特許第6541002号(P6541002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541002低収縮性単層リチウムイオンバッテリセパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541002
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】低収縮性単層リチウムイオンバッテリセパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20190628BHJP
   H01G 11/52 20130101ALN20190628BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   !H01G11/52
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-542050(P2015-542050)
(86)(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公表番号】特表2016-502736(P2016-502736A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】US2013070197
(87)【国際公開番号】WO2014078599
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】13/676,976
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513292949
【氏名又は名称】ドリームウィーバー・インターナショナル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】モリン,ブライアン ジー.
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/093350(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/101432(WO,A1)
【文献】 特開2005−228544(JP,A)
【文献】 特開2005−268401(JP,A)
【文献】 特開平07−302584(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/054663(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/033975(WO,A1)
【文献】 特開2012−036517(JP,A)
【文献】 特表2009−510700(JP,A)
【文献】 特開2012−124239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01G 11/52
D04H 1/425,1/4282,1/4334,1/4391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロファイバおよびナノファイバが網目状に交絡する単一層を備える絶縁非導電性微多孔高分子バッテリセパレータであって、190°Cの温度に1時間さらされると7%以下収縮し、
平均流量細孔径が500nm以下、厚みが40マイクロメータ以下、空隙率が60%以下である、バッテリセパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリセパレータであって、前記マイクロファイバは互いに交絡し;前記セパレータは互いに交絡したマイクロファイバ間に隙間を有し;前記隙間は前記隙間の中にナノファイバを備える、バッテリセパレータ。
【請求項3】
前記マイクロファイバがフィブリル化されたマイクロファイバを備える請求項2に記載のバッテリセパレータ。
【請求項4】
前記マイクロファイバは1000nm超の平均繊維直径を有する、請求項3に記載のバッテリセパレータ。
【請求項5】
前記マイクロファイバは3000nm超の平均繊維直径を有する、請求項3に記載のバッテリセパレータ。
【請求項6】
前記ナノファイバは1000nm未満の平均繊維直径を有する、請求項3に記載のバッテリセパレータ。
【請求項7】
前記ナノファイバは700nm未満の平均繊維直径を有する、請求項3に記載のバッテリセパレータ。
【請求項8】
横方向アスペクト比が1.5:1超であるナノファイバを備える請求項2に記載のバッテリセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロファイバおよびナノファイバが網目状に交絡した単一層を備える絶縁性(非導電性)微多孔高分子バッテリセパレータに関する。該セパレータでは、単一層の不織布により空隙率と細孔径をいずれの所望レベルにも調整できる。材料も製作工程も適切に選択することで、得られるバッテリセパレータは、等方性強度、低収縮性、高い濡れ性レベル、および層厚さに直接関係する細孔径を有する。全体的な製作方法は非常に効率的であり、費用対効果の高い高剪断処理することで、高分子マイクロファイバマトリックス内および/または該基質上への高分子ナノファイバの組み合わせを可能にする。セパレータ、該セパレータを備える電池、該セパレータの製造方法、および電池装置内での該セパレータの使用方法は、すべて本発明に包含される。
【背景技術】
【0002】
長年、電池は離れた位置での発電装置として利用されてきた。電極間(アノードおよびカソード)のイオン移動を制御することで、電力回路を生じさせ、一方の電極で余剰イオンが使い果たされそれ以上の発電ができなくなるまで使用可能な電力の供給源となる。近年では、二次電池が作られ、そのような離れた位置にある電源のライフサイクルを長くできたが、別電源に一定時間この電池を接続する必要がある。しかしながら、全体として見れば、そのような電池を再利用できることで、利用の可能性を広げ、特に携帯電話、ラップトップコンピュータ、さらには電力だけで機能する自動車にまで可能性を広げた。
【0003】
そのような電池は、一般的に少なくとも5つの構成要素を備える。ケース(または容器)は、内部環境暴露だけでなく外部漏れも防ぐ安全かつ信頼できる方法ですべてを収納する。そのケース内では、アノードおよびカソードは、効果的にセパレータにより分離され、セパレータを通してアノードおよびカソード間をイオン移動させる電解質(低粘性液体)も同様に分離される。今日の、そしておそらくは将来の二次電池は、小型機器であれ携帯機器であれあらゆる機器を動作させ、充電までの間隔を長くし効果を持続させるために、例えば自動車用の超大型電池までをも含む大容量の発電を可能にし、その超大型電池は、互いに接触しない大型電極(少なくとも表面において)、および必要な回路を完成するよう常に一定に膜を通過する大量のイオンを備え、すべての発電レベルにおいて自動車のエンジンを駆動させるに十分な電気を発電する。そのためには、将来バッテリセパレータの性能および汎用性が、現在の産業では未だもたらされていないような所定の要件を満たす必要がある。
【0004】
一般的に、独立セル型電池が誕生して以来、バッテリセパレータは、発電セル内で電解質を効率的に移動可能にするだけでなく、電極どうしの不要な接触から保護するために使われている。通常、そのような材料はフィルム構造であり十分薄く、電池装置の重量および容積を低減し、同時に上記の必要特性を付与する。そのようなセパレータは、適切な電池機能を可能にするため、他の特性も発揮する必要ある。その他の特性には、化学的安定性、イオン種の適切な空隙率、電解質移動に効率のよい細孔径、適切な透気性、有効な機械的強度、および高温にさらされた時の寸法安定性および機能安定性を維持する能力(異常なほどの温度上昇時にはシャットダウンできる能力も含む)がある。
【0005】
