(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541230
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】油水融合燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/32 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
C10L1/32 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-27448(P2016-27448)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145310(P2017-145310A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月5日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047979
【氏名又は名称】山本 泰弘
(73)【特許権者】
【識別番号】516047980
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4682287(JP,B1)
【文献】
米国特許第04355969(US,A)
【文献】
特開2014−159538(JP,A)
【文献】
特開2002−018439(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/037678(WO,A1)
【文献】
特開2006−182890(JP,A)
【文献】
特開2008−045022(JP,A)
【文献】
特開2016−003297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油と水とを混合して加水燃料を生成する加水燃料の製造方法において、水の分子集合体を細分化してイオン化するイオン化工程と、
燃料油を撹拌混合タンクに投入し、この燃料油をミキサーにより循環させつつ、前記イオン化され、下記添加剤を投入された水を混合し且つ撹拌する撹拌混合工程と、
撹拌混合された燃料油及び水に対し、40℃〜80℃の温度と1.5Pa〜20Paの気圧を加えた状態で撹拌混合工程を繰り返す融合工程とを備えたことを特徴とする加水燃料の製造方法。
第1の添加剤
酵素添加量:水に対して0.004〜0.1重量%
第2の添加剤
NaOH(水酸化ナトリウム)添加量:水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%
第3の添加剤
過酸化水素水溶液添加量:水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%
【請求項2】
燃料油と水とを混合して加水燃料を生成する加水燃料の製造方法において、水の分子集合体を細分化してイオン化するイオン化工程と、
水に添加剤として酵素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化マグネシム、ナトリウム、マグネシウム、過酸化水素水溶液を添加する添加剤投入工程と、
燃料油を撹拌混合タンクに投入し、この燃料油をミキサーにより循環させつつ、前記イオン化され、添加剤投入された水を混合し且つ撹拌する撹拌混合工程と、
撹拌混合された燃料油及び水に対し、40℃〜80℃の温度と3Paの気圧を加えた状態で撹拌混合工程を繰り返す融合工程とを備えたことを特徴とする加水燃料の製造方法。
【請求項3】
前記イオン化工程においては、原料となる水に10kHz〜60kHzの超音波を照射させ、また200kHz以上の超音波を照射させる、二つの照射動作を行うことにより、水の分子集合体を細分化することを特徴とする請求項1または2記載の加水燃料の製造方法。
【請求項4】
前記イオン化工程においては、原料となる水にSPG膜乳化技術を加えることにより、水の分子集合体を細分化することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加水燃料の製造方法。
【請求項5】
前記イオン化工程においては、原料となる水に天然鉱石より抽出した、凝縮ミネラルを添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の加水燃料の製造方法。
【請求項6】
