(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540877
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
B25F5/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-501081(P2018-501081)
(86)(22)【出願日】2017年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2017002949
(87)【国際公開番号】WO2017145641
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-33644(P2016-33644)
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】若田部 直人
(72)【発明者】
【氏名】寺西 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 政幸
(72)【発明者】
【氏名】船引 勇佑
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−038668(JP,U)
【文献】
特開2001−135362(JP,A)
【文献】
特開2014−087903(JP,A)
【文献】
特開2003−297312(JP,A)
【文献】
特開平02−195673(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0031762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H01M 2/10
B25D 11/00
B25D 17/10
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、
前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ別々の端子ホルダに設けられており、
各端子ホルダが前記電池パック装着部のハウジング部分に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、
前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ別々の端子ホルダに設けられており、
各端子ホルダが前記電池パック装着部のハウジング部分に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、
前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記正受電端子及び前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、
前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする電動工具。
【請求項6】
電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする電動工具。
【請求項7】
電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、
前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記正受電端子及び前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする電動工具。
【請求項8】
電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記正受電端子及び前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする電動工具。
【請求項9】
前記電池パックは前記電池パック装着部に対してスライドして装着され、
前記正受電端子及び前記負受電端子は、前記スライド方向に対して交差する方向に移動自在であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具本体に電池パックを着脱自在に装着可能な構成を有する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動モータを内蔵した電動工具本体に対して電池パックを着脱自在とし、作業時に電池パックを装着して使用する電動工具が知られている。そして、この種の電動工具では、電動工具本体に電池パックを装着、離脱させる動作を円滑化するために、電動工具本体と電池パック間に隙間が存在する。この隙間に起因して作業時に電動工具本体が振動すると電動工具本体側の端子と電池パック側の端子とが擦れ合ったり、端子間に接触状態と非接触状態との繰り返し(チャタリング)が生じたりする可能性がある。
【0003】
