(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、水素を燃料として走行する車両Aでは、
図9で示す様に、水素充填所で充填ホース201先端に設けた充填ノズル202と車両側充填口203とを接続して水素ガスを充填する。この充填は、車両Aに搭載された水素タンク204の最高使用圧力に応じて制御しながら行われる。
ここで、例えば充填中に車両Aが移動する等により充填ホース201が引っ張られると、充填ノズル202及び充填ホース201等の機器が破損して水素ガスが噴出し、危険な状態になる。そこで、緊急離脱用の管継手300を水素充填装置200と充填ホース201の途中に設け、一定以上の引張荷重が掛かると緊急離脱用の管継手300を分離して、充填ノズル202及び充填ホース201等の機器が破損する事態を防止している。
その様な緊急離脱用の管継手300は、充填ホース201に過大な引張力が作用した場合に分離し易い様に、
図10、
図11で示す様に、ソケット330(例えば水素充填装置側に連通)の中心線とプラグ310(例えば車両側に連通)の中心線とが一直線となる様に構成されている。
【0003】
図10、
図11は、従来技術に係る緊急離脱用の管継手300を示している。菅継手300は、結合用ボール400、結合用スプリング410を取り付けたスプリングホルダー420を有する機構により、ソケット330とプラグ310を連結し(非作動時)、或いは解除する(作動時)。
図10、
図11の管継手300では、
図10で示す非作動時(ソケット330とプラグ310が連結した状態)において、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311は先端(ピン接続端部350)同士が突き当てられた状態(いわゆる「突き当たった」状態)で一直線に配置され、相互に押圧し合う状態となっている。
そのため、ソケット側ピン331はプラグ側ピン311により押圧され、ソケット側スプリング332の弾性反撥力に抗して
図10で左側に移動する。その結果、ソケット側弁体333はソケット側弁座334から離隔した状態となる。
一方、プラグ側ピン311はソケット側ピン331により押圧され、プラグ側スプリング312の弾性反撥力に抗して
図10で右側に移動する。その結果、プラグ側弁体313はプラグ側弁座314から離隔した状態となる。
【0004】
水素ガス充填中に車両が発進してしまう等のトラブルにより充填ホースに所定値以上の過大な引張力が作用すると、
図11で示す様に、ソケット330とプラグ310が分離した状態となる(作動時)。
図11(作動時)はソケット330とプラグ310が分離しており、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311は相互に押圧し合ってはいない。そのため、ソケット側スプリング332の弾性反撥力によりソケット側ピン331は
図11で右側に移動して、ソケット側弁体333はソケット側弁座334に座着して、ソケット内流路335を遮断する。一方、プラグ側スプリング312の弾性反撥力によりプラグ側ピン311は
図11で左側に移動して、プラグ側弁体313はプラグ側弁座314に座着して、プラグ内流路315を遮断する。
その結果、ソケット330とプラグ310が分離した状態(作動時)において、ソケット330或いはプラグ310から高圧の水素ガスが外部に放出されてしまうことが防止される。
【0005】
図10、
図11で示す従来の緊急離脱用の管継手300では、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311はその一部がソケット内流路335或いはプラグ内流路315に位置している。
そのため、水素ガス漏洩防止の為、ソケット側ピン接続端部側シール材336(例えばOリング)とプラグ側ピン接続端部側シール材316(例えばOリング)を設けている。
係るシール材により、高圧の水素ガスを充填した場合においても、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311の先端同士が当接している箇所(ピン接続端部350)の圧力は大気圧と同程度に保持される。
【0006】
