【実施例】
【0045】
以下の表1に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合して、はんだの濡れ広がり性と残渣量について検証した。なお、表1における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0046】
<はんだの濡れ広がり評価>
(1)検証方法
Cu板上に直径φ0.34mm、厚さt=0.2mmにて各実施例、各比較例のフラックスを印刷し、その後、Agが3wt%、Cuが0.5wt%、残部がSnのはんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)によるはんだボールを搭載した。はんだボールは、直径がφ0.3mmである。評価対象は、各実施例、各比較例とも50個である。以上のように作成した試験対象物を、リフロー炉を使用し、N
2雰囲気下で25℃〜250℃まで、昇温速度5℃/secにて加熱した後、溶融したはんだの濡れ広がり径を測定した。
【0047】
(2)判定基準
〇:濡れ広がり径が350μm以上であった
×:濡れ広がり径が350μm未満であった
【0048】
<残渣量評価>
(1)検証方法
TG法(熱重量測定法)による試験評価方法として、アルミパンに各実施例及び各比較例のフラックスを10mg詰めて、ULVAC社製TGD9600を用いてN
2雰囲気下で25℃〜250℃まで、昇温速度1℃/secにて加熱した。加熱後の各フラックスの重量が、加熱前の15%以下になったかどうかを測定した。
【0049】
(2)判定基準
○:重量が加熱前の15%以下になった
×:重量が加熱前の15%より大きかった
【0050】
加熱後の重量が加熱前の15%以下になったフラックスは、加熱によってフラックス中の成分が十分に揮発し、リフロー後に洗浄不要なフラックスであると言える。重量が加熱前の15%より大きかったフラックスは、フラックス中の成分の揮発が不十分であったと言える。フラックス中の成分の揮発が不十分で残渣が多く残ると、吸湿等による導電不良等の原因となる。
【0051】
<総合評価>
〇:濡れ広がり評価、残渣量評価の何れも〇であった
×:濡れ広がり評価、残渣量評価の何れか、または両方が×であった
【0052】
【表1】
【0053】
フラックスについて、各実施例と各比較例について検証すると、実施例1に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでは、はんだの濡れ広がり径が350μm以上で、はんだが良好にぬれ広がり、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。なお、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを含むことで、加熱前の常温時のフラックスの粘度を、はんだボールを保持できる程度にまで上げることができた。
【0054】
実施例2に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0055】
実施例3に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0056】
実施例4に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0057】
実施例5に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を2.5wt%、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸を2.5wt%含み、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸とオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸の合計量が5wt%で本発明で規定される範囲内であり、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0058】
実施例6に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸を2.5wt%、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数54のトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸を2.5wt%含み、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸とオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の合計量が5wt%で本発明で規定される範囲内であり、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0059】
実施例7に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、溶剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。なお、溶剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含むことでも、加熱前の常温時のフラックスの粘度を、はんだボールを保持できる程度にまで上げることができた。
【0060】
実施例8に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で13wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを67wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が87wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0061】
実施例9に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0062】
実施例10に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数4のコハク酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0063】
実施例11に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数5のグルタル酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0064】
実施例12に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、有機酸として炭素数12のアジピン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0065】
実施例13に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、ロジンとして水添ロジンを、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量が15wt%以下で、ロジンを含んでも、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0066】
実施例14に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、アミンとして2−フェニルイミダゾールを、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0067】
実施例15に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で1wt%含み、さらに、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、ハロゲンとしてアミンハロゲン化水素酸塩を、本発明で規定された範囲内で1wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを73wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が93wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0068】
実施例16に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物である炭素数36のダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で5wt%含み、さらに、ハロゲンとして有機ハロゲン化合物を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを70wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が90wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでも、はんだの濡れ広がりに対して十分な効果が得られた。また、残渣量を抑制して低残渣とする十分な効果が得られた。
【0069】
これに対して、比較例1に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれも含まず、有機酸として炭素数3のマロン酸を、本発明で規定された範囲内で5wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを75wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が95wt%で本発明で規定される範囲内であるフラックスでは、低残渣とする効果は得られたが、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸以外の有機酸を、本発明で規定される範囲内で含んでも、はんだの濡れ広がり径が350μm未満で、はんだが濡れ広がらず、はんだの濡れ広がりに対して効果が得られなかった。
【0070】
比較例2に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を、本発明で規定される範囲内で10wt%含む場合でも、ロジンとして水添ロジンを、本発明で規定される範囲を超えて40wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを20wt%、1,3−ブチレングリコールを30wt%含み、溶剤の合計の量が50wt%で本発明で規定される範囲を下回るフラックスでは、はんだの濡れ広がりに対しては効果を得られたが、残渣量が15wt%を超え、残渣量が抑制できず低残渣とする効果が得られなかった。
【0071】
比較例3に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を含む場合でも、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を、本発明で規定される範囲を下回る0.1wt%含み、溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを79.9wt%、1,3−ブチレングリコールを20wt%含み、溶剤の合計の量が99.9wt%で本発明で規定される範囲を超えるフラックスでは、低残渣とする効果は得られたが、はんだの濡れ広がり径が350μm未満で、はんだが濡れ広がらず、はんだの濡れ広がりに対して効果が得られなかった。
【0072】
以上のことから、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上の合計を1wt%以上13wt%以下、溶剤を65wt%以上99wt%以下含むフラックスでは、はんだが良好に濡れ広がった。また、残渣量が抑制された。
【0073】
これらの効果は、活性剤として他の有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物を本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。また、ロジンを本発明で規定される範囲内で含むことでも阻害されなかった。