特許第6541159号(P6541159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541159酵素法を使用することによりレバウディオサイドMを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541159
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】酵素法を使用することによりレバウディオサイドMを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20190628BHJP
   C12P 19/56 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C12N15/54ZNA
   C12P19/56
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-549081(P2016-549081)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公表番号】特表2017-504341(P2017-504341A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】CN2014071715
(87)【国際公開番号】WO2015113231
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593203701
【氏名又は名称】ペプシコ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】タオ,ジュンホア
(72)【発明者】
【氏名】リー,グオチン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シアオリアン
(72)【発明者】
【氏名】リー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イェップ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,マオチー
(72)【発明者】
【氏名】タオ,アンドリュー
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103397064(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/022989(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/103074(WO,A1)
【文献】 特表2010−538621(JP,A)
【文献】 J. Microbiol. Biotechnol., 2009, vol.19, no.7, 709-712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq/UniProt
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
98%超の純度を有するレバウディオサイドMを調製する方法であって、
(i)組換え細胞の存在下で、反応溶液中のレバウディオサイドDをグルコシルドナーと反応させる工程であって、前記反応溶液は、20〜60℃の温度及びpH5.0〜9.0で、可溶化剤を含む水相系であり、前記組換え細胞の各々が、
a)配列番号2アミノ酸配列を有するUDP−グルコシルトランスフェラーゼをコードする外因性ポリヌクレオチド;及び
b)スクロースシンテターゼをコードする外因性ポリヌクレオチド
を含む、工程;
(ii)粗レバウディオサイドMを単離する工程;及び
(iii)前記粗レバウディオサイドMを結晶化して98%超の純度を有するレバウディオサイドMを得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記レバウディオシドDが、前記組換え細胞の存在下で、反応溶液中のレバウディオシドAをグルコシルドナーと反応させることによりその場で調製され、前記組換え細胞の各々が、配列番号4アミノ酸配列を有するUDP−グルコシルトランスフェラーゼをコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記グルコシルドナーが、スクロースシンテターゼの存在下でUDP及びスクロースからその場で生成されるUDP−グルコースである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記組換え細胞が、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びピチア・パストリス(Pichia