(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機(21)と、互いに並列の複数の室内熱交換器(52a、52b)と、前記各室内熱交換器の液側に対応する液側室内膨張弁(51a、51b)と、室外熱交換器(23)と、が接続されることによって構成された冷媒回路(10)と、
前記圧縮機、前記室内熱交換器、前記液側室内膨張弁、前記室外熱交換器の順に前記冷媒回路内に封入された冷媒を循環させる暖房運転を行う制御部(19)と、
を備えた空気調和装置において、
前記冷媒回路は、前記各室内熱交換器のガス側に対応するガス側室内膨張弁(61a、61b)をさらに有しており、
前記制御部は、前記室内熱交換器のうち前記暖房運転を行う暖房運転室内熱交換器と前記暖房運転を行わない暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、前記暖房停止室内熱交換器に対応する前記液側室内膨張弁及び前記ガス側室内膨張弁を、前記液側室内膨張弁の開度よりも前記ガス側室内膨張弁の開度が小さくなるように制御する、
空気調和装置(1)。
前記制御部は、前記圧縮機、前記室外熱交換器、前記液側室内膨張弁、前記室内熱交換器の順に前記冷媒回路内に封入された前記冷媒を循環させる冷房運転を行うとともに、前記ガス側室内膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の蒸発温度に基づいて制御する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気調和装置。
前記冷媒回路は、前記各ガス側室内膨張弁又は前記各液側室内膨張弁をバイパスするように設けられており、前記室内熱交換器における前記冷媒の圧力が所定の圧力まで上昇した際に開く圧力調整弁(62a、62b)を有している、
請求項8又は9に記載の空気調和装置。
【発明の概要】
【0003】
上記特許文献1における液側室内膨張弁の微開制御や液側室内膨張弁をバイパスする絞り機構の構成では、暖房停止室内熱交換器への冷媒の溜まり込みを抑えることはできるが、暖房停止室内熱交換器に高圧の冷媒を流すことになるため、暖房停止室内熱交換器において冷媒が放熱してしまい、これが暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスとなっている。
【0004】
本発明の課題は、複数の室内熱交換器のうち暖房運転を行う暖房運転室内熱交換器と暖房運転を行わない暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、暖房停止室内熱交換器に冷媒を流すことで冷媒の溜まり込みを抑えるのにあたり、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを抑えることにある。
【0005】
第1の観点にかかる空気調和装置は、冷媒回路と、制御部と、を有している。冷媒回路は、圧縮機と、互いに並列の複数の室内熱交換器と、各室内熱交換器の液側に対応する液側室内膨張弁と、室外熱交換器と、が接続されることによって構成されている。制御部は、圧縮機、室内熱交換器、液側室内膨張弁、室外熱交換器の順に冷媒回路内に封入された冷媒を循環させる暖房運転を行う。そして、ここでは、冷媒回路が、各室内熱交換器のガス側に対応するガス側室内膨張弁をさらに有している。しかも、制御部は、室内熱交換器のうち暖房運転を行う暖房運転室内熱交換器と暖房運転を行わない暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、暖房停止室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を、液側室内膨張弁の開度よりもガス側室内膨張弁の開度が小さくなるように制御する。ここで、「暖房運転を行わない」とは、室内熱交換器を有する室内ユニットの運転が停止されている、又は、サーモオフ状態になっている状態を意味し、「暖房停止室内熱交換器」とは、このような「暖房運転を行わない」状態にある室内ユニットの室内熱交換器を意味する。
【0006】
従来の液側室内膨張弁の微開制御や液側室内膨張弁をバイパスする絞り機構の構成によって、暖房停止室内熱交換器に少量の冷媒を流すと、暖房停止室内熱交換器の上流側では冷媒が減圧されず、かつ、暖房停止室内熱交換器の下流側で冷媒が大幅に減圧されることになるため、暖房停止室内熱交換器においても、暖房運転室内熱交換器と同様に、圧縮機から吐出された高圧の冷媒が流れることになる。そして、圧縮機から吐出された高圧の冷媒は、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度に比べてかなり高い温度であるため、このことが暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを発生させる原因になっている。
【0007】
そこで、ここでは、上記のように、各室内熱交換器のガス側にガス側室内膨張弁を設けて、暖房運転室内熱交換器と暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、暖房停止室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を、液側室内膨張弁の開度よりもガス側室内膨張弁の開度が小さくなるように制御している。このような液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁の制御を行うと、暖房停止室内熱交換器の下流側に比べて暖房停止室内熱交換器の上流側で冷媒が大幅に減圧されることになるため、暖房停止室内熱交換器には、圧縮機から吐出された高圧の冷媒よりも低い圧力の少量の冷媒が流れることになる。これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度が低下して、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度に近づけることができ、その結果、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを抑えることができるようになる。
【0008】
このように、ここでは、暖房運転室内熱交換器と暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、暖房停止室内熱交換器に少量の冷媒を流すことで冷媒の溜まり込みを抑えるのにあたり、ガス側室内膨張弁を設けて、液側室内膨張弁の開度よりもガス側室内膨張弁の開度が小さくなるように制御することによって、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを抑えることができる。
【0009】
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、暖房運転室内熱交換器に対応するガス側室内膨張弁を、開度が全開になるように制御する。
【0010】
ここでは、暖房停止室内熱交換器とは異なり、上記のように、暖房運転室内熱交換器に対応するガス側室内膨張弁を、開度が全開になるように制御しているため、暖房運転室内熱交換器に圧縮機から吐出された高圧の冷媒をそのまま流入させることができる。
【0011】
これにより、ここでは、暖房運転室内熱交換器については、室内熱交換器の全てが暖房運転を行う場合やガス側室内膨張弁を設けない従来の構成と同様の暖房運転を行うことができる。
【0012】
第3の観点にかかる空気調和装置は、第1又は第2の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、暖房停止室内熱交換器に対応するガス側室内膨張弁を、開度が微開になるように制御する。ここで、「微開」とは、ガス側室内膨張弁の全開を100%と表した場合において、約15%以下の開度である。
【0013】
