【文献】
Myriam Pire, et al.,Imidazole-promoted acceleration of crosslinking in epoxidized natural rubber/dicarboxylic acid blends,Polymer,ELSEVIER,2011年,vol. 52,5243-5249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Aが、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ及びカルボニル基から選択される少なくとも1個の基により置換されている、請求項1又は2記載のゴム組成物を含むタイヤ。
前記Aが、1個以上のカルボン酸官能基により、及び/又は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールもしくはアラルキル基から選択される1個以上の炭化水素基であって、これ自体が1個以上のカルボン酸官能基で置換されている炭化水素基により、置換されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
前記ポリカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、トリメシン酸又は3,4-ビス(カルボキシメチル)シクロペンタンカルボン酸である、請求項1〜5のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
前記イミダゾールの含有量が、前記一般式(I)のポリカルボン酸に存在する前記カルボン酸官能基に対して、0.01〜4モル当量の範囲内である、請求項1〜8のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0014]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、式中のAが共有結合又は1〜1800個の炭素原子、好ましくは2〜300個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を表す。より好ましくは、Aは、炭素原子数が2〜100個、好ましくは2〜50個の二価の炭化水素基を表す。更に好ましくは、Aは、炭素原子数が3〜50個、好ましくは5〜50個の二価の炭化水素基を表す。更により好ましくは、Aは、炭素原子数が8〜50個、好ましくは10〜40個の二価の炭化水素基を表す。
【0013】
[0015]
また、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、式中のAが脂肪族もしくは芳香族系の二価の基又は少なくとも脂肪族部位及び芳香族部位を有する基を表す。好ましくは、Aは、脂肪族系の二価の基又は少なくとも脂肪族部位及び芳香族部位を有する基を表す。更に好ましくは、Aは、飽和又は不飽和脂肪族系の二価の基を表す。Aがアルキレン基であることが非常の好ましい。
[0016]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、Aは、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素によって中断されている。
[0017]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、Aは、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ及びカルボニル基から選択される少なくとも1個の基により置換されている。好ましくは、Aは、1個以上のカルボン酸官能基により、及び/又は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールもしくはアラルキル基から選択される1個以上の炭化水素基であって、これ自体が1個以上のカルボン酸官能基で置換されている炭化水素基により、置換されている。選択的であるが、好ましくは、Aはこのほかのカルボン酸官能基を含まない。
【0014】
[0018]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、多酸含有量が0.2〜100phr、好ましくは0.2〜50phrに及ぶ範囲内である。更に好ましくは、多酸含有量が0.4〜27phr、好ましくは0.9〜20phrに及ぶ範囲内である。
[0019]
本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、
‐R
1が水素原子、又は、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基もしくは炭素原子7〜25個のアラルキル基を表し、これらの基は、1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよく、
‐R
2が、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基又は炭素原子7〜25個のアラルキル基を表し、これらの基は、1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよく、
【0015】
‐R
3及びR
4が独立して、水素原子、又は、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基もしくは炭素原子7〜25個のアラルキル基から選択される同じ又は異なる基であって、任意でヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよい基か、或は、R
3及びR
4が結合するイミダゾール環の炭素原子と一緒になって炭素原子数5〜12個、好ましくは5又は6個の炭素原子を有する芳香族環、ヘテロ芳香族環又は脂肪族環から選択される環を形成する。
[0020]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、R
1が、任意で置換されていてもよい、炭素原子2〜12個のアルキル基又は炭素原子7〜13個のアラルキル基から選択される基を表す。
[0021]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、R
1が置換されていてもよい炭素原子7〜13個のアラルキルを表し、R
2が炭素原子1〜12個のアルキル基を表す。より好ましくは、R
1が置換されていてもよい炭素原子7〜9個のアラルキル基を表し、R
2が炭素原子1〜4個のアルキル基を表す。
【0016】