ここで、高圧の水素ガスを充填した際に、当該水素ガスがソケット側ピン他端部337及びプラグ側ピン他端部317に回り込んで、ソケット側ピン他端部337及びプラグ側ピン他端部317が高圧になることを防止するため、ソケット側ピン他端部側シール材338(例えばOリング)とプラグ側ピン他端部側シール材318(例えばOリング)が設けられている。
ソケット側ピン他端部側シール材338とプラグ側ピン他端部側シール材318を設けず、ソケット側ピン他端部337及びプラグ側ピン他端部317が高圧になってしまうと、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311の先端同士が押圧し合う力が増加して、緊急離脱用の管継手300の所定値を超えてしまい、ソケット330とプラグ310が分離してしまうからである。
また、ソケット側ピン331とプラグ側ピン311の先端同士が押圧し合う力の方向が、緊急離脱用の管継手300でソケット330とプラグ310が分離する方向と一致するので、分離したソケット330とプラグ310が吹き飛んでしまう恐れがある。
【0007】
上述した様に、
図10、
図11で示す従来の緊急離脱用の管継手300では、ソケット側ピン接続端部側シール材336、プラグ側ピン接続端部側シール材316、ソケット側ピン他端部側シール材338、プラグ側ピン他端部側シール材318が必要不可欠である。
しかし、これ等のシール材を設けるために構造が複雑となり、部品点数が増加してしまうという問題が存在する。
そして、例えばソケット330とプラグ310とが分離、着脱を繰り返す等の理由により、上述したシール材が劣化すると、高圧の水素ガスの漏洩リスクが生じる。そのため、充填ホースに過大な引張力が作用しなくてもソケット330とプラグ310が分離してしまう恐れがある。
【0008】
緊急離脱用の管継手は、
図10、
図11で示すもの以外にも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、緊急離脱カップリング11と充填装置1とはホース4Aを介して接続されているので、ホース4Aの両端が接続部となってしまうので、接続部が増加し、漏洩リスクが高くなるという問題を有している。
また、離脱時に、流出側の継手部材29内の移動ピン35がシールリング30Bに対して相対移動するため、シールリング30Bが損傷し或いは噛み込んでしまうので、シールリング30Bからの水素ガスの漏洩リスクが高くなるという不都合が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1〜
図4を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
管継手100(緊急離脱用の管継手)は、プラグ10とソケット20を備えている。
図1、
図2はプラグ10とソケット20が結合している状態である。
ここでプラグ10は基本的には車両側に連結し、ソケット20は基本的には水素充填機(或いはディスペンサー)側に連結される。ただし、プラグ10を水素充填機側に配置することも可能であるし、ソケット20を車両側に配置することも可能である。
【0023】
図1において、全体が筒状のプラグ10は、プラグ本体1とプラグ側ロッド収納ケース3を有している。
プラグ本体1の車両側(
図1で右側、ソケット20側から離隔した側)端部の中央部(
図1ではプラグ本体1の右端における上下方向中央部)には、充填ホース(図示しない)に接続される水素ガス供給口1Bが設けられている。
プラグ本体1の上下方向中央部には、プラグ内流路1Aが形成されており、プラグ内流路1Aは
図1では左右方向に延在している。プラグ内流路1Aには拡径された領域、プラグ側弁体収容部1Cが設けられている。プラグ内流路1Aは、プラグ側ロッド収納ケース3内の流路から、プラグ側弁体収容部1C内の流路を介して、水素ガス供給口1Bに延在している。
【0024】
プラグ内流路1Aにはプラグ側ロッド2が収容されている。プラグ側ロッド2のソケット20から離隔した側(
図1で右側)の先端には、プラグ側弁体6が設けられている。プラグ側弁体6は、弁体収容部1Cに収容されている。
弁体収容部1C内において、プラグ側弁体6の車両側(ソケット20から離隔した側:
図1で右側)にはプラグ側スプリング4(弾性材)が配置されており、プラグ側スプリング4はプラグ側弁体6をソケット20側(
