特許第6540794号(P6540794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000002
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000003
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000004
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000005
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000006
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000007
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000008
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000009
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000010
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000011
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000012
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000013
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000014
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000015
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000016
  • 特許6540794-摩擦撹拌接合装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540794
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】摩擦撹拌接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   B23K20/12 346
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-506480(P2017-506480)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2016057403
(87)【国際公開番号】WO2016147983
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-54606(P2015-54606)
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】真崎 邦崇
(72)【発明者】
【氏名】根崎 孝二
(72)【発明者】
【氏名】金山 維史
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
(72)【発明者】
【氏名】田部井 康
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208116(JP,A)
【文献】 特開2013−166159(JP,A)
【文献】 特開2001−138072(JP,A)
【文献】 特開2000−343251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接する複数のワークの間の接合部を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合ツールを備える接合装置本体と、
前記接合装置本体とは別体に形成され、前記接合部の摩擦撹拌接合を行うときに前記ワークを挟持するよう構成される転動体を有するワーククランプユニットと、を備え
前記複数のワークは、第1のワークと、前記第1のワークの面に対して所定の角度で交わる姿勢で端縁を接して配置される第2のワークとを有し、
前記接合部は、前記第1のワークと前記第2のワークとにより形成される前記第2のワークの両側の角隅部であり、
前記ワーククランプユニットの前記転動体は、前記第2のワークを両側から挟んで保持する一対の第1転動体と、前記第2のワークを前記第1のワークが設けられる側とは反対側の端部において保持する第2転動体とを備える
摩擦撹拌接合装置。
【請求項2】
前記ワーククランプユニットは、前記接合装置本体に近接した近接位置と、前記接合装置本体から離反した退避位置とに移動可能であるよう構成される
請求項1記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項3】
前記ワーククランプユニットは、前記接合部の延びる方向に沿って移動可能であるよう構成される
請求項2記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項4】
前記接合装置本体は、前記摩擦撹拌接合ツールの押圧荷重の反力を受ける第1フレームを備え、
前記ワーククランプユニットは、前記接合装置本体の前記第1フレームとは別の第2フレームを備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項5】
前記接合装置本体は、前記摩擦撹拌接合ツールのプローブを回転駆動するよう構成される主軸ユニットと、前記摩擦撹拌接合ツールを前記接合部に向けて押圧するための押圧荷重を付与するよう構成されるツール押圧部とを備え、
前記第1フレームに、前記主軸ユニットが、前記ツール押圧部を介して取り付けられる
請求項4記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項6】
前記第2フレームは、前記摩擦撹拌接合ツールに近接して配置され、
前記第2フレームに前記転動体が取り付けられている
請求項4記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項7】
前記第2フレームは、門形部と、前記門形部の前記接合装置本体を望む面から前記接合装置本体へ向けて突出する突出部とを備え、
前記突出部は、前記第2フレームが前記摩擦撹拌接合ツールに近接して配置されるときに、前記摩擦撹拌接合ツールの上方に配置される、
請求項6記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項8】
前記転動体は、前記接合部の摩擦撹拌接合を行う時に前記接合部を基準として前記摩擦撹拌接合ツールを相対的に移動させる方向であるツール相対移動方向において、摩擦撹拌接合を行う個所よりも前側となる位置、及び、前記ツール相対移動方向において、摩擦撹拌接合を行う個所と同じ位置に備えられる
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク間の接合部の摩擦撹拌接合に用いられる摩擦撹拌接合装置に関する。
本願は、2015年3月18日に日本に出願された特願2015−054606号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合装置に用いられる摩擦撹拌接合ツール(摩擦撹拌接合用工具)としては、プローブと一体に回転する回転式ショルダを備えた形式と、回転するプローブと非回転の固定式ショルダとを備えた形式が知られている。
【0003】
固定式ショルダを備える摩擦撹拌接合ツールとしては、接合すべきワーク同士の角隅部(内隅部)を摩擦撹拌接合するために、固定式ショルダは角隅部を形成する両ワーク表面に当接する面を備える形状が知られている。
【0004】
前記のような角隅部接合用の摩擦撹拌接合ツールを用いる摩擦撹拌接合装置としては、水平な第1のワーク(水平部材)と、その上に立設される第2のワーク(立設部材)との突き合わせによって形成された2つの角隅部を、一対の摩擦撹拌接合ツールを用いて、立設される第2のワークの両側から摩擦撹拌接合する装置が、従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この摩擦撹拌接合装置は、ワークを跨ぐように配置された門形のフレーム(門柱)を備える。フレームに設けられた押圧機構により、立設される第2のワークを上方から押圧して水平な第1のワークに対して押し付けることで、第2のワークが第1のワーク上に立設する接合姿勢を保持する。この状態で、フレームに設けられた別の押圧機構により、一対の摩擦撹拌接合ツールをワーク間の角隅部にそれぞれ押圧して、角隅部の摩擦撹拌接合を行う。
【0006】
固定式ショルダを備えた摩擦撹拌接合ツールによる角隅部の摩擦撹拌接合を行う際に、フィラーを加えて、接合後の角隅部に湾曲面(肉盛りによるフィレット)を形成させるようにしたAdStirと云われる手法も、従来提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特開2013−166159号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】福田哲夫,角張隆男、「TWIの最新FSWプロセス開発状況とパテント情報」、溶接技術、産報出版株式会社、2011年6月、59巻、6号、p.57−60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示された摩擦撹拌接合装置では、摩擦撹拌接合を行う際、摩擦撹拌接合ツールを角隅部に押圧すると、その押圧荷重の反力がフレームに入力される。
【0010】
この際、姿勢保持用の押圧機構によって保持されている立設される第2のワークの接合姿勢の精度が、摩擦撹拌接合ツールの押圧荷重の反力の影響を受ける。
【0011】
非特許文献1には、摩擦撹拌接合時に接合対象となる角隅部を形成したワークの接合姿勢を保持する手段は、特に示されていない。
【0012】
