特許第6540975号(P6540975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540975マイクロフォン用の集積回路構成体、マイクロフォンシステム、およびマイクロフォンシステムの1つ以上の回路パラメータを調整するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540975
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】マイクロフォン用の集積回路構成体、マイクロフォンシステム、およびマイクロフォンシステムの1つ以上の回路パラメータを調整するための方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20190628BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R19/04
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-545292(P2017-545292)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2018-511219(P2018-511219A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2015054162
(87)【国際公開番号】WO2016134788
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロッカ, ギノ
(72)【発明者】
【氏名】ハンスリック, トマシュ
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0316634(US,A1)
【文献】 特開2006−067166(JP,A)
【文献】 特開2001−196877(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3154994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00 − 3/14
H04R 19/00 − 19/04
H03F 1/00 − 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォン(12)用の集積回路構成体(20)であって、
一つのトランジスタ(24)からなるトランジスタ増幅器と、第1の制御ポート及び当該第1の制御ポートにその各々がカップリングされた複数のスイッチ(SW1,...,SWx)を含む第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)と、第2の制御ポート及び当該第2の制御ポートにその各々がカップリングされた複数のスイッチ(SW1,...,SWy)を含む第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)と、を含む増幅器回路(22)と、
前記第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)の前記第1の制御ポート及び前記第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)の前記第2の制御ポートのそれぞれにカップリングされた制御ユニット(30)と、を備え、
前記制御ユニット(30)は、前記増幅器回路(22)の増幅電流を調整するために、前記第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)の前記複数のスイッチ(SW1,...,SWx)のそれぞれの設定を制御するように構成され、
前記制御ユニット(30)は、増幅器回路(22)の増幅器利得を調整するために、前記第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)の複数のスイッチ(SW1,...,SWy)のそれぞれの設定を制御するように構成された、
集積回路構成体(20)。
【請求項2】
前記第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)が、1つの第1の切り替え可能な抵抗ネットワークを備え、および/または前記の第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)が、1つの第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを備えることを特徴とする、請求項1に記載の集積回路構成体。
【請求項3】
前記増幅器回路(22)は、1つのp型エンハンスメントモード金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOS−FET)を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の集積回路構成体。
【請求項4】