図1で左側)に付勢している。プラグ側弁体6と弁座1Fによりプラグ側遮断弁5が構成されており、弁座1Fは弁体収容部1Cの段部により構成されている。そしてプラグ側遮断弁5は、プラグ側流路1Aを遮断し或いは開放する機能を有している。
プラグ側ロッド2において、弁体6とは反対側(
図1で左側)の先端部は係止部2Aを構成している。係止部2Aの先端(
図1で左側の先端部)はロッド2よりも小径であり、先端から弁体6側(
図1では右側)に移動するに連れて径寸法が増大し、係止部2Aの弁体6側(
図1では右側)の端部近傍は、ロッド2よりも大径となっている。
【0025】
図1において、プラグ本体1の車両側端部(
図1で右側)に設けられた水素ガス供給口1Bの半径方向外方には、フランジ部1Dが設けられている。フランジ部1Dは図示しない充填ホースとの接続面であり、プラグ10とソケット20とを接続する際に、プラグ収納用ハウジング26にフランジ部1Dが当接する。
プラグ本体1外周面であってフランジ部1Dよりソケット20側(
図1で左側)には、結合溝1E(プラグ側結合溝)が設けられており、結合溝1Eには、プラグ10とソケット20を結合する結合部材40(結合用ボール)が嵌合する。ここで、結合用ボール40は周方向に複数個設けられている。
【0026】
プラグ側ロッド収納ケース3は、プラグ10の上下方向中央部に設けられており、プラグ本体1からソケット20側(
図1では左側)に突出している。
プラグ側ロッド収納ケース3は、ソケット20側端部(
図1では左側端部)が閉鎖された中空筒状に形成されており、プラグ側ロッド収納ケース3の内部空間にはプラグ側ロッド2が収納されている。
プラグ側ロッド収納ケース3の外周の所定位置(ソケット側ロッド22の下端部に対応する位置)には、流路接続用の開口3Aが形成されており、開口3Aはソケット側ロッド22側に向けて(
図1で上方に向けて)開口している。
プラグ10とソケット20を結合する際は、プラグ側ロッド収納ケース3はソケット20(ソケット本体21)の開口部分21Cに挿入され、プラグ内流路1Aとソケット内流路21Aとは、開口3Aを介して連通する。
【0027】
図2において、プラグ側ロッド収納ケース3のソケット20側(
図2で左側)の先端近傍に係止用ボール用溝3Bが形成されており、係止用ボール用溝3Bには係止用ボール7が保持されている。
図2で示す様に、プラグ側ロッド2の係止部2Aのテーバー部により、係止用ボール7は、半径方向外方に押圧される。しかし、
図2で示す状態(プラグ10とソケット20が結合した状態)では、プラグ20の開口部分21Cの内壁面により、係止用ボール7は
図2で示す状態よりもプラグ側ロッド収納ケース3の半径方向外側には移動しない。
一方、
図4で示す様に、プラグ10とソケット20が分離した状態では、プラグ側ロッド2の係止部2Aのテーパー部により(プラグ側ロッド収納ケース3の)半径方向外方に押圧された係止用ボール7の移動を妨げる部材は存在しない。そのため、
図4で示すプラグ10とソケット20が分離した状態では、
図2で示すプラグ10とソケット20が結合した状態よりも、係止用ボール7は、(プラグ側ロッド収納ケース3の)半径方向外方に位置している。
【0028】
図1において、全体が筒状のソケット20はソケット本体21とプラグ収納用ハウジング26を有している。
ソケット本体21の図示しない水素充填機側(
図1で上方側)端部の左右方向中央部には、水素充填機(図示せず)から供給される水素ガスを導入する水素ガス導入口21Bが設けられている。
ソケット本体21の
図1における左右方向中央部には、上下方向に延在するソケット内流路21Aが形成されている。ソケット内流路21Aには拡径された領域が形成されており、当該拡径された領域は、ソケット側弁体25を収容するソケット側弁体収容部21Dを構成している。
ソケット内流路21Aは、水素ガス導入口21Bからソケット側弁体収容部21D、ソケット側ロッド22の中空部を介して、ソケット本体21の開口部分21Cに連通する。開口部分21Cは
図1の左右方向に延在しており、開口部分21Cのプラグ10から離隔する側(
図1で左側)の端部は開放されている。換言すれば、開口部分21Cは貫通孔として構成されている。
【0029】
プラグ10とソケット20を結合した状態では、開口部分21C内にはプラグ側ロッド収納ケース3が挿入され、ソケット内流路21Aは、ソケット側ロッド22内の中空部分と、プラグ側ロッド収納ケース3の開口3Aを介して、プラグ内流路1Aに連通する。
