【実施例】
【0074】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により限定および制限されない。
【0075】
[実施例1]
(緑色光照射によるオオバの出蕾抑制)
無加温ビニール温室において、照射光強度を5〜10μmol/m
2/s、照射時間5時間(18時〜23時)として、平成22年10月15日から平成22年11月18日まで毎日、緑色光をオオバ(「大葉青しそ」、タキイ種苗株式会社製)に照射し、出蕾を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDロープライトを用い、株の上方から照射した。前記オオバとしては、種子をロックウールキューブに播種し、育苗室において、室温25℃、蛍光灯照明による16時間日長で育てた苗を用いた。その他の栽培条件は、公知のロックウール養液栽培法に従った。無照射および本実施例において、n=6(栽培終了時)の平均値としての出蕾率を求めた。
【0076】
その結果を表1に示す。表1に示すように、無照射では全て出蕾したが、緑色光を照射した場合、出蕾は見られなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
また、収穫調査(オオバの規格 M:8.8〜9.4cmを目安)を行った。その結果を表2に示す。表2に示すように、緑色光を照射した場合、出蕾が抑制されたことから、継続して収穫可能な葉が形成され、収量が増加した。
【0079】
【表2】
【0080】
[実施例2]
(緑色光照射によるイチゴの休眠抑制)
加温ビニール温室の実圃場でイチゴ(「さぬき姫」、JA香川県より購入)を用い、平成22年12月初旬から平成23年3月中旬まで、緑色光を照射しながら栽培を行い、緑色光照射による休眠抑制効果を測定した。照射光強度は、0.2〜0.4μmol/m
2/sとした。緑色光の光源は、緑色LED電球および緑色LEDロープライトを用いた。緑色LED電球に関しては、照射区域に緑色LED電球を縦1列に配置した1列区と、2列に配置した2列区とを設けた。以下、本例において、緑色LED電球を照射した区域(1列区および2列区)を、緑色電球区、緑色LEDロープライトを照射した区域を、ロープライト区という。電照方法は光中断とし、緑色電球区では、23:00〜24:00の1時間、毎日照射し、ロープライト区では、20:00〜22:00の2時間、月、水、金曜日に照射した。試料数(n)は、10/区とした。その他の栽培条件は、公知の養液栽培法に従った。
【0081】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、照射光強度を0.4〜0.8μmol/m
2/s、電照方法は23:00〜24:00の1時間毎日照射として、休眠抑制効果を測定した。本比較例においては、照射区域に白熱灯を縦1列に配置した。以下、本例において、白熱灯を照射した区域を、対照区という。
【0082】
図3に、本実施例の緑色電球区および本比較例における光源の配置と、照射光強度を表した図を示す。
図3左端は、2列区の図、中央は1列区の図、右端は、対照区の図である。本実施例のロープライト区については、図示していないが、イチゴの植え付け面に緑色LEDロープライトを設置して、緑色光を照射した。
【0083】
測定結果を、
図4に示す。
図4において、(a)は葉柄長、(b)は葉面積、(c)は葉色、(d)はクラウン径の結果である。
図4に示すように、対照区の株と、緑色電球区の株およびロープライト区の株とは、生育の状態がほぼ同じであり、緑色光照射によって休眠抑制効果が得られた。また、2列区およびロープライト区の生育が特に良好であることがわかった。
【0084】
[実施例3]
(緑色光照射によるオオバの出蕾抑制)
ビニール温室において、オオバ(香北在来種)を平成23年5月28日に定植し、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m
2/s、照射時間1〜2時間として、緑色光を平成23年12月末まで毎日照射して栽培し、出蕾を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDを使用した。
【0085】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとした以外は同様にして、出蕾を調査した。
【0086】
その結果、緑色光を照射した区域では、5月末の定植から12月上旬まで出蕾は見られなかった。また、緑色光を照射した区域において、一部(植物体の陰になり照度が低くなる場所)で、日長の最も短くなる12月中旬(冬至)に出蕾が見られたが、これらの現象は白熱灯でも見られたことから、緑色光は白熱灯と同等以上の出蕾抑制効果があることがわかった。
【0087】
[実施例4]
(オオバのリグニン蓄積量への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m
2/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、オオバのリグニン蓄積量への緑色光照射の影響を調査した。本実施例において、試料数は、n=5とした。
【0088】
平成23年9月27日に前記オオバを採取し、改良Wiesner試薬(フロログリシノール飽和溶液/5%HCl)を各3ml滴下し染色した。その後、オオバの葉片をシャーレに入れ、染色30分後の染色強度を、葉脈全体が染色された場合は「染色濃」とし、1/2程度染色された場合は「染色中」とし、1/4程度染色された場合は「染色薄」とし、染色が見られない場合は「染色なし」として、4段階で評価した。
【0089】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m
2/sとした以外は同様にして、オオバのリグニン蓄積量を調べた。
【0090】
その結果を、
図5に示す。