前記第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、1つの第1のポートおよび1つの第2のポートを備え、当該第1のポートは事前に設定された電位(GND)とカップリングされており、そして当該第2のポートは、前記トランジスタ(24)のドレイン端子(D)とカップリングされていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の集積回路構成体。
【請求項5】
前記第2の切り替え可能な抵抗ネットワークは、1つの第1のポートおよび1つの第2のポートを備え、当該第1のポートは所定の電源電圧(AVDD)とカップリングされており、そして当該第2のポートは、前記トランジスタ(24)のソース端子(S)とカップリングされていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の集積回路構成体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の集積回路構成体において、
前記制御ユニット(30)にカップリングされた1つのバイアス回路(32)を備え、
前記バイアス回路(32)は、前記マイクロフォン(12)に対し可変なバイアス電圧を供給するように構成されており、そして前記制御ユニット(30)は、当該バイアス電圧の電圧レベルを制御するためのバイアス制御信号(cal_data_B)を決定するように構成されている、
ことを特徴とする集積回路構成体。
【請求項7】
請求項6に記載の集積回路構成体において、
前記制御ユニット(30)は、前記集積回路構成体(20)の少なくとも1つの検出されたパラメータおよび/または決定された動作パラメータに依存して、以下の信号、
前記第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)のそれぞれのスイッチ(SW1,...,SWx)の設定を制御するための、所定の増幅器電流を表す第1の制御信号(cal_data_I)、および/または、
前記第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)のそれぞれのスイッチ(SW1,...,SWy)の設定を制御するための、所望の増幅器利得に依存する第2の制御信号(cal_data_G)、およびまたは、
所定の電圧レベルを表すバイアス制御信号(cal_data_B)、
を決定するように構成されていることを特徴とする集積回路構成体。
【請求項8】
前記集積回路構成体(20)の前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記集積回路構成体(20)の前記電源電圧(AVDD)および/または前記バイアス回路(32)のクロック信号の周波数を含むことを特徴とする、請求項7に記載の集積回路構成体。
【請求項9】
前記制御ユニット(30)は、前記集積回路構成体(20)の前記少なくとも1つの動作パラメータを検出および/または決定するように構成されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の集積回路構成体。
【請求項10】
MEMSマイクロフォンシステム(10)であって、
1つのマイクロフォン(12)と、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の1つの集積回路構成体(20)と、
を備え、
前記マイクロフォン(12)の出力部は、前記集積回路構成体(20)の入力部(IN)にカップリングされている、
ことを特徴とするマイクロフォンシステム。
【請求項11】
マイクロフォンシステム(10)の1つ以上の回路パラメータを調整するための方法であって、
前記マイクロフォンシステム(10)は、一つのトランジスタ(24)からなるトランジスタ増幅器を含む1つの増幅器回路(22)を有する1つの集積回路構成体(20)を備え、当該増幅器回路は、当該増幅器回路(22)の増幅器電流を調整するための1つの第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)及び当該増幅器回路(22)の増幅器利得を調整するための1つの第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)を備え、
前記方法は以下のステップ、
前記マイクロフォンシステム(10)の信号対雑音比を決定するステップa)と、
前記マイクロフォンシステム(10)の消費電流を検出するステップb)と、
前記信号対雑音比および前記消費電流に依存して、前記第1の切り替え可能なネットワーク回路(26)のそれぞれのスイッチ(SW1,...,SWx)の設定を制御するための、所定の増幅器電流を表す第1の信号(cal_data_I)を決定して供給するステップc)と、
を備え、
前記ステップa)〜c)は、所定の最小信号対雑音比に達するまで繰り返され、
前記方法は以下のステップ、
前記マイクロフォンシステム(10)の感度を決定するステップと、
前記感度に依存して、前記第2の切り替え可能なネットワーク回路(28)のそれぞれのスイッチ(SW1,...,SWy)の設定を制御するための第2の制御信号(cal_data_G)を決定して供給するステップあって、当該第2の制御信号(cal_data_G)が、所望の増幅器利得に依存しているステップと、を更に備える
