(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の外部電極と前記第2の外部電極とは、前記素子本体の中心軸に対して軸対称の位置に設けられていることを特徴としている請求項2または請求項3記載の圧電素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の圧電素子では、内部電極が一律に側面に露出するため、外部電極と接続すべきでない内部電極の露出部分には絶縁物を形成する必要があり、複雑な製造工程を必要とする。
【0006】
これに対し、圧電素子を円板状にして活性領域と不活性領域との間に局所的な応力が集中するのを防止することも考えられる。例えば、圧電トランスであれば、圧電共振子の形状を、穴開き円板、円環、円筒など、円形状としたものが知られている(特許文献3、4参照)。この場合には内部電極に角部が存在しないことから応力の集中を防止できる。しかしながら、積層素子には、内部電極を1層おきに接続する外部電極が必要であり、外部電極を形成するためにはそのための位置をそろえて圧電素子を固定しなければならない。例えばスクリーン印刷により外部電極を印刷する場合、圧電素子のθ方向(中心軸回りの回転位置)をそろえ、印刷箇所がスクリーンマスクに当たるように圧電素子を固定する。
【0007】
また、圧電アクチュエータ用に、リード線で複数の圧電素子間の外部電極を接続できるように各圧電素子を配置し、多段に積むのは困難である。これを避けるために、圧電素子を円環状に形成し、貫通孔にシャフトを通して位置合わせをし易くする方法も考えられるが、各圧電素子に外部電極を設けてこれらを接続するのは手間がかかる。
【0008】
また、圧電素子を積み重ね複数の圧電素子の外部電極同士を接続するときも外部電極の位置をそろえる必要がある。従来のサイコロ状の圧電素子の外部電極位置をそろえることは容易であったが、円環型の場合、そろえるのに手間がかかる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、局所的に応力が集中しにくく、作製するための作業を容易化できる圧電素子および圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電素子は、圧電アクチュエータ用または圧電トランス用の圧電素子であって、圧電体層および前記圧電体層を介して交互に積層された内部電極を有し、環状に形成された素子本体と、前記素子本体の側面に設けられ、前記内部電極と接続された外部電極と、を備え、前記素子本体の中央に設けられた貫通孔は、断面が正円を除く形状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の圧電素子は、環状に形成されているため局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難くなる。そして、貫通孔の断面が正円を除く形状に形成されているため、貫通孔を用いて回転位置を合わせることができ、外部電極を形成するために圧電素子の位置を正確かつ容易に合わせることができる。
【0012】
(2)また、本発明の圧電素子は、前記内部電極として、交互に積層された第1および第2の内部電極を備え、前記外部電極として、前記第1の内部電極と接続された第1の外部電極と、前記第2の内部電極と接続された第2の外部電極とを備え、圧電アクチュエータ用に伸縮方向に積み重ねられて用いられることを特徴としている。これにより、複数の圧電素子をスタックするときに各外部電極の位置を正確かつ容易にそろえることができる。
【0013】
(3)また、本発明の圧電素子は、前記内部電極として、少なくとも交互に積層された入力用の第1および第2の内部電極を備え、前記外部電極として、前記第1の内部電極と接続された第1の外部電極と、前記第2の内部電極と接続された第2の外部電極と、出力用の外部電極と、を備え、圧電トランス用として用いられることを特徴としている。これにより、環状に形成されているため局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難くなる。また、各素子の外部電極の形成時の作業を容易化できる。
【0014】
(4)また、本発明の圧電素子は、前記貫通孔が、2回対称以下の断面形状で形成されていることを特徴としている。これにより、目視等で外部電極の位置を合わせる必要が無くなり、特に貫通孔を用いて回転位置を合わせるのが容易になる。
【0015】
(5)また、本発明の圧電素子は、前記第1の外部電極と前記第2の外部電極とが、前記素子本体の中心軸に対して軸対称の位置に設けられていることを特徴としている。これにより、圧電素子の主面の向きを裏返して用いても、外部電極位置が変わらないため、作業が容易になる。
【0016】