ここでは、上記のように、暖房停止室内熱交換器に対応するガス側室内膨張弁を、開度が微開になるように制御しているため、暖房停止室内熱交換器の上流側で少量の冷媒を大幅に減圧して、暖房停止室内熱交換器に圧縮機から吐出された高圧の冷媒よりも十分に低い圧力の少量の冷媒が流れることになる。
【0014】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度にさらに近づけることができ、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを十分に抑えることができる。
【0015】
第4の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第3の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、制御部が、暖房停止室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁を、開度が全開になるように制御する。
【0016】
ここでは、上記のように、暖房停止室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁を、開度が全開になるように制御しているため、暖房停止室内熱交換器に、暖房運転室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁で減圧された後の冷媒と同じ圧力の冷媒が流れることになる。
【0017】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度にさらに近づけることができ、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを十分に抑えることができる。
【0018】
第5の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第4の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、冷媒回路が、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間に、室外膨張弁をさらに有しており、制御部は、室外膨張弁の開度を、暖房停止室内熱交換器における冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下になるように制御する。
【0019】
暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを確実に抑えるためには、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下にすればよい。一方で、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度は、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間を流れる冷媒の圧力の影響を受けて変動する。このため、例えば、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間を流れる冷媒の圧力の相当飽和温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度よりもかなり高いような場合には、上記の液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁の開度制御を行っても、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下にすることができない場合がある。
【0020】
そこで、ここでは、暖房運転室内熱交換器と暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、上記の液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁の開度制御とともに、室外膨張弁の開度を、暖房停止室内熱交換器における冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下になるように制御している。
【0021】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下にすることができ、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを確実に抑えることができる。
【0022】
第6の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第4の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、冷媒回路が、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間に、室外膨張弁をさらに有しており、制御部は、室外膨張弁の開度を、暖房停止室内熱交換器における冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以上になるように制御する。
【0023】
暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを確実に抑えるためには、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以下にすればよい。しかし、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度よりもかなり低いと、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒が暖房停止室内熱交換器の雰囲気を冷却してしまい、暖房停止室内熱交換器からのコールドドラフトを発生させるおそれがある。そして、このような暖房停止室内熱交換器からのコールドドラフトの発生を抑えるためには、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以上にするほうが好ましい。一方で、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度は、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間を流れる冷媒の圧力の影響を受けて変動する。このため、例えば、液側室内膨張弁と室外熱交換器との間を流れる冷媒の圧力の相当飽和温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度よりもかなり低いような場合には、上記の液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁の開度制御を行っても、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以上にすることができない場合がある。
【0024】
そこで、ここでは、暖房運転室内熱交換器と暖房停止室内熱交換器とが混在する場合に、上記の液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁の開度制御とともに、室外膨張弁の開度を、暖房停止室内熱交換器における冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以上になるように制御している。
