(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、マイクロニードルアレイ製造装置および破断性を最適化し、迅速な投薬を可能としたマイクロニードルアレイの製造方法ならびにマイクロニードルアレイを有する製品に係るものである。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るマイクロニードルアレイ製造装置及びマイクロニードルアレイの製造方法並びに製造されたマイクロニードルアレイを有する製品について図面を用いて説明する。
(1)マイクロニードルアレイ製造装置の概要
図1は、マイクロニードルアレイ製造装置の概要を示す模式的な斜視図である。
図1に示されているように、マイクロニードルアレイ製造装置1は、液滴吐出装置10と位置合せ装置20とを備えている。位置合せ装置20は、XYZステージ21とCCDカメラ22とアライメントモニタ23を備えている。液滴吐出装置10には、
図1に示されている液滴を吐出するためのノズル11aと、ノズル11aに供給される原料液が入れられているカートリッジ13aが設けられている。なお、
図1には示されていないが、液滴吐出装置10は、
図10に示されている他のノズル11b及び他のカートリッジ13bも有している。
【0019】
また、マイクロニードルアレイ製造装置1を制御系統の観点から見ると、
図2に示されているように、マイクロニードルアレイ製造装置1は、制御装置30を備えており、この制御装置30が液滴吐出装置10と位置合せ装置20とを制御する。液滴吐出装置10では、制御装置30により、第1吐出ヘッド用アクチュエータ12aと第2吐出ヘッド用アクチュエータ12bとが制御される。マイクロニードルアレイ製造装置1は、制御装置30が第1吐出ヘッド用アクチュエータ12aと第2吐出ヘッド用アクチュエータ12bとを制御することにより、ノズル11a,11bから吐出される液適量の微量な調整ができるように構成されている。位置合せ装置20では、制御装置30により、XYZステージ21のX軸用ステッピングモータ21aとY軸用ステッピングモータ21bとZ軸用ステッピングモータ21cとθ軸用ステッピングモータ21d、CCDカメラ22及びアライメントモニタ23が制御される。XYZステージ21に載置される型80は、X軸用ステッピングモータ21aによりX軸方向に移動され、Y軸用ステッピングモータ21bによりY軸方向に移動され、Z軸用ステッピングモータ21cによりZ軸方向に移動され、θ軸用ステッピングモータ21dによりXYZステージ21の中心で鉛直方向(Z軸方向)に延びる中心軸の周りで回転移動される。
【0020】
(2)マイクロニードルアレイを有する製品
マイクロニードルアレイ製造装置1を使って製造されるマイクロニードルアレイを有する製品について説明する。マイクロニードルアレイ製造装置1によって形成されるのは、
図3に示されている複数のマイクロニードル103からなるマイクロニードルアレイ110である。
マイクロニードル103の大きさは、例えば、高さが10μmから1mmで、底面の最大幅が10μmから1mmで、アスペクト比が0.5から4の範囲で設定される。
また、互いに隣接するマイクロニードル103の間隔d1(表面102において最も近接する箇所の距離)は、例えば、10μmから2mmの範囲で設定される。マイクロニードルアレイ110を構成するマイクロニードル103の密度でいえば、例えば1平方センチメートル当たりのおよその本数が数本から10
5本程度の範囲で設定される。このようなマイクロニードルアレイ110を製造するために、マイクロニードルアレイ製造装置1は、マイクロニードル103の間隔d1以下の移動距離を繰り返すことができるように構成されている。また、マイクロニードルアレイ製造装置1の移動距離の誤差は、マイクロニードル103の底面の最大幅よりも小さくなるように設定されている。
【0021】
マイクロニードルアレイ110は、板状のベース部材101の表面102に固定される。ベース部材101の外寸は、例えば2mm×17mm×17mm程度の大きさである。表面102にマイクロニードルアレイ110を固定するために、底部層105と同じ組成物の積層膜109がベース部材101の表面102に形成されている。このようにマイクロニードルアレイ110がベース部材101に固定されてマイクロニードルアレイを有する製品100が形成される。マイクロニードル103の先端部を尖らせるときには、先端部の鉛直方向の断面における角度が例えば30度である。このようにマイクロニードル103の先端部が尖っていると、液滴が着弾する凹部81(
図8参照)の壁が傾斜することになるので、液滴で充填するには適した形状の凹部81を形成し易くなる。ここで凹部81に液滴が着弾するとは、凹部81の壁面に液滴が当たって付着することである。
この板状のベース部材101は、通気性の良いベース部材であり、例えば多孔質ベース部材である。多孔質ベース部材としては、例えば、酢酸セルロースを主成分とする多孔質ベース部材、多孔質セラミックベース部材、多孔質金属ベース部材、パルプを板状に成形されてなるパルプ成形品又は多孔質樹脂ベース部材を用いることができる。
図4には、
図3の一部領域EA1が拡大して示されている。マイクロニードル103は、先端の頂部層104とそれに続く底部層105とからなる2層構造を有している。これら頂部層104と底部層105は、互いに組成物が異なっている。
以下の説明で、原料液の成分というときには、必ずしもその成分が原料液に溶解している必要は無く、例えば原料液が懸濁液であるときにその懸濁液の成分が例えばマイクロカプセル又はリポソームである場合も含まれる。
【0022】
(3)型
図5に示されている型80は、原料液におかされない衛生的な材料で形成されていればよいが、気体透過度が大きい材質であることが好ましい。例えばプラスチック、エラストマー、セラミック又は金属で形成できる。型80を形成する材料としては、シリコーンゴムが好ましい。また、型80を形成するプラスチックとしては、例えば、ポリメチルペンテン(TPX(登録商標))又はポリテトラフロロエチレンが好ましい。また、型80を形成する金属としては、気体を透過しないが錆び難いので、例えばステンレスが好ましい。型80の凹部81は、型80の表面82に沿った水平断面の形状が例えば円形、多角形又は楕円形である。そして、凹部81の内部空間は、例えば円錐状、角錐状、円柱状又は角柱状の空間である。
型80の表面82には、アライメントマーク83が形成されている。このアライメントマーク83は、マイクロニードルアレイ製造装置1のCCDカメラ22によって読み取られる。アライメントマーク83を基準として液滴吐出装置10から吐出された液滴が凹部81内に着弾するように制御されるので、アライメントマーク83を基準として各凹部81の位置が定まっている。なお、このアライメントマーク83は、衛生的なものであり、例えば表面82の凹凸で形成される。
シリコンーンゴムで形成される場合の型80の外寸は、例えば6mm×20mm×20mmであり、凹部81が形成される領域の大きさは、例えば15mm×15mmである。
【0023】
(4)原料液
マイクロニードル103の頂部層104を形成するための頂部層用原料液91(
図7参照)は、例えば水もしくは水とアルコールの混合溶媒又は他の溶媒に固形の原材料を溶かし込んだ溶液、水もしくは水とアルコールの混合溶媒又は他の溶媒に固形の原材料を分散した懸濁液、又はそれらの混合液である。固形の原材料としては、人体に無害な高分子物質であり、例えば、人体に無害な樹脂、人体に無害な多糖類及び人体に無害なタンパク質並びにそれらに由来する人体に無害な化合物が含まれる。人体に導入するための化合物としては、例えば傷病の治療や診断や予防目的のために用いられる生物活性物質が挙げられる。
頂部層用原料液は、例えば水溶性の多糖類(その誘導体及びそれらの塩を含む)が溶かしこまれた溶媒に、疾病の診断、治療や予防のために投与される生物活性物質が添加されたものである。このような頂部層用原料液の溶媒が蒸発させられることにより、多糖類の基材中に生物活性物質が含まれた頂部層104が形成される。水溶性の多糖類(その誘導体及びそれらの塩を含む)としては、例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、デキストラン及びカルボキシメチルセルロースがある。また、このような生物活性物質としては、例えばインスリン及び成長ホルモンがある。
【0024】
マイクロニードル103の底部層105を形成するための底部層用原料液は、固形の原材料及び溶媒のうちの少なくとも一つの組成が頂部層用原料液と異なっている。このように頂部層用原料液と底部層用原料液の組成を異ならせることで、マイクロニードル103は、頂部層104と底部層105の組成を異ならせる。本実施形態では、マイクロニードル103を医療に用いる場合の例として、頂部層104に薬効のある生物活性物質を含め、底部層105には生物活性物質を含めない構成について説明している。しかし、例えば、マイクロニードル103を医療に用いる場合に、頂部層104と底部層105の両方に薬効のある生物活性物質を含めてもよく、頂部層104に含ませる生物活性物質の種類や含有量と底部層105の生物活性物質の種類や含有量を異ならせることによって、頂部層104によって発揮される薬効や薬効の持続時間と底部層によって発揮さえる薬効や薬効の持続時間を異ならせるように構成することもできる。マイクロニードルアレイを有する製品100を医療に用いる場合には、このようにマイクロニードル103を二層構造にすることによって様々な投薬に対応し易くなる。