より詳しく説明すると、セパレータ材は、様々なシナリオに耐え得る強度と構成でなければならない。まず、セパレータは、電池組み立て時の応力により裂けおよび穴あきを起こしてはならない。このように、セパレータの全体的な機械的強度は極めて重要であり、それは、特に機械方向および横(すなわち、横断)方向の両方向において引張強度に優れた材料であれば、製造業者はより容易に扱うことができ、そのような重要な手順においてセパレータが構造的欠陥および損失を受けないための厳しいガイドラインを必要としないからである。さらに、化学的観点から、セパレータは、満充電時には特に、電池自身の内部の酸化環境および還元環境に耐えなければならない。特に異常なほど大量の電流が流れる構造完全性、または電極を接触させてしまうような使用中の欠陥はいずれも、発電能力を損ない全体的に電池を無効化させる。このため、化学的暴露をしのぐ能力が十分あっても、セパレータは、保管、製造および使用中も上記と同様の理由により、寸法安定性(すなわち、反りまたは溶融)も機械的強度を失うことがあってはならない。
【0006】
しかし同時に、セパレータは本質的に、電池自身の出力を高め、出力密度を増加させるに適した厚さを必要とする。セパレータの摩耗が偏れば、電極接触を防ぐ連携だけでなく、電解質の適切な流れの連携も弱くなるので、ライフサイクルを長くするには、厚さが均一であることも極めて重要である。
【0007】
さらに、そのようなセパレータは、そのような膜を通るイオンの適切な移動に適した空隙率および細孔径(および、使用中イオン移動を促進するために液体電解質を一定量に維持できる適切な能力)を有する必要がある。細孔それ自体を十分小さくし、上記で記述したように、電解質イオンを適切なレートで移動可能にもするが、電極部が膜を通って進入および/または通過しないようにする。また、細孔径も細孔径分布も均一であれば、長時間にわたり均一に発電でき、長期に電池全体の信頼性が高まるが、それは、前述したように、少なくともそういったシステムにおいて最良に制御された場合バッテリセパレータが均一に消耗し、ライフサイクルを長くすることができるからである。さらに、中の細孔が異常な高温にさらされた時には適切に閉じ、電池の不具合時イオンが不要に過剰に移動するのを防ぐ(すなわち、火災や同様の危険を防ぐ)ことができるのは利点であろう。
【0008】
また、細孔径や細孔分布はセパレータの透気抵抗度を上下させるが、セパレータが電池自身の内部にある電解質を適正に通過させることができる能力を簡単な測定値で示すことができる。たとえば、平均流量細孔径は、ASTM E−1294に従い測定でき、この測定はセパレータのバリヤ特性の特定に役立つ。これにより、低細孔径であっても、細孔自体の剛性(すなわち、細孔が使用中長時間にわたり所定の応力を受けても所定の径を維持できる能力)により、効果的な電極分離制御も可能となる。おそらくさらに重要なことは、電池の長時間の発電能力に悪影響を及ぼす結晶(たとえば、グラファイトアノード上のリチウム結晶)がアノード上に形成される機会を低減するために、細孔径レベルによりデンドライト生成を制限できることである。
【0009】
さらに、セパレータは、製造、保管および使用中、電解質がセル全体を完全な状態で満たす能力を損なうことがあってはならない。このためセパレータは、実際にイオンが確実に膜を通過し適切に移動するため、製造、保管および使用中、吸収および/または濡れ性が適切でなければならない;セパレータの濡れ性が適切でない場合、電解質はセパレータ細孔上および細孔中に適切に存在せず、必要なイオン移動が容易でなくなる。さらに、液体電解質がセパレータ表面およびセル自体の中に確実に分散するには、通常、適切なセパレータの濡れ性が必要である。電解質の分散にむらがあれば、セル内およびセパレータ上に樹状の突起が形成されることがあり、電池が故障し、ショートが起きる可能性が高まる。
【0010】
上記でふれたように、一般的なリチウムイオンセル内で使用される場合、セパレータの寸法安定性に大いに懸念が残る。セパレータは、電池寿命中にわたり、イオン拡散のため細孔性障壁を確実に必然的に備えている。しかしながら、ある特定の状況では、外部的要因またはセル自身の内部による温度上昇が発生し、影響を受けやすいセパレータ材では、長期にわたり電池性能に悪影響を及ぼしかねない不要な収縮、反りまたは溶融する可能性がある。そうなれば、使用中に温度上昇した状態から温度レベルを下げ、および/または電池の種類を交換することは極めて困難であるので、セパレータ自身が、暴露に対し良好な影響は与えることが無くとも、高温に耐え得る材料を含んでいるべきである。または、例えば、最適レベルでのセパレータ機能を可能にしながらも、そのような有益な効果がある繊維1種を含め複数の材料を組み合わせて使用することは、妙案であろう。
【0011】
しかしながら、上述したように、今日の基準ではこの重要な懸念を念頭に置いていない。効果的とされるバッテリセパレータの一般的な目的は、一枚の薄いシート状の材料内にそのような有益な特性を全て持たせることにある。低透気抵抗度、極小細孔径および適切な細孔径分布、化学的環境および高温環境下における寸法安定性、適切な濡れ性、可能な限り小さい筐体内において電池部を可能な限り最大にする最適な厚さ、および全体的な有効引張強度(および本質的にできれば等方性)は全て、電極が接触するいかなる可能性も徹底的に減少させるが、電解質が電池セルの一方から他方へ制御移動するのを可能とする(すなわち、必要とする電力を発生させる回路をクローズする)材料を得るには必要であり、その材料は言い換えれば、セル体積を最小にし、最長期間、電池出力を最大にする材料である。現在、それらの特性を全て、そのような程度に同時に有効に供することはできてない。たとえば、Celgardは、極小細孔径の発砲フィルムバッテリセパレータを公表し、販売しており、これは上述の点では極めて優れている;しかしながら、その材料の透気抵抗度は極めて高く、そのようなセパレータの全体的な効率性を限定している。一方、duPontは、透気抵抗度が極めて低く、材料中の細孔径が過度に大きいナノファイバ不織布膜セパレータを商品化している。さらに、これら2つの材料とも全体的な機械的強度が極めて限定されている;Celgardのセパレータは機械方向における強度に優れるが、横(横断)方向における強度はほぼゼロに等しい。横方向における強度が低いので、上記で言及したように、少なくとも製造する際には非常にデリケートに取り扱う必要がある。duPontの材料では、Celgardの材料に比べ横方向強度は高いとはいえ、強度が両方向とも低めであることを除けば、幾分良い。実際、duPontの製品は、等方性材料(機械方向、横方向の両方向でほぼ同じ強度を有する)に近く、Celgardの製品と比べ取扱性では高く信頼できる材料である。しかしながら、duPontセパレータの測定引張強度は、実際にはかなり低く、製造の際にはユーザは取扱い、配置に注意深さを強いられる。同様に、先行技術のバッテリセパレータの寸法安定性では、これらの引張強度に関する問題があるため疑問が残り、二次電池セル内に置かれている場合、長い期間で不所望に構造完全性を損なう材料となる可能性がある。
【0012】
このため、長期にわたりリチウム電池の信頼性を保つ特性全てを同時に備えるバッテリセパレータが依然として必要とされている。比較的等方性があり全体的には引張強度が高く、化学的安定性は適切で、構造完全性があり、寸法安全性(特に高温にさらされた際)があるだけでなく、透気抵抗度が低く、細孔径が小さいセパレータが高く望まれてはいるが、未だ評価が高いセパレータ材料は供されていない。さらに、材料選定などのマイナ変更により有益な成果および要求要件を収集する場合は特に、効率的な製造工程で所望の目標特性レベルに達することができるバッテリセパレータの製造方法も強く望まれる;現在、そういった製造方法はバッテリセパレータ業界全体でも未だ講じられていない。機械的特性、熱抵抗、透過性、寸法安定性、シャットダウン特性、およびメルトダウン特性を有するだけでなく、そういった幅広い最終成果(すなわち、要求に応じた処理変更による目標空隙率および透気抵抗度)をもたらす膜を数多く供給するには、効率的で単純ではあるが分かりやすいバッテリセパレータの製造方法が、二次電池セパレータ業界では高く評価される;しかし未だ、そのような材料は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,110,588号明細書