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロフォン、好ましくは微小機械システムのマイクロフォン(MEMSマイクロフォン)用の集積回路構成体に関し、この集積回路を備えるマイクロフォンシステムに関し、そしてこのマイクロフォンに関する。さらに本発明は、このマイクロフォンシステムの1つ以上の回路パラメータを調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォン、好ましくはMEMSマイクロフォンは、様々な民生用アプリケーション、たとえば携帯電話機、電話機、補聴器、デジタル音声録音機、パーソナルコンピュータ等に使用されている。マイクロフォンをアプリケーションシステムに組み込むことは、多くのシステム最適化および設計トレードオフを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、マイクロフォン、好ましくはMEMSマイクロフォン用の集積回路構成体、およびマイクロフォンシステムならびにこのマイクロフォンシステムの回路パラメータを調整するための方法を提供することであり、この方法は、好ましくは最終組み立て後に、このマイクロフォンシステムの回路パラメータの柔軟な調整を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属項に記載されている。
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、1つの増幅器回路および1つの制御ユニットを備える1つのマイクロフォン用の1つの集積回路構成体を特徴とする。この増幅器回路は、この増幅器回路の増幅電流を調整するための1つの第1の切り替え可能なネットワーク回路を備える。この第1の切り替え可能なネットワーク回路は、複数のスイッチを備え、各々のスイッチはこの第1の切り替え可能なネットワーク回路の1つの第1の制御ポートにカップリングされている。上記の制御ユニットは、この第1の切り替え可能なネットワーク回路の第1の制御ポートにカップリングされており、この第1の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するように構成されている。
【0006】
有利なことに、上記のようにして、最終組み立て後に、より良好な信号対雑音比(SNR)を得るために上記の増幅器電流を増加すること、あるいはこの増幅器電流を低減することが可能であり、他方で他のパラメータ、たとえば感度を変化させずに維持することが可能である。こうして最終組み立て後に、サプライヤ側またはカストマ側で、システムへのマイクロフォンの組込みに関する設計トレードオフを最適化することができる。本発明による集積回路構成体の増幅器電流は、柔軟に調整することができる。こうして様々なアプリケーションおよび/またはカストマ用の仕様のマイクロフォンおよびマイクロフォンシステムの変数の数を最小限に維持することができる。最終組み立て後の柔軟な調整のために、アプリケーションレベルでの設計トレードオフ、具体的にはSNRおよび電流の最適化を高いシステムレベルで調整することができる。こうして特定の使用のマイクロフォンを様々なアプリケーションに使用することができる。
【0007】
上記の第1の態様の1つの実施形態によれば、上記の増幅器回路は、この増幅器回路の増幅器利得を調整するための、1つの第2の切り替え可能なネットワーク回路を備える。この第2の切り替え可能なネットワーク回路は、複数のスイッチを備え、各々はこの第2の切り替え可能なネットワーク回路の1つの第2の制御ポートにカップリングされている。上記の制御ユニットは、この第2の切り替え可能なネットワーク回路の第2の制御ポートとカップリングされており、そして、この第2の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するように構成されている。有利なことに、このような構成体は、マイクロフォンシステムのさらなる設計パラメータを最適化することを可能とし、したがってより高度な柔軟性を提供する。こうして様々なアプリケーションおよび/またはカストマ仕様に対するマイクロフォンおよびマイクロフォンシステムの変数の数をさらに低減することができる。
【0008】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路は、1つの第1の切り替え可能な抵抗ネットワークを備え、および/または上記の第2の切り替え可能なネットワーク回路は、1つの第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを備える。設計段階の間に、複数の、そしてこのため十分なSNRと電流との組み合わせを作ることができる。上記の増幅器電流および利得の範囲および調整ステップの数も、それぞれ適切に規定することができる。上記の抵抗(複数)の集積化は、上記の集積回路の安価な製造を可能とする。具体的には、上記の増幅器電流を上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークによって調整することができる。上記の増幅器利得は、上記の第1および第2の切り替え可能なネットワーク回路の設定に依存する。こうしてもし上記の増幅器電流が第1のステップにおいて確立されると、第2のステップにおいて上記の増幅器利得を上記の第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを用いて設定することができる。