本開示は、接合すべきワーク同士の接合姿勢を、摩擦撹拌接合ツールの押圧荷重の反力の影響を受けない状態で保持しながら、ワーク間の接合部を摩擦撹拌接合することができる摩擦撹拌接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様の摩擦撹拌接合装置は、互いに接する複数のワークの間の接合部を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合ツールを備える接合装置本体と、前記接合装置本体とは別体に形成され、前記接合部の摩擦撹拌接合を行うときに前記ワークを保持するよう構成される転動体を有するワーククランプユニットとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の摩擦撹拌接合装置によれば、接合すべきワーク同士の接合姿勢を、摩擦撹拌接合ツールの押圧荷重の反力の影響を受けない状態で保持しながら、ワーク間の接合部を摩擦撹拌接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置の概略側面図である。
図2】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置の概略平面図である。
図3図1のA−A方向矢視図である。
図4A】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置の摩擦撹拌接合ツールの部分を拡大して示す平面図である。
図4B図4AのB−B方向矢視図である。
図5】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置の接合装置本体を摩擦撹拌接合時にワークが移動する方向に沿って見た拡大図である。
図6】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置のワーククランプユニットを拡大して示す側面図である。
図7図6のC−C方向矢視図である。
図8A】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置のワーク保持部のワークテーブルを拡大して示す平面図である。
図8B】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置のワーク保持部のワークテーブルを拡大して示す側面図である。
図9】第1実施形態の摩擦撹拌接合装置のテーブルの移動経路を示す概略平面図である。
図10図5の接合装置本体のツール押圧部における軸直交方向移動ユニットを示す一部切断図である。
図11図10のD−D方向矢視図である。
図12図5の接合装置本体のツール押圧部における軸方向移動ユニットを示す一部切断図である。
図13図12のE−E方向矢視図である。
図14】第2実施形態の摩擦撹拌接合装置のワーククランプユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の摩擦撹拌接合装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の摩擦撹拌接合装置を示す概略側面図である。図2図1の概略平面図、図3図1のA−A方向矢視図である。図4Aは、摩擦撹拌接合ツールの部分を拡大して示す平面図であり、図4B図4AのB−B方向矢視図である。図5は第1実施形態における接合装置本体を摩擦撹拌接合時にワークが移動する方向に沿って見た拡大図である。図6は第1実施形態におけるワーククランプユニットを拡大して示す側面図である。図7図6のC−C方向矢視図である。図8Aは、第1実施形態におけるワークテーブルを拡大して示す平面図であり、図8Bは、ワークテーブルを拡大して示す側面図である。図9は第1実施形態におけるテーブル移動経路を示す概略平面図である。図10は接合装置本体のツール押圧部における軸直交方向移動ユニットを示す一部切断図である。図11図10のD−D方向矢視図である。図12は接合装置本体のツール押圧部における軸方向移動ユニットを示す一部切断図である。図13図12のE−E方向矢視図である。
【0018】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、図4Bに示すように、第1のワークW1と、第1のワークW1の面P1に対し所定の角度で交差する姿勢で端縁が突き合わされた第2のワークW2とにより形成される2つの角隅部(内隅部)c1,c2を、摩擦撹拌接合の対象とする。本実施形態では、一例として、第1のワークW1の面P1が水平に配置され、第2のワークW2が鉛直な姿勢で第1のワークW1の面P1に対して上方から突き合わされている場合について説明する。
【0019】
なお、説明の便宜上、角隅部c1,c2の延びる方向をx軸方向、x軸方向に垂直な平面内で第1のワークW1の面P1に平行な方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向の双方に直交する方向をz軸方向とする3次元直交座標系を設定する。本実施形態では、第1のワークW1の面P1に沿うxy平面が水平面となるので、z軸方向が鉛直方向となり、第2のワークW2は鉛直面であるxz平面に沿って配置されている。
【0020】
本開示では、xy平面は、x軸方向とy軸方向に沿う平面を示し、xz平面は、x軸方向とz軸方向に沿う平面を示し、yz平面は、y軸方向とz軸方向に沿う平面を示す。xy平面、xz平面、およびyz平面は、位置が特定された平面を意味しない。
【0021】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、図1から図3に示すように、架台8の表面に定置された接合装置本体5と、第1のワークW1と第2のワークW2とを前述した接合姿勢で配置するワークテーブル10と、架台8の表面でのワークテーブル10のx軸方向の移動をガイドするテーブル移動経路11(図7参照)と、ワークテーブル10の移動機構12とを備える。更に、本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、接合装置本体5とは別体に形成されるワーククランプユニット9を備える。
【0022】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、図1から図3に示すように、摩擦撹拌接合ツール1a,1bを備えた接合装置本体5が架台8に設置され、接合装置本体5に対し、ワークW1,W2を図1図2に矢印wで示すようにx軸方向に沿う一方向に移動させる。摩擦撹拌接合ツール1a,1bは、ワークW1,W2の移動に伴って、角隅部c1,c2に対して相対的に移動して摩擦撹拌接合を行う。ワーククランプユニット9は、接合装置本体5よりもツール相対移動方向tの前側(図1図2では左側)に配置されている。ツール相対移動方向tとは、摩擦撹拌接合を行う際に、角隅部c1,c2を基準として、摩擦撹拌接合ツール1a,1b及び接合装置本体5が相対的に移動する方向である。本実施形態では、図1図2に示すように、ツール相対移動方向tは、ワークW1,W2の実際の移動方向(矢印wで示す方向)とは逆向きとなる。
【0023】
本実施形態の接合装置本体5は、図4Aおよび図4Bに示すように、2つの角隅部c1,c2のうち、第2のワークW2の一方の側面P2a側の角隅部c1の接合に用いる第1の摩擦撹拌接合ツール1aと、他方の側面P2b側の角隅部c2の接合に用いる第2の摩擦撹拌接合ツール1bとを有している。
【0024】
第1の摩擦撹拌接合ツール1aは、回転駆動可能なプローブ2aと、プローブ2aの基端側の外周に配置された固定式ショルダ3aとを備える。プローブ2aは、プローブ2aの軸心方向がyz平面内で角隅部c1の角度の二等分線に平行となるように配置されることが好ましい。本実施形態では、角隅部c1が直角であるため、プローブ2aの軸心方向は、yz平面内で第2のワークW2に沿うz軸方向(鉛直方向)から一方の側面P2a側へ45度傾斜させた斜め下向きの角度をなすように配置されている。固定式ショルダ3aは、プローブ2aの先端寄りに配置される端部が、角隅部c1を形成させる第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2aとにそれぞれ接触する2つのワーク接触面4aを備える山形(V字形状)である。
【0025】
第1の摩擦撹拌接合ツール1aは、図5に示すように、接合装置本体5にて、プローブ2aを回転駆動する回転駆動部7aを備えた第1の主軸ユニット6aの先端側に取り付けられた状態で使用される。
【0026】
第2の摩擦撹拌接合ツール1bは、図4Aおよび図4Bに示すように、回転駆動可能なプローブ2bと、プローブ2bの基端側の外周に配置された固定式ショルダ3bとを備える。プローブ2bは、プローブ2bの軸心方向がyz平面内で角隅部c2の角度の二等分線に平行となるように配置されることが好ましい。本実施形態では、角隅部c2が直角であるため、プローブ2bの軸心方向は、yz平面内で第2のワークW2に沿うz軸方向(鉛直方向)から他方の側面P2b側へ45度傾斜させた斜め下向きの角度をなすように配置されている。固定式ショルダ3bは、プローブ2bの先端寄りに配置される端部が、角隅部c2を形成させる第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2bとにそれぞれ接触する2つのワーク接触面4bを備える山形(V字形状)である。
【0027】
第2の摩擦撹拌接合ツール1bは、図5に示すように、接合装置本体5にて、プローブ2bを回転駆動する回転駆動部7bを備えた第2の主軸ユニット6bの先端側に取り付けられた状態で使用される。
【0028】
本実施形態では、図4Aに示したように、第1の摩擦撹拌接合ツール1aと第2の摩擦撹拌接合ツール1bにおいては、固定式ショルダ3a,3b同士、及び、プローブ2a,2b同士が第2のワークW2を挟んでx軸方向の同位置に配置される。このため、摩擦撹拌接合ツール1a,1bを装着した主軸ユニット6a,6bは、図5に示すように、一つのyz平面に沿ってV字状に配置される。
【0029】
第1の摩擦撹拌接合ツール1aと第2の摩擦撹拌接合ツール1bにおいては、図4Bに示すように、第2のワークW2の両面側で角隅部c1と角隅部c2の摩擦撹拌接合を同時に行うときに、角隅部c1,c2に没入させるプローブ2a,2b同士、更には、プローブ2a,2bによる角隅部c1,c2の撹拌領域s1,s2同士に干渉が生じないように、プローブ2a,2bの固定式ショルダ3a,3bからの突出量が設定されている。