【0025】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器を流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度以上にすることができ、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロスを抑えるとともに、暖房停止室内熱交換器からのコールドドラフトを抑えることができる。尚、暖房停止室内熱交換器からの放熱ロス及びコールドドラフトの両方を確実に抑えるには、室外膨張弁の開度を、暖房停止室内熱交換器における冷媒の温度が暖房停止室内熱交換器の雰囲気温度と同じ温度になるように制御することが好ましい。
【0026】
第7の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第6の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、制御部が、圧縮機、室外熱交換器、液側室内膨張弁、室内熱交換器の順に冷媒回路内に封入された冷媒を循環させる冷房運転を行うとともに、ガス側室内膨張弁の開度を、室内熱交換器における冷媒の蒸発温度に基づいて制御する。
【0027】
外気温度が低くかつ負荷が小さい条件の冷房運転(低外気低負荷冷房運転)時においては、圧縮機の高低差圧が小さくなりすぎて、冷房運転を継続することができなくなるおそれがある。
【0028】
そこで、ここでは、上記のように、冷房運転時に、ガス側室内膨張弁の開度を、室内熱交換器における冷媒の蒸発温度に基づいて制御している。
【0029】
これにより、ここでは、低外気低負荷冷房運転のような圧縮機の高低差圧が小さくなりやすい運転条件においても、圧縮機の高低差圧を確保して、冷房運転を安定的に行うことができる。
【0030】
第8の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第7の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、各室内熱交換器が、室内ユニットに設けられており、各室内ユニットには、冷媒漏洩検知手段が設けられている。そして、ここでは、制御部が、冷媒漏洩検知手段が冷媒の漏洩を検知した場合に、液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を、開度が全閉になるように制御する。ここで、冷媒漏洩検知手段としては、漏洩した冷媒を直接的に検知する冷媒センサであってもよいし、また、室内熱交換器における冷媒の温度と室内熱交換器の雰囲気温度との関係等から冷媒の漏洩の有無や量を推定するものであってもよい。
【0031】
ここでは、上記のように、冷媒漏洩検知手段がさらに設けられており、冷媒漏洩検知手段が冷媒の漏洩を検知した場合に、液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を閉止するようにしているため、圧縮機や室外熱交換器側から室内熱交換器への冷媒の流入を防ぎ、室内における冷媒の濃度が上昇するのを抑えることができる。
【0032】
第9の観点にかかる空気調和装置は、第8の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を全閉になるように制御する前に、圧縮機を停止させる。
【0033】
ここでは、上記のように、冷媒漏洩検知手段が冷媒の漏洩を検知した場合には、液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を全閉になるように制御する前に、圧縮機を停止させるようにしているため、冷媒の圧力が過度に上昇するのを抑えることができる。
【0034】
第10の観点にかかる空気調和装置は、第8又は第9の観点にかかる空気調和装置において、冷媒回路が、各ガス側室内膨張弁又は各液側室内膨張弁をバイパスするように設けられており、室内熱交換器における冷媒の圧力が所定の圧力まで上昇した際に開く圧力調整弁を有している。
【0035】
冷媒漏洩検知手段が冷媒の漏洩を検知した場合に液側室内膨張弁及びガス側室内膨張弁を全閉にすると、冷媒の漏洩が発生していない室内熱交換器が液封状態になり、室内熱交換器における冷媒の圧力が過度に上昇するおそれがある。
【0036】
そこで、ここでは、上記のように、室内熱交換器における冷媒の圧力が所定の圧力まで上昇した際に開く圧力調整弁をガス側室内膨張弁又は液側室内膨張弁をバイパスするように設けている。また、圧力調整弁を設ける代わりに、ガス側室内膨張弁又は液側室内膨張弁として、液封防止機能付きの膨張弁を採用してもよい。
【0037】
これにより、ここでは、冷媒の漏洩が発生していない室内熱交換器を液封状態になるのを避けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0040】
(1)構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、ビル等の室内の冷房や暖房を行う装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、互いが並列に接続される複数(ここでは、2つ)の室内ユニット3a、3bと、室外ユニット2と室内ユニット3a、3bとを接続する液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6と、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3bの構成機器を制御する制御部19と、を有している。そして、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と複数の室内ユニット3a、3bとを、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して接続することによって構成されている。冷媒回路10には、R32等の冷媒が充填されている。
【0041】
<冷媒連絡管>
液冷媒連絡管5は、主として、室外ユニット2から延びる合流管部と、室内ユニット3a、3bの手前で複数(ここでは、2つ)に分岐した分岐管部5a、5bと、を有している。また、ガス冷媒連絡管6は、主として、室外ユニット2から延びる合流管部と、室内ユニット3a、3bの手前で複数(ここでは、2つ)に分岐した分岐管部6a、6bと、を有している。
【0042】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、ビル等の室外に設置されている。室外ユニット2は、上記のように、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室内ユニット3a、3bに接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0043】
次に、室外ユニット2の構成について説明する。
【0044】
室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、室外熱交換器23と、を有している。また、室外ユニット2は、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させる放熱運転状態と、室外熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させる蒸発運転状態と、を切り換えるための切換機構22を有している。切換機構22と圧縮機21の吸入側とは、吸入冷媒管31によって接続されている。吸入冷媒管31には、圧縮機21に吸入される冷媒を一時的に溜めるアキュムレータ29が設けられている。圧縮機21の吐出側と切換機構22とは、吐出冷媒管32によって接続されている。切換機構22と室外熱交換器23のガス側端とは、第1室外ガス冷媒管33によって接続されている。室外熱交換器23の液側端と液冷媒連絡管5とは、室外液冷媒管34によって接続されている。室外液冷媒管34の液冷媒連絡管5との接続部には、液側閉鎖弁27が設けられている。切換機構22とガス冷媒連絡管6とは、第2室外ガス冷媒管35によって接続されている。第2室外ガス冷媒管35のガス冷媒連絡管6との接続部には、ガス側閉鎖弁28が設けられている。液側閉鎖弁27及びガス側閉鎖弁28は、手動で開閉される弁である。