[0022]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、R
3及びR
4が独立して、水素原子、又は、炭素原子1〜12個のアルキル基、炭素原子5〜8個のシクロアルキル基、炭素原子6〜24個のアリール基もしくは炭素原子7〜13個のアラルキル基から選択される、置換されていてもよい同じ基又は異なる基を表す。
[0023]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、R
3及びR
4が、結合するイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、シクロヘキセン環又はシクロペンテン環を形成する。
[0024]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、イミダゾール含量が、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基に対して、0.01〜4モル当量、好ましくは0.01〜3モル当量の範囲内である。より好ましくは、イミダゾール含量が、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基に対して、0.01〜2.5モル当量、好ましくは0.01〜2モル当量、更に好ましくは0.01〜1.5モル当量の範囲内である。
[0025]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、エポキシド官能基を含むポリマーが、熱可塑性ポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ化ジエンエラストマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
[0026]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、エポキシド官能基を含むポリマーが、1〜100phr、好ましくは5〜100phrを表す。
[0027]
好ましくは、本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、前記補強充填剤が、カーボンブラック又はシリカ又はカーボンブラックとシリカとの混合物を含む。好ましくは本発明の主題は、上に定義したタイヤであって、補強充填剤の含量が20phrと200phrの間である。
[0028]
本発明のタイヤは、乗用車両、二輪車(オートバイ、自転車)、バン、ヘビーデューティー車両、即ち地下鉄、バス、積載量が重い道路運送車両(貨物自動車、牽引車、トレーラー)、オフロード車、重量級の農業用車両又は地ならし用装置、航空機、及び他の運搬用又は操作用車両から選択される産業用車両を特に意図したものである。
[0029]
本発明及びその有利な点については、以下の説明と実施例に鑑みれば、容易に理解できよう。
【0018】
I.試験
[0030]
硬化後、以下に示すようにゴム組成物の特徴を明らかにする。
I.1. 引張試験
[0031]
これらの引張試験により、弾性応力及び破断点特性を求めることができる。特に明示しないかぎり、引張試験はフランス規格NF T46-002(1988年9月)に準じて行う。また、引張の記録を処理することによって、伸びに応じたモジュラス曲線をプロットすることができる。ただし、ここで使用するモジュラスとは、最初の伸びで測定した呼称(又は見掛)割線モジュラスで、試験片の初期横断面に修正して(reduce)算出する。呼称割線モジュラス(又は見掛の応力、単位MPa)は、最初の50%伸び率において、また、100%伸び率において測定したもので、それぞれ、MSA50及びMSA100で示す。
[0032]
破断応力(MPa)及び破断点伸び(%)は、NF T46-002規格に準じて温度23±2℃で測定する。
【0019】
I.2. 動的性質
[0033]
動的性質は、ASTM D5992-96規格に準じて粘度分析器(Metravib VA4000)で測定する。架橋組成物の試料(厚み4mmで断面積400mm
2の円筒状試験片)に、ASTM D1349-99規格にしたがって、周波数10Hz、基準の温度条件(23℃)下、或は、場合によって異なる温度で、単純な交互正弦剪断応力を与えた時の反応を記録する。ひずみ振幅掃引(strain amplitude sweep)を、 0.1〜100%(アウトワードサイクル(outward cycle))、次に100〜0.1%(リターンサイクル(return cycle))まで行う。使用した結果は、誘電損 (tan(δ))である。リターンサイクルは、観察したtan(δ)の最大値(tan(δ)max (23℃)で表す)が示される。
[0034]
当該分野の当業者には周知であるように、tan(δ)max(23℃)の値は、材料のヒステリシスを示すものであり、それゆえ、転がり抵抗を示す値であることに留意されたい。即ち、tan(δ)max(23℃)が低いほど、転がり抵抗が小さくなる。
【0020】
II. 本発明のタイヤの組成物
[0035]
本発明のタイヤは、エポキシド官能基を含有する少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種の補強充填剤と、前記ポリマーを架橋するための、一般式(I)のポリカルボン酸及び一般式(II)のイミダゾールを含む架橋系とをベースとしたゴム組成物を有する。
[0036]
「ベースとした」組成物という表現は、使用する様々な構成成分の混合物及び/又は反応生成物を含む組成物を意味すると解すべきで、これらの構成成分のいくつかは、組成物の様々な製造工程において、とりわけ架橋又は加硫の際に、少なくとも一部が互いに反応することが可能であるか、又は、反応することを意図したものである。
[0037]
「モル当量」という表現は、当該分野の当業者には周知であるが、参照化合物のモル数に対する該当化合物のモル数の商を意味すると解すべきである。つまり、化合物Aに対して2当量の化合物Bとは、1モルの化合物Aを使用した際の2モルの化合物Bを表す。
【0021】
[0038]
「主となる」化合物と記載の場合、本発明の定義の範囲においては、組成物中のいくつかの同じタイプの化合物の中、当該化合物が主となることを意味し、換言すると、いくつかの同じタイプの化合物の中で質量による量が最も多い化合物を意味すると解される。例えば、主となるポリマーとは、組成物中のポリマー類の総質量に対して最も多く質量を占めるポリマーということである。同様に、「主となる」充填剤とは、組成物のいくつかの充填剤の中で最も多く質量を占める充填剤である。一例を挙げると、ポリマー1種のみを含む系では、本発明の定義においては、そのポリマーが主となるポリマーであり、2種のポリマーを含む系においては、主となるポリマーは、2種のポリマーの質量の半分より多くを示す。
