特許第6540952号(P6540952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540952光ツートーン信号の生成方法およびDP−MZM型光変調器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540952
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】光ツートーン信号の生成方法およびDP−MZM型光変調器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20190628BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20190628BHJP
【FI】
   G02F1/01 B
   H04B10/80
   G02F1/01 C
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-101414(P2015-101414)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-218190(P2016-218190A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「高い臨時設営性を持つ有無線両用通信技術の研究開発」副題「光ファイバ伝送とW帯無線伝送を柔軟に切替可能な通信方式を実現する要素デバイス及びシステム化技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】アブデルモウラ ベッカリ
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−049258(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/088636(WO,A1)
【文献】 特開2007−079466(JP,A)
【文献】 特開2016−194613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00− 1/125
1/21− 7/00
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ツートーン信号の生成方法であって、
上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームおよび下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器2台を縦続接続し、
第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、
前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、
前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記DP−MZM型光変調器の出力のうち、所望の1次サイドバンド成分の強度が最大となるように、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)を用いて、前記RF駆動電圧VおよびRF駆動電圧V定めると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφsを与え
前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるDP−MZMを用いて入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、
前記各DP−MZM型光変調器において、
前記RF駆動電圧V、前記RF駆動電圧V、前記位相差Δφ、前記DCバイアス電圧Vbias−1、前記DCバイアス電圧Vbias−2、および前記DCバイアス電圧Vbias−3は、入力光信号に半波長に相当するπの位相変調を与える電圧Vπを用いて、以下の表の通りに定められることを特徴とする光ツートーン信号の生成方法。
【表1】
【請求項2】
前記位相差Δφsは、π/2であることを特徴とする請求項1記載の光ツートーン信号の生成方法。
【請求項3】
上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計、および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームと下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器の制御方法であって、
縦続接続された2台のDP−MZM型光変調器のうち、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、
前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、
前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記DP−MZM型光変調器の出力のうち、所望の1次サイドバンド成分の強度が最大となるように、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)を用いて、前記RF駆動電圧VおよびRF駆動電圧V定めると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφsを与え
前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるDP−MZMを用いて入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、
前記各DP−MZM型光変調器において、