【0045】
圧縮機21は、冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機用モータ21aによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用される。
【0046】
切換機構22は、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させる場合(以下、「室外放熱状態」とする)には圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続し(
図1の切換機構22の実線を参照)、室外熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させる場合(以下、「室外蒸発状態」とする)には圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続するように(
図1の切換機構22の破線を参照)、冷媒回路10内における冷媒の流れを切り換えることが可能な機器であり、例えば、四路切換弁からなる。
【0047】
室外熱交換器23は、冷媒の放熱器として機能する、又は、冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。ここで、室外ユニット2は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン24を有している。すなわち、室外ユニット2は、室外熱交換器23を流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を室外熱交換器23に供給するファンとして、室外ファン24を有している。ここでは、室外ファン24は、室外ファン用モータ24aによって駆動される。
【0048】
また、ここでは、室外液冷媒管34に、室外膨張弁25が設けられている。室外膨張弁25は、暖房運転時に冷媒を減圧する電動膨張弁であり、室外液冷媒管34のうち室外熱交換器23の液側端寄りの部分に設けられている。
【0049】
さらに、ここでは、室外液冷媒管34に、冷媒戻し管41が接続されており、冷媒冷却器45が設けられている。冷媒戻し管41は、室外液冷媒管34を流れる冷媒の一部を分岐して圧縮機21に送る冷媒管である。冷媒冷却器45は、冷媒戻し管41を流れる冷媒によって室外液冷媒管34を流れる冷媒を冷却する熱交換器である。ここで、室外膨張弁25は、室外液冷媒管34のうち冷媒冷却器45よりも室外熱交換器23側の部分に設けられている。
【0050】
冷媒戻し管41は、室外液冷媒管34から分岐した冷媒を圧縮機21の吸入側に送る冷媒管である。そして、冷媒戻し管41は、主として、冷媒戻し入口管42と、冷媒戻し出口管43と、を有している。冷媒戻し入口管42は、室外液冷媒管34を流れる冷媒の一部を室外熱交換器23の液側端と液側閉鎖弁27との間の部分(ここでは、室外膨張弁25と冷媒冷却器45との間の部分)から分岐させて冷媒冷却器45の冷媒戻し管41側の入口に送る冷媒管である。冷媒戻し入口管42には、冷媒戻し管41を流れる冷媒を減圧しながら冷媒冷却器45を流れる冷媒の流量を調整する冷媒戻し膨張弁44が設けられている。ここで、冷媒戻し膨張弁44は、電動膨張弁からなる。冷媒戻し出口管43は、冷媒冷却器45の冷媒戻し管41側の出口から吸入冷媒管31に送る冷媒管である。しかも、冷媒戻し管41の冷媒戻し出口管43は、吸入冷媒管31のうちアキュムレータ29の入口側の部分に接続されている。そして、冷媒冷却器45は、冷媒戻し管41を流れる冷媒によって室外液冷媒管34を流れる冷媒を冷却するようになっている。
【0051】
室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21から吐出された冷媒の圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ36と、圧縮機21から吐出された冷媒の温度(吐出温度Td)を検出する吐出温度センサ37と、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力Ps)を検出する吸入圧力センサ39と、が設けられている。また、室外ユニット2には、室外熱交換器24の液側端における冷媒の温度Tol(室外熱交出口温度Tol)を検出する室外熱交液側センサ38と、室外液冷媒管25のうち冷媒冷却器45と液側閉鎖弁27との間の部分における冷媒の温度(液管温度Tlp)を検出する液管温度センサ49が設けられている。
【0052】
<室内ユニット>
室内ユニット3a、3bは、ビル等の室内に設置されている。室内ユニット3a、3bは、上記のように、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0053】
次に、室内ユニット3a、3bの構成について説明する。尚、室内ユニット3aと室内ユニット3bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット3aの構成のみ説明し、室内ユニット3bの構成については、それぞれ、室内ユニット3aの各部を示す添え字「a」の代わりに添え字「b」を付して、各部の説明を省略する。
【0054】
室内ユニット3aは、主として、液側室内膨張弁51aと、室内熱交換器52aと、を有している。また、室内ユニット3aは、室内熱交換器52aの液側端と液冷媒連絡管5とを接続する室内液冷媒管53aと、室内熱交換器52aのガス側端とガス冷媒連絡管6とを接続する室内ガス冷媒管54aと、を有している。
【0055】
液側室内膨張弁51aは、室内熱交換器52aの液側に対応して設けられた電動膨張弁であり、室内液冷媒管53aに設けられている。
【0056】
室内熱交換器52aは、冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却する、又は、冷媒の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。ここで、室内ユニット3aは、室内ユニット3a内に室内空気を吸入して、室内熱交換器52aにおいて冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン55aを有している。すなわち、室内ユニット3aは、室内熱交換器52aを流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての室内空気を室内熱交換器52aに供給するファンとして、室内ファン55aを有している。室内ファン55aは、室内ファン用モータ56aによって駆動される。
【0057】
そして、空気調和装置1では、圧縮機21、室外熱交換器23、液側室内膨張弁51a、51b及び室内熱交換器52a、52bのみに着目した場合に、圧縮機21、室外熱交換器23、液冷媒連絡管5、液側室内膨張弁51a、51b、室内熱交換器52a、52b、ガス冷媒連絡管6、圧縮機21の順に冷媒回路10内に封入された冷媒を循環させる冷房運転を行うようになっている。また、空気調和装置1では、圧縮機21、室外熱交換器23、液側室内膨張弁51a、51b及び室内熱交換器52a、52bのみに着目した場合に、圧縮機21、室内熱交換器52a、52b、液側室内膨張弁51a、51b、室外熱交換器23の順に冷媒回路10内に封入された冷媒を循環させる暖房運転を行うようになっている。尚、ここでは、冷房運転時は、切換機構22が室外放熱状態に切り換えられ、暖房運転時は、切換機構22が室外蒸発状態に切り換えられる。
【0058】
また、ここでは、室内熱交換器52aのガス側に対応するガス側室内膨張弁61aがさらに設けられている。ガス側室内膨張弁61aは、室内ガス冷媒管54aに設けられた電動膨張弁である。
【0059】