前記イオン化工程においては、原子状炭素の粉末と水とを混合して生成されたマイナスイオン水を、原料として用いるか、または原料となる水に添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の加水燃料の製造方法。
【請求項7】
前記添加剤投入工程において、前記酵素は、燃料油及び水のそれぞれの体積に対して0.004重量%〜2重量%添加することを特徴とする請求項2記載の加水燃料の製造方法。
【請求項8】
前記添加剤投入工程において、前記水酸化ナトリウムは、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%添加することを特徴とする請求項2記載の加水燃料の製造方法。
【請求項9】
前記添加剤投入工程において、前記過酸化水素水溶液は、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%添加することを特徴とする請求項2記載の加水燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤及び天然又は人工鉱石燃料油に添加剤及び天然又は人工鉱石等により改善された水を加えた油水融合燃料(以下加水燃料と呼ぶ)の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の阻止は世界の課題となり、特に化石燃料の消費によって排出される二酸化炭素(CO
2)の低減を図る技術について、種々提案がされている。
【0003】
このような中で、化石燃料の特長を生かしつつ環境負荷の低減、コスト低下を期待する方法として、従来からあった燃料油と水と界面活性剤とを混合して生成する加水燃料技術が見直されているが、そのような従来技術としては下記特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
この、特許文献1の技術は、酵素を添加した油水に天然又は人工鉱石を接触させ、同時に超音波振動を与えながら攪拌・混合し、さらに撹拌混合された燃料油及び水を30℃〜150℃に加熱し、また圧力1.5気圧〜20気圧で加圧するエマルジョン燃料の製造方法である。この製造方法により、加水比率50%以上のエマルジョン燃料の油水分離現象を防止でき、また油水が高度に融合され、エマルジョン状態でも透明にできる上、安定した高カロリーの燃料を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4682287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、油水分離現象を防止できる期間に限度があり、2〜3か月を経過すると油水分離現象が生じる可能性がある。また、加水燃料の透明度合いも油の透明度と比較すると低い値になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一度合成されたら二度と水と油に分離せず、しかも透明度が高く、通常の油と区別がつかないほどの加水燃料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の加水燃料の製造方法は、上記目的を達成するため、燃料油と水とを混合して加水燃料を生成する加水燃料の製造方法において、水の分子集合体を細分化してイオン化するイオン化工程と、
望ましくは水に添加剤として、界面活性作用を有する酵素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、塩化マグネシム、マグネシウム、過酸化水素水溶液を添加する添加剤投入工程と、
燃料油を撹拌混合タンクに投入し、この燃料油をミキサーにより循環させつつ、前記イオン化され、添加剤投入された水を混合し且つ撹拌する撹拌混合工程と、
撹拌混合された燃料油及び水に対し、
40℃〜80℃の温度と1.5〜9Paの気圧を加えた状態で撹拌混合工程を繰り返す融合工程とを備えたことを要旨とする。
【0009】
この方法において、上記イオン化工程及び添加剤投入工程により水の分子集合体が大幅に改善されるため、燃料油との親和性が向上し、燃料油の増大化を図ることができる。
【0010】
前記イオン化工程においては、水に15kHz〜60kHzの超音波を照射させ、また200kHz以上の超音波を照射させる、二つの照射動作を行うことができる。
また、このイオン化工程においては、水にSPG膜乳化技術等の、多孔質膜乳化技術を加えることにより、水の分子集合体を細分化することもできる。