前記RF駆動電圧V、前記RF駆動電圧V、前記位相差Δφ、前記DCバイアス電圧Vbias−1、前記DCバイアス電圧Vbias−2、および前記DCバイアス電圧Vbias−3は、入力光信号に半波長に相当するπの位相変調を与える電圧Vπを用いて、以下の表の通りに定められることを特徴とする光変調器の制御方法。
【表2】
【請求項4】
前記位相差Δφsは、π/2であることを特徴とする請求項3記載の光変調器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線統合システム(Seamless radio and optical integration)等に用いられる光ツートーン信号(Optical two-tone signal)の生成方法およびDP−MZM型光変調器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RoF(Radio-over-Fiver)技術を用いた光無線統合システムが提案されている。この光無線統合システムは、マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波等の大容量の無線リンクを都合よく利用でき、高い伝送能力と長い伝送距離の両方の要件を満たし、ネットワークの柔軟性を支えるファイバーバックアップとして利用可能であり、非常に柔軟な通信システムとして期待されている。さらに、高度な変調フォーマットとビットレートに対する高い能力、透明性および可動性のため、このシステムは、大容量光ファイバーリンクの迅速な障害回復、最後の1マイルのソリューション、および既存の無線サービスのカバレッジと能力の拡張に適用可能となることが期待されている。
【0003】
非特許文献1には、1ポートのRF(Radio Frequency)信号をDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器に入力し、高周波側と低周波側の二つの2次サイドバンドのみを発生させて、それらの周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させる技術が開示されている。非特許文献1では、入力側の理想的な「Y分岐(Y-branch)」の分岐比(以下、分岐比には記号「α」を用いる。理想的な分岐比はα=0.5である)が達成されるように、チップ上に実装された「活性電極(Active Electrode)」を利用する。
【0004】
一般に、純度の高い光ツートーン信号を発生させるためには、必要とされる高周波側と低周波側の二つのサイドバンド(周波数間隔が入力RF信号の周波数の2n倍とするとして、±n次サイドバンド)のパワーを可能な限り高くしつつ、主キャリア成分および不要サイドバンド成分(±n次サイドバンド以外ののサイドバンド)のパワーを抑制する必要がある。非特許文献1では、活性電極を利用してY分岐の分岐比αを理想的な値(すなわち0.5)に制御することで、これを実現している。
【0005】
また、非特許文献2には、DP−MZMに印加される3つの直流(DC:Direct Current)バイアスと2つのRF駆動信号を最適化することによって、「周波数コム」と呼称されるフラットなスペクトル応答を生成する技術が開示されている。非特許文献2では、理想的なY分岐の分岐比において、「Dual Parallel MZI(Mach-Zehnder Interferometer, DP−MZMと同じ意味)」から出力される信号を表わす一般的な数式が示されている。
【0006】
非特許文献3には、6倍の周波数を有するマイクロ波信号を生成するための方式が開示されている。この方式では、任意の光学または電気フィルタを用いずに、MZM型光強度変調器(IM)とDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器を縦続接続(カスケード接続)する。また、非特許文献4には、2つの縦続接続されたMZM型光変調器を使用して、4倍の周波数を有する光ミリ波信号を生成するための方式が開示されている。また、非特許文献5には、2つの縦続接続されたMZM型光変調器を使用して、8倍の周波数を有するマイクロ波信号を生成するための方式が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Y. Yamaguchi, S. Nakajima, A. Kanno, T. Kawanishi, M. Izutsu, H. Nakajima: “Frequency-Quadruple Optical Two-Tone Signal Generation Using Integrated High Extinction-Ratio Mach-Zehnder Modulator”, TuEC-5, APMP/MWP 2014, Hokkaido, Japan.
【非特許文献2】I. L. Gheorma and G. K. Gopalakrishnan,, “Flat Frequency Comb Generation With an Integrated Dual-Parallel Modulator,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 19, no. 13, pp. 1011-1013, July. 2007.
【非特許文献3】Yongsheng Gao, Aijun Wen, Qingwei Yu, Ningning Li, Guibin Lin, Shuiying Xiang, and Lei Shang: “Microwave Generation With Photonic Frequency Sextupling Based on Cascaded Modulators”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 26, NO. 12, JUNE 15, 2014.
