mmにて各実施例、各比較例のフラックスを印刷し、その後、Agが3wt%、Cuが0.5wt%、残部がSnのはんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)によるはんだボールを搭載した。はんだボールは、直径がφ0.3mmである。評価対象は、各実施例、各比較例とも50個である。以上のように作成した試験対象物を、リフロー炉を使用し、N雰囲気下で25℃〜250℃まで、昇温速度5℃/secにて加熱した後、溶融したはんだの濡れ広がり径を測定した。
【0047】
(2)判定基準
〇:濡れ広がり径が350μm以上であった
×:濡れ広がり径が350μm未満であった
【0048】
<残渣量評価>
(1)検証方法
TG法(熱重量測定法)による試験評価方法として、アルミパンに各実施例及び各比較例のフラックスを10mg詰めて、ULVAC社製TGD9600を用いてN雰囲気下で25℃〜250℃まで、昇温速度1℃/secにて加熱した。加熱後の各フラックスの重量が、加熱前の15%以下になったかどうかを測定した。
【0049】
(2)判定基準
○:重量が加熱前の15%以下になった
×:重量が加熱前の15%より大きかった
【0050】
加熱後の重量が加熱前の15%以下になったフラックスは、加熱によってフラックス中の成分が十分に揮発し、リフロー後に洗浄不要なフラックスであると言える。重量が加熱前の15%より大きかったフラックスは、フラックス中の成分の揮発が不十分であったと言える。フラックス中の成分の揮発が不十分で残渣が多く残ると、吸湿等による導電不良等の原因となる。
【0051】
<総合評価>
〇:濡れ広がり評価、残渣量評価の何れも〇であった
×:濡れ広がり評価、残渣量評価の何れか、または両方が×であった
【0052】
【表1】
【0053】
フラックスについて、各実施例と各比較例について検証すると、実施例1に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでは、はんだの濡れ広がり径が350μm以上で、はんだが良好にぬれ広がり、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。なお、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを含むことで、加熱前の常温時のフラックスの粘度を、はんだボールを保持できる程度にまで上げることができた。
【0054】
実施例2に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0055】
実施例3に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0056】
実施例4に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0057】
実施例5に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を2.5wt%、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸を2.5wt%含み、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸とオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸の合計量が5wt%で本発明で規定される範囲内であり、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0058】
実施例6に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸を2.5wt%、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸を2.5wt%含み、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸とオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の合計量が5wt%で本発明で規定される範囲内であり、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0059】
実施例7に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。なお、溶剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含むことでも、加熱前の常温時のフラックスの粘度を、はんだボールを保持できる程度にまで上げることができた。
【0060】
実施例8に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で13wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを67wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が87wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0061】
実施例9に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0062】
実施例10に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数4のコハク酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0063】
実施例11に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数5のグルタル酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0064】
実施例12に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数12のアジピン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0065】
実施例13に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、ロジンとして水添ロジンを、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、ロジンを含んでも、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0066】
実施例14に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、アミンとして2−フェニルイミダゾールを、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0067】
実施例15に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で1wt%含み、さらに、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、ハロゲンとしてアミンハロゲン化水素酸塩を、本発明で規定された範囲内で1wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを73wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が93wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0068】
実施例16に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、ハロゲンとして有機ハロゲン化合物を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0069】
これに対して、比較例1に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれも含まず、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでは、低残渣とする効果は得られたが、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸以外の有機酸を、本発明で規定される範囲内で含んでも、はんだの濡れ広がり径が350μm未満で、はんだが濡れ広がらず、はんだの濡れ広がりに対して効果が得られなかった。
【0070】
比較例2に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で10wt%含む場合でも、ロジンとして水添ロジンを、本発明で規定される範囲を超えて40wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを20wt%、1,3−ブチレングリコールを30wt%含み、溶剤の合計の量が50wt%で本発明で規定される範囲を下回るフラックスでは、はんだの濡れ広がりに対しては効果を得られたが、残渣量が15wt%を超え、残渣量が抑制できず低残渣とする効果が得られなかった。
【0071】
比較例3に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を含む場合でも、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を、本発明で規定される範囲を下回る0.1wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを79.9wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が99.9wt%で本発明で規定される範囲を超えるフラックスでは、低残渣とする効果は得られたが、はんだの濡れ広がり径が350μm未満で、はんだが濡れ広がらず、はんだの濡れ広がりに対して効果が得られなかった。
【0072】
以上のことから、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含むフラックスでは、はんだが良好に濡れ広がった。また、残渣量が抑制された。
【0073】
これらの効果は、活性剤として他の有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物を本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。また、ロジンを本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。
【要約】
【課題】はんだの濡れ性が確保でき、かつ、はんだ付け後の残渣量を抑制して低残渣を実現可能なフラックを提供する。
【解決手段】フラックスは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含む。
【選択図】無し