(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540938
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20190628BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20190628BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20190628BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/00 D
C09D7/63
C09D5/24
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-208873(P2014-208873)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-79208(P2016-79208A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】大村 愛
(72)【発明者】
【氏名】大槻 直也
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 裕子
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−129072(JP,A)
【文献】
特開平09−206663(JP,A)
【文献】
特開2007−238719(JP,A)
【文献】
特開平06−055138(JP,A)
【文献】
特開昭59−215366(JP,A)
【文献】
特開2010−031133(JP,A)
【文献】
特開平10−060381(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/086445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(D)成分を含み、(A)成分100質量部に対して(C)成分が20〜3000質量部含むプライマー組成物。
(A)成分:タッキファイアーおよび/または25℃で固形のエポキシ樹脂
(B)成分:有機銅錯体
(C)成分:導電性フィラー
(D)成分:(A)成分を溶解する溶剤
【請求項2】
前記(A)成分のタッキファイアーが、テルペン骨格を有する化合物の重合体および/ま
たは共重合体である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の25℃で固形のエポキシ樹脂が、ビスフェノール骨格を有するエポキシ
樹脂である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、ナフテート銅、2−エチルヘキサン酸銅からなる群から少なくとも1種類以上選択される請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、前記(A)成分に対して1〜200質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項6】
嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物に用いられる請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項7】
二種の金属製被着体を接着する方法において、一方の被着体に請求項1〜6のいずれかに
記載のプライマー組成物により塗膜を形成した後、該塗膜の表面またはもう一方の被着体に絶縁性の硬化性樹脂組成物を塗布して、二種の被着体が該塗膜と硬化性樹脂組成物を挟んで接着する方法。
【請求項8】
二種の金属製被着体を電気的に接続する方法において、一方の被着体に請求項1〜6のいずれかに記載のプライマー組成物により塗膜を形成した後、該塗膜の表面またはもう一方の被着体に絶縁性の硬化性樹脂組成物を塗布して、二種の被着体が該塗膜と硬化性樹脂組成物を挟んで接着することにより電気的に接続する方法。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の絶縁性の硬化性樹脂組成物として、嫌硬化性を有する硬化性樹脂組成物を使用して接着する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性の硬化性樹脂組成物と組み合わせて使用する非硬化性プライマー組成物であり、当該プライマー組成物には硬化性樹脂組成物の硬化触媒を含む。(以下、「硬化性樹脂組成物」と記載したときには、絶縁性の硬化性樹脂組成物を指す。)2つの被着体を接着するときに、一方の被着体にプライマー組成物の塗膜を形成した後に、もう一方の被着体とプライマー組成物の塗膜面の接着を硬化性樹脂組成物で行う。本発明の塗膜そのものには導電性を発現しないが、2つの被着体の間に導電性を確保させると共に強固に接着することができる接着用途に適したプライマー組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は静電塗装用のプライマー組成物の発明が記載されている。当該プライマー組成物の塗膜そのものが導電性を有するため、静電塗装の下地として使用できる旨記載されている。また、特許文献2もプライマー組成物の発明であるが、特許文献1と同様にプライマー組成物の塗膜そのものが導電性を有する発明であると共に、下地に使用できる旨記載されている。しかしながら、上記2つの発明は、導電性を発現するために、導電フィラーを多量に添加する必要があり、接着力自体は弱い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−215366号公報
【特許文献2】特開平2−227482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプライマー組成物は塗料の下地として使用され、当該プライマー組成物の塗膜そのものに導電性があり、導電フィラーを大量に添加するためプライマー組成物自体の密着性が低下し、接着用途で使用することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、接着用途に適したプライマー組成物に関する本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)〜(D)成分を含み、(A)成分100質量部に対して(C)成分が20〜3000質量部含むプライマー組成物である。