【非特許文献4】Ying Zhao, Xiaoping Zheng, he Wen, and Hanyi Zhang: “Simplified optical millimeter-wave generation configuration by frequency quadrupling using two cascaded Mach-Zehnder modulators” OPTICS LETTERS / Vol. 34, No. 21 / November 1, 2009.
【非特許文献5】Wangzhe Li, Student Member, IEEE, and Jianping Yao, Senior Memver, IEEE: “Microwave Generation Based on Optical Domain Microwave Frequency Octupling”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 22, NO. 1, JANUARY 1, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1の手法では、活性電極が必要となるため、装置の複雑さが増大する可能性があり、また、活性電極について制御するための手法が新たに必要になってしまう。また、非特許文献1の手法では、RF信号によって2つの平行なMZIのうちの一つだけを駆動する。この手法は、制御方法の複雑さを減らすためにはメリットがある。しかし、その手法では、周波数間隔を2倍にする場合の2次以上の不要なサイドバンドや、周波数間隔を4倍にする場合の1次と3次以上の不要なサイドバンドを十分抑制することは困難である。
【0009】
非特許文献2では、理想的なY分岐の分岐比の下で用いられる数式が示されているが、実装置では、理想的なY分岐の分岐比を得ることは容易ではなない。非特許文献2では、理想的でないY分岐の分岐比をどのように処理するかについては何ら示されていない。また、周波数間隔が入力したRF信号の周波数の2倍、4倍・・・のいずれかであるサイドバンド成分のみを生成し、その他の不要成分(主キャリア成分およびその他のサイドバンド成分)を抑制する、光ツートーン信号の生成手法も示されていない。
【0010】
また、非特許文献3に開示されている技術では、MZM型光強度変調器(IM)とDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器を縦続接続(カスケード接続)するが、不要なサイドバンド成分を抑制するためには、精密な調整をしなければならない。また、非特許文献4および5に開示されている技術では、2つの縦続接続されたMZM(Mach-Zehnder Modulator)を使用するが、同様に精密な調整が必要であり、より簡便な調整で不要なサイドバンドを抑圧できる手法が望まれる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、2台のDP−MZMを用いて、簡単な手法で、マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波の発生を実現する、周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍となる光ツートーン信号を生成することができる、光ツートーン信号の生成方法およびDP−MZM型光変調器の制御方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
最初に、一般的な光ツートーン信号の発生方法を説明する。コヒーレントな光信号を光変調器に入力し、奇数次もしくは偶数次のいずれか一方のサイドバンド成分が強調されるようにDCバイアス点を調整した状態で、一定の周波数fRFのRF信号を入力して前記コヒーレントな光信号を変調する。なお、後述するような構成によって複数のサイドバンド成分のうち特定の次数のサイドバンドのみを強調し、その他の不要サイドバンド成分および主キャリア成分を抑制することが可能である。
【0013】
しかし、一般的に、サイドバンド成分の強度は、次数が高くなるにつれて低下する。そのため、たとえば1台のDP−MZMを用いて±1次のサイドバンド成分を強調した場合と、同じDP−MZMの駆動条件を変更して±2次のサイドバンド成分を強調した場合は、±1次のサイドバンド成分の方が高い強度を容易に得られる。
【0014】
さらに、±2次のサイドバンド成分を強調するように駆動した場合、同じ偶数次である主キャリア成分(0次成分)が残留しやすく、これを抑制するためには様々な駆動条件を精密に調整する必要がある。
【0015】
以上の理由から、±1次のサイドバンドを強調して入力RF信号の周波数fRFの2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生する場合、±2次のサイドバンドを強調して入力RF信号の周波数fRFの4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生する場合と比較して、より簡便な調整で高い不要成分の抑圧比を実現することができる。
【0016】
このような考察に基づき、本発明者らは、1台目のDP−MZMを用いて不要成分の抑圧比が高い±1次のサイドバンド成分を発生し、さらにその±1次のサイドバンド成分を2台目のDP−MZMを用いて同じ周波数fRFのRF信号で変調することで、±2次に相当するサイドバンド成分を生成する方式を発明した。
【0017】
2台目のDP−MZMを1台目のDP−MZMと同じ信号源から分岐したRF信号を用いることで、2台目のDP−MZMから出力される光ツートーン信号の周波数間隔を、入力RF信号の周波数fRFに対して正確に4倍の値にすることができる。
【0018】
