(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540992
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】雪氷モニタリング装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20190628BHJP
G01W 1/14 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
G01W1/00 G
G01W1/14 Q
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-50304(P2015-50304)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-170069(P2016-170069A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505358783
【氏名又は名称】株式会社センテンシア
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】神田 淳
(72)【発明者】
【氏名】舘山 一孝
(72)【発明者】
【氏名】原田 康浩
(72)【発明者】
【氏名】大前 宏和
(72)【発明者】
【氏名】三宅 俊子
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−258557(JP,A)
【文献】
特開平06−129982(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0303488(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00 − 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過部材と、前記透過部材の一方側から他方側に向けて電磁波を発信する発信機を有する発信ユニットと、前記透過部材の他方側から一方側に入射する電磁波を検知する受信機を有する受信ユニットとを備えた雪氷モニタリング装置であって、
前記発信ユニット及び受信ユニットが、前記発信機から発信された電磁波の他方側から一方側に入射する散乱波を前記受信機で検知するように配置され、
前記発信ユニットが、所定の波長の電磁波又は波長の異なる複数の電磁波を発信可能に構成され、
前記受信ユニットが、雪氷内の入射部と異なる位置の前記電磁波の散乱波の強度を検出するように構成され、
前記発信ユニットにより発信された波長の異なる複数の電磁波の各波長の強度と前記受信ユニットにより受信された電磁波の反射・散乱の各波長の強度との関係に基づき雪氷の質をモニタリングし、又は前記受信ユニットにより受信された雪氷内の入射部と異なる位置の電磁波の反射・散乱波の強度に基づき雪氷の厚さをモニタリングする
ことを特徴とする雪氷モニタリング装置。
【請求項2】
前記発信ユニットあるいは前記受信ユニットの少なくとも一方が、複数の発信機あるいは複数の受信機を備えていることを特徴とする請求項1に記載の雪氷モニタリング装置。
【請求項3】
前記複数の受信機が、異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の雪氷モニタリング装置。
【請求項4】
前記発信ユニットあるいは前記受信ユニットの少なくとも一方が、位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能な発信調整機構あるいは位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能な受信調整機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の雪氷モニタリング装置。
【請求項5】
前記発信ユニットが、指向性を有する電磁波を発信する発信機を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の雪氷モニタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過部材と、透過部材の一方側から他方側に向けて電磁波を発信する発信機を有する発信ユニットと、透過部材の他方側から一方側に入射する電磁波を検知する受信機を有する受信ユニットとを備えた雪氷モニタリング装置に関し、透過部材の上部の積雪や凍結の状態や程度の検出に好適な雪氷モニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路面や滑走路面(以降「路面」と言う)の着氷・着雪状態をモニタリングすることは、安全管理上、重要である。
このため、路面上の積雪の深さを外部からの超音波の反射を利用して計測する技術が公知であり、外部からマイクロ波を利用して積雪等の状態を計測する技術が公知である。
しかしながら、外部(上方等)にモニタリング装置を設置する場合、設置スペースの確保、モニタリング装置への自然環境(雪、雨、風等)による影響、外部からの異物の衝突等によるモニタリング装置自体の破損が問題となる。
【0003】
また、空港の滑走路では、航空機の離着陸の安全性に影響を与えるため、滑走路やその周囲の上方にモニタリング装置そのものを設置することには大きな制限がある。
さらに、航空機の機体表面の着氷・着雪状態のモニタリングにおいても、モニタリング装置を機体外側に設置することは、航空機の耐空性の観点から非常に困難である。
そこで、路面や構造物の内部に光を含む電磁波の発信装置を埋め込み、表面に向かって光を含む電磁波を発信できるようにし、電磁波の散乱波を検知するための受信装置を、路面や構造物の内部に埋め込んだ発信装置のそばに設置することで、外部設置することの問題点を解決したモニタリング装置が公知である(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−113636号公報
【特許文献2】特開平10−267837号公報