(A)成分:タッキファイアーおよび/または25℃で固形のエポキシ樹脂
(B)成分:硬化触媒
(C)成分:導電性フィラー
(D)成分:(A)成分を溶解する溶剤
【0007】
本発明の第二の実施態様は、前記(A)成分のタッキファイアーが、テルペン骨格を有する化合物の重合体および/または共重合体である第一の実施態様に記載のプライマー組成物である。
【0008】
本発明の第三の実施態様は、前記(A)成分の25℃で固形のエポキシ樹脂が、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂である第一の実施態様に記載のプライマー組成物である。
【0009】
本発明の第四の実施態様は、前記(B)成分が、嫌気硬化性を促進させる硬化触媒である第一から第三の実施態様のいずれかに記載のプライマー組成物である。
【0010】
本発明の第五の実施態様は、前記(B)成分が、有機銅錯体、有機鉄錯体およびアミン化合物からなる群から少なくとも1種類選択される第一から第四の実施態様のいずれかに記載のプライマー組成物である。
【0011】
本発明の第六の実施態様は、嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物に用いられる第一から第五の実施態様のいずれかに記載のプライマー組成物である。
【0012】
本発明の第七の実施態様は、二種の金属製被着体を接着する方法において、一方の被着体に第一から第五の実施態様のいずれかに記載のプライマー組成物により塗膜を形成した後、該塗膜の表面またはもう一方の被着体に絶縁性の硬化性樹脂組成物を塗布して、二種の被着体が該塗膜と硬化性樹脂組成物を挟んで接着する方法である。
【0013】
本発明の第八の実施態様は、二種の金属製被着体を電気的に接続する方法において、一方の被着体に第一から第五の実施態様のいずれかに記載のプライマー組成物により塗膜を形成した後、該塗膜の表面またはもう一方の被着体に絶縁性の硬化性樹脂組成物を塗布して、二種の被着体が該塗膜と硬化性樹脂組成物を挟んで接着することにより電気的に接続する方法である。
【0014】
本発明の第九の実施態様は、第七または第八の実施態様のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物として嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物を使用して接着する方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプライマー組成物の塗膜そのものには導電性が発現せず、プライマー組成物の塗膜と硬化性樹脂組成物を組み合わせることで、2つの被着体の間に導電性を確保させると共に強固に接着することができる接着用途に適したプライマー組成物である。ここで、被着体の間に導電性を確保することで、アース取りや静電気の除電を問題無く行うことができる。また、プライマー組成物を滴下する際に、常に被着体が水平状態(0°)で滴下される訳では無く、垂直状態(90°)で使用されることもあるため、本発明は垂直状態の被着体に対しても導電性フィラーが流れることがなく、導電性フィラーが滴下した箇所に留まることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、導電性測定の際に使用する部材であり、1:ITOガラスの2:ITOガラス導電面に厚さ0.5〜1μmの3:PMMA膜をスピンコートして、中心部に半径2.5mmの4:PMMA膜を一部の排除した穴(1:ITOガラス導電面のむき出し部分)を作成している。
【
図2】
図2は、ITOガラス導電面のむき出し部分に均一になる様にプライマー組成物を1mg塗布した後、25℃雰囲気で1分放置して5:プライマー組成物の塗膜が形成されている
図1の部材である。
【
図3】
図3は、
図2のプライマー組成物の塗膜の上に嫌気硬化性を有する6:硬化性樹脂組成物を塗布した
図2の部材である。
【
図4】7:もう一方のITOガラスの8:もう一方のITOガラス導電面を重ねてクリップで固定し、25℃雰囲気で24時間放置して硬化性樹脂組成物を硬化させた導電性測定のテストピースである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、タッキファイアーおよび/または25℃で固形のエポキシ樹脂である。前記タッキファイアーとしては、テルペン骨格を有する化合物の重合体および/または共重合体であり、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合体、芳香族性テルペン重合体などのテルペンを含む重合体を指す。また、1種類を単独で使用しても、複数の種類を混合して使用しても良い。ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロンP105、YSポリスターT80、YSレジンTO85などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
25℃で固形のエポキシ樹脂としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂の重合体又は共重合体やフェノキシ樹脂を指す。具体的には、三菱化学株式会社製のjER1002などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明で使用することができる(B)成分としては、硬化触媒であり、当該硬化触媒はプライマー組成物と組み合わせて使用する硬化性樹脂組成物の硬化性を促進させる作用があれば良い。
【0020】