下記特許文献1は、電動工具本体と電池パック間の隙間に起因する問題に対処するために、電動工具本体の電池パック装着部に弾性突起を設けて、電池パック装着部に電池パックを装着したときの電池パックのがたつきの防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−154465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用時の振動の大きな電動工具、例えばロータリハンマドリル等においては、上記先行技術を採用したとしても電動工具本体に対して電池パックが振動して電動工具本体側の端子と電池パック側の端子間にチャタリングが発生し、それら端子が過熱して電動工具本体の電池パック装着部におけるハウジング部分が溶ける等の問題が発生する可能性がある。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電動工具の振動に起因する電動工具本体及び電池パック端子間のチャタリングの発生を防止可能な電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
第1の態様は電動工具である。この電動工具は、電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ別々の端子ホルダに設けられており、
各端子ホルダが前記電池パック装着部のハウジング部分に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、前記正受電端子及び
前記負受電端子の間隔が可変であることを特徴とする。
【0008】
本発明の
第2の態様は電動工具である。この電動工具は、電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ別々の端子ホルダに設けられており、
各端子ホルダが前記電池パック装着部のハウジング部分に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、前記正受電端子及び
前記負受電端子の間隔が可変であることを特徴とする。
【0009】
前記各態様において、前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び
前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられているとよい。
【0011】
前記各態様において、前記正受電端子及び
前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられているとよい。
【0012】
本発明の
第3の態様は電動工具である。この電動工具は、
電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様は電動工具である。この電動工具は、電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記電池パック装着部における端子取付部位に対して、前記正受電端子及び前記負受電端子が所定範囲内でそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の態様は電動工具である。この電動工具は、電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体と、前記正受電端子に接続する正電源端子と、前記負受電端子に接続する負電源端子とを有し、前記電池パック装着部に着脱自在に装着される電池パックと、を備え、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記正受電端子及び前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の態様は電動工具である。この電動工具は、電池パックを着脱自在に装着可能な電池パック装着部に、正受電端子及び負受電端子を有する電動工具本体を有し、
前記正受電端子は前記電池パックの正電源端子が接続されると共に、前記負受電端子は前記電池パックの負電源端子が接続され、
前記正受電端子及び前記負受電端子はそれぞれ、前記電動工具本体の内部に位置する内側接続端と、前記電動工具本体から外部に露出する外側接続端と、を有し、
前記正受電端子及び前記負受電端子が、前記電池パック装着部のハウジング部分に取り付けられた端子ホルダに対してそれぞれ独立して移動自在に設けられ、かつ前記正受電端子及び前記負受電端子の間隔が可変であり、
前記内側接続端と前記外側接続端とは同方向に移動自在であることを特徴とする。
各態様において、前記電池パックは前記電池パック装着部に対してスライドして装着され、前記正受電端子及び前記負受電端子は、前記スライド方向に対して交差する方向に移動自在であるとよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電動工具によれば、電動工具本体の電池パック装着部に設けられた正受電端子及び負受電端子の間隔が可変であるため、電動工具の作業時に発生する振動に対して耐久性が向上し、電動工具本体及び電池パック端子間のチャタリングの発生を防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る電動工具の実施の形態1としてのハンマドリルの縦断面図。