【0030】
これにより、摩擦撹拌接合ツール1a,1bによる第1のワークW1と第2のワークW2とで形成される角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合が、プローブ2aによる撹拌領域s1と、プローブ2bによる撹拌領域s2とが互いに干渉しない部分撹拌接合として行われる。このため、接合後の第1のワークW1と第2のワークW2において、撹拌領域s1での撹拌によって接合された部分と、撹拌領域s2での撹拌によって接合された部分との間に、第1のワークW1と第2のワークW2とが当接する当接面が一部残っている。
【0031】
摩擦撹拌接合ツール1a,1bを上述のように配置することにより、第1の摩擦撹拌接合ツール1aに対し角隅部c1に向けた押圧荷重を作用させる位置と、第2の摩擦撹拌接合ツール1bに対し角隅部c2に向けた押圧荷重を作用させる位置が、x軸方向において一致する。すなわち、第1の摩擦撹拌接合ツール1aに対し角隅部c1に向けた押圧荷重を作用させる位置と、第2の摩擦撹拌接合ツール1bに対し角隅部c2に向けた押圧荷重を作用させる位置が、第2のワークW2を間に挟んで同一のyz平面内に位置している。このため、押圧荷重に起因して、ワークW1,W2や、後述するワークテーブル10にxy平面内で回転モーメントが生じることが防止される。
【0032】
接合装置本体5は、図5に示すように、テーブル移動経路11(図9参照)をy軸方向に沿って跨ぐように配置された門形のフレーム13を備えている。
【0033】
フレーム13のy軸方向の一端側には、第1の主軸ユニット6aが、第1のツール押圧部14を介して取り付けられている。フレーム13のy軸方向の他端側には、第2の主軸ユニット6bが第2のツール押圧部15を介して取り付けられている。ツール押圧部14,15は、それぞれ、摩擦撹拌接合ツール1a,1bのyz平面内での位置の調整と、摩擦撹拌接合ツール1a,1bを角隅部c1,c2に向けて押圧するための押圧荷重の付与を行う。ツール押圧部14,15の具体的な構成については後述する。
【0034】
図6図7に、ワーククランプユニット9が示される。ワーククランプユニット9は、図1図2に示したように、架台8の表面において、接合装置本体5よりもツール相対移動方向tの前側(図1図2では左側)に設けられる。ワーククランプユニット9は、接合装置本体5とは別体であるフレーム16を備える。
【0035】
フレーム16は、図6図7に示すように、テーブル移動経路11(図9参照)をy軸方向に沿って跨ぐように配置された門形部17と、門形部17の接合装置本体5に臨む面側に設けられる突出部18とを備える。突出部18は、図2に示すように、第1の主軸ユニット6aと第2の主軸ユニット6bとの間に形成された空間内に配置可能な形状を有している。
【0036】
架台8のy軸方向の両端部には、x軸方向に沿って延びる一対のガイドレール19が設けられる。フレーム16の門形部17のy軸方向の両端側は、それぞれ、一対のガイドレール19にガイドブロック20を介してスライド可能に支持されている。これにより、フレーム16は、図2に実線で示したように突出部18が第1の主軸ユニット6aと第2の主軸ユニット6bとの間の空間内に配置されて摩擦撹拌接合ツール1a,1bに近接した状態となる近接位置と、図2に二点鎖線で示すように突出部18が第1の主軸ユニット6a及び第2の主軸ユニット6bから離れた状態になる退避位置との間で、ガイドレール19に沿って移動可能となっている。なお、フレーム16が近接位置に配置される場合、図2に実線で示すように、突出部18は摩擦撹拌接合ツール1a,1bの上方に配置される。
【0037】
図6に示すように、門形部17のy軸方向の両端側には、フレーム16をガイドレール19上で解除可能に位置固定するためのフレーム固定部21が設けられる。これにより、フレーム16を、図2に実線で示した近接位置など任意の位置で固定することができる。なお、少なくとも図2に実線で示した近接位置でフレーム16を固定することができれば、その他の個所では固定されなくてもよい。フレーム固定部21は、ガイドレール19をクランプすることで、フレーム16を固定してもよい。又、フレーム固定部21として、その他の公知の方法でフレーム16を固定するフレーム固定手段を採用してもよい。
【0038】
門形部17の内側のz軸方向の二個所には、図6図7に示すように、一対のサイドクランプローラ22a,22bと、一対のサイドクランプローラ22c,22dが設けられる。一対のサイドクランプローラ22a,22b、および一対のサイドクランプローラ22c,22dは、それぞれ、y軸方向に沿って対向配置された一対の転動体であり、第2のワークW2の両側面P2a,P2b(図4Aおよび図4B参照)に接触する。
【0039】
一対のサイドクランプローラ22a,22bと、一対のサイドクランプローラ22c,22dのうち、たとえば、y軸方向の一側(図7では右側)に配置されているサイドクランプローラ22a,22cが、門形部17にブラケット23を介して位置が固定された状態で取り付けられている。一方、y軸方向の他側(図7では左側)に配置されているサイドクランプローラ22b,22dは、y軸方向に沿って配置された押圧手段としての油圧シリンダ24を介して門形部17に取り付けられている。サイドクランプローラ22a,22cと、サイドクランプローラ22b,22dとの間に、第2のワークW2が配置された状態で油圧シリンダ24を伸長作動させることで、第2のワークW2の両側面P2a,P2bに、サイドクランプローラ22a,22cと、サイドクランプローラ22b,22dとが両側から押し付けられた状態となる。このため、第2のワークW2のy軸方向の位置が保持される。
【0040】
このように、y軸方向の一側のサイドクランプローラ22a,22cの位置を固定した構成とすることにより、第2のワークW2を保持する位置を、固定されたサイドクランプローラ22a,22cを基準としてy軸方向の同じ位置に決めることができる。
【0041】
なお、固定されたサイドクランプローラ22a,22cを支持しているブラケット23は、サイドクランプローラ22a,22cのy軸方向の位置の調整機構を備えてもよい。ブラケット23に、サイドクランプローラ22a,22cのy軸方向の位置の調整量を検出するためのスケールを設けてもよい。このようにすれば、たとえば、厚みの異なる第2のワークW2を接合対象とする場合であっても、第2のワークW2の厚みの中心を揃えることが可能になる。
【0042】
門形部17の内側の架台8から離反する端部側に、トップクランプローラ25aが設けられる。トップクランプローラ25aは、第2のワークW2の第1のワークW1側とは反対側の端部に押し当てられる転動体である。トップクランプローラ25aは、yz平面内で第2のワークW2の面に沿う方向、すなわち、本実施形態ではz軸方向に配置された押圧手段としての油圧シリンダ26を介して門形部17に取り付けられている。
【0043】
トップクランプローラ25aが第2のワークW2の端部に接するように配置された状態で油圧シリンダ26を伸長作動させると、第2のワークW2が第1のワークW1に対して押し付けられる。第1のワークW1は、第2のワークW2から受ける押し付け力により、ワークテーブル10に押し付けられる。このため、第1のワークW1と第2のワークW2とのz軸方向の位置が保持される。
【0044】
突出部18には、転動体としての一対のサイドクランプローラ22e,22f及びトップクランプローラ25bが設けられている。一対のサイドクランプローラ22e,22fは、門形部17に設けられる一対のサイドクランプローラ22a,22bと同様の構成である。サイドクランプローラ22fは、油圧シリンダ24を介して突出部18に支持されている。トップクランプローラ25bは、門形部17に設けられるトップクランプローラ25aと同様の構成であり、油圧シリンダ26を介して突出部18に支持されている。突出部18が図2に示すように第1の主軸ユニット6aと第2の主軸ユニット6bとの間の空間内に配置されるときに、一対のサイドクランプローラ22e,22f及びトップクランプローラ25bは、摩擦撹拌接合ツール1a,1b(図3参照)と、z軸方向に関して同じ位置か、又は、摩擦撹拌接合ツール1a,1bよりもツール相対移動方向tの前寄りの位置に配置されることが好ましい。
【0045】
サイドクランプローラ22a〜22fとトップクランプローラ25a,25bは、x軸方向に並べて配置された2連のローラ本体を備えた構成であることが好ましい。このような構成により、第2のワークW2のx軸方向に沿う姿勢からのy軸方向やz軸方向へのずれが、より確実に防止される。
【0046】
サイドクランプローラ22a〜22f、およびトップクランプローラ25a,25bが前記のように2連のローラ本体を備える場合は、サイドクランプローラ22a,22c,22eの2連のローラ本体を保持させたローラフレーム(図示せず)が、ブラケット23に、x軸方向に揺動可能に取り付けられていることが好ましい。同様に、サイドクランプローラ22b,22d,22fとトップクランプローラ25a,25bの2連のローラ本体を保持させたローラフレーム(図示せず)が、油圧シリンダ24,26に、x軸方向に揺動可能に取り付けられていることが好ましい。更に、サイドクランプローラ22a〜22f、およびトップクランプローラ25a,25bのローラ本体は、外周面にクラウニングが施されていることが好ましい。
【0047】
一般に、長尺の部材は、全長に亘って振れや変形が全くない状態で製造することは難しい。ワーククランプユニット9のサイドクランプローラ22a〜22f、及び、トップクランプローラ25a,25bがx軸方向に揺動し、サイドクランプローラ22a〜22f、およびトップクランプローラ25a,25bのローラ本体の外周面にクラウニングが施される構成とすることで、第2のワークW2が長手方向(x軸方向)に振れや変形を有している場合であっても、ローラ本体がその振れや変形に倣うようにすることができる。
【0048】
以上の構成を有するワーククランプユニット9を用いてワークW1,W2の角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行うときには、先ず、フレーム16を、図2に実線で示した位置に配置させ、フレーム固定部21により架台8に位置固定する。