[0039]
一方、「マイナー」化合物とは、いくつかの同じタイプの化合物の中で質量的に最大部分ではない化合物である。
【0022】
[0040]
本願明細書において、特に明示しないかぎり、パーセント(%)はすべて質量によるパーセント(%)である。更に、「aとbの間」という表現で示す数値範囲は、「a」より大きく「b」より小さい範囲の値を示し(即ち、aとbという限界点は除かれる)、一方、「aからb」という表現で示す数値範囲は「a」から「b」に至る範囲の数値(即ち、厳密な限界点aとbとを含む)を意味する。
II.1. エポキシド官能基を含むポリマー(エポキシポリマー)
[0041]
エポキシド官能基を含むポリマーとは、当該分野の当業者には公知の定義の範囲内で、ポリマーが熱可塑性であろうと、エラストマー特性を有していようと、また、樹脂かエラストマーかによらず、ポリマーがエポキシド(又はエポキシ)官能化されているもの、換言するならば、エポキシド官能基を有しているものはいずれのタイプのポリマーも意味するものと解される。
【0023】
[0042]
エポキシポリマーは、熱可塑性ポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ化ジエンエラストマー及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、エポキシポリマーは、エポキシ樹脂及び/又はエポキシ化ジエンエラストマーから選択される。
[0043]
エポキシ化ジエンタイプのエラストマー又はゴム(この二つの用語は公知のごとく同義であり入れ替えることができる)とは、ジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素‐炭素二重結合を有するモノマー)に少なくとも部分的に(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)由来し、官能化されたエラストマー、即ちエポキシド官能基を有するエラストマーを意味すると解すべきことに留意する必要がある。
[0044]
そこで、エポキシ化ジエンエラストマーの第1の特徴は、ジエンエラストマーであるということである。このジエンエラストマーは、本特許出願における定義によれば、非熱可塑性であり、ガラス転移温度Tgが非常に多くの場合はマイナス(即ち、0℃未満)であるが、公知のように2つのカテゴリーに分類することができる。即ち、「本質的に不飽和」と言われるものと「本質的に飽和」と言われるものである。「本質的に不飽和」であるジエンエラストマーのカテゴリーにおいて、「高不飽和」ジエンエラストマーとは、ジエン源(共役ジエン)単位の含量が50%より多いジエンエラストマーを特に意味するものと解される。
【0024】
[0045]
少なくとも1種の高不飽和ジエンエラストマーの使用が好ましく、特には、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン共重合体、イソプレン共重合体及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーの使用が好ましい。
[0046]
熱可塑性ポリマー及び前述のジエンエラストマーのTgは、DSC(示差走査熱量測定)により公知の方法で測定するが、例えば、本願明細書で特に指定のないかぎり、ASTM D3418(1999)規格に準じて測定する。
[0047]
本発明の要件に使用するエポキシ化ジエンエラストマーの第2の重要な特徴は、官能化され、エポキシド官能基を有していることである。
【0025】
[0048]
このようなエポキシ化ジエンエラストマー及びその調製方法は、当該分野の当業者には周知であり、市販もされている。エポキシド基を有するジエンエラストマーは、例えば、US2003/120007又はEP0763564及びUS6903165又はEP1403287に記載されている。
[0049]
エポキシ化ジエンエラストマーは、エポキシ化天然ゴム(NR)(「ENR」と略す)、エポキシ化合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリブタジエン(BR)で、好ましくはシス-1,4-結合含有量が90%より多いもの、エポキシ化ブタジエン/スチレン共重合体(SBR)及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
[0050]
エポキシ化天然ゴム(「ENR」と略す)は、例えば、公知の方法で天然ゴムをエポキシ化することで得られる。具体的には、クロロヒドリンもしくはブロモヒドリンをベースとした方法、又は、過酸化水素、アルキルヒドロ過酸化物(hydroperoxydes)もしくは過酸(peracides)(例えば過酢酸又は過蟻酸等)をベースとした方法による。このようなENRは、例えば、Guthrie Polymer社から商品名ENR-25及びENR-50(それぞれのエポキシ化度が25%及び50%)で販売されている。エポキシ化BRは、これ自体も周知であり、例えば、Sartomer社の商品名Poly Bd(Poly Bd 605E等)が販売されている。エポキシ化SBRは、当該分野の当業者には周知であるエポキシ化技術により調製することができる。
【0026】
[0051]
前述のエポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化度(mol%)は、本発明の具体的な実施形態によって広い範囲で異なっていてもよく、好ましくは、0.2〜80%、好ましくは2〜50%、より好ましくは2.5〜30%の範囲内がよい。エポキシ化度が0.2%未満では、目標とする技術的効果が不十分になるおそれがあり、80%を超えると、ポリマーの分子量が非常に低下する。これらすべての理由により、官能化度、特にエポキシ化度は、2.5〜30%の範囲内が更に好ましい。
[0052]
上記エポキシ化ジエンエラストマーは、公知のごとく、周囲温度(20℃)では固体である。固体とは、最大24時間経過後、重力と周囲温度(20℃)の影響のみで、収容されている容器の形状を最終的にとることができない物質を意味するものと解される。本発明のゴム組成物はジエンエラストマーを含有する。
【0027】
[0053]
エポキシポリマーもエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂には、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等のすべてのポリエポキシ化合物が含まれる。芳香族エポキシ化合物の中では、とりわけ、エポキシノボラック樹脂、2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド] 及びこれらの化合物の混合物が好ましい。一例であるが、Huntsman社販売の樹脂ECN1273、ECN1280、ECN1299及びECN 9511、Dow Chemicals社販売の樹脂DER 332、DER 354、DER 383、DEN 425、DEN 431、DEN 438及びDEN 439が挙げられる。
[0054]
エポキシ化度はエポキシ官能基に対する樹脂の平均モル質量で表される(EEW = エポキシ等価質量)が、例えば、50〜1000g/当量の範囲内で異なっていてもよい。本発明の要件から、エポキシ化度は、100〜600g/当量、好ましくは150〜300g/当量の範囲であることが好ましい。
【0028】
[0055]
本発明のタイヤの組成物は、1種のみのエポキシポリマー又はいくつかのエポキシポリマーの混合物(この場合、「エポキシポリマー」と単数形で記し、本組成物のエポキシポリマーを合わせたものを示す)を含んでいてもよい。
[0056]
エポキシポリマーの量は、エポキシポリマーの性質に応じて、1〜100phrに及ぶ範囲が好ましい。より好ましくは、5〜100phrに及ぶ範囲である。
[0057]
第1の好適な実施形態では、エポキシポリマーの量が1〜20phrに及ぶ範囲である。3〜20phrに及ぶ範囲の量が好ましくは選択され、より好ましくは5〜18phrである。
[0058]
本発明の第2の好適な実施形態によると、ゴム組成物は、例えば、30〜100phr、とりわけ50〜100phrのエポキシポリマーを含有する。上記実施形態において、組成物が100phrの1種以上のエポキシポリマーを含むことがより好ましい。
【0029】
II.2. 補強充填剤
[0059]
タイヤ製造に使用可能なゴム組成物の強化能力が公知である補強充填剤であれば、いずれのものも利用できる。例えば、カーボンブラック等の有機充填剤、シリカ等の無機補強充填剤、又は、この2つのタイプの充填剤をあわせて利用できる。とりわけ、カーボンブラックとシリカを合わせて利用することが好ましい。
[0060]
従来よりタイヤに使用されているすべてのカーボンブラック類(タイヤグレードのブラック)、とりわけHAF、ISAF又はSAFタイプのブラックがカーボンブラックとして適している。後者のなかで、補強用カーボンブラック100、200又は300シリーズ(ASTMグレード)、例えばN115が挙げられる。
【0030】
[0061]
N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375ブラック、或は、目的の用途によっては、更に上のシリーズのブラック(例えば、N660、N683又はN772)が挙げられる。カーボンブラックは、イソプレンエラストマーには、先に混和させてマスターバッチ形態にしてもよい(例えば、国際特許出願WO97/36724又はWO99/16600参照)。
[0062]
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、国際特許出願WO-A-2006/069792、WO-A-2006/069793、WO-A-2008/003434及びWO-A-2008/003435に記載のごとく、官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0031】
[0063]
「無機補強充填剤」という用語は、本願明細書での定義は、カーボンブラックに対して、「白色充填剤」「透明充填剤」又は「黒以外の充填剤」として知られるもので、仲介するカップリング剤以外の手段を用いることなく、それ自体のみでタイヤ製造用のゴム組成物を強化することができるもの、換言するならば、従来のタイヤグレードのカーボンブラックの代わりに補強の役目を果たすことができる、いずれの無機又は鉱物系充填剤(色や、何からできているか、天然又は合成かは問題ではない)も意味すると解される。このような充填剤の一般的な特徴は既知で、その表面に水酸基(-OH)が存在することである。
[0064]
無機補強充填剤は、粉末状、ミクロビーズ状、顆粒状、ビーズ状又は適宜圧縮したその他の形態のいずれにしても、提供する際の物理的形態は重要ではない。当然のことながら、無機補強充填剤も、異なる無機補強充填剤の混合物、とりわけ、後述のような高分散性珪質充填剤及び/又はアルミナ質充填剤の混合物も意味すると解される。
【0032】
[0065]
珪質タイプの鉱物系充填剤、なかでもシリカ(SiO
2)、又は、アルミナ質タイプの充填剤、なかでもアルミナ(Al
2O
3)は無機補強充填剤として特に好適である。シリカとしては、この分野の当業者に公知のいずれの補強用シリカも使用できる。なかでも、BET比表面積及びCTAB表面積がともに450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gを示す沈降シリカ又はヒュームドシリカが使用できる。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、例えば、デグサ社製シリカ、Ultrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、ローディア社製シリカ、Zeosil 1165MP、1135MP及び1115MP、PPG社のシリカ、Hi-Sil EZ150G、フーバー社のシリカ、Zeopol 8715、8745及び8755、又は、国際特許出願WO03/16837に記載の高比表面積シリカが挙げられる。
[0066]
無機補強充填剤を使用する場合、特にはそれがシリカである場合、BET表面積が45と400m
2/gの間、より好ましくは60と300m
2/gの間であるとよい。
[0067]
全補強充填剤(カーボンブラック及び/又はシリカ等の無機補強充填剤)の含有量は、好ましくは、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間であり、最適な含有量は、公知のごとく、目的とする特定の用途に応じて異なる。例えば、自転車のタイヤに期待される補強レベルは、当然のことながら、高速で継続的な走行が可能なタイヤ、例えば、自動車のタイヤ、乗用車両のタイヤ又は大型車等の実用車両のタイヤに要求されるレベルよりも低い。
【0033】
[0068]