室内ユニット3aには、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット3aには、室内熱交換器52aの液側端における冷媒の温度Trlを検出する室内熱交液側センサ57aと、室内熱交換器52aのガス側端における冷媒の温度Trgを検出する室内熱交ガス側センサ58aと、室内ユニット3a内に吸入される室内空気の温度Traを検出する室内空気センサ59aと、が設けられている。
【0060】
<制御部>
制御部19は、室外ユニット2や室内ユニット3a、3b等に設けられた制御基板等(図示せず)が通信接続されることによって構成されている。尚、
図1においては、便宜上、室外ユニット2や室内ユニット3a、3bとは離れた位置に図示している。制御部19は、上記のような各種センサ36、37、38、39、49、57a、57b、58a、58b、59a、59bの検出信号等に基づいて空気調和装置1(ここでは、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3b)の各種構成機器21、22、24、25、44、51a、51b、55a、55b、61a、61bの制御、すなわち、空気調和装置1全体の運転制御を行うようになっている。
【0061】
(2)空気調和装置の動作及び特徴
次に、空気調和装置1の動作及び特徴について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0062】
空気調和装置1では、冷房運転及び暖房運転が行われる。尚、以下に説明する空気調和装置1の動作は、空気調和装置1の構成機器を制御する制御部19によって行われる。
【0063】
<冷房運転>
冷房運転の際、例えば、室内ユニット3a、3bの全てが冷房運転(すなわち、室内熱交換器52a、52bの全てが冷媒の蒸発器として機能し、かつ、室外熱交換器23が冷媒の放熱器として機能する運転)を行う際には、切換機構22が室外放熱状態(
図1の切換機構22の実線で示された状態)に切り換えられて、圧縮機21、室外ファン24及び室内ファン55a、55bが駆動される。
【0064】
すると、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、切換機構22を通じて室外熱交換器23に送られる(
図1、2の点B参照)。室外熱交換器23に送られた冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン24によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮する(
図1、2の点C参照)。この冷媒は、室外膨張弁25、冷媒冷却器45及び液側閉鎖弁27を通じて室外ユニット2から流出する(
図1、2の点E参照)。
【0065】
室外ユニット2から流出した冷媒は、液冷媒連絡管5を通じて室内ユニット3a、3bに分岐して送られる(
図1、2の点F参照)。室内ユニット3a、3bに送られた冷媒は、液側室内膨張弁51a、51bによって低圧まで減圧されて、室内熱交換器52a、52bに送られる(
図1、2の点G参照)。室内熱交換器52a、52bに送られた冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器52a、52bにおいて、室内ファン55a、55bによって室内から供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する(
図1、2の点H参照)。この冷媒は、ガス側室内膨張弁61a、61bを通じて室内ユニット3a、3bから流出する(
図1、2の点I参照)。一方、室内熱交換器52a、52bにおいて冷却された室内空気は、室内に送られ、これにより、室内の冷房が行われる。
【0066】
室内ユニット3a、3bから流出した冷媒は、ガス冷媒連絡管6を通じて室外ユニット2に合流して送られる(
図1、2の点J参照)。室外ユニット2に送られた冷媒は、ガス側閉鎖弁28、切換機構22及びアキュムレータ29を通じて圧縮機21に吸入される(
図1、2の点A参照)。
【0067】
上記の冷房運転の際に、制御部19は、冷媒戻し管41及び冷媒冷却器45によって室外液冷媒管34を流れる冷媒を冷却して液冷媒連絡管5に送るようにしている。具体的には、制御部19は、冷媒戻し膨張弁44の開度を制御することで冷媒戻し管41を流れる冷媒の流量を調節している。また、ここでは、制御部19は、液側室内膨張弁51a、51bによって液冷媒連絡管5から室内ユニット3a、3bに送られた冷媒を低圧の気液二相状態になるまで減圧している。具体的には、制御部19は、室内熱交換器52a、52bのガス側端における冷媒の過熱度SHrが目標過熱度SHrtになるように、液側室内膨張弁51a、51bの開度を制御している。制御部19は、室内熱交換器52a、52bのガス側端における冷媒の過熱度SHrを、室内熱交ガス側温度Trgから室内熱交液側温度Trlを差し引くことによって得る。そして、制御部19は、過熱度SHrが目標過熱度SHrtよりも大きい場合に、液側室内膨張弁51a、51bの開度を大きくする制御を行い、過熱度SHrが目標過熱度SHrtよりも小さい場合に、液側室内膨張弁51a、51bの開度を小さくする制御を行っている。また、ここでは、制御部19は、ガス側室内膨張弁61a、61bの開度を全開状態で固定する制御を行い、室内熱交換器52a、52bから流出した冷媒を減圧しないようにしている。また、ここでは、制御部19は、室外膨張弁25の開度を全開状態で固定する制御を行い、室外熱交換器23から流出した冷媒を減圧しないようにしている。
【0068】
<暖房運転>
−室内ユニットの全てが暖房運転を行っている場合−
室内ユニット3a、3bの全てが暖房運転(すなわち、室内熱交換器52a、52bの全てが冷媒の放熱器として機能し、かつ、室外熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する運転)を行う際には、切換機構22が室外蒸発状態(
図3の切換機構22の破線で示された状態)に切り換えられて、圧縮機21、室外ファン24及び室内ファン55a、55bが駆動される。
【0069】
すると、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、切換機構22及びガス側閉鎖弁28を通じて室外ユニット2から流出する(
図3、4の点J参照)。
【0070】
室外ユニット2から流出した冷媒は、ガス冷媒連絡管6を通じて室内ユニット3a、3bに分岐して送られる(
図3、4の点I参照)。室内ユニット3a、3bに送られた冷媒は、ガス側室内膨張弁61a、61bを通じて室内熱交換器52a、52bに送られる(
図3、4の点H参照)。室内熱交換器52a、52bに送られた高圧の冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器52a、52bにおいて、室内ファン55a、55bによって室内から供給される室内空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮する(
図3、4の点G参照)。この冷媒は、室内膨張弁51a、51bによって減圧されて、室内ユニット3a、3bから流出する(
図3、4の点F参照)。一方、室内熱交換器52a、52bにおいて加熱された室内空気は、室内に送られ、これにより、室内の暖房が行われる。
【0071】
室内ユニット3a、3bから流出した冷媒は、液冷媒連絡管5を通じて合流して室外ユニット2に送られる(
図3、4の点E参照)。室外ユニット2に送られた冷媒は、液側閉鎖弁27及び冷媒冷却器45を通じて、室外膨張弁25に送られる(
図3、4の点D参照)。室外膨張弁25に送られた冷媒は、室外膨張弁25によって低圧まで減圧された後に、室外熱交換器23に送られる(
図3、4の点C参照)。室外熱交換器23に送られた冷媒は、室外ファン24によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する(
