(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541043
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置及びその高圧圧下方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/128 20060101AFI20190628BHJP
B22D 11/20 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
B22D11/128 350A
B22D11/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-501264(P2017-501264)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公表番号】特表2017-532202(P2017-532202A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】CN2014087369
(87)【国際公開番号】WO2016004682
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】201410325414.1
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】康永林
(72)【発明者】
【氏名】王新華
(72)【発明者】
【氏名】朱国明
(72)【発明者】
【氏名】麻▲ハン▼
(72)【発明者】
【氏名】馬健超
(72)【発明者】
【氏名】曲錦波
(72)【発明者】
【氏名】宇航
(72)【発明者】
【氏名】張志軍
(72)【発明者】
【氏名】姜敏
(72)【発明者】
【氏名】許志剛
【審査官】
印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−024764(JP,A)
【文献】
特開2001−113349(JP,A)
【文献】
特開平01−205861(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/174395(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第201211554(CN,Y)
【文献】
中国実用新案第202447620(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機セグメントの連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置であって、
前記連続鋳造機セグメントに上枠、下枠、上駆動ローラー、下駆動ローラー、左従動ローラー群、右従動ローラー群、前記高圧圧下装置およびクランプシリンダが含まれ、前記クランプシリンダが前記上枠と前記下枠をクランプして設定された間隔を維持することに用いられ、前記上駆動ローラーが前記高圧圧下装置に接続され、前記上駆動ローラーが上ベアリング台座を介して前記上枠に接続され、前記下駆動ローラーが下ベアリング台座を介して前記下枠に接続され、前記左従動ローラー群及び前記右従動ローラー群がそれぞれ前記上駆動ローラーと前記下駆動ローラーの両側に位置し、前記左従動ローラー群が圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記右従動ローラー群が圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記上駆動ローラー及び前記下駆動ローラーの直径と、前記左従動ローラー群及び前記右従動ローラー群の直径との比が1.1:1〜2:1であることを特徴とする、連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置。
【請求項2】
前記右従動ローラー群と前記上駆動ローラーと前記下駆動ローラーの開度が圧下後の鋳造スラブ厚さと同じであることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置。
【請求項3】
前記左従動ローラー群の開度が圧下前の鋳造スラブ厚さと同じであることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置。
【請求項4】
前記上駆動ローラーと前記下駆動ローラーは一体型であり、一体成形プロセスによって製造されることを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置。
【請求項5】
請求項1に記載の連続鋳造スラブ凝固端に位置する高圧圧下装置における、連続鋳造スラブ凝固端高圧圧下方法であって、
(1)前記クランプシリンダは一定の圧力を前記上枠に印加し、前記左従動ローラー群の開度を圧下前の鋳造スラブ厚さと同じにし、そして圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられるステップと、
(2)圧下量を5〜20mmに設定し、前記高圧圧下装置によって前記上駆動ローラー及び前記下駆動ローラーと連動して鋳造スラブに対して高圧圧下変形を行うステップと、