【0009】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の増幅器回路は、1つの単一のトランジスタを有する1つのトランジスタ増幅器を備える。この単一のトランジスタは、1つの分散された構造を備える。小さな入力信号がこの単一のトランジスタを制御し、このトランジスタはその増幅特性によって、より大きな出力信号を出力する。その単純な構造を用いて、このトランジスタ増幅器は、様々な増幅器パラメータを容易に調整することを可能とする。
【0010】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の増幅器回路は、1つのp型エンハンスメントモード金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOS−FET)を備えている。このp型MOSFETは、n型MOSFETに対して、同一の面積のものに対して低いフリッカ雑音を有し、これによって、より良好なマイクロフォンSNRをもたらすという利点を有する。
【0011】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、1つの第1のポートおよび1つの第2のポートを備え、ここでこの第1のポートは事前に設定された電位とカップリングされており、そしてこの第2のポートは、上記のトランジスタのドレイン端子とカップリングされている。これは上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークの抵抗値と上記の増幅器電流とを容易に対応させることを可能とする。
【0012】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の第2の切り替え可能な抵抗ネットワークは、1つの第1のポートおよび1つの第2のポートを備え、ここでこの第1のポートは所定の電源電圧とカップリングされており、そしてこの第2のポートは、上記のトランジスタのソース端子とカップリングされている。これは上記の第2の切り替え可能な抵抗ネットワークの抵抗値と上記の増幅器利得とを容易に対応させることを可能とする。
【0013】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の集積回路構成体は、上記の制御ユニットとカップリングされている1つのバイアス回路を備える。このバイアス回路は、上記のマイクロフォンに対し可変なバイアス電圧を供給するように構成されており、そしてこの制御ユニットは、このバイアス電圧の電圧レベルを制御するためのバイアス制御信号を決定するように構成されている。このバイアス電圧を変化することにより、このマイクロフォン、具体的にはMEMSマイクロフォンの感度が変更され、これは上記の集積回路構成体の入力における信号レベルの変化を生じる。
【0014】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の制御ユニットは、上記の集積回路構成体の少なくとも1つの検出されたパラメータおよび/または決定された動作パラメータに依存して、以下の信号を決定する。
−上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するための第1の制御信号。ここでこの第1の制御信号は、所定の増幅器電流を表すものである。および/または、
−上記の第2の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するための第2の制御信号。ここでこの第2の制御信号は、所望の増幅器利得に依存するものである。
−所定の電圧レベルを表す制御信号。
【0015】
有利なことに、上記の制御ユニットは、上記の第1および/または第2の抵抗ネットワークおよび/または上記のバイアス回路の状態を、アプリケーションに特有のパラメータ、たとえばスマートフォンに供給される電源電圧およびまたはマイクロフォンに特有のパラメータに依存して制御することができる。具体的には上記の第2の制御信号は、上記の所望の増幅器利得および上記の所定の増幅器電流に依存している。
【0016】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の集積回路構成体の上記の少なくとも1つの動作パラメータは、この集積回路構成体の電源電圧および/または上記のバイアス回路のクロック信号の周波数を含む。これは上記の増幅器電流および/または増幅器利得の簡単な調整を可能とする。
【0017】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の制御ユニットは、上記の集積回路構成体の上記の少なくとも1つの動作パラメータを検出および/または決定するように構成されている。このような構成体を用いて、上記の集積回路がその好適なSNRと電流との組合せを外部からのサポート無しに設定することができる。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、1つの集積回路構成体を備える1つのマイクロフォンシステムおよび上記の第1の態様の1つの集積回路構成体を特徴とし、ここでこのマイクロフォンの出力部は、上記の集積回路構成体の入力部とカップリングされている。