(6)また、本発明の圧電素子は、前記貫通孔が、角のない断面形状で形成されていることを特徴としている。これにより、局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難くなる。
【0017】
(7)また、本発明の圧電素子は、前記貫通孔が、長円の断面形状で形成されていることを特徴としている。これにより、各素子の外部電極の形成時や複数素子のスタック時に貫通孔で位置合わせできるため、作業が容易になる。また、製造が容易であるとともに貫通孔付近の局所的な応力を防止できる。
【0018】
(8)また、本発明の圧電アクチュエータは、上記の圧電素子を略同一中心軸上に伸縮方向に複数個積み重ねて形成された圧電アクチュエータ本体を備えることを特徴としている。これにより、圧電アクチュエータは円筒状に形成されているため局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難くなる。また、製造上の作業負担が軽減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、環状に形成されているため局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難くなる。また、圧電素子の外部電極の形成時の作業が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
[第1の実施形態]
(圧電素子の構成)
図1(a)、(b)は、圧電素子110を示す平断面図、斜視断面図、
図1(c)は、シャフト120を示す平断面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す平面1bに沿った断面図であり、
図1(a)は、
図1(b)に示す平面1aに沿った断面図である(後述の
図3〜7(a)、(b)についても同様)。
【0023】
圧電素子110は、素子本体111および外部電極115、116により構成されている。素子本体111は、圧電体層112とこれを介して交互に積層された第1および第2の内部電極層113、114とが積層されたものである。素子本体111は、積層方向に貫通した中心軸C1上の貫通孔119を有し、環状に形成されている。外周は円形であり、内部電極113、114の外周も概略円形に形成されているため、素子本体111は、局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難い。
【0024】
一方、貫通孔119は、長円の断面形状に形成されている。長円とは、正円を平行移動させた軌跡の形状をいう。このように断面が正円を除く形状に形成されていることで、貫通孔119で圧電素子110の移動を拘束し、中心軸C1に垂直な方向について圧電素子110を固定できる。また、中心軸C1回りの移動を固定できる。その結果、貫通孔119を用いて回転位置を合わせることができ、外部電極115、116を形成するために正確かつ容易に圧電素子110の位置を合わせることができる。また、複数の圧電素子110をスタックするときに各外部電極115、116の位置を正確かつ容易にそろえることができる。
【0025】
圧電素子110は、圧電アクチュエータ用に伸縮方向(積層方向)に積み重ねられて用いられる。貫通孔119の形状は、これを通すシャフト120によって素子の外部電極の位置が決められるものであれば効果が得られる。したがって、例えば、長円以外に円に周り止めの凹形状や正方形の断面形状を有するものでもよい。ただし、孔断面が正方形など3回対称以上の場合、目視等によって、外部電極の位置を合わせる必要が生じるため、孔断面は2回対称以下の形状に形成されていることが好ましい。また、貫通孔119の断面は、角のない形状に形成されていることが好ましい。孔断面を角のない形状にすることで角の部分に局所的な応力が集中するのを防止できる。
【0026】
特に、貫通孔119は、
図1に示すように長円の断面形状で形成されていることが好ましい。これにより、各素子の外部電極の形成時や複数素子のスタック時に貫通孔で位置合わせできるため、作業が容易になる。また、製造が容易であるとともに貫通孔119付近の局所的な応力を防止できる。
【0027】
第1および第2の外部電極115、116は、素子本体111の側面の所定位置に設けられている。第1の外部電極115は、第1の内部電極113とその電極取り出し部の位置で接続されている。また、第2の外部電極116は、第2の内部電極114とその電極取り出し部の位置で接続されている。
図1に示す例では、中心軸C1を通る平面1bに対して交わる位置に、第1および第2の外部電極115、116が設けられている。
【0028】
このように、第1の外部電極115と第2の外部電極116とは、素子本体111の中心軸C1に対して軸対称の位置に設けられていることが好ましい。これにより、圧電素子110の主面の向きを裏返して用いても、外部電極位置が変わらず、作業が容易になる。
