(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の全周に細溝を形成した軸受では、摺動面積減少により、負荷容量が低下し、良好な潤滑に必要な油膜厚さを確保することができず、且つ、総和の流出油量が多かった。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、フリクション低減効果を得ることができ、総和の流出油量を抑えることができる軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受であって、前記すべり軸受によって保持する軸の回転方向における上側の前記半割部材の下手側の端面と、下側の前記半割部材の前記軸の回転方向における上手側の端面との合わせ面の位置を0°と規定し、該0°の位置から前記軸の回転方向に対する反対方向への回転角度として軸受角度を規定する場合において、下側の前記半割部材に
、前記軸受角度が180°の位置から、前記軸受角度が180°より大きく270°以下の位置までの範囲
のみにおいて、円周方向を長手方向とし、軸方向に並列する2本の細溝を設け、前記細溝の軸方向端面側の周縁部に、前記細溝の底部よりも前記半割部材の半径方向内側へ突出するとともに、前記半割部材の内周面よりも半径方向外側へ凹んだ段差部を設け、前記段差部の軸方向の幅の和が、0mmより大きく前記半割部材の軸方向の幅から細溝の軸方向の幅の和を減算した長さ以下となるように形成したものである。
【0008】
請求項2においては、前記段差部の軸方向の幅の和の、前記半割部材の軸方向の幅に対する割合は、0%より大きく70%以下となるように形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
すなわち、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。
また、前記細溝の周縁部に段差部を設けることで、効果的にフリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、
図1はすべり軸受1の正面図であり、画面の上下を上下方向、画面の手前方向及び奥方向を前後方向とする。
【0013】
まず、第一の実施形態に係るすべり軸受1を構成する半割部材2について
図1及び
図2を用いて説明する。
すべり軸受1は円筒状の部材であり、
図1に示すように、エンジンのクランクシャフト11のすべり軸受構造に適用される。すべり軸受1は、二つの半割部材2で構成されている。二つの半割部材2は、円筒を軸方向と平行に二分割した形状であり、断面が半円状となるように形成されている。本実施形態においては、半割部材2は上下に配置されており、左右に合わせ面が配置されている。クランクシャフト11をすべり軸受1で軸支する場合、所定の隙間が形成され、この隙間に対し図示せぬ油路から潤滑油が供給される。ここで、すべり軸受1を形成する円筒の中心軸方向を軸方向(前後方向)と定義する。また、すべり軸受1を形成する円筒の底面の円周に沿う方向を円周方向と定義する。また、すべり軸受1を形成する円筒の中心軸及び側面と直交する方向、すなわち、側面壁の厚さ方向を半径方向と定義する。
【0014】
図2においては、上側および下側の半割部材2を示している。なお、本実施形態においては、クランクシャフト11の回転方向を
図1の矢印に示すように正面視時計回り方向とする。また、軸受角度ωは、
図1における右端の位置を0度とし、
図1において、反時計回り方向を正とする。すなわち、
図1において、左端の位置の軸受角度ωが180度となり、下端の位置の軸受角度ωが270度となるように定義する。
【0015】
図2(c)に示すように、半割部材2の軸方向の幅はW1である。また半割部材2の軸受厚さ(半径方向の長さ)はH1である。
【0016】
上側の半割部材2の内周には円周方向に溝が設けられており、中心に円形の孔が設けられている。また、上側の半割部材2の左右に合わせ面が配置されている。
下側の半割部材2の内周の摺動面において、その軸方向の両端面よりも内側に細溝3が形成されている。
【0017】
細溝3は下側の半割部材2に設けられる。本実施形態においては、細溝3は、軸方向に並列して二本設けられている。細溝3の回転方向下流側端部3aは、半割部材2の回転方向下流側合わせ面2aに連通するように設けられている。
詳細には、細溝3の回転方向下流側端部3aが、半割部材2の回転方向下流側合わせ面2aに配置されている。
下側の半割部材2においては、
図1の左側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面2a、
図1の右側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面2bとなる。
【0018】
また、細溝3の軸方向端面側の周縁部に、半割部材2の内周面よりも半径方向外側へ凹んだ段差部4が設けられている。本実施形態においては、段差部4は、軸方向後側の細溝3の後側の周縁部及び軸方向前側の細溝3の前側の周縁部に二つ設けられており、その長手方向が細溝3の長手方向と平行になるように設けられている。段差部4の回転方向下流側端部4aは回転方向下流側合わせ面2aに連通するように設けられている。また、回転方向上流側端部4bは細溝3の回転方向上流側端部3bと円周方向において同じ位置まで設けられている。言い換えれば、段差部4の円周方向の長さは、細溝3の円周方向の長さlと同じ長さとなるように設けられている。
【0019】
次に、細溝3の詳細な構成について
図2を用いて説明する。
【0020】
細溝3の円周方向の長さlは、回転方向下流側端部3a(軸受角度が180度)から回転方向上流側端部3b(軸受角度がω1)までの長さに形成したものである。なお、軸受角度ω1は、180度よりも大きく270度以下である。より詳細には、軸受角度ω1は、通常225度よりも大きく270度以下である領域に存在する。
【0021】
細溝3の半径方向の深さH2は、
図2(c)に示すように、軸受厚さH1よりも短くなるように形成されている。