特に、嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物に対しては、嫌気硬化性を促進させる有機銅錯体、有機鉄錯体、アミン化合物などが挙げられる。この場合の(B)成分の具体例としては、ナフテート銅、2−エチルヘキサン酸銅などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(B)成分は固体でも液体でも後述の(D)成分に溶解させることができれば使用できる。(B)成分は、1種類でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0021】
本発明では(A)成分100質量部に対して、(B)成分は1〜200質量部含まれることが好ましい。(B)成分が1質量部以上添加された場合、プライマー組成物と組み合わせて使用する硬化性樹脂組成物を速硬化させることができる。一方、(B)成分が200質量部以下添加された場合、(B)成分を後述の(D)成分に溶解または相溶させることができる。
【0022】
本発明で使用することができる(C)成分としては、導電性フィラーである。導電性フィラーとしては、最表面が金、銀、ニッケルなどが挙げられ、フィラー平均粒径としては被着体同士のクリアランス程度であり、形状としては球状、フレーク状、針状などを使用することができる。特に好ましくは、コアが球状の有機材料でその表面を金属で被覆しているいわゆるメッキフィラーである。比重も低く、沈降しにくい傾向が見られる。メッキフィラーとしては、金−ニッケルのメッキフィラーとして、日本化学工業株式会社製のブライト 20GNR4.6−EHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
硬化性樹脂組成物に(C)成分である導電性フィラーを添加した組成物としては、導電性樹脂組成物として知られている。しかしながら、サッカリンを含むことで嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物には、金属イオンが硬化触媒になるため、導電性フィラーを添加することはできない。仮に添加した場合は金属イオンにより硬化性樹脂組成物がゲル化または増粘してしまう。嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物と本発明のプライマー組成物と組み合わせて使用すれば、硬化性樹脂組成物の保存安定性を確保すると共に、硬化物に導電性を発現させることができる。
【0024】
(A)成分が100質量部に対して、(C)成分が20〜3000質量部であることが好ましい。(C)成分を20質量部以上添加した場合、硬化性樹脂組成物と組み合わせて使用することで導電性が発現する。一方、3000質量部以下添加した場合、レベリング性が維持されて均一な塗膜が形成される。
【0025】
本発明で使用することができる(D)成分は、(A)成分を溶解する溶剤である。特に、極性が低く、揮発性が高い溶剤が好ましく、具体的にはヘキサン、トルエンなどが挙げられる。プライマー組成物のレベリング性や粘度を調整するため、適宜(D)成分を加えることができる。
【0026】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分が100〜50000質量部含まれることが好ましい。(D)成分を100質量部以上添加した場合、レベリング性が維持されて均一な塗膜が形成される。一方、(D)成分が50000質量部以下添加した場合、硬化性樹脂組成物と組み合わせて使用することで導電性が安定して発現する。
【0027】
本発明のプライマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により樹脂強度、作業性、保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。
【0028】
本発明のプライマー組成物は硬化性樹脂組成物の硬化を促進する成分が含まれており、プライマー組成物を事前に塗布、乾燥して塗膜を形成した後、硬化性樹脂組成物を当該塗膜に接触させると接触部分の硬化性が促進される。特に、本発明は25℃雰囲気下で短時間にて硬化する嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物と組み合わせて使用することが好ましい。嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物の具体例としては、スリーボンドファインケミカル株式会社製のThreeBond1354などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
プライマー組成物の使用方法としては、特に2つの被着体を接着するときに、一方の被着体にプライマー組成物の塗膜形成後に、もう一方の被着体とプライマー組成物の塗膜面の接着を硬化性樹脂組成物で行う。その際に、接着形態としては、嵌合接着や面接着が好ましく、2つの被着体のクリアランスが狭い方が良く、クリアランスとしては5μm〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。(以下、プライマー組成物を単に組成物と呼ぶ。)
【0031】
組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:タッキファイアーおよび/または25℃で固形のエポキシ樹脂
・軟化点が152℃の水添テルペン樹脂(クリアロンP105 ヤスハラケミカル株式会社製)
・軟化点が80℃のテルペンフェノール共重合体(YSポリスターT80 ヤスハラケミカル株式会社製)
・軟化点が85℃の芳香族性テルペン重合体(YSレジンTO85 ヤスハラケミカル株式会社製)
・軟化点78℃の固形エポキシ樹脂(jER1002 三菱化学株式会社製)
(A’)成分:(A)成分以外
・水酸基末端液状ポリイソプレン(Poly ip 出光興産株式会社製)
・ポリビニルブチラール樹脂(エスレック BL−1 積水化学工業株式会社製)
(B)成分:硬化触媒
・ナフテート銅(試薬)
・2−エチルヘキサン酸銅(試薬)
(C)成分:導電性フィラー
・被覆金属が金−ニッケルのメッキフィラー(ブライト 20GNR4.6−EH 日本化学工業株式会社製)
(D)成分:(A)成分を溶解する溶剤
・ヘキサン(試薬)
・トルエン(試薬)
その他の溶剤
・エタノール(試薬)
・アセトン(試薬)
【0032】
[参考1〜16]
