(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541125
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ラバーヒータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20190628BHJP
B29C 69/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
H05B3/20 345
B29C69/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-94281(P2015-94281)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-213016(P2016-213016A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】310024000
【氏名又は名称】ミズホクラフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118706
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 陽
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡一郎
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−093553(JP,A)
【文献】
特開平07−085953(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0024568(US,A1)
【文献】
特開2010−003464(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3153158(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3035715(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02 − 3/86
B29C 64/00 − 73/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物体を加熱するためのラバーヒータを製造する方法であって、
該被加熱物体と同じ表面形状を有する第1成形型を用意する第1工程と、
該第1成形型の表面を硬化前のゴムで覆う第2工程と、
該硬化前のゴムの表面形状に整合する第2成形型を用意する第3工程と、
該第2成形型の表面を硬化前のゴムで覆った後、該硬化前のゴムの表面に電気抵抗式ヒータを配設する第4工程と、
該電気抵抗式ヒータを硬化前のゴムで覆い、加熱してヒータ付ゴム層とする第5工程と、
該第2成形型から該ヒータ付ゴム層を剥離する第6工程と、
該ヒータ付ゴム層を該第1成形型の表面に覆われた硬化前のゴムに被せ、該硬化前ゴムを硬化させてラバーヒータとする第7工程と
該第1成形型から該ラバーヒータを剥離する第8工程と、
を備えるラバーヒータの製造方法。
【請求項2】
前記第2成形型には電気抵抗式ヒータを配設するための治具が設けられていることを特徴とする請求項1記載のラバーヒータの製造方法。
【請求項3】
前記治具は前記第2成形型に立設された複数の案内ピンからなることを特徴とする請求項2に記載のラバーヒータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有した面状発熱体であるラバーヒータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気抵抗式ヒータをシリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムで覆ったラバーヒータは、加熱対象物の表面形状に沿ってフレキシブルに密着させることができるという特性を有している(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−63755号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のラバーヒータでは、小さな曲率半径を有する曲面では、密接させようとしても、皺がよって隙間ができ易いため、均一に加熱することが困難となっていた。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、加熱すべき物体の形状に合わせて隙間なく密着させて均一に加熱することができるラバーヒータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラバーヒータは、被加熱物体を加熱するためのラバーヒータであって、該被加熱物体の表面形状に整合した形状を有し、内部に屈曲可能な電気抵抗式ヒータが配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のラバーヒータでは、被加熱物体の表面形状に整合した形状を有しているため、被加熱物体に隙間なく密着させることができ、皺が寄ることがない。そして、この密着状態において電気抵抗式ヒータに通電することにより、被加熱物体を均一に加熱することができる。