また、2台目のDP−MZMは1台目のDP−MZMと同様に高い不要成分の抑圧比が得られる条件で駆動できるので、出力される光ツートーン信号は高い不要成分の抑圧比を実現できる。
【0019】
(1)上記の課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、光ツートーン信号の生成方法であって、上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームおよび下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器2台を縦続接続し、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に基づいて、前記RF駆動電圧VおよびRF駆動電圧Vを補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφを与えることを特徴とする。
【0020】
このように、DP−MZM型光変調器2台を縦続接続し、各DP−MZMの各マッハツェンダー変調器を駆動するためのパラメータを決定し、さらに、第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に従ってRF駆動電圧VおよびRF駆動電圧Vを補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号との間に所定の位相差Δφを与えることで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0021】
(2)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法において、前記位相差Δφは、π/2であることを特徴とする。
【0022】
このように、第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の間に位相差π/2を与えることにより、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが容易に可能となる。
【0023】
(3)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるようなDP−MZMを用いて入力RF信号の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V、前記RF駆動電圧V、および光信号に半波長分に相当するπの位相変調を与える電圧Vπを用いて、パラメータδおよびδを、δ1,2=(πV1,2)/Vπと定義し、各パラメータδ1-およびδが、δ1-=δとなるように設定し、かつパラメータδおよびδと各サイドバンド成分の強度との関係において、所望の1次サイドバンド成分を保持しつつ、不要なサイドバンド成分を抑制するためのパラメータδおよびδの最適点は、所望の1次サイドバンド成分の強度が最大値となる点以下であって、5次サイドバンド成分が所定の閾値以下となる点以上となる範囲に分布することを特徴とする。
【0024】
このように分岐比αが0.5であるDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、特に各パラメータδ1-およびδを所定の値(但しδ1-=δである)に設定することで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0025】
(4)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V、前記RF駆動電圧V、および光信号に半波長分に相当するπの位相変調を与える電圧Vπを用いて、パラメータδおよびδを、δ1,2=(πV1,2)/Vπと定義し、分岐比αが0.5ではない場合に、パラメータδ1-を一定値とし、パラメータδを変化させることにより、パラメータδと所望の1次サイドバンド成分に対する不要なサイドバンド成分の抑圧比との関係において、所望の1次サイドバンド成分を保持しつつ、不要なサイドバンド成分を抑制するためのパラメータδの最適点は、所望の1次サイドバンド成分に対する3次サイドバンド成分の抑圧比が最大となる点を含む一定の範囲に分布することを特徴とする。
【0026】
このようにDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、分岐比αが0.5ではない場合に、パラメータδ1-を一定値とし、パラメータδを変化させることで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0027】
(5)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるDP−MZMを用いて入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V、前記RF駆動電圧V、前記位相差Δφ、前記DCバイアス電圧Vbias−1、前記DCバイアス電圧Vbias−2、および前記DCバイアス電圧Vbias−3は、光信号に半波長に相当するπの位相変調を与える電圧Vπを用いて、以下の表の通りに定められることを特徴とする。
【0028】
【表1】
このように分岐比αが0.5であるDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、特に各パラメータδ1-およびδを所定の値(但しδ1-=δである)に設定することで、入力した光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分からなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0029】