二本の細溝3の軸方向の幅W2の和は、
図2(c)に示すように、半割部材2の軸方向の幅W1よりも短くなるように構成されている。
【0022】
次に、段差部4の詳細な構成について
図2を用いて説明する。
【0023】
段差部4の円周方向の長さは、
図2(b)に示すように、細溝3の円周方向の長さlと同じ長さとなるように設けられている。
段差部4の内周面4cから細溝3の底面3cまでの半径方向の長さH3は、
図2(c)に示すように、細溝3の半径方向の深さH2以下となるように形成されている。
段差部4の軸方向の幅W3の和は、0mm以上であって半割部材2の軸方向の幅W1から細溝3の軸方向の幅W2の和を減算した長さ以下となるように構成されている。本実施形態においては、段差部4の軸方向の幅W3の和は、半割部材2の軸方向の幅W1から細溝3の軸方向の幅W2の和を減算した長さよりも短くなるように形成されている。
このように構成することにより、フリクション低減効果及び漏れ油量低減効果を得ることができる。
【0024】
また、段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合は、0%以上であって70%以下となるように形成したものである。本実施形態においては、段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合は、略40%となるように形成したものである。
【0025】
このように構成することにより、フリクション低減効果及び漏れ油量低減効果を効果的に得ることができる。例えば、
図3に示すように、段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合が0%から増加するにつれて、フリクション低減効果、漏れ油量低減効果が大きくなる。段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合が70%を超えると、漏れ油量はほぼ一定となる。
【0026】
次に、第二の実施形態に係る半割部材2について説明する。なお、第一の実施形態と同一の名称の部材については同一の符号を付している。
図4(a)から(c)には、第二の実施形態である半割部材2が示されている。本実施形態においては、段差部が設けられず、細溝3の軸方向端面側の側面が軸方向端面と連通している。
すなわち、本実施形態においては、段差部の軸方向の長さは0mmとなり、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合は0%となる。
このような構成においても、フリクション低減効果及び漏れ油量低減効果を効果的に得ることができる。
【0027】
次に、第三の実施形態に係る半割部材2について説明する。なお、第一の実施形態と同一の名称の部材については同一の符号を付している。
図5(a)から(c)には、第三の実施形態である半割部材2が示されている。本実施形態においては、細溝3が一つ設けられており、その軸方向両側の周縁部に段差部4が設けられている。
【0028】
次に、細溝3の詳細な構成について
図5を用いて説明する。
【0029】
細溝3の円周方向の長さlは、回転方向下流側端部3a(軸受角度が180度)から回転方向上流側端部3b(軸受角度がω1)までの長さに形成したものである。なお、軸受角度ω1は、180度よりも大きく270度以下である。より詳細には、軸受角度ω1は、通常225度よりも大きく270度以下である領域に存在する。
【0030】
細溝3の半径方向の深さH2は、
図5(c)に示すように、軸受厚さH1よりも短くなるように形成されている。
細溝3の軸方向の幅W2は、
図5(c)に示すように、半割部材2の軸方向の幅W1よりも短くなるように構成されている。
【0031】
次に、段差部4の詳細な構成について
図5を用いて説明する。
【0032】
段差部4の円周方向の長さは、
図5(a)に示すように、細溝3の円周方向の長さlと同じ長さとなるように設けられている。
段差部4の内周面4cから細溝3の底面3cまでの半径方向の長さH3は、細溝3の半径方向の深さH2以下となるように形成されている。
本実施形態においては、段差部4の軸方向の幅W3の和は、半割部材2の軸方向の幅W1から細溝3の軸方向の幅W2を減算した長さである。
また、本実施形態においては、段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合は、略70%となるように形成したものである。
このように構成することにより、フリクション低減効果及び漏れ油量低減効果を得ることができる。
【0033】
なお、第一から第三の実施形態に係るすべり軸受においては、細溝を二本または一本で構成しているがこれに限定するものではなく、三本以上で構成することも可能である。
【0034】
以上のように、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材2を上下に配置したすべり軸受1であって、下側の半割部材2に、円周方向を長手方向とする細溝3を設け、細溝3の軸方向端面側の周縁部に、半割部材2の内周面よりも半径方向外側へ凹んだ段差部4を設け、段差部4の軸方向の幅W3の和が、0mm以上であって半割部材2の軸方向の幅W1から細溝3の軸方向の幅W2の和を減算した長さ以下となるように形成したものである。
このように構成することにより、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝3を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。また、細溝3の周縁部に段差部4を設けることで、油の吸い戻し量を多くするように調節することができる。
【0035】
また、段差部4の軸方向の幅W3の和の、半割部材2の軸方向の幅W1に対する割合は、0%以上であって70%以下となるように形成したものである。
このように構成することにより、漏れ油量低減効果及びフリクション低減効果をより効果的に得ることができる。