【
図3】前記ハンマドリルの本体の電池パック装着部の底面図。
【
図4】実施の形態1における電池パックの端子部分を上向きにした電池パックの平面図。
【
図5】前記電池パックを装着した状態の前記電池パック装着部の拡大側断面図。
【
図9】実施の形態1における正受電端子を有する端子ホルダであって、(A)は左側面図、(B)は正面図、(C)は右側面図、(D)は底面図。
【
図10】実施の形態1における負受電端子を有する端子ホルダであって、(A)は左側面図、(B)は正面図、(C)は右側面図、(D)は底面図。
【
図11】実施の形態2の要部構成であって、電池パック装着部を示す拡大側断面図。
【
図12】実施の形態3の要部構成であって、電池パック装着部を示す拡大側断面図。
【
図13】実施の形態3で用いる正、負受電端子であって、(A)は左方向から見た斜視図、(B)は正面図、(C)は右方向から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本発明に係る電動工具の実施の形態1としてのハンマドリルの全体構成を
図1及び
図2で説明する。なお、以下の説明における上下、前後方向を
図1中に定義する。
【0021】
電動工具としてのハンマドリル100は、ハンマドリルの本体1と、この本体1の電池パック装着部2に着脱自在に装着される電池パック5とを備える。
【0022】
ハンマドリルの本体1は、ハンドル11を一体に形成した本体ハウジング10、本体ハウジング10に内蔵された電動モータ20及び動力伝達機構30、及び動力伝達機構30を介して電動モータ20の駆動力を受ける先端工具脱着機構50を備えている。ハンドル11は作業者がハンマドリル100を使用する際に把持する部分であり、ここには電動モータ20の駆動を制御するためのトリガ12が設けられる。
【0023】
ハンマドリル100は、本体1の電池パック装着部2に電源となる電池パック5を装着し、図示せぬ先端工具を先端工具脱着機構50に取り付けた状態で使用される。ハンマドリル100は、動作モードとして、先端工具が回転及び打撃を行う回転打撃モードと、回転のみを行う回転モードと、打撃のみを行う打撃モードとを有している。
【0024】
モータ20は、本体ハウジング10内で上下方向に軸支された回転出力軸21を有し、その上端部がピニオン22となっている。動力伝達機構30は、本体ハウジング10内で回転出力軸21に対して略直交方向に軸支された中間軸31と、中間軸31の後端部に固着されてピニオン22と噛合するベベルギヤ32と、中間軸31の外周にスライド自在に設けられたスリーブ33と、動作モード切替用のクラッチ機構34と、伝達ギヤ35と、中間軸31の外周に設けられた運動変換部36と、伝達ギヤ35が固定されたシリンダ37と、シリンダ内を摺動するピストン38と、打撃子39と、中間子40とを有する。モータ20の回転出力軸21の回転に伴いピニオン22と噛み合うベベルギヤ32が回転し、これと一体に中間軸31が回転する。
【0025】
スリーブ33は、中間軸31と一体回転可能であり(クラッチ機構34の動作モードによる)、シリンダ37の外周に固着された伝達ギヤ35と噛合しており、スリーブ33の回転に伴いシリンダ37は回転する。中間軸31の回転力はクラッチ機構34を介してスリーブ33に伝達される。
【0026】
クラッチ機構34は、ハンマドリル100の動作モードの切替機能を有し、中間軸31の回転をスリーブ33及び運動変換部36に伝達する回転打撃モードと、スリーブ33のみに伝達する回転モードと、運動変換部36のみに伝達する打撃モードとを切り替えるものである(例えば本体ハウジング10の外側から作業者が操作可能な動作モード切替レバーにより切り替える)。
【0027】
運動変換部36は、中間軸31の外周に設けられた回転部41と、回転部41の外面の凹溝42に回転自在に係合するボール43を保持したアーム部44とを有する。回転部41は中間軸31と一体回転可能であり(クラッチ機構34の動作モードによる)、回転部41が回転すると、ボール43が凹溝42に沿って移動し、アーム部44の上端部が前後方向に往復動する。
【0028】
ピストン38には、アーム部44の上端部が接続(枢着)されており、アーム部44の往復動と連動してシリンダ37内において前後方向に往復動を行う。シリンダ37はピストン38及び中間子40を摺動自在に収容する。打撃子39はピストン38内に前後方向に摺動自在に設けられている。また、ピストン38内には、打撃子39の後端面とピストン38の有底内周面とによって空気室38aが形成されている。中間子40は打撃子39の前方に位置している。
【0029】
先端工具脱着機構50は、本体ハウジング10の前方に設けられ、シリンダ37の先端部に連結され、先端工具を着脱自在に保持する工具保持部51を有する。
【0030】