頂部層用原料液は、例えば、液滴吐出装置10から液滴として吐出されるが、液滴の量は、例えば0.1ナノリットル/滴から1マイクロリットル/滴の範囲で設定される。例えば、1本のマイクロニードル103を形成するための凹部81の容量が20ナノリットルとすると、1個の凹部81を20滴で充填するとすれば、1滴が1ナノリットルになる。このような微小な液滴で充填するためには粘度が低いことが好ましく、例えば、0.1mPa・secから100mPa・secの範囲、好ましくは1mPa・secから10mPa・secの範囲で設定される。
【0025】
(5)マイクロニードルアレイを有する製品の製造方法
図6は、マイクロニードルアレイ製造装置1を用いた上述のマイクロニードルアレイを有する製品100の製造工程を説明するためのフローチャートである。マイクロニードルアレイを有する製品100の製造工程において、
図6のステップS1からステップS5までの作業とステップS11からステップS15までの作業とは互いに独立に並行して実施することができる。ただし、2つの作業の流れにおいて、共通化できる作業は共通化されてもよい。また、各ステップにおけるマイクロニードルアレイ製造装置1の動作が制御装置30によって制御されるが、以下の説明では、マイクロニードルアレイ製造装置1の各部の制御装置30による制御についての言及が一部省略されている。なお、第1実施形態では、ノズル11aから液滴を吐出させる第1吐出ヘッド用アクチュエータ12aのみが用いられ、第2吐出ヘッド用アクチュエータ12bを用いる製造方法についての説明は第2実施形態において行われる。また、第1実施形態ではθ軸用ステッピングモータ21dが用いられず、θ軸用ステッピングモータ21dを用いる製造方法についての説明は第3実施形態において行われる。
図6のステップS1からステップS5までは、型80を用いる作業である。まず、
図5に示されている型80を準備する(ステップS1)。ステップS1の型80の準備工程では、例えば所定数の型80の水洗が行なわれて所定の場所に並べられる。準備された全ての型80は、例えばオートクレーブ(図示せず)を使用して滅菌される(ステップS2)。滅菌された型80は、清浄な環境下で、マイクロニードルアレイ製造装置1のXYZステージ21の上に載置されて位置合せが行なわれる(ステップS3)。
【0026】
滅菌された型80の位置合せは、例えば滅菌されたロボットアームなどによって型80がXYZステージ21上に載置されてから行われる。XYZステージ21上の型80のアライメントマーク83をCCDカメラ22で撮影し、制御装置30がアライメントマーク83を基準として認識することによって位置合せが行なわれる。制御装置30において型80のアライメントマーク83から各凹部81の位置が特定されることにより、一筆書きの要領で順に隣接する凹部81に液滴吐出装置10のノズル11aが対応して動くように、XYZステージ21による、液滴吐出装置10のノズル11aに対する型80の相対的な移動が可能になる。
ステップS4では、
図7及び
図8に示されているように、ノズル11aに対して型80を移動させ、型80の各凹部81にノズル11aから吐出される液滴を直接着弾させて、各凹部81に頂部層用原料液91を充填する。
図8に示されているように各凹部81に着弾する液滴を小分けにすると、空気に触れる量が増えて頂部層用原料液91の乾燥時間を短くすることができる。ノズル11aから吐出される頂部層用原料液91は、型80の表面82には着弾しないように、液滴吐出装置10とXYZステージ21が同期して動作するように制御されている。
図8には、一つの凹部81に対してノズル11aから吐出された5滴の頂部層用原料液91の液滴91a,91b,91c,91d,91eと、各液滴91a,91b,91c,91d,91eのそれぞれの着弾点Lp1,Lp2,Lp3,Lp4,Lp5が示されている。着弾点Lp1,Lp2,Lp3,Lp4,Lp5は、各凹部81の中であって互いに異なる位置である。例えば、一定の速度でノズル11aを型80に対して相対的に移動させながら液滴を順次吐出することで着弾点Lp1,Lp2,Lp3,Lp4,Lp5を異ならせることができる。このようにノズル11aを移動させながら吐出を繰り返して異なる位置に液滴を着弾させると、各型80における充填時間を短縮でき、ひいてはマイクロニードルアレイを有する製品を短い時間で製造することができる。また、各凹部81に着弾が始まってから着弾が終了するまでの間で、型80に対するノズル11aの相対的な速度を変化させるように設定してもよい。
【0027】
吐出する頂部層用原料液91の液滴数は、5つに限られるものではなく、適宜設定でき
る。一つの凹部81当たりの液滴数は、例えば、1滴から数十滴の範囲で設定される。また、吐出する頂部層用原料液91の液滴量も適宜設定可能である。例えば、各液滴91a,91b,91c,91d,91eの量を一定にすることもできるし、互いに異ならせるように設定することもできる。例えば、各凹部81の端に近いほど液適量を少なくして中心部に近いほど液適量を多くする設定、その逆に各凹部81の端に近いほど液適量を多くして中心部に近いほど液適量を少なくする設定、各凹部81において吐出し始めたときよりも吐出の終わりに近づくに従って液適量を少なくする設定、及びその逆に各凹部81において吐出し始めたときよりも吐出の終わりに近づくに従って液適量を多くする設定がある。
また、ここでは、一つの凹部81に吐出される5滴の頂部層用原料液91の液滴量の総計が当該凹部81の内部空間の体積(凹部81の容積)に等しく設定されている。従って、ステップS4の頂部層用原料液充填工程が終了すると、全ての凹部81に満杯に頂部層用原料液91が充填される。しかし、一つの型80における頂部層用原料液91の充填量を、各凹部81の位置に応じて異ならせるように設定することもできる。例えば、型80の中心部に近い凹部81の頂部層用原料液91の充填量を多くして型80の端部に近づくに従って充填量を少なくする設定及び、その逆に型80の中心部に近い凹部81の充填量を多くして型80の端部に近づくに従って充填量を少なくする設定である。充填量を変えるには、例えば1滴の液適量を変化させてもよく、各凹部81当たりの液滴数を変化させてもよく、あるいは液適量と液滴数の両方を変化させてもよい。
【0028】
各凹部81に対するノズル11aの相対的な移動は、XYZステージ21のXY座標、つまり型80の表面82の面内方向への移動が主であるが、Z軸方向への移動を合わせて行わせてもよい。例えば、型80の各凹部81の大きさが場所によって異なる場合に、着弾の精度を変更するために型80にノズル11aを近づけたり、離したりしてもよい。
頂部層用原料液充填工程(ステップS4)が終了すると、型80は、例えば滅菌されたロボットアームなどによってXYZステージ21から風乾部(図示せず)に移動される。風乾部では、例えば、充填を終えた型80が順次ベルトコンベアー(図示せず)に乗せられて、クリーンなドライエアーの送風下で移動される。そして、ベルトコンベアーの終点では、頂部層用原料液91が乾燥されて固化された状態で、型80が順次取り出されて次の組み合わせ工程に移される。
【0029】
上述のステップS1からステップS5の作業と並行して行なわれるステップS11からステップS15の作業は、多孔質ベース部材85(
図9(a)参照)を用いて行われる作業である。まず、多孔質ベース部材85の準備工程では、例えばエアーによって所定数の多孔質ベース部材85の表面の清掃が行われて所定の場所に並べられる。準備された全ての多孔質ベース部材85は、例えばオートクレーブ(図示せず)を使用して滅菌される(ステップS12)。滅菌された多孔質ベース部材85は、フィーダ装置(図示せず)により順次ディスペンス部にあるディスペンサ(図示せず)に対して位置合せが行なわれる(ステップS13)。
【0030】
ステップS14では、ディスペンサにより底部層用原料液92が多孔質ベース部材85に分配され、
図9(a)に示されているように、多孔質ベース部材85に底部層用原料液92が接触するように多孔質ベース部材85の上に置かれる。この底部層用原料液92は、例えば、粘度が1Pa・secより大きく1000Pa・secより小さい範囲で設定されており、型80が20mm×20mmであれば底部層用原料液92の量が数十mgに設定される。この底部層用原料液92は、後述した方法によって積層膜109を構成する材料でもあるので、上述のような比較的高い粘度を有していることが好ましい。このような比較的高い粘度を有する底部層用原料液92を多孔質ベース部材85に馴染ませるため、この製造方法では、底部層用原料液92が充填されてすぐに乾燥・貼り合わせ工程(ステップS20)に移行しない。毛細管現象などによって底部層用原料液92が多孔質ベース部材85の中に浸透する時間をつくるための養生工程(ステップS15)が設けられている。養生工程では、例えば、数秒から数十秒の範囲内の適当な時間放置されるだけである。養生工程では、例えば多孔質ベース部材85に底部層用原料液92が接触している状態で振動や高気圧を加えるような浸透促進手段を適用してもよい。
【0031】
次の組み合わせ工程(ステップS20)では、