また、前記添加剤投入工程においては、前記酵素は、燃料油及び水のそれぞれの体積に対して0.004重量%〜2重量%添加してもよく、或いは前記水酸化ナトリウムは、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%添加してもよく、さらには、過酸化水素水溶液は、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%添加してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成により、一度合成されたら二度と水と油に分離せず、しかも透明度が高く、通常の油と区別がつかないほどの加水燃料が実現される。また、本発明の加水燃料は既存の燃料油と単位分量当たりの発熱量が同等又はそれ以上であり、さらに既存の燃料油と比較して、燃焼後の燃焼室、排気管等の劣化や腐食が少ないといった効果がある。また本発明の加水燃料は、完全燃焼性に優れ、一酸化炭素が生成されにくく、また二酸化炭素の排出量も少ないなど、種々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る加水燃料の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図2】前記実施の形態において用いられる水に膜乳化技術を加えるための装置の構造を示す断面図である。
【
図3】前記実施の形態において用いられるSPGの相対容積を示すグラフ図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る原子状炭素の製造方法を実施するための製造装置を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る加水燃料の製造方法を説明するフローチャートである。この図に示されるように、本発明の加水燃料の製造方法は、原料となる水の分子集合体を細分化するイオン化工程1と、望ましくは水に添加剤を投入する添加剤投入工程2と、水と燃料油(以下、単に油という)を混合して撹拌する撹拌混合工程3と、撹拌された水と油を融合させる融合工程4とを有する。
【0014】
イオン化工程
イオン化工程1では、種々の方法で原料となる水の分子集合体を細分化する。第1の方法としては、水に超音波を照射させることにより、水の分子集合体を細分化する方法がある。この方法では、多孔質イオン化物質、天然又は人工鉱石、イオン発生材料を水の中に入れ水の対流に合わせて上記材料に水を接触させるようにする。その後、超音波を照射させることにより天然又は人工鉱石とイオンの発生を活性させる。この超音波を照射して得られる水の酸化還元電位ORP(mV)は、100mV〜−900mVが好ましい。ちなみに、通常の水道水の酸化還元電位ORP(mV)は500mV〜600mVが一般的である。超音波を照射させる工程では、10kHz〜60kHzの超音波を照射させる工程と200kHz以上の超音波を照射させる工程の二つの照射動作を行う。そして、この超音波を照射した時に酸素が放出されて含有水素比率は向上することになる。
上記天然又は人工鉱石としては、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、石英等を挙げることができる。
上記天然又は人工鉱石の粒径は、各種素材の充分な機能を得られる大きさに応じて適宜決定することができ、また取扱いのし易さ等を加味して、1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mm等の範囲から選択することが望ましい。
加えて、この水に添加剤として、界面活性作用を有する酵素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、塩化マグネシム、マグネシウム、過酸化水素水溶液を添加する添加剤投入することにより、水の酸化還元電位(ORP)はマイナス000mV〜−900mVになることが望ましい。
上記界面活性作用を有する酵素としては、アミラーゼ、カタラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ等を好適に使用することができる。
また添加剤として天然鉱石、例えば花崗岩などから注出するミネラルが使用可能である。この場合の添加ミネラル成分及び添加する個体の物質として以下を使用することができる。
例を挙げると、カルシウム、リン、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、セレン、亜鉛、バナジウム、ゲルマニウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、銅、タングステン、コバルト、リチウム、バリウム、鉄、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、チタン等である。