(3)前記右従動ローラー群を調整してその開度を前記上駆動ローラーと前記下駆動ローラーの間の間隔と同じにし、圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられるステップとを含むことを特徴とする、連続鋳造スラブ凝固端高圧圧下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ鋳造技術分野に関し、特に連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメント及びその高圧圧下方法である。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造スラブ凝固端高圧圧下技術は、連続鋳造生産ラインに連続鋳造スラブに圧下ローラーを設置し、鋳造スラブ中心部の固相率が80%以上に達すると、鋳造スラブに高圧圧下変形(5〜20mm)を印加し、その後正常な圧延生産を行うことである。該技術により連続鋳造スラブの中心部品質を大幅に向上でき(マクロ構造、収縮、緩み、偏析などを改善する)、低い圧縮比(1.5〜2.5)で高品質の厚さが100mmより大きい超厚板製品を製造することができる。
連続鋳造スラブ凝固端に高圧圧下を実施した場合、鋳造機扇状セグメントに対して全体高圧圧下を行うと、扇状セグメントの5〜7対の鋳造機ローラーが同時に鋳造スラブに接触する場合の接触面積が大幅に増加し、それによって負荷も大幅に増大するので、扇状セグメントの強度及び剛性を大幅に増加しなければ扇状セグメント及びセグメントローラー(又は鋳造機ローラー)への強力な負荷及び大きな弾性変形に抵抗できず、セグメントローラーがローラーリング、芯軸及び中間支持ベアリング台座で構成されるので、扇状セグメントのサイズ及び重量が大幅に増加し、これにより扇状セグメントの吊り上げ及びメンテナンスなどの一連の新しい問題をもたらし、かつ高圧圧下が連続鋳造スラブ凝固端の近傍に実施され、扇状セグメントを高圧圧下する複数対のローラー、小変形低圧圧下によって発生した変形(歪み)透過性が悪く、鋳造スラブ中心部領域に伝達された歪みが小さいので、中心部領域の緩み及び偏析欠陥をより良く改善するのに役立たない。
そのため、直接元の連続鋳造機の低圧圧下システムで扇状セグメントに凝固端高圧圧下を実施すると、連続鋳造機の扇状セグメント、駆動ローラーの強度及び鋼性が深刻に不足し、及びクランプシリンダの担持能力が十分ではなく、凝固端高圧圧下を実施しにくく、かつ連続鋳造スラブの中間に亀裂が容易にできるなどの問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的問題は連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメント及びその高圧圧下方法を提供し、従来技術において元の連続鋳造機システムを用いて扇状セグメントに凝固端高圧圧下を実施すると、連続鋳造機の扇状セグメント、駆動ローラーの強度及び鋼性が深刻に不足であり、及びクランプシリンダの担持能力が十分ではなく、凝固端高圧圧下を実施しにくく、かつ鋳造スラブの中間に亀裂が容易にできるなどの問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的問題を解決するために、本発明の実施例による連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントは、連続鋳造機扇状セグメントに位置する上枠、下枠、上駆動ローラー、下駆動ローラー、左従動ローラー群、右従動ローラー群、圧下装置及びクランプシリンダを含み、前記クランプシリンダが上枠と下枠をクランプして設定された間隔を維持することに用いられ、前記上駆動ローラーが圧下装置に接続され、前記上駆動ローラーが上ベアリング台座を介して上枠に接続され、前記下駆動ローラーが下ベアリング台座を介して下枠に接続され、前記左従動ローラー群及び前記右従動ローラー群がそれぞれ駆動ローラーの両側に位置し、前記左従動ローラー群が圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記右従動ローラー群が圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記駆動ローラーの直径と従動ローラーの直径との比が1.1:1〜2:1である。
【0005】
その内、前記右従動ローラー群と駆動ローラーの開度が圧下後の鋳造スラブ厚さと同じである。
【0006】
その中、前記左従動ローラー群の開度が圧下前の鋳造スラブ厚さと同じである。
【0007】
その中、前記駆動ローラーは一体型であり、一体成形プロセスによって製造される。
上記の技術的問題を解決するために、本発明による連続鋳造スラブ凝固端高圧圧下方法は、
(1)クランプシリンダは一定の圧力を上枠に印加し、左従動ローラー群の開度を圧下前の鋳造スラブ厚さと同じにし、そして圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられるステップと、
(2)圧下量を5〜20mmに設定し、圧下装置によって駆動ローラーと連動して鋳造スラブに対して高圧圧下変形を行うステップと、
(3)右従動ローラー群を調整してその開度を上下駆動ローラーの間の間隔と同じにし、圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられるステップとを含む。
【0008】
上記の解決手段では、本発明は大ローラー径一体型駆動ローラー及び高強度、高鋼性を有する上枠、下枠及び担持能力が大きいクランプシリンダを用いる。高圧圧下した場合の総変形量は、大ローラー径駆動ローラーによって連続鋳造スラブに対して高圧圧下変形を実施する総変形量であり、一般的な扇状セグメントの5〜7対の鋳造機ローラーが一つ一つ小変形を実施して高圧圧下を完了する総変形量ではない。
【0009】
本発明の上記の技術的解決手段の有益な効果は以下の通りである。
【0010】
1.塑性変形接触面積が減少し、大ローラー径一体型駆動ローラーのみによって圧下され、総変形量が大幅に減少する;
2.それに応じて扇状セグメントにおけるクランプシリンダの必要なクランプ力が小さくなり、同時に上、下扇状セグメントの高圧圧下された場合の強度と鋼性を維持するために増加する必要がある構造材料及び重量が減少する;