(6)また、本発明の光変調器の制御方法は、上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計、および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームと下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器の制御方法であって、縦続接続された2台のDP−MZM型光変調器のうち、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に基づいて、前記RF駆動電圧VおよびRF駆動電圧Vを補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφを与えることを特徴とする。
【0030】
このように、2台のDP−MZM型光変調器を縦続接続し、各DP−MZMの各マッハツェンダー変調器を駆動するためのパラメータを決定し、さらに、第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に従ってRF駆動電圧VおよびRF駆動電圧Vを補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφを与えるので、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0031】
(7)また、本発明の光変調器の制御方法において、前記位相差Δφは、π/2であることを特徴とする。
【0032】
このように、第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差π/2を与えることにより、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが容易に可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、入力した光ツートーン信号の周波数間隔が、入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分からなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】光ツートーン信号を用いる光無線統合システムの概略構成を示す図である。
図2】一つのDP−MZMを用いた場合の概略構成を示す図である。
図3】δ1,2と、不要サイドバンドの抑圧比および所望サイドバンドの強度との関係を示す図である。
図4】δと、不要サイドバンドの抑圧比との関係を示す図である。
図5】第2の実施例に係る光変調器の概略構成を示す図である。
図6】実施例2における各DP−MZMの駆動パラメータを示す図である。
図7】実施例2における各DP−MZMを、図6に示す駆動パラメータを用いて駆動させた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、光無線統合システムにおいて、光ツートーン信号を用いて高い周波数のRF信号を得る技術において、入力した光ツートーン信号のうちの一方をデュアルパラレルマッハツェンダー変調器(DP−MZM)で変調する際に、マッハツェンダー変調器の駆動パラメータをどのように定めれば、周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍となるかについて、鋭意検討した。その結果、理想的な分岐比の場合について、解析的に特定の6つのパラメータの最適値を見出した。また、DM−MZMの上側アームと下側アームへの光信号の分岐比を考慮してパラメータを補正する手法を見出した。さらに、2つのDP−MZM型光変調器を縦続接続すると共に、各DP−MZM型光変調器に入力するRF信号の位相差を一定値とすれば、簡単に周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍にすることができることを見出し、本発明に至った。
【0036】
すなわち、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、光ツートーン信号の生成方法であって、上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームおよび下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有する2つのDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器を縦続接続し、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に基づいて、前記RF駆動電圧VおよびRF駆動電圧Vを補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφを与えることを特徴とする。
【0037】
これにより、本発明者らは、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することを可能とした。
【0038】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本実施形態では、不要成分のより高い抑圧比を維持するため、RF駆動電力をシンプルに調整することによって、DP−MZMの上側と下側の不均衡を補償する。特に、2つのRF駆動信号の間の位相差を調整することによって、不要なサイドバンドを消去する。
【0039】
図1は、光ツートーン信号を用いる光無線統合システムの概略構成を示す図である。光ツートーン信号発生部10は、コヒーレントな光ツートーン信号を発生する。図1に示すように、光ツートーン信号発生部10は、波長がλであるコヒーレント光から周波数間隔がωRFの光ツートーン信号を発生し、発生した光ツートーン信号は、光伝送路12を介して光デマルチプレクサ(Optical De-Multiplexer:DMUX)14に入力される。DMUX14は、光ツートーン信号を2つの光信号に分離し、一方を光伝送路16aに出力し、他方を光伝送路16bに出力する。すなわち、周波数間隔がωRFのツートーン信号において、図1中、左側(波長がλより短い)の光信号(以下では必要に応じて「プラスのサイドバンド」と記す)が光伝送路16aに出力され、右側(波長がλより長い)の光信号(以下では必要に応じて「マイナスのサイドバンド」と記す)が光伝送路16bに出力される。
