(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0011】
(1)モータ制御システムの全体構成
図1は、実施形態に係るモータ制御システム1の全体構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係るモータ制御システム1は、モータ100と、モータ制御装置200と、上位コントローラ300と、通信端末400と、サーバ500とを有する。
【0013】
モータ100は、モータ制御装置200により駆動される交流モータである。モータ100には、ベアリング140(
図2参照)が組み込まれる。モータ100はベアリング140を有するモータであればよく、例えば、誘導モータ、同期型リラクタンスモータ、表面磁石型同期モータ、又は内蔵磁石型同期モータであってもよい。モータ100は、モータ制御装置200と電力線を介して接続され、モータ制御装置200によって運転・停止及び運転時の回転速度が制御される。
【0014】
モータ制御装置200は、半導体スイッチのスイッチングにより、周波数、電流、電圧等の電力の変換を行う装置である。モータ制御装置200は、商用交流電源又は直流電源から可変周波数三相交流へと変換し、交流電力をモータ100に供給する。モータ制御装置200は、モータ100の回転数を任意に制御及び駆動するインバータであってもよい。モータ制御装置200は、モータ100としてのサーボモータの駆動制御に用いられるサーボコントローラ(サーボアンプ)であってもよい。モータ制御装置200は、操作ユニット220を有する。操作ユニット220は、モータ制御装置200の本体と接続され、ユーザがモータ制御装置200に対し各種の操作を行ったり、その内部状態を表示したりする。操作ユニット220は、取り外し可能なキーパッドであってもよい。
【0015】
上位コントローラ300は、モータ制御装置200に指令をすることにより、モータ制御装置200に所定の動作をさせる装置である。上位コントローラ300は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよい。上位コントローラ300は、あらかじめ設定されたプログラムを実行することによって、モータ制御装置200の設定値を変更し、モータ制御装置200を制御する。
【0016】
通信端末400は、モータ制御装置200及びサーバ500と通信が可能な端末である。実施形態において、通信端末400は、無線通信機能を有する可搬型の装置である。
図1において、通信端末400としてスマートフォンを例示している。通信端末400は、スマートフォン以外の端末、例えば、PDA端末、タブレット型端末、又はノート型PC等であってもよい。通信端末400は、モータ制御装置200と無線接続を確立し、モータ制御装置200に関する情報の表示及びモータ制御装置200に対する各種操作の指示を行うためのアプリケーションを実行する。その結果、通信端末400は、モータ制御装置200への各種操作の指示及び情報の表示を遠隔で行うことができる。
【0017】
サーバ500は、通信ネットワーク10に接続されるネットワーク装置である。サーバ500は、1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。通信ネットワーク10は、インターネットのような公衆通信回線であってもよい。実施形態において、通信ネットワーク10は、広域無線通信網を含む。サーバ500は、通信ネットワーク10を介してモータ制御装置200との通信を行う。サーバ500は、通信端末400を経由してモータ制御装置200と間接的に通信を行ってもよい。但し、サーバ500とモータ制御装置200との間の通信は、上位コントローラ300を経由しない。サーバ500は、多数のモータ制御装置200から情報を収集し、ビッグデータとして蓄積し、ビッグデータに対する機械学習を行ってもよい。
【0018】
(2)モータ制御システムのハードウェア構成
モータ制御システム1のハードウェア構成について説明する。
図2は、モータ100及びモータ制御装置200のハードウェア構成を示す図である。
図2において、モータ100の内部構造を模式的に示している。
【0019】
図2に示すように、モータ100は、固定子コイル110と、回転子120と、回転軸130と、ベアリング140とを有する。固定子コイル110は、モータ制御装置200から電力が供給されることによって回転磁界を形成し、回転子120と共に回転軸130を回転させる。回転軸130は、回転力を他の機械装置に伝える。なお、回転軸130に沿う方向の荷重はスラスト荷重と称され、回転軸130に直角な方向の荷重はラジアル荷重と称される。回転軸130は、一対のベアリング140によって回転可能に保持される。ベアリング140は、内輪と外輪の間に充填されたグリースによってボールが円滑に転がることによって摩擦が少ない状態で回転する。ベアリング140には、モータ100の外部から潤滑油が供給されてもよい。ベアリング140は交換可能な部品である。
【0020】
モータ制御装置200は、電力変換回路210と、操作ユニット220と、無線通信ユニット230と、プロセッサ240と、記憶部250とを有する。
【0021】
電力変換回路210は、半導体スイッチのスイッチングにより、電源20(商用交流電源又は直流電源)からの電力を可変周波数三相交流へと変換する。電力変換回路210は、交流を直流に変換するコンバータ部と、直流を平滑化する平滑回路部と、平滑化された直流を交流に変換するインバータ部とを含んでもよい。電力変換回路210の動作はプロセッサ240によって制御される。
【0022】
操作ユニット220は、ユーザからのモータ制御装置200への各種操作を受け付ける操作スイッチ221と、映像出力を行うディスプレイ222とを有する。操作スイッチ221がディスプレイ222と一体化されることによってタッチパネルディスプレイを構成してもよい。操作ユニット220は、音声出力を行うスピーカ223を有してもよい。
【0023】
無線通信ユニット230は、アンテナ及び通信用コントローラ等によって構成される。無線通信ユニット230は、通信端末400との無線接続を確立することによって、通信端末400との無線通信を行う。無線通信ユニット230は、Bluetooth(登録商標)又はWi−Fi(登録商標)等の近距離無線通信規格に従った無線通信を通信端末400と行う。無線通信ユニット230は、操作ユニット220に組み込まれていてもよい。
【0024】
プロセッサ240は、電力変換回路210と、操作ユニット220と、無線通信ユニット230と、記憶部250とに接続され、モータ制御装置200全体の動作を制御する。プロセッサ240は、MPU(Micro Processing Unit)であってもよい。プロセッサ240は、記憶部250に記憶されたプログラムを実行することによって各種の処理を行う。
【0025】
記憶部250は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240が行う処理に用いる情報とを記憶する。記憶部250は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリは、RAM(Random Access Memory)であってもよい。不揮発性メモリは、ROM(Read Only Memory)又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)であってよい。
【0026】
図3は、通信端末400及びサーバ500のハードウェア構成を示す図である。
【0027】
図3に示すように、通信端末400は、第1無線通信ユニット410と、第2無線通信ユニット420と、ユーザインターフェイス430と、記憶部440と、プロセッサ450とを有する。第1無線通信ユニット410は、通信ネットワーク10との無線接続を確立し、広域無線通信規格に従った無線通信を行う。第2無線通信ユニット420は、モータ制御装置200との無線接続を確立し、近距離無線通信規格に従った無線通信を行う。ユーザインターフェイス430は、ユーザからの各種操作を受け付ける操作スイッチと、映像出力を行うディスプレイと、音声出力を行うスピーカと、音声入力を行うマイクとを有してもよい。操作スイッチがディスプレイと一体化されることによってタッチパネルディスプレイを構成してもよい。記憶部440は、プロセッサ450によって実行されるプログラムと、プロセッサ450が行う処理に用いる情報とを記憶する。プロセッサ450は、記憶部440に記憶されたプログラムを実行することによって各種の処理を行う。
【0028】
サーバ500は、通信ユニット510と、記憶部520と、プロセッサ530とを有する。通信ユニット510は、通信ネットワーク10と接続される。記憶部520は、プロセッサ530によって実行されるプログラムと、プロセッサ530が行う処理に用いる情報とを記憶する。プロセッサ530は、記憶部520に記憶されたプログラムを実行することによって各種の処理を行う。
【0029】