図9(a)に示されているように、吸着ステージ41に型80を吸着して固定する。また、載置ステージ42に多孔質ベース部材85を載置する。そのために、乾燥工程(ステップS5)を経た型80は、例えば滅菌されたロボットアームで吸着ステージ41の上に載置され、養生工程(ステップS15)を経た多孔質ベース部材85は、例えば滅菌されたロボットアームで載置ステージ42の上に載置される。
【0032】
次に、
図9(b)に示されているように、吸着ステージ41が持ち上げて反転させられ、載置ステージ42に置かれている多孔質ベース部材85の上に、吸着ステージ41に固定されている型80が重ねられる。
図9(b)に示されているように、多孔質ベース部材85の上に型80が重ねられている状態で、吸着ステージ41を載置ステージ42の方に押し付けて所定の圧力を印加する。この所定の圧力によって、多孔質ベース部材85と型80の間に挟まれた底部層用原料液92が広がる。ただし、底部層用原料液92が広がり過ぎて多孔質ベース部材85から食み出さないように、印加される圧力が所定の圧力に調整されている。このような結果を得るために、例えば、予備実験を行って所定の圧力の適切な値が調べられる。吸着ステージ41によって型80に圧力を加えるときには、吸着ステージ41に対する型80の固定がなされたままでもよく、また固定が解除されていてもよい。次に、
図9(c)に示されているように、型80に対する吸着ステージ41の固定が解除された状態で、吸着ステージ41が型80から外される。なお、頂部層用原料液91は、乾燥することで体積が減少し、型80の表面82と頂部層用原料液91が固化してできた物質の表面との間に段差ができている。この段差でできた各凹部81内の空間に底部層用原料液92が浸入することで、マイクロニードル103の底部層105が形成できる。
図9(c)の状態にある型80と多孔質ベース部材85とが載置ステージ42からストック部(図示せず)に移動される。ストック部では、型80の上から荷重を掛けた状態で、型80と多孔質ベース部材85との間の底部層用原料液92の乾燥が行われる。型80の上から荷重を掛ける方法は、例えば、型80の上に重りを載せる方法、又は空気圧やバネによる圧力によって荷重を掛ける荷重ストック専用機に型80と多孔質ベース部材85の組立体をセットする方法である。
【0033】
(6)変形例
(6−1)変形例1A
上記第1実施形態では、頂部層104が生物活性物質を含み薬効があるが底部層105が生物活性物質を含まず薬効がない2層構造のマイクロニードル103について説明している。例えば、頂部層104に含まれる薬剤の量の製造誤差を極めて小さくしたい場合には、凹部に充填される原料液の量を極めて精度良く制御することが必要になる。そのような場合において、従来のようにスキージを使って凹部に原料液を充填するのに比べて、上述の第1実施形態に係るマイクロニードルアレイ製造装置1やマイクロニードルアレイの製造方法は、液量が調節された所定数の液滴で凹部に原料液を充填する方が原料液の量を精度良く制御することができるので、薬剤の量を極めて精度よく調整することができる。
しかし、第1実施形態で説明したマイクロニードルアレイ製造装置1やマイクロニードルアレイの製造方法により製造できるマイクロニードルアレイは、上述の2層構造のマイクロニードル103からなるマイクロニードルアレイ110にかぎられるものではない。例えば、頂部層104が生物活性物質を含まずに薬効がなく底部層105が生物活性物質を含み薬効がある2層構造のマイクロニードルからなるマイクロニードルアレイを製造することもできる。また、上記(4)原料液のところで説明したように、各マイクロニードルの頂部層と底部層の両方に薬効のある生物活性物質を含めてもよい。さらに、2層よりも多い3層以上の層からなる多層構造を有するマイクロニードルからなるマイクロニードルアレイを製造することもできる。このように、第1実施形態で説明したマイクロニードルアレイ製造装置1やマイクロニードルアレイの製造方法は、複数の層の組成物が互いに異なる複数のマイクロニードルからなるマイクロニードルアレイを有する製品の製造に適している。
また、マイクロニードルアレイが用いられる分野が医療以外の分野である場合には、例えば美容と健康に関する分野である場合には、頂部層104と底部層105の両方が生物活性物質を含まず薬効がない2層構造のマイクロニードル103であってもよい。
また、頂部層104及び底部層105の少なくとも一方は、第1実施形態で例示した多糖類を用いずに、生物活性物質のみで形成することもできる。
上述の頂部層用原料液は、例えば上述の水溶性の多糖類、水溶性のタンパク質、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー及びポリアクリル酸ナトリウムのうちの少なくとも一つ又はそれらのうちの幾つかの組み合わせを溶かした溶液であってもよい。水溶性のタンパク質としては、例えば血清アルブミンがある。また、頂部層用原料液には、他の物質が含まれてもよく、例えば、単糖類や小糖類が含まれてもよい。単糖類としては、例えばブドウ糖があり、小糖類としては二糖類が挙げられ、二糖類としては例えばショ糖がある。
【0034】
(6−2)変形例1B
上記第1実施形態では、アライメントマーク83をCCDカメラ22で撮影して、アライメントマーク83を基準にXYZステージ21を移動させることによって位置合せが行なわれるが、位置を合わせる方法はこのような方法に限られるものではなく、例えば、治具に型80の側面を突き当てることで基準位置を設定して位置合せを行ってもよい。
【0035】
(6−3)変形例1C
上記第1実施形態では、ベース部材101が平坦な板状の形状を持つ場合を例に挙げて説明したが、ベース部材101は、薄いシート状であってもよく、また表面が曲面の立体的な形状を持つものであってもよい。
図17(a)に示されているように、型80Aの表面82Aが凹面鏡のように湾曲した形状にして、この表面82の曲面に沿ってノズル11aを動かして各凹部81に頂部層用原料液91を充填することができる。このようにして形成すると、
図17(b)に示されているように、固定部109fの表面102fの曲面形状に関わらず常に複数のマイクロニードル103fを互いに平行に形成することができる。それにより、マイクロニードルアレイ110Eのいずれの箇所のマイクロニードル103fも刺さり易くなる。例えば、シートの上にマイクロニードルアレイを形成してシートを立体的に変形させると、マイクロニードルは曲面に対して略垂直になり、互いに平行にならないので一部のマイクロニードルが刺さり難くなったり、壊れ易くなったりする。
また、固定部109fは、底部層用原料液92を用いて第1実施形態と同様の方法で形成することができる。頂部層用原料液91の液滴数によって、一本のマイクロニードル103f当たりに含める組成物の量を、予め設定されている設定量に精度良く調整することができる。
なお、固定部109fの表面形状は、立体的な形状であれば、他の形状であってもよい。また、複数のマイクロニードル103fは、固定部109fの表面102f上に立体的に配置され、互いに平行に形成されていれば、上述の作用効果を奏する。
【0036】
<第2実施形態>
(7)マイクロニードルアレイの製造方法の概要
上記第1実施形態では、液滴吐出装置10において、一つのノズル11aを使う場合について説明したが、第2実施形態として、
図10に示されているように、2つのノズル11a,11bを使う場合を説明する。
図10に示されている2つのカートリッジ13a,13bには、組成の異なる頂部層用原料液91,93が入っている。
図10に示されている液滴吐出装置10は、互いに隣接する凹部81にノズル11aとノズル11bで交互に頂部層用原料液91の液滴と頂部層用原料液93の液滴を吐出している。また、各凹部81当たりにノズル11a,11bが吐出する総液適量がそれぞれ異なっている。
図11には、上述の製造方法により形成されたマイクロニードルアレイ110Aを有する製品100Aが示されている。
図12には、
図11の一部領域EA2が拡大して示されている。第2実施形態に係る第1マイクロニードル103aと第2マイクロニードル103bも、第1実施形態に係るマイクロニードル103と同様に、先端の頂部層104a,104bとそれに続く底部層105a,105bとからなる2層構造を有している。ここでは、底部層105a,105bが頂部層104a,104bの次の第2層になっている。第1マイクロニードル103aの頂部層104aと底部層105aは互いに異なっており、第2マイクロニードル103bの頂部層104bと底部層105bは互いに異なっている。底部層105a,105bは、第1実施形態と同様の方法で形成されて互いに同じ成分で形成されているが、頂部層104a,104bの層厚みが異なることから底部層105a,105bの層厚みが自ずと互いに異なるものになる。
【0037】
ここでは、第1マイクロニードル103aの頂部層104aの組成物(第1組成物)に対して第1マイクロニードル103aの底部層105a(第3組成物)の種類が異なるとともに第2マイクロニードル103bの頂部層104bの組成物(第2組成物)に対して第2マイクロニードル103bの底部層105bの組成物(第4組成物)の種類が異なっている。そして、第1マイクロニードル103aの頂部層104aの組成物(第1組成物)に対して第2マイクロニードル103bの頂部層104bの組成物(第2組成物)の種類及び量が異なっている。さらに、第1マイクロニードル103aの底部層105aの組成物(第3組成物)と第2マイクロニードル103bの底部層105b(第4組成物)の量が異なる場合が示されている。
【0038】
図11及び
図12において、第1マイクロニードル103aが形成されている列が第1領域Ar1であり、第2マイクロニードル103bが形成されている列が第2領域Ar2である。第2領域Ar2は、第1領域Ar1を囲むようにその両側に配置されている。この場合は同時に、第1領域Ar1も、第2領域Ar2を囲むようにその両側に配置されている構成になっている。つまり、複数の第1領域Ar1と複数の第2領域Ar2は、互いに交互に並べて配置されている構成である。
従来のスキージを用いたマイクロニードルアレイの製造方法では、このように互いに隣接する列ごとに交互にマイクロニードルの構造を異ならせ、しかも各マイクロニードルの層厚みを精度良く調整することが難しかったが、第2実施形態のマイクロニードルアレイ110Aの製造方法ではそれが可能になっている。
上述のように第2実施形態によるマイクロニードルアレイ110Aの製造方法では、
図6に示されている頂部層用原料液充填工程(ステップS4)が上述のように変更されるだけで、他の工程は第1実施形態と同様に行われる。
【0039】
(8)変形例
(8−1)変形例2A
上記第2実施形態では、第1組成物に対して第3組成物の種類が異なるとともに第2組成物に対して第4組成物の種類が異なっている。そして、第1組成物に対して第2組成物の種類及び量が異なっている。第2実施形態では、さらに、第3組成物と第4組成物の量が異なる場合を例に挙げて示したが、次のような組み合わせも可能である。
つまり、第1組成物に対して第3組成物の種類が異なるとともに第2組成物に対して第4組成物の種類が異なり、且つ第1組成物に対して第2組成物の種類又は量が異なり、且つ第3組成物と第4組成物の両方が異なるように構成することができる。
例えば、カートリッジ13aとカートリッジ13bの中身に同じ組成物の頂部層用原料液91を入れることによって、第1組成物に対して第3組成物の種類が異なるとともに第2組成物に対して第4組成物の種類が異なり、第1組成物と第2組成物の量のみが異なり、第3組成物と第4組成物の量のみが異なるように構成することができる。
【0040】
(8−2)変形例2B
上記第2実施形態では、
図11及び
図12に示されているように、一直線に配置されている第1マイクロニードル103aの列と、一直線に配置されている第2マイクロニードル103bについて説明した。しかし、異なる構造のマイクロニードルの配置は、
図11及び
図12に示されている配置に限られない。例えば、第1マイクロニードル103aをm1列(m1は自然数)並べ、次に第2マイクロニードル103bをn1列(n1は自然数)並べ、次に第1マイクロニードル103aをm2列(m2は自然数)並べ、次に第2マイクロニードル103bをn2列(n2は自然数)並べるというように、任意の列数で交互に第1マイクロニードル103aと第2マイクロニードル103bとを並べてもよい。それぞれの列数を調節することによって、一つのマイクロニードルアレイに含まれる第1マイクロニードル103aの頂部層104aの総体積と第2マイクロニードル103bの頂部層104bの総体積との割合を調節することで、例えば2種類の薬剤の投薬量を調節することができる。
【0041】
また、例えば、
図13及び
図14に示されているように、円形状の第1領域Ar3及びリング状の第1領域Ar5に第1マイクロニードル103aの列を配置し、第1領域Ar3の第1マイクロニードル103aの列を囲むように第2マイクロニードル103bの列がある第2領域Ar4を配置することもできる。また、この場合には、第2領域Ar4の周囲を囲むように第1領域Ar5が配置されている。このように円内にマイクロニードルアレイ110Bが配置される場合は、同心円状に異なる種類のマイクロニードル103a,103bを配置すると、例えば投薬に用いる場合にはいずれかの種類のマイクロニードルが接触しなくなるという状況を避け易くなる。
ここでは、2つの第1領域Ar3,Ar5のマイクロニードル103aが同じ場合について説明したが、2つの第1領域Ar3,Ar5のマイクロニードルの種類(含有する組成物の種類と量)を異ならせて、Ar5で示されている領域を第3領域とすることもできる。例えば、医療の分野で用いる場合に、第1領域Ar3のマイクロニードルで薬剤αを20wt%投薬し、第2領域Ar4で薬剤βを35wt%投薬し、第3領域で薬剤γを45wt%投薬するように構成することができる。
【0042】
(8−3)変形例2C
上記第1実施形態及び第2実施形態では、マイクロニードル103,103a,103bが、頂部層104,104a,104bに続いて底部層105,105a,105bが形成される2層構造を持つ場合について説明している。しかし、マイクロニードルが3層以上の構造を持ってもよい。例えば、
図15(a)に示されているマイクロニードル103c,103d,103eのように、頂部層104c,104d,104eと底部層105c,105d,105eの間に、一つの中間層106c,106d,106eを形成することもできる。ここでは、中間層106c,106d,106eであるが、中間層を複数層にすることもできる。
マイクロニードル103c,103d,103eが持つような3層構造を形成する場合には、例えば、
図6に示されている乾燥工程(ステップS5)と組み合わせ工程(ステップS20)の間に、中間層用原料液充填工程と、その中間層を乾燥させる他の乾燥工程が追加される。中間層用原料液充填工程では、液滴吐出装置10を用いて頂部層用原料液充填工程と同じようにして中間層用原料液を充填することができる。なお、
図15(a)のように、3種類のマイクロニードル103c,103d,103eを持つマイクロニードルアレイの製造は、液滴吐出装置10を用いて、2種類のマイクロニードル103c,103dのための充填を終えた後にカートリッジ13a又はカートリッジ13bを交換してもう1種類のマイクロニードル103eのための充填を行うようにしてもよいが、ノズル11a,11b以外の第3のノズルと、カートリッジ13a,13b以外の第3のカートリッジをさらに備える他の液滴吐出装置(図示せず)を用いるとカートリッジの交換の手間が省けて製造時間を短縮することができる。
【0043】
また、中間層用原料液は、頂部層用原料液と同様に、例えば水もしくは水とアルコールの混合溶媒又は他の溶媒に固形の原材料を溶かし込んだ溶液、水もしくは水とアルコールの混合溶媒又は他の溶媒に固形の原材料を分散した懸濁液、又はそれらの混合液である。
上述のマイクロニードル103cを
図15(b)に示されている第1領域Ar6に配置し、マイクロニードル103dを第2領域Ar7に配置し、マイクロニードル103eを第3領域Ar8に配置して、マイクロニードルアレイ110Cを構成することもできる。あるいは、マイクロニードル103cを
図15(c)に示されている第1領域Ar9に配置し、マイクロニードル103dを第2領域Ar10に配置し、マイクロニードル103eを第3領域Ar11に配置して、マイクロニードルアレイ110Dを構成することもできる。
このような場合に、第1領域Ar6,Ar9に配置される第1マイクロニードル103cと、第2領域Ar7,Ar10に配置される第2マイクロニードル103dとに着目すると、第1マイクロニードル103cの頂部層104cの組成物(第1組成物)に対して第1マイクロニードル103cの中間層106c(第3組成物)の種類が異なるとともに第2マイクロニードル103dの頂部層104dの組成物(第2組成物)に対して第2マイクロニードル103dの中間層106dの組成物(第4組成物)の種類を異ならせることができる。そして、第1マイクロニードル103cの頂部層104cの組成物(第1組成物)に対して第2マイクロニードル103dの頂部層104dの組成物(第2組成物)の種類及び量のうちの少なくとも一方を異ならせることができる。さらに、第1マイクロニードル103cの中間層106cの組成物(第3組成物)と第2マイクロニードル103dの中間層106d(第4組成物)の種類及び量のうちの少なくとも一方を異ならせることができる。なお、ここでは、中間層106c,106dが第2層に相当する。
【0044】
そして、医療の分野で用いる場合に、第1マイクロニードル103cで、第1成分P1を含む頂部層104cと第2成分P2を含む中間層106cで第1薬剤α1を構成し、第2マイクロニードル103dで、第3成分Q1を含む頂部層104dと第4成分Q2を含む中間層106dで第2薬剤β1を構成し、第3マイクロニードル103eで、第5成分R1を含む頂部層104eと第6成分R2を含む中間層106eで第3薬剤γ1からなる薬を構成することができる。この薬において、例えば、第1マイクロニードル103cと第2マイクロニードル103dと第3マイクロニードル103eのそれぞれの1本の重量と各領域に配置される密度を同じにしておいて、第1領域Ar6,Ar9の面積と第2領域Ar7,Ar10の面積と第3領域Ar8,Ar11の面積との比によって投薬量を調整することができる。例えば、第1領域Ar6,Ar9の面積と第2領域Ar7,Ar10の面積と第3領域Ar8,Ar11の面積の比を4:7:9にすると、薬剤α1を20wt%、薬剤β1を35wt%、そして薬剤γ1を45wt%含む薬を調合することができる。
【0045】
(8−4)変形例2D
図13には、第1領域Ar3が第2領域Ar4の中に同心円状に含まれる場合が示されているが、第1領域Ar3が第2領域Ar4に含まれる形態はこれだけには限られない。例えば、マイクロニードルアレイにおいて、複数の第1領域が第2領域の海の中に島のように点在する海島構造を呈するように構成することもできる。
