【課題を解決するための手段】
【0012】
最初に、一般的な光ツートーン信号の発生方法を説明する。コヒーレントな光信号を光変調器に入力し、奇数次もしくは偶数次のいずれか一方のサイドバンド成分が強調されるようにDCバイアス点を調整した状態で、一定の周波数f
RFのRF信号を入力して前記コヒーレントな光信号を変調する。なお、後述するような構成によって複数のサイドバンド成分のうち特定の次数のサイドバンドのみを強調し、その他の不要サイドバンド成分および主キャリア成分を抑制することが可能である。
【0013】
しかし、一般的に、サイドバンド成分の強度は、次数が高くなるにつれて低下する。そのため、たとえば1台のDP−MZMを用いて±1次のサイドバンド成分を強調した場合と、同じDP−MZMの駆動条件を変更して±2次のサイドバンド成分を強調した場合は、±1次のサイドバンド成分の方が高い強度を容易に得られる。
【0014】
さらに、±2次のサイドバンド成分を強調するように駆動した場合、同じ偶数次である主キャリア成分(0次成分)が残留しやすく、これを抑制するためには様々な駆動条件を精密に調整する必要がある。
【0015】
以上の理由から、±1次のサイドバンドを強調して入力RF信号の周波数f
RFの2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生する場合、±2次のサイドバンドを強調して入力RF信号の周波数f
RFの4倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を発生する場合と比較して、より簡便な調整で高い不要成分の抑圧比を実現することができる。
【0016】
このような考察に基づき、本発明者らは、1台目のDP−MZMを用いて不要成分の抑圧比が高い±1次のサイドバンド成分を発生し、さらにその±1次のサイドバンド成分を2台目のDP−MZMを用いて同じ周波数f
RFのRF信号で変調することで、±2次に相当するサイドバンド成分を生成する方式を発明した。
【0017】
2台目のDP−MZMを1台目のDP−MZMと同じ信号源から分岐したRF信号を用いることで、2台目のDP−MZMから出力される光ツートーン信号の周波数間隔を、入力RF信号の周波数f
RFに対して正確に4倍の値にすることができる。
【0018】
また、2台目のDP−MZMは1台目のDP−MZMと同様に高い不要成分の抑圧比が得られる条件で駆動できるので、出力される光ツートーン信号は高い不要成分の抑圧比を実現できる。
【0019】
(1)上記の課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、光ツートーン信号の生成方法であって、上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームおよび下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器2台を縦続接続し、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V
1、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V
2、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に基づいて、前記RF駆動電圧V
1およびRF駆動電圧V
2を補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφ
sを与えることを特徴とする。
【0020】
このように、DP−MZM型光変調器2台を縦続接続し、各DP−MZMの各マッハツェンダー変調器を駆動するためのパラメータを決定し、さらに、第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に従ってRF駆動電圧V
1およびRF駆動電圧V
2を補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号との間に所定の位相差Δφ
sを与えることで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0021】
(2)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法において、前記位相差Δφ
sは、π/2であることを特徴とする。
【0022】
このように、第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の間に位相差π/2を与えることにより、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが容易に可能となる。
【0023】
(3)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるようなDP−MZMを用いて入力RF信号の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V
1、前記RF駆動電圧V
2、および光信号に半波長分に相当するπの位相変調を与える電圧V
πを用いて、パラメータδ
1およびδ
2を、δ
1,2=(πV
1,2)/V
πと定義し、各パラメータδ
1-およびδ
2が、δ
1-=δ
2となるように設定し、かつパラメータδ
1およびδ
2と各サイドバンド成分の強度との関係において、所望の1次サイドバンド成分を保持しつつ、不要なサイドバンド成分を抑制するためのパラメータδ
1およびδ
2の最適点は、所望の1次サイドバンド成分の強度が最大値となる点以下であって、5次サイドバンド成分が所定の閾値以下となる点以上となる範囲に分布することを特徴とする。
【0024】
このように分岐比αが0.5であるDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、特に各パラメータδ
1-およびδ
2を所定の値(但しδ
1-=δ
2である)に設定することで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0025】
(4)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V
1、前記RF駆動電圧V
2、および光信号に半波長分に相当するπの位相変調を与える電圧V
πを用いて、パラメータδ
1およびδ
2を、δ
1,2=(πV
1,2)/V
πと定義し、分岐比αが0.5ではない場合に、パラメータδ
1-を一定値とし、パラメータδ
2を変化させることにより、パラメータδ
2と所望の1次サイドバンド成分に対する不要なサイドバンド成分の抑圧比との関係において、所望の1次サイドバンド成分を保持しつつ、不要なサイドバンド成分を抑制するためのパラメータδ
2の最適点は、所望の1次サイドバンド成分に対する3次サイドバンド成分の抑圧比が最大となる点を含む一定の範囲に分布することを特徴とする。
【0026】
このようにDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、分岐比αが0.5ではない場合に、パラメータδ
1-を一定値とし、パラメータδ
2を変化させることで、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0027】
(5)また、本発明の光ツートーン信号の生成方法は、前記各DP−MZM型光変調器において、分岐比αが0.5であるDP−MZMを用いて入力RF信号の周波数の2倍の周波数間隔を有する光ツートーン信号を生成しようとする時、前記RF駆動電圧V
1、前記RF駆動電圧V
2、前記位相差Δφ、前記DCバイアス電圧V
bias−1、前記DCバイアス電圧V
bias−2、および前記DCバイアス電圧V
bias−3は、光信号に半波長に相当するπの位相変調を与える電圧V
πを用いて、以下の表の通りに定められることを特徴とする。
【0028】
【表1】
このように分岐比αが0.5であるDP−MZMを駆動するためのパラメータを決定することにより、特に各パラメータδ
1-およびδ
2を所定の値(但しδ
1-=δ
2である)に設定することで、入力した光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分からなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0029】
(6)また、本発明の光変調器の制御方法は、上側アームと下側アームにそれぞれ並列に配置された第1および第2の副マッハツェンダー干渉計、および前記各副マッハツェンダー干渉計を含む上側アームと下側アームからなる第3の主マッハツェンダー干渉計を有するDP−MZM(Dual Parallel Mach-Zehnder Modulator)型光変調器の制御方法であって、縦続接続された2台のDP−MZM型光変調器のうち、第1のDP−MZM型光変調器にコヒーレントな光信号を入力し、前記第1のDP−MZM型光変調器から出力された光信号を第2のDP−MZM型光変調器に入力し、前記各DP−MZM型光変調器の前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V
1、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号の位相差Δφ、前記第1の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−1、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するRF駆動電圧V
2、前記第2の副マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−2、並びに前記第3の主マッハツェンダー干渉計に対して印加するDCバイアス電圧V
bias−3によって、前記各マッハツェンダー干渉計を駆動する際に、前記第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に基づいて、前記RF駆動電圧V
1およびRF駆動電圧V
2を補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφ
sを与えることを特徴とする。
【0030】
このように、2台のDP−MZM型光変調器を縦続接続し、各DP−MZMの各マッハツェンダー変調器を駆動するためのパラメータを決定し、さらに、第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に対する光信号の分配比率α:(1−α)に従ってRF駆動電圧V
1およびRF駆動電圧V
2を補正すると共に、前記第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と前記第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差Δφ
sを与えるので、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが可能となる。
【0031】
(7)また、本発明の光変調器の制御方法において、前記位相差Δφ
sは、π/2であることを特徴とする。
【0032】
このように、第1のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号と第2のDP−MZM型光変調器の第1および第2の副マッハツェンダー干渉計に入力されるRF信号とに位相差π/2を与えることにより、生成される光ツートーン信号の周波数間隔が入力RF信号の周波数の4倍である所望のサイドバンド成分のみからなる、純度の高い光ツートーン信号を生成することが容易に可能となる。