(3)モータ制御システムの機能ブロック構成
次に、ベアリング140の寿命診断に関するモータ制御システム1の機能ブロック構成について説明する。
図4は、モータ制御システム1の機能ブロック構成を示す図である。
【0030】
図4に示すように、モータ制御システム1は、モータ制御装置200と、通信端末400と、第1サーバ500Aと、第2サーバ500Bと、第3サーバ500Cとを有する。第1サーバ500A、第2サーバ500B、及び第3サーバ500Cが個別のサーバである一例について説明するが、2以上のサーバを1つにまとめてもよい。
【0031】
モータ制御装置200は、運転時間積算部241と、残寿命時間計算部242と、残寿命時間調整部243と、比較部244と、警告出力部246と、使用条件情報記憶部251と、調整情報記憶部252と、履歴情報記憶部253と、閾値記憶部254とを有する。
【0032】
通信端末400は、寿命時間設定部451と、第1ダウンロード部452と、アップロード部453と、第2ダウンロード部454とを有する。なお、寿命時間設定部451が通信端末451に設けられる一例を説明するが、寿命時間設定部451がモータ制御装置200に設けられてもよい。
【0033】
第1サーバ500Aは、第1データベース531を有する。第2サーバ500Bは、第2データベース532と、更新部533とを有する。第3サーバ500Cは、第3データベース534を有する。
【0034】
モータ制御装置200において、運転時間積算部241は、モータ100の運転時間を積算し、積算運転時間tを出力する。運転時間積算部241は、モータ100が設置されて運用が開始される際に運転時間の積算を開始する。運転時間積算部241は、モータ100の運転を停止している間は運転時間の積算を停止してもよい。運転時間積算部241は、モータ100のベアリング140が交換された際に、積算運転時間tをリセットしてもよい。
【0035】
通信端末400において、寿命時間設定部451は、例えばモータ100が設置されて運用が開始される際に、ベアリング140固有の寿命時間T'を設定する。寿命時間設定部451は、ベアリング140の仕様によって定められた基準寿命時間Tと、モータ100の使用条件を表す使用条件情報Lとに基づいて、ベアリング140固有の寿命時間T'を設定する。基準寿命時間Tは、ベアリング140の定格寿命時間(いわゆる、カタログ値)であり、ベアリング140の理論上の寿命時間である。使用条件情報Lは、モータ制御装置200に関するパラメータ及びモータ100に関するパラメータのうち少なくとも1つを含む。かかるパラメータとしては、スラスト荷重、ラジアル荷重、荷重ポイント、ベアリングサイズ、グリース種類、ベアリング間隔(ベアリングスパン)、モータ回転速度、モータトルク等を用いることができる。
【0036】
寿命時間設定部451は、使用条件情報記憶部251から基準寿命時間T及び使用条件情報Lを取得してもよい。使用条件情報記憶部251は、モータ100の情報、モータ制御装置200の情報、及び操作端末220に対してユーザが入力した情報を予め記憶している。或いは、寿命時間設定部451は、通信端末400に対してユーザが入力した情報に基づいて、基準寿命時間T及び使用条件情報Lを取得してもよい。寿命時間設定部451は、基準寿命時間Tを第1データベース531から取得してもよい。
【0037】
第1サーバ500Aにおいて、第1データベース531は、基準寿命時間T及び使用条件情報Lと、寿命時間T'との対応関係を表す寿命時間設定情報C(L)を格納する。寿命時間設定情報C(L)は、使用条件情報Lに基づいて寿命時間T'を特定するための計算式又はテーブルである。寿命時間設定部451は、少なくとも使用条件情報Lと寿命時間設定情報C(L)とに基づいて特定された寿命時間T'を設定する。寿命時間設定情報C(L)は、スラスト荷重及び/又はラジアル荷重が大きいほど、基準寿命時間Tに対して寿命時間T'を大きく減らすように構成されてもよい。寿命時間設定情報C(L)は、モータ回転速度が速い及び/又はモータトルクが大きいほど、基準寿命時間Tに対して寿命時間T'を大きく減らすように構成されてもよい。寿命時間T'は、例えば、下記の式(1)により計算することができる。
【0039】
寿命時間設定部451は、第1サーバ500Aから寿命時間設定情報C(L)を取得し、第1サーバ500Aから取得した寿命時間設定情報C(L)と、使用条件情報Lとに基づいて、寿命時間T'を特定してもよい。この場合、寿命時間設定部451は、モータ100のIDを第1サーバ500Aに提供することにより、第1サーバ500Aから寿命時間設定情報C(L)を取得してもよい。