ハンマドリル100の回転打撃モードでは、中間軸31が回転することでスリーブ33、伝達ギヤ35を介してシリンダ37に回転力が伝達され、シリンダ37及び先端工具脱着機構50が回転する。同時に、中間軸31が回転することで運動変換部36のアーム部44先端部が前後方向に往復運動を行う。アーム部44に連結されたピストン38が後方に移動すると、空気室38a内の空気が膨張し、圧力が低下する。この際、打撃子39と中間子40との間に形成される空間の圧力は、空気室38aの圧力よりも高いため、打撃子39が後方に移動する。ピストン38が前方に移動すると、空気室38aの空気は圧縮され、打撃子39は圧縮された空気が膨張することにより前方に加速され、中間子40は打撃子39によって打撃され、中間子40を介して先端工具脱着機構50で保持された先端工具に打撃力が付与される。ピストン38の往復動により打撃が繰り返される。
【0031】
ハンマドリル100の回転モードでは、スリーブ33及び伝達ギヤ35を介してシリンダ37に回転力が伝達されるが、クラッチ機構34は中間軸31の回転を運動変換部36に伝達しないため、アーム部44は往復動を行わない。この結果、先端工具には回転力のみが伝達される。
【0032】
ハンマドリル100の打撃モードでは、中間軸31の回転力はクラッチ機構34を介して運動変換部36のみに伝達される。これにより、中間軸31の回転力は運動変換部36によって往復運動に変換され、ピストン38に伝達される。ピストン38が往復運動することで、打撃子39及び中間子49を介して先端工具に打撃力のみが伝達される。
【0033】
図3乃至
図10を用いて、ハンマドリルの本体1の電池パック装着部2の構成及びここに着脱自在に装着される電池パック5の構成について説明する。
【0034】
電池パック装着部2は、本体ハウジング10の電池パック配置部10aと、電池パック配置部10aに所定範囲で移動自在に設けられる、絶縁体(例えば樹脂)の端子ホルダ61,62と、端子ホルダ61に設けられる正受電端子71と、端子ホルダ62に設けられる負受電端子72とを有する。正受電端子71及び負受電端子72は板状金属端子であり、それぞれ端子ホルダ61,62と共にインサート成形等で一体的に設けられる。この結果、正受電端子71及び負受電端子72は端子ホルダ61,62をそれぞれ貫通して固定されており、正受電端子71及び負受電端子72の本体ハウジング10の内側接続端はリード線75で電動モータ20に電力を供給する駆動電源回路に接続される。
【0035】
図5乃至
図8に示すように、本体ハウジング10の電池パック配置部10aには、内側に凹んだ薄肉段差部13が形成されており、薄肉段差部13に端子ホルダ61,62が遊合(移動自在に嵌合)する取付穴14(例えば角穴)が形成されている。一方、
図9及び
図10にそれぞれ示すように端子ホルダ61,62は角柱状部分を有し、その外周に取付穴14の縁部分(薄肉段差部13)と係合する外周溝61a,62aがそれぞれ形成されている。外周溝61a,62bは、端子ホルダ61,62を取付穴14の縁部分に係合した(取り付けた)状態において縁部分と対向する領域である端子ホルダ61,62の部分に設けられている。取付穴14の開口面積よりも、各端子ホルダ61,62の外周溝61a,62aを通る横断面の面積の和を小さく設定する(すなわち薄肉段差部13と各端子ホルダ61,62との間に隙間が存在する)ことで、各端子ホルダ61,62及び正及び負受電端子71,72は本体ハウジング10の電池パック配置部10aに対してそれぞれ独立して所定範囲で移動自在となる。各端子ホルダ61,62が電池パック配置部10aに対して外周溝61a,62aに沿って左右又は前後に移動自在のため、正及び負受電端子71,72は、その内側接続端(本体ハウジング10の内側に位置しリード線75が接続される側)から外側接続端(本体ハウジング10の外部に露出して電池パック5の各端子と接続される側)までの端子全体が上記した隙間分だけ左右又は前後に移動自在となる。すなわち、内側接続端と外側接続端は同じ方向に移動自在となっている。言い換えると、各受電端子71,72は電池パック配置部10aに対して外周溝61a,62aに沿って略平行に移動自在となっている。なお、端子ホルダ61,62の外周部に外周溝61a,62aを形成したが、本体ハウジング10の電池パック配置部10a(取付け孔の縁部分)に溝を形成し、端子ホルダ側に当該溝に係合する凸部を形成してもよい。
【0036】
なお、本体ハウジング10は
図3及び
図6に示すように、左右のハウジング分割体10A,10Bを突き合わせて一体化したものであり、ハウジング分割体10A,10Bを突き合わせる前に、取付穴14内側に各端子ホルダ61,62を挿入することができる。
【0037】
図4に示すように、電池パック5は、電池セルを内蔵した、絶縁体(例えば樹脂)のケーシング6を有する。ケーシング6は、電池パック配置部10aへの対向面の両側に一対のレール80を有し、一対のレール80間に端子保持基板85(