【特許文献2】米国特許第6,432,347号明細書
【特許文献3】米国特許第6,432,532号明細書
【特許文献4】米国特許第7,112,389号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0014】
本発明における明白な利点は、湿式不織布加工工程での製造が簡単なことである。また、加工工程で使用される構成繊維の割合を単に変更したり、製作された単層材料を適切にカレンダ処理したりすることで、細孔径、空隙率および透気抵抗度を目標レベルに到達させることができることも明白な利点である。さらに、本発明のバッテリセパレータの利点として、電池製造段階だけでなく長期使用の際においても使用者に信頼性を与える等方性強度特性がある。本発明のセパレータが低透気抵抗および低細孔径の両方を提供可能であることは、本発明の更なる利点でもある。また、本発明のバッテリセパレータの利点として、セパレータ本体を通して電荷を移動させることはないが、単に構造内部にある細孔を通して電荷イオンを移動させる、非導電性が特に高い(このため絶縁性の)布(または紙)を提供している。また、別の利点として、材料の空隙率が高く、そのため、より多くのイオンを流すことができ、電極が十分に再充電されることで幾度ものライフサイクルにわたりエネルギーを保持する耐久性が上がる。また、別の利点として、層を形成する以前に繊維材料を適切に選択することで所定の物理特性を調整できる能力と、始めは全てマイクロファイバを使用し、高剪断処理によりナノファイバ(フィブリル化)を生成することで、単一材から必要なセパレータ構成要素を全て形成できる能力を、限定することなく備える。特に利点として、該セパレータは、使用中高温に耐えることができ、収縮性も低く、性能を著しく損なうこともない。
【0015】
従って、本発明は、マイクロファイバおよびナノファイバを組合せた不織布を備える高分子バッテリセパレータに関し、前記セパレータの前記単一層は等方性のある引張強度を有し、機械方向の引張強度は横方向の引張強度の3倍未満である。前記セパレータでは、機械方向(MD)の引張強度が90kg/cm超1,000kg/cm未満であり、横方向(CD)の引張強度が30kg/cm超1,000kg/cm未満であり、平均流量細孔径が0.80μm未満である。さらに、該発明は、単層繊維を備えた、定義に沿ったバッテリセパレータを含み、前記層はナノファイバおよびマイクロファイバの両方を備え、前記ナノファイバの平均最大幅は1000nm未満であり、前記マイクロファイバの最大幅は3000ナノメータ超であり、前記ナノファイバおよび前記マイクロファイバは、少なくとも前記ナノファイバの一部が前記マイクロファイバの隙間に入る形で混在している。
【0016】
さらに、本発明はバッテリセパレータの形成方法を包含し、前記バッテリセパレータの最大厚さは250ミクロンであり、前記バッテリセパレータはマイクロファイバ組成物およびナノファイバ組成物の組合せを含み、前記方法はa)水性溶媒を使い;b)その溶媒に複数のナノファイバおよび複数のマイクロファイバを導入して、水性溶媒内でマイクロファイバ/ナノファイバ分散物を形成し;c)高剪断条件で前記マイクロファイバ/ナノファイバ分散物を混合し;d)抄紙機内に高剪断された前記分散物を導入し;e)マイクロファイバ/ナノファイバ材のウェブを製作し;f)前記ウェブを乾燥させる、工程を含む。また、続いて、厚さ最大100ミクロン、細孔径最大2000nmのセパレータ材を製作する、カレンダ処理で該ウェブを扱う工程を含む方法についても考慮する。
【0017】
さらに、本発明は、マイクロファイバおよびナノファイバが網目状に交絡した単一層からなる絶縁性非導電微多孔高分子バッテリセパレータを包含し、前記バッテリセパレータは、温度200°Cに1時間さらされた時、収縮は5%未満である。該セパレータは、長さ2.54cm(1インチ)未満の繊維も含み、該繊維は、約300℃未満では融点も、ガラス転移温度も、熱劣化も無い熱安定性繊維を少なくとも5%含み、該バッテリセパレータの平均流量細孔径は、2000nm未満である。また、平均流量細孔径が2000nm未満であるが、好ましくは1000nm未満である、請求項1に記載のバッテリセパレータも包含する。本発明のセパレータの他の特性には、フィブリル化されたマイクロファイバ、平均繊維径が1000nm超(好ましくは3000nm超)であるマイクロファイバ、平均繊維径が1000nm未満(好ましくは700nm未満)であるナノファイバ、および横方向アスペクト比が1.5:1超であるナノファイバを含む。
【0018】
本公開全体を通して、マイクロファイバという用語は、マイクロメータ単位で測定される幅を有する高分子繊維を意味することを意図し、一般的に、最大幅が1000nm超、3000nm超、5000nm超、または時に10,000nm超である可能性もあり、最大約40ミクロンである。同様に、ナノファイバという用語は、ナノメータ単位で測定される幅を有する高分子繊維を意味することを意図し、一般的に、最大幅が1000nm未満、時に700nm未満、500nm未満、または時に300nm未満(小さければ約1nm)である可能性もある。マイクロファイバ材であれ、ナノファイバ材であれ、幅は直径であるとみなすこともあるが、その場合、繊維構造を均一にすることは極めて難しいので、直径は平均直径であるとみなすと理解される。このため、特に繊維自体が円筒形でない場合、重要な規定として最大幅を使用し、これにより、マイクロファイバ、ナノファイバの寸法が適正である限り、該繊維の形状が方形、矩形、三角などであることを可能とし、全て本発明の範囲内にあてはまる。同様に、絶縁性という用語は、電気伝導性が殆ど見られないことを意図し、従って、本発明の布構造では、布本体全体で電荷をもつことはできないが、布内部にある細孔を通して電解イオンが通過するということは可能である。
【0019】
特に、該目的のために2つの基本構成要素からなる単層不織布を提供可能にするマイクロファイバおよびナノファイバの該組合せは、バッテリセパレータ分野では未だ研究されていない。その組合せにより繊維直径および繊維長が双峰性分散した不織布が作られるため、その組合せは特に重要であり、そういった組合せでは、マイクロファイバの平均長は、少なくともナノファイバの平均長の少なくとも5倍、好ましくはナノファイバの平均長の10倍超、最も好ましくはナノファイバ長の20倍超である。さらに、その直径も双峰性分散しており、そういった組合せでは、マイクロファイバの平均直径は、ナノファイバの平均直径の3倍超、好ましくはナノファイバの平均直径の5倍超、最も好ましくはナノファイバの平均直径の10倍超である。この双峰性分散により、ナノファイバだけでは有することができない強度、ロフト、透過性、弾性率、裂けおよび穴あきに対する耐性、湿潤強度、加工性などをマイクロファイバが提供できる。
【0020】
マイクロファイバ組成物は、上記でふれた必要とされる化学的耐性および耐熱性を有し、マイクロファイバ構造を形成できる任意の適切な高分子であってもよい。また、該マイクロファイバを、不織布の加工工程において複数の該マイクロファイバどうしが所望する程度に交絡しやすいようマイクロファイバの表面積を広げるために、繊維形成の際または形成後フィブリル化させてもよい(または、プラズマ暴露など、他の類似方法により処理してもよい)。該高分子構成要素は、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンおよびコポリマを含むその他などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド―ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチル、ポリウレタン、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、セルロース系高分子(非限定的例として、レーヨン)、パラ―アラミドおよびメタ―アラミドを含むポリアラミド、およびこれらの高分子を含む配合物、混合物、およびコポリマであってもよい。ポリアクリレート、セルロース系ポリマおよびポリアラミドは、潜在的に好ましい。該材料は、非常に望ましい特性を幅広く有しており、その特性は、マイクロファイバ基材などと同じくナノファイバ構成要素として含まれている時は特に、引張強度、高温保護性、濡れ性、細孔径の性能に関して包括的に有益な結果が得られるよう、他の高分子タイプの特性と組み合わされて機能する。また、該マイクロファイバは、加工後、不織布構造全体の接触性および寸法安定性が所望する程度になるよう、接着剤を使って予備処理をしてもよい。