参考1〜16を調製するため、(D)成分を容器に秤量した後、(A)成分または(A’)成分を秤量して容器に投入して溶解するまで1時間攪拌する。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0033】
[溶解性確認]
ガラス管の中に組成物を5g秤量し、目視にて溶解の状態を確認し、「溶解性」とする。「溶解性」は「○」であることが好ましい。
評価基準
○:透明であり、放置しても性状が安定している
△:透明であるが、放置すると性状が変化する
×:白濁または溶け残りが有る
【0034】
[塗膜状態確認]
ガラス板の上に組成物を塗布して、厚さ3μmの塗膜を形成し、25℃で24時間乾燥させた。塗膜表面を指触により、以下の評価基準に基づいてタックの有無を確認して「塗膜状態」とする。導電性フィラーの保持の観点から、「塗膜状態」は「○」であることが好ましい。「溶解性」が「×」の場合、塗膜状態確認は行わず、「確認不可」と表記する。
評価基準
○:タック無し
×:タック有り
【0035】
【表1】
【0036】
表1では、(A)成分または(A’)成分の溶解性と(D)成分が乾燥後の塗膜状態を確認した。参考1と3では水添テルペン樹脂とヘキサンまたはトルエンの組み合わせが、参考15と16では固形エポキシ樹脂とトルエンまたはアセトンの組み合わせが、溶解性と塗膜状態で良好な結果を示した。
【0037】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
組成物を調製するため、(D)成分を容器に秤量した後、(A)成分または(A’)成分を秤量して容器に投入して溶解するまで1時間攪拌する。溶剤が揮発した場合は、揮発分を追加する。その後、(B)成分と(C)成分を添加して、30分間攪拌する。詳細な調製量は表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例1〜10、比較例1〜3に対して、溶解性確認、フィラー保持状態確認、嵌合接着力測定、導電性測定を行い、その結果を表3にまとめた。
【0040】
[フィラー保持状態確認]
ガラス板に組成物を0.1g滴下して、ガラス板を直立状態(90°)に傾ける。その状態で、25℃で1時間放置する。滴下した箇所と最も流れた箇所で、導電性フィラーの残留状態を下記の評価基準に従い顕微鏡により目視で確認して「フィラー保持状態」とする。プライマー組成物を滴下する際に、被着体は常に水平状態(0°)で滴下される訳では無く、垂直状態(90°)で使用されることもあるため、フィラー保持状態は「○」であることが好ましい。
評価基準
○:2箇所で導電性フィラーの存在に偏りが無い
×:2箇所で導電性フィラーの存在に偏りが有る
【0041】
[嵌合接着力測定]
嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物としてスリーボンドファインケミカル株式会社製のThreeBond1354を使用し、プライマー組成物と組み合わせて嵌合による接着強度を測定した。直径略6mmのSPCC製のピンに組成物を均一に塗布して25℃で1時間放置する。その後、内径6mm×長さ15mmのSPCC製のカラーの内側にThreeBond1354を塗布して、ピンをはめ込み、25℃で10分放置する。その後、強度測定機にて最大の強度を測定し、「嵌合接着力(MPa)」とする。嵌合接着力は10MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であれば、プライマーとしての促進効果が発揮していると考えられる。一方、組成物を使用せずにThreeBond1354のみを使用して、25℃で10分放置した場合の嵌合接着力は26MPaであった。
【0042】
[導電性測定]
図1の様に、1:ITOガラスの2:ITOガラス導電面に厚さ0.5〜1μmの3:PMMA膜をスピンコートして、中心部に半径2.5mmの4:PMMA膜を一部の排除した穴(1:ITOガラス導電面のむき出し部分)を作成する。
図2の様に、ITOガラス導電面のむき出し部分に均一になる様に組成物を1mg塗布した後、25℃雰囲気で1分放置する。組成物の固形分が残留した塗膜が形成されているため、その上に、
図3の様に嫌気硬化性を有する6:硬化性樹脂組成物としてThreeBond1354を1mg塗布して、
図4の様に、7:もう一方のITOガラスの8:もう一方のITOガラス導電面を重ねてクリップで固定する。25℃雰囲気で24時間放置して硬化性樹脂組成物を硬化させる。ITOガラス導電面にテスターの電極を当てて、抵抗値を測定する。n=5で測定を行いその平均値を「導電性(Ω)」とする。テスターにより抵抗値が測定できない程、抵抗値が高い場合は「OL」と記す。「導電性」は500Ω以下であることが好ましく、500Ω以下であればアース取りや静電気の除電を問題無く行うことができる。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例1〜3ではタッキファイアーの種類を変えて検証を行っており、フィラー保持状態が良好である。また、実施例4、5、9では(B)成分の種類と添加量を変えているが嵌合接着力が10MPa以上発現している。実施例6では(A’)成分のエラストマーを添加しているが、実施例1と同等の特性を示している。一方、比較例1は(A)成分を含まず、フィラー保持状態が不良であり、導電性フィラーが偏っている。比較例2は(A)成分100質量部に対して、(C)成分が20質量部より少ないため導電性が不安定になっている。比較例3はフィラー保持状態が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
反応硬化型の導電性接着剤は60〜200℃の範囲で加熱する必要があるが、本発明のプライマー組成物と非導電性組成物を組み合わせることで簡単に被着体同士に導電性を確保することができる。電気・電子分野ではアース取りや静電気の除電を必要とし、また、被着体の耐熱性から加熱出来ない場合もあることから、本発明を使用する範囲は広がる。
【符号の説明】
【0046】
1:ITOガラス
2:ITOガラス導電面
3:PMMA膜
4:PMMA膜を一部の排除した穴(1:ITOガラス導電面のむき出し部分)
5:プライマー組成物の塗膜
6:硬化性樹脂組成物
7:もう一方のITOガラス
8:もう一方のITOガラス導電面