【0049】
この状態で、ワーククランプユニット9の一対のサイドクランプローラ22a,22b、一対のサイドクランプローラ22c,22d、及び、一対のサイドクランプローラ22e,22fは、第2のワークW2のy軸方向の位置を保持し、トップクランプローラ25a,25bは、第1のワークW1と第2のワークW2のz軸方向の位置を保持する。
【0050】
なお、一対のサイドクランプローラ22a,22b、一対のサイドクランプローラ22c,22d、及び、一対のサイドクランプローラ22e,22fは、第2のワークW2のy軸方向の位置を保持できれば、必ずしも第2のワークW2に接していなくてもよい。又、トップクランプローラ25a,25bは、第1のワークW1と第2のワークW2のz軸方向の位置を保持することができれば、必ずしも第2のワークW2に接していなくてもよい。
【0051】
これにより、第1のワークW1と第2のワークW2の、摩擦撹拌接合が行われている個所の付近であって、摩擦撹拌接合ツール1a,1bよりもツール相対移動方向tの前側の位置にある摩擦撹拌接合が行われる直前の部分が、ワーククランプユニット9によって接合姿勢に保持される。
【0052】
摩擦撹拌接合が行われている際、主軸ユニット6a,6bが支持されているフレーム13は、摩擦撹拌接合ツール1a,1bに作用させる押圧荷重の反力を受けている。これに対し、ワーククランプユニット9は、フレーム13とは独立した別体のフレーム16を備えている。したがって、ワーククランプユニット9によりワークW1,W2を接合姿勢で保持していても、ワーククランプユニット9が摩擦撹拌接合ツール1a,1bに作用させる押圧荷重の反力の影響を受けることはない。
【0053】
摩擦撹拌接合を実施していないときには、フレーム固定部21による架台8に対するワーククランプユニット9の固定を解除して、ワーククランプユニット9を、図2に二点鎖線で示したように接合装置本体5から離れた退避位置に配置する。この状態では、突出部18が露出されるため、サイドクランプローラ22e,22fやトップクランプローラ25bに対して作業者が容易に近づいて点検や保守作業を行うことができる。
【0054】
又、ワーククランプユニット9を退避させた状態では、第1の主軸ユニット6aと第1の摩擦撹拌接合ツール1a、及び、第2の主軸ユニット6bと第2の摩擦撹拌接合ツール1bから、ワーククランプユニット9が離れている。このため、角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を開始するときに、ワークテーブル10に実際に配置されたワークW1,W2間の角隅部c1,c2に対して摩擦撹拌接合ツール1a,1bの位置合わせを行う作業を、目視しながら行うことができる。更に、この状態で、主軸ユニット6a,6bや摩擦撹拌接合ツール1a,1bに作業者が容易に近づいて点検や保守作業を行うことも可能になる。
【0055】
ワーククランプユニット9を、図2に実線で示した摩擦撹拌接合を行うときの近接位置と、図2に二点鎖線で示した退避位置との間で移動させる方向が、x軸方向であって、ワークテーブル10に配置したワークW1,W2のテーブル移動経路11での移動方向に一致している。
【0056】
このため、ワーククランプユニット9を移動させても、テーブル移動経路11を移動するワークテーブル10に配置されたワークW1,W2に対するサイドクランプローラ22a〜22fのy軸方向の相対的な配置と、ワークテーブル10に配置されたワークW1,W2に対するトップクランプローラ25a,25bのz軸方向の相対的な配置は、変化しない。しかも、サイドクランプローラ22a〜22fとトップクランプローラ25a,25bの一部または全部が第2のワークW2に接している状態であっても、ワーククランプユニット9の移動に支障が生じることはない。
【0057】
したがって、ワーククランプユニット9を、近接位置と退避位置との間で往復動させても、ワークW1,W2の接合姿勢を保持することが可能である。
【0058】
ワークテーブル10のx軸方向の寸法は、図8Aおよび図8Bに示すように、第1のワークW1及び第2のワークW2のx軸方向の寸法よりも長い。
【0059】
図5および図8Aに示すように、ワークテーブル10の表面における第1のワークW1を配置する領域27のy軸方向の一側に、第1のワークW1のy軸方向の一端面を突き当てて位置決めする段差部28が設けられている。領域27のy軸方向の他側には、y軸方向クランプ29とz軸方向クランプ30が、x軸方向に沿って所定の間隔で交互に配列して設けられている。
【0060】
y軸方向クランプ29は、第1のワークW1を、y軸方向に沿って段差部28との間に挟んで固定する。z軸方向クランプ30は、第1のワークW1のy軸方向の他端縁部を、z軸方向に沿ってワークテーブル10の表面との間に挟んで固定する。
【0061】
ワークテーブル10のx軸方向の両端側の表面には、第1のワークW1と第2のワークW2のx軸方向の両端面を突き当ててx軸方向の変位を防止する端部押さえ部材31a,31bが設けられている。なお、端部押さえ部材31a,31bは、必ずしも第1のワークW1と第2のワークW2の両ワークの端面に突き当てる必要はなく、ワークテーブル10にクランプ29,30によって直接保持することができない第2のワークW2を、ワークテーブル10と一緒に確実に移動させることができるよう構成されていればよい。この観点からは、端部押さえ部材31a,31bを、少なくとも第2のワークW2のx軸方向の端面のみに突き当てるようにすればよい。
【0062】
端部押さえ部材31a,31bは、たとえば、第1のワークW1と同様の厚み寸法を備えた横板部32に、第2のワークW2と同様の厚み寸法を備えた縦板部33が、第1のワークW1に対する第2のワークW2の突き合わせ角度と同様の角度で突き合わされて一体化されて形成される。本実施形態では、端部押さえ部材31a,31bは、横板部32に縦板部33が垂直な配置で突き合わされて一体化された逆T字形の構造を有する。
【0063】
端部押さえ部材31a,31bの横板部32及び縦板部33は共にx軸方向に沿って延び、横板部32が、ワークテーブル10の表面に取り付けられている。
【0064】
縦板部33には、第2のワークW2のx軸方向の端縁をy軸方向の両側から挟んで保持する保持具34が設けられている。
【0065】
なお、摩擦撹拌接合の実施時にワークテーブル10を進行させる方向の前端側、すなわち、角隅部c1,c2における摩擦撹拌接合の始端側(図11では右側)に配置されている一方の端部押さえ部材31aは、ワークテーブル10に対する取り付け位置をx軸方向に変更可能に設けられることが好ましい。この場合、摩擦撹拌接合の対象となる第1のワークW1及び第2のワークW2のx軸方向の寸法が変化したとしても、一方の端部押さえ部材31aのワークテーブル10に対する取り付け位置を変更することにより、第1のワークW1と第2のワークW2の両端部を、端部押さえ部材31a,31bに突き当てて配置させることができる。そのため、x軸方向の寸法が異なる第1のワークW1及び第2のワークW2の摩擦撹拌接合を行う場合であっても、共通のワークテーブル10を使用することができる。なお、端部押さえ部材31aは、第1のワークW1と第2のワークW2の接合姿勢を保持させた状態で、第1のワークW1と第2のワークW2とをワーククランプユニット9に容易に導入させるためにワークテーブル10に設けられることが好ましいが、設けられなくてもよい。
【0066】
ワークテーブル10の裏面におけるy軸方向の両端側には、x軸方向に延びる2条のラック35が全長に亘り設けられている。
【0067】
架台8には、図9に二点鎖線で示すように、架台8のy軸方向の中央部に、ワークテーブル10(図2図8A、および図8B参照)をx軸方向に移動させるためのテーブル移動経路11が設定されている。
【0068】
テーブル移動経路11は、ワークテーブル10のx軸方向の移動をガイドするガイド手段として、テーブル移動経路11に沿って配置されたボトムガイドローラ36と、サイドガイドローラ37と、トップガイドローラ38とを備える。
【0069】
ボトムガイドローラ36は、図3図5に示すように、テーブル移動経路11(図9参照)に沿ってx軸方向に移動するワークテーブル10の裏面を、ラック35と干渉しない位置で支持する。ボトムガイドローラ36は、図9に示すように、架台8の表面において、テーブル移動経路11の内側に、x軸方向及びy軸方向に、たとえば千鳥状に多数設けられている。ボトムガイドローラ36は、接合装置本体5の摩擦撹拌接合ツール1a,1bが配置されている部分(図1図2参照)とx軸方向において一致する部分では、その他の部分よりも密に配置されていることが好ましい。これは、ワークテーブル10に保持された第1のワークW1と第2のワークW2の角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行う際に、角隅部c1,c2に摩擦撹拌接合ツール1a,1b(図4Aおよび図4B参照)が押圧されることにより生じる荷重のz軸方向の成分を、より多くのボトムガイドローラ36で受けるためである。
【0070】
サイドガイドローラ37は、図2図3に示すように、ワークテーブル10のy軸方向の両側面を支持する。サイドガイドローラ37は、図9に示すように、架台8の表面において、テーブル移動経路11のy軸方向の両側位置に、x軸方向に所定の間隔で配列して設けられている。
【0071】
トップガイドローラ38は、図2図3に示すように、ワークテーブル10の表面のy軸方向の両端縁部に当接する。トップガイドローラ38は、図9に示すように、架台8の表面において、テーブル移動経路11のy軸方向の両側位置に設けられる。トップガイドローラ38は、x軸方向において、接合装置本体5の摩擦撹拌接合ツール1a,1bが配置されている部分(図2参照)を挟んだ両側位置に、所定の間隔を隔てて2つずつの組として設けられる。このようにトップガイドローラ38を2つずつの組で設けるのは、ワークテーブル10のz軸方向への傾きをより確実に防止するためである。なお、トップガイドローラ38は、2つずつの組以外の配置で設けてもよい。
【0072】