【0021】
さらに、バッテリセパレータ全体に所望する特性を与える材料を組み合わせるために、マイクロファイバを個々の繊維特性で選択してもよい。このため、ポリ―アラミド、メタ―アラミドおよびセルロース系繊維は耐熱性および所定の強度に優れているので、該繊維を個別に組み入れてもよく(例えば、湿式組成物として)、または交絡などにより組み合わせてもよい。該繊維は、セパレータ全体に必要強度を与えるに十分な長さが必要であるが、適切に(例えば、湿式処理などにおいて)組入れ可能な短さでなければならない。例えば、繊維の長さは、好ましくは0.5mm超、より好ましくは1mm超、最も好ましくは2mm超であってもよい。
【0022】
マイクロファイバまたはナノファイバには、加圧下または高温下で溶融または流れる材料を優先してもよい。一つの組成物が他の組成物より低い温度で溶融または流れる場合、特に利点となる。例えば、ポリエステルマイクロファイバを溶融温度260℃に近い温度で流れるようにすることができる。さらに、ポリアクリロニトリルマイクロファイバまたはポリアクリロニトリルナノファイバを高圧および高温下で流れるようにすることができる。セルロース、レーヨン、アラミドなどのマイクロファイバまたはナノファイバはこの温度未満では流れない。このため、高温および/または高圧下で流れる少なくとも1つの繊維と、同じ高温および/または同じ圧力下でも流れない少なくとも1つの繊維からなる材料の組合せにより、先の繊維を別の繊維と結合させ、不織布セパレータに強度を加えることが可能になる。
【0023】
ナノファイバは、マイクロファイバと同じ化学的暴露および高温暴露に耐えるために、任意の高分子の組成物であってもよく、および/または高分子の組合せであってもよい。該ナノファイバ材に対し、製作した不織布表面または不織布の隙間でより交絡するよう、細孔径の要因による製造後の処理を行う必要はない。しかしながら、マイクロファイバに対し、上記のナノファイバの定義にあう材料として、マイクロファイバ源からナノサイズの組成物を剥離するために、高剪断処理を施してナノファイバを製作することもできる。この方法においても、剥がされまたは剥離された該ナノファイバは、フィブリル化の外観を奏し、セパレータを製作する際、マイクロファイバの隙間での交絡が改善される場合がある(同じセパレータ製造手順に先立ち、および/またはセパレータの製造中に個々のナノファイバ同士の交絡を改善できるという意味ではない)。そのような場合、マイクロファイバ材およびナノファイバ材が、同じ材料で製作されたものでもよく、その場合マイクロファイバ材の一部が切り離されナノファイバ組成物を形成しており、該ナノファイバでは、長さは様々であり、横断面および全体の径も様々である。いずれの場合も、該ナノファイバを製作したマイクロファイバだけからでなく、別の種類のマイクロファイバと合わせ、マイクロファイバ源から切り離された該形状の組成物を集め使用して、ナノファイバをこの方法で製作してもよい。本発明のバッテリセパレータの該実施形態において、いずれのナノファイバも該目的に使用される可能性がある。しかしながら、好ましくは、高温安定性、引張強度など、潜在的に有益である特性を有するナノファイバを製作可能にするには、特定の繊維種が使用される状況になる場合がある。
【0024】
「フィブリル化」されたナノファイバが使用されると説明したが、特に製作されたナノファイバ構成要素は、湿式工程により製作される所定の細孔径を有する、本発明の成果であるセパレータシートを作り出せるよう、該マイクロファイバ基材とともに取り込まれてもよい。そのような製造工程では、希釈され湿潤状態のマイクロファイバ溶液にナノファイバ構成要素を導入し、同様の高剪断条件で混合し、その後、乾燥させシートを形成する。その後、このシートは、求めるシート厚まで薄くし、さらに、最適な細孔径および細孔径分布になるよう調整するためにカレンダ処理される。この湿式による工程では、マイクロファイバ構成要素およびナノファイバ構成要素が適正に分散され取り込まれた弾力あるシートを使用して適するシートを製作できるが、ナノファイバ量により、マイクロファイバ組成物どうしの隙間を充填できる能力が決まり、得られるシート内に所望の細孔を作り出せる。そして、特に湿式による製造後にシート全体の引張強度のため、カレンダ処理で細孔径に対するシート厚の相関値を決める場合がある。該工程では、細孔径分布および細孔径を最適にするために比較的単純でしかも簡潔な方法を用い、裂けたり、反ったりおよび/または寸法安定性を悪くするような方法で構造全体を押出または処理する必要はない。さらに、シート製作工程では単純なマイクロファイバ/ナノファイバ/水溶液が使用可能であるので、簡潔で単純な方法が可能となり、また、所望の生産計画内に化学物質を加える必要性を軽減し、または不要にさえする方法も可能にする。該純出発物質および製作方法全体により、本発明の該製品に採用された方法だけでなく、該目的のためのマイクロファイバおよびナノファイバ、並びに、水性溶質の単純な組合せからも意外性のある効果が生じることがわかり、従来不可能であったバッテリセパレータ材を要求に応じ複数のエンドユーザに汎用的に供給できる。
【0025】
このため、十分に高い剪断環境下でナノファイバ組成物がマイクロファイバと結合する本発明の方法および製品では、実際の不織布加工の最中に同時に、得られるマイクロファイバ不織基材上およびその基材内に該ナノファイバを要求通り導入できることは、極めて重要である。換言すれば、不織布製作工程に両種の繊維材料を投入するにあたり、製造会社は、所望の単層繊維構造を形成するため、異なる繊維種どうしが適切に交絡する度合いを最良にする混合量および高剪断条件に合わせるべきであるといえる。また、湿式による不織布の手順としては、高剪断式の他に、マイクロファイバの隙間にナノファイバを適切に導入し、残留させる位置を最良にする加工方法も潜在的に好適である。製造する際、水流を増やせば、極細ナノファイバは、そのような隙間に乾式交絡法よりも高率で引き入れられ、それにより、前述のように隙間を充填できる。また、該目的のために水流を増やすほど、マイクロファイバ基材内でナノファイバが適切に交絡する純度(および、水および過剰な繊維の回収、これについては、別のバッテリセパレータ製造工程で再度利用するため)および信頼性が高まる。得られる不織構造では、厚さ、空隙率、および最も重要なものである構造の中の細孔径がそれぞれ均一性に優れ、また、上記のように、厚さおよび細孔径を最適にするカレンダ処理の安定性が高まる。
【0026】
そのような湿式手順に従った方法の一つに、事前にフィブリル化されたマイクロファイバをパルプ状配合物で供する方法があり、その配合は、例えば水部:繊維部が50:1から10000:1である(水のみが好ましいが、必要であれば、湿式工程が可能で、その後の蒸発を円滑にできる他の溶媒であれば使用することがでるが、それは例えば特定の非極性アルコールである)。事前にフィブリル化されたマイクロファイバは該方法で処理されており、そのため、所定量のナノファイバ(フィブリル化する際、マイクロファイバ自体から切り離されたが、後のマイクロファイバの網全体から切り離されたわけではない残留物)を既に有している。事前にフィブリル化された該マイクロファイおよび該ナノファイバは、フィブリル化手順によりパルプ形状となり、事前にフィブリル化されたマイクロファイバおよびナノファイバの上記の水性溶媒を含むスラリ状配合物となる。このスラリ状配合物を、選択した量の別のマイクロファイバおよび/またはナノファイバ(好ましくは、同様にパルプ形状またはスラリ形状)と混合させ、または初期のスラリのみを混合させ、その得られた配合物を少なくとも60℃の温度、好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも80℃の水中で温めることができるが、この配合物の実際の固形繊維分濃度は極めて低い(すなわち、水または他の水性溶媒1重量%未満で0.5重量%未満である程低く、または0.1重量%未満)。この温められた分散物は、次に平面上に置かれ高剪断環境に置かれる。該表面は、十分に多孔性があり溶媒溶離が可能であり、それにより、所望の湿式単層不織布が互いに交絡したフィブリル化マイクロファイバを含み、互いのマイクロファイバ間に隙間をあけ、その隙間の中およびより大きなマイクロファイバ表面にもナノファイバを存在させる。事前にフィブリル化されたマイクロファイバパルプに添加するナノファイバの量は、特に、事前フィブリル化パルプのみから単独で作られる湿式不織布と比べ全体的に小さい平均細孔径にするためには、マイクロファイバの隙間を充填する量より多くする。反対に、マイクロファイバを事前フィブリル化繊維スラリに添加すると、得られる湿式単層不織布の平均細孔径は、事前にフィブリル化された繊維スラリだけの場合より大きくなる。ナノファイバおよび/またはマイクロファイバの添加レベルにより異なる平均細孔径を目標にすることが可能であるのでで、製造会社は平均細孔径を任意の所望するレベルに合わせることができる。