【0008】
電気抵抗式ヒータとしては、ラバーヒータが可撓性を発揮できるものであれば特に限定はされない。このような電気抵抗式ヒータとしては、ニクロム等の金属やカーボン等の電気抵抗体を発熱体として用いたヒータを用いることができる。ヒータの形状としては、線形状でもよいし、平面形状であってもよい。また、ラバーの素材としては、例えばシリコンゴムやフッ素ゴム等を用いることができる。機械的強度を高めるために、ゴムを耐熱繊維で強化することも好ましい。耐熱性繊維としては特に限定はないが、例えばガラス繊維を用いることができる。
【0009】
本発明のラバーヒータは、次のように製造することができる。
すなわち、本発明のラバーヒータの製造方法は、
被加熱物体を加熱するためのラバーヒータを製造する方法であって、
該被加熱物体と同じ表面形状を有する第1成形型を用意する第1工程と、
該第1成形型の表面を硬化前のゴムで覆う第2工程と、
該硬化前のゴムの表面形状に整合する第2成形型を用意する第3工程と、
該第2成形型の表面を硬化前のゴムで覆った後、該硬化前のゴムの表面に電気抵抗式ヒータを配設する第4工程と、
該電気抵抗式ヒータを硬化前のゴムで覆い、加熱してヒータ付ゴム層とする第5工程と、
該第2成形型から該ヒータ付ゴム層を剥離する第6工程と、
該ヒータ付ゴム層を該第1成形型の表面に覆われた硬化前のゴムに被せ、該硬化前ゴムを硬化させてラバーヒータとする第7工程と
該第1成形型から該ラバーヒータを剥離する第8工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、硬化前のゴムとしては、熱及び/又は経時変化によって硬化するものであれば、特に限定はない。例えば、硬化前のゴム板材や、硬化前の液状のゴムや、硬化前のゲル状のゴム等が挙げられる。また、硬化前のゴムとしては常温硬化型や加熱硬化型のものを用いることができる。さらに、ゴムの素材としては、シリコン系ゴムの他、フッ素系ゴムを用いることもできる。
【0011】
本発明のラバーヒータの製造方法では、
第2成形型に電気抵抗式ヒータを配設するための治具を設けられていることが好ましい。こうであれば、電気抵抗式ヒータを配設することがより容易となる。この場合の治具としては、例えば、第2成形型に立設された複数の案内ピンを治具とし、これに電気抵抗式ヒータを巻き付けたてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
実施例1のラバーヒータは、レドームの補修用に用いられるものである。レドームとは飛行機の先端を覆う砲弾形状のカバーのことであり、内部にはレーダ装置が設置されている。このため、レドームは電波が透過可能なように、ガラス繊維強化エポキシからできている。レドームに小石や鳥が当たって表面に傷がついた場合、これを補修する必要がある。補修の方法としては、傷部分を研磨した後、硬化前のガラス繊維強化エポキシで覆い、表面から加熱して硬化させることにより行う。実施例1のラバーヒータは、この時の加熱用に用いられるものである。
【0013】
図1に示すように、実施例1のラバーヒータ1はシリコンゴムからなり、レドーム100の表面形状に整合した形状とされており(
図1左上)、レドーム100の上から隙間がないように被せることが可能とされている(
図1右側)。ラバーヒータ1は、
図2に示すように、内側ゴム層1aと、ニクロム線2が螺旋状に等間隔で巻かれたヒータ付ゴム層1bとが重なるように接合されている。ニクロム線2の両端は電線3に接続されている。
【0014】
<ラバーヒータの製造方法>
このラバーヒータ1は次のようにして製造される。
(第1工程)
第1工程として、
図3(a)に示すように、レドーム100の表面と同じ表面形状を有する帽子形状の第1成形型4を用意する。
(第2工程)
次に、第2工程として、
図3(b)に示すように、第1成形型4の表面に扇型形状の加硫前ゴム板5を複数枚用意し、隙間のないように布設する。ここで加硫前ゴム板5が硬化前のゴムである。なお、加硫前ゴム板の替りに硬化前の液状あるいはゲル状のシリコンゴムを用いることもできる。
(第3工程)
一方、第1成形型4とは別に、第2工程後の布設された加硫前ゴム板5の表面形状に整合する第2成形型6を用意する(
図4(c)参照)。
(第4工程)
第2成形型6の表面に複数の凹部7を設け(
図4(d)参照)、凹部7に案内ピン8の一端を嵌合し他端を突出させた後、案内ピン8間に扇形状の加硫前ゴム板9を複数枚用意し、布設する(