本発明の好適な実施形態によると、有機充填剤、特にカーボンブラックを30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間で含み、任意でシリカを含んでもよい補強充填剤が使用される。シリカを含有する場合は、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば0.1phrと10phrの間)の含有量でシリカを使用することが好ましい。この好適な実施形態は、組成物の主となるエラストマーがエポキシ化イソプレンゴム、とくにはエポキシ化天然ゴムである場合、特に好ましい。
[0069]
或は、本発明の別の好適な実施形態は、無機充填剤、特にシリカを30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間で含み、更に任意でカーボンブラックを含んでもよい補強充填剤が使用される。カーボンブラックを含有する場合は、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば0.1phrと10phrの間)の含有量でカーボンブラックを使用することが好ましい。この好適な実施形態も、組成物の主となるエラストマーがエポキシ化イソプレンゴム、とくにはエポキシ化天然ゴムである場合、特に好ましい。
【0034】
[0070]
無機補強充填剤をジエンエラストマーに結合させるには、公知のごとく、無機充填剤(充填剤粒子表面)とジエンエラストマーとを化学的及び/又は物理的に十分に結合させることを目的とした、少なくとも二官能性のカップリング剤(結合剤)、とりわけ、二官能性オルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用するとよい。
[0071]
例えば、特許出願WO03/002648(又はUS2005/016651)及びWO03/002649(又はUS2005/016650)に記載のごとく、その独特な構造によって「対称」又は「非対称」と呼ばれるシラン多硫化物を使用することができる。
[0072]
下記の定義に限定するものではないが、以下の一般式(I)に相当する「対称」と呼ばれるシラン多硫化物が特に好適である。
【0035】
(I) Z - A - S
x - A - Z
式中、
‐xは2〜8の整数(好ましくは2〜5)であり、
‐Aは二価の炭化水素基(好ましくはC
1-C
18アルキレン基又はC
6-C
12アリーレン基、より好ましくはC
1-C
10アルキレン、特にはC
1-C
4アルキレン、なかでもプロピレン)を表し、
‐Zは下記式のうちの1つに相当する。
【0037】
式中、
- R
1基は、置換又は未置換の、互いに同じであっても異なっていてもよい、C
1-C
18アルキル、C
5-C
18シクロアルキル又はC
6-C
18アリール基(好ましくは、C
1-C
6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、特にはC
1-C
4アルキル基で、より好ましくはメチル及び/又はエチル)を示し、
- R
2基は、置換又は未置換の、互いに同じであっても異なっていてもよい、C
1-C
18アルコキシル又はC
5-C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1-C
8アルコキシル及びC
5-C
8シクロアルコキシルから選択される基、より好ましくは、C
1-C
4アルコキシルから選択される基、特にはメトキシル及びエトキシル)を示す。
[0073]
上記式(I)に相当するアルコキシシラン多硫化物の混合物の場合、特には市販の通常の混合物の場合、指数「x」の平均値は、好ましくは2と5の間の分数、より好ましくは約4である。しかしながら、本発明は、例えばアルコキシシラン二硫化物(x=2)でも有利に行うことができる。
【0038】
[0074]
シラン多硫化物の例として、より好ましくは、ビス((C
1-C
4)アルコキシル(C
1-C
4)アルキルシリル(C
1-C
4)アルキル)多硫化物(とりわけ、二硫化物、三硫化物又は四硫化物)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)多硫化物を挙げることができる。これらの化合物のなかで、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)四硫化物(TESPTと略す)、又は、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2のビス(トリエトキシシリルプロピル)二硫化物(TESPDと略す)が特に用いられる。好適な例として、特許出願WO02/083782(又はUS2004/132880)に記載のごとく、ビス(モノ(C
1-C
4)アルコキシルジ(C
1-C
4)アルキルシリルプロピル)多硫化物(特には、二硫化物、三硫化物又は四硫化物)、より好ましくはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)四硫化物も挙げられる。
【0039】
[0075]
アルコキシシラン多硫化物以外のカップリング剤として、例えば、特許出願WO02/30939(又はUS6774255)及びWO02/31041(又はUS2004/051210)に記載の二官能ポリオルガノシロキサン(POS)、ヒドロキシシラン多硫化物(前記式IにおいてR
2=OH)、或は、例えば特許出願WO2006/125532、WO2006/125533及びWO2006/125534に記載のアゾジカルボニル官能基を有するシラン又はPOSが挙げられる。
[0076]
本発明のゴム組成物中、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは4phrと8phrの間である。
[0079]
このセクションに記載した無機補強充填剤と同等の充填剤として、別の特性を有する補強充填剤、なかでも有機特性の補強充填剤も、シリカ等の無機層で被覆するか、或は、充填剤とエラストマーとの結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位、とりわけ水酸基部位が補強充填剤表面にあれば、使用できることは当業者であれば理解できよう。
【0040】
II.3. エポキシポリマーの架橋系
[0078]
前述のエポキシポリマーと補強充填剤は、架橋が可能であるか又は本発明のタイヤ組成物の硬化が可能である架橋系で結合される。この架橋系は、一般式(I)で表されるポリカルボン酸の1種(即ち、少なくとも1種)と、一般式(II)で表されるイミダゾール1種(即ち、少なくとも1種)とを含む。
II.3.a. 多酸
[0079]
本発明の要件で使用する多酸は一般式(I)のポリカルボン酸である。
【0042】