【0027】
高剪断混合ステップの後、得られる分散物を抄紙機(破れのない軽量シートを製作できればいずれのタイプであってもよい。単なる装置の例としてあげるが、Fourdrenier、Incline Wire、Rotoformerなどがある)の上部に投入する場合がある。該軽量シートを、先端部に投入された繊維分散物を制御すると同時にそのラインスピードで制御し、製作してもよい。そのような方法にはオープンドローを有しない装置(すなわち、湿式繊維ウェブには対応できない)が好ましい。この場合、高水位であれば、真空法(製紙業界では一般的なステップ)により少なくとも最初は軽減する(すなわち、所定のレベルまで表面の水分を除去する)ことができる。適度に薄いシートにするためには、太さの細い製紙用ワイヤーが必要であり、特にその太さは最大40ゲージ、より好ましくは最大80ゲージである。紙(分散物シート)の厚さは、製作スピードが完成物に影響せず、全体の引張強度(特に等方性)が損なわれない限り、いずれであってもよい。効率性を考慮し、ラインスピードは25ft/minから1,500ft/minの範囲で、より好ましくは最低50、最も好ましくは1,00に設定してもよい。
【0028】
該抄紙(シート製作)ステップを終了した後、形成されたシートを乾燥機に導入する場合がある。いずれの標準乾燥手段も使用可能で、熱した蒸気缶、熱風オーブンであってもよい。該加熱方法では温度を、水分(または別の溶媒)の蒸発に必要な温度よりも高くすべきだが、シート自体を溶かす、または変形させるほど高くすべきでない。ある材料は寸法安定性の点で他材よりも高温に耐える場合があり、シートが厚いほど通常は反りなどに対する温度耐性に優れるため、該乾燥温度は使用する材料およびシート厚次第としてもよい。
【0029】
そこで、製造会社は、必要に応じて単層構造の厚さを変更可能にすることで、本発明のバッテリセパレータの所望の特性を制御してもよい。当初の湿式加工方法のプロセスパラメータでのみ該厚さ特性を持たせてもよく、製造会社は続けて、得られた布を所望の厚さにカレンダ処理にかけてもよい。カレンダ処理し、得られる単層布の厚さを別の方法で変更可能にすることで、製造会社は透気抵抗度および平均細孔径寸法のどちらも極めて多様にできる。該調整手順は、バッテリセパレータ業界で未だ研究されていない。単なる例示としてではあるが、硬鋼ロール、または第一硬鋼ロールおよび第二硬質ゴムロールとの組合せなど、一般的な装置を使うカレンダ処理ステップを採用してもよい。カレンダ処理ステップでは、200°F超、好ましくは250°F超、または300°F超の温度まで熱せられる場合がある。上術のように、材料が引張強度などを著しく喪失することもなくそれらの処理に耐えることができるのであれば、該目的のために様々なカレンダ処理ステップも同様になされてもよい。
【0030】
本発明の単層セパレータの得られる厚さは250マイクロメータ未満、好ましくは100マイクロメータ未満、より好ましくは50マイクロメータ未満、より好ましくは35マイクロメータ未満、最も好ましくは25マイクロメータ未満である。実際のシート密度も重要で、これらの方法では、特に小型軽量電池製作用のバッテリセパレータに役立つ軽量シートが製作可能である。シート重量は30グラム/m未満が望ましく、可能であれば20グラム/m未満、さらに15グラム/m未満も潜在的に好ましい。上述のように、電池のアノードとカソードの接触を防ぐことができることは、電池使用中にショートを起こさないためには必要である;セパレータの厚さとセパレータ内の制御細孔径で重要な接触防止措置を講じる。しかしながら、バッテリセパレータ厚は、密閉型バッテリセル内の他の構成要素部の使用可能容積にも、密閉型バッテリセルに備える電解溶液量にも影響する場合がある。関係する環境全てが、数ある変数において有効であるセパレータを必要とする。本発明の製造法およびそれによって得られる単層バッテリセパレータにより、要求に応じた有効な細孔径および透気抵抗度を可能にするだけでなく、製造しやすくなり、そのため、この開発は現在使用され販売されているバッテリセパレータの技術から明確に区別される。
【0031】
ナノファイバおよびマイクロファイバの組合せを交絡可能にする別の不織シート製造方法でも、本発明のバッテリセパレータを製作するために使用される場合もある。その方法の一つとして、別のナノファイバおよびマイクロファイバでスタートし、上記の方法で結合させるというものであろう。他の方法としては、カーディング、クロスラッパ、水流交絡法、エアレイド、ニードルパンチ法、メルトブローン、スポンボンドなどの方法があり、また、マイクロファイバを交絡させ網目状にし、ナノファイバを該マイクロファイバどうしの隙間に充填させる方法の組合せであってもよい。
【0032】
上述の通り、実際にはマイクロファイバの隙間が「細孔」自体を形成し、ナノファイバが該開口部を充填し、その細孔径を不織布構造全体にわたって略均一に低下させる。本発明全体で、特に要求に応じて目標空隙率を変化させる上で真に意外性のある効果に、ナノファイバに対するマイクロファイバの濃度のみを単に変更するだけで、得られる不織構造内の細孔径を調整できることがある。例えば、不織布加工工程の初期の割合をマクロファイバ30%とナノファイバ70%にすれば、細孔径は700nmから195nmの範囲となるが、マイクロファイバ10%とナノファイバ90%の組合せでは効果的に細孔径分布を小さくできる(例えば230nmから130nmで、より均一性のある範囲)。予期せぬ該成果が、上述の通り、むしろ単純な製造変更によりエンドユーザの要求に応じた空隙率をもたらす。生じた該細孔径は平均流量細孔径として計測される。該平均流量細孔径は2000nm未満、または1000nm未満、好ましくは700nm未満、より好ましくは500nm未満となる場合がある。
【0033】
マイクロファイバおよびナノファイバも合わせて含む単層セパレータは本発明に包含されるが、該布構造の複層での使用、または別種の布を少なくとも1層と本発明のバッテリセパレータ布1層との複層での使用を採用する場合もあり、本書に記載する発明全体の範囲内である。
【0034】
本書に記載があるように該バッテリセパレータは明らかに一次電池および二次電池の技術改良に有用であり、蓄電技術を担う電解質の他の形態においても使用される場合もあるが、それは例えば、コンデンサ、スーパーキャパシタおよびウルトラキャパシタである。実際、本発明のセパレータの細孔径に行った制御により、これらの装置のエネルギーロス、放電率などの特性を著しく改善できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は先行技術の発泡フィルムバッテリセパレータのSEM顕微鏡写真である。
図2図2は先行技術のナノファイバ不織布バッテリセパレータのSEM顕微鏡写真である。
図3図3は、本発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布バッテリセパレータ構造の潜在的に好適な実施形態のSEM顕微鏡写真である。