【0040】
光伝送路16aには、光信号を変調する光変調器(Optical Modulator)18が設けられている。光変調器18は、入力された光信号をベースバンド(Baseband:BB)(または中間周波数Intermediate Frequency:IFに重畳された)データ信号(以下では単に「データ信号」と記す)で変調する。なお、本図ではプラスのサイドバンドをデータ信号で変調しているが、光変調器18を光伝送路16b上に移動して、マイナスのサイドバンドをデータ信号で変調してもかまわない。
【0041】
MUX(Optical Multiplexer:光マルチプレクサ)20は、光伝送路16aおよび16bを介して入力された各光信号を合波し、光伝送路22に出力する。MUX20から出力される光ツートーン信号は、周波数間隔がωRFの光ツートーン信号である。図1中、左側の光信号のみが変調されている。
【0042】
光電変換部(High Speed PD)24は、入力した光信号を電気信号(無線信号)に変換する。光電変換部24の出力は、周波数間隔がωRFである光ツートーン信号の周波数間隔ωRFの周波数を有する無線信号となり、アンテナ26によって送信される。このように、光無線統合システムでは、光電変換前の光ツートーン信号の周波数間隔ωRFは、光電変換後の無線信号の周波数ωRFとなって現れる。
【0043】
ここで、25GHz程度の周波数を有する無線信号であれば無線発振器などのデバイスによって発生させることは容易であるが、さらに高い周波数を有する無線信号、例えば、100GHzの無線信号を無線デバイスで発生させることは容易ではない。しかしながら、上述した光無線統合システムの光ツートーン信号発生器において、光変調器を駆動するRF信号を制御することにより、光ツートーン信号の周波数間隔ωRFを、前記光変調器を駆動するRF信号の周波数の4倍とすることができれば、特別な無線デバイスを用いることなく、例えば、100GHz程度の高い周波数を有する無線信号を発生させることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、前記RF駆動電圧VおよびVの周波数の4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成するために、DP−MZMの駆動パラメータを最適化する。また、縦続接続された2つのDP−MZM型光変調器に入力するRF信号の位相差Δφをπ/2とする。
【実施例1】
【0045】
実施例1ではまず、DP−MZMを一つのみを用いた場合に、第1のMZI25および第2のMZI27を駆動するRF信号の周波数の2倍となる周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させるための最適化したパラメータの計算結果を示す。そして、後述する実施例2では、2つのDP−MZMを縦続接続し、各DP−MZMに入力するRF信号の位相差をπ/2とし、各DP−MZMの駆動パラメータを慎重に調整することによって、純粋な4倍の光ツートーンを生成することができる。この構成により、無線発振器で生成することが困難なミリ波あるいはテラヘルツ波帯の信号を、光学的な手段によって、生成することができる。
【0046】
図2は、縦続接続される2つのDP−MZMのうち、一つのDP−MZMを用いた場合の概略構成を示す図である。LD21は、レーザダイオード(Laser Diode)であり、第1のMZI25、第2のMZI27、および第3のMZI29は、マッハツェンダー干渉計である。PD31は、フォトダイオードである。第1のMZI25および第2のMZI27は、並列に配置されており、第3のMZI29は、第1のMZI25および第2のMZI27を含む。これらの第1〜第3のMZIはチャープフリー構造(chirp-free configuration)であり、第1のMZI25および第2のMZI27への入力光の分岐比をα(0≦α≦1)とする。本発明の光ツートーン信号発生方法では、3つの独立なDC電圧と、第1のMZI25および第2のMZI27のRF駆動電圧、およびそれらRF信号の位相差Δφをそれぞれ制御する。
【0047】
図2では、各DP−MZMに対して設定したパラメータを併せて示している。すなわち、第1のMZI25に対して印加するRF駆動電圧V、第1および第2のMZI25、27におけるRF信号の位相差Δφ、第1のMZI25に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−1、第2のMZI27に対して印加するRF駆動電圧V、第2のMZI27に対して印加するDCバイアス電圧Vbias−2の5つのパラメータが存在する。第1のMZI25に対して印加するRF駆動電圧V、および第2のMZI27に対して印加するRF駆動電圧Vは以下の二式で表される。
【0048】
V1(t) = V1・sin(ωRFt+Df)・・・(1)
V2(t) = V2・sin(ωRFt) ・・・(2)
また、DP−MZMに入力される光信号は、以下の式で表される。
【0049】
Ein(t) = Ein・cos(w0t)・・・(3)
但し、c0を真空中の光速としてω0 = 2π・c00である。
【0050】
なお、入力RF信号の周波数スペクトルfRF(但しfRF=ωRF/2π)を、図2中、紙面に対して左上に示し、入力光信号の波長スペクトルλを、図2中、紙面に対して左下に示す。
【0051】