【0019】
上記の第1の態様の有利な実施形態は、この第2の態様にも有効である。
【0020】
第3の態様によれば、本発明は、マイクロフォンシステムの1つ以上の回路パラメータを調整するための方法を特徴とし、ここでこのマイクロフォンシステムは、1つの増幅器回路を有する1つの集積回路構成体を備え、この増幅器回路は、この増幅器回路の増幅器電流を調整するための1つの第1の切り替え可能なネットワーク回路を備える。本方法は以下のステップを備える。
a) 上記のマイクロフォンシステムの信号対雑音比を決定するステップ。
b) 上記のマイクロフォンシステムの消費電流を検出するステップ。
c) 上記の信号対雑音比および上記の消費電流に依存して、上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するための第1の信号を決定して供給するステップであって、ここでこの第1の制御信号が、所定の増幅器電流を表すものであるステップ。
ここでこれらのステップa)〜c)は、所定の最小信号対雑音比に達するまで繰り返される。
【0021】
上記の第1および第2の態様の有利な実施形態は、この第3の態様にも有効である。このようにして、最小の特定されたSNRに達するまで上記の増幅器電流をトリミングすることができる。ここに記載された上記の方法ステップ(複数)は、必ずしも上記の記載の順序で行われなくともよい。
【0022】
上記の第3の態様の1つの実施形態によれば、上記の増幅器回路は、この増幅器回路の増幅器利得を調整するための1つの第2の切り替え可能なネットワーク回路を備え、上記の方法はさらに以下のステップ、上記のマイクロフォンシステムの感度を決定するステップと、そしてこの感度に依存して、上記の第2の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチの設定を制御するための第2の制御信号を決定して供給するステップであって、ここでこの第2の制御信号は、所望の増幅器利得に依存しているステップと、を備える。
【0023】
このようにして、最小の特定されたSNRに達するまで上記の増幅器電流をトリミングすることができ、そして目標感度も確保することができる。もし増幅器電流が第1のステップで確立されていると、上記の所望の増幅器利得を、上記の第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを用いて設定することができる。
【0024】
ここに記載された上記の方法ステップ(複数)は、必ずしも上記の記載の順序で行われなくともよい。具体的には、上記の利得調整は、最初に第1の増幅器電流の調整と組み合わせて実施することが適切であり得る。
【0025】
本発明の例示的な実施形態を、概略図を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】1つのマイクロフォンシステムを例示するブロック図を示す。
図2】第1の切り替え可能なネットワーク回路の例示的な実施形態のブロック図を示す。
図3】第2の切り替え可能なネットワーク回路の例示的な実施形態のブロック図を示す。
図4】マイクロフォンシステムの1つ以上の回路パラメータを調整するためのプログラムのフローチャートを示す。
【0027】
異なる図に示されている同じ設計および機能の素子は、同じ参照番号で示される。
【0028】
図1は、1つのマイクロフォン12、好ましくは1つの微小電気機械システムのマイクロフォン(MEMS microphone)と、1つの集積回路構成体20とを備える1つのマイクロフォンシステム10を例示する。
【0029】
この図1のMEMSマイクロフォンは、本発明の実施形態に関するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。実際本発明は、他のタイプのアナログマイクロフォンまたはデジタルマイクロフォンにも適用することができる。
【0030】
好ましくは上記の集積回路構成体20は、特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されている。この集積回路構成体20は、上記のMEMSマイクロフォンとカップリングされている。
【0031】
上記のMEMSマイクロフォンは、必ずしも上記の集積回路構成体と同一のチップに含まれていなくともよい。このMEMSマイクロフォンは、1つのチップ、たとえば同じパッケージにハウジングされた1つの別のダイに含まれていてよい。
【0032】
集積回路構成体20は、1つの増幅器回路22を備える。好ましくはこの増幅器回路22は、1つの前置増幅器段として用いられる。この増幅器回路22は、マイクロフォン12の出力信号を増幅するように構成されている。この目的のため、このマイクロフォン12の出力部は、集積回路構成体20の入力部INとカップリングされている。
【0033】
増幅器回路22は、1つの単一のトランジスタ24を有する1つのトランジスタ増幅器、たとえば共通ソース回路を備えてよい。この単一のトランジスタ24は1つのFETトランジスタであってよい。増幅器回路22は、1つの型エンハンスメントモードMOS−FETを備えてよい。