ソケット本体21の開口部分21Cの内周には、開口部分21Cの内周面とプラグ側ロッド収容ケース3の外周面との隙間をシールするOリングSS1、SS2(シール部材)が、それぞれ設けられている。
【0030】
ソケット側弁体収容部21Dに収容されたソケット側弁体25の水素ガス導入口21B側端部は、中空のソケット側ロッド22が接続している。
ソケット側弁体収容部21D内において、ソケット側弁体25の水素ガス導入口21B側(
図1で上側)の領域にはソケット側スプリング23(弾性材)が配置されており、ソケット側スプリング23はソケット側弁体25を弁座21E側(
図1では下方)に付勢している。弁座21Eは弁体収容部21Dの段部により構成されており、弁体25と弁座21Eによりソケット側遮断弁24が構成され、ソケット側遮断弁24はソケット側流路21Aを遮断或いは開放する機能を有している。
【0031】
ソケット側ロッド22の弁体25側近傍には開口22Aが設けられており、弁体収容部21Dに供給された水素ガスは、開口22Aを経由してソケット側ロッド22の中空部に流入する。換言すれば、ソケット側ロッド22の中空部はソケット内流路21Aの一部を構成する。
そして上述した様に、
図1で示す様にプラグ10とソケット20が結合している状態では、ソケット側ロッド22の中空部の下方端部(開放端部)位置と、プラグ側ロッド収容ケース3の開口3Aの位置とが整合している。
【0032】
プラグ収納用ハウジング26は、ソケット本体21からプラグ10側(
図1で右側)に突出している。
プラグ収納用ハウジング26は、プラグ10側端部(
図1では右端)が開放された中空形状となっている。
プラグ収納用ハウジング26の内周面には、結合時配置部26Aと離脱時収容溝26Bが設けられている。結合時配置部26Aには、プラグ10とソケット20の結合時において、結合用ボール40(結合部材)が配置される。一方、離脱時収容溝26Bは、ソケット20からプラグ10が(緊急)離脱した場合に、結合時配置部26Aから移動した結合用ボール40が収容される。
上述した様に結合用ボール40は周方向に複数個設けられており、結合時配置部26A、離脱時収容溝26Bも、結合用ボール40の位置、数に対応して設けられている。
【0033】
離脱時収容溝26Bは結合時配置部26Aに対してプラグ収納用ハウジング26の開放端側(
図1で右側)に設けられている。そして、結合時配置部26Aの水平方向(
図1で左右方向)位置は、プラグ本体1のプラグ側結合溝1Eに対応する位置になっている。プラグ10の中心軸(矢視A−A線)から離脱時収容溝26Bまでの半径方向距離は、結合時配置部26Aまで半径方向距離よりも大きい。
結合時配置部26Aのソケット20側(
図1で左側)には、結合時配置部26より半径方向内方に突出した突出部分αが設けられている。
【0034】
水素ガス充填時には、プラグ10はプラグ収納用ハウジング26内に挿入され、結合用ボール40(結合部材)、結合用スプリング41の作用により、プラグ10とソケット20は一体的に結合される。
図1で示す様に、プラグ10とソケット20が結合された状態では、結合用スプリング41が取り付けられたスプリングホルダー42が、プラグ収納用ハウジング26の内周面とプラグ本体1の外周面の間の隙間内に配置されている。
結合用ボール40は、スプリングホルダー42に形成された結合用ボール用穴42A内に嵌合され、プラグ本体1におけるプラグ側結合溝1Eに嵌合している。その際、結合用ボール40のソケット20側(
図1では左側)には突出部分αが位置しており、結合用ボール40の半径方向外方は結合時配置部26Aとなっている。
【0035】
スプリングホルダー42は、結合用ボール40(結合部材)、結合用ボール40が嵌合しているプラグ側結合溝1Eを介して、プラグ10と係合している。
そのため、プラグ10とソケット20を結合すると、プラグ10とソケット20はスプリングホルダー42及び結合用ボール40を挟み込む様に一体化される。
図3、
図4を参照すれば明らかな様に、結合用ボール40、スプリングホルダー42、スプリングホルダー42に取り付けられた結合用スプリング41は、プラグ10、ソケット20とは別部材である。
【0036】
図1において、プラグ10を引き抜く力(ソケット20とは逆方向に引き抜く力:
図1では右側に移動しようとする力)が作用すると、結合用ボール40を介してスプリングホルダー42及び結合用スプリング41はソケット20から離隔する側(
図1では右側)に移動しようとする。
結合用スプリング41はソケット20から離隔する側(
図1では右側)に移動しようとすると、プラグ収容用ハウジング26の突出部分αが結合用スプリング41を圧縮する。係る圧縮により生じた弾性反撥力は結合用スプリング41を伸長する様に作用する。結合用スプリング41を伸長しようとする弾性反撥力は、結合用ボール40、プラグ側結合溝1Eを介してプラグ10に作用し、プラグ10を
図1で左側に移動しようとする。
すなわち、結合用スプリング41の弾性反撥力は、プラグ10を引き抜く(
図1では右側に移動しようとする)力を減少しようとする方向に作用する。
所定値以上のプラグ10を引き抜く力が作用しなれば、結合用ボール40には
図1の矢印Mで示す方向の力が作用しても、当該力は結合用スプリング41の弾性反撥力で減少し、結合用ボール40がプラグ側結合溝1Eに嵌合した状態が保持され、プラグ10とソケット20の結合は解除されない。
【0037】
一方、所定値以上のプラグを引き抜く力が作用した場合には、結合用ボール40はプラグ側結合溝1Eから外れて矢印Mで示す方向に移動し、
図3で示す様に、プラグ収納用ハウジング26の離脱時収容溝26Bに嵌入する。
結合用ボール40がプラグ側結合溝1Eから外れることにより、プラグ10はソケット20から外れて、ソケット20から離隔する側(
図1の右側)に移動して、
図3、
図4で示す結合解除状態となる。
ここで前記所定値(プラグ10とソケット20の結合が解除される境界値)は、水素充填装置、充填ホース等の仕様により決定され、当該決定された所定値に基づきプラグ10、ソケット20(プラグ収納用ハウジング26)、結合用ボール40、結合用スプリング41、スプリングホルダー42は設計される。
【0038】
図1で示す様にプラグ10とソケット20が結合した状態では、中空のソケット側ロッド22における下方端部(
図1で)は、プラグ10のプラグ側ロッド収納ケース3に当接している。
そのため、ソケット側ロッド22はソケット側スプリング23の弾性反撥力に抗して、
図1の上方に位置しており、ソケット側ロッド22の先端(
図1で上方先端)に設けられたソケット側弁体25はソケット側弁座21Eよりも上方に離隔し、ソケット側遮断弁24は弁開状態となっている。
【0039】
また
図2で示す様に、プラグ10とソケット20が結合している状態では、プラグ側ロッド収容ケース3がソケット20の開口部分21Cに挿入されている。
係止部材である係止用ボール7が係止用ボール用溝3Bからプラグ側ロッド収容ケース3の半径方向外方に突出しようとしても、ソケット20の開口部分21Cの内壁面により、
図2で示す状態よりも(プラグ側ロッド収容ケース3の)半径方向外方には移動することが出来ない。
係止用ボール7が
図2で示す位置にあると、大径の係止部2Aを有するプラグ側ロッド2の先端部は係止用ボール7を超えることが出来ない(
図2において、係止用ボール7よりも左側に移動することが出来ない)。
プラグ側ロッド収容ケース3をソケット20の開口部分21Cに挿入すると、係止用ボール7がプラグ側ロッド2を
図2で右方向に押圧するので、プラグ側ロッド2はプラグ側スプリング4の弾性反撥力に抗して、プラグ側弁体6をプラグ側弁座1Fから離隔する。その結果、プラグ側遮断弁5は弁開状態となる。
【0040】
ソケット20内のソケット側遮断弁24(
図1)と、プラグ10内のプラグ側遮断弁5が共に弁開状態となれば、ソケット内流路21A(水素ガス導入口21B、ソケット側弁体収容部21D、ソケット側ロッド22の中空部、ソケット20の開口部分21C)、プラグ内流路1A(プラグ側ロッド収容ケース3の中空部分、プラグ側弁体収容部1C)が連通して、水素充填装置側(計量機側)から車両側に水素ガスが流過する。
【0041】
図1で示す様に、プラグ内流路1A、ソケット内流路21Aは直交しており、同一直線状には配置されていない。そして、中空のソケット側ロッド22とプラグ側ロッド2も、中心軸は同一直線上には存在せず、ソケット側ロッド22とプラグ側ロッド2の先端同士が突き当てられた状態(いわゆる「突き当たった」状態)とはなり得ない。
そのため、高圧の水素ガスを供給しても、ソケット側ロッド22とプラグ側ロッド2が押し合う力は発生せず、当該力によりソケット20とプラグ10が分離することも無い。そしてソケット側ロッド22とプラグ側ロッド2が押し合う力が存在しないため、分離したソケット20とプラグ10が吹き飛んでしまうこともない。
そして
図1で示す状態では、ソケット側ロッド22とプラグ側ロッド2に高圧の水素ガスが作用しても、ソケット20とプラグ10を分離する力は作用しない。例えば、水素ガス充填中に車両が発進してしまう等のトラブルが生じても、ソケット20とプラグ10が分離するか否かはプラグ10及びソケット20の流路内の水素ガスの圧力とは無関係である。
図1に示す状態において、充填ホースに一定以上(所定値以上)の引張力が加わり、結合用ボール40がプラグ側結合溝1Eから外れることによってのみ、ソケット20とプラグ10が分離するのであり、流路内の水素ガス圧力は関与しない。
換言すれば、
【0042】
図1において、ソケット側ロッド22の中空部の下方端部(開放端部)から流出した水素ガスが、プラグ側ロッド収容ケース3の開口3Aからプラグ側ロッド収容ケース3内に流入せず、ソケット20の開口部分21Cの内壁面とプラグ側ロッド収容ケース3の外周面との間の隙間を流れたとしても、ソケット本体21に設けたOリングSS1、SS2(シール部材)によりシールされるので、管継手100外に水素ガスは漏出しない。
また
図2で示す様に、プラグ10とソケット20が結合している状態では、係止用ボール用溝3BはOリングSS1、SS2の間に位置する。プラグ側ロッド収容ケース3内を流過する高圧の水素ガスが係止用ボール用溝3Bからプラグ側ロッド収容ケース3外に流出しても、OリングSS1、SS2でシールされるので、管継手100外には漏出しない。
【0043】
上述した様に、水素ガス充填中に車両が発進してしまう等のトラブルにより充填ホースに所定値以上の過大な引張力が作用し、結合用ボール40(結合部材)がプラグ側結合溝1Eから外れると、プラグ10とソケット20は分離する。
プラグ10とソケット20が分離すると、
図3で示す様に、プラグ10のプラグ側ロッド収容ケース3はソケット20(ソケット本体21)の開口部分21Cから外れ、ソケット側弁体25はソケット側スプリング23の弾性反撥力により、
図3の下方に移動し、ソケット側弁座21Eと座着する。そしてソケット側遮断弁24はソケット内流路21Aを遮断する。
【0044】
また、
図4で示す様に、プラグ10のプラグ側ロッド収容ケース3はソケット20(ソケット本体21)の開口部分21Cから外れると、係止用ボール用溝3Bから係止用ボール7がプラグ側ロッド収容ケース3の半径方向外方(プラグ側ロッド2から離隔する方向)に移動することを抑制する部材は存在しない。
そのため、係止用ボール7はプラグ側ロッド収容ケース3の半径方向外側の位置に移動することが出来る。係止用ボール7がプラグ側ロッド収容ケース3の半径方向外側の位置に移動すると、プラグ側ロッド2は係止用ボール7よりも
図4における左側の領域に移動可能となる。そして、プラグ側スプリング4の弾性反撥力により、プラグ側ロッド2は係止用ボール7よりも
図4の左側に移動する。その結果、プラグ側弁体6はプラグ側弁座1Fと座着して、プラグ側遮断弁5はプラグ内流路1Aを遮断する。
プラグ10とソケット20が分離した場合、上述した様に、ソケット側遮断弁24及びプラグ側遮断弁5がそれぞれソケット内流路21A、プラグ内流路1Aを閉鎖しているので、車両側からも計量機側からも水素ガスが漏出することは無い。
【0045】
図1〜
図4で示す第1実施形態の管継手100では、
図10、
図11で示す従来技術におけるソケット側ピン接続端部側シール材336、プラグ側ピン接続端部側シール材316、ソケット側ピン他端部側シール材338、プラグ側ピン他端部側シール材318が不要である。
第1実施形態の管継手100においては、ソケット本体21の開口部分21Cの内周面とプラグ側ロッド収容ケース3の外周面との隙間をシールするOリングSS1、SS2を設ければ良い。そのため、シール材の点数を減少して、その分だけ構造が簡素化される。
【0046】
図1〜
図4の第1実施形態の管継手100によれば、
図10、