図3、4の点A参照)。この冷媒は、切換機構22及びアキュムレータ29を通じて圧縮機21に吸入される。
【0072】
上記の室内ユニット3a、3bの全てが暖房運転を行っている場合には、制御部19は、液側室内膨張弁51a、51bによって室内熱交換器52a、52bにおいて放熱した冷媒を減圧している。具体的には、制御部19は、室内熱交換器52a、52bの液側端における冷媒の過冷却度SCrが目標過冷却度SCrtになるように、液側室内膨張弁51a、51bの開度を制御している。具体的には、制御部19は、室内熱交換器52a、52bの液側端における冷媒の過冷却度SCrを、室内熱交液側温度Trlから得る。制御部19は、吐出圧力Pdを飽和温度に換算して得られる冷媒の温度Trcから室内熱交液側温度Trlを差し引くことによって、室内熱交換器52a、52bの液側端における冷媒の過冷却度SCrを得る。そして、制御部19は、過冷却度SCrが目標過冷却度SCrtよりも小さい場合に、液側室内膨張弁51a、51bの開度を小さくする制御を行い、過冷却度SCrが目標過冷却度SCrtよりも大きい場合に、液側室内膨張弁51a、51bの開度を大きくする制御を行っている。また、ここでは、制御部19は、ガス側室内膨張弁61a、61bの開度を全開状態で固定する制御を行い、室内熱交換器52a、52bに流入する冷媒を減圧しないようにしている。また、ここでは、制御部19は、室外膨張弁25によって室外液冷媒管34を流れる冷媒を低圧の気液二相状態にして室外熱交換器23に送るようにしている。具体的には、制御部19は、室外膨張弁25の開度を制御することで室外熱交換器23に送る冷媒の減圧の程度を調節している。また、ここでは、制御部19は、冷媒戻し膨張弁44の開度を全閉状態にして冷媒戻し管41に冷媒を流さないようにしている。
【0073】
−暖房運転を行わない室内ユニットが存在する場合−
暖房運転には、室内熱交換器52a、52bのうち暖房運転を行う暖房運転室内熱交換器と暖房運転を行わない暖房停止室内熱交換器とが混在する場合がある。ここで、「暖房運転を行わない」とは、室内熱交換器を有する室内ユニットの運転が停止されている、又は、サーモオフ状態になっている状態を意味し、「暖房停止室内熱交換器」とは、このような「暖房運転を行わない」状態にある室内ユニットの室内熱交換器を意味する。
【0074】
このような暖房運転室内熱交換器と暖房停止室内熱交換器とが混在する場合には、暖房停止室内熱交換器への冷媒の溜まり込みが発生するおそれがある。これに対して、従来には、暖房停止室内熱交換器に対応する液側室内膨張弁を微開に制御して、暖房停止室内熱交換器に少量の冷媒を流すようにしたり、液側室内膨張弁をバイパスする絞り機構(キャピラリーチューブ及び逆止弁によって構成されるもの)を設けて、液側室内膨張弁を閉止した状態で絞り機構を通じて暖房停止室内熱交換器に少量の冷媒を流すようにしていた。
【0075】
しかし、従来の液側室内膨張弁の微開制御や液側室内膨張弁をバイパスする絞り機構の構成によって、暖房停止室内熱交換器(例えば、室内熱交換器52bとする)に少量の冷媒を流すと、暖房停止室内熱交換器52bの上流側では冷媒が減圧されず、かつ、暖房停止室内熱交換器52bの下流側で冷媒が大幅に減圧されることになるため(
図4の点G、F参照)、暖房停止室内熱交換器52bにおいても、暖房運転室内熱交換器(例えば、室内熱交換器52aとする)と同様に、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒が流れることになる(
図4の点G参照)。そして、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度(例えば、室内温度Traとする)に比べてかなり高い温度であるため、このことが暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを発生させる原因になっていた。
【0076】
そこで、ここでは、上記のように、各室内熱交換器52a、52bのガス側にガス側室内膨張弁61a、61bを設けている。そして、制御部8が、暖房運転室内熱交換器52aと暖房停止室内熱交換器52bとが混在する場合に、
図5及び
図6に示すように、暖房停止室内熱交換器52bに対応する液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bを、液側室内膨張弁51bの開度よりもガス側室内膨張弁61bの開度が小さくなるように制御している。
【0077】
具体的には、ここでは、制御部19が、暖房停止室内熱交換器52bに対応するガス側室内膨張弁61bを、開度が微開になるように制御する。ここで、「微開」とは、ガス側室内膨張弁61a、61bの全開を100%と表した場合において、約15%以下の開度である。また、ここでは、制御部19が、暖房停止室内熱交換器52bに対応する液側室内膨張弁51bを、開度が全開になるように制御する。
【0078】
このような液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの制御を行うと、暖房停止室内熱交換器52bの下流側に比べて暖房停止室内熱交換器52bの上流側で冷媒が大幅に減圧されることになるため(
図6の点I、H’参照)、暖房停止室内熱交換器52bには、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒よりも低い圧力の少量の冷媒が流れることになる(
図5の室内熱交換器52bに示された矢印、及び、
図6の点H’、G’参照)。これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度が低下して、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度(ここでは、室内温度Tra)に近づけることができ、その結果、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを抑えることができるようになる。尚、ガス側室内膨張弁61bを全閉にすることでも、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを抑制することはできる。しかし、この場合には、暖房停止室内熱交換器52bが接続されるガス冷媒管(ここでは、室内ガス冷媒管54a及びガス冷媒連絡管6の分岐管部6b)に圧縮機21から吐出された高圧の冷媒が溜まり込む可能性があるため、好ましくない。
【0079】
このように、ここでは、暖房運転室内熱交換器52aと暖房停止室内熱交換器52bとが混在する場合に、暖房停止室内熱交換器52bに少量の冷媒を流すことで冷媒の溜まり込みを抑えるのにあたり、ガス側室内膨張弁61a、61bを設けて、液側室内膨張弁51bの開度よりもガス側室内膨張弁61bの開度が小さくなるように制御することによって、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを抑えることができる。
【0080】
特に、ここでは、上記のように、暖房停止室内熱交換器52bに対応するガス側室内膨張弁61bを、開度が微開になるように制御しているため、暖房停止室内熱交換器52bの上流側で少量の冷媒を大幅に減圧して、暖房停止室内熱交換器52bに圧縮機21から吐出された高圧の冷媒よりも十分に低い圧力の少量の冷媒が流れることになる(
図6の点H’、G’参照)。また、ここでは、上記のように、暖房停止室内熱交換器52bに対応する液側室内膨張弁51bを、開度が全開になるように制御しているため、暖房停止室内熱交換器52bには、暖房運転室内熱交換器52aに対応する液側室内膨張弁51aで減圧された後の冷媒と同じ圧力の冷媒が流れることになる(
図6の点F、F’参照)。