これにより、テーブル移動経路11では、ボトムガイドローラ36、サイドガイドローラ37、およびトップガイドローラ38により、ワークテーブル10のz軸方向、及び、y軸方向への変位が拘束された状態で、ワークテーブル10のx軸方向への移動がガイドされる。
【0073】
テーブル移動経路11のy軸方向の一側に設けられたサイドガイドローラ37とトップガイドローラ38のy軸方向の位置は固定され、一方、テーブル移動経路11のy軸方向の他側に設けられたサイドガイドローラ37とトップガイドローラ38のy軸方向の位置は調整できることが好ましい。これは、サイドガイドローラ37とトップガイドローラ38とを、実際に使用するワークテーブル10の寸法に合わせて配置するためである。
【0074】
移動機構12は、図1図3図9に示すように、架台8におけるテーブル移動経路11(図9参照)の下方に設けられ、ワークテーブル10のラック35と噛合可能な一対のピニオンギア39を備えている。ピニオンギア39は、図1に示すように、x軸方向にて、接合装置本体5の摩擦撹拌接合ツール1a,1bが配置されている個所の真下の近傍に配置されていることが好ましい。これは、ワークテーブル10に対し、摩擦撹拌接合が行われる個所の近傍で、x軸方向の駆動力を付与できるようにするためである。
【0075】
一対のピニオンギア39は、軸受40に支持されたy軸方向の回転軸41により互いに連結されている(図9参照)。回転軸41の一端は、架台8の内部に設けられた減速機42の出力側に連結され、減速機42には、サーボモータ等の駆動モータ43が接続されている。
【0076】
以上の構成を有する移動機構12では、駆動モータ43により減速機42を介して回転軸41と共にピニオンギア39を回転駆動させると、ワークテーブル10は、ピニオンギア39に噛合したラック35と一体に、テーブル移動経路11に沿ってx軸方向に移動する。移動機構12は、駆動モータ43の回転方向を切り替えることにより、ワークテーブル10を、テーブル移動経路11で往復動させることができる。
【0077】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、ワークW1,W2を補助的に保持するために、図1図2に示すように、ワークW1,W2の、ワークテーブル10の架台8からはみ出す部分を支持するテーブル支持台44を備えている。
【0078】
テーブル支持台44は、架台8の外側において、テーブル移動経路11(図9参照)の延長線上に配置される。テーブル支持台44の上面には、ワークテーブル10の裏面をラック35と干渉しない位置で支持するボトムガイドローラ45と、ワークテーブル10のy軸方向の両側面を支持するサイドガイドローラ46とが設けられる。
【0079】
テーブル支持台44は、使用状況に応じて容易に設置、あるいは撤去するために、底部に走行輪47と昇降式の支持脚48とを備える。
【0080】
支持脚48は、走行輪47の下端よりも下方に突出するように下降させた状態と、走行輪47の下端よりも上方に上昇させた状態に配置できるよう構成される。
【0081】
支持脚48の昇降手段として、たとえば、支持脚48にねじが形成された支柱49を設け、テーブル支持台44にはナット部材50を設けて、ナット部材50に対して支柱49を回転させることで、支持脚48をテーブル支持台44に対して相対的に昇降させてもよい。
【0082】
なお、テーブル支持台44は、架台8からワークW1,W2がはみ出すことがない場合や、架台8からワークW1,W2がはみ出した部分を支持する必要がない場合など、ワークW1,W2を補助的に保持する必要がなければ、テーブル支持台44を省略してもよい。
【0083】
次に、接合装置本体5の第1のツール押圧部14と第2のツール押圧部15について説明する。
【0084】
第1のツール押圧部14は、第1の軸直交方向移動ユニット51と、第1の軸方向移動ユニット52とを備える。図2図3図5に示すように、フレーム13のy軸方向の一端側と、第1の主軸ユニット6aとの間に、フレーム13側から順に、第1の軸直交方向移動ユニット51と第1の軸方向移動ユニット52が介装される。
【0085】
第2のツール押圧部15は、第2の軸直交方向移動ユニット53と、第2の軸方向移動ユニット54とを備える。フレーム13のy軸方向の他端側と、第2の主軸ユニット6bとの間に、フレーム13側から順に、第2の軸直交方向移動ユニット53と、第2の軸方向移動ユニット54が介装される。
【0086】
第1の軸直交方向移動ユニット51は、図5図10図11に示すように、第1の主軸ユニット6aを、yz平面内でプローブ2a(図4参照)の軸心方向に沿う方向(以下、p軸方向と云う)に対して直交する方向(以下、q軸方向と云う)に移動させるよう構成される。
【0087】
具体的には、第1の軸直交方向移動ユニット51は、図10図11に示すように、フレーム13に取り付けられたベースプレート55と、q軸方向に延びるようにベースプレート55に設けられたガイドレール56と、ガイドレール56にガイドブロック57を介してスライド自在に取り付けられた移動テーブル58と、移動テーブル58をガイドレール56の長手方向に沿って移動させるq軸方向の直動機構であるボールねじ機構59とを備える。
【0088】
ボールねじ機構59は、サーボモータ60と、サーボモータ60の出力側に連結されたねじ軸61と、ねじ軸61に取り付けられたナット部材62とを備える。
【0089】
ボールねじ機構59は、ベースプレート55の表面に、ねじ軸61がガイドレール56と平行に延びる姿勢で設置される。ボールねじ機構59のナット部材62が、ロードセル63と取付部材64を介して移動テーブル58に取り付けられている。
【0090】
以上の構成を有する第1の軸直交方向移動ユニット51は、サーボモータ60の駆動力によってねじ軸61を回転駆動することにより、移動テーブル58を、ナット部材62と一緒に、ガイドレール56に沿わせてq軸方向に移動させる。
【0091】
第1の軸直交方向移動ユニット51においては、サーボモータ60による駆動力を停止した状態では、移動テーブル58がガイドレール56に沿って無制御で移動できる。
【0092】
第1の軸直交方向移動ユニット51には、移動テーブル58の自重及び移動テーブル58に作用する重量のガイドレール56に沿う方向の成分を支持する機械的な重力補償機構(自重補償機構、重量補償機構とも称する)として、たとえば、q軸方向に沿って配置されたガススプリング65が備えられている。
【0093】
ガススプリング65の一端側はベースプレート55の固定個所に取り付けられ、ガススプリング65の他端側は移動テーブル58に取り付けられている。移動テーブル58に作用する重量とは、ナット部材62、ロードセル63、取付部材64、第1の軸方向移動ユニット52及び第1の主軸ユニット6aの重量である。
【0094】
第1の軸方向移動ユニット52は、図5図12図13に示すように、第1の主軸ユニット6aを、p軸方向に移動させるよう構成される。
【0095】
具体的には、第1の軸方向移動ユニット52は、第1の軸直交方向移動ユニット51の移動テーブル58に取り付けられたベースプレート66と、p軸方向に延びるようにベースプレート66に設けられたガイドレール67と、ガイドレール67にガイドブロック68を介してスライド自在に取り付けられた移動テーブル69と、移動テーブル69をガイドレール67の長手方向に沿って移動させるp軸方向の直動機構であるボールねじ機構70とを備える。
【0096】
ボールねじ機構70は、サーボモータ71と、サーボモータ71の出力側に接続された減速機72と、減速機72の出力側に連結されたねじ軸73と、ねじ軸73に取り付けられたナット部材74とを備える。
【0097】
ボールねじ機構70は、ベースプレート66の表面に、ねじ軸73がガイドレール67と平行に延びる姿勢で設置される。ボールねじ機構70のナット部材74が、ロードセル75と取付部材76を介して移動テーブル69に取り付けられている。
【0098】
以上の構成を有する第1の軸方向移動ユニット52は、サーボモータ71の駆動力により減速機72を介してねじ軸73を回転駆動することにより、移動テーブル69を、ナット部材74と一緒に、ガイドレール67に沿わせてp軸方向に移動させる。
【0099】
移動テーブル69には、図5に示すように、第1の主軸ユニット6aが取り付けられている。
【0100】
第2の軸直交方向移動ユニット53は、図5図10に示すように、第2の主軸ユニット6bを、yz平面内でプローブ2b(図4参照)の軸心方向に沿う方向(以下、r軸方向と云う)に対して直交する方向(以下、s軸方向と云う)に移動させるよう構成される。
【0101】
具体的には、第2の軸直交方向移動ユニット53は、フレーム13に取り付けられたベースプレート77と、s軸方向に延びるようにベースプレート77に設けられたガイドレール78と、ガイドレール78にガイドブロック79を介してスライド自在に取り付けられた移動テーブル80と、移動テーブル80をガイドレール78の長手方向に沿って移動させるs軸方向の直動機構であるボールねじ機構81とを備える。
【0102】
ボールねじ機構81は、サーボモータ82と、サーボモータ82の出力側に連結されたねじ軸83と、ねじ軸83に取り付けられたナット部材84とを備える。
【0103】
ボールねじ機構81は、ベースプレート77の表面に、ねじ軸83がガイドレール78と平行に延びる姿勢で設置される。ボールねじ機構81のナット部材84が、ロードセル85と取付部材86を介して移動テーブル80に取り付けられている。
【0104】
以上の構成を有する第2の軸直交方向移動ユニット53は、サーボモータ82の駆動力によりねじ軸83を回転駆動することにより、移動テーブル80を、ナット部材84と一緒に、ガイドレール78に沿わせてs軸方向に移動させる。
【0105】
第2の軸直交方向移動ユニット53においては、サーボモータ82による駆動力を停止した状態では、移動テーブル80がガイドレール78に沿って無制御で移動できる。
【0106】
第2の軸直交方向移動ユニット53には、移動テーブル80の自重及び移動テーブル80に作用する重量のガイドレール78に沿う方向の成分を支持する機械的な重力補償機構として、たとえば、s軸方向に沿って配置されたガススプリング87が備えられている。
【0107】