図4図4は、本発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布バッテリセパレータ構造の潜在的に好適な実施形態のSEM顕微鏡写真である。
図5図5は、本発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布バッテリセパレータ構造の潜在的に好適な別の実施形態のSEM顕微鏡写真である。
図6図6は、本発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布バッテリセパレータ構造の潜在的に好適な別の実施形態のSEM顕微鏡写真である。
図7図7は、本発明のマイクロファイバ/ナノファイバ不織布バッテリセパレータ構造の潜在的に好適な別の実施形態のSEM顕微鏡写真である。
図8図8は本発明のバッテリセパレータを含む本発明のリチウムイオン二次電池の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のすべての特徴および好適な実施形態は、以下の図解および実施例に関し詳細に説明するが、限定するものではない。
【0037】
マイクロファイバおよびナノファイバ製作

上記のとおり、マイクロファイバは、電池セルの内部条件と合わせ、適した化学的耐性および耐熱性を有し、示す範囲に適した繊維構造を形成可能な高分子(あるいは高分子ブレンド)で構成される。さらに、不織布加工の際、繊維が交絡しやすくなるよう繊維自体の表面積を広げるフィブリル化などの技術による処理が可能である。また、溶融紡糸、湿式紡糸、溶液紡糸、メルトブローイングなどの長年使用された繊維製造方法により製造される。さらに、二成分繊維を始めとして、分割型パイ繊維、海島型繊維など、さらに処理することで径および/または形状を小型化または変更する場合がある。また、後処理のため適切な長さに切断する場合があり、その長さは50mm未満、または25mm未満、時に12mm未満の場合がある。また、長くすることで、加工性に優れまたは高強度にでき、その長さは0.5mm超、または1mm超、時に2mm超の場合がある。また、小型化繊維、または湿式不織布を有利に形成できる繊維にフィブリル化することもできる。
【0038】
本発明で用いるナノファイバは、海島型、遠心紡糸、電解紡糸、フィルムまたは繊維フィブリル化など、長年使用された技術で製作される。帝人およびHillsの両社は潜在的に好適な海島型ナノファイバを製品化している(帝人のナノファイバは直径500nmから700nmのポリエチレンテレフタレート繊維であるNanoFront繊維として市販されている)。DienesおよびFiberRioの両社は、遠心紡糸技術を用いたナノファイバを製造する装置を製品化している。Xanofiは、高剪断液分散技術を用いた繊維およびその製造装置を製品化している。duPontの製造するポリアラミドは、高温耐熱性に優れ、他の特性も極めて好適なナノファイバ状である。
【0039】
電解紡糸によるナノファイバは、duPont、E−Spin Technologiesが製作しており、または本目的用にElmarcoが市販する装置で製作されている。フィルムからフィブリル化されるナノファイバは、本書に全て引用により組み入れる特許文献1、特許文献2、および特許文献3において開示されている。他の繊維からフィブリル化されるナノファイバは、高剪断研磨処理が施される場合もある。フィブリル化セルロースおよびアクリル繊維から製作されるナノファイバは、EFTEC(登録商標)という商品名でEngineered Fiber Technologiesにより市販されている。該ナノファイバのいずれも、繊維を分離し湿式不織処理を可能にするよう、切断および高剪断スラリ処理によりさらに加工する場合がある。必要とされるマイクロファイバが存在する状態で、該高剪断処理を行っても行わなくてもよい。
【0040】
通常フィブリル化で製作されるナノファイバは、当初通常の方法(例えば海島型法)で製作されたナノファイバとは異なる横方向アスペクト比を有する。該横方向アスペクト比のひとつが、本書に引用により組み入れる特許文献1に詳細に記載されている。好適な実施形態のひとつとして、ナノファイバは1.5:1超の横方向アスペクト比を有し、好ましくは3.0:1超、より好ましくは5.0:1超である。
【0041】
従って、アクリル、ポリエステルおよびポリオレフィン系繊維は該目的に特に好ましく、フィブリル化アクリル繊維は潜在的に最も好ましい。しかしながら、これは、この目的において単に潜在的に好適な種類の高分子の提示としてあげたものあって、該目的に可能性のある高分子材あるいは高分子ブレンドの範囲を限定するものではない。
【0042】
それぞれ前述したように、図1は、Gelgard製発砲フィルム材の一般的な構造の顕微鏡写真であり、図2は、duPont製ナノファイバ不織布バッテリセパレータ材の一般的な構造の顕微鏡写真である。明確にわかることに、Gelgard製セパレータのフィルム構造は、細孔径が類似しており、明らかにすべてフィルム押出法より形成され、その結果多少均一に表面が破壊されている。duPont製セパレータは、繊維サイズおよび直径が明らかに均一であり、厳密にナノファイバのみから製造されている。該ナノファイバ自体は不織布構造であるので、機械方向および横方向の両方向におけるこのセパレータの全体的な引張強度は、両方向においてほぼ一様に極めて低い。このため、該セパレータを電池セルの中で使用した場合、全体的な強度により製造業者が必ず直面する別の問題はあるが、該材料は均一的に扱うことができる。これに対し、図1のセパレータは、一方方向に細孔が生成した(フィルムが一方向に押出された)細溝を示しており、機械方向の引張強度は極めて高いが;同材の横方向の引張強度はとても低く、前述したように、電池製造で実際に使用するには極めて困難で信頼できないバッテリセパレータ材である。
【0043】
図3および図4の顕微鏡写真に示す本発明の材料は、前記2つの先行技術製品とは全く異なる構造を持つ。マイクロファイバおよびナノファイバの当初の組み合わせの潜在的に好適な実施形態のひとつに、フィブリル化ポリアクリロニトリル系繊維であるEFTEC(登録商標)A−010−4があり、これはナノファイバと残留マイクロファイバの密に集めたものである。該組み合わせ内に存在するナノファイバは、当初のマイクロファイバをフィブリル化した成果物である。図3および図4は、これらの材料で製作される不織シートを示す。例として、これらの繊維はベース材料として使用でき、不織布の細孔径および他の特性を制御する方法として、これにさらにマイクロファイバまたはさらにナノファイバを添加でき、該材料を不織布バッテリセパレータ自体として使用してもよい。図5図6および図7は、マイクロファイバを追加で添加したシートの実施例を示す。アクリルマイクロファイバ/アクリルナノファイバの一般的な特性を以下に示す。
【0044】
アクリルマイクロ/ナノファイバ特性
【0045】
【表1】
【0046】
該繊維は、前述したようにパルプ状配合物に実際に存在し、それゆえ湿式不織布製作体制への導入が容易である。
【0047】
不織布製作方法

次に、湿式による製造工程に両要素を合わせて導入する前に、組み合わせ材料を両要素ともそれぞれの濃度になるよう量った。本書に引用により組み入れるTAPPI試験法T−205に従い手すきシートを製作した(基本的には上述どおりで、湿式製造法で通常使用され、繊維の「精練」として記述されるように、高剪断条件のもと極めて高い水溶性溶媒濃度の配合で合わせて混合し、最終的に湿った構造体を平面に置き溶媒を蒸発させた)。最終的には不織布構造を形成するために異なる数種の組み合わせで製作した。その方法では、各シートに含まれる材料の当初量を調整することで、様々な目付けに適合さえすればいいよう調節した。表2は材料および比率を示す。
【0048】
また、図5図6および図7は構造上、下記実施例3にも関連する。これらの顕微鏡写真から、構造の類似性(マイクロファイバは大きく、ナノファイバは小さい)は明確で、これらの構造ではナノファイバの量が少ないことも明らかである。
【0049】