pastoris)から成る群より選択される微生物細胞である、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記反応溶液が、35℃〜45℃の温度及び6.5〜8.5のpHで、リン酸緩衝液を含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記反応溶液が、1〜3体積%の濃度でトルエン又は他の細胞浸透剤を更に含有する、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記反応溶液中のレバウディオサイドDが2g/Lの濃度を有する、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応溶液が、前記可溶化剤として3〜5体積%の濃度でジメチルスルホキシドを含有する、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバウディオサイドMを調製する方法に関し、具体的には、レバウディオサイドMを調製するための生物学的方法に関する。
【技術背景】
【0002】
糖代替物は、ヒトの健康への様々な影響により4つのクラスに分けることができる。第1のクラスには、カロリー及び炭水化物含量の点で糖と類似している天然甘味料、例えば、果汁、蜂蜜、及びメープルシロップが含まれる。第2のクラスには、カロリーを提供せず、それ故に非栄養甘味料と見なされる人工甘味料、例えば、アスパルテーム及びサッカリンが含まれる。第3のクラスには、主に植物及び果実由来の糖アルコール、例えば、キシリトール及びソルビトールが含まれる。第4のクラスには、天然植物から抽出された甘味物質、例えば、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)から抽出されたステビオサイドが含まれる。人工甘味料、糖アルコール、及び抽出甘味料は全て、糖より何倍〜何百倍も甘いため、同じレベルの甘味を生成するのに必要な添加量は、スクロースよりも著しく低い。
【0003】
ステビア・レバウディアナは、重要な経済価値を有する作物であり、その葉に非常に高い含量のステビオサイドを含む。現在のところ、ステビア・レバウディアナにおいて100個を超える化合物が特定されており、最もよく知られている1つがステビオサイド、具体的には、ステビオールグリコシド及びレバウディオサイドAである(非特許文献1)。近年、新規のステビオサイドが、ステビア・レバウディアナハイブリッド植物で発見されている(非特許文献2)。
【0004】
特許文献1は、レバウディオサイドMを調製するための生物学的方法を開示しており、ここで、レバウディオサイドA又はレバウディオサイドDが基質として使用され、グルコシルドナーの存在下で、レバウディオサイドMが、UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及び/又はUDP−グルコシルトランスフェラーゼを含有する組み換え細胞の触媒作用下での基質の反応により生成される。しかしながら、当該特許のプロセスは、十分に最適化されておらず、変換率は最大でもわずか約80%であり、純度はわずか95%であり、基質濃度はより低く、生産コストはより高い。したがって、このプロセスは工業化生産には好適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願第201310353500.9号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.,2012,60,886〜895
【非特許文献2】Morita(2010,J.Appl.Glycosci.,57,199〜209)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において解決されるべき技術的問題は、先行技術の欠点を克服するために、酵素法によりレバウディオサイドMを調製する方法を提供することである。この方法は、より低いコストで、より純度の高いレバウディオサイドM生成物を生成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決策を用いる。
【0009】
酵素法を使用することによりレバウディオサイドMを調製する方法であって、レバウディオサイドA又はレバウディオサイドDが基質として使用され、スクロース及びUDPの存在下で、レバウディオサイドMが、UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼの混合物、又はUDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼを含有する組み換え細胞の触媒作用下での基質の反応により生成される、方法。この反応は、水相系で20〜60℃の温度及びpH5.0〜9.0で行われる。この反応系は、基質の可溶化を促進するために、体積比で3%〜5%の濃度のジメチルスルホキシドを更に含有する。初期反応系で、レバウディオサイドAは10g/L以上の濃度を有し、レバウディオサイドDは15g/L以上の濃度を有する。反応後、反応溶液が遠心分離され、次いで上清が取られ、マクロ多孔性吸着性樹脂で分離されて、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液が得られ、これがエタノール水溶液中で結晶化されて、レバウディオサイドM生成物が98%を超える純度で得られる。
【0010】
このましくは、UDP−グルコシルトランスフェラーゼは、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及び/又はイネ(Oryza sativa)由来のUGT−Bである。
【0011】
好ましくは、反応は、水相系で35℃〜45℃の温度及びpH6.5〜8.5で行われる。
【0012】
好ましくは、UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼを含有する組み換え細胞が、触媒作用を行うために使用され、初期反応系は、体積比で1%〜3%の濃度のトルエンを更に含有する。
【0013】
好ましくは、UDP−グルコシルトランスフェラーゼとスクロースシンテターゼの重量比は、1:0.2〜0.4である。
【0014】
好ましくは、本方法は、本反応で用いられる全ての原材料が反応ケトルに添加され、水相系で最終体積にされ、均一に混合され、次いで設定温度で定置され、撹拌されて反応する、というように実施される。
【0015】
好ましくは、組み換え細胞は、微生物細胞である。
【0016】
より好ましくは、微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、又はピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0017】
好ましくは、基質はレバウディオサイドAであり、UDP−グルコシルトランスフェラーゼはステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及びイネ由来のUGT−Bの混合物であり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列は配列番号2と少なくとも80%一致し、イネ由来のUGT−Bのアミノ酸配列は配列番号4と少なくとも80%一致する。より好ましくは、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及びイネ由来のUGT−Bの混合物中で、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aとイネ由来のUGT−Bの重量比は、3〜5:1である。
【0018】
好ましくは、基質はレバウディオサイドであり、UDP−グルコシルトランスフェラーゼはステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列は配列番号2と少なくとも80%一致する。
【0019】
好ましくは、反応溶液は、反応後かつ遠心分離前に、最初に50〜60℃で加熱され、超音波処理に50〜70分間供される。
【0020】
好ましくは、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液は、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液が減圧下での蒸留により濃縮され、次いで遠心分離され、上清が捨てられる工程、沈殿物が追加の水で洗浄され、次いで遠心分離され、上清が捨てられる工程、沈殿物が体積比で40%〜70%の濃度のエタノール水溶液で懸濁され、60〜70℃まで加熱されて可溶化され、エタノール水溶液が体積比で20〜30%の濃度を有するまで水がその中に添加される工程、混合物が室温まで徐々に冷却され、結晶化及び固体の沈殿に供され、続いて吸引濾過及び真空乾燥に供される工程のような特定の工程によりエタノール水溶液中で結晶化される。
【0021】
上記の技術的解決策の実施の結果として、本発明は、先行技術と比較して以下の利点を有する。
【0022】
本発明で提供される酵素法によるレバウディオサイドMを調製する方法は、重要な適用価値を有する。可溶化剤、反応温度、ならびにpHの最適化及び制御により、変換率及び純度が共に改善され、生産コストが低減される。したがって、この方法は、工業化生産に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例7で得られる生成物のプロトン磁気スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、レバウディオサイドA又はレバウディオサイドDを原材料とした、酵素法を使用することによりレバウディオサイドMを合成するためのプロセスを提供する。
【0025】
【化1】
【0026】
レバウディオサイドA、レバウディオサイドD、及びレバウディオサイドMは、それぞれ、4、5、及び6デキストロース単位のステビオサイドを含有し、構造式は、それぞれ、式I、II、及びIIIに示される。
【0027】
本発明は、レバウディオサイドMを合成するための2つの経路を提供する。
【0028】
【化2】
【0029】
本発明では、原材料は精製される。
【0030】
本発明の特定の一態様に従って、原材料は、ステビオールグリコシド基質レバウディオサイドAを含む。
【0031】
本発明の別の特定の態様に従って、原材料は、ステビオールグリコシド基質レバウディオサイドDを含む。
【0032】
本発明に従って、UDPグルコシルトランスフェラーゼは、精製されていても精製されていなくてもよい凍結乾燥酵素粉末の形態であってよく、又は組み換え細胞中に存在してもよい。
【0033】
UGT−A、UGT−B、及びAtSUS1(スクロースシンテターゼ)を含有する組み換え細胞は、以下の方法により得られる。
【0034】
UGT−A、UGT−B、及びAtSUS1の組み換え大腸菌(又は他の微生物細菌)発現株は、分子クローニング技術及び遺伝子工学技術を利用することにより得られる。次いで、組み換え大腸菌が発酵し、後処理及び組み換え細胞の回収に供される。
【0035】
本発明に記載の分子クローニング技術及び遺伝子工学技術は全て既知のものである。分子クローニング技術は、Molecular Cloing:A Laboratory Manual第3版(J.Shambrook、2005)で見ることができる。
【0036】
遺伝子工学技術を用いることによる本発明の組み換え株を構築するための発現工程は、以下のとおりである。
【0037】
(1)UGT−A及びAtSUS1の遺伝子断片を、それぞれ、pACYC−Duet−1の2つのマルチクローナルサイトMCS2(NdeI/XhoI)及びMCS1(BamHI/HindIII)にサブクローニングして、プラスミドpA−UGTA−SUS1を得る。
【0038】
(2)UGT−B遺伝子をpET30aのNdeI部位とBamHI部位との間の部位にサブクローニングして、組み換えプラスミドpE−UGIT−Bを得る。
【0039】
(3)PA−UGT−A−SLTS1及びpE−UGT−Bを大腸菌BL21(DE3)に連続して形質転換して、株GQ−ABSを得る。
【0040】
以下の工程により、UGTを含有する組み換え大腸菌発現株を利用することにより、UGTを含有する組み換え細胞、又は凍結乾燥UGT粉末を調製する。
【0041】
組み換え大腸菌発現株GQ−ABSを1%の割合に従って4mLの液体LB培地に接種し、37℃で振盪(200rpm)しながら一晩培養する。一晩培養した培養物を1%の接種サイズで50mLの液体LB培地に移す。培養培地を37℃で振盪(200rpm)しながら、OD600値が最大0.6〜0.8になるまで培養する。IPTGを0.4mMの最終濃度でその中に添加し、混合物を20℃で振盪しながら一晩培養する。誘導完了後、細胞を遠心分離(8,000rpm、10分間)により回収する。細胞を5mLの2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を使用して再懸濁して、組み換え細胞を得るか、又は更に氷浴中で超音波により破裂させて、破裂した液体を遠心分離し(8,000rpm、10分間)、上清を回収し、24時間凍結乾燥させることにより凍結乾燥粉末を得る。
【0042】
本発明は、特定の実施例と共により詳細に以下に記載される。
【実施例】
【0043】
実施例1:UGT−Aを含有する組み換え大腸菌細胞の調製
配列番号1及び配列番号2に従って、UGT−A遺伝子断片を遺伝子合成し、NdeI及びBamHI酵素切断部位を、それぞれ、両方の末端に付加し、pUC57ベクター(Suzhou Genewiz Biotech Co.,Ltd)をその中でライゲーションした。UGT遺伝子断片を、制限エンドヌクレアーゼNdeI及びBamHIでの酵素消化に供した。精製断片を回収した。T4リガーゼをその中に添加し、断片をpET30aの対応する酵素切断部位にライゲーションして、BL21(DE3)株を形質転換し、組み換え株GQ−Aを得た。
【0044】
UGT株を1%の割合に従って4mLの液体LB培地に接種し、37℃で振盪(200rpm)しながら一晩培養した。一晩培養した培養物を1%の接種サイズで50mLの液体LB培地に移した。培養培地を37℃で振盪(200rpm)しながら、OD600値が最大0.6〜0.8になるまで培養した。IPTGを0.4mMの最終濃度でその中に添加し、混合物を20℃で振盪しながら一晩培養した。誘導完了後、細胞を遠心分離(8,000rpm、10分間)により回収した。細胞を5mLの2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を使用して再懸濁して、触媒作用で使用するためにUGT−Aを含有する組み換え細胞を得た。
【0045】
実施例2:凍結乾燥UGT−A粉末の調製
実施例1で調製したUGT−Aの組み換え細胞を氷浴中で超音波により破裂させて、破裂した液体を遠心分離し(8,000rpm、10分間)、上清を回収し、24時間凍結乾燥させることによりUGT−Aの凍結乾燥粉末を得た。
【0046】
実施例3:UGT−Bを含有する組み換え大腸菌細胞の調製
配列番号3及び配列番号4に従って、UGT−B遺伝子断片を遺伝子合成し、NdeI及びBamHI酵素切断部位を、それぞれ、両方の末端に付加し、pUC57ベクター(Suzhou Genewiz Biotech Co.,Ltd)をその中でライゲーションした。UGT遺伝子断片を、制限エンドヌクレアーゼNdeI及びBamHIでの酵素消化に供した。精製断片を回収した。T4リガーゼをその中に添加し、断片をpET30aの対応する酵素切断部位にライゲーションして、BL21(DE3)株を形質転換し、組み換え株GQ−Bを得た。