【0046】
<第3実施形態>
(9)マイクロニードルアレイ製造装置と製造方法の概要
上記第1実施形態及び第2実施形態では、同じマイクロニードルのための充填を行うために1つのノズル11a,11bを使う場合について説明したが、同じマイクロニードルのための充填を複数の凹部81に対して一緒に行うために、ノズルをアレイ状に配置してもよい。
図16に示されている第3実施形態に係る液滴吐出装置10Aは、アレイ状に配置されたノズル11c,11dを備えている。13個のノズル11cには、13個の第1吐出ヘッド用アクチュエータ12aが取り付けられ、13個のノズル11dには、13個の第2吐出ヘッド用アクチュエータ12bが取り付けられている。
一方、一つのXYZステージ21上に載せられて連続してX軸方向に移動する型80A,80B,80Cは、それぞれX軸方向に10個、Y軸方向に10個の凹部81がマトリクス状に並んでいる。
【0047】
X軸に平行に並ぶ一列の複数の凹部81に着目すると、例えば、
図16のノズル11caとノズル11daで一列の凹部81に対して液滴を吐出することができる。このように一列だけに着目したときの構成は、
図10で説明した第2実施形態の液滴吐出装置10と同じになる。従って、各列の凹部81に対しては、第2実施形態のように充填すれば、
図6に示されている頂部層用原料液充填工程(ステップS4)を実施することができる。
このとき、型80に対応する凹部81の存在しないノズル、例えばノズル11cb,11dbは、対応する第1吐出ヘッド用アクチュエータ12aの動作が停止されるとともに、対応する第2吐出ヘッド用アクチュエータ12bの動作が停止されて、液滴の吐出をしないように制御される。
型80A,80B,80Cが連続して移動されるので、一つのノズルアレイのノズル11caが型80Aに対して吐出しているときに、他のノズル11ccが次の型80Bに対して吐出している状態が生じる。液滴吐出装置10Aが、このように連続する複数の型80A,80Bに対して同時に吐出することにより、液滴吐出装置10Aによる充填時間を短縮することができる。
【0048】
また、他のロットの製造において、凹部81の配置間隔が異なる型に対して液滴を吐出させる場合、液滴吐出装置10Aのノズル11c,11dが並ぶ方向Dr2とノズル11c,11dの相対的な移動方向Dr1とのなす角θを、
図2に示されているθ軸用ステッピングモータ21dで調節する。それによって複数のノズル11c,11dのそれぞれのY座標と複数の凹部81のY座標とを一致させることができる。
なお、
図16に示されているマイクロニードルアレイ製造装置1Aの図示されていない部分の構成は、第1実施形態のマイクロニードルアレイ製造装置1と同じように構成することができる。
【0049】
(10)変形例
(10−1)変形例3A
上記第3実施形態では、ノズル11c,11dが2列に並べて配置されている場合について説明したが、液滴吐出装置10Aを3列以上のノズルを持つように構成することもできる。また、液滴吐出装置10Aをノズル11cのみ1列に並べて配置されているものに変更することもできる。
【0050】
(10−2)変形例3B
上記第3実施形態では、複数の凹部81が正方形状に配置されていたが、複数の凹部81が円形状に配置されている場合には、型をθ方向に回転させながら吐出するように構成することもできる。
【0051】
(11)特徴
(11−1)
以上説明したように、マイクロニードルアレイ製造装置1,1Aは、型80,80A,80B,80Cに形成されている複数の凹部81に、マイクロニードル103,103a〜103fを成形するための原料液を充填してマイクロニードル103,103a〜103fからなるマイクロニードルアレイ110,110A〜110Eを成形するための装置であり、液滴吐出装置10,10Aと位置合せ装置20とを備えている。位置合せ装置20のXYZステージ21によって、位置合せ装置20は、例えば
図8に示されているように、液滴吐出装置10,10Aから各凹部81の中に液滴を着弾させられるように、液滴吐出装置10,10Aのノズル11a,11b,11c,11dと型80との相対的な位置を合わせる。そして、液滴吐出装置10,10Aは、各凹部81に対して当該凹部81の容積以下の所定量ずつ、例えば
図8に示されているように頂部層用原料液91の液滴91a〜91eを吐出して充填する。
【0052】
これをマイクロニードルアレイの製造方法の観点から見ると、
図6に示されている頂部層用原料液充填工程(ステップS4)は、型80,80A〜80Cの複数の凹部81(第1凹部の例)の中に凹部81の容積以下の量の頂部層用原料液91(第1原料液の例)の液滴91a〜91eを着弾させて複数の凹部81に頂部層用原料液91を充填する第1充填工程である。また、
図6の乾燥工程(ステップS5)は、複数の凹部81の頂部層用原料液91を乾燥させて複数のマイクロニードル103,103a〜103fからなるマイクロニードルアレイ110,110A〜110Eを形成する乾燥工程である。
このように、1つの凹部81当たりに吐出される液滴91a〜91eの総量を調節することで、1つの凹部81当たりの頂部層用原料液91の量が精度良く調整される。この頂部層用原料液91の中の組成物の濃度がほぼ一定していることから、頂部層用原料液91を原料にして固化されてできる頂部層104,104a〜104eに含まれる組成物の量が精度良く調整される。その結果、マイクロニードルアレイ110,110A〜110Eの組成物の分布が精度良く調整される。
【0053】
(11−2)
上述のように、液滴吐出装置10,10Aは、
図8に示されているように、複数の液滴91a〜91eで各凹部81の容積以下になるように吐出可能に構成されている。1滴で凹部81に頂部層用原料液91を充填しようとすると、
図8に示されているような円錐形の凹部81の場合には、底部に気泡ができ易くなったり、着弾したときの反動で凹部81の外に頂部層用原料液91がこぼれ易くなったりする。それに対して、複数の液滴で充填する場合には、底部に気泡ができにくくなり、また凹部81の外部にこぼれ難くなるので、充填量を精度良く調整し易くなる。
【0054】
(11−3)
上述の
図8に示されている場合には、5滴の液滴91a〜91eで一つの凹部81を満杯にする場合について説明したが、液滴吐出装置10.10Aは、1回に吐出する1つの液滴の液量が各凹部81の容積の3分の1以下になるように調節可能に構成されている。そして、液滴吐出装置10.10Aと位置合せ装置20は、3滴以上の液滴が凹部81内の異なる位置に着弾するように位置合せを行なうことができるように構成されている。例えば、
図8に示されている場合には、着弾位置は、それぞれ異なる着弾点Lp1〜Lp5である。このように液滴91a〜91eが着弾する位置がことなることで、頂部層用原料液91の粘度が高い場合であっても、凹部81内に気泡が発生するのを抑えられ、外部にこぼれたりするのを防止することができる。
【0055】
(11−4)
上記第2実施形態及び第3実施形態で説明したように、カートリッジ13a,13bに頂部層用原料液91(第1液の例)と頂部層用原料液93(第2液の例)を入れることで、液滴吐出装置10,10Aは、原料液として、互いに成分が異なる頂部層用原料液91,93をノズル11aとノズル11b又はノズル11cとノズル11dを使って別々に吐出することができる。その結果、様々なマイクロニードル103,103a〜103fを組み合わせて、例えば
図4、
図11乃至
図15、及び
図17に示されているような様々な形態のマイクロニードルアレイ110,110A〜110Eを容易に形成することができるようになる。
【0056】
(11−5)
図10乃至
図14を用いて説明したように、液滴吐出装置10,10Aと位置合せ装置20は、型80の第1領域Ar1,AR3,Ar5,Ar6,Ar9にある凹部81の中に原料液を第1の量だけ充填し、型80の第2領域Ar2,AR4,Ar7,Ar6,Ar10にある凹部81の中に原料液を第2の量だけ充填することができるように構成されている。その結果、第1領域Ar1,AR3,Ar5,Ar6,Ar9の組成物の量と、第2領域Ar2,AR4,Ar7,Ar6,Ar10の組成物の量を精度良く調節することができるようになる。
【0057】
(11−6)
図10を用いて説明した頂部層用原料液93が着弾する凹部81を第2凹部とみなすことができる。そのようにみなした場合には、この頂部層用原料液93を充填するための
図6の頂部層用原料液充填工程(ステップS4)は、型80の凹部81の中に凹部81の容積以下の量の頂部層用原料液93(第2原料液の例)の液滴を着弾させて凹部81に頂部層用原料液93を充填する第2充填工程である。また、
図6の乾燥工程(ステップS5)は、複数の凹部81の頂部層用原料液93を乾燥させて複数のマイクロニードル103a〜103fからなるマイクロニードルアレイ110A〜110Eを形成する乾燥工程とみなすことができる。
この場合には、頂部層用原料液91(第1原料液の例)から製造されるマイクロニードルの配置領域と、頂部層用原料液93(第2原料液の例)から製造されるマイクロニードルの配置領域とを様々に組み合わせて、種々のマイクロニードルアレイを製造することが可能になる。
【0058】
また、