第1のMZI25から出力される変調された光信号の電界E(t)および第2のMZI27から出力される変調された光信号の電界E(t)は、以下の二式で表わすことができる。
【0052】
【数1】
そして、第3のMZI29を経て、DP−MZMの光出力Eoutは、以下の式で表わされる。
【0053】
【数2】
なお、単純化のため、上記の(4)〜(6)式では各MZIの光損失を無視している。また、上述のパラメータのうち、バイアス電圧Vbias−1とVbias−2は常に同一の値であり、以下の検討では両者をVの記号で表す。
【0054】
bias−1=Vbias−2=V ・・・(7)
“Jacobi-Anger expansion”を使うことで、n次のサイドバンド相対的な出力電力Iは、以下のように与えられる。
【0055】
【数3】
【0056】
また、d2,b,およびVはそれぞれ下式で定義されるパラメータである。
【0057】
【数4】
なお、上記で得られた(8)式は、α=0.5とした時に、非特許文献2に開示されている式の一つに近似する。
【0058】
また、出力光信号の波長スペクトルを、図2中、紙面に対して右下に示し、出力RF信号の周波数スペクトル(2fRF)を、図2中、紙面に対して右上に示す。
【0059】
以下の実施例では、光ツートーン信号を生成する際に最も良いモードを示す。なお、各光ツートーン信号は、それぞれ異なるパラメータで生成され、また、ここで示すパラメータに限定されるわけではない。
【0060】
ここで、第1のMZI25および第2のMZI27を駆動するRF信号の周波数の2倍となる周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させる場合、X=(V、V、Vbias−1、Vbias−2、Vbias−3、Δφ)とし、2倍の場合をN=1とすると、純粋な光ツートーン信号を発生させるために満たすべき最適値は、以下の式を満たす。
【0061】
【数5】
ただし、I(X)は、式(8)で定義されたサイドバンドの出力電力である。
【0062】
式(8)から、不要なサイドバンドを取り除くために変数Vを以下のように選ぶこと
によって、容易に4つのトーンに減らすことができる5つの自由度があることが分かる。
変数Vは、以下のように定められる。
【0063】
【数6】
【0064】
【数7】
【0065】
以下、DP−MZMを一つ用いて、第1のMZI25および第2のMZI27を駆動するRF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させるための最適なパラメータについて具体的に説明する。
【0066】
実施例1では、DP−MZMを一つ用いて、第1のMZI25および第2のMZI27を駆動するRF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させるための最適なパラメータについて説明する。以下のテーブル1に、分岐比αが理想的な値(0.5)である時に、所望成分である1次サイドバンド成分のパワーが最大となる各パラメータの値を示す。このように、マッハツェンダー変調器を駆動する際のパラメータを決定することによって、入力した光ツートーン信号の周波数間隔が、入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0067】
テーブル1に示したパラメータのうち、VおよびVを除いた4つのパラメータは、以下のさらなる最適化手順においても変化させない。これにより、不要成分のうち、主キャリア成分および偶数次のサイドバンド成分のパワーを常に0に保つことができる。
【0068】
【表2】
所望の1次サイドバンド成分の強度I(但し、高周波側と低周波側は同じ強度となる)、不要成分である3次および5次サイドバンド成分の強度をIおよびIで表すと、I、I、I/IおよびI/Iの値は、δ=δとした場合、図3に示すように変化する。図3中の「Upper Bound」で示した線が、テーブル1に示した各パラメータの値に相当する。Iの値は可能な限り大きく保つことが望ましいが、一方で不要成分の抑圧比を表すI/IおよびI/Iを可能な限り大きく保つことも求められる。そこで、以下のように最適化を行う。
【0069】
分岐比αが理想的な値、すなわち0.5である場合、Iは常に0であるので、不要成分として現れるのはIである。Iの値がシステムの雑音レベル以下であれば、それ以上にIの値を抑圧する必要はない。システムの雑音レベルは、DP−MZM変調器への入力光信号パワー、DP−MZM変調器の挿入損失、DP−MZM光変調器とフォトダイオードの間の光損失、およびフォトダイオード自体の雑音レベルで決定されるため、図3の縦軸の値で一意に決定することはできないが、仮に同図縦軸上で60dBとすると、Iのパワーを図中の「Noise Level」で示した線より小さくする必要はない。従って、δおよびδの値は、図3中の「Lower Bound」と「Upper Bound」の線で示した間の1点に設定すればよい。この間のどの点に設定するかは、生成される光ツートーン信号を利用するシステム全体の要求条件に依存するため、一意には決定できないが、少なくともこの範囲に最適点が存在する。
【0070】
次に、分岐比αが理想的な値でなかった場合の最適化手法を説明する。一例として、分岐比αが0.4であった場合を、図3中に示している。この時は、δとδを同一の値のままで変化させると、上述の「Lower Bound」と「Upper Bound」の間でI/IはI/Iより常に小さくなってしまい、不要成分の抑圧比を十分確保することが難しい。そこで、図4に示すように、δのみを変化させる。すると、図3の「Lower Bound」に近接した点にI/Iが最大となるピーク点が存在する。このピーク点付近にI/I≧I/Iとなる範囲が存在し、ピーク点から図4中、右寄りでI/I=I/Iとなる交点までの範囲が、αが0.4の時の狭義の最適範囲である。広義には、このピーク点付近において、I/Iが生成される光ツートーン信号を利用するシステムの要求条件を満たす程度に大きい範囲が最適範囲である。