図6に仮想線で示す)が配置、固定され、端子保持基板85には正受電端子71に接続する正電源端子81と、負受電端子72に接続する負電源端子82とが設けられている(固定されている)。電池パック5側の正電源端子81及び負電源端子82は、
図6に示すように本体ハウジング10側の板状の正受電端子71及び負受電端子72を挟持する一対の金属製接点部を有する。
【0038】
電池パック5の両側面には抜け止めのラッチ87及びラッチ87を引き込み状態とする操作ボタン86が設けられている。なお、本体ハウジング10の電池パック装着部2には、電池パック5側の一対のレール80と係合する凹溝(図示せず)及びラッチ87と係合する凹部(図示せず)が形成されている。電池パック装着部2への電池パック5の装着は、電池パック装着部2側の凹溝にレール80を挿入して電池パック5を前方に摺動(スライド)させることで行う。電池パック装着状態では、正受電端子71を正電源端子81の一対の接点部で挟持し、負受電端子72を負電源端子82の一対の接点部で挟持する。このとき、正受電端子71及び負受電端子72は、本体ハウジング10の電池パック配置部10aに対して所定範囲でそれぞれ独立して移動自在である。具体的には、正受電端子71及び負受電端子72はそれぞれ、電池パック5のスライド方向(
図1の前後方向)に対して交差する左右方向(
図1の前後方向及び上下方向と交差する方向)に独立して移動自在である。そのため、正受電端子71及び負受電端子72間の距離、並びに正電源端子81及び負電源端子82間の距離に寸法公差が存在しても、正受電端子71と正電源端子81との間の接触荷重と、負受電端子72と負電源端子82との間の接触荷重が均一となる。
【0039】
従って、電池パック装着時において、ハンマドリル100を例えば回転打撃モード又は打撃モードで使用して大きな振動が電池パック5に加わったとしても、正受電端子71及び正電源端子81は組合せ状態で一体的に動くから必要な接触荷重を保持できる。同様に負受電端子72及び負電源端子82も組合せ状態で一体的に動くから必要な接触荷重を保持できる。従って、ハンマドリル100使用時の振動に起因する端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。回転モードの場合には、ハンマドリル100の振動は打撃モードよりも小さくなるため、端子間のチャタリング現象を防止できることは勿論である。
【0040】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0041】
(1) 電池パック側の正電源端子81及び負電源端子82にそれぞれ接続する正受電端子71及び負受電端子72が各々端子ホルダ61,62に設けられて(固定されて)おり、各端子ホルダ61,62が電池パック装着部2の本体ハウジング部分(電池パック配置部10aの薄肉段差部13)に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられているので、正受電端子71及び正電源端子81の組、並びに負受電端子72及び負電源端子82の組の接触荷重を各端子間の寸法公差にかかわらず均等に維持でき、端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。そして、チャタリング現象に起因する発熱を防止可能であるため、大容量の電池パック5から大電流をハンマドリルの本体1に供給する用途に適用可能である。また、各端子の接点部分の寿命を延ばすことが可能となる。
【0042】
また、正受電端子71及び負受電端子72のそれぞれが、電池パック配置部10aに対して略平行に移動自在に構成されているため、端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。例えば、各受電端子の内側接続端側を支点にして外側接続端側を揺動可能に構成した場合、電池パック5側の端子との寸法公差によって外側接続端側が互いに離れる方向に揺動すると、端子が電池パック配置部10aに対してかじってしまい(食い込んでしまい)揺動不能となる可能性がある。更に電池パック5の端子と接続される外側接続端側の根元部分(本体ハウジングで支持される部分)はその先端部分よりも互いに離れる量が少なくなるため、寸法公差の影響を受け易く、接触荷重を均等に維持することはできずチャタリング現象の発生を防止することができない。本発明によれば、端子全体が左右又は前後方向に移動できるため確実に端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。
【0043】
なお、正受電端子71及び負受電端子72を1個の端子ホルダに固着して、1個の端子ホルダを電池パック装着部2の本体ハウジング部分に対して移動自在に設ける場合は、端子ホルダ側の端子間距離と電池パック側の端子間距離との間の寸法公差に起因して接触荷重が不均一となり、端子間のチャタリング現象が発生し易くなる。
【0044】
(2) 本体ハウジング10の電池パック配置部10aの一段凹んだ薄肉段差部13に端子ホルダ61,62を設けることで、端子ホルダ61,62の先端面が電池パック配置部10aから突出しないようにすることができる。このため、電池パック5の装着、離脱を円滑に行うことができる。