ガススプリング87の一端側はベースプレート77の固定個所に取り付けられ、ガススプリング87の他端側は移動テーブル80に取り付けられている。移動テーブル80に作用する重量とは、ナット部材84、ロードセル85、取付部材86、第2の軸方向移動ユニット54及び第2の主軸ユニット6bの重量である。
【0108】
第2の軸方向移動ユニット54は、図5図12に示すように、第2の主軸ユニット6bを、r軸方向に移動させるよう構成される。
【0109】
具体的には、第2の軸方向移動ユニット54は、第2の軸直交方向移動ユニット53の移動テーブル80に取り付けられたベースプレート88と、r軸方向に延びるようにベースプレート88に設けられたガイドレール89と、ガイドレール89にガイドブロック90を介してスライド自在に取り付けられた移動テーブル91と、移動テーブル91をガイドレール89の長手方向に沿って移動させるr軸方向の直動機構であるボールねじ機構92とを備える。
【0110】
ボールねじ機構92は、サーボモータ93と、サーボモータ93の出力側に接続された減速機94と、減速機94の出力側に連結されたねじ軸95と、ねじ軸95に取り付けられたナット部材96とを備える。
【0111】
ボールねじ機構92は、ベースプレート88の表面に、ねじ軸95がガイドレール89と平行に延びる姿勢で設置される。ボールねじ機構92のナット部材96が、ロードセル97と取付部材98を介して移動テーブル91に取り付けられている。
【0112】
以上の構成を有する第2の軸方向移動ユニット54は、サーボモータ93の駆動力により減速機94を介してねじ軸95を回転駆動することにより、移動テーブル91を、ナット部材96と一緒に、ガイドレール89に沿わせてr軸方向に移動させる。
【0113】
移動テーブル91には、図5に示すように、第2の主軸ユニット6bが取り付けられている。
【0114】
したがって、接合装置本体5によれば、第1の主軸ユニット6aに取り付けられている第1の摩擦撹拌接合ツール1aのq軸方向の位置の調整と力の制御が、第1の軸直交方向移動ユニット51によって行われる。第1の摩擦撹拌接合ツール1aのp軸方向の位置の調整と力の制御が第1の軸方向移動ユニット52によって行われる。
【0115】
同様に、第2の主軸ユニット6bに取り付けられている第2の摩擦撹拌接合ツール1bのs軸方向の位置の調整と力の制御が第2の軸直交方向移動ユニット53によって行われる。第2の摩擦撹拌接合ツール1bのr軸方向に沿う方向の位置の調整と力の制御が第2の軸方向移動ユニット54によって行われる。
【0116】
接合装置本体5では、第1の摩擦撹拌接合ツール1aの角隅部c1に対する押圧荷重はp軸方向に作用する。したがって、第1の摩擦撹拌接合ツール1aの角隅部c1に対する押圧荷重の制御を、ロードセル75の検出結果を基に、第1の軸方向移動ユニット52の出力のみの制御で実施することができる。第1の摩擦撹拌接合ツール1aのq軸方向の位置の調整は、押圧荷重の制御に関与することなく第1の軸直交方向移動ユニット51により実施することができる。
【0117】
同様に、接合装置本体5では、第2の摩擦撹拌接合ツール1bの角隅部c2に対する押圧荷重はr軸方向に作用する。したがって、第2の摩擦撹拌接合ツール1bの角隅部c2に対する押圧荷重の制御を、ロードセル97の検出結果を基に、第2の軸方向移動ユニット54の出力のみの制御で実施することができる。第2の摩擦撹拌接合ツール1bのs軸方向の位置の調整は、押圧荷重の制御に関与することなく第2の軸直交方向移動ユニット53により実施することができる。
【0118】
このため、接合装置本体5によると、角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行う際の、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの押圧荷重をより確実に制御することができる。
【0119】
次に、本実施形態の摩擦撹拌接合装置を用いて行う摩擦撹拌接合について説明する。
【0120】
摩擦撹拌接合の開始前に、作業者が、ワークテーブル10に、第1のワークW1と第2のワークW2を保持させる。この作業は、ワークテーブル10を、接合装置本体5及びワーククランプユニット9と干渉しない位置にx軸方向に移動させた状態で行うようにすればよい。この際、テーブル支持台44を適宜使用してもよい。
【0121】
ワークW1,W2をワークテーブル10に保持させた後、ワークテーブル10を移動機構12によりテーブル移動経路11に沿って移動させて、ワークW1,W2の角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合の始端側を、摩擦撹拌接合ツール1a,1bと同じyz平面内に配置する。
【0122】
その後、ワーククランプユニット9を接合装置本体5から離反した退避位置に配置させた状態で、接合装置本体5は、軸直交方向移動ユニット51,53と軸方向移動ユニット52,54により、摩擦撹拌接合ツール1a,1bのプローブ2a,2bが角隅部c1,c2に近接して配置されるように主軸ユニット6a,6bの位置調整を行う。
【0123】
次に、ワーククランプユニット9を、図1図2に示すように、接合装置本体5に近接した近接位置に配置し、フレーム固定部21によりワーククランプユニット9の位置を固定する。次いで、ワーククランプユニット9では、サイドクランプローラ22a〜22f及びトップクランプローラ25a,25bにより、ワークテーブル10に保持されたワークW1,W2を接合姿勢で保持する。これにより、第2のワークW2のy軸方向及びz軸方向への変位、および第1のワークW1のz軸方向への変位は防止される。
【0124】
この状態で、接合装置本体5は、主軸ユニット6a,6bの回転駆動部7a,7bを起動してプローブ2a,2bの回転駆動を開始する。その後、接合装置本体5は、軸方向移動ユニット52,54により、主軸ユニット6a,6bをプローブ2a,2bの軸心方向(p軸方向、r軸方向)に移動させて、回転駆動状態のプローブ2a,2bを、角隅部c1,c2に没入させる。更に、固定式ショルダ3aのワーク接触面4aを、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の一方の側面P2aに接触させ、固定式ショルダ3bのワーク接触面4bを、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の他方の側面P2bに接触させる。
【0125】
これにより、第2のワークW2を挟んで対称な位置にある角隅部c1,c2には、没入されたプローブ2a,2bによる撹拌領域s1,s2が、互いに干渉しない状態で形成される。
【0126】
次に、移動機構12は、ワークテーブル10の移動を開始する。ワークテーブル10が移動すると、ワークテーブル10の移動に伴われて移動する角隅部c1,c2に対し、定置された接合装置本体5の摩擦撹拌接合ツール1a,1bが相対的に移動する。これにより、角隅部c1,c2に沿った摩擦撹拌接合が角隅部c1と角隅部c2とで同時に開始される。
【0127】
このようにして摩擦撹拌接合が開始されると、接合装置本体5では、軸方向移動ユニット52,54により摩擦撹拌接合ツール1a,1bを角隅部c1,c2に対して押圧する荷重が予め設定された目標値に一致するように、軸方向移動ユニット52,54に対する制御を開始する。
【0128】
同時に、接合装置本体5は、軸直交方向移動ユニット51,53について、サーボモータ60,82の制御と動力とを遮断する。これにより、第1の軸直交方向移動ユニット51では、移動テーブル58に第1の軸方向移動ユニット52を介して保持した第1の主軸ユニット6aの位置が、q軸方向に作用する外力に応じて自在に変化するようになる。又、第2の軸直交方向移動ユニット53では、移動テーブル80に第2の軸方向移動ユニット54を介して保持した第2の主軸ユニット6bの位置が、s軸方向に作用する外力に応じて自在に変化するようになる。
【0129】
その結果、角隅部c1,c2に位置ずれが生じたとしても、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの固定式ショルダ3a,3bが第1のワークW1の面P1に沿って滑ることで、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの位置は、角隅部c1,c2の位置ずれに追従できる。なお、この場合であっても、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの角隅部c1,c2に対する押圧荷重は、軸方向移動ユニット52,54によって一定に保持されている。
【0130】
このため、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの位置を、角隅部c1,c2に倣わせた状態で角隅部c1,c2に沿う摩擦撹拌接合を行うことができる。
【0131】
前記のように角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合が行われている間、接合装置本体5には、軸方向移動ユニット52,54によって摩擦撹拌接合ツール1a,1bを角隅部c1,c2に対し押圧している押圧荷重の反力が入力される。しかしながら、この反力の影響が接合装置本体5とは別体であるワーククランプユニット9に及ぶことはない。したがって、角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行っている間、ワーククランプユニット9により、ワークW1,W2同士の接合姿勢を正確に保持し続けることができる。
【0132】
以上のようにして、摩擦撹拌接合ツール1a,1bによる摩擦撹拌接合が角隅部c1,c2の終端側の予め設定されている個所まで進行すると、移動機構12はワークテーブル10の移動を停止させる。
【0133】
次いで、軸直交方向移動ユニット51,53は、それぞれのサーボモータ60,82による制御を再開し、軸直交方向移動ユニット51,53と軸方向移動ユニット52,54とにより、摩擦撹拌接合ツール1a,1bを角隅部c1,c2より離反する方向に移動させる。これにより、プローブ2a,2bは、角隅部c1,c2より抜き出される。その後、主軸ユニット6a,6bによるプローブ2a,2bの回転駆動を停止する。
【0134】