【実施例2】
【0071】
図5は、第2の実施例に係る光変調器の概略構成を示す図である。実施例2では、2つのDP−MZMを縦続接続し、各DP−MZMを実施例1で示した方法で駆動する。さらに、2つのDP−MZMにおいて、前段のDP−MZMに入力するRF信号と、後段のDP−MZMに入力するRF信号の位相差を、π/2とする。
【0072】
図5において、LD21は、レーザダイオード(Laser Diode)であり、LO23は、局部発振器(Local Oscillator)である。VA18c、18dは、可変減衰器(Variable Attenuator)であり、PS18eおよびPS50は、移相器(Phase Shifter)である。OA11は、光増幅器(Optical Amplifier)である。PD31は、フォトダイオード(Photo Diode)である。
【0073】
前段および後段のDP−MZMにおいて、第1のMZI25、第2のMZI27、および第3のMZI29は、マッハツェンダー干渉計である。第1のMZI25および第2のMZI27は、並列に配置されており、第3のMZI29は、第1のMZI25および第2のMZI27を含む。これらの第1〜第3のMZIはチャープフリー構造(chirp-free configuration)であり、第1のMZI18fおよび第2のMZI18gへの入力光の分岐比をα(0≦α≦1)とする。
【0074】
実施形態2に係る光ツートーン信号発生方法では、3つの独立なDC電圧と、第1のMZI25および第2のMZI27のRF駆動電圧、およびそれらRF信号の位相差Δφをそれぞれ制御すると共に、PS50において、位相差をπ/2とする。
【0075】
すなわち、DP−MZMを二段に縦続接続し、それぞれを上記実施例1で示したように、入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させる場合と同じ条件で駆動させる。この時、前段の(第一の)DP−MZMに入力するRF信号と後段の(第二の)DP−MZMに入力するRF信号にπ/2の位相差を与える。これにより、入力RF信号の周波数の4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させることが可能となる。各DP−MZMで入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生する場合の駆動パラメータは、それ以上の周波数間隔に比べて制御が容易である。従って、上記のDP−MZMを二段に縦続接続した構成でも、各々のDP−MZMは容易に制御が可能である。
【0076】
図6は、実施例2における各DP−MZMの駆動パラメータを示す図である。第3のMZIのY分岐における分岐比αが、0.5である場合と、0.5でない場合との両方について示す。図7は、実施例2における各DP−MZMを、図6に示す駆動パラメータを用いて駆動させた結果を示す図である。「Double Max」は、前段の(第一の)DP−MZMの出力を示し、「Cascaded Double Max」は、後段(第二の)DP−MZMの出力を示す。このように、入力RF信号の周波数の4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させることが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態では、DP−MZMを二段に縦続接続し、一台のDP−MZMで入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させる例を示したが、本発明は、これに限定されるわけではない。例えば、一台のDP−MZMで入力RF信号の周波数の4倍以上の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生させる駆動パラメータで各々のDP−MZMを駆動することで、より高い倍数の光ツートーン信号を発生させることも可能である。一方、DP−MZMの縦続接続は二段のみならず、三段以上であっても光ツートーン信号を発生することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 光ツートーン信号発生部
12 光伝送路
14 DMUX(Optical De-MUltipleXer:光デマルチプレクサ)
16a 光伝送路
16b 光伝送路
18 光変調器
18c VA(Variable Attenuator)
18d VA(Variable Attenuator)
18e PS(Phase Shifter)
20 MUX(Optical Multiplexer:光マルチプレクサ)
21 LD(Laser Diode)
22 光伝送路
23 LO(Local Oscillator)
24 光源変換部(High Speed PD)
25 第1のMZI(Mach-Zehnder Interferometer)
26 アンテナ
27 第2のMZI(Mach-Zehnder Interferometer)
29 第3のMZI(Mach-Zehnder Interferometer)
31 PD(Photo Diode)
50 PS(Phase Shifter)
π MZIの半波電圧
第1のMZIのRF駆動電圧
第2のMZIのRF駆動電圧
bias−1 第1のMZIのDCバイアス電圧
bias−2 第2のMZIのDCバイアス電圧
bias−3 第3のMZIのDCバイアス電圧
Δφ 第1のMZIのRF信号と第2のMZIのRF信号との位相差
Jn(.) n次の第一種ベッセル関数
α 第3のMZIの上下アーム間の分岐比
ωRF 光ツートーン信号発生部が発生する光ツートーン信号の周波数間隔(LOが発生
する周波数)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7