式中、Aは共有結合又は少なくとも1個の炭素原子を含む炭化水素基を表し、任意で置換されていてもよいし、1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよい。
[0080]
好ましくは、一般式(I)の多酸において、Aが共有結合、又は、炭素原子数が1〜1800個、好ましくは2〜300個、より好ましくは2〜100個、更に好ましくは2〜50個の二価の炭化水素基を表す。炭素原子数が1800個を超えると、多酸はあまり有効でない架橋剤になる。そこで、Aは、炭素原子数が3〜50個、好ましくは5〜50個、より好ましくは8〜50個、更に好ましくは10〜40個の二価の炭化水素基を表すとよい。
[0081]
一般式(I)の多酸において、好ましくは、Aが脂肪族もしくは芳香族系の二価の基又は少なくとも脂肪族部位及び芳香族部位を有する基を表す。好ましくは、Aが、脂肪族系の二価の基又は少なくとも脂肪族部位及び芳香族部位を有する基を表す。或は、Aが飽和又は不飽和脂肪族系の二価の基、例えば、アルキレン基であることが好ましい。
【0043】
[0082]
一般式(I)の多酸におけるAは、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは酸素によって中断されていてもよい。
[0083]
また、一般式(I)の多酸におけるAは、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ及びカルボニル基から選択される少なくとも1個の基により置換されていてもよい。
[0084]
一般式(I)の多酸は、2個より多いカルボン酸官能基を有していてもよい。その場合、A基は1個以上のカルボン酸官能基により、及び/又は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール又はアラルキル基から選択される1個以上の炭化水素基であって、これ自体が1個以上のカルボン酸官能基で置換されている炭化水素基により、置換されている。
【0044】
[0085]
好適な形態は、A基が更なるカルボン酸官能基を含まない。即ち、この多酸は二塩基酸である。
[0086]
好ましくは、多酸含有量が0.2〜100phr、好ましくは0.2〜50phr、より好ましくは0.4〜27phr、更に好ましくは0.9〜20phrに及ぶ範囲内である。多酸含有量が0.2phr未満であると、架橋効果が十分でない。一方多酸が100phrを超えると、架橋剤である多酸がポリマーマトリックスと比べて質量比で主となってしまう。
[0087]
本発明の要件により使用する多酸は市場から入手するか、或は、周知の技術にしたがって、例えば特許文献US7534917及びこの文献の引用文献に記載のように化学的ルートで、又は、特許文献US3843466に記載の発酵等の生物学的ルートで当該分野の当業者により容易に調製される。
【0045】
[0088]
例えば、市場から入手でき、本発明の要件に有用な多酸として、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、或は、トリメシン酸又は3,4-ビス(カルボキシメチル)シクロペンタンカルボン酸等の多酸が挙げられる。
II.3.b. イミダゾール
[0089]
本発明のタイヤでの架橋系で用いられるイミダゾールは、一般式(II)のイミダゾールである。
【0047】
式中、
‐R
1は炭化水素基又は水素原子を表し、
‐R
2は炭化水素基を表し、
‐R
3及びR
4は互いに独立して水素原子又は炭化水素基を表すか、或は、
‐R
3及びR
4は、これらが結合する前記イミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する。
[0090]
一般式(II)のイミダゾールは、以下の基を有することが好ましい。
‐R
1が水素原子、又は、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基もしくは炭素原子7〜25個のアラルキル基を表し、これらの基は1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよい。
‐R
2が、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基又は炭素原子7〜25個のアラルキル基を表し、これらの基は1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよい。
‐R
3及びR
4が独立して、水素原子、又は、炭素原子1〜20個のアルキル基、炭素原子5〜24個のシクロアルキル基、炭素原子6〜30個のアリール基もしくは炭素原子7〜25個のアラルキル基から選択される同じ又は異なる基であって、これらの基は任意でヘテロ原子で中断されていてもよく、及び/又は、置換されていてもよい。或は、R
3及びR
4が結合するイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、炭素原子数5〜12個、好ましくは5又は6個の芳香族環、ヘテロ芳香族環又は脂肪族環から選択される環を形成する。
【0048】
[0091]
好ましくは、R
1が、炭素原子2〜12個のアルキル基又は炭素原子7〜13個のアラルキル基から選択される基を表し、これらの基は任意で置換されていてもよい。より好ましくは、R
1が、置換されていてもよい炭素原子7〜13個のアラルキル基を表し、R
2が炭素原子1〜12個のアルキル基を表す。より好ましくは、R
1が置換されていてもよい炭素原子7〜9個のアラルキル基を表し、R
2が炭素原子1〜4個のアルキル基を表す。
[0092]
好ましくは、R
3及びR
4が独立して、水素原子又は、炭素原子1〜12個のアルキル基、炭素原子5〜8個のシクロアルキル基、炭素原子6〜24個のアリール基もしくは炭素原子7〜13個のアラルキル基から選択される同じ又は異なる基を表し、これらの基は任意で置換されていてもよい。或は、R
3及びR
4が、結合するイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、ベンゼン環、シクロヘキセン環又はシクロペンテン環を形成することが好ましい。
【0049】
[0093]
本発明の良好な操作のために、イミダゾール含量は、好ましくは、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基に対して、0.01〜4モル当量、好ましくは0.01〜3モル当量の範囲内である。0.01モル当量未満であると、多酸のみで用いられる状況と比べて、共に作用するイミダゾールの効果が見られない。一方、4モル当量を超えると、それよりも少ない含量の場合と比べて更なる有利性が見られない。それゆえ、イミダゾール含量は、一般式(I)のポリカルボン酸に存在するカルボン酸官能基に対して、0.01〜2.5モル当量、好ましくは0.01〜2モル当量、更に好ましくは0.01〜1.5モル当量に及ぶ範囲内である。