【特許文献3】特開2000−258554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等で公知のモニタリング装置は、発信ユニット(投光器4)から発信した光の反射光を受信ユニット(受光器5)により検知するものであり、受光レベルを所定の閾値と比較して融雪装置の動作をオン・オフするものである。
この原理で融雪が必要な積雪か否かをある程度検知することは可能となるが、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることはできなかった。
特許文献2等で公知のモニタリング装置は、波長の異なる複数の電磁波(赤外線)の反射率をセンサにより検出するものであり、それらの値から雪の含水率を測定するものである。
この原理で積雪の質に関しての情報をある程度得ることは可能であるが、積雪の深さをモニタリングすることはできず、また、雪以外の氷、水、泥等を区別して検出することもできず、詳細な質に関する状態をモニタリングすることはできなかった。
特許文献3等で公知のモニタリング装置は、2つの受信ユニット(光量センサー1)の一方で外部からの自然光の光量を検知し、他方で発信ユニット(発光体11)から発信した光の反射光を含む光量を検知し、それら2つの情報から積雪の有無を判断するものである。
この原理で積雪の有無を判断することは可能となるが、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は前述した課題を解決するものであり、路面や構造物の内部に埋め込むことが可能であり、路面や構造物の表面に局所的に付着した雪等(雪・氷・水・泥など)の有無を判定できるとともに、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることが可能な雪氷モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る雪氷モニタリング装置は、透過部材と、前記透過部材の一方側から他方側に向けて電磁波を発信する発信機を有する発信ユニットと、前記透過部材の他方側から一方側に入射する電磁波を検知する受信機を有する受信ユニットとを備えた雪氷モニタリング装置であって、前記発信ユニット及び受信ユニットが、前記発信機から発信された電磁波の他方側から一方側に入射する散乱波を前記受信機で検知するように配置され、前記発信ユニットが、波長の異なる複数の電磁波を発信するように構成され、前記受信ユニットが、異なる位置の前記電磁波の散乱波の強度を検出するように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
なお、本明細書中の「電磁波」は、可視光やさらに波長に短いものも含む。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る雪氷モニタリング装置によれば、発信ユニットが、波長の異なる複数の電磁波を発信可能に構成され、受信ユニットが、異なる位置の電磁波の散乱波の強度を検出するように構成されていることにより、一次元あるいは二次元的な強度分布を検出することで、路面または構造物の表面に局所的に付着した雪等(雪・氷・水・泥など)の有無を判定でき、正確に積雪に関する情報のみを抽出することが可能となり、異なる波長毎の散乱波によって、深さや質を分離して高精度に求めることでき、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることが可能となる。
また、発信ユニットと受信ユニットを一体とすることで、装置全体を小型化することが可能であり、設置場所の選択の自由度が向上するとともに、路面や構造物の内部等の必要な箇所に埋め込むことが可能となる。
また、小型化することで、表面の平均的な状態の計測ではなく、局所的な計測によって必要な箇所で高精度のモニタリングを実現できる。
さらに、路面や構造物の内部等の必要な箇所に埋め込むことで、外部の自然環境によるモニタリングの精度に対する影響を排除でき、外部からの異物の衝突等による破損等を防止することができる。
【0009】
本請求項2に記載の構成によれば、発信ユニットが、複数の発信機を備えることにより、さらに容易に異なる波長の電磁波を発信することが可能となる。
また、受信ユニットが、複数の受信機を備えることにより、さらに容易に一次元あるいは二次元的な強度分布を検出することが可能となる。
本請求項3に記載の構成によれば、複数の受信機が、異なる位置に配置されていることにより、さらに広範囲に一次元あるいは二次元的な強度分布を検出することが可能となる。
本請求項4に記載の構成によれば、発信ユニットが、位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能な発信調整機構を備えることにより、設置環境や、積雪等の状態に応じて、電磁波を最適に発信することで、より高精度な計測分解能を得ることができ、詳細な積雪の深さや質に関する状態を、さらに高精度にモニタリングすることが可能となる。
また、受信ユニットが、位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能な受信調整機構を備えることにより、設置環境や、積雪等の状態に応じて、電磁波の一次元あるいは二次元的な強度分布を最適に検出することで、より高精度な計測分解能を得ることができ、詳細な積雪の深さや質に関する状態を、さらに高精度にモニタリングすることが可能となる。
本請求項5に記載の構成によれば、発信ユニットが、指向性を有する電磁波を発信する発信機を備えていることにより、発信ユニットから直接検出ユニットに到達する電磁波の影響を抑制し、詳細な積雪の深さや質に関する状態を、さらに高精度にモニタリングすることが可能となる。