【0015】
水の分子集合体を細分化する第2の方法としては、水にSPG(ShirasuPorousGlass:シラス多孔質ガラス)膜乳化技術等の、多孔質膜乳化技術を加える方法がある。なお、この明細書では、多孔質膜乳化技術に用いる材料として上記SPGを用いた例を説明するが、同等の性質を持つ他の多孔質材料を用いることもできる。SPG膜乳化とは、SPG膜を介して、分散相液をある一定圧力で押し出すことにより、押し出される側をゆっくり流れている連続相液中に、均一な粒子として次々に分散させる乳化法である。この方法は、SPG膜モジュールを使用しての細分化工程を水の超音波照射工程の前後に実行する。
【0016】
図2は水を膜乳化させるための装置の構造を示す断面図である。この膜乳化装置10は、ハウジングを形成する装置本体11と、装置本体11の中に配置されたSPG膜12と、装置本体11の一端(
図2中の左端)に着脱自在に取り付けられるキャップ13と、キャップ13に装着されたスリーブ14と、装置本体11の他端(
図2中の右端)に着脱自在に取り付けられるキャップ15と、キャップ15に装着されたスリーブ16とから成る。装置本体11は、全体として両端が開放された円筒構造を有し、SPG膜12はこの円筒内部に長手方向に延び、且つ円筒内壁との間に隙間17を形成して設置される。また、SPG膜12の両端部分には、Oリング18,19がそれぞれ取り付けられており、キャップ13,15を装置本体11に取り付けたとき、Oリング18,19がそれぞれ装置本体11の内部端面に圧着して円筒内部を気密に保つようにしている。
図2において、左側のキャップ13は装置本体11から外れた状態で示され、右側のキャップ15は装置本体11にねじ込み等の方法で締結された状態で示されている。スリーブ14,16は雌ネジ構造を有しており、他の部材とネジ結合するようになっている。装置本体11の両端付近には横穴20と横穴21とがそれぞれ設けられ装置本体11の円筒内部と外部とを連通している。この膜乳化装置10は、SPG膜乳化、SPG膜バブリングなどあらゆるシーンで利用することができる。
【0017】
SPG膜乳化装置10の仕様の一例を示すと下記のものがある。
型番MD10L125(またはMD05L125):spgテクノ株式会社製
装置外形寸法(胴径×長さmm)φ25×L160φ25×L160
SPG膜の仕様(外径×長さmm)φ10×L125φ05×L125
材質SUS303
【0018】
SPGは、ミクロンサイズの均一な細孔を無数に有し、その細孔径をナノ単位からミクロン単位の広い範囲で設計することができることから、機能性ガラスとして応用できる。このSPGの製造方法としては、シラス石灰やホウ酸を添加して1350℃前後の温度でSPGの基礎ガラスを合成し形成する。これを加熱するとガラスの繊細組織に「相分離」という現象が生じる。CaO・B
2O
3は酸にとけやすい成分であるから、塩酸などで処理すると溶け出して、酸に溶解しないAl
2O
3・SiO
2系ガラスを骨格とするガラス多孔体ができ、これがSPGである。SPGは分離膜や吸着剤、抗がん剤など医薬品、食品、化粧品などの分野へ応用可能である。
【0019】
SPGの特徴としては、例えば下記のものがある。
●精密に制御された無数の貫通細孔が存在する。
●細孔の大きさを1ミリの10万分の5の微細孔(0.05μm)から50分の1(20μm)の比較的マクロな細孔に至る幅広い範囲で孔径設計ができる。
●表面化学修飾により表面を親水化ないしは疎水化したり、種々の有機官能基を導入することが可能である。
●多孔質にもかかわらず機械的強度が非常に高く、耐熱性と断熱性にも優れている。
●強アルカリとフッ酸を除く大部分の試薬に侵されない。
●かびや細菌に侵されない。
【0020】
図3は、一例として細孔径1.45μm、気孔率56%のSPGの相対容積(単位はvol%)を示すグラフ図である。この図から、SPGは相対容積がほぼ100%であることが分かる。
【0021】
SPG膜乳化操作は、SPG膜12を介して、分散相液(本実施の形態では水)を上記膜乳化装置10の横穴20から横穴21へかけて(或いはその逆向きへ)、ある一定圧力で押し出すことにより行う。この操作により、押し出される側をゆっくり流れている連続相液中に、均一な粒子として次々に分散させる乳化法である。特にこの方法は「直接膜乳化法」と呼ばれ、SPG細孔径の3〜4倍の粒子径を生成することができる。なお、事前に分散相/連続相の粗混合液を、粒子径をある程度揃える目的で、SPG膜12に一気に透過させる乳化方法(透過膜乳化法)も利用可能である。上記の膜乳化装置10を使用することにより、イオン化と水細分化の促進をする。