【0034】
この増幅器回路22は、この増幅器回路22の増幅器電流を調整するための1つの第1の切り替え可能なネットワーク回路26を備える。この第1の切り替え可能なネットワーク回路26は、この増幅器電流が35μA〜65μAの範囲で5μAステップで調整できるように構成されていてよい。
【0035】
図2は、第1の切り替え可能なネットワーク回路26の例示的な実施形態のブロック図を示す。この第1の切り替え可能なネットワーク回路26は、好ましくは1つの切り替え可能な抵抗ネットワークを備える。
【0036】
この第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、たとえば第1の数の抵抗の列および第2の数の抵抗の行を有する1つの抵抗行列を備え、ここで抵抗RD1,...,RDxはメッシュ状にカップリングされている。この第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、メッシュ構造の抵抗行列を制御するように配設されて構成された複数のスイッチを備える。
【0037】
各々のスイッチSW1,...,SWxは、これらのスイッチSW1,...,SWxのスイッチ設定を制御するように構成された1つのスイッチピンを備える。これらのスイッチピンの各々は、第1の切り替え可能なネットワーク回路26の1つの第1の制御ポートとカップリングされている。
【0038】
たとえば上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、事前に設定された電位GND、たとえばグラウンド電位とカップリングされており、トランジスタ24のドレイン端子Dと接続されている。このようにして、上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークは、上記の共通ソース回路のドレイン抵抗となっている。この第1の切り替え可能な抵抗ネットワークのスイッチSW1,...,SWxの設定を制御することにより、1つの所望の電流、具体的には上記の増幅器回路22の所望のドレイン電流を達成することができる。この第1の切り替え可能な抵抗ネットワークの設定は、上記の増幅器利得にも影響するので、この増幅回路22の所望の利得も、この第1の切り替え可能な抵抗ネットワークのスイッチSW1,...,SWxの設定を制御することにより達成することができる。
【0039】
図1に示すように、集積回路構成体20は、マイクロフォン12用のバイアス回路32を備えてよい。好ましくはこのバイアス回路32は、マイクロフォン12用に可変バイアス電圧を供給するように構成されている。たとえばこのバイアス回路32は、このマイクロフォンのバイアスピンBIASに、バイアス電圧を供給するように構成されている。このバイアス回路32は、1つのチャージポンプ、たとえば1つのディクソン型チャージポンプを備えてよい。
【0040】
図1に示すように、増幅器回路22は、この増幅器回路22の増幅器利得を調整するための1つの第2の切り替え可能なネットワーク回路28を備えてよい。この第2の切り替え可能なネットワーク回路28は、好ましくは1つの第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを備える。
【0041】
この第2の切り替え可能なネットワーク回路28は、上記の増幅器利得が9dB〜21dBの範囲で0.4dBステップで調整できるように構成されていてよい。
【0042】
図3は、この第2の切り替え可能なネットワーク回路の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【0043】
この第2の切り替え可能な抵抗ネットワークは、たとえば1つの第2の抵抗アレイおよび1つの第2のスイッチアレイを備える。この第2の抵抗アレイは、複数の抵抗RS1,...,RSxを備え、ここでこれらの抵抗RS1,...,RSxは、並列に配設されており、そして各々の抵抗RS1,...,RSxは、この第1のスイッチアレイのそれぞれのスイッチSW1,...,SWyにカップリングされている。各々のスイッチSW1,...,SWyは、このスイッチSW1,...,SWyのスイッチ設定を制御するために構成されている1つのスイッチピンを備える。これらのスイッチピンの各々は、この第2の切り替え可能なネットワーク回路28の第2の制御ポートとカップリングされている。さらに各々のスイッチSW1,...,SWyは、1つの所定の電源電圧AVDDにカップリングされた第1のピンと、上記の第2の抵抗アレイのそれぞれ対応する抵抗RS1,...,RSyの第1のピンとカップリングされた第2のピンとを備えている。これらのそれぞれの抵抗は、トランジスタ24のソース端子Sにカップリングされている。
【0044】
このようにして、上記の第2の切り替え可能な抵抗ネットワークは、上記の共通ソース回路のソース抵抗となっている。この第2の切り替え可能な抵抗ネットワークのスイッチSW1,...,SWyのスイッチ設定を制御することによって、所望の利得が達成される。具体的には、上記の増幅器電流を上記の第1の切り替え可能な抵抗ネットワークによって調整することができる。上記の増幅器利得は、これらの第1および第2の切り替え可能な抵抗ネットワークの設定に依存し得る。こうしてもしこの増幅器利得が、第1のステップにおいて確定されると、上記の増幅器利得は、この第2の切り替え可能な抵抗ネットワークを用いて設定することができる。