[0094]
本発明の要件で使用されるイミダゾールは、市場から入手するか、或は、例えばJP2012-211122及びJP2007-269658、又は、Science of Synthesis, 2002, 12, 325-528にも記載のように、周知の技術にしたがって当該分野の当業者により容易に調製される。
[0095]
例えば、市場から入手でき、本発明の要件に有用なイミダゾールとして、1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾール、又は、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0050】
II.3.c. 多酸及びイミダゾール
[0096]
明らかであるが、本発明で「〜をベースとした」という表現の定義にしたがうと、上記で説明した一般式(I)の多酸と一般式(II)のイミダゾールとをベースにした組成物は、該多酸と該イミダゾールが事前に反応し、多酸の1個以上の酸官能基と1個以上のイミダゾール核それぞれの間で塩が形成される組成物と考えられる。
II.4. 様々な添加剤
[0097]
本発明によるタイヤのゴム組成物は、トレッド製造向けのエラストマー組成物に一般的に使用される通常の添加剤、例えば、顔料、耐オゾンワックス、化学的オゾン亀裂防止剤又は酸化防止剤などの保護剤、疲労防止剤、上記以外の架橋剤、補強樹脂、或は可塑剤等をすべて又は一部を含有してもよい。前記可塑剤は、固体の炭化水素樹脂(又は可塑性樹脂)、エクステンダー油(可塑性オイル)又はこれら2種の混合物であることが好ましい。
【0051】
[0098]
これらの組成物には、カップリング剤に加えてカップリング活性剤や、無機充填剤の被覆剤、或は、更に一般的であるが、ゴムマトリックス中での充填剤の分散向上や組成物の粘度の抑制により、既知の方法で未硬化状態での加工性を改善できる加工助剤を含有してもよい。このような薬剤としては、例えば、アルキルアルコキシシラン等の加水分解性シラン、ポリオール、ポリエーテル、第一、第二もしくは第三アミン、又はヒドロキシル化ポリオルガノシロキサンもしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
[0099]
好ましいことに、本発明のタイヤの組成物は、前記の架橋系である少なくとも1種の多酸と少なくとも1つのイミダゾールとを含む架橋系以外の架橋系は含まない。換言するならば、少なくとも1種の多酸と少なくとも1つのイミダゾールとをベースとする架橋系が、好ましいことに、本発明のタイヤの組成物における唯一の架橋系である。好ましいことに、本発明のタイヤの組成物は、加硫系を含まないか、或は、組成物の1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満である。そのため、本発明のタイヤの組成物は、好ましいことに分子状硫黄を含まないか、或は、組成物の1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満である。同様に、該組成物は好ましいことに、当該分野の当業者には公知の加硫促進剤を含まないか、或は、組成物の1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満である。
【0052】
II.5. ゴム組成物の調製
[00100]
本発明のタイヤに使用する組成物は、好適な混合器中、当該分野の当業者に周知である連続する2調製段階を用いて作製することができる。第1段階の熱機械的処理又は混錬(「非生成工程」)は、最高温度が110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間となる高温でおこなう。それに続く第2段階の機械的処理(「生成工程」)は、通常は110℃未満、例えば40℃と100℃の間に温度を下げ、この仕上げ段階で架橋系を混入すればよい。
[00101]
本発明を実行するためには、好ましくは、組成物の全成分を密閉式ミキサーに導入する。これにより、「生成」工程中に加硫系を混和させずに済む。これは、本発明の組成物の架橋系のおかげで、混合物を高温で処理することが可能になるからである。従来の加硫系を含む組成物の調製と比べると、本発明の組成物の調製時における主要な利点となる。
【0053】
[00102]
こうして得られた最終組成物は、引き続きカレンダー処理を行えばよい。特に、実験室での特性表示用の場合は、板状又はプラック状にカレンダー処理すればよい。或は、本発明のタイヤの製造に使用される形状のゴムエレメントを形成するには、押出加工をすればよい。
II.6. 本発明のタイヤ
[00103]
本発明によるタイヤのゴム組成物は、タイヤの様々な部位に使用することができる。特には、クラウン、ビード部分、サイドウォール部、及びトレッド(特にはトレッドの下層)で使用することができる。
[00104]
本発明の好適な実施形態によると、前述のゴム組成物は、タイヤの少なくとも一部でエラストマー層として使用することができる。
[00105]
エラストマー「層」とは、ゴム(又は「エラストマー」で、この2つは同義とみなされる)組成物で作られた、三次元の構成部分であって、特には、シート状、細片状、又は、例えば断面が長方形又は三角形の部品など、形状も厚みもいかようであってもよい構成部分を意味するものと解される。
【0054】
[00106]
まず、エラストマー層は、タイヤクラウン部のトレッド(即ち、走行中に路面と接触することが想定されている部位)とクラウン補強用ベルトとの間に位置するトレッド下層として使用できる。このエラストマー層の厚みは好ましくは0.5〜10mmに及ぶ範囲で、特には1〜5mmの範囲内が好ましい。
[00107]
本発明の好適な別の実施形態では、本発明のゴム組成物を使用して、タイヤのビード部の、半径方向カーカスプライ、ビードワイヤとカーカスプライ折り返しとの間に位置するエラストマー層を形成することができる。
[00108]
同様に、本発明の組成物は、クラウンのプライ(タイヤベルト)又はクラウンのプライの端部とカーカスプライの間に使用することができる。
【0055】
[00109]
本発明の好適な別の実施形態は、本発明の組成物を使用してタイヤのサイドウォール部分に位置するエラストマー層を形成することができる。
[00110]