図11の従来技術と異なり、プラグ内流路1A、ソケット内流路21Aの中心軸が同一直線状ではなく、直交して配置されているので、プラグ側ロッド2とソケット側ロッド22の中心軸も一直線上には存在していない。したがって、プラグ側ロッド2とソケット側ロッド22は、先端(
図10、
図11のピン接続端部に相当)同士が突き当てられた状態で一直線に配置されてはおらず、相互に押圧し合う状態ともなっていない。
そのため、高圧の水素ガスを供給しても、プラグ側ロッド2とソケット側ロッド22の先端同士が押圧し合う力が増加してしまうことがなく、ソケット20とプラグ10が分離することも無い。そして、プラグ側ロッド2とソケット側ロッド22の先端同士が押圧し合っておらず、ソケット20とプラグ10が分離する方向とは一致しないので、分離したソケット20とプラグ10が吹き飛んでしまうこともない。
さらに、小型、軽量化が可能となり、且つ、例えば高圧の水素ガスを充填する際に、充填ホースの操作性が向上する。
【0047】
第1実施形態において、高圧の水素ガスを供給してもプラグ側ロッド2とソケット側ロッド22の先端同士が押圧し合う力が増加してしまうことがないので、
図10、
図11の従来技術で必須であり高度の機密性を備えるソケット側ピン接続端部側シール材336、プラグ側ピン接続端部側シール材316、ソケット側ピン他端部側シール材338、プラグ側ピン他端部側シール材318は不要である。
【0048】
第1実施形態において、プラグ10とソケット20が周方向の複数個所に設けられた結合用ボール40(結合部材)により連結されているので、プラグ10とソケット20が連結された状態が確実に保持される。
そして第1実施形態において、結合用ボール40(結合用ボール40が嵌合するスプリングホルダー42等を含む機構)は分離方向に所定値以上の外力が加わったときに結合解除となる様に構成されているので、プラグ10及びソケット20の流路内の圧力とは無関係に、外力(例えば充填中に車両が移動した場合等に充填ホースに作用する引張力)の作用のみでプラグ10とソケット20が分離され、確実性が高い。
【0049】
第1実施形態において、中空のソケット側ロッド22の一端にはソケット側スプリング23に抗して設けられたソケット側遮断弁24(の弁体25)が取り付けられ、プラグ10とソケット20が離脱した際に、ソケット側ロッド22とプラグ側ロッド収納ケース3は当接しなくなり、ソケット側遮断弁24が閉じる。そのためソケット20が連結された側(基本的には充填装置側:ただし、車両側でも良い)からのガスの流出を防止することが出来る。
また、プラグ側ロッド2の一端にプラグ側遮断弁5の弁体6が取り付けられ、他端が係止用ボール7(係止部材)に係止可能な大径の係止部2Aとなっており、係止部2Aが係止用ボール7に係止されている際にプラグ側遮断弁5が弁開となる。プラグ10とソケット20が離脱した際に、係止部2Aが係止用ボール7に係止されなくなり、プラグ側遮断弁5が閉じる。そのためプラグ10が連結された側(基本的には車両側:ただし、充填装置側でも良い)からのガスの流出が防止することが出来る。
【0050】
次に、
図5〜
図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態の管継手100(緊急離脱用の管継手)では、ソケット20(ソケット本体21)において、プラグ側ロッド収納ケース3を挿入する開口部分21Cは、プラグ側と反対側(
図1で左側)の端部が開放され、貫通孔となっている。
それに対して、第2実施形態の管継手101では、プラグ側ロッド収納ケース3を挿入する開口部分21Fは、プラグ側ロッド収納ケース3を挿入する側とは反対側(プラグ10と反対側:
図5で左側)の端部が閉鎖されており、いわゆる「盲孔」となっている。
【0051】
したがって、充填時に水素ガスが開口部分21Fのプラグ側から離隔する側の内周面とプラグ側ロッド収容ケース3の外周面との隙間から管継手101(プラグ10及びソケット20)外に漏出しない。そのため第2実施形態では、第1実施形態におけるOリングSS2は不要となる。
なお、
図5〜
図8において、第1実施形態の各部材と同様な部材には、
図1〜
図4の符号と同様な符号を付して、重複説明を省略している。
図5〜
図8の第2実施形態におけるその他の構成や作用効果は、
図1〜
図4で説明した第1実施形態と同様である。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。