【0081】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度を、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Traにさらに近づけることができ、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを十分に抑えることができる。
【0082】
尚、ここでは、上記のように、暖房停止室内熱交換器52bに対応する液側室内膨張弁51bを全開にし、かつ、ガス側室内膨張弁61aを微開にすることで、液側室内膨張弁51bの開度よりもガス側室内膨張弁61bの開度が小さくなるようにしているが、他の開度の組み合わせであってもよい。
【0083】
また、このような暖房停止室内熱交換器52bに対応する液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの制御時においても、暖房運転室内熱交換器52aに対応するガス側室内膨張弁52aについては、室内ユニット3a、3bの全てが暖房運転を行っている場合(
図3及び
図4参照)と同様に、開度が全開になるように制御している。また、暖房運転室内熱交換器52aに対応する液側室内膨張弁52aについても、室内ユニット3a、3bの全てが暖房運転を行っている場合(
図3及び
図4参照)と同様に、暖房運転室内熱交換器52aの液側端における冷媒の過冷却度SCrが目標過冷却度SCrtになるように、液側室内膨張弁51aの開度を制御している。
【0084】
このため、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bとは異なり、暖房運転室内熱交換器52aに圧縮機21から吐出された高圧の冷媒をそのまま流入させることができる(
図6の点I、H参照)。これにより、ここでは、暖房運転室内熱交換器52aについては、室内熱交換器52a、52bの全てが暖房運転を行う場合やガス側室内膨張弁51を設けない従来の構成と同様の暖房運転を行うことができる。
【0085】
(3)変形例1
上記実施形態の暖房運転を行わない室内ユニットが存在する場合の制御(
図5及び
図6参照)において、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを確実に抑えるためには、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度(ここでは、室内熱交換器52aの液側端における冷媒の温度Trlや室内熱交換器52aのガス側端における冷媒の温度Trg)を暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以下にすればよい。
【0086】
一方で、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgは、液側室内膨張弁51bと室外熱交換器52bとの間を流れる冷媒の圧力(
図6の点H’、G’参照)の影響を受けて変動する。このため、例えば、液側室内膨張弁51bと室外熱交換器52bとの間を流れる冷媒の圧力の相当飽和温度が暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Traよりもかなり高いような場合には、上記の液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの開度制御を行っても、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以下にすることができない場合がある。
【0087】
そこで、ここでは、
図6に示すように、制御部19が、暖房運転室内熱交換器52aと暖房停止室内熱交換器52bとが混在する場合に、上記の液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの開度制御とともに、室外膨張弁25の開度を、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trl、Trgが暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以下になるように制御している。具体的には、制御部19は、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trgが室内温度Tra以下になるように、室外膨張弁25の開度を制御する。尚、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度として温度Trgを使用しているが、温度Trlを使用してもよい。
【0088】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以下にすることができ、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを確実に抑えることができる。
【0089】
(4)変形例2
上記実施形態の暖房運転を行わない室内ユニットが存在する場合の制御(
図5及び
図6参照)において、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを確実に抑えるためには、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以下にすればよい。
【0090】
しかし、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgが暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Traよりもかなり低いと、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒が暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気(ここでは、室内空気)を冷却してしまい、暖房停止室内熱交換器52bからのコールドドラフトを発生させるおそれがある。そして、このような暖房停止室内熱交換器52bからのコールドドラフトの発生を抑えるためには、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以上にするほうが好ましい。
【0091】
一方で、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgは、液側室内膨張弁51bと室外熱交換器52bとの間を流れる冷媒の圧力(
図6の点H’、G’参照)の影響を受けて変動する。このため、例えば、液側室内膨張弁51bと室外熱交換器52bとの間を流れる冷媒の圧力の相当飽和温度が暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Traよりもかなり低いような場合には、上記の液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの開度制御を行っても、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以上にすることができない場合がある。
【0092】
そこで、ここでは、
図7に示すように、制御部19が、暖房運転室内熱交換器52aと暖房停止室内熱交換器52bとが混在する場合に、上記の液側室内膨張弁51b及びガス側室内膨張弁61bの開度制御とともに、室外膨張弁25の開度を、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trl、Trgが暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以上になるように制御している。具体的には、制御部19は、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trgが室内温度Tra以上になるように、室外膨張弁25の開度を制御する。尚、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度として温度Trgを使用しているが、温度Trlを使用してもよい。