図15を用いて説明した変形例2Cのように、頂部層用原料液91,93(第1原料液の例)が乾燥された固体で一部埋められた凹部81を第2凹部とみなすことができる。つまり、変形例2Cの中間層用原料液充填工程は、頂部層用原料液91,93が乾燥された型80の凹部(第2凹部の例)の中に凹部81の容積以下の量(この場合には、頂部層用原料液91,93が乾燥してできた固体の体積を差し引いた容積)の中間層用原料液の液滴を着弾させて凹部81に中間層用原料液を充填する第2充填工程である。また、中間層用原料液の乾燥工程は、複数の凹部81の中間層用原料液を乾燥させて複数のマイクロニードル103a〜103fからなるマイクロニードルアレイ110A〜110Eを形成する乾燥工程とみなすことができる。
この場合には、頂部層用原料液91,93(第1原料液の例)から製造される頂部層104c,104d,104eと、中間層用原料液(第2原料液の例)から製造される中間層106c,106d,106eとを様々に組み合わせて、種々のマイクロニードルアレイ110C,110Dを製造することが可能になる。
【0059】
(11−7)
図6の組み合わせ工程(ステップS20)と乾燥・貼り合せ(ステップS21)は、底部層用原料液92(第3原料液の例)で表面の少なくとも一部が覆われている多孔質ベース部材85を、型80の凹部81が形成されている面の上に重ね合わせて、底部層用原料液92を乾燥させることによって多孔質ベース部材85の上に頂部層用原料液91,93が乾燥して成形された部分を含むマイクロニードル103a〜103fを固着させる固着工程である。
多孔質ベース部材85の表面の少なくとも一部を底部層用原料液92で覆うことで、多孔質ベース部材85の孔の中に底部層用原料液92が浸透し易くなり、多孔質ベース部材85にしっかりと固定されたマイクロニードルを有する製品100,100Aを形成し易くなる。固着工程の前に、養生工程(ステップS15)を設けることで、その効果が向上する。
【0060】
(11−8)
例えば、
図11乃至
図15を用いて説明したように、第1マイクロニードル103a,103cは、少なくとも一つの第1領域Ar1,Ar3,Ar5,Ar6,Ar9に形成され、先端にある頂部層104a,104cに第1組成物を含み、次の底部層105a(第1マイクロニードルの第2層の例)又は中間層106c(第1マイクロニードルの第2層の例)に第3組成物を含んでいる。また、第2マイクロニードル103b,103dは、第1領域Ar1,Ar3,Ar5,Ar6,Ar9に隣接する少なくとも一つの第2領域Ar2,Ar4,Ar7,Ar10に形成され、先端にある頂部層104b,104dに第2組成物を含み、次の底部層105b(第2マイクロニードルの第2層の例)又は中間層106d(第2マイクロニードルの第2層の例)に第4組成物を含んでいる。そして、上述のマイクロニードルアレイ製造装置又はマイクロニードルアレイの製造方法を用いることにより、第1組成物に対して第3組成物の種類が異なるとともに第2組成物に対して第4組成物の種類が異なり、且つ第1組成物に対して第2組成物の種類及び量のうちの少なくとも一方が異なり、且つ第3組成物と第4組成物の種類及び量のうちの少なくとも一方が異なるように構成することができるようになっている。
その結果、例えば医療分野でマイクロニードルアレイを有する製品100,100A,100C,100Dを使用すると、様々な薬剤の調合に対応できるようになり、様々な投薬の場面で使用できるようになる。
【0061】
(11−9)
また、上述のマイクロニードルアレイ製造装置又はマイクロニードルアレイの製造方法を用いることにより、少なくとも一つの第2領域Ar2,AR4,Ar7は、少なくとも一つの前記第1領域Ar1,AR3,Ar6の周囲を囲むように配置されているように構成することができる。その結果、マイクロニードルアレイを有する製品100,100A,100Cは、例えば皮膚にマイクロニードル全体が接触しなかったときに、一方の領域のマイクロニードルだけが使われるという不具合を防止することができる。
【0062】
(11−10)
上述の
図17(a)及び
図17(b)を用いて変形例1Cとして説明したように、マイクロニードルアレイを有する製品100Eは、固定部109fと複数のマイクロニードル103fとを備えている。固定部109fの表面102fは、凹面鏡のように湾曲した立体的な形状である。そのため、複数のマイクロニードル103fも固定部109fの表面102f上に凹面鏡のように湾曲した立体形状に沿って立体的に配置されている。しかも、複数のマイクロニードル103fは、互いに平行に形成されているので、押し付ける方向に全てのマイクロニードル103fが延びて刺さり易くなる。また、例えば耳のように複雑な立体形状をした比較的小さな箇所にも取り付け易くなる。
【0063】
<第4実施形態>
(12)破断性の優れたマイクロニードルパッチの作成のための中間層の作製法
マイクロニードルでは薬剤を含む頂部と薬剤を含まない底部層とに大きく分かれているが、本発明ではその作製に当たり、はじめに頂部を作製し、乾燥工程が終了した後、直ちに底部層を作製する原材料を噴霧するのでは無く、他の2層作成用の原材料より明確に強度が異なり、破断性の高い、原材料を用いて薄層(中間層)を作成する事でマイクロニードルの破損する部分をこの脆弱な境界部に限定させることが可能とするマイクロニードル作成法を考案した。つまり薬剤含有部である頂部の底部層端側の所に、この中間層を作成する事で薬剤を含有した頂部の基底側断端で破断し、目的の真皮内に留置して当該薬剤の全量投与が可能となる。この際、この中間部を作製するための原材料の乾燥後の強度は他の2部分(頂部と底部層)と比較して、明らかに異なるように設定する。ただし、薬剤を含む頂部が2層以上の場合は破断して皮膚の表皮・真皮の中に留置する部分と底部層の間に当該中間部を設定する。同様にさらに多層の薬剤を含有する頂部の層をもつマイクロニードルでも破断して皮膚の中に留置する部分と底部層の間に中間部を形成する。ただし、マイクロニードル含有する薬剤の性質や投与目的でこの中間層の位置は前項の位置に限らない。
【0064】
(13)二層性の中間層の作製
前項で作製する中間層は1層から成り、強度が多部位と明らかに異なっていて確実な破断を惹起する目的で限局されたもので有った。それに対して薬剤を含有した頂部を作製し、乾燥硬化した後に作製する中間層(第1中間層)を作製、乾燥硬化の後に同様な操作を繰り返して別途、中間層(第2中間層)形成して作製、乾燥硬化させる。それぞれの中間層の厚さの比率は1:1で良いが後述の厚さにとどまる場合にそれぞれの比率はどのように設定しても良い。
【0065】
(14)中間層の厚さ
前項の中間層の厚さは1層から成る場合は5-50μm、好ましくは10-30μm、さらに好ましくは15-20μmであるマイクロニードルの中間層で良い。第2中間層を有する場合は概略その2倍の厚さとして良い。つまり、2層の中間層を有する場合、全体で10-100μm、好ましくは20-60μm、さらに好ましくは30-40μmであるマイクロニードルの中間層で良い。生物活性材料(薬剤)を含む層を作製し、乾燥させた後に、当該中間層を前記原材料を表面が平面となるように調整して形成後に乾燥し、引き続いて基底層を作製する。本工程でマイクロニードルをその部位で確実に破損し、短時間にかつ確実に留置可能な性能を内蔵するとともに真皮内に第1中間層を作製する原材料の溶解速度が頂部より遅い原材料を選択する事で、頂部より放出された薬剤の穿通孔からの逆流を防止する機能を有したマイクロニードルを作成する事ができる。
【0066】
(15)マイクロニードルの強度設定
本発明によるマイクロニードルの各部分の強度について1種類の薬剤を含有し、薬剤を含まない底部層を持つマイクロニードルを例にそのそれぞれの層の強度設定について説明する。本発明で作製したマイクロニードルの強度が高い順番は底部層、引き続いて薬剤を含んだ頂部、そして最も強度が低い層を中間層とする。ただし、薬剤含有部である頂部が2層以上の場合は破断して皮膚の中に留置する部分と底部層の間に中間部を設定し、その強度は同様に底部層、引き続いて薬剤を含んだ頂部、そして最も強度が低い層を中間層とする。この目的を達成するためには、それぞれの層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は頂部を最も高くし、引き続いて底部層、中間部はさらに低く設定可能である。ただし。重量分子量は各層とも前記強度条件を満たせば同等であっても、逆であっても良い。さらに中間層の硬度、平均重量分子量が最も高くても良い。2層から成る中間層を作製する場合には、第1中間層は硬度が高く、吸収性が低い高分子材料を濃度を高くして原材料に選択して形成、第2中間層は強度が第1中間層、底部層の両者よりも明らかに低く、吸収性が高く、且つ高分子材料を濃度を低く設定した原材料に選択して形成する。ただし、それぞれの中間層の強度等の設定は使用する薬剤などの違いにより、この順番に限定されないし、一方のみを形成しても良い。また、この工程をさらに効率よく実現するために、さらに多層性の中間層を形成しても良いし、それらのいずれかに薬剤を含有しても良いし、しなくてもかまわない。また、薬剤含有部である頂部作製直後に本中間層を作製せずに底部層作成用原材料を一部吐出し、硬化させた後に中間層を作製、引き続き残りの底部層原材料を吐出して底部層全体の形成を終了しても良い。このようにして作製したマイクロニードルの中間層は頂部と低層部の接合面に存在するのでは無く、底部層内に形成されることとなる。この際、添加する薬剤の種類は問わない。この場合、本発明のマイクロニードルマイクロニードルアレイ製造装置により作成されるマイクロニードルを構成するために最適化された生体吸収製剤の混合比、濃度を適宜変更した原材料を吐出可能な前記液滴吐出装置を複数有することが必須である。