【0040】
或いは、寿命時間設定部451が寿命時間T'を特定せずに、少なくとも使用条件情報Lと寿命時間設定情報C(L)とを用いて第1サーバ500Aが寿命時間T'を特定してもよい。この場合、寿命時間設定部451は、基準寿命時間T及び使用条件情報Lを第1サーバ500Aに提供することによって、第1サーバ500Aが特定した寿命時間T'を取得する。
【0041】
モータ制御装置200において、残寿命時間計算部242は、寿命時間設定部451によって設定された寿命時間T'と、運転時間積算部241が出力する積算運転時間tとに基づいて、ベアリング140の残寿命時間ΔTを計算する。残寿命時間計算部242は、例えば、下記の式(2)に示すように、寿命時間T'から積算運転時間tを減算することによって残寿命時間ΔTを計算する。
【0043】
モータ制御装置200において、寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果に応じて、残寿命時間ΔTを、ベアリング140固有の状態に応じた値に調整する。言い換えると、寿命時間調整部243は、モータ100の運用開始後に、運用中のベアリング140の状態(劣化状態)に応じて残寿命時間ΔTを調整する。寿命時間調整部243は、寿命時間設定部451によって設定された寿命時間T'を調整することによって、間接的に残寿命時間ΔTを調整してもよい。
【0044】
寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果として、ベアリング140の点検によって得られたベアリング関連情報Xに基づいて、寿命時間T'をベアリング140固有の値に調整する第1調整部243aを有してもよい。ベアリング140の点検がユーザによって定期的に行われる場合、ユーザは、例えば操作ユニット220に対してベアリング関連情報Xを入力する。寿命時間調整部243は、ユーザによって入力されたベアリング関連情報Xを取得する。ベアリング関連情報Xは、例えば、油面(オイルゲージ)、油量及び流れ(オイルサイト)、油漏れ、グリース漏れ、オイルリング正常回転、ベアリング音、温度、湿度等である。第1調整部243aは、ベアリング140の点検によって得られたベアリング関連情報Xと、調整後の寿命時間T''との対応関係を表す寿命時間調整情報S(X)を用いて、残寿命時間ΔTを調整する。寿命時間調整情報S(X)は、ベアリング関連情報Xに基づいて調整後の寿命時間T''を特定するための計算式又はテーブルである。寿命時間調整情報S(X)は、例えばベアリング関連情報Xにより示されるベアリング劣化度合いが高いほど、寿命時間T'を大きく減らすように構成されてもよい。調整後の寿命時間T''は、例えば、下記の式(3)により計算される。
【0045】
T''= T'×S(X) ・・・(3)
【0046】
調整後の残寿命時間ΔT'は、例えば、下記の式(4)により計算される。
【0048】
また、寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果として、モータ制御装置200の運転状態を表す波形に基づいて、寿命時間T'をベアリング140固有の値に調整する第2調整部243bを有してもよい。モータ制御装置200の運転状態とは、例えば周波数、トルク、電流等である。モータ制御装置200の運転状態を表す波形は、モータ制御装置200の電力変換回路210に設けられたセンサ(例えば、電流センサ、電圧センサ等)の検出値に基づいて得られる。第2調整部243bは、モータ制御装置200の運転状態を表す波形Aと、調整後の寿命時間T''との対応関係を表す寿命時間調整情報K(A)を用いて、残寿命時間ΔTを調整する。寿命時間調整情報K(A)は、モータ制御装置200の運転状態を表す波形Aに基づいて調整後の寿命時間T''を特定するための計算式又はテーブルである。寿命時間調整情報K(A)は、例えばモータ制御装置200の運転状態を表す波形の乱れ(すなわち、リプル成分)が大きいほど、寿命時間T'を大きく減らすように構成されてもよい。調整後の寿命時間T''は上記の式(3)により計算される。また、残寿命時間ΔT'は上記の式(4)により計算される。
【0049】