或は、本発明の組成物は、タイヤのトレッドに有利に使用することができる。
III. 本発明の実施例
III.1. 組成物の調製
[00111]
以下の試験を次のようにして行う。エポキシ化ジエンエラストマー、補強充填剤、多酸、イミダゾール及び他の添加剤を密閉式ミキサーに順次導入する(最終充填度:約70体積%)。ミキサーの初期容器温度はおよそ60℃である。その後、熱機械的処理(非生成工程)を全体で約3〜4分にわたり1回で行い、最高「落下」温度約180℃に到達させる。
[00112]
こうして得られた混合物を回収して冷却した後、引き続き、得られた混合物をカレンダー処理でプラック状(厚み2〜3mm)又は薄いゴムシート状のどちらかに形成して物理的又は機械的特性を測定するか、或は、形状の決まったエレメントに押出加工する。
【0056】
III.2. 実施例1
[00113]
本試験は、とりわけ本発明のタイヤトレッドとして使用することができるゴム組成物を示す。これらの組成物は、従来のゴム組成物(硫黄で加硫したもの)に比べて調製が容易で複雑でないだけでなく、硫黄で加硫した組成物に比べ、組成物のヒステリシスも優れている。
[00114]
そこで、ゴム組成物を上記に示したように調製した。表1に示すように、本発明に準じたもの(C3及びC4)と、準じていないもの(コントロールC1及びC2)である。
[00115]
組成物C1及びC2は加硫組成物(即ち、タイヤを硬化するための従来の硫黄をベースとした加硫系で架橋したもの)であり、一方、組成物C3及びC4は本発明による多酸及びイミダゾールで架橋した組成物である。
[00116]
組成物C1〜C4の特性を上記のように測定した。結果を表2に示す。
【0058】
(1)エポキシ化天然ゴムENR-25、Guthrie Polymer社製
(2)カーボンブラック N234(ASTM D-1765規格に準じた名称)
(3)シリカ 160MP、Zeosil 1165MP、Rhodia社製
(4)Dynasylan Octeo、Degussa社製
(5)N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Santoflex 6-PPD、Flexsys社製)
(6)ドデカン二酸、CAS 693-23-2、Sigma-Aldrich社製
(7)1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、CAS = 13750-62-4、Sigma-Aldrich社製
(8)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Santocure CBS、Flexsys社製)
(9)酸化亜鉛(工業グレード、Umicore)
(10)ステアリン(Pristerene 4931、Uniqema社製)
【0060】
本発明の組成物は、コントロール組成物よりも成分の数が少なく、混合物がより簡略であることを記しておく。更に、従来の加硫系を本発明で定めた多酸とイミダゾールとの架橋系に置き換えることによって、混合物のヒステリシスの向上が得られる一方、剛度/破断点伸びは加硫系のコントロールと同様であることがわかる。
III. 2. 実施例2
[00118]
この試験は、特にタイヤの下層又は底部で使用可能なゴム組成物を示す。この部分は高い低歪み剛度が求められる。本組成物は従来のゴム組成物(フェノール樹脂とメチレン供与体としてHMTとを含む)よりも剛度が高く、一方で、ヒステリシスのレベルは同じくらいの許容レベルを保つ。そのうえ、エポキシ樹脂と多酸及びイミダゾール系とを含む組成物に比べて、本発明の組成物の加工性及びスコーチに対する安全性は極めて向上する。
【0061】
[00119]
そこで、ゴム組成物を上記に示したように調製した。組成物C1及びC2がコントロール組成物で、組成物C3〜C6が本発明の組成物である(表1参照)。
[00120]
組成物C1〜C6の特性を上記に示したように測定した。結果を表2に示す。
[00121]
本発明の組成物C3〜C6では、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂‐HMT硬化剤の組合せペアーを、エポキシ樹脂とポリカルボン酸とイミダゾールとに置き換えることによって、組成物の加工性を非常に向上させることができる。これは、ムーニー値の低下で示されている。更に、40℃での複合的な動的剪断弾性率G
*(10%)がコントロール組成物の値と同等以上であり、本発明の組成物の低歪み剛度の上昇を表していることがわかる。その一方で、40℃での動的損失率(tan(δ)maxで示す)の上昇を抑えており、許容できるヒステリシスを保持している。
【0063】
(1)天然ゴム
(2)カーボンブラック N326 (ASTM D-1765規格に準じた名称)
(3)酸化亜鉛(工業グレード、Umicore)
(4)ステアリン(Pristerene 4931、Uniqema社製)
(5)N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Santoflex 6-PPD、Flexsys社製)
(6)80%不溶性硫黄
(7)促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Santocure CBS、Flexsys社製)
(8)樹脂1:フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂(Peracit 4536K、Perstorp社製)
(9)樹脂2:エポキシ樹脂「DEN 439」Dow Chemical社製
(10)樹脂3:エポキシ樹脂「ECN 1273」Huntsman社製
(11)硬化剤1:p-キシリレンジアミン(Sigma-Aldrich社製)
(12)硬化剤2:ヘキサメチレンテトラアミン(Degussa社製)
(13)硬化剤3:アジピン酸(CAS 124-04-9)、Sigma-Aldrich社製
(14)硬化剤4:テレフタル酸(CAS 100-21-0)、Sigma-Aldrich社製
(15)1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(CAS 13750-62-4)、Sigma-Aldrich社製
【0065】
まとめると、これらの試験結果から、本発明の組成物中でエポキシ樹脂とポリカルボン酸硬化剤を使用したことによって、加工性に優れ、従来の組成物(ここではコントロール組成物)と同等以上の低歪み剛度を有するゴム組成物を得ることができる。これは、路上挙動の向上と同じことを意味する。一方、特にタイヤの特定の部位、とりわけ、底部や下層での許容できるヒステリシスは保持されている。