【0067】
(16)接触面を持つ基板と一体化した基底層の作製
インクジェット法でマイクロニードルアレイを作製する場合、底部層の一部あるいは全部を作製する際に基板に付着する接着面・平面と一体化して作成する事で、打ち込みによるマイクロニードルの倒壊が防止されるとともに底部層から薬剤を含有した頂部の破断がその部位で容易確実な物と出来るマイクロニードルアレイの作成法。この場合、底部層の頂部との接着面は平面で良いが、必ずしも平面に限定されない。この場合にも前項の中間層を前記原材料を噴霧して形成した後に、底部層を作成する事でマイクロニードルをその部位でより確実に破損し、留置可能な性能を内蔵したマイクロニードルとすることが可能である。本法の場合にも中間層は前項で示したように2層性、あるいはさらに多層性であって良い。
【0068】
(17)治療時間の短縮の中間層の意義
中間層を持たない従来法で作製したマイクロニードルパッチの治療では確実な薬剤投与を行うために薬剤含有部である頂部の原材料の溶解時間に従い、最短でも10-30分、最長1-2時間マイクロニードルパッチを投与部位に固定して薬剤含有部が溶解して薬剤の投薬が終了するまでマイクロニードルを固定する必要が有った。それに対して、破断性に優れた中間層を持つマイクロニードルパッチでは挿入とほぼ同時に薬剤を含有した頂部が中間部で瞬間的に真皮内で破断され、留置されるので、薬剤含有部である頂部の高分子原材料の溶解時間に関わらず、頂部が破断された直後に底部層を除去してかまわないため、5-20秒程度で一連のマイクロニードルパッチによる投薬が終了する。
【0069】
(18)真皮内で溶解し、放出された薬剤のマイクロニードルを刺入した穿通孔からの逆流防止
前項発明で作製したマイクロニードルを皮膚に穿刺し、薬剤を含有した頂部を真皮内の目的とする部位に到達させて、形成された高分子化合物が自己融解することで含有された薬剤が真皮内に放出される。その場合、強度が弱く吸収性の高い中間層が薬剤を含有した頂部の基底側に存在することで穿通孔からの逆流は一定程度防止される。この場合にさらに前項の第1中間層を作製すれば、本第1中間層は硬度が高く、吸収性が低い高分子材料を濃度を高くして原材料に選択して形成されているので、頂部を構成する高分子化合物が溶解して薬剤が放出された後も一定期間、穿通孔を完全に閉鎖して逆流を防止する効果がある。この密封期間は形成するのに用いる高分子材料の溶解性を制御することで望む期間に自由に設定可能である。本層の溶解時間は10分から24時間、好ましくは15分から6時間、さらに好ましくは30分から3時間である。この事で頂部に含有させ、投与した薬剤の全量が確実に真皮内の目的とした部位で溶解放出されることを担保できるのであれば、この時間に限定されない。
【0070】
(19)図面を用いる発明の説明
(19−1)マイクロニードルパッチの製造方法
図19から
図22を用いて、後述する頂部層104(上述の薬剤含有部である頂部に対応する)と中間層106(上述の破断性の高い薄層に対応する)と底部層105(上述の底部層に対応する)を持つ複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルパッチの製造方法を説明する。
図19には、型80の凹部81の頂部層形成部位86に、薬剤を含む頂部層用原料液91(第1原料液)を充填するための液滴91a,91bが、上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて吐出されている状態が示されている。
中心部CPから
図19に破線で示されている高さまでの頂部層形成部位86に頂部層用原料液91(第1原料液)が充填された後、頂部層用原料液91(第1原料液)が乾燥されて硬化される。なお、乾燥されて硬化される場合は固化と同様の意味で用いている。
図20には、硬化された頂部層104の上に、中間層用原料液94(第2原料液)を充填するための液滴94a,94bが、上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて吐出されている状態が示されている。
図21には、中間層用原料液94(第2原料液)が乾燥して硬化され、中間層106が頂部層104の上に接して形成されている状態が示されている。中間層106を形成する際は、中間層用原料液94(第2原料液)が少し長めに乾燥される。
図22には、中間層106の上に底部層105が中間層106に接して形成された状態が示されている。底部層105は、底部層用原料液92(第3原料液)をマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて充填して形成される。中間層106の反対側にある底部層105の上面は、
図23に示されている支持部材120を接着するための接着面AFである。
【0071】
(19−2)マイクロニードルパッチの使用方法
図23から
図26を用いて、上述の頂部層104と中間層106と底部層105を持つ複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルパッチの使用方法を説明する。
図23には、表皮300を貫通して真皮310まで刺入されたマイクロニードル103gが示されている。このマイクロニードル103gは、上述の
図19から
図22までを用いて説明した頂部層104と中間層106と底部層105を備えている。また、複数のマイクロニードル103gと支持部材120を備えるマイクロニードルパッチ100Fは、マイクロニードルアレイを有する製品である。
図23に示されているように、ベース部材101の表面102が表皮300に接触している状態で、底部層105が表皮300を貫通して、中間層106及び頂部層104が真皮310に達している。
図23において、矢印K1は、マイクロニードル103gの刺入方向を示している。また、矢印K2は、マイクロニードル103gの破断箇所を示している。
図24には、真皮310まで刺入されたマイクロニードル103gの中間層106が破断されている状態が示されている。
図24において、矢印K3は、マイクロニードルパッチ100Fを皮膚から引き抜く方向を示している。マイクロニードルパッチ100Fを引き剥がすことで、マイクロニードル103gの中で破断強度が最も弱い中間層106が破断し、頂部層104が真皮310の中に留置される。
図25には、薬剤を含有する薬剤含有部である頂部層104の溶解と薬剤の放出が示されている。マイクロニードルパッチ100Fを皮膚から引き抜いた後には、
図25に示されているように、表皮300には極めて小さな刺入孔320が形成される。
図25において、矢印K4は頂部層104に含有されていた薬剤の放出を表している。
図26には、中間層106が頂部層104から遅れて溶解する状態が示されている。
図26の矢印K5は、中間層106の溶解を表している。また、
図26の破線で囲まれた範囲は、頂部層104が溶解したものが拡散する範囲を表している。
【0072】
(19−3)マイクロニードルパッチの他の製造方法
図27から
図30を用いて、後述する頂部層104(上述の薬剤含有部である頂部に対応する)と第1中間層1061と第2中間層1062と底部層105(上述の底部層に対応する)を持つ複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルパッチの製造方法を説明する。
図27には、型80の凹部81の頂部層形成部位86に、薬剤を含む頂部層用原料液91(第1原料液)を充填するための液滴91a,91bが、上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて吐出されている状態が示されている。
中心部CPから
図27に破線で示されている高さまでの頂部層形成部位86に頂部層用原料液91(第1原料液)が充填された後、頂部層用原料液91(第1原料液)が乾燥されて硬化される。
図28には、硬化された頂部層104の上に、第1の中間層用原料液941(第2原料液)を充填するための液滴94c,94dが、上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて吐出されている状態が示されている。
図29には、第1の中間層用原料液941(第2原料液)が乾燥して硬化され、第1中間層1061が頂部層104の上に接して形成されている状態が示されている。また、
図29には、第1中間層1061の上に、第2の中間層用原料液942を充填するための液滴94e,94fが、上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて吐出されている状態が示されている。第2中間層1062を形成する際は、第2の中間層用原料液942(第3原料液)が少し長めに乾燥される。
図30には、第2中間層1062の上に底部層105が第2中間層1062に接して形成された状態が示されている。底部層105は、底部層用原料液92(第4原料液)をマイクロニードルアレイ製造装置1,1Bを用いて充填して形成される。第2中間層1062の反対側にある底部層105の上面は、
図31に示されている支持部材120を接着するための接着面AFである。
【0073】
(19−4)マイクロニードルパッチの他の使用方法
図31から