寿命時間調整部243が使用する寿命時間調整情報(S(X)、K(A))は、調整情報記憶部252に記憶されている。調整情報記憶部252に記憶された寿命時間調整情報は、第2サーバ500Bによって通信端末400を介して更新可能であってもよい。第2サーバ500Bの第2データベース532は、モータ100の運転結果と、ベアリング140固有の状態に応じた値との対応関係を表す寿命時間調整情報(S(X)、K(A))を格納する。通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、第2サーバ500Bに格納された寿命時間調整情報がモータ制御装置200の寿命時間調整部243が使用しているものから更新されている場合、寿命時間調整部243の寿命時間調整情報を、第2サーバ500Bに格納されたものに更新してもよい。具体的には、通信端末400の第1ダウンロード部452は、調整情報記憶部252に記憶された寿命時間調整情報のバージョン情報と第2データベース532に記憶された寿命時間調整情報のバージョン情報とを比較し、バージョン情報が互いに異なる場合には、第2データベース532からダウンロードした寿命時間調整情報によって調整情報記憶部252に記憶された寿命時間調整情報を上書きしてもよい。その結果、寿命時間調整部243は、更新された寿命時間調整情報に基づいて残寿命時間ΔTを調整する。
【0050】
さらに、第2サーバ500Bの第2データベース532は、機械学習によって更新されてもよい。通信端末400のアップロード部453は、モータ制御装置200と通信した際に、モータ制御装置200の履歴情報記憶部253に蓄積されたモータ100の運転結果を表す履歴情報を、第2サーバ500Bにアップロードする。履歴情報記憶部253は、モータ100の運転結果を表す履歴情報がアップロードされるまで履歴情報を蓄積する。第2サーバ500Bの更新部533は、アップロードされた履歴情報に基づいて、強化学習等の学習(例えば、知識ベース、統計ベース、ニューラルネットベース)によって、第2データベース532に記憶された寿命時間調整情報を更新する。
【0051】
モータ制御装置200において、比較部244は、残寿命時間調整部243によって調整された残寿命時間ΔT'を閾値αと比較する。閾値αは、ゼロであってもよい。閾値αがゼロである場合、比較部244は、ベアリング140の寿命が尽きたか否かを判定することになる。但し、ベアリング140の寿命が尽きると、ベアリング140の故障によってモータ100の動作不良を引き起こす。このため、閾値αは、ゼロよりも大きい値であることが好ましい。実施形態において、閾値記憶部254は、モータ100の種類及び用途のうち少なくとも1つに基づいて設定された閾値αを記憶する。比較部244は、残寿命時間ΔT'を、閾値記憶部254に記憶された閾値αと比較する。
【0052】
閾値記憶部254に記憶された閾値αは、第3サーバ500Cによって通信端末400を介して更新可能であってもよい。第3サーバ500Cの第3データベース534は、モータ100の種類及び用途に応じた閾値αを格納する。通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、第3サーバ500Cに格納された閾値がモータ制御装置200の閾値記憶部254が記憶しているものから更新されている場合、閾値記憶部254が記憶している閾値αを、第3サーバ500Cに格納されたものに更新する。具体的には、通信端末400の第2ダウンロード部454は、閾値記憶部254に記憶された閾値αのバージョン情報と第3データベース534に記憶された閾値のバージョン情報とを比較し、バージョン情報が互いに異なる場合には、第3データベース534からダウンロードした閾値によって調整情報記憶部254に記憶された閾値αを上書きする。
【0053】
モータ制御装置200において、警告出力部246は、残寿命時間ΔT'が閾値α以下である場合に、警告情報を出力する。警告出力部246は、操作ユニット220のディスプレイ222によって警告情報を映像として出力してもよい。警告出力部246は、操作ユニット220のスピーカ223によって警告情報を音声として出力してもよい。警告出力部246は、無線通信ユニット230を介して警告情報を通信端末400に出力してもよい。警告情報の内容としては、ユーザがベアリング140の交換が必要であることを認識可能なものであればよい。警告情報は、ベアリング140の残寿命時間ΔTを示す情報を含んでもよい。
【0054】
このように、モータ100の運転時間を積算し、ベアリング140の寿命時間と積算運転時間とに基づいてベアリング140の残寿命時間を計算することによって、ベアリング140の交換時期を特定することができる。そして、残寿命時間が閾値以下である場合に、警告情報を出力することによって、ユーザがベアリング140の交換時期を認識することができる。