その後、ワーククランプユニット9によるワークW1,W2の保持を解除し、ワーククランプユニット9を退避位置まで移動させる。
【0135】
その後、ワークテーブル10を、移動機構12により接合装置本体5及びワーククランプユニット9と干渉しない位置まで移動させ、その状態で、ワークW1,W2の接合体を取り出す。
【0136】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置によれば、固定式ショルダ3a,3bを備えた一対の摩擦撹拌接合ツール1a,1bを用いて、ワークW1,W2間の角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行うことができる。
【0137】
又、本実施形態の摩擦撹拌接合装置においては、ワーククランプユニット9が接合装置本体5とは別体に形成されている。したがって、ワーククランプユニット9によって、接合すべきワークW1,W2同士の接合姿勢を、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの押圧荷重の反力の影響を受けない状態で保持しながら、ワークW1,W2間の角隅部c1,c2を摩擦撹拌接合することができる。
【0138】
このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、製造されるワークW1,W2の接合体の品質を向上させることができる。
【0139】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの固定式ショルダ3a,3bを角隅部c1,c2に直接配置する。
【0140】
従来の回転式ショルダを備えた形式の摩擦撹拌接合ツールを用いて角隅部の摩擦撹拌接合を行うときには、角隅部に三角断面の部材を配置するか、あるいは、一方のワークに、角隅部に三角断面で張り出す部分を設けるというような事前処理が必要である。しかしながら、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、これらの事前処理は不要である。
【0141】
更に、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの固定式ショルダ3a,3bからのプローブ2a,2bの突出量が、部分撹拌接合を行うことが可能であるように設定されている。
【0142】
このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、従来の角隅部の摩擦撹拌接合のように、角隅部に配置されるプローブによる撹拌領域同士が相互に干渉する全撹拌接合を行う場合のプローブの角隅部への挿入量に比して、プローブ2a,2bの角隅部c1,c2への挿入量を低減させることができる。
【0143】
これにより、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、プローブ2a,2bを角隅部c1,c2に没入させた状態で移動させるときに、プローブ2a,2bが受ける反力を、全撹拌接合を行う場合にプローブが受ける反力に比して小さくすることができる。そのため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、全撹拌接合を行う場合に比して、摩擦撹拌接合の施工速度を向上させることができ、また、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの寿命を向上させることができる。
【0144】
更に、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、個々のプローブ2a,2bで発生させる摩擦熱によってワークW1,W2におけるプローブ2a,2bの没入個所の周辺に局所的に入熱される熱量は、全撹拌接合を行う場合に比して少なくなる。そのため、ワークW1,W2の熱によるひずみや変形の発生を抑制することができる。
【0145】
又、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、角隅部c1,c2について、第2のワークW2の両面側から摩擦撹拌接合を同時に行う。したがって、プローブ2a,2bにより発生する摩擦熱により、ワークW1,W2のx軸方向における同一の位置が加熱される。そのため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、角隅部c1と角隅部c2をx軸方向の異なる位置に配置されたプローブで発生する摩擦熱により加熱する場合に比して、ワークW1,W2の加熱をより効率よく行うことができる。したがって、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、高い熱量を用いることにより、角隅部c1と角隅部c2との摩擦撹拌接合を安定して行うことができる。
【0146】
前記のようにワークW1,W2の加熱の効率が向上すると、プローブ2a,2bにより撹拌される撹拌領域s1,s2は軟化しやすくなる。このことによっても、本実施形態の摩擦撹拌接合装置は、摩擦撹拌接合の施工速度を向上させることができる。又、プローブ2a,2bを回転駆動させる際の抵抗が軽減されるので、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの寿命を向上させることができる。
【0147】
更に、角隅部c1と角隅部c2をx軸方向の異なる位置に配置されたプローブで発生する摩擦熱により加熱する場合は、角隅部c1と角隅部c2のいずれか一方が先行して加熱され、他方が後から加熱されることになるため、入熱の条件が均等にならない可能性がある。しかしながら、本実施形態の摩擦撹拌接合装置では、角隅部c1,c2に対する入熱を均等にすることができる。
【0148】
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態の摩擦撹拌接合装置のワーククランプユニットを示す。
【0149】
なお、図14において、図7と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0150】
本実施形態におけるワーククランプユニット109においては、サイドクランプローラのうち、z軸方向の架台8から離れた位置に配置されてブラケット23を介してフレーム16に支持されたサイドクランプローラ22a,22e(図7参照)を、ブラケット23ごとフレーム16に対し着脱できる。図14は、サイドクランプローラ22a,22eをフレーム16から取り外した状態を示す。
【0151】
又、本実施形態におけるワーククランプユニット109においては、トップクランプローラ25a,25b用の油圧シリンダ26も、フレーム16に対し着脱できる。更に、本実施形態では、ワーククランプユニット109は、支柱部材99を備え、支柱部材99を介して油圧シリンダ26がフレーム16に取り付けられる。
【0152】
本実施形態においては、油圧シリンダ26を、第一実施形態(図7)と同様にフレーム16に直接取り付ける状態と、図14に示すようにフレーム16に対して支柱部材99を介して取り付ける状態とに変更できる。支柱部材99は、第2のワークW2のz軸方向の寸法が小さく、架台8の表面から第2のワークW2の上端までの距離が、架台8の表面から一対のサイドクランプローラ22a,22b及び一対のサイドクランプローラ22e,22f(図7参照)の上端部までの距離よりも小さいときに使用される。
【0153】
本実施形態の摩擦撹拌接合装置の構成は、ワーククランプユニット109以外は、第1実施形態と同様である。
【0154】
本実施形態におけるワーククランプユニット109は、図14に二点鎖線で示すように、ワークテーブル10に接合姿勢で配置された第2のワークW2の上端(z軸方向の寸法)が、一対のサイドクランプローラ22a,22b及び一対のサイドクランプローラ22e,22f(図7参照)の位置まで達しない場合に、図14に示した構成で使用される。すなわち、トップクランプローラ25a,25b用の油圧シリンダ26は、支柱部材99を介してフレーム16に取り付けられている。この際、トップクランプローラ25a,25bと干渉する可能性のあるサイドクランプローラ22a,22eは、予めブラケット23ごとフレーム16から取り外しておく。又、サイドクランプローラ22a,22eと対になっているサイドクランプローラ22b,22fは、油圧シリンダ24により、トップクランプローラ25a,25bと干渉しない位置に予め退避させておく。
【0155】
これにより、本実施形態におけるワーククランプユニット109は、ワークテーブル10に配置された図14に二点鎖線で示す第1のワークW1と第2のワークW2の接合姿勢を、一対のサイドクランプローラ22c,22dと、トップクランプローラ25a,25bにより保持することができる。
【0156】
したがって、本実施形態の摩擦撹拌接合装置によっても、第1実施形態と同様に第1のワークW1と第2のワークW2の角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合処理を行うことができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0157】
なお、本開示は、前記実施形態にのみ限定されるものではなく、ワーククランプユニット9は、接合装置本体5とは別体に形成され、フレーム13とは別のフレーム16に、第1のワークW1と第2のワークW2の摩擦撹拌接合を行う部分を接合姿勢に保持するローラを備えていれば、図示した以外の構成であってもよい。
【0158】
たとえば、サイドクランプローラ22a〜22fの数は、3対として示したが、ワークW1,W2のサイズや重量等に応じて適宜増減してもよい。サイドクランプローラのx軸方向及びz軸方向の配置は、適宜変更してもよい。同様に、トップクランプローラ25a,25bは、数や配置を適宜変更してもよい。
【0159】
サイドクランプローラ22a〜22fと、トップクランプローラ25a,25bの径や、外周面の幅寸法(軸心方向の寸法)は、図示したものに限定されることなく適宜変更してもよい。
【0160】