指向性を有する電磁波を発信する発信機としては、電磁波自体に指向性を持つレーザー光等を発信するものや、偏向板や並行光化レンズ等の指向性フィルターを装着したものがあげられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る雪氷モニタリング装置の概略説明図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る雪氷モニタリング装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、透過部材と、透過部材の一方側から他方側に向けて電磁波を発信する発信機を有する発信ユニットと、透過部材の他方側から一方側に入射する電磁波を検知する受信機を有する受信ユニットとを備えた雪氷モニタリング装置であって、発信ユニット及び受信ユニットが、発信機から発信された電磁波の他方側から一方側に入射する散乱波を受信機で検知するように配置され、発信ユニットが、波長の異なる複数の電磁波を発信可能に構成され、受信ユニットが、異なる位置の電磁波の散乱波の強度を検出するように構成され、路面や構造物の内部に埋め込むことが可能であり、路面や構造物の表面に局所的に付着した雪等(雪・氷・水・泥など)の有無を判定できるとともに、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることが可能なものであれば、その具体的な実施態様はいかなるものであってもよい。
【0012】
本発明に係る雪氷モニタリング装置100は、
図1に概略的に示すように、透過部材110と、透過部材110の一方側から他方側に向けて電磁波を発信する発信機121を有する発信ユニット120と、透過部材110の他方側から一方側に入射する電磁波を検知する受信機131を有する受信ユニット130とを備えている。
発信機121は、例えばレーザー発振器であり、それ自体で異なる複数の波長のレーザー光を発信できるものであってもよく、発信ユニット120に、複数の発信機121が取付けられていてもよい。
また、発信調整機構によって発信ユニット120の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能としてもよく、発信ユニット120は固定とし発信ユニット120内で発信調整機構によって発信機121の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能としてもよい。
【0013】
受信機131は、例えばCCD等の二次元光学センサであり、それ自体で波長の異なる複数の電磁波の散乱波の二次元的な強度分布を検出できるものであってもよく、受信ユニット130に複数の受信機131が取付けられ、全体として波長の異なる複数の電磁波の散乱波の一次元あるいは二次元的な強度分布を検出してもよい。
また、受信調整機構によって受信ユニット130の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能としてもよく、受信ユニット130は固定とし受信ユニット130内で受信調整機構によって受信機131の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能としてもよい。
【0014】
このような雪氷モニタリング装置100において、透過部材110の上方の積雪Sに対し、発信機121から入射する電磁波と受信機131で検出する電磁波の関係は波長によって異なっている。
図2に示すように、積雪の放射伝達モデルに基づけば、アルベド(入射電磁波に対する反射電磁波の比)は波長によって変化する(図中のre=50μmは新雪に相当、1000μmはざらめ雪に相当)。
このことにより、反射・散乱する電磁波の量は、雪質と波長に対して大きく変化し、雪厚と雪質は、電磁波の波長に対する反射・散乱強度の関係から算出が可能である。
そして、受信機131によって異なる複数の電磁波の散乱波の二次元的な強度分布を検出することで、透過部材110の上方に局所的に付着した雪等(雪・氷・水・泥など)の有無を判定できる。
【0015】
また、積雪量の違いを散乱光の強さで検知する実験を行なった。
図3に示すように、−20℃に調温された実験室の中に、透過部材110としてガラス製の水槽を準備し、その下部に発信ユニット及び受信ユニットを設置した。
発信ユニット及び受信ユニットは専用のステージに設置され、お互いの距離を手動で変更できる機構を備えている。
水槽に厚さの異なる2種類の雪(30mm、90mm)を入れて、水槽下部の発信ユニットから鉛直に対し15°の角度でレーザーを照射し、受信ユニットでその散乱光を鉛直に対し15°の角度で受光して強度を計測した。
この機構を用いて、発信ユニットと受信ユニットの距離を0mmから60mmまで変化させて、散乱光強度の分布を併せて計測した。
その計測結果は、
図4に示すとおりであり、雪の厚さにより光強度の分布が異なり、この装置で、雪の状態を検知できることがわかる。
これらにより、本発明に係る雪氷モニタリング装置100によれば、詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることが可能となる。
【0016】
本発明を滑走路に適用した一例を、
図5に示す。
雪氷モニタリング装置100aは、滑走路Lに設けられた収容空間に設置されている。
透過部材110は滑走路Lと同一平面をなすように設置され、発信機121を有する発信ユニット120は透過部材110に対する発信角度を変更可能に設けられており、受信機131(図示せず)を有する受信ユニット130は発信ユニット120側から5列透過部材110に向けて設けられている。
収容空間には、受信ユニット130及び発信ユニット120の電源・制御部140が設けられており、外部からの電源供給、姿勢制御、検出信号の出力等を行なうように構成されている。
このような雪氷モニタリング装置100aを、滑走路Lの適宜の箇所に1つあるいは複数配置することで、航空機の障害とならず、外部の自然環境によるモニタリングの精度に対する影響を排除し、外部からの異物の衝突等による破損等を防止しつつ、滑走路全体の詳細な積雪の深さや質に関する状態をモニタリングすることが可能となる。
【0017】
本発明の雪氷モニタリング装置は、前述の例に限定されず、また、設置箇所も道路、橋梁等の他の構造物や、航空機や車両等の移動体であってもよく、様々な分野に応用可能である。
さらに、本発明では波長の異なる複数の電磁波の散乱波の二次元的な強度分布を検出するため、積雪以外の雪・氷・水・泥等の検出や付着パターンの解析等も行なうことが可能であり、それらのモニタリング装置としても応用可能である。
【符号の説明】
【0018】
100 ・・・ 雪氷モニタリング装置
110 ・・・ 透過部材
120 ・・・ 発信ユニット
121 ・・・ 発信機
130 ・・・ 受信ユニット
131 ・・・ 受信機
140 ・・・ 電源・制御部
S ・・・ 積雪
L ・・・ 滑走路