図4(e)参照)。ここで加硫前ゴム板9が硬化前のゴムである。なお、加硫前ゴム板の替りに硬化前の液状あるいはゲル状のシリコンゴムを用いることもできる。
そして、案内ピン8に沿ってニクロム線10を巻き付けてゆき、ニクロム線10の末端に電線3を接続させる(
図4(f)参照)。
(第5工程)
さらに、ニクロム線10の上から扇形状の加硫前ゴム板11を複数枚用意し、布設(
図4(g)参照)する。そして、真空加熱炉中で加熱することにより加硫前ゴム板11を加硫して、ヒータ付ゴム層12とする。ここで加硫前ゴム板11が硬化前のゴムである。なお、加硫前ゴム板の替りに硬化前の液状あるいはゲル状のシリコンゴムを用いることもできる。
(第6工程)
そして、第2成形型からヒータ付ゴム層12(
図5上側)を剥離する。
(第7工程)
さらに、
図5に示すように、ヒータ付ゴム層を第2工程終了後の加硫前ゴム板5の上に被せる。そして、真空加熱炉で加熱することによりヒータ付ゴム層12を加硫前ゴム板5に接着させる。なお、加硫前ゴム板5の替りに液状やゲル状の常温硬化型シリコンを使用すれば、真空加熱炉を使用しないで接着することが可能となる。
(第8工程)
最後に、第1成形型4からラバーヒータ1を剥離する、こうして
図1左上に示す実施例1のラバーヒータ1を得る。
【0015】
<ラバーヒータの使用方法>
以上のように構成された実施例1のラバーヒータ1の使用方法について説明する。
レドーム100の破損部100a(
図6a参照)をグラインダーで削った後、やすりを用いて研磨し、研摩部100bとする(
図6b)。そして研摩部100bの形状よりも少し大きめに補修用の硬化前ガラス繊維強化エポキシ部材20を切り出し、研摩部100b上に載置する(
図6c)。そして、図示しない離形用のフッ素樹脂膜でレドーム100の全体を覆ってから、実施例11のラバーヒータ1をレドーム100に被せる(
図6d)。そして、図示しないバキュームバッグによって減圧する。これにより、ラバーヒータ1の内側が減圧され、大気圧によってラバーヒータ1が硬化前ガラス繊維強化エポキシ部材20を圧縮する(
図6e)。
【0016】
そして、ニクロム線10に通電し、加熱する。こうしてラバーヒータ1によって硬化前ガラス繊維強化エポキシ部材20を押し付けながら加熱することにより、硬化前ガラス繊維強化エポキシ部材20は重合して研摩部100bに確実に接着される。こうして接着を行なった後、真空ポンプによる排気及びラバーヒータ1への通電を停止し、ラバーヒータ1を撤去し、表面をグラインダーや紙やすりで研磨して修理が完了する。
このラバーヒータ1は、レドーム100の表面形状に整合する形状とされているため、レドーム100の表面全体に密着して均一に加熱することができるため、補修箇所における硬化前ガラス繊維強化エポキシ部材20の重合反応もムラなく均一に行うことができる。このため、補修の信頼性も高いものとなる。また、ニクロム線10の両側からシリコンゴムによって挟まれた形状とされており、均一な厚さを有しているため、折れ曲がりやすい部分がなく、ニクロム線10が断線し難い。
【0017】
[比較例1]
比較例1のラバーヒータは、実施例1における第3工程から第6工程を行って得られたヒータ付ゴム層(
図5上側)であり、実施例1における第7工程は行われていない。このため、案内ピン8が嵌合されていた部分はゴムが薄くなっており、その部分で屈曲し易く、ニクロム線が断線しやすい。また、このラバーヒータを用いて加熱する際、加熱が不均一となりやすい。
【0018】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のラバーヒータは、加熱すべき物体の形状に合わせて隙間なく密着させて均一に加熱することができる。このため、FRPの破損個所の硬化前ガラス繊維強化エポキシを用いた修理や、FRP成形品の作製に等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…ラバーヒータ
100…レドーム(被加熱物体)
1a…内側ゴム層
1b…ヒータ付ゴム層
4…第1成形型
6…第2成形型
5,9…加硫前ゴム板(硬化前のゴム)
8…案内ピン(治具)
10…ニクロム線(電気抵抗式ヒータ)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1のラバーヒータ1の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】実施例1のラバーヒータ1の一部断面図である。
【
図3】実施例1のラバーヒータ1を製造するときの第1工程及び第2工程を示す斜視図である。
【
図4】実施例1のラバーヒータ1を製造するときの第3工程〜第6工程までを示す図である。
【
図5】実施例1のラバーヒータ1を製造するときの第7工程及び第8工程までを示す斜視図である。
【
図6】実施例1のラバーヒータ1によるレドーム100の修理方法を示す斜視図である。