【0029】
シャフト120は、貫通孔119に通して外部電極の位置合わせに用いられる。シャフト120は、貫通孔119の内側面に沿った形状で形成されており、
図1(c)に示すように長円の断面形状を有している。
【0030】
(圧電素子の製造方法)
上記のように構成された圧電素子110の製造方法を説明する。まず、グリーンシートに所定の内部電極を印刷して所定枚数積層後、断面四角形状の矩形筒形状の積層体に加工する。外形は切断で加工でき、貫通孔はエンドミルを使用して加工できる。これを焼成し、矩形筒形状の一体焼成型の圧電素子を生成できる。内部電極113の形状は、素子断面の環形状に沿った環形状に、外部電極に接続するための電極取り出し部を設けた形状である。圧電体層112と内部電極113とを積層し、両主面側の端部に内部電極113の無い層を設ける。
【0031】
そして、素子本体111の外側面の所定箇所に外部電極115、116を形成する。貫通孔119の内形に合う外形を有する棒を通して素子本体111を固定することで外部電極115、116の印刷箇所を位置合わせし、スクリーン印刷で電極ペーストを塗布し、焼き付けて外部電極115、116を形成する。このようにして、外部電極の形成工程が容易で、かつ、スタックが容易な圧電アクチュエータを作製できる。
【0032】
(圧電アクチュエータの構成)
図2は、圧電アクチュエータ100の一形態を示す断面図である。
図2に示すように、圧電アクチュエータ100は、圧電アクチュエータ本体105、シャフト121、スペーサ122、123、突起124、リード線131、132、ハンダ135、136、固定部150および筺体180を備えている。
【0033】
圧電アクチュエータ本体105は、複数の同一環形状に形成された圧電素子110を略同一中心軸C1上に伸縮方向に積み重ねることで、円筒状に形成されている。複数の圧電素子110を積み重ねることにより、圧電アクチュエータ100を構成して大きな変位を得ることができる。これにより、圧電アクチュエータ100は円筒状に形成されているため局所的に応力が集中せず、破壊が生じ難い。
【0034】
貫通孔119の内側面が共通の面上に位置合わせされており、各外部電極115、116は、位置合わせされ、リード線131、132とハンダ135、136により接続されている。シャフト121は、貫通孔119の内側面に沿った形状(長円の断面形状)で形成されており、貫通孔119に挿入することで外部電極115、116の位置合わせが容易になる。シャフト121は、積み重ねられた複数の圧電素子110の中央の貫通孔119に挿入されており、圧電アクチュエータ本体105の軸を固定している。貫通孔119にシャフト121が挿入されることで、圧電素子110のスタック(積み重ね)の際にその回転位置を容易に合わせられ、圧電アクチュエータ100の製造が容易になる。
【0035】
固定部150は、圧電アクチュエータ本体105の一端を固定している。また、固定部150は、シャフト121と結合し、シャフト121の位置を固定している。スペーサ122、123は、圧電アクチュエータ本体105の両端のそれぞれに設けられている。シャフト121は、わずかに圧電アクチュエータ本体105より短く、圧電アクチュエータ本体105の伸縮を阻害しないように設計されている。
【0036】
突起124は、変位を外部に伝える半球状の部材である。筺体180は、例えば金属製であり、圧電アクチュエータ本体105等を覆っている。リード線131、132は、それぞれハンダ135、136により各圧電素子110の外部電極115、116を接続し、外部との接続が取られている。
【0037】
(圧電アクチュエータの製造方法)
このように構成された圧電アクチュエータ100の製造方法を説明する。上記のように製造された複数個の圧電素子110を用いる。
【0038】
環形状の圧電素子110の貫通孔119にシャフト121を挿入して、積み重ねられた圧電素子110の外部電極115、116の位置合わせをする。このようにして、圧電素子110をスタックするときの外部電極位置をそろえる。これにより、外部電極115、116の接続が容易になり、作業効率を向上できる。
【0039】
シャフト121を貫通孔に通すときには圧電素子110の中心軸C1に垂直な面上の位置や中心軸C1回りの回転位置がずれないようにし、圧電アクチュエータ本体105の両端には、スペーサ122、123を配置する。さらに、固定部で一方を固定して、他方には突起124を接着し、筺体180を被せて圧電アクチュエータ100を作製できる。
【0040】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、貫通孔119は長円の断面形状を有しているが、長方形の断面形状を有していてもよい。貫通孔を長方形の断面形状にすれば、角のみを用いて容易に孔を形成できる。