布の厚さを測り、リチウムイオン二次電池セル内への導入に適する径および形状に切断した。しかし、その導入前に、適切なバッテリセパレータの性能に関し、バッテリセパレータ布の試料を様々な特性について分析し、試験した。また、本書に引用により組み入れる特許文献4に記載のバッテリセパレータナノファイバ膜の比較例は該特許における試験で報告され、CelgardのバッテリセパレータフィルムはCelgardの製品説明書で報告されている。
【実施例】
【0050】
TAPPI試験法T−205に従い、Engineered Fiber Technologiesのフィブリル化アクリル繊維(マイクロファイバとナノファイバの組合せ)であるEFTEC(登録商標)A−010−04(基本繊維として掲載)、およびフィラメントあたり2デニール、長さ5mmに切断され、ポリプロピレンおよびポリエチレンから製作された二成分繊維で、直径約17ミクロンのFiberVisionsのT426繊維(添加繊維として掲載)を使用し、実施例36−51を製作した。このシートに、リニアインチ当り2200ポンド、室温(25Cまで)で2本の硬鋼ロール間にてカレンダ処理を行った。表4は、実施例の各繊維量、調整目付け、キャリパ(または厚さ)、見掛け密度および空隙率を示す。調整目付け、キャリパ、見掛け密度および引張強度は、本書に引用により組み入れるTAPPI T220に従い試験された。
【0051】
セパレータ特性
【0052】
【表2】
【0053】
空隙率が高いほど対象の電池内のピークパワー出力は高くなる。この高結果を受け、理論的には、少なくとも、各電池からの利用可能な出力を増加させることで、特定の装置(たとえばハイブリッド車など)を動作させるのに必要な出力レベルが要する電池数を減らせる。該効果を、有効な透気抵抗性障壁層にも持たせる。本発明のセパレータの空隙率は、下記に示すように、マイクロファイバに対するナノファイバ率、ナノファイバの種類、およびカレンダ処理などの後処理によっても制御可能としてよい。
【0054】
バッテリセパレータ基材分析及び試験

試験プロトコルは以下の通りである。
空隙率は、本書に引用により組入れる特許文献4に記載の方法に従い計算した。結果は%で報告されるが、これは空気、または電池内では電解質など非固形物質で充填されたセパレータバルク部分を対象にしている。
【0055】
ガーレ透気抵抗度は、本書に引用により組入れるTAPPI試験法T460に従い試験した。この試験に使用する装置はガーレ式デンソメータモデル4110である。この試験を実施するため、デンソメータの中に試料を挿入し、固定する。シリンダの勾配を100cc(100ml)ラインまで上げ、自重量により落下させる。100ccの空気が試料を通過するのにかかる時間(秒単位)が記録される。結果は100cc当り秒で報告されるが、これは空気100立方センチメートルがセパレータを通過するに要する時間である。
【0056】
平均流量細孔径は、ASTM E−1294「自動液体ポロシメータを使用した膜フィルタの細孔径特性標準試験方法」に従い試験したが、この試験方法では、毛細管ポロシメータを使用し、ASTM F316の自動バブルポイント法を使用する。試験は、ニューヨーク州イサカにあるPorous Materials社で実施した。
【0057】
セパレータの通気性は、一定量の空気が軽圧下で標準面積を通過するのに要する時間を測定するものである。その手順はASTM D−726−58に記載されている。
【0058】
引張特性及び平均流量細孔径
【0059】
【表3】
【0060】
本発明の実施例は極小さい細孔径平均であることを示し、対象電池の再充電サイクルを多数回可能にすることを示す。また、ナノファイバ材及びマイクロファイバ材の比率を変更して細孔径を変更することにより、細孔径を制御できることを示している。これは、いずれの先行技術にも無い重要な効果であり、本技術を使いエンドユーザの要求に応じて電池製造業者が細孔径を調整できるということである。よって、腕時計用、携帯電話用またはラップトップコンピュータ用二次電池とは異なる特性を持ち、セパレータをパワーツール用または自動車用にも設計することができる。
【0061】
実施例に挙げた引張特性は等方性を有し、つまり、全方向に同等であって、機械方向および横方向での違いは無い。比較例では、機械方向(MD)および横方向(CD)引張強度に大きく異なる引張特性を示している。通常、ナノファイバをベースにしたバッテリセパレータは極めて弱い。本発明の効果のひとつに引張強度があり、この効果により電池製造業者での処理を迅速にでき、電池の巻きをより密着させ、電池使用における耐久性に優れる。該MD引張強度は、好ましくは25kg/cm超、より好ましくは50kg/cm超、最も好ましくは100kg/cm超とする。CD引張強度に対する要求値はMD引張強度より低く、好ましくは10kg/cm超、より好ましくは25kg/cm超、最も好ましくは50kg/cm超とする。
【0062】
上に示した通り、カレンダ処理し、マイクロファイバに対するナノファイバの比率を増加させると全体的な細孔径平均は小さくなり、さらには本発明技術では、要求に応じ所定の長さを目的とすることができる。当初、セパレータのシート製作は、カレンダ処理などの工程も抄紙機(該方法により製造を簡素化できることを示す)で製作された。
【0063】
抄紙機による製作

続いて2種の材料をロトフォーマ抄紙機で製作した。まず、実施例52は、75%のEFTec A−010−4および25%のフィラメント当り0.5デニールポリエチレンテレフタレート(PET)繊維から製作し、長さ6mmに切断した。次に、実施例53は、37.5%のEFTec A−010−4、37.5%のEFTec L−010−4および25%のPET繊維から製作し、長さ6mmに切断した。それら繊維材を高剪断混合により分散させ、水に高希釈度で混合し、その後ロトフォーマのヘッドボックスに投入し、重さ20グラム/mのシートにし、熱風オーブンで乾燥させた。得られたロールを325°F、リニアインチ当り2200ポンドでカレンダ処理し、厚さ40ミクロン以下の第一シートおよび厚さ30ミクロンの第二シートを製作した。90℃、130℃および160℃を測定温度とし、機械方向および横方向のそれぞれにおける長さ12”を測り、測定温度に安定させたオーブンの中で1時間放置し、再度長さを計測することで、収縮率を測定する。収縮率は、元の長さに対する割合で表した長さの変化量である。表4はシートの特性を示す。
【0064】
膜特性
【0065】
【表4】
【0066】
上記でわかるように、アクリル(EFTec A−010−4)およびリヨセル(EFTec L−010−4)の両材を使った材料は、高温での特性に優れている。たとえば、現在流通している延伸フィルムセパレータの多くは、135℃で溶融し、110℃超で著しく収縮するポリエチレンから製作される場合もあり、また160℃で溶融し、130℃超で著しく収縮するポリプロピレンから作られる場合もある。電気自動車で使われることもある大型セルにおいて特に、業界では知られている問題の一つに、高温にさらされた時の収縮性により、セパレータが収縮すれば両極が端部で接触し、ショートし、爆発を引き起こす致命的な熱暴走の可能性がある。そのため高温安定性を有するセパレータがこのような環境では安全であり、セル当たりエネルギー量が高い大型セルの使用を可能にする。好ましいセパレータ性能は、130℃、160℃、または190℃において両方向の収縮率が10%未満で、好ましくは6%未満、または最も好ましくは3%未満である。さらに、セパレータは、リヨセル、レーヨン、パラ系アラミド、またはメタ系アラミドなど、高温での安定性が高く、他材料と合わせシート状に形成された時、結果として収縮性が低くなる構成要素で作られる場合もあり、これを実施例53に示す。
【0067】
別の実施例を、カレンダ処理条件を変えて製作し、試験した。Herty Foundationの施設にあるロトフォーマ上で紙を製作したが、これは、EFTec A−010−04アクリルナノファイバを27%、EFTec L−010−04リヨセルナノファイバを53%およびフィラメント当り0.5デニールのポリエステル繊維を20%で構成し、長さ5mmに切断したものである。材料を1000ガロン―ハイドロパルパで40分間混合し、繊維含量約0.25%でマシンに投入し、目付け15g/mのシートを製作した。この紙に、下のリストにまとめたように、また下の表5にある実施例56から60に示すように、条件を変えてカレンダ処理を施した。