【0093】
これにより、ここでは、暖房停止室内熱交換器52bを流れる冷媒の温度Trl、Trgを、暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Tra以上にすることができ、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロスを抑えるとともに、暖房停止室内熱交換器52bからのコールドドラフトを抑えることができる。尚、暖房停止室内熱交換器52bからの放熱ロス及びコールドドラフトの両方を確実に抑えるには、室外膨張弁25の開度を、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trl、Trgが暖房停止室内熱交換器52bの雰囲気温度Traと同じ温度になるように制御することが好ましい。具体的には、制御部19が、暖房停止室内熱交換器52bにおける冷媒の温度Trg又はTrlが室内温度Traになるように、室外膨張弁25の開度を制御するのである。
【0094】
(5)変形例3
上記実施形態及び変形例1、2の空気調和装置1(
図1参照)では、外気温度が低くかつ負荷が小さい条件で冷房運転が行われる場合がある(以下、「低外気低負荷冷房運転」とする)。
【0095】
このような低外気低負荷冷房運転時においては、圧縮機21の高低差圧が小さくなりすぎて、冷房運転を継続することができなくなるおそれがある。
【0096】
そこで、ここでは、制御部19が、冷房運転時に、ガス側室内膨張弁61a、61bの開度を、室内熱交換器52a、52bにおける冷媒の蒸発温度Treに基づいて制御している。具体的には、制御部19は、圧縮機21の高低圧差ΔPが所定値ΔPmを下回ったかどうかを判定する。ここで、高低圧差ΔPは、吐出圧力Pdから吸入圧力Psを差し引くことによって得られる。そして、制御部19は、圧縮機21の高低圧差ΔPが所定値ΔPmを下回っているものと判定した場合には、そして、制御部19は、冷媒の蒸発温度Treが目標蒸発温度Tretになるように、ガス側室内膨張弁61a、61bの開度を制御する。ここで、冷媒の蒸発温度Treとしては、室内熱交換器52a、52bの液側端における冷媒の温度Trlを使用する。この制御によって、
図8に示すように、ガス側室内膨張弁61a、61bにおける冷媒の減圧によって(
図8の点H、I参照)、圧縮機21の吸入圧力Psを低下させることができ(
図8の点A、J参照)、圧縮機21の高低圧差ΔPが確保されることになる。
【0097】
このように、ここでは、低外気低負荷冷房運転のような圧縮機21の高低差圧ΔPが小さくなりやすい運転条件においても、圧縮機21の高低差圧ΔPを確保して、冷房運転を安定的に行うことができる。
【0098】
(6)変形例4
上記実施形態及び変形例1〜3の空気調和装置1(
図1参照)では、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを閉止することによって、冷媒連絡管5、6側から室内ユニット3a、3bへの冷媒の流入を防ぐことができる。
【0099】
具体的には、
図9に示すように、室内ユニット3a、3bに冷媒の漏洩を検知する冷媒漏洩検知手段としての冷媒センサ94a、94bを設けておき、
図10に示すように、制御部19が、冷媒漏洩センサ94a、94bが冷媒の漏洩を検知した場合に(ステップST1)、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを閉止する(ステップST4)。ここで、ステップST4においては、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを同時に閉止することが好ましいが、順に閉止する場合には、液冷媒連絡管5側からの液冷媒の室内ユニット3a、3bへの流入防止を優先して、液側室内膨張弁51a、51bから閉止することが好ましい。また、冷媒漏洩検知手段としては、上記のように、漏洩した冷媒を直接的に検知する冷媒センサ94a、94bであってもよいし、また、室内熱交換器52a、52bにおける冷媒の温度(室内熱交温度Trl、Trg等)と室内熱交換器52a、52bの雰囲気温度(室内温度Tra等)との関係等から冷媒の漏洩の有無や量を推定するものであってもよい。また、冷媒センサ94a、94bの設置位置は、室内ユニット3a、3bに限定されるものではなく、室内ユニット3a、3bを操作するためのリモコンや空調室内等であってもよい。
【0100】
これにより、ここでは、冷媒漏洩検知手段が冷媒の漏洩を検知した場合に、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを閉止するようにしているため、冷媒連絡管5、6側から室内ユニット3a、3bへの冷媒の流入を防ぎ、室内における冷媒の濃度が上昇するのを抑えることができる。
【0101】
また、ステップST1において冷媒の漏洩を検知した際には、警報を発報してもよい(ステップST2)。
【0102】
また、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを閉止する前に、圧縮機21を停止させることで(ステップST3)、冷媒の圧力が過度に上昇するのを抑えるようにしてもよい。
【0103】
(7)変形例5
上記変形例4の空気調和装置1(
図9参照)では、冷媒漏洩検知手段94a、94bが冷媒の漏洩を検知した場合に液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを全閉にすると、冷媒の漏洩が発生していない室内熱交換器が液封状態になり、室内熱交換器における冷媒の圧力が過度に上昇するおそれがある。
【0104】
そこで、ここでは、
図11に示すように、室内熱交換器52a、52bにおける冷媒の圧力が所定の圧力まで上昇した際に開く圧力調整弁62a、62bをガス側室内膨張弁61a、61bをバイパスするように設けている。このため、ここでは、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを全閉にすることによって室内熱交換器52a、52bにおける冷媒の圧力が所定の圧力まで上昇した場合には、圧力調整弁62a、62bが開いて、ガス冷媒連絡管6側に冷媒を逃がすことができ、これにより、冷媒の漏洩が発生していない室内熱交換器を液封状態になるのを避けることができる。
【0105】
尚、圧力調整弁62a、62bは、ガス側室内膨張弁61a、61bではなく、液側室内膨張弁51a、51bをバイパスするように設けてもよし、また、圧力調整弁62a、62bを設ける代わりに、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bとして、液封防止機能付きの膨張弁を採用してもよい。
【0106】
(8)変形例6
上記実施形態及び変形例1〜5の空気調和装置(
図1、9、11参照)では、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bが室内ユニット3a、3bに設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、液側室内膨張弁51a、51b及びガス側室内膨張弁61a、61bを有する外付け膨張弁ユニット4a、4bを冷媒連絡管5、6の分岐管部5a、5b、6a、6bに設けるようにしてもよい。
【0107】
(9)他の変形例
上記実施形態及び変形例1〜6の空気調和装置(
図1、9、11参照)では、室外ユニット2に冷媒戻し管41及び冷媒冷却器45が設けられているが、これに限定されるものではなく、冷媒戻し管41及び冷媒冷却器45が設けられていなくてもよいし、冷媒戻し管41及び冷媒冷却器45以外の他の構成をさらに有していてもよい。