図3(a)、(b)は、圧電素子210を示す平断面図、斜視断面図、
図3(c)は、シャフト220を示す平断面図である。
【0041】
圧電素子210は、素子本体211および外部電極215、216により構成されている。素子本体211においては、圧電体層212とこれを介して交互に積層された第1および第2の内部電極層213、214とが積層されている。素子本体211は、積層方向に貫通した中心軸C2上の貫通孔219を有し、環状に形成されている。外周は円形であり、内部電極213、214の外周も概略円形に形成されている。
【0042】
第1および第2の外部電極215、216は、素子本体211の側面の所定位置に設けられている。第1の外部電極215は、第1の内部電極213とその電極取り出し部の位置で接続されている。また、第2の外部電極216は、第2の内部電極214とその電極取り出し部の位置で接続されている。
【0043】
シャフト220は、貫通孔219に通して外部電極の位置合わせに用いられる。シャフト220は、貫通孔219の内側面に沿った形状で形成されており、
図3(c)に示すように角が曲線の長方形の断面形状を有している。
【0044】
[第3の実施形態]
第1の実施形態では、貫通孔119は長円の断面形状を有しているが、正円に回り止めの凹形状を設けた断面形状で形成されていてもよい。貫通孔をこのような形状にすることで圧電素子の回転位置が唯一つに決まる。
図4(a)、(b)は、圧電素子310を示す平断面図、斜視断面図、
図4(c)は、シャフト320を示す平断面図である。
【0045】
圧電素子310は、素子本体311および外部電極315、316により構成されている。素子本体311においては、圧電体層312とこれを介して交互に積層された第1および第2の内部電極層313、314とが積層されている。素子本体311は、積層方向に貫通した中心軸C3上の貫通孔319を有し、環状に形成されている。外周は円形であり、内部電極313、314の外周も概略円形に形成されている。
【0046】
第1および第2の外部電極315、316は、素子本体311の側面の所定位置に設けられている。第1の外部電極315は、第1の内部電極313とその電極取り出し部の位置で接続されている。また、第2の外部電極316は、第2の内部電極314とその電極取り出し部の位置で接続されている。
【0047】
シャフト320は、貫通孔319に通して外部電極の位置合わせに用いられる。シャフト320は、貫通孔319の内側面に沿った形状で形成されており、
図4(c)に示すように正円に回り止めの凸形状を設けた断面形状を有している。
【0048】
[第4の実施形態]
上記の実施形態では、圧電アクチュエータ用に圧電素子が円環型に形成されているが、圧電トランス用に圧電素子が円環型に形成されていてもよい。
図5(a)、(b)は、圧電素子410を示す平断面図、斜視断面図、
図5(c)は、シャフト420を示す平断面図である。
【0049】
圧電素子410は、素子本体411および外部電極415a、415b、416により構成され、厚さ方向の区間ごとに入力部417aおよび出力部417bに区分できる。外部電極415a、415bは、入力用の電極であり、外部電極415aには入力端子が接続されて入力電圧が印加され、外部電極415bはグランド接続とすることができる。また、外部電極416は、出力用の外部電極であり、外部電極416から出力電圧を取り出すことができる。
【0050】
素子本体411においては、圧電体層412とこれを介して交互に積層された第1〜第3の内部電極層413a、413b、414とが積層されている。入力部417aでは、圧電体層412と内部電極層413a、413bとが密に積層されており、出力部417bでは、圧電体層412が厚く形成され、端部に内部電極414が設けられている。
【0051】
素子本体411は、積層方向に貫通した中心軸C4上の貫通孔419を有し、環状に形成されている。外周は円形であり、内部電極413a、413b、414の外周も概略円形に形成されている。
【0052】
第1〜第3の外部電極415a、415b、416は、素子本体411の側面の所定位置に設けられている。第1の外部電極415aは、第1の内部電極413aとその電極取り出し部の位置で接続されている。また、第2の外部電極415bは、第2の内部電極413bとその電極取り出し部の位置で接続されている。また、第3の外部電極416は、第1の内部電極414とその電極取り出し部の位置で接続されている。
【0053】
シャフト420は、貫通孔419に通して外部電極の位置合わせに用いられる。シャフト420は、貫通孔419の内側面に沿った形状で形成されており、