【0068】
実施例56−60の説明

56:ロール加熱はしないが、それ以外は上記条件にてカレンダ処理を施した。
57:シートを第二シート(実施例56のシート)と重ね合わせ、カレンダ処理した。
58:56のシートを複写紙ロールとカレンダ処理し、その後複写紙から剥離させた。
59:56のシートを同条件で再度カレンダ処理した。
60:57の層を剥離し、別々の2枚のシートにした。
【0069】
下の実施例から2つのことがわかる。第一に、2枚のシートを積層すると、ガーレ透気抵抗は単シートの2倍超となり、全体の空隙率は下がる。第二に、カレンダ処理を2度施せば、空隙率を上昇させガーレ値を低下させる効果があった。最後に、別のシートと合わせて処理した2枚のシートでは、ガーレ値を上昇させ、同時に空隙率を上昇させる効果があった。引張強度はカレンダ処理を追加した全てのケースで低下した。
【0070】
シートのカレンダ処理結果
【0071】
【表5】
【0072】
濡れ性試験

実施例39の四角片とCelgard2320の四角片とに、1MのLiPF6を溶解させたEC:DMC:DEC混合(体積比1:1:1)電解質を1滴表面にたらした。5秒後、(液滴の表面の光沢からくる)分光反射が観察されることなく、その電解質が実施例39に完全に吸収された。Celgard2320上にたらした電解質の液滴は数分間残った。これは、リチウムイオンバッテリセパレータには極めて好ましく、電解質分散の処理速度を向上させ、電解質を確実に均一に分散させる。電解質の分散が不均一であれば、充放電を繰り返すうち、セル内の欠陥となりショートを引き起こす可能性のあるデンドライトの生成を促進することが知られている。
【0073】
電解質を材上に垂らした液滴の分光反射が5分未満、または2分未満、より好ましくは1分未満で消えるセパレータが望ましい。さらに、2つの電極、セパレータおよび電解質からなる蓄電装置であって、セパレータ上に垂らしたこの電解質の液滴の分光反射が5分未満、または2分未満、より好ましくは1分未満で消える蓄電装置が望ましい。
【0074】
示差走査熱量測定および濡れ性熱重量分析の測定を含む他の試験も実施した。実施例53に、室温から1000℃まで熱重量分析試験を実施した。試料は100℃近くで1.39%の質量を失ったが、それはセルロースナノファイバおよびマイクロファイバから失われた水分量に相当する。約300℃までは更なる劣化は見られず、酸化状態になったとき、335℃から400℃の間約60%の質量分急減した。実施例53に、室温から300℃まで示差走査熱量測定試験も実施した。100℃付近を中心に広く発熱したが、これは水分放散に相当し、250℃に始まり266℃で急激に発熱したが、これはPETの融点に相当する。
【0075】
実施例52に、室温から1000℃まで熱重量分析試験を実施した。試料は300℃未満では質量減少はほとんど起こらず、335℃で質量減少が始まり、400℃までに約40%の質量を失った。実施例52に、室温から300℃まで示差走査熱量測定試験も実施した。室温から266℃で起こる(250℃で始まる)急激な発熱まではほとんど何の兆候も見られなかったが、この急激な発熱はPETの融点に相当する。つまり、グラフでは、PETマイクロファイバの溶融以外何の兆候も表れなかった。
【0076】
アラミド系試料

さらに、実施例52および53に類似した別の試料をロトフォーマ機上で製作した。
【0077】
実施例61では、4種の繊維を、水7000ガロン中約60 lbsの低希釈にして極めて高い剪断条件で混合した。その繊維は、
・EFTec A−010−04 20 lbs
・EFTec L−010−04 20 lbs
・帝人 1094 ウェットパルプ 10 lbs
・0.3dpf PET 5mm 10 lbs
シートを18グラム/平方メートルで製作し、2200ポンド/インチ、カ氏250度でカレンダ処理した。表NNはシートの特性を示す。
【0078】
実施例62および63では、3種の繊維を実施例61と同様に混合した。その繊維は、
・EFTec L−010−04 20 lbs
・帝人 1094 ウェットパルプ 20 lbs
・0.3dpf PET 5mm 10 lbs
シートを18グラム/平方メートルで製作し実施例62とし、15グラム/平方メートルで製作し実施例63とした。下の表6はシートの特性を示す。
【0079】
アラミド含有シート特性
【0080】
【表6】
【0081】
上記でわかるように、帝人1094アラミドパルプをはじめとするアラミドパルプなどの耐熱性繊維を使用すれば、高温であっても収縮性は極めて低い。電池は熱劣化する可能性があり、その劣化が熱暴走の原因にもなるため、構造形状および構造完全性を保ち、熱暴走を防ぎ、またはスローダウンさせ得る構成要素を電池内に備えることは非常に望ましい。そのため、200Cで5%未満の収縮、または3%未満の収縮ともなる材料を備えることが望ましい。また、240Cで5%未満の収縮、または3%未満の収縮ともなる材料を備えることが望ましい場合もある。これを達成するためには、摂氏300度未満では融点がなく、ガラス転移温度もなく、熱劣化も無いセパレータ構成要素であることが望ましい。バッテリセパレータ自体に熱安定性を持たせるためには、セパレータの全構成要素の5%超、または10%超、さらにまたは20%超が熱的に安定したこの繊維要素であることが望ましい。
【0082】
電池形成および実際の電池試験結果

図8は、外筐体12を含む一般的な電池10の構造を示し、その外筐体12は他の全ての構成要素を内包し、セル環境の汚染およびセルからの電解質の漏れを防ぐよう確実に密閉される。アノード14は、カソード16とタンデムに設けられ、その2極の間に少なくとも一つのバッテリセパレータ18が配置される。必要なイオン発生ができるよう密閉前にセルに電解質20を付加する。セパレータ18は、アノード14とカソード16の接触を防止するのに役立ち、選択されたイオンが電解質20からセパレータ18を通過してマイグレーションするのを可能にする。電池セルの一般的な構成はここに記載した構造ではあるが、電池セル自体のサイズや構造により内部構成要素の構造体のサイズや構成は異なる。そこで、該セル内でのセパレータの有効性を適切に試験するため、略円筒状固形構成要素のボタン型電池を製作した。
【0083】
他の電池製品および試験

さらに、パウチセル電池を次のように製作した:標準的な携帯電話電池用電極は約2.5mAh/cmの量で被覆されている。セパレータの能力限界が比率容量に関係しており実施基準を超えていることを証明するために、電極を4mAh/cm(NCA)の量で被覆を行い試験手順用に製作した。Celgard2325(下記実施例54)および実施例53(下記実施例55)を使用し、各セパレータタイプに1つのセル(手製)を製作した。電極に被覆、カレンダ処理、乾燥、およびタブへの溶接を実施し、ラミネート包装し、1MのLi塩を含んだ標準的な電池用溶媒電解質で満たし、密封した。そのセルを、C/10、C/4、C/2およびCの各レートで複数回放電して放電容量を試験し、その結果を、成形後C/10での最初の放電に対する割合にして下記表7に示す。実施例54のセルをC/10で行う比放電容量は141mAh/g、実施例55のセルの場合は145mAh/gであった。
【0084】
パウチ電池測定
【0085】
【表7】
【0086】
これらの実施例、および実施例32から35に対する電池試験からわかるように、本発明のセパレータを使用して製作された電池は、レートが高いほど放電容量が大きくなり、C/4では効果はそれほどではないが、C/2レートおよびCレートでは大きく顕著に効果が表れていた。
【0087】
当業者であれば本発明の趣旨から逸脱することなく、本発明の範囲において様々な変形を製作可能なことは理解されたい。そのため、先行技術が許す限り広く、また必要であれば明細書も考慮して、添付の請求項の範囲により本発明が特定されることを望む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8