図34を用いて、上述の頂部層104と第1中間層1061と第2中間層1062と底部層105を持つ複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルパッチの使用方法を説明する。
図31には、表皮300を貫通して真皮310まで刺入されたマイクロニードル103hが示されている。このマイクロニードル103hは、上述の
図27から
図30までを用いて説明した頂部層104と第1中間層1061と第2中間層1062と底部層105を備えている。また、複数のマイクロニードル103hと支持部材120を備えるマイクロニードルパッチ100Gは、マイクロニードルアレイを有する製品である。
図31に示されているように、ベース部材101の表面102が表皮300に接触している状態で、底部層105が表皮300を貫通して、第1中間層1061、第2中間層1062及び頂部層104が真皮310に達している。
図31において、矢印K1は、マイクロニードル103hの刺入方向を示している。また、矢印K2は、マイクロニードル103hの破断箇所を示している。
図32には、真皮310まで刺入されたマイクロニードル103hの第2中間層1062が破断されている状態が示されている。
図32において、矢印K3は、マイクロニードルパッチ100Gのを皮膚から引き抜く方向を示している。マイクロニードルパッチ100Gを引き剥がすことで、マイクロニードル103hの中で破断強度が最も弱い第2中間層1062が破断し、頂部層104が真皮310の中に留置される。
図33には、薬剤を含有する薬剤含有部である頂部層104の溶解と薬剤の放出が示されている。マイクロニードルパッチ100Gを皮膚から引き抜いた後には、
図33に示されているように、表皮300には極めて小さな刺入孔320が形成される。
図33において、矢印K4は頂部層104に含有されていた薬剤の放出を表している。
図34には、中間層106が頂部層104から遅れて溶解する状態が示されている。
図34の矢印K5は、第1中間層1061の溶解を表している。また、
図34の破線で囲まれた範囲は、頂部層104が溶解したものが拡散する範囲を表している。
【0074】
(20)備考
(20−1)発明の前提技術
(前提技術の名称)
マイクロニードルアレイ製造装置及びマイクロニードルアレイの製造方法並びにマイクロニードルアレイを有する製品
(技術分野)
本前提技術は、複数のマイクロニードルからなるマイクロニードルアレイを製造するためのマイクロニードルアレイ製造装置及びマイクロニードルアレイの製造方法並びにマイクロニードルアレイを有する製品に関する。
【0075】
(前提技術が解決した課題)
特許文献1に記載されている型の一種であるスタンパ200とスキージ210を使って
図18(a)、
図18(b)、
図18(c)、
図18(d)及び
図18(e)の順にニードル原料の充填と乾燥を交互に繰り返す方法では、各凹部201,202,203,204に充填されるマイクロニードル原料291,292,293の充填量の誤差が大きくなる傾向がある。例えば、マイクロニードル221,222,223,224の上層231,232,233,234の層厚みLh1,Lh2,Lh3,Lh4に差が生じてしまう。これらの層厚みの差は組成物の分布の精度の悪化をもたらすものであり、4つのマイクロニードル221,222,223,224の間で薬剤の量が異なったり、全体としての薬剤の量に大きな誤差が生じたりする不具合が生じる。特に本発明の中間層のような均一で薄い平面の層を作製する事は上述のマイクロニードルアレイ製造装置1,1Aで最適に行えるようになったもので有り、本発明のマイクロニードル作製装置で実用性の高いものが提供できる。
前提技術の課題は、マイクロニードルアレイの組成物の分布を精度良く調整することができるマイクロニードルアレイ製造装置及びマイクロニードルアレイの製造方法を提供することであり、組成物の分布が精度良く調整されたマイクロニードルアレイを有する製品を提供することである。
【0076】
(他の表現を用いて説明した課題を解決するための手段)
第1観点に係るマイクロニードルパッチは、ベース部材と前記ベース部材に支持された複数のマイクロニードルとを備え、各々の前記マイクロニードルは、真皮内に入れられるべき生物活性物質を含む頂部層と、前記頂部層と前記ベース部材との間に設けられ、前記頂部層の組成よりも破断強度が弱い組成を持ち、厚さが5μm以上100μm以下の中間層とを備える。
第2観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点に係るマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層の厚さは、10μm以上30μm以下である。
第3観点に係るマイクロニードルパッチは、第2観点に係るマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層の厚さは、15μm以上20μm以下である。
第4観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第3観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層は、真皮内で前記頂部層よりも遅れて溶解する材料で構成されている、ものである。
第5観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第4観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層は、真皮内で20秒以内に破断するように調整されたものである。
第6観点に係るマイクロニードルパッチは、第5観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層は、真皮内で5秒以内に破断するように調整されたものである。
第7観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第6観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層と前記ベース部材とを接合する底部層をさらに備え、前記中間層は、前記頂部層よりも破断強度が弱く、前記頂部層は前記底部層よりも破断強度が弱い、ものである。
第8観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第6観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層と前記ベース部材とを接合する底部層をさらに備え、前記中間層は、前記底部層よりも重量平均分子量が低く、前記底部層は前記頂部層よりも重量平均分子量が低い、ものである。
第9観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第8観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層は、水分の吸収性が前記頂部層よりも低い高分子材料を主材として形成された第1中間層を含み、真皮内での溶解が前記頂部層よりも遅くなるように調整されているものである。ここで、主材とは、全体の50%を超える含有率を持つ材料である。
第10観点に係るマイクロニードルパッチは、第9観点に係るマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層は、水分の吸収性が前記頂部層よりも高い高分子材料を主材として形成された第2中間層を含み、真皮内での溶解が前記頂部層よりも速くなるように調整されているものである。ここで、主材とは、全体の50%を超える含有率を持つ材料である
第11観点に係るマイクロニードルパッチは、ベース部材と前記ベース部材に支持された複数のマイクロニードルとを備え、各々の前記マイクロニードルは、真皮内に入れられるべき生物活性物質を含む頂部層と、前記頂部層と前記ベース部材との間に設けられた中間層とを備え、前記中間層は、水分の吸収性が前記頂部層よりも高い高分子材料を主材として形成され、真皮内で前記中間層が20秒以内に破断するように調整されたものである。
第12観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第11観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記生物活性物質が薬剤である、ものである。
第13観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第12観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層と前記ベース部材とを接合する底部層をさらに備え、前記中間層が前記底部層の内部に存在する、ものである。
第14観点に係るマイクロニードルパッチは、第1観点から第13観点のいずれかのマイクロニードルパッチにおいて、前記中間層と前記ベース部材とを接合する底部層をさらに備え、前記底部層の厚さが表皮よりも厚いものであり、前記ベース部材の表面が表皮に接触しているときに前記中間層が真皮に到達している、ものである。
第1観点から第14観点に係るマイクロニードルパッチでは、マイクロニードルを皮膚や粘膜に投与した際に短時間で確実に、生物活性物質を粘膜、表皮あるいは真皮内に留置することができる。その結果、マイクロニードルを皮膚や粘膜に投与した際に短時間で確実に治療が終了するという効果が得られる。