図5に示すように、白熱灯照射および赤色LED照射の場合、「染色中」の割合が全体の20%にとどまり、また、「染色濃」の結果は見られなかったのに対し、緑色LED照射の場合、「染色濃」が20%、「染色中」が40%見られた。また、
図6に、緑色LED照射のオオバおよび白熱灯照射のオオバのリグニン染色結果の写真を示す。
図6において、右側が緑色LED照射のオオバのリグニン染色結果を示す写真であり、左側が白熱灯照射のオオバのリグニン染色結果を示す写真である。
図6において、AおよびA´で示す領域は、染色が見られた領域である。
図6に示すように、白熱灯照射のオオバよりも、緑色LED照射のオオバの方が、染色された領域が広かった。これにより、緑色光をオオバに照射することで、リグニンの蓄積が促進されることがわかった。
【0091】
[実施例5]
(1)緑色光照射によるオオバの斑点病抑制
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m
2/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、斑点病の発生に及ぼす緑色光照射の影響を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDを用いた。
【0092】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m
2/sとした以外は同様にして、斑点病の発生に及ぼす影響を調査した。本実施例および比較例において、試料数はn=70株とした。
【0093】
その結果、白熱灯の場合は、全体の54.3%のオオバに斑点病が発生し、赤色LEDの場合は、全体の48.6%のオオバに斑点病が発生したのに対し、緑色LEDを使用した場合、斑点病が発生したオオバは全体の8.6%にとどまった。
【0094】
また、平成23年8月1日から平成23年12月21日までにかけて、試料(n=10)を採取し、斑点病発生の推移を調査した。その結果を
図7に示す。
図7に示すように、白熱灯および赤色LEDで照射した場合、8月〜9月に斑点病が著しく発生した。これに対し、緑色LEDで照射したオオバでは、8月〜9月における斑点病の発生が顕著に抑制された。
【0095】
(2)光強度向上が及ぼす斑点病抑制への影響
照射光強度を向上させた場合の斑点病抑制効果を調べるため、照射期間を平成24年5月22日から平成24年8月末までとし、緑色光の光源として、標準型緑色LED電球(以下「標準型」という。)および光強度を前記標準型の1.8倍に向上させた高輝度型緑色LED電球(以下「高輝度型」という。)を使用した以外は、前述と同様にして、斑点病の発生率を調べた。標準型および高輝度型の仕様比較を表3に、光量子量の比較を表4に示す。本実施例において、試料数は、n=25とした。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m
2/sとした以外は同様にして、斑点病の発生に及ぼす影響を調査した。
【0099】
その結果を
図8に示す。
図8に示すように、高輝度型を用いた場合には、標準型を用いた場合よりもさらに斑点病の発生が抑制された。これにより、照射光強度を向上させた高輝度型緑色電球を用いることで、さらに斑点病抑制効果が向上することがわかった。
【0100】
[実施例6]
(貯蔵中のオオバの斑点病発生への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、前記実施例5で使用した標準型および高輝度型の緑色LEDを用い、照射時間1〜2時間として、平成24年5月22日から平成24年8月末まで毎日、緑色光を照射して栽培したオオバ(香北在来種)について、収穫後貯蔵中の斑点病の発生を調査した。
【0101】
本実施例では、平成24年8月29日に、病斑のないオオバ10枚を選んで採取し、5℃条件下で、平成24年8月30日から平成24年9月10日までの11日間貯蔵し、斑点病発生を調査した。
【0102】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとした以外は同様にして、斑点病発生を調べた。
【0103】
その結果を
図9に示す。標準型および高輝度型の緑色LEDを照射して栽培したオオバについては、白熱灯照射で栽培したオオバと比較し、貯蔵中の斑点病の発生が抑制された。
【0104】
[実施例7]
(オオバの水分減少率への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m
2/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光を照射して栽培したオオバ(香北在来種)について、収穫後の水分減少率を調査した。
【0105】
本実施例では、平成23年8月28日にオオバ10枚を採取し、チャック付きビニール袋に入れて家庭用冷蔵庫野菜室にて保存し、平成23年9月6日から平成24年9月20日までの14日間、水分減少率を調査した。保存開始から3日目までは、霧吹きによる保水処理を行った。
【0106】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用した以外は同様にして、水分減少率を調べた。
【0107】
その結果を、
図10に示す。
図10に示すように、緑色LED照射のオオバは、白熱灯照射のオオバに比べて、水分減少率が低くかった。これにより、緑色光照射によって、オオバの水分減少が抑制されることがわかった。
【0108】
[実施例8]
(オオバの水分減少率への緑色光照射の影響)
前記実施例7と同様にして栽培したオオバについて、収穫後の水分減少率を調査した。
【0109】
本実施例では、平成23年12月21日にオオバ10枚を採取し、チャック付きビニール袋に入れて家庭用冷蔵庫野菜室にて保存し、平成23年12月22日から平成24年2月2日までの42日間、水分減少率を調査した。保存開始から葉柄基部に水を浸した紙片(「キムワイプ」、日本製紙クