(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを回収するコレクタに連通しかつヒュームを吸引する吸引部を、造形テーブルの上側であってしかも水平方向を基準として造形テーブルの全周囲を囲む位置に設置すると共に、当該吸引部にて独立して吸引作動を行い得る各吸引領域を等間隔に配設し、かつ当該各吸引領域の中心位置である吸引基準位置を特定すると共に、各吸引領域における共通の作動時間幅を設定し、前記各粉末層において二次元方向に等間隔にて規則的に配列された位置に基づいて複数個の静止している照射基準位置を設定するか、又は前記各粉末層内を移動する照射位置において、各吸引基準位置における前記共通の時間幅による移動時間に基づき、照射開始の位置から当該移動時間を単位として、複数個の移動状態にある照射基準位置を設定し、かつ前記静止しているか又は移動状態にある複数個の照射基準位置にて現に照射が行われている照射基準位置Pを判定した上で、当該照射基準位置Pと最短距離にある吸引基準位置を選択し、当該吸引基準位置に対応する吸引領域に対する吸引の作動指令が行われている三次元造形物の製造方法。
造形テーブルの形状が矩形状であって、かつ当該矩形の辺と平行状態にて設定されている吸引部において、以下のプロセスによって、前記照射基準位置Pの中心位置との最短距離にある吸引基準位置を選択することを特徴とする請求項1記載の三次元造形物の製造方法。
1 造形テーブルの中心位置を原点とする直交座標(x,y)において、矩形状の辺と平行状態にあるx軸、y軸を選択した上で、現に照射が行われている照射基準位置Pの座標(a,b)の判定。
2 座標(a,b)に対し、x軸方向及びy軸方向と平行な直線と前記吸引部の入口とが交差する4カ所の座標(A,b),(−A,b),(a,B),(a,−B)の設定。
3 座標(a,b)の位置と前記4カ所の座標との距離であるA−a,A+a,B−b,B+bのうち、最も小さな距離の選択。
4 前記3によって選択された座標位置に対し、最小距離を呈する吸引基準位置の選択。
チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された各粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを回収するコレクタに連通しかつヒュームを吸引する吸引部を、造形テーブルの上側であってしかも水平方向を基準として造形テーブルの全周囲を囲む位置に設置すると共に、当該吸引部にて独立して吸引作動を行い得る各吸引領域を等間隔に配設し、かつ当該各吸引領域の中心位置である吸引基準位置を特定すると共に、各吸引領域における共通の作動時間幅を設定し、前記各粉末層において二次元方向に等間隔にて規則的に配列された位置に基づいて複数個の静止している照射基準位置を設定し、かつ当該複数個の静止している照射基準位置にて現に照射が行われている照射基準位置Pを判定した上で、当該照射基準位置Pにおける照射位置の移動方向並びに移動速度に基づいて前記時間幅の時間に即して算定された隣の照射基準位置P’を設定するか、又は前記各粉末層内を移動する照射位置において、照射開始の位置から前記時間幅による移動時間に基づき、当該移動時間を単位として、複数個の移動状態にある照射基準位置を設定し、かつ当該複数個の移動状態にある照射基準位置にて現に照射が行われている照射基準位置Pを判定した上で、当該照射基準位置P及び当該照射基準位置Pから前記時間幅による時間を経ることによって移動が予定されている隣の照射基準位置P’を設定すると共に、照射基準位置P及び同P’とを結ぶ直線に対し照射基準位置Pにて直交する直線を基準として、前記隣の照射基準位置P’と反対側の位置にある各吸引基準位置に対応する吸引領域に対し、吸引の作動指令が行われている三次元造形物の製造方法。
前記吸引部において、各吸引領域を区分されずに連続した状態にて配置すると共に各吸引領域に対応する各開閉弁を各吸引領域の入口に相互に隣接した状態にて設置し、かつ吸引の作動指令が行われた吸引領域における開閉弁が開口することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
前記吸引部において、各吸引領域を相互に区分された状態にて配置すると共に、当該各吸引領域に対応する開閉弁を当該吸引領域の入口又は当該各吸引領域とヒュームコレクタとを接続する各パイプの中途部位又はヒュームコレクタ側の端部に設置しかつ吸引の作動指令が行われた吸引基準位置における開閉弁が開口することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
前記吸引部において、各吸引領域を相互に区分された状態にて配置すると共に、当該各吸引領域に吸引ファン及び当該吸引ファンに接続されている吸引スイッチを設置し、吸引の作動指令が行われた吸引領域における吸引スイッチ及び吸引ファンが作動することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
レーザビーム又は電子ビームの照射量が大きいほど、吸引部における単位面積当たりの吸引量を大きく設定することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
水平方向を基準として、造形テーブルの端部とヒューム吸引部の入口とが造形テーブルの全周囲において等距離であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
造形テーブルの水平方向に沿った平面形状が正方形であり、ヒューム吸引部が正方形の辺を形成するように配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
造形テーブルの水平方向に沿った平面形状が円形であり、ヒューム吸引部が当該円形に対し同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
造形テーブル1上における粉末の散布、当該散布によって形成された各粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射工程を必要とする基本構成(1)、(2)においては、
図3(a)、(b)に示すように、ヒュームコレクタ6に連通する吸引部4を造形テーブル1の上側であって、しかも水平方向を基準として当該テーブル1を囲んだ状態にて配置しており、従来技術のように、特定の方向に直線状に配置している構成と明らかに相違している。
但し、造形テーブル1を囲んだ状態の吸引部4を設けることは、従来技術の場合のように、1カ所のヒュームコレクタ6では、吸引部4からヒュームコレクタ6に至るパイプ5が長距離と化すことから、複数個、具体的には、例えば矩形状の造形テーブル1の場合には、
図3(a)に示すように4個のヒュームコレクタ6を設置すると良い。
尚、
図3(a)、(b)においては、レーザビーム又は電子ビームによる照射源及び各ビームに対する反射ミラーの図示を省略されている。
【0019】
図3(a)、(b)は、吸引部4をチャンバー内に設けている実施形態を示すが、基本構成(1)、(2)は、特許文献1の場合と同様に吸引部4をチャンバーの壁部2に設ける実施形態も当然選択可能である。
【0020】
基本構成(1)、(2)においては、前記照射による三次元造形物の焼結層を形成した後に、当該焼結層の表面及びその近傍に対する切削工程を採用する構成を当然包摂しているが、常に切削工程を必要不可欠としている訳ではない。
但し、三次元造形物の正確な形状を確保するためには、前記切削工程を必要不可欠とする。
【0021】
基本構成
(1)及び
(2)においては、焼結層における照射位置の変化に対応して作動する吸引作動を行う位置が選択され、かつ変化する。
【0022】
従って、基本構成
(1)及び
(2)においては、吸引部4において等間隔に独立して吸引作動を行い得る各吸引領域41を設定すると共に、当該各吸引領域41の中心位置に吸引基準位置42を設定しているが、その根拠は、このような吸引基準位置42に基づいて、照射位置の変化に対応する吸引部4の作動位置を速やかに選択し得ることにある。
【0023】
各吸引領域41が独立して吸引作用を発揮するためには、各吸引領域41が
図4(a)、及び
図7(a)に示すように、固有のパイプ5を介してヒュームコレクタ6に連通しているか、又は後述するように、各吸引領域41に対応する固有の開閉弁7が作用することを必要不可欠とする。
尚、
図4(a)、(b)及び
図7(a)、(b)においては、各吸引領域41が独立して吸引作動を行うことに対応して、吸引穴43をそれぞれ採用しているが、当該吸引穴43は必要不可欠ではなく、各吸引領域41の造形テーブル1側においては、吸引を実現する隙間が存在すれば良い。
【0024】
各吸引領域41における作動時間は、照射位置の変化の程度によって左右されるが、当該作動時間については、制御上の便宜に基づき、所定の時間幅が設定されている。
【0025】
このような時間幅は、三次元造形物の大きさ、形状によって異なるが、通常、10秒〜1分の時間を以って必要にして十分である。
【0026】
基本構成
(1)の場合には、1個の吸引領域41の作動によってヒュームを吸引するが、基本構成
(2)の場合においても、照射位置の移動方向と反対方向にある吸引領域41が1個しか存在しない場合も当然発生し得る。
【0027】
このような1個による作動を考慮し、各吸引領域41を単位とする吸引力は、ヒュームが造形テーブル1の中心位置にて発生した場合においても、単独にてヒュームを吸引し得る程度であるならば、基本構成
(1)及び
(2)の前記効果を達成することができる。
【0028】
何故ならば、基本構成
(1)及び
(2)においても、各吸引領域41に対し最も遠距離にある各粉末層3における照射位置は、造形テーブル1の中心位置である以上、各吸引領域41において現に照射が行われている照射位置が前記中心位置から離れた場合には、明らかに前記中心位置における照射の場合よりも強力な吸引を発揮し得るからである。
【0029】
基本構成
(1)及び
(2)においては、複数個の照射基準位置31を、
図4(a)及び
図7(a)に示す以下のA、又は
図4(b)及び
図7(b)に示す以下のBによって設定している。
A 各粉末層3における二次元方向に等間隔にて規則的に配列された位置に基づく複数個の静止した照射基準位置31。
B 各粉末層3内を移動する照射位置において、移動開始の位置から各吸引領域41について設定されている時間幅による移動時間に基づき、当該移動時間を単位とする複数個の移動状態にある照射基準位置31。
【0030】
前記Aの複数個の静止している照射基準位置31を設定しているのは、各粉末層3をレーザビーム又は電子ビームによって照射される焼結領域においては、前記のような静止した照射基準位置31の何れも、必ず照射の対象となることを根拠としている。
【0031】
従って、前記Aによる複数個の静止している照射基準位置31のうち、現に照射が行われている照射基準位置Pを検出するためには、全照射時間における何れかの時期に、複数個の照射基準位置31の何れの照射基準位置31をレーザビーム又は電子ビームが移動したかを判定することを必要不可欠としており、当該判定によって、照射基準位置Pを特定することができる。
【0032】
レーザビーム又は電子ビームは、前記Aによる複数個の配列位置を、規則的な時間に即して移動する訳ではない。
【0033】
しかしながら、上記判定によって特定された照射基準位置Pは、規則的に配列された複数個の静止している照射基準位置31の何れかに該当している。
【0034】
前記Bの複数個の移動状態にある照射基準位置31は、決してAの場合のように等間隔に配列されている訳ではない。
【0035】
従って、前記Bの複数個の移動状態にある照射基準位置31においては、前記時間単位に即した照射基準位置Pが各粉末層3の如何なる位置に存在するかを判定することを必要不可欠としている。
【0036】
照射位置は、均一に各粉末層3の焼結領域を順次移動することを考慮するならば、吸引における吸引時間幅による時間を単位として移動開始時期から設定されている以上、規則的な時間に即して、各粉末層3において略均一に照射基準位置31を設定することができる。
【0037】
基本構成
(2)の場合には、現に照射が行われている照射基準位置Pのみならず、当該照射基準位置Pにおけるレーザビーム又は電子ビームの移動方向を確定するために
図7(a)に示すような以下のαの位置、又は
図7(b)に示すような以下のβの位置によって、隣の照射基準位置P’を設定している。
α 前記Aによって設定された照射基準位置Pにおける照射位置の移動方向並びに移動速度に即して、前記Bの時間単位の時間によって算定された位置。
β 前記Bによって設定された照射基準位置Pから、前記Bの時間単位を経ることによって移動が予定されている位置。
【0038】
前記Aにおいて設定されている照射基準位置Pをレーザビーム又は電子ビームによる照射位置が移動する場合には、必ず移動方向及び移動速度が特定されている。
【0039】
前記αにおいては、このような移動方向及び移動速度に即して、前記Bの時間単位によって隣の照射基準位置P’を設定しているが、現実の照射位置は順次変化し得ることを考慮するならば、上記設定による隣の照射基準位置P’は必ずしも現実に照射位置が通過しかつ移動する訳ではない。
【0040】
しかしながら、前記αによって算定された隣の照射基準位置P’が照射基準位置Pにおける照射位置の移動方向を反映し、かつ特定していることは明らかである。
【0041】
前記βにおいて設定されている現実に照射が行われている照射基準位置P及び隣の照射基準位置P’は、現実に移動する照射位置から前記Bの時間単位を経ることによって現実に移動することが予定されている以上、照射基準位置Pにおける移動方向を特定していることに疑いの余地はない。
【0042】
図4(a)、(b)の平断面図に立脚している基本構成
(1)においては、照射が行われている照射基準位置31の中心位置と最短距離にある吸引基準位置42を選択し、当該吸引基準位置42を囲む吸引部4の作動指令を行うために、
図5(a)のフローチャートに示すように、CAD/CAMシステムによる三次元造形物の形状の設定、及びスキージによって積層される各粉末層3の数Nを設定した上で、以下のプロセスが採用されている。
1 前記Aの複数個の静止している照射基準位置31、又はBの複数個の移動状態にある照射基準位置31の設定。
2 前記1によって設定された複数個の照射基準位置31にて現に照射が行われている照射基準位置Pの判定。
3 照射基準位置Pと最短距離にある吸引基準位置42の選択。
4 前記2によって選択された吸引基準位置42に対応する吸引領域41に対する吸引の作動指令。
【0043】
現実に、前記中心位置から最短距離にある吸引基準位置42の選択は、
図5(b)のフローチャートに示すように、以下のプロセスによる実施形態によって実現することができる。
1 造形テーブルの中心位置を原点とする極座標(r,θ)における照射基準位置Pと全ての吸引基準位置42との距離の算定。
2
図4(a)、(b)に示すように、スタートの位置として任意に選択された吸引基準位置Sに対し、
図4(a)に示すようなθが小さくなる方向の時計回り方向、又は
図4(b)に示すようなθが大きくなる方向の反時計回り方向にて存在し、未だ比較が行われていない吸引基準位置42との間にて、前記1において算定された距離の大小関係の対比。
3 前記2の対比において、双方の吸引基準位置42の一方が他方よりも小さな距離を呈した場合における当該一方の吸引基準位置42の選択、及び双方の吸引基準位置42が等しい距離を呈した場合における何れか一方の吸引基準位置42の選択。
4 前記2の対比及び前記3の選択が、前記2によって特定された吸引基準位置42に対して反時計回り方向又は時計回り方向にて、
図4(a)、(b)に示す隣接する吸引基準位置S’との間にて遂行されるに至るまで、前記2の対比及び前記3の選択の繰り返し。
尚、現に照射が行われている照射基準位置Pにおいては、所定の領域幅が存在することを考慮するならば、照射による焼結領域を基準とした場合には、プロセス1における照射基準位置Pとは、「照射基準位置Pの中心位置」の趣旨である。
【0044】
しかしながら、三次元造形の制御に関与しているコンピュータにおいては、必然的に照射基準位置Pの中心位置を記録しかつ制御の対象としている以上、基本構成
(1)における照射基準位置Pは、必然的に「照射基準位置Pの中心位置」であって、照射による焼結領域を基準とした場合の技術的趣旨と一致している。
【0045】
前記3のプロセスにおいて、双方の吸引基準位置42が等しい距離を呈した場合には、何れか一方の吸引基準位置42を選択しているが、何れを選択しようと、その後のプロセスに作用する訳ではない。
【0046】
選択された特定の吸引基準位置42から時計回り又は反時計回りにて順次現に移動が行われている照射基準位置Pとの距離の大小関係と対比される以上、極座標(r,θ)の採用によって円滑な吸引基準位置42の選択を実現することができる。
因みに、直交座標(x,y)の場合には、特定の座標位置(X,Y)に対し隣接する座標位置(X’,Y’)の特定、更には座標位置(X,Y)と(X’,Y’)が時計回りの方向にあるか、反時と計回りの方向にあるかの判定という煩雑な作業を必要不可欠としており、時計回り又は反時計回りの方向を極座標(r,θ)の場合のように、一律に特定することができない。
【0047】
このような順次の対応を前提としている上記実施形態の場合には、各吸引領域41及び当該吸引領域41に対応する各吸引基準位置42がどのような配列の状態にあろうと、照射基準位置Pとの最短距離を算出し得る点に特徴を有している。
【0048】
大抵の造形テーブル1は、
図4に示すように、水平方向に沿った平面形状が矩形であることから、吸引部4もまた矩形の辺に沿って配列されている。
【0049】
このような場合には、
図6の直交座標(x,y)によるグラフ及び
図5(c)のフローチャートに示すように、以下のプロセスによって前記中心位置からの最短距離にある吸引基準位置42を選択することができる。
1 造形テーブルの中心位置を原点とする直交座標(x,y)において、矩形状の辺と平行状態にあるx軸、y軸を選択した上で、現に照射が行われている照射基準位置Pの座標(a,b)の判定。
2 座標(a,b)に対し、x軸方向及びy軸方向と平行な直線と前記吸引部4の入口とが交差する4カ所の座標(A,b),(−A,b),(a,B),(a,−B)の設定。
3 座標(a,b)の位置と前記4カ所の座標との距離であるA−a,A+a,B−b,B+bのうち、最も小さな距離の選択。
4 前記3によって選択された座標位置に対し、最小距離を呈する吸引基準位置42の選択。
尚、前記プロセス3において、4個の距離のうち最も小さな数値を呈する座標の選択については、(4×3×2×1)/(2×2)=6回の対比によって済む以上、
図5(b)の実施形態のように、極座標(r,θ)の設定は必ずしも必要ではない。
但し、前記4個の座標位置についても、極座標(r,θ)を設定した上で、
図5(b)のフローチャートの場合と同様に、順次吸引基準位置42からの距離を対比することが可能であって、この場合には、対比の数は4個に過ぎないことから、スピーディーな対比を実現することができる。
従って、プロセス1において、直交座標(x,y)に代えて、極座標(r,θ)を採用した構成は、
図5(c)のフローチャートの構成と技術的には均等であって、
図5(c)の実施形態は、前記極座標(r,θ)を採用する実施形態をも技術範囲として包摂している。
【0050】
図6のように、直交座標(x,y)を採用した場合には、前記3のプロセスによって選択された座標が存在する矩形状の辺がx軸方向又はy軸方向の何れに沿っているかを判定した上で、x軸方向に沿っている場合には、各吸引基準位置42のx座標の数値X’と前記座標の数値aとの差であるX’−aの絶対値の大小関係を順次対比することを必要とし、前記矩形状の辺が前記3のプロセスにおいてy軸方向に沿っている場合には、当該辺における吸引基準位置42のy軸における数値Y’と前記座標の数値bとの差であるY’−bの絶対値を順次対比することを必要不可欠とし、
図5(b)のフローチャートと同様の対比に立脚している極座標(r,θ)の場合よりも多少煩雑である。
直交座標(x,y)におけるこのような状況は、上記の技術上の均等関係を客観的に裏付けている。
【0051】
基本構成
(1)の場合には、例外的に、造形テーブル1の中心位置から最短距離にある吸引基準位置42が複数個である場合が発生する。
【0052】
具体的に説明するに、例えば長方形状の造形テーブル1の場合には、中心位置から2個の最短距離を予定する吸引基準位置42が形成され、正方形状の造形テーブル1であって、しかも実施例1において後述するように、造形テーブル1の端部と吸引部4の入口とが等距離である場合には、造形テーブル1の中心位置から4個の最短距離を呈する吸引基準位置42が形成され、造形テーブル1が円形であって、しかも実施例2において後述するように、吸引部4の入口が当該円形と同心円状に形成されている場合には、中心位置に対し、全吸引基準位置42が最短距離を呈することにならざるを得ない。
【0053】
しかしながら、前記照射基準位置31が造形テーブル1の中心位置を現実に移動する時間は短時間であって、しかも最短距離を呈する吸引基準位置42が複数個存在する場合には、複数の方向に吸引が行われる以上、各方向におけるヒュームの量は一方向の場合よりも減少していることを考慮するならば、ヒュームの漂流によって、レーザビーム又は電子ビームの透過及び照射に対する障害を十分防止し得るという効果を確保し得ることに変わりはない。
【0054】
図7(a)、(b)の平面図に立脚している基本構成
(2)においては、
図8(a)のフローチャートに示すように、CAD/CAMシステムによる三次元造形物の形状の設定、及びスキージによって積層される各粉末層3の数Nを設定した上で、以下のプロセスを採用している。
1 前記Aの複数個の静止している照射基準位置31、又はBの複数個の移動状態にある照射基準位置31の設定。
2 前記1によって設定された複数個の照射基準位置31にて現に照射が行われている照射基準位置Pの判定。
3 前記α又はβによる隣の照射基準位置P’の設定。
4 前記2、3による照射基準位置P及び同P’とを結ぶ直線に対し、照射基準位置Pにて直交する直線方程式の設定。
5 前記4による直交する直線を基準として、前記3によって設定された隣の照射基準位置P’と反対側の領域に存在する吸引基準位置42に対応する吸引領域41に対する吸引の作動指令。
【0055】
隣の照射基準位置P’と反対側に存在する吸引基準位置42の具体的選択は、
図8(b)のフローチャートに示すように、以下のプロセスによって実現することができる。
1 造形テーブルの中心位置を原点とする極座標(r,θ)において、
図7(a)、(b)に示すように、前記の直交する直線方程式
の設定。
但し、a,bは、それぞれθ=0及びθ=π/2の角度によるrであって、現に照射が行われている照射基準位置Pの座標を(R,α)とし、隣の照射基準位置P’の座標を(R’,α’)とした場合、
である。
2 隣の照射基準位置P’(R’,α’)における
と1との大小関係の判定。
3(1) 前記2において、
の場合には、
各吸引基準位置42の座標(R”,α”)について、
を充足する吸引基準位置42の選択。
(2) 前記2において、
の場合には、
各吸引基準位置42の座標(R”,α”)について、
を充足する全吸引基準位置42の選択。
【0056】
前記3(1)、(2)によって選択された全吸引基準位置42が、前記1によって設定された前記直交直線を基準とした場合に、隣の照射基準位置P’と反対側にあることは、前記直交する直線の方程式である
と1との大小関係という初等数学によって直ちに察知し得る事項である。
【0057】
前記a、bの一般式の導出について説明するに、照射が行われている照射基準位置P(R,α)と、隣の照射基準位置P’(R’,α’)とを結ぶ直線においては、
が成立する。
【0058】
従って、前記直線方程式と直交し、照射基準位置P(R,α)を通過する直線方程式については、
を導出することができる。
【0059】
上記直線方程式は、
と変形することができることから、a、bについては、
を導出することができる。
【0060】
図8(b)のフローチャートについては、極座標(r,θ)に即して説明したが、
図7(a)、(b)に示すように、直交座標(x,y)を採用することによって、照射基準位置Pを通過する前記直交直線については、x軸及びy軸とを通過する座標を(a,0)及び(0,b)と設定することによって、x/a+y/b=1と設定することができる。
【0061】
上記設定の下に、隣の照射基準位置P’(X’,Y’)におけるX’/a+Y’/bと1との大小関係を判定した上で、各吸引基準位置42の座標(X”,Y”)につき、X’/a+Y’/bと1との大小関係につき、P’(X’,Y’)の場合と逆の大小関係にある全吸引基準位置42を選択することは当然可能である。
【0062】
即ち、
図8(b)のフローチャートに示す実施形態は、前記のような直交座標を採用したことによる算定方式と技術的に均等であって、このような算定方式による実施形態を当然技術的範囲として包摂している。
【0063】
但し、隣の照射基準位置P’(X’,Y’)における不等式と逆の不等式が成立する全吸引基準位置42を選択する際、極座標(r,θ)の場合の方が順次θ”を変化させることによって効率的な判定及び選択が実現し得るのに対し、直交座標(x,y)の場合には、各吸引基準位置42の座標(X”,Y”)につき、個別にX”及びY”の数値を変化させた上で、上記逆の不等式の成否を順次判定する必要があることを考慮するならば、直交座標(X,Y)の場合の方が効率的な吸引基準位置42の選択において多少不便である。
しかしながら、このような多少不便な状況は、当業者においては当然予測し得る事項である以上、上記のような技術的に均等であることを否定する根拠とはなり得ない。
【0064】
図8(b)のフローチャートに示す実施形態は、各吸引基準位置42につき、個別に隣の照射基準位置31の方向と反対方向にあるか否かを判断するというシンプルな構成であることに特徴を有している。
【0065】
隣の照射基準位置P’と反対方向側の吸引基準位置42を選択する他の実施形態としては、
図8(c)のフローチャートに示すように、以下のプロセスによって実現することができる。
1 造形テーブルの中心位置を原点とする極座標(r,θ)において、
図7(a)、(b)に示すように、前記の直交する直線の方程式
の設定。