【0022】
添加剤投入工程
次に添加剤投入工程について説明する。この添加剤投入工程では、複数の添加剤が上記イオン化された水に投入(添加)される。第1の添加剤としては酵素を添加する。酵素の添加は、水に対して0.004〜0.1重量%の添加量で添加剤としての役目を十分に発揮するが、それよりも大きな比率でもよく、最大1.0%程度が適当である。酵素は水又は油、或いはこれらの両方に添加してもよい。
【0023】
第2の添加剤としては水にNaOH(水酸化ナトリウム)を添加する。水酸化ナトリウムの添加は、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%の添加量で添加剤としての役目を十分に発揮する。
第3の添加剤としては水に過酸化水素水溶液を添加する。過酸化水素水溶液の添加は、水に対して0.001重量%未満〜0.1重量%の添加量で添加剤としての役目を十分に発揮する。それぞれの添加剤の添加方法は、上述のようにイオン化及び水細分化が行われたイオン化工程の次に撹拌のできる容器又はタンクに添加剤を投入し撹拌混合操作することにより実行する。
【0024】
撹拌混合工程
次に撹拌混合工程について説明する。この撹拌混合工程では、上述のようにイオン化され添加剤投入後の水と、油とを混合する。その操作は次のようにして行う。先ず、油のみを撹拌混合タンクに投入し、この油を撹拌混合タンクOHRミキサーを通し循環させる。そこへ、前記イオン化され、添加剤投入された水を少量ずつ添加混合し融合させていく。その時のOHRミキサーへの圧力は3気圧以上が必要である。OHRミキサーの温度は15℃〜80℃に設定する。
【0025】
融合工程
次に融合工程について説明する。この融合工程では、上述のように撹拌混合後の水と油を融合する。その操作は次のようにして行う。すなわち、加温(40℃〜80℃)、加圧(1.5Pa以上20Pa以下)を加えたまま、混合されている油と水に対し撹拌混合工程を繰り返し行う。これにより得られた加水燃料は二度と水と油に分離せず、液体燃料としての機能を発揮する。
【0026】
(実施の形態2)
上記第1の実施の形態におけるイオン化工程1とは別の方法として、原料となる水に、天然鉱石より抽出した、凝縮ミネラルを添加する。複数の微細成分が含有する鉱石ミネラルを添加することで、イオン化の促進と水の微細化も行われる。この鉱石ミネラルには水の微細化、イオン化、発熱量を設けるための酸素欠乏効果を促す作用が存在することから、水のイオン化の有効手段の一つとして選択し得る。なお、上述のようにして生成された水は、通常水は通電しないのに対して、鉱石ミネラルの添加により通電性を有する。
そして、原料となる水に、天然鉱石より抽出した凝縮ミネラルを添加することにより、超音波を照射しなくても水のイオン化を十分に促進させることが出来る場合は、超音波の照射によるイオン化工程を省くことが出来る。
【0027】
(実施の形態3)
次に本発明の第3の実施の形態に係る加水燃料の製造方法を説明する。この実施の形態に係る加水燃料の製造方法も
図1のフローチャートに表された手順で実施される。ただし、第3の実施の形態においては、原料となる水として原子状炭素により生成されたマイナスイオン水を使用する。このマイナスイオン水は、それ自体がイオン化された状態であるから、第1及び第2の実施の形態におけるイオン化工程を省略することができ、加水燃料の製造効率を上げることができる。マイナスイオン水は、原子状炭素の粉末と水とを混合して撹拌し、その後濾過工程を経て生成される。したがって、この作業工程を本発明のイオン化工程と考えることもでき、このようにして生成したマイナスイオン水を、別に用意した原料となる水に混合させてもよい。また、通常の水では通電しないが、マイナスイオン水は通電することが出来るという性質を持つ。
【0028】
ここで、本実施の形態においてマイナスイオン水の生成に用いられる原子状炭素の製造方法及び装置について添付の図面を参照して説明する。
図4は本実施の形態に係る原子状炭素の製造方法を実施するための製造装置の一例を概略的に示す断面図である。この製造装置は、空気の入らない気密室29と窒素注入開閉弁22と熱分解ガス排出開閉弁23を持った管路を備えている。製造装置の内部には所定の温度まで上昇させるためのヒーター24が組み込まれている。さらに気密室29と同じ雰囲気(窒素雰囲気)を持つ炭素取り出し用のカートリッジ25と有機材料及び台26から構成されているものである。カートリッジ25は気密室29に着脱可能になっている。なお、