【0055】
(4)ベアリング寿命診断フロー
図5は、モータ制御システム1におけるベアリング寿命診断フローを示す図である。
【0056】
図5に示すように、ステップS11において、通信端末400の寿命時間設定部451は、例えばモータ100が設置されて運用が開始される際に、ベアリング140固有の寿命時間T'を設定する。上述したように、寿命時間設定部451は、ベアリング140の仕様によって定められた基準寿命時間Tと、モータ100の使用条件を表す使用条件情報Lとに基づいて、ベアリング140固有の寿命時間T'を設定する。
【0057】
ステップS12において、モータ制御装置200の残寿命時間計算部242は、寿命時間設定部451によって設定された寿命時間T'と、運転時間積算部241が出力する積算運転時間tとに基づいて、ベアリング140の残寿命時間ΔTを計算する。
【0058】
ステップS13において、モータ制御装置200の寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果に応じて、残寿命時間ΔTを、ベアリング140固有の状態に応じた値に調整する。言い換えると、寿命時間調整部243は、モータ100の運用開始後に、運用中のベアリング140の状態に応じて残寿命時間ΔTを調整する。
【0059】
ステップS14において、モータ制御装置200の比較部244は、残寿命時間調整部243によって調整された残寿命時間ΔT'を閾値αと比較する。残寿命時間ΔT'が閾値α以下でない場合(ステップS14:No)、処理がステップS12に戻る。
【0060】
一方で、残寿命時間ΔT'が閾値α以下である場合(ステップS14:Yes)、ステップS15において、警告出力部246は、警告情報を出力する。
【0061】
(5)実施形態のまとめ
モータ制御装置200は、モータ100の運転時間を積算する運転時間積算部241と、ベアリング140の寿命時間T'と、積算運転時間tとに基づいて、ベアリング140の残寿命時間ΔTを計算する残寿命時間計算部242と、残寿命時間ΔT'が閾値α以下である場合に、警告情報を出力する警告出力部246とを有する。かかる構成によれば、モータ制御装置200がモータ100の運転時間を積算し、ベアリング140の寿命時間と積算運転時間とに基づいてベアリング140の残寿命時間ΔTを計算することによって、ベアリング140の交換時期を特定することができる。そして、残寿命時間ΔT'が閾値α以下である場合に、警告情報を出力することによって、ユーザがベアリング140の交換時期を認識することができる。モータ故障が発生すると、生産ラインが止まるなどにより、生産効率の低下、タクトタイムの減少等、生産性において甚大な被害が発生する。実施形態によれば、ベアリング140の交換時期を特定できるため、かかる損害の発生を回避できる。
【0062】
実施形態において、モータ制御システム1は、ベアリング140の仕様によって定められた基準寿命時間Tと、モータ100の使用条件を表す使用条件情報Lとに基づいて、モータ100に組み込まれたベアリング140固有の寿命時間T'を設定する寿命時間設定部451を更に有してもよい。かかる構成によれば、ベアリング140の使用条件も考慮してベアリング140の寿命時間T'を計算することによって、より適切な寿命時間T'を用いて残寿命時間ΔTを計算することができる。この際、使用条件によって残寿命時間ΔTを直接減少させるのではなく、ベアリング140の寿命時間T'自体を減少させることにより、使用条件に伴うベアリング140の耐久性を寿命時間T'に反映させることで、通常使用に伴う経年劣化と、使用条件固有の劣化とを区別した正確な寿命計算が可能となる。
【0063】
実施形態において、モータ制御システム1は、基準寿命時間T及び使用条件情報Lと、寿命時間T'との対応関係を表す寿命時間設定情報C(L)が格納された第1データベース531を有する第1サーバ500Aを更に有してもよい。寿命時間設定部451は、少なくとも使用条件情報Lと寿命時間設定情報C(L)とに基づいて特定された寿命時間T'を設定してもよい。かかる構成によれば、第1サーバ500Aが有するデータベースを利用して、より適切な寿命時間T'を用いて残寿命時間ΔTを計算することができる。また、モータ制御装置200自体に様々な対応関係を記憶させる必要がなく、また、第1サーバ500A側のデータベースを更新するだけで、様々なモータ100に対応した適切なベアリング寿命診断を行うことができる。
【0064】
実施形態において、寿命時間設定部451は、第1サーバ500Aから取得した寿命時間設定情報C(L)と、使用条件情報Lとに基づいて寿命時間T'を特定することにより、寿命時間T'を設定してもよい。かかる構成によれば、寿命時間設定部451は、通信端末400に配置されるため、使用条件情報Lを第1サーバ500Aに提供しなくても、第1サーバ500Aから取得した寿命時間設定情報C(L)に基づいて寿命時間T'を特定することができるため、第1サーバ500Aとの通信量を削減することができる。
【0065】
実施形態において、寿命時間設定部451は、少なくとも使用条件情報Lと寿命時間設定情報C(L)とを用いて第1サーバ500Aが特定した寿命時間T'自体を取得することにより、寿命時間T'を設定してもよい。かかる構成によれば、寿命時間設定部451は、第1サーバ500Aが特定した寿命時間T'を取得するため、寿命時間設定部451が寿命時間T'を特定する場合に比べて、寿命時間設定部451の処理負荷を削減することができる。
【0066】
実施形態において、モータ制御装置200は、積算運転時間tとは別に、モータ100の運転結果に応じて、残寿命時間ΔTを、ベアリング140固有の状態に応じた値に調整する寿命時間調整部243を更に有してもよい。かかる構成によれば、寿命時間T'がオンラインで(すなわち、モータ制御装置200の運用開始後に)調整されるので、ベアリング個別の劣化状態に応じて、寿命診断を正確に行うことが出来る。
【0067】
実施形態において、モータ制御システム1は、モータ100の運転結果と、ベアリング140固有の状態に応じた値との対応関係を表す寿命時間調整情報が格納された第2データベース532を有する第2サーバ500Bを更に有してもよい。通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、第2サーバ500Bに格納された寿命時間調整情報がモータ制御装置200の寿命時間調整部243が使用しているものから更新されている場合、寿命時間調整部243の寿命時間調整情報を、第2サーバ500Bに格納されたものに更新してもよい。寿命時間調整部243は、更新された寿命時間調整情報に基づいて、残寿命時間ΔTを調整してもよい。かかる構成によれば、第2サーバ500Bが有するデータベースを利用して、より適切に残寿命時間ΔTを調整することができる。また、第2サーバ500B側のデータベースが更新された場合に、通信端末400を介して、モータ制御装置200で使用する寿命時間調整情報を更新することができる。よって、モータ制御装置200が第2サーバ500Bとの通信手段を持たない場合でも、通信端末400を介して、モータ制御装置200が使用する寿命時間調整情報を新しい状態に更新することができる。
【0068】
実施形態において、通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、モータ制御装置200に蓄積されたモータ100の運転結果を表す履歴情報を、第2サーバ500Bにアップロードしてもよい。第2サーバ500Bは、履歴情報に基づいて、寿命時間調整情報を更新する更新部533を更に有してもよい。かかる構成によれば、第2サーバ500Bが、モータ100の運転結果を表す履歴情報に基づいて寿命時間調整情報を更新することによって、履歴情報に基づく学習を行うことができるため、寿命時間調整情報を適切に更新することができる。
【0069】
実施形態において、寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果として、ベアリング140の点検によって得られたベアリング関連情報Xに基づいて、寿命時間T'をベアリング140固有の値に調整する第1調整部243aを有してもよい。かかる構成によれば、モータ制御装置200の運用開始後にベアリング140の点検が行われた場合に、点検の結果に基づいて残寿命時間ΔTを適切に調整することができる。
【0070】
実施形態において、寿命時間調整部243は、モータ100の運転結果として、モータ制御装置200の運転状態を表す波形Aに基づいて、寿命時間T'をベアリング140固有の値に調整する第2調整部243bを有してもよい。かかる構成によれば、モータ制御装置200の運転状態を示す波形Aに基づいて残寿命時間ΔTを適切に調整することができる。
【0071】
実施形態において、モータ制御装置200は、モータ100の種類及び用途のうち少なくとも1つに基づいて設定された閾値αを記憶する閾値記憶部254を有する。モータ100の種類及び用途のうち少なくとも1つに基づいて設定された閾値αを用いることによって、ベアリング140の寿命時間が尽きる前に警告情報をどの程度前倒しで出力するか(すなわち、安全マージン)をモータ100ごとに適切に設定することができる。
【0072】
実施形態において、モータ制御システム1は、モータの種類及び用途に応じた閾値が格納された第3データベース534を有する第3サーバ500Cを更に有する。通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、第3サーバ500Cに格納された閾値がモータ制御装置200の閾値記憶部254が記憶しているものから更新されている場合、閾値記憶部254が記憶している閾値を、第3サーバ500Cに格納されたものに更新する。第3サーバ500Cが有するデータベースを利用して、より適切に閾値を設定することができる。また、第3サーバ500C側のデータベースが更新された場合に、通信端末400を介して、モータ制御装置200で使用する閾値を更新することができる。よって、モータ制御装置200が第3サーバ500Cとの通信手段を持たない場合でも、通信端末400を介して、モータ制御装置200が使用する閾値を新しい状態に更新することができる。
【0073】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0074】
実施形態において、通信端末400として可搬型の端末を例示した。しかしながら、通信端末400は、モータ制御装置200に組み込まれる組込型の端末(例えば、カード型端末、チップ型端末)であってもよい。この場合、通信端末400の各機能ブロック(寿命時間設定部451、第1ダウンロード部452、アップロード部453、及び第2ダウンロード部454)はモータ制御装置200に設けられる。
【0075】
また、実施形態において、寿命時間調整部243がモータ100の運転結果に応じて残寿命時間ΔTを調整する一例を説明した。しかしながら、寿命時間調整部243による残寿命時間ΔTの調整を省略してもよい。この場合、比較部244は、残寿命時間計算部242によって計算された残寿命時間ΔTを閾値αと比較する。
【0076】
また、実施形態において、第1サーバ500A〜第3サーバ500Cの3つのサーバを用いる一例を説明したが、第1サーバ500A〜第3サーバ500Cの機能を1つのサーバに持たせてもよい。この場合、当該1つのサーバは、第1データベース531と、第2データベース532と、更新部533と、第3データベース534とを有する。
【0077】
また、実施形態において、第2データベース532に格納された寿命時間調整情報を機械学習によって更新する一例を説明した。しかしながら、寿命時間調整情報の更新と同様な方法によって、第1データベース531に格納された寿命時間設定情報C(L)及び/又は第3データベース534に格納された閾値αを機械学習によって更新してもよい。
【0078】
ここで、
図6を用いて、第3データベース534に格納された閾値αを機械学習によって更新するための構成について説明する。
図6に示すように、モータ制御装置200は、モータ100の運転結果を表す履歴情報を蓄積する第2履歴情報記憶部255を有する。また、通信端末400は、モータ制御装置200と通信した際に、モータ制御装置200の第2履歴情報記憶部255に蓄積されたモータ100の運転結果を表す履歴情報を、第3サーバ500Cにアップロードする第2アップロード部455を有する。第3サーバ500Cは、アップロードされた履歴情報に基づいて、強化学習等の学習(例えば、知識ベース、統計ベース、ニューラルネットベース)によって、第3データベース534に記憶された閾値αを更新する第2更新部535を有する。具体的には、第2更新部535は、モータ100の種類及び用途毎に、不具合が発生した際の履歴を収集及び学習し、学習結果に応じて閾値αを更新する。不具合が発生した際の履歴としては、例えば、不具合発生時(その前後のタイミングも含む)における「温度、湿度等の環境情報」及び/又は「速度、電流、トルクの値及び/又は指令等の運転条件」と、その際の残寿命時間ΔTとを用いることができる。
モータ制御装置(200)は、モータの運転時間を積算する運転時間積算部(241)と、モータに組み込まれたベアリングの寿命時間と、モータの積算運転時間とに基づいて、ベアリング(140)の残寿命時間(ΔT)を計算する残寿命時間計算部(242)と、残寿命時間(ΔT)が閾値(α)以下である場合に、警告情報を出力する警告出力部(246)とを有する。