但し、a,bは、それぞれθ=0及びθ=π/2の角度によるrであって、現に照射が行われている照射基準位置Pの座標を(R,α)とし、隣の照射基準位置P’の座標を(R’,α’)とした場合、
である。
2
図7(a)、(b)に示すように、前記の直線方程式と吸引部の入口におけるラインとの2カ所の交点Q
1(R
1’,α
1’)及びQ
2(R
2’,α
2’)の算定。
但し、Q
1はQ
2の左側、又は上側、又は左上側に配置された位置である(
図7(a)、(b)においては、Q
1はQ
2の左上側に配置された状態を示す。)。
3 隣の照射基準位置P’(R’,α’)における
と1との大小関係の判定。
4(1) 前記3において、
の場合には、Q
1からθが大きくなる方向の反時計回り方向にてQ
2に至るまでの範囲内に存在する吸引基準位置42の順次選択。
(2) 前記3において、
の場合には、Q
1からθが小さくなる方向の時計回り方向にてQ
2に至るまでの範囲内に存在する吸引基準位置42の順次選択。
【0066】
図8(c)のフローチャートに示す実施形態の場合には、2個の交点Q
1,Q
2からの時計方向又は反時計方向に従って吸引基準位置42を選択する際に、直交座標(x,y)の場合には、極めて煩雑な算定を必要不可欠とすることから、各吸引基準位置42につき、極座標(r,θ)を設定することによって円滑に吸引基準位置42を選択し得ることは、基本構成
(1)の
図4(b)に示す実施形態の場合と同様である。
【0067】
図8(c)のフローチャートに示す実施形態において、R’・cosα’/a+R’・sinα’/b>1の場合に、交点Q
1から反時計回りの方向にてQ
1に至るまでの範囲内に存在する吸引基準位置42を選択するのは、前記直交する直線を基準とした場合に、これらの反時計回り及び時計回りの方向がR’・cosα’/a+R’・sinα’/b>1を充足している隣の照射基準位置P’への方向と反対方向にあることを根拠としている。
【0068】
同様に、R’・cosα’/a+R’・sinα’/b<1の場合に、交点Q
1から時計回りの方向にてQ
1に至るまでの範囲内に存在する吸引基準位置42を選択するのは、前記直交する直線を基準とした場合に、これらの時計回り及び反時計回りの方向が、R’・cosα’/a+R’・sinα’/b<1を充足している隣の照射基準位置P’への方向と反対方向にあることを根拠としている。
【0069】
図8(c)のフローチャートに示す実施形態は、2個の交点Q
1、Q
2からの時計回り又は反時計回りの選択によって一挙に隣に設定されている照射基準位置31と反対方向にある吸引基準位置42を選択し得る点に特徴を有している。
【0070】
図9(a)、(b)は、前記吸引部4において、各吸引領域41を区分されずに連続した状態にて配置すると共に各吸引領域41に対応する各開閉弁7を各吸引領域41の入口に相互に隣接した状態にて設置し、かつ吸引の作動指令が行われた吸引領域41における開閉弁7が開口することを特徴とする実施形態を示す。
【0071】
上記実施形態においては、区分されていないというシンプルな構成による各吸引領域41及び隣接している開閉弁7の採用によって、基本構成
(1)及び
(2)における吸引基準位置42の設定及び当該吸引基準位置42の選択に適合することができる。
【0072】
図10は、前記吸引部4において、各吸引領域41を相互に区分された状態にて配置すると共に、当該各吸引領域41に対応する開閉弁7を当該吸引領域41の入口又は当該各吸引領域41とヒュームコレクタ6とを接続する各パイプ5の中途部位又はヒュームコレクタ6側の端部に設置しかつ吸引の作動指令が行われた吸引基準位置42における開閉弁7が開口することを特徴とする実施形態を示す。
【0073】
上記実施形態においては、既に区分されている各吸引領域41及び当該吸引領域41に対応する吸引基準位置42、更には開閉弁7の設置によって、基本構成
(1)及び
(2)における前記吸引基準位置42の設定及び当該吸引基準位置42の選択に適合することができる。
【0074】
しかも、上記実施形態の場合には、開閉弁7の設定位置を3カ所に亘って選択可能である一方、
図10(b)、(c)に示すように、ヒュームコレクタ6と連通するパイプ5に開閉弁7を設定した場合には、吸引部4の入口又はその近傍に開閉弁7を作動する装置の配列を避けることができる点において、安全な作動を実現することができる。
【0075】
図11は、前記吸引部4において、各吸引領域41を相互に区分された状態にて配置すると共に、当該各吸引領域41に吸引ファン8及び当該吸引ファン8に接続されている吸引スイッチ9を設置し、吸引の作動指令が行われた吸引領域41における吸引スイッチ9及び吸引ファン8が作動することを特徴とする実施形態を示す。
【0076】
上記実施形態においては、吸引基準位置42に対して作動単位として開閉弁7ではなく、個別の吸引スイッチ9を有する吸引ファン8を設置していることを必要とする点において、
図9、10に示す各実施形態に比し、設計上やや煩雑である。
但し、
図11に示す実施形態の場合には、各吸引領域41における吸引ファン8によってヒュームの吸引及びヒュームコレクタ6への移行が実現できる以上、ヒュームコレクタ6において、大型の吸引ファン8を設ける必要がない点において、ヒュームコレクタ6のスペースを縮小することができる。
【0077】
レーザビーム又は電子ビームによる照射量が多いほど、ヒュームの発生量が多い傾向にある。
【0078】
このような状況を考慮し、基本構成(1)、(2)においては、レーザビーム又は電子ビームの照射量が大きいほど、吸引部4における単位面積当たりの吸引量を大きく設定することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0079】
上記実施形態においては、照射量が増加しかつ発生するヒュームの量も増加したとしても、吸引の程度の増加によってヒュームを速やかに吸引し、レーザビーム又は電子ビームの透過及び照射に対するヒュームによる障害を適切に防止することができる。
【0080】
基本構成(1)、(2)の何れにおいても、
図1及び
図2に示すように、水平方向を基準として、造形テーブル1の端部と吸引部4とを等距離とする実施形態が望ましい。
【0081】
何故ならば、このような等距離の設定によって、ヒュームがレーザビーム又は電子ビームによって照射された位置から吸引部4まで移動する時間の偏差が等距離でないような設計に比し、更に一層減少するからである。
【実施例1】
【0083】
実施例1は、基本構成(1)、(2)において、
図1に示すように、造形テーブル1の水平方向に沿った平面形状が正方形であり、吸引部4が正方形の辺を形成するように配置されていることを特徴としている(尚、
図1は、
図10に示すように、吸引部4が区分された場合の実施形態を示す。)。
【0084】
前述のように、造形テーブル1は、水平方向に沿った平面方向正方形を採用する場合が最も多いが、実施例1は、このような造形テーブル1の形状に即して、吸引部4もまた正方形の辺に沿って配列されている。
【0085】
このような実施例1においては、水平方向を基準として、造形テーブル1の端部と吸引部4とを等距離とする実施形態に容易に適合することができる。
【0086】
図1においては、吸引部4を造形テーブル1の端部と平行状態でない部位、即ちコーナーの近傍に設けていない状態を示すが、当該コーナー及びその近傍に吸引部4を設けることは、当然可能である。
【実施例2】
【0087】
実施例2は、基本構成(1)、(2)において、
図2に示すように、造形テーブル1が水平方向に沿った平面形状が円形であり、吸引部4が当該円形に対し同心円状に配置されていることを特徴としている(尚、
図2は、
図9に示すように、吸引部4が区分されずに連続した状態である場合の実施形態を示す。)。
【0088】
図2の造形テーブル1は正方形状の造形テーブル1に比し、採用される頻度は少ない。
【0089】
しかしながら、実施例2においては、
図2に示す同心円状の配列によって、水平方向を基準として、造形テーブル1の端部と吸引部4とを等距離に設定した場合には、造形テーブル1を囲む全領域に吸引部4を設定することができ、スペースを有効に利用することができる。
【解決手段】スキージによる粉末の散布及び粉末層3に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく三次元造形物の製造方法であって、前記粉末層3から発生するヒュームを吸引する吸引部4を、造形テーブル1の全周囲を囲んだ状態にて設置し、前記吸引部4を全照射時間にて作動させるか、又は現に移動する照射基準位置Pと最も近い距離にある吸引基準位置42を選択し、所定の時間幅にて作動させるか、又は前記照射基準位置Pの移動方向と反対方向に存在する吸引基準位置42を選択し、所定の時間幅にて作動させることによって、前記課題を解決する三次元造形物の製造方法。