図5(c)に示すように長円の断面形状を有している。入力部417aと出力部417bを一体焼成した円筒形の圧電トランス用の圧電素子410において、中心に円形でない貫通孔419が開いていることにより、シャフトを420通すことによって、回転方向の位置を固定できる。断面形状は長円が好ましいが、長方形や正円に回り止めの凹形状を設けた形状であってもよい。
【0054】
上記のように圧電素子410が積層素子である場合、内部電極層413a、413b、414を1層おきに接続して外部とつなぐ外部電極415a、415b、416が必要となる。外部電極を形成する際には外部電極の形成位置をそろえなければならない。例えばスクリーン印刷の場合、印刷箇所をスクリーンマスクに当たるように中心軸周りの回転角θ方向をそろえる必要がある。
【0055】
円筒型の圧電トランス用の圧電素子は通常は1つの素子の中に入力部と出力部を持つ一体焼成した素子が用いられる。しかし、入力部と出力部とで材料特性を変えるときには、2つ以上の圧電素子を接着して用いる場合がある。このときには、複数素子の外部電極位置を調整する必要があり、中心の円形でない孔を用いることで、従来の円筒形に比べて外部電極の位置をそろえるのに手間がからない。
【0056】
なお、上記の圧電トランス用の圧電素子410では、円環厚み方向に区分されたそれぞれ単一の入力部と出力部とが接しており、出力部側の端面付近に出力用の内部電極が設けられている。その結果、両端面側に不活性層が設けられ、入力用の2つの外部電極の他に出力用の外部電極が側面上に設けられている。しかし、圧電トランスには、このような形態以外にも様々なものが考えられる。
【0057】
例えば、上記の形態において、さらに出力部において入力部に隣接する位置にもう一方の出力側の内部電極を設け、入力部の内部電極との間に不活性層を設けることもできる。これにより、入力部と出力部との間に不活性層が設けられ、入力回路と出力回路とを分離できる。この場合、入力用と出力用のそれぞれに2つずつ外部電極が素子本体の側面に設けられ、作製時に位置合わせが必要となる。入力用と出力用のそれぞれの外部電極を素子本体の側面に設けるため、特に貫通孔による位置合わせが有効である。
【0058】
また、上記の入力回路と出力回路とを不活性層で分離した形態を厚み方向に対称になるように設計し、出力部を入力部の両端面側に設けることも可能である。この形態では、入力部が2つの出力部に挟まれた配置となり、入力部と各出力部との間および出力部の各端面側には不活性層が設けられ、不活性層は合計で4層設けられる。この場合にも入力用と出力用のそれぞれに2つずつ外部電極が素子本体の側面に設けられ、作製時に位置合わせが必要となる。
【0059】
また、圧電トランス用の圧電素子410では、出力用の電極として内部電極414が設けられているが、これに代えて端面電極を設け、その端面電極上に出力用の外部電極を設けてもよい。この場合には、出力部の端面側には、不活性層がなくなる。また、入力用に2つの外部電極が素子本体の側面に設けられ、作製時に位置合わせが必要となる。
【0060】
[実施例、比較例(圧電アクチュエータ)]
上記の第1の実施形態にかかる圧電素子110として、実施例1の圧電素子を作製した。一方、比較例1として、
図6に記載の圧電素子510を作製した。そして、各圧電素子を複数積み重ねて、圧電アクチュエータを作製した。
【0061】
図6(a)、(b)は、比較例の圧電素子510を示す平断面図および斜視断面図である。また、
図6(c)は、シャフト520を示す平断面図である。圧電素子510は、中心軸上に断面形状が正円の貫通孔519を有し、環状に形成されている。素子本体511は、圧電体層512と内部電極513、514とが交互に積層されて形成されている。内部電極513、514は、それぞれ外部電極515、516に接続されている。圧電素子510については、貫通孔519にシャフト520を挿通して圧電素子510の位置合わせをする場面で、中心軸C5回りの移動は拘束できない。
【0062】
(実施例1)
実施例1として
図1に示すような圧電素子を作製した。まず、グリーンシートに所定の内部電極を印刷して所定枚数積層後、外形10mm×10mm、貫通孔φ2.5mm×長さ3.5mmの断面長円、厚さ4.5mmの積層に加工した。外形は薄刃による切断で加工し、貫通孔はエンドミルを使用して加工した。これを焼成し、外形7mm×7mm、貫通孔φ2mm×長さ2.8mm、厚さ3mmの一体焼成型の圧電素子を得た。
【0063】
得られた圧電素子において、1層あたり50μmの内部電極層が50層と、上下に内部電極のない層が0.25mm形成された。この圧電素子を平面研削により厚みを2.5mmに加工した後、外径を6mmに円筒加工した。一方で、φ2.5の円柱を厚さ1.8mmに削ったシャフトを用意した。作製した複数個の圧電素子をシャフトに通して冶具にセットし、スクリーン印刷によって外部電極を形成した。シャフトから外して外部電極焼き付け後、シャフトに通して必要枚数積み上げ、リード線により外部電極同士を接続した。
【0064】