【0047】
UGT株を1%の割合に従って4mLの液体LB培地に接種し、37℃で振盪(200rpm)しながら一晩培養した。一晩培養した培養物を1%の接種サイズで50mLの液体LB培地に移した。培養培地を37℃で振盪(200rpm)しながら、OD600値が最大0.6〜0.8になるまで培養した。最終濃度で0.4mMのIPTGをその中に添加し、混合物を20℃で振盪しながら一晩培養した。誘導完了後、細胞を遠心分離(8,000rpm、10分間)により回収した。細胞を5mLの2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を使用して再懸濁して、触媒作用で使用するためにUGT−Bを含有する組み換え細胞を得た。
【0048】
実施例4:凍結乾燥UGT−B粉末の調製
実施例3で調製したUGT−Bの組み換え細胞を氷浴中で超音波により破裂させて、破裂した液体を遠心分離し(8,000rpm、10分間)、上清を回収し、24時間凍結乾燥させることによりUGT−Bの凍結乾燥粉末を得た。
【0049】
実施例5:UGT−A及びAtSUS1を含有する組み換え大腸菌細胞の調製
UGT−A及びAtSUS1の遺伝子断片を、それぞれ、pACYC−Duet−1プラスミドのNdeI/XhoI及びBamHI/HindIII部位に挿入して、プラスミドpA−UGT−A−SUS1を得る。このプラスミドでBL21(DE3)を形質転換して、組み換え株GQ−ASを得た。
【0050】
UGT株を1%の割合に従って4mLの液体LB培地に接種し、37℃で振盪(200rpm)しながら一晩培養した。一晩培養した培養物を1%の接種サイズで50mLの液体LB培地に移した。培養培地を37℃で振盪(200rpm)しながら、OD600値が最大0.6〜0.8になるまで培養した。IPTGを0.4mMの最終濃度でその中に添加し、混合物を20℃で振盪しながら一晩培養した。誘導完了後、細胞を遠心分離(8,000rpm、10分間)により回収した。細胞を5mLの2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を使用して再懸濁して、触媒作用で使用するためにUGT−A及びAtSUS1を含有する組み換え細胞を得た。
【0051】
実施例6:UGT−A、UGT−B、及びAtSUS1を含有する組み換え大腸菌細胞の調製
配列番号3及び配列番号4に従って、UGT−B遺伝子断片を遺伝子合成し、NdeI及びBamHI酵素切断部位を、それぞれ、両方の末端に付加し、pUC57ベクター(Suzhou Genewiz Biotech Co.,Ltd)をその中でライゲーションした。UGT遺伝子断片を、制限エンドヌクレアーゼNdeI及びBamHIでの酵素消化に供した。精製断片を回収した。T4リガーゼをその中に添加し、断片をpET30aの対応する酵素切断部位にライゲーションして、GQ−AS株を形質転換し、組み換え株GQ−ABSを得た。
【0052】
UGT株を1%の割合に従って4mLの液体LB培地に接種し、37℃で振盪(200rpm)しながら一晩培養した。一晩培養した培養物を1%の接種サイズで50mLの液体LB培地に移した。培養培地を37℃で振盪(200rpm)しながら、OD600値が最大0.6〜0.8になるまで培養した。IPTGを0.4mMの最終濃度でその中に添加し、混合物を20℃で振盪しながら一晩培養した。誘導完了後、細胞を遠心分離(8,000rpm、10分間)により回収した。細胞を5mLの2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を使用して再懸濁して、触媒作用で使用するためにUGT−A、UGT−B、及びAtSUS1を含有する組み換え細胞を得た。
【0053】
実施例7:レバウディオサイドDを基質とした酵素法によるレバウディオサイドMの合成
0.224gのUDP、34.2gのスクロース、1.6gのレバウディオサイドD、1gの凍結乾燥UGT−A粉末、0.4gの凍結乾燥AtSUS1粉末、4mLのジメチルスルホキシド、及び0.05mol/Lのリン酸緩衝液(pH8.0)を反応系に連続して添加して、最終体積100mLにし、均一に混合し、次いで37℃の水浴中に置き、200rpmで撹拌して、反応を18時間行った。反応完了後、200μlの反応溶液を取り、800μlの無水メタノールに添加し、均一に混合した。この混合物を10,000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り、フィルター膜を通し、続いて高速液体クロマトグラフィー(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilentエクリプスsb−C18 4.6×150mm;検出波長:210nm;移動相:メタノール:水=68%:32%;流速:1.0mL/分;カラム温度:30℃)を用いて検出した。レバウディオサイドDの変換率は90%を超えた。反応完了後、300mLの脱イオン水を100mLの反応溶液に添加し、混合物を55℃で1時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルAとした。遠心分離後、100mLの水を沈殿物に添加し、混合物を55℃で0.5時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルBとした。サンプルA及びサンプルBを混合して、その結果サンプルCを得て、これをマクロ多孔性吸着性樹脂(AB−8)で分離した。結果として得られたものを最初にカラム体積の4倍量の水で洗い流し、次いでカラム体積の3.5倍量の70%エタノールで溶離して、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液を得た。粗生成物の上記溶液を、残りの溶液が約10mLになるまで、減圧(40〜50℃)で蒸留し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を4mLの追加の水で洗浄し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を50%エタノール水溶液で懸濁し、65℃まで加熱して可溶化した。等体積の水をその中に添加し、25%のエタノール濃度にした。混合物を室温まで徐々に冷却し、固体の沈殿後、吸引濾過及び真空乾燥に供して、1.12gのレバウディオサイドMを、99%を超える純度で得た。
【0054】
実施例8:レバウディオサイドAを基質とした酵素法によるレバウディオサイドMの合成
0.18gのUDP、41.04gのスクロース、1gのレバウディオサイドA、2gの凍結乾燥UGT−A粉末、0.5gの凍結乾燥UGT−B粉末、0.5gの凍結乾燥AtSUS1粉末、4mLのジメチルスルホキシド、及び0.05mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)を反応系に連続して添加して、最終体積100mLにし、均一に混合し、次いで37℃の水浴中に置き、200rpmで撹拌して、反応を18時間行った。反応完了後、200μlの反応溶液を取り、800μlの無水メタノールに添加し、均一に混合した。この混合物を10,000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り、フィルター膜を通し、続いて高速液体クロマトグラフィー(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilentエクリプスsb−C18 4.6×150mm;検出波長:210nm;移動相:メタノール:水=68%:32%;流速:1.0mL/分;カラム温度:30℃)を用いて検出した。レバウディオサイドAの変換率は90%を超えた。反応完了後、300mLの脱イオン水を100mLの反応溶液に添加し、混合物を55℃で1時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルAとした。遠心分離後、100mLの水を沈殿物に添加し、混合物を55℃で0.5時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルBとした。サンプルA及びサンプルBを混合して、その結果サンプルCを得て、これをマクロ多孔性吸着性樹脂(AB−8)で分離した。結果として得られたものを最初にカラム体積の4倍量の水で洗い流し、次いでカラム体積の3.5倍量の70%エタノールで溶離して、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液を得た。粗生成物の上記溶液を、残りの溶液が約10mLになるまで、減圧(40〜50℃)で蒸留し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を4mLの追加の水で洗浄し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を50%エタノール水溶液で懸濁し、65℃まで加熱して可溶化した。等体積の水をその中に添加し、25%のエタノール濃度にした。混合物を室温まで徐々に冷却し、固体の沈殿後、吸引濾過及び真空乾燥に供して、0.69gのレバウディオサイドMを、99%を超える純度で得た。
【0055】
実施例9:レバウディオサイドDを基質とした全細胞合成によるレバウディオサイドMの合成
本実施例で使用されるGQ−AS組み換え細胞は、UGT−A及びAtSUS1の両方を含有する組み換え株であった。
【0056】