図4において、27は気密室29の有機材料及び台26の出入り口に設けられたシャッターであり、閉鎖されたときは気密室29を気密或いは窒素雰囲気に保つ。28はカートリッジ25に設けられた蓋或いは開閉扉であり、閉鎖されたときはカートリッジ25を気密或いは窒素雰囲気に保つ。
【0029】
次に本実施の形態に係る原子状炭素を製造するには最初に台26に原料(木材、竹などの有機物)を入れ、ヒーター24が組み込まれている気密室29に装填する(押し込む)。次に窒素注入開閉弁22より窒素を注入し、同時に熱分解ガス排出開閉弁23より内部の空気を排出し気密室29とカートリッジ25の内部を窒素雰囲気にし、ヒーター24により加熱するものである。第1段階として原料は水分を含むものであるから、100℃〜150℃に温度を保ち(150℃に近い温度が好ましい)、水分を充分に気化させ、気化した水分を気密室29外に排出する。これと同時に同量の窒素を窒素注入開閉弁22より注入し、常に気密室29内を原料である有機材料が酸化しない状態、すなわち、気密な窒素雰囲気にしておくことが望ましい。更にヒーター24を用いて完全乾燥状態になった原料を加熱し、350℃〜450℃まで順次上昇させ原料に含まれる成分の熱分解を行うものである。450℃に至るまで発生した原料成分はすべて気密室外に排出し、その都度窒素が注入され不活性雰囲気を保つことが必要である。すると原料中の炭素と結合している成分が炭素を残して遊離し、450℃で気化しない本実施の形態に係る原子状炭素が残存する。ここで炭素の持つ特性として、有機物状態の炭素と結晶化し無機質となる同素体結合、すなわちグラファイト化する励起エネルギーは450℃以上の高温が必要である。従って本実施の形態の原子状炭素はグラファイトが形成されない450℃以下とすることが必要である。その後ヒーター24を停止して、窒素注入開閉弁22より低温の窒素を注入し、同時に熱分解ガス排出開閉弁23より内部の高温の窒素ガスを排出させて気密室29とカートリッジ25の内部を50℃〜100℃程度まで冷却した後、原子状炭素を台26とともに気密室29からカートリッジ25へ移動させ、カートリッジ25の蓋28を閉鎖して、このカートリッジ25の内部を窒素雰囲気に保ったまま気密室29から離脱させる。気密室29についても、シャッター27を閉鎖して、次の動作に備える。
【0030】
残存した炭素は炭素原子が1個(つまり単体)あるいは炭素原子が2乃至5個から10個程度の鎖状に結合した状態の極微粒子からなり、この極微粒子が原子間引力により互いに不規則に集合した非結晶な原子状炭素を得ることができる。さらに原子状炭素は各工程を終了した後、材料として使用能力を最大限発揮するため、カートリッジ25は炭素を酸化させることのない窒素雰囲気を保ったまま密閉し保管する必要がある。カートリッジ25に保管された原子状炭素は空気に触れることがないので、酸素や他の物質と化合しない。そして、酸素や他の物質と化合しない原子状炭素は必要に応じて粉砕されたりして、粒子、或いは極微粒子となる。原子状炭素の粉砕は、当該原子状炭素が得られた後ならどの製造工程において行ってもよいが、例えばカートリッジ26に密封状態で収容する前の工程で気密室29の中で450℃以下の不活性雰囲気において極微粒径に粉砕することができる。或いは50℃〜100℃程度まで冷却した後に気密室1の中で不活性雰囲気において極微粒径に粉砕してもよい。さらに、上記冷却後、カートリッジ26に密封状態で収容して運搬し、粉砕機により粉砕加工してもよい。上記原子状炭素はそれ自体が炭素原子1個、或いは数個から成り原子状であり、酸素や他の物質と化合していないため、水に混入したときは反応性の富んだ高マイナスイオン水(pHは11或いはそれ以上)になる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明において、油と改善された水を混合して得られた加水燃料は、一度合成されたら二度と水と油に分離せず、しかも透明度が高く、通常の油と区別がつかないほどの特性を持ち、化石燃料の有効利用の上で有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 イオン化工程
2 添加剤投入工程
3 撹拌混合工程
4 融合工程
10 膜乳化装置
11 装置本体
12 SPG膜
13,15 キャップ
14,16 スリーブ
17 隙間
18,19 Oリング
20,21 横穴
22 窒素注入開閉弁
23 熱分解ガス排出開閉弁
24 ヒーター
25 カートリッジ
26 台
27 シャッター
28 蓋
29 気密室