3.変形透過性が増加して大ローラー径の二段式圧延機の一つの圧延パスの変形に相当し、さらに連続鋳造スラブの中心領域の緩み、偏析の改善に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例の連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントの正面図である。
【
図2】本発明の実施例の連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントの側面図である。
【
図3】本発明の実施例の連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントの高圧圧下方法の原理図である。[主な素子の記号の説明]1:圧下装置; 2:上枠; 3:上駆動ローラー; 4:上ベアリング台座; 5:下駆動ローラー; 6:下ベアリング台座; 7:下枠; 8:左従動ローラー群; 9:右従動ローラー群;10:クランプシリンダ;11:伝動装置
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的問題、技術的解決手段と利点をより明らかにするために、以下に図面及び具体的な実施例を参照して詳しく説明する。
【0013】
本発明は従来技術において元の連続鋳造機の低圧圧下システムで扇状セグメントに凝固端高圧圧下を実施する場合、連続鋳造機の扇状セグメント、駆動ローラーの強度及び鋼性が深刻に不足であり、及びクランプシリンダの担持能力が十分ではなく、凝固端高圧圧下を実施しにくく、かつ鋳造スラブの中間に亀裂が容易にできるなどの問題に対して、連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントおよびその高圧圧下方法を提供する。
図1と
図2に示すように、本発明の実施例による連続鋳造スラブ凝固端を高圧圧下した連続鋳造機扇状セグメントは、連続鋳造機扇状セグメントに位置する上枠2、下枠7、上駆動ローラー3、下駆動ローラー5、左従動ローラー群8、右従動ローラー群9、圧下装置1及びクランプシリンダ10を含み、前記クランプシリンダ10が上枠2と下枠7をクランプして設定された間隔を維持することに用いられ、前記駆動ローラー、従動ローラーが伝動装置11によって連動されて回転し、それによって鋳造スラブと連動して前へ移動し、前記上駆動ローラー3が圧下装置1に接続され、前記上駆動ローラー3が上ベアリング台座4を介して上枠2に接続され、前記下駆動ローラー5が下ベアリング台座6を介して下枠7に接続され、前記左従動ローラー群8及び右従動ローラー群9がそれぞれ駆動ローラーの両側に位置し、前記左従動ローラー群8が圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記右従動ローラー群9が圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられ、前記駆動ローラーの直径と従動ローラーの直径との比が1.1:1〜2:1である。
前記右従動ローラー群9と駆動ローラーの開度が圧下後の鋳造スラブ厚さと同じである。前記左従動ローラー群8の開度が圧下前の鋳造スラブ厚さと同じである。前記駆動ローラーは一体型であり、一体成形プロセスによって製造される。
図3に示すように、本発明による連続鋳造スラブ凝固端高圧圧下方法は、(1)クランプシリンダは一定の圧力を上枠2に印加し、左従動ローラー群8の開度を圧下前の鋳造スラブ厚さと同じにし、そして圧下前の鋳造スラブをクランプすることに用いられるステップと、
(2)圧下量を5〜20mmに設定し、圧下装置1によって駆動ローラーと連動して鋳造スラブに対して高圧圧下変形を行うステップと、
(3)右従動ローラー群9を調整してその開度を上下駆動ローラーの間の間隔と同じにし、圧下後の鋳造スラブをクランプすることに用いられる。このようにして大ローラー径一体型駆動ローラー3のみによって圧下変形を実施することを実現でき、出口側の右従動ローラー群9が圧下変形を負担せず、この圧下方式は、二段式圧延機の鋳造スラブに対する圧延変形に類似する。
【0014】
本発明の駆動ローラーは大ローラー径一体型駆動ローラー(即ち、ローラーリング、芯軸及び中間支持ベアリング台座で構成されたセグメントローラーではない)であり、同時に高圧圧下が実施された場合の負荷が増加するのを考えて、扇状セグメントの上枠2と下枠7の強度と鋼性を向上させ(向上幅が2〜5倍である)、それに応じて4つのクランプシリンダ10の担持能力を増大する(増大幅が2〜5倍である)。
上記の解決手段では、本発明は大ローラー径一体型駆動ローラー及び高強度、高鋼性を有する上枠、下枠及び担持能力が大きいクランプシリンダを用いる。高圧圧下した場合の総変形量は、大ローラー径の駆動ローラーによって連続鋳造スラブに対して高圧圧下変形を行う総変形量であり、一般的な扇状セグメントの5〜7対の鋳造機ローラーが一つ一つ小変形を実施して高圧圧下を完了する総変形量ではない。
本発明の上記の技術的解決手段の有益な効果は以下の通りである。
1.塑性変形接触面積が減少し、大ローラー径一体型駆動ローラーのみによって圧下され、総変形量が大幅に減少する;
2.それに応じて扇状セグメントにおけるクランプシリンダの必要なクランプ力が小さくなり、同時に上、下扇状セグメントの高圧圧下された場合の強度と鋼性を維持するために増加する必要がある構造材料及び重量が減少する;
3.変形透過性が増加し、大ローラー径の二段式圧延機の一つの圧延パスの変形に相当し、このようにさらに連続鋳造スラブの中心領域の緩み、偏析の改善に役立つ。
上記のものは、本発明の好ましい実施形態であり、本技術分野の当業者に対して、本発明に記載される原理を逸脱しない前提で、若干の改良および変更を行うことができ、これらの改良および変更が本発明の保護範囲とみなされるべきであると指摘されるべきである。