0.045gのUDP、10.26gのスクロース、2mLのトルエン、0.2gのレバウディオサイドD、10gのGQ−AS含有組み換え細胞、4mLのジメチルスルホキシド、及び0.05mol/Lのリン酸緩衝液(pH8.0)を反応系に連続して添加して、最終体積100mLにし、均一に混合し、次いで37℃の水浴中に置き、200rpmで撹拌して、反応を7時間行った。反応完了後、200μlの反応溶液を取り、800μlの無水メタノールに添加し、均一に混合した。この混合物を10,000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り、フィルター膜を通し、続いて高速液体クロマトグラフィー(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilentエクリプスsb−C18 4.6×150mm;検出波長:210nm;移動相:メタノール:水=68%:32%;流速:1.0mL/分;カラム温度:30℃)を用いて検出した。レバウディオサイドDの変換率は90%を超えた。反応完了後、300mLの脱イオン水を100mLの反応溶液に添加し、混合物を55℃で1時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルAとした。遠心分離後、100mLの水を沈殿物に添加し、混合物を55℃で0.5時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルBとした。サンプルA及びサンプルBを混合して、その結果サンプルCを得て、これをマクロ多孔性吸着性樹脂(AB−8)で分離した。結果として得られたものを最初にカラム体積の4倍量の水で洗い流し、次いでカラム体積の3.5倍量の70%エタノールで溶離して、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液を得た。粗生成物の上記溶液を、残りの溶液が約10mLになるまで、減圧(40〜50℃)で蒸留し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を4mLの追加の水で洗浄し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を50%エタノール水溶液で懸濁し、65℃まで加熱して可溶化した。等体積の水をその中に添加し、25%のエタノール濃度にした。混合物を室温まで徐々に冷却し、固体の沈殿後、吸引濾過及び真空乾燥に供して、0.14gのレバウディオサイドMを、99%を超える純度で得た。
【0057】
実施例10:レバウディオサイドAを基質とした全細胞合成によるレバウディオサイドMの合成
本実施例で使用されるGQ−ABS組み換え細胞は、UGT−A、UGT−B、及びAtSUS1を同時に含有する組み換え株であった。
【0058】
0.045gのUDP、10.26gのスクロース、2mLのトルエン、0.2gのレバウディオサイドA、10gのGQ−ABSも含有する組み換え細胞、4mLのジメチルスルホキシド、及び0.05mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)を反応系に連続して添加して、最終体積100mLにし、均一に混合し、次いで37℃の水浴中に置き、200rpmで撹拌して、反応を7時間行った。反応完了後、200μlの反応溶液を取り、800μlの無水メタノールに添加し、均一に混合した。この混合物を10,000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り、フィルター膜を通し、続いて高速液体クロマトグラフィー(クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーカラム:Agilentエクリプスsb−C18 4.6×150mm;検出波長:210nm;移動相:メタノール:水=68%:32%;流速:1.0mL/分;カラム温度:30℃)を用いて検出した。レバウディオサイドAの変換率は40%を超えた。反応完了後、300mLの脱イオン水を100mLの反応溶液に添加し、混合物を55℃で1時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルAとした。遠心分離後、100mLの水を沈殿物に添加し、混合物を55℃で0.5時間加熱し、超音波処理に供し、6,700rpmで30分間遠心分離した。この上清をサンプルBとした。サンプルA及びサンプルBを混合して、その結果サンプルCを得て、これをマクロ多孔性吸着性樹脂(AB−8)で分離した。結果として得られたものを最初にカラム体積の4倍量の水で洗い流し、次いでカラム体積の3.5倍量の70%エタノールで溶離して、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液を得た。粗生成物の上記溶液を、残りの溶液が約10mLになるまで、減圧(40〜50℃)で蒸留し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を4mLの追加の水で洗浄し、9,900rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。沈殿物を50%エタノール水溶液で懸濁し、65℃まで加熱して可溶化した。等体積の水をその中に添加し、25%のエタノール濃度にした。混合物を室温まで徐々に冷却し、固体の沈殿後、吸引濾過及び真空乾燥に供して、0.05gのレバウディオサイドMを、99%を超える純度で得た。
【0059】
上記実施例は、当業者が本発明の内容を理解し、それによりそれを実施することを可能にする目的のために、本発明の技術的概念及び特徴を説明するためだけのものであり、本発明の内容により本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の趣旨及び本質に従ってなされるいかなる同等の変更又は修正も、本発明の保護範囲内に包含されるものとする。