(比較例1)
比較例1として
図6に示すような圧電素子を作製した。まず、グリーンシートに所定の内部電極を印刷して所定枚数積層後、外形10mm×10mm、内径φ2.5mm、厚さ4.5mmの積層に加工した。外形は薄刃による切断、内径は通常のドリルを使用した。これを焼成し、外形7mm×7mm、内径φ2mm、厚さ3mmの一体焼成型圧電素子を得た。1層あたり50μmの電極層が50層と、上下に内部電極のない層が0.25mmである。
【0065】
これを平面研削により厚みを2.5mmに加工した後、外径を6mmに円筒加工してφ6mmの円環型素子ができた。この外形加工した面に内部電極取り出し部が露出するように設計されており、外周面に露出した電極を目視で確認して位置あわせを行いスクリーン印刷によって外部電極を形成した。外部電極焼き付け後、シャフトを通してスタックし、外部電極を目視で揃えてテープで仮止めしリード線により外部電極同士を接続した。
【0066】
(検証結果)
外部電極の印刷において、長円の断面形状を有する貫通孔を利用することにより実施例では比較例の200倍以上の処理が可能であった。また比較例ではスタックのとき、目視で位置あわせ中に一旦そろえたものが他の位置をそろえるときに回転してずれてしまうなど、完全にそろえることができなかった。おおよその位置あわせにも実施例の50倍以上の時間を要した。
【0067】
[実施例、比較例(圧電トランス)]
上記の第4の実施形態にかかる圧電トランス用の圧電素子410として、実施例2の圧電素子を作製した。一方、比較例2として、
図7に記載の圧電トランス用の圧電素子610を作製した。
【0068】
図7(a)、(b)は、比較例2の圧電素子610を示す平断面図および斜視断面図である。また、
図7(c)は、シャフト620を示す平断面図である。圧電素子610は、中心軸上に断面形状が正円の貫通孔619を有し、環状に形成されている。素子本体611は、圧電体層612と内部電極613a、613b、614とが交互に積層されて形成されている。内部電極613a、613b、614は、それぞれ外部電極615a、615b、616に接続されている。圧電素子610については、貫通孔619にシャフト620を挿通して圧電素子610の位置合わせをする場面で、中心軸C6回りの移動は拘束できない。
【0069】
(実施例2)
実施例2として
図5に示すような圧電素子を作製した。グリーンシートに所定の電極を印刷して所定枚数積層し圧着後、外形20mm×20mm、内孔φ2.5mm×長さ3.5mmの長円穴、厚さ6mmに加工した。外形は薄刃による切断、内孔の加工にはエンドミルを使用した。これを焼成し、外形16mm×16mm、内孔φ2mm×2.8mm、厚さ4.8mmの一体焼成型圧電素子を得た。
【0070】
これを両面研磨により厚みを2.5mmに加工した。別に用意した、φ2.5の円柱を厚さ1.8mmに削ったシャフトを用いて、外径を15mmに円筒加工した。出来上がった素子の構造は電極間隔が1層あたり120μmで計16層の入力部分と電極間隔が1.9mmの出力層と、上下に不活性な層が0.1mmである。この外形加工した面に内部電極取り出し部が露出するように設計されている。円筒加工用に用意したシャフトと同様の形状のシャフトに作製した素子を複数個通して冶具にセットし、スクリーン印刷によって外部電極を形成した。その後シャフトから外して外部電極焼き付けし、圧電トランス用の圧電素子を得た。
【0071】
(比較例2)
比較例1として
図7に示すような圧電素子を作製した。グリーンシートに所定の電極を印刷して所定枚数積層し圧着後、外形20mm×20mm、内径φ2.5mm、厚さ6ミリに加工した。外形は薄刃による切断、内径は通常のドリルを使用した。これを焼成し、外形16mm×16mm、内径φ2mm、厚さ4.8mmの一体焼成型圧電素子を得た。
【0072】
これを両面研磨により厚みを2.5mmに加工後、円筒加工した。出来上がった素子の構造は電極間隔が1層あたり120μmで計16層の入力部分と電極間隔が1.9mmの出力層と、上下に不活性な層が0.1mmである。この外形加工した面に内部電極取り出し部が露出するように設計されている。外周面に露出した電極を目視で確認して位置あわせを行いスクリーン印刷によって外部電極を形成した。その後外部電極焼き付けした。
【0073】
(検証結果)
外部電極の印刷において、長円の内孔を利用することにより実施例2では比較例2の200倍以上の処理が可能であった。内孔の形状は、通すシャフトによって圧電素子の外部電極位置が決められる形状であれば形状は限定されず、正円に回り止めの凹形状を設けた形状(第3の実施形態)でもよい。圧電トランスの場合、外部電極形成箇所は少なくとも3箇所以上あり、それぞれ役割が決まっていることから、3回対称以上の場合、目視等によって、外部電極位置を合わせる必要が出てくる。したがって、2回対称以下の形状が好ましい。