ワーククランプユニット9に備えられる第2のワークW2を両側から保持する転動体としてサイドクランプローラ22a〜22fを、第2のワークW2を第1のワークW1とは反対側から保持する転動体としてトップクランプローラ25a,25bを示したが、転動体は、第2のワークW2の移動に追従して転動することが可能な部材であれば、保持具(ホルダ)に回転自在に保持された球体等、その他の部材を用いてもよい。
【0161】
更に、複数のワーククランプユニット9を、接合装置本体5よりもツール相対移動方向tの前側(図1図2では左側)に、配列してもよい。この場合、接合装置本体5の最も近くに配置されたワーククランプユニット9以外のワーククランプユニット9は、フレーム16の突出部18を省略して、門形部17のみを備える構成とすればよい。
【0162】
サイドクランプローラ22b,22d,22fの押圧手段としては、サイドクランプローラ22b,22d,22fを第2のワークW2に側方から押し付けることができれば、空気圧シリンダや送りねじ機構等、油圧シリンダ24以外の任意の構成を採用してもよい。
【0163】
ワーククランプユニット9のサイドクランプローラ22b,22d,22fと対となっているサイドクランプローラ22a,22c,22eにも押圧手段を備えてもよい。
【0164】
トップクランプローラ25a,25bの押圧手段としては、トップクランプローラ25a,25bを第2のワークW2における第1のワークと反対側の端縁に押し付けることができれば、空気圧シリンダや送りねじ機構等、油圧シリンダ26以外の任意の構成を採用してもよい。
【0165】
第2実施形態では、トップクランプローラ25a,25bの位置を調整するために、油圧シリンダ26とフレーム16との間に支柱部材99を取り付ける構成を示した。しかしながら、支柱部材99を設ける代わりに、油圧シリンダ26を、支柱部材99の長さ以上のストロークを有するよう構成してもよい。
【0166】
本開示における摩擦撹拌接合装置は、第1のワークW1と、第1のワークW1の面P1に対して90度以外の角度をなす姿勢で端縁が突き合わされた第2のワークW2とにより形成される2つの角隅部(内隅部)c1,c2を、摩擦撹拌接合の対象としてもよい。この場合は、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2aとの間の角度が90度以外となるため、角隅部c1の摩擦撹拌接合に用いる第1の摩擦撹拌接合ツール1aの固定式ショルダ3aが、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2aとの間の角度に応じた山形の端部を有するよう形成される。同様に、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2bとの間の角度が90度以外となるため、角隅部c2の摩擦撹拌接合に用いる第2の摩擦撹拌接合ツール1bの固定式ショルダ3bが、第1のワークW1の面P1と第2のワークW2の側面P2bとの間の角度に応じた山形の端部を有するよう形成される。
【0167】
又、摩擦撹拌接合ツール1a,1bのプローブ2a,2bが、固定式ショルダ3a,3bの端部の山形の角度の二等分線の方向に沿って配置される。
【0168】
この場合、ワーククランプユニット9において、サイドクランプローラ22a〜22fを、第2のワークW2を挟んで対称となる位置に配置し、トップクランプローラ25a,25bを第2のワークW2の面に沿わせて傾斜配置する。
【0169】
更に、接合装置本体5は、ワークテーブル10に配置された第1のワークW1と第2のワークW2とによって形成される角隅部c1,c2に、図4Aおよび図4Bに示したような固定式ショルダ3a,3bを備えた一対の摩擦撹拌接合ツール1a,1bを配置して、角隅部c1,c2の摩擦撹拌接合を行うことができれば、図示した以外の構成を備えていてもよい。たとえば、接合装置本体5において、フレーム13と第1の主軸ユニット6aとの間に介装する第1のツール押圧部14の第1の軸直交方向移動ユニット51と第1の軸方向移動ユニット52とのx軸方向の配置(順序)を入れ替えてもよい。又、第2のツール押圧部15も同様に、フレーム13と第2の主軸ユニット6bとの間に介装した第2の軸直交方向移動ユニット53と第2の軸方向移動ユニット54とのx軸方向の配置(順序)を入れ替えてもよい。
【0170】
軸直交方向移動ユニット51,53は、直動機構として、ラックアンドピニオン方式や、アクチュエータ等、ボールねじ機構59,81以外の直動機構を使用してもよい。又、直動機構の配置、ガイドレール56,78の数や配置、ガイドブロック57,79の数や配置、ベースプレート55,77や移動テーブル58,80の形状、ガススプリング65,87の配置等については、任意に変更してもよい。軸直交方向移動ユニット51,53の重力補償機構として、定荷重ばねやその他のばね、シリンダ、カウンターウェイト等、ガススプリング65,87以外の任意の形式を採用してもよい。
【0171】
軸方向移動ユニット52,54は、直動機構として、ラックアンドピニオン方式や、アクチュエータ等、ボールねじ機構70,92以外の直動機構を使用してもよい。又、直動機構の配置、ガイドレール67,89の数や配置、ガイドブロック68,90の数や配置、ベースプレート66,88や移動テーブル69,91の形状等については、任意に変更してもよい。
【0172】
更に、第1のツール押圧部14と第2のツール押圧部15は、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの位置の制御と、摩擦撹拌接合ツール1a,1bに付与する押圧荷重の制御を行うことができれば、図示した以外の任意の形式を採用してもよい。たとえば、y軸方向に移動するテーブルを備えた移動ユニットと、z軸方向に移動するテーブルを備えた移動ユニットとのテーブル移動量及び出力を組み合わせて制御してもよい。
【0173】
角隅部c1,c2に配置する一対の摩擦撹拌接合ツール1a,1bは、x軸方向の位置を互いにずらした配置としてもよい。
【0174】
移動機構12は、ワークテーブル10をx軸方向に沿って移動させることができる構成としてあれば、図示した以外の構成でもよい。たとえば、移動機構12として、ボールねじ機構やアクチュエータを用いてもよい。あるいは、移動機構12は、架台8側に設けられるラックと、ワークテーブル10側に設けられる回転駆動可能なピニオンギアとを備えた構成としてもよい。
【0175】
第1のワークW1の面P1を配置するxy平面は水平面でなく、傾斜していてもよい。この場合は、装置構成の説明に用いた前述した3次元直交座標系を、xy平面を基準に角度を変更すればよい。
【0176】
摩擦撹拌接合を行うときに、非特許文献1に示されたAdStirと云われる手法を適用してもよい。
【0177】
この場合は、摩擦撹拌接合ツール1a,1bの固定式ショルダ3a,3bのワーク接触面4a,4bにより形成されている山形の頂部における、ツール相対移動方向tの前側にはフィラーを挿入するための切欠部を設け、ツール相対移動方向tの後側には接合後の角隅部c1,c2に形成されるフィレットに応じた形状の切欠部を設ける。
【0178】
接合装置本体は、固定式ショルダを備えた形式の摩擦撹拌接合ツールに限らず、回転式ショルダを備えた形式の摩擦撹拌接合ツールを有する構成であってもよい。
【0179】
更に、本開示の摩擦撹拌接合装置は、接合すべきワーク同士の間の接合部であれば、2つの角隅部c1,c2以外の任意の接合部の接合に用いてもよい。
【0180】
たとえば、板状のワークの端縁部同士を突き合わせて配置した接合部について摩擦撹拌接合を行う場合にも適用できる。この場合、ワーククランプユニットは、接合装置本体とは別体に形成され、接合装置本体の摩擦撹拌接合ツールが配置されている個所の付近、特に、ツール相対移動方向tの前側となる位置に、ワークの表面に押し付けて接合姿勢を保持するためのローラ(転動体)を備える。これにより、ワーククランプユニットは、ワークの表面に押し付けたローラと、ワークが配置されているテーブルや架台等の部材との間で、ワークをクランプして接合姿勢を保持することができる。
【0181】
ワーククランプユニット9を、摩擦撹拌接合時に接合装置本体5に近接させた近接位置から、x軸方向以外に接合装置本体5から離反させて退避させる方向は、x軸方向でなくてもよい。その場合は、x軸方向のガイドレール19に代えて、退避させる方向に延びるガイド部を備えればよい。
【0182】
ワーククランプユニット9を、摩擦撹拌接合時に接合装置本体5に近接させた近接位置から、接合装置本体5から離反した退避位置に移動できるとしたが、ワーククランプユニット9が、接合装置本体5に近接した位置に取外し可能に固定されていてもよい。
【0183】
更に、本開示の摩擦撹拌接合装置は、接合すべきワークを固定し、固定されたワーク間の接合部に沿って摩擦撹拌接合ツールを有する接合装置本体を移動させるようにして摩擦撹拌接合を行う装置に適用してもよい。この場合は、ワーククランプユニットが接合装置本体の移動方向に先行する側の近接した位置に配置され、摩擦撹拌接合を行うために接合装置本体を接合部の延びる方向に移動させるときに、ワーククランプユニットが接合装置本体に押されて一緒に移動するようにすればよい。又、ワーククランプユニットが、接合装置本体と同期して移動するための移動機構を備えてもよい。
【0184】
以上、本開示の好ましい実施例を説明したが、本開示はこれら実施例に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本開示によれば、接合すべきワーク同士の接合姿勢を、摩擦撹拌接合ツールの押圧荷重の反力の影響を受けない状態で保持しながら、ワーク間の接合部を摩擦撹拌接合することができる摩擦撹拌接合装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0186】
1a 第1の摩擦撹拌接合ツール(摩擦撹拌接合ツール)
1b 第2の摩擦撹拌接合ツール(摩擦撹拌接合ツール)
5 接合装置本体
9 ワーククランプユニット
13 フレーム(第1フレーム)
16 フレーム(第2フレーム)
22a〜22f サイドクランプローラ(第1転動体)
25a,25b トップクランプローラ(第2転動体)
W1 第1のワーク(ワーク)
W2 第2のワーク(ワーク)
c1,c2 角隅部(接合部)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14