他の実施形態
1.酵素法を使用することによりレバウディオサイドMを調製する方法であって、レバウディオサイドA又はレバウディオサイドDが基質として使用され、スクロース及びUDPの存在下で、レバウディオサイドMが、UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼの混合物、又は前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼを含有する組み換え細胞の触媒作用下での前記基質の反応により生成され、前記反応が水相系で20〜60℃の温度及びpH5.0〜9.0で行われ、初期反応系で、前記レバウディオサイドAが10g/L以上の濃度を有し、前記レバウディオサイドDが15g/L以上の濃度を有し、前記反応後、反応溶液が遠心分離され、次いで上清がマクロ多孔性吸着性樹脂で分離されて、レバウディオサイドMの粗生成物の溶液が得られ、これがエタノール水溶液中で結晶化されて、レバウディオサイドM生成物が98%を超える純度で得られる、方法。
2.前記初期反応系で、前記レバウディオサイドAが10〜30g/Lの濃度を有し、前記レバウディオサイドDが15〜50g/Lの濃度を有する、実施形態1に記載の方法。
3.前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及び/又はイネ由来のUGT−Bである、実施形態1に記載の方法。
4.前記反応が、水相系で35℃〜45℃の温度及びpH6.5〜8.5で行われる、実施形態1に記載の方法。
5.前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼ及びスクロースシンテターゼを含有する前記組み換え細胞が、前記触媒作用を行うために前記反応で用いられ、前記初期反応系が、体積比で1%〜3%の濃度のトルエン又は他の細胞浸透剤を更に含有する、実施形態1に記載の方法。
6.前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼと前記スクロースシンテターゼの重量比が、1:0.2〜0.4である、実施形態1に記載の方法。
7.前記方法が、前記反応で用いられる全ての原材料が反応ケトルに添加され、水相系で最終体積にされ、均一に混合され、次いで設定温度で定置され、撹拌されて反応する、というように実施される、実施形態1に記載の方法。
8.前記組み換え細胞が微生物細胞である、実施形態1に記載の方法。
9.前記微生物が、大腸菌、出芽酵母、又はピチア・パストリスである、実施形態8に記載の方法。
10.前記基質が、レバウディオサイドAであり、前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼが、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及びイネ由来のUGT−Bの混合物であり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも80%一致し、イネ由来のUGT−Bのアミノ酸配列が、配列番号4と少なくとも80%一致する、実施形態1〜9のいずれか一項に記載の方法。
11.ステビア・レバウディアナ由来のUGT−A及びイネ由来のUGT−Bの前記混合物中で、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aとイネ由来のUGT−Bの重量比が3〜5:1である、実施形態10に記載の方法。
12.前記基質がレバウディオサイドDであり、前記UDP−グルコシルトランスフェラーゼがステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aであり、ステビア・レバウディアナ由来のUGT−Aのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも80%一致する、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
13.前記反応溶液が、前記反応後かつ前記遠心分離前に、最初に50〜60℃で加熱され、超音波処理に50〜70分間供される、実施形態1に記載の方法。
14.レバウディオサイドMの前記粗生成物の前記溶液が、レバウディオサイドMの前記粗生成物の前記溶液が減圧での蒸留により濃縮され、次いで遠心分離され、上清が捨てられる工程、沈殿物が追加の水で洗浄され、次いで遠心分離され、上清が捨てられる工程、沈殿物が体積比で40%〜70%の濃度のエタノール水溶液で懸濁され、60〜70℃まで加熱されて可溶化され、前記エタノール水溶液が体積比で20〜30%の濃度を有するまで水がその中に添加される工程、混合物が室温まで徐々に冷却され、結晶化及び固体の沈殿に供され、続いて吸引濾過及び真空乾燥に供される工程の特定の工程により前記エタノール水溶液中で結晶化される、実施形態1に記載の方法。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]