【0045】
(3) 本体ハウジング10は左右のハウジング分割体10A,10Bを突き合わせて一体化するものであり、ハウジング分割体10A,10Bを突き合わせる前に、電池パック装着部2の取付穴14内側に各端子ホルダ61,62を挿入することで、容易に組立可能である。また、特別な部品を設ける必要がなく、また本体ハウジング10(特に電池パック装着部2)の形状を従来から変更する必要がないため、製造コストを抑えつつ(部品追加や型修正をすることなく)端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。
【0046】
図11は本発明の実施の形態2の要部構成を示す。この実施の形態2においては、ハンマドリルの本体の電池パック装着部2Aは、本体ハウジングの一部である電池パック配置部10aと、電池パック配置部10aの取付穴15に装着される絶縁体(例えば樹脂)の1個の端子ホルダ63と、端子ホルダ63にそれぞれ所定範囲で独立して移動自在に設けられる正受電端子71及び負受電端子72とを有する。この場合、端子取付部位となる端子ホルダ63は電池パック配置部10aに固定されていても良く、各受電端子71,72は例えば端子ホルダ63に形成された貫通穴64,65に所定のがたつき(隙間)を有するように挿入、遊着されている。各受電端子71,72の端子ホルダ63への遊着、保持のために、例えば弾性部材を併用してもよい。その他の構成は前述の実施の形態1と同様である。
【0047】
この実施の形態2の場合も、
図4に示す電池パック側の正電源端子81及び負電源端子82にそれぞれ接続する正受電端子71及び負受電端子72が、電池パック装着部2の本体ハウジング部分(電池パック配置部10a)に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられているので、正受電端子71及び正電源端子81の組、並びに負受電端子72及び負電源端子82の組の接触荷重を各端子間の寸法公差にかかわらず均等に維持でき、端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。
【0048】
図12は本発明の実施の形態3の要部構成であり、
図13は使用する正受電端子91及び負受電端子92を示す。この実施の形態3においては、ハンマドリルの本体の電池パック装着部2Bは、本体ハウジングの一部である電池パック配置部10aと、電池パック配置部10aの取付穴15に装着される絶縁体(例えば樹脂)の1個の端子ホルダ66と、端子ホルダ66にそれぞれ所定範囲で独立して移動自在に設けられる正受電端子91及び負受電端子92とを有する。この場合、端子取付部位となる端子ホルダ66は、正受電端子91及び負受電端子92を挿入する貫通穴67,68を有するとともに、それらの周囲に正受電端子91及び負受電端子92にそれぞれ形成された抜け止め部95を係止する係止部69を一体に有している。
図13のように抜け止め部95は例えば正受電端子91及び負受電端子92のプレス加工による切起しで弾性を有するように形成でき、正受電端子91及び負受電端子92を
図12の端子ホルダ66の下方から上方に向けて貫通穴67,68に差し込むことで容易に装着できる。また、貫通穴67,68を正受電端子91及び負受電端子92の厚み方向及び幅方向寸法よりも大きくすることで、各受電端子91,92を端子ホルダ63に対してそれぞれ所定範囲で独立して移動自在に設けることができる。その他の構成は前述の実施の形態1と同様である。
【0049】
この実施の形態3の場合も、
図4に示す電池パック側の正電源端子81及び負電源端子82にそれぞれ接続する正受電端子91及び負受電端子92が、電池パック装着部2の本体ハウジング部分(電池パック配置部10a)に対してそれぞれ独立して移動自在に設けられているので、正受電端子91及び正電源端子81の組、並びに負受電端子92及び負電源端子82の組の接触荷重を各端子間の寸法公差にかかわらず均等に維持でき、端子間のチャタリング現象の発生を防止できる。
【0050】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0051】
上記実施の形態では、電動工具の一例としてハンマドリルを説明したが、電池パックを装着して使用する草刈り機等の電池パックを駆動源とする電動作業機を含む各種電動工具に本発明が適用可能であることが明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1…ハンマドリルの本体、2,2A,2B…電池パック装着部、5…電池パック、10…本体ハウジング、10a…電池パック配置部、11…ハンドル、12…トリガ、13…薄肉段差部、14,15…取付穴、20…電動モータ、30…動力伝達機構、50…先端工具脱着機構、61,62,63,66…端子ホルダ、61a,62a…外周溝、71,91…正受電端子、72,92…負受電端子、80…レール、81…正電源端子、82…負電源端子、85…端子保持基板、100…ハンマドリル