【0045】
図1に示すように、集積回路構成体20は、第1および第2の切り替え可能なネットワーク回路26,28のスイッチ設定を制御するために構成された1つの制御ユニット30を備える。
【0046】
上記のバイアス回路32は、上記のバイアス電圧の電圧レベルを制御するための制御ユニット30とカップリングされていてよい。このバイアス回路32は、このバイアス電圧を、上記の制御ユニット30のバイアス制御信号cal_data_Bに依存して調整するように構成されていてよい。
【0047】
この制御ユニット30は、1つの不揮発性メモリ、たとえば1つ以上の好ましい電流および/または利得設定を格納するためのワンタイムプログラマブルメモリを備えてよい。
【0048】
代替としてまたは追加的に、この制御ユニット30は、少なくとも1つのルックアップテーブルを備えてよく、このルックアップテーブルは、検出および/または決定された、マイクロフォンシステム10の動作パラメータをマッピングし、たとえば集積回路構成体20の電源電圧AVDDおよび/またはバイアス回路32のクロック信号の周波数を、第1の制御信号cal_data_Iおよび/または第2の制御信号cal_data_Gおよび/または上記のバイアス制御信号cal_data_Bにマッピングする。
【0049】
制御ユニット30は、少なくとも1つの検出および/または決定された、集積回路構成体20および/またはマイクロフォンシステム10の動作パラメータに依存して、以下のパラメータを決定するように構成されていてよい。
−上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路26のそれぞれのスイッチSW1,...,SWxの設定を制御するための第1の制御信号cal_data_I。ここでこの第1の制御信号cal_data_Iは、所定の増幅器電流を表すものである。および/または、
−上記の第2の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチSW1,...,SWxの設定を制御するための第2の制御信号cal_data_G。ここでこの第2の制御信号は、所望の増幅器利得に依存するものである。および/または、
−所定の電圧レベルを表すバイアス制御信号cal_data_B。
【0050】
制御ユニット30は、任意で追加的に、集積回路構成体20および/またはマイクロフォンシステム10の少なくとも1つの動作パラメータを検出および/または決定するように構成されていてよい。
【0051】
追加的にまたは代替として、この制御ユニット30は、少なくとも1つの検出および/または決定された、マイクロフォンシステム10の動作パラメータに依存して、上記の第1の制御信号cal_data_Iおよび/または上記の第2の制御信号cal_data_Gおよび/または上記のバイアス制御信号cal_data_Bを決定するための1つのデジタルプロセッサまたはカスタムデジタルロジック部を備えてよい。
【0052】
制御ユニット30は、SNRおよび/または消費電流を最適化するように構成することができる。追加的にこの制御ユニット30は、たとえば特別なパッドOTPWを用いた最終検査の際に、上記の不揮発メモリをプログラムするように構成されていてよい。
【0053】
集積回路構成体20は、任意で追加的に、1つのDCサーボ回路34を備える。このDCサーボ回路34は、増幅器回路22の入力電圧の電圧整定時間を改善するように構成されている。DCサーボ回路34は、第2の切り替え可能なネットワーク回路28とカップリングされていてよい。
【0054】
集積回路構成体20は、前置増幅器として動作し得る増幅器回路22の出力信号を増幅するための1つの主増幅器26を備えてよい。この主増幅器36は、マイクロフォンシステム10の主出力信号を、たとえばこの集積回路構成体の出力部OUTに供給するように構成されている。この主増幅器36は、この主出力信号を制御ユニット30に供給するために、この制御ユニットとカップリングされていてよい。
【0055】
上記の集積回路構成体は、自動電圧発生器および/またはクロック発生器のような、さらなる回路素子を備えてよい。
【0056】
マイクロフォンシステム10のSNRは、集積回路構成体20のSNRに依存し、特に前置増幅器のSNRに依存する。この集積回路構成体20のSNRは、この集積回路構成体に流れ込む電流にも関係しており、この電流はこのマイクロフォンシステムの消費電流のかなりなパーセンテージとなり得る。具体的には、SNRは、特定の回路およびシステムの実際の構成に依存する電流と共に増加する。
【0057】
図4は、マイクロフォンシステム10の1つ以上の回路パラメータを調整するためのプログラムのフローチャートを示す。このプログラムは、たとえば制御ユニット30によって実行されてよく、あるいは部分的にこの制御ユニット30によって実行されるかまたは他のキャリブレーション装置によって実行されてよい。
【0058】
このプログラムによって、たとえば60dBのSNRを有し、そして50μAを消費する1つのマイクロフォンシステムを、サプライヤ側またはカストマ側で適宜再構成することができ、こうして追加の50μAの消費電流と引き換えにそのSNRを62dBとなるようにすることができる。この電流を適宜トリミングすることによって、もしカストマが要求しているならば、電流、感度、またはSNRの厳しい割り当てを実現することもできる。
【0059】
このプログラムはステップS1で開始する。任意に追加されるステップS3においては、マイクロフォンシステム10の感度が決定される。第2の切り替え可能なネットワーク回路28のそれぞれのスイッチSW1,...,SWyの設定を制御するための第2の制御信号cal_data_Gが、この感度に依存して決定される。具体的には、ステップS5において、マイクロフォンシステムの所定の目標感度が達成されたかどうかがチェックされる。もしこの感度が所定の目標感度より低いと、ステップS6において上記の第2の制御信号cal_data_Gを出力することによって、上記の増幅器利得が増加される。この第2の制御信号は、たとえば所望の増幅器電流および上記の目標感度に対応する所定の増幅器利得に依存して決定される。この感度が所定の目標感度よりも高い場合、ステップS6において、上記の増幅器利得が低減される。この目標感度およびこれに対応する増幅器利得は、制御ユニット30の上記のルックアップテーブルに格納されていてよい。
【0060】
もし上記の目標感度に達すると、ステップS7において、マイクロフォンシステム10の消費電流が検出される。代替としてこの消費電流は、ステップS3において検出されてよい。ステップS9においては、このマイクロフォンシステム10の消費電流が所定の最大消費電流よりも小さいがどうかがチェックされる。もし検出された消費電流が最大消費電流を越えると、上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路26のそれぞれのスイッチの設定を制御するための上記の第1の制御信号cal_data_Iが、この消費電流を低減するためにステップS10で決定され、そしてこのプログラムはステップS3で続行される。具体的には、ステップS10において、所定の低減された増幅器電流を表す第1の制御信号cal_data_Iが出力される。
【0061】
もしマイクロフォンシステム10の消費電流が、所定の最大消費電流よりも小さければ、ステップS11において、このマイクロフォンシステム10の信号対雑音比(SNR)が決定される。ステップS13においては、このマイクロフォンシステム10のSNRが、所定の最小値のSNRよりも大きいかどうかがチェックされる。
【0062】
SNRがこの所定の最小値のSNRより大きいと、このプログラムはステップS19で終了する。もしSNRが所定の最小値のSNRよりも小さいと、ステップS15において、上記の第1の切り替え可能なネットワーク回路のそれぞれのスイッチSW1,...,SWxの設定を制御するための上記の第1の制御信号cal_data_Iが、上記の消費電流を増加するように決定される。
【0063】
任意に追加されるステップS17においては、新しく決定された消費電流が、1つの閾値を越えるかどうかがチェックされる。もしこの新しく決定された消費電流がこの閾値よりも大きいと、このプログラムはステップS18で停止し、そしてこのマイクロフォンシステム10がSNRの仕様から外れていることを示すエラー報告を出力する。
【0064】
もし上記の新しく決定された消費電流が上記の閾値より小さければ、このプログラムはステップS3で続行される。
【0065】
あるカストマは、上記のSNRの割り当てを非常に厳しくすること、および/またはマイクロフォンシステム10の上記の消費電流が上記の閾値を越えないことを要求するかもしれない。これらの場合には、このような要求はマイクロフォンの収率に大きな影響を与える。
【0066】
マイクロフォンシステム10の1つ以上のパラメータを調整するための上記のプログラムのような適切な較正処理を用いることによって、このマイクロフォンの収率を改善することができ、そして感度およびSNRの割り当てを厳しくすることができ、あるいはマイクロフォンの収率を改善することができ、そして電流に対する割り当てを厳しくすることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 : マイクロフォンシステム
12 : マイクロフォン
20 : 集積回路構成体
22 : 増幅器回路
24 : トランジスタ
26 : 第1の切り替え可能なネットワーク回路
28 : 第2の切り替え可能なネットワーク回路
30 : 制御ユニット
32 : バイアス回路
34 : DCサーボ回路
36 : 主増幅器
AVDD : 電源電圧
BIAS : バイアスピン
cal_data_B : バイアス制御信号
cal_data_G : 第2の制御信号
cal_data_I : 第1の制御信号
D : ドレイン端子
GND : 事前に設定された電位
IN : 集積回路構成体の入力部
OTPW : 特別なパッド
OUT : 集積回路構成体の出力部
RD1,...,RDx : 第2の切り替え可能な抵抗ネットワークの抵抗
RS1,...,RSx : 第1の切り替え可能な抵抗ネットワークの抵抗
S : ソース端子
S10, ... : プログラムステップ
SW1,...,SWx : 切り替え可能なネットワーク回路のスイッチ
SW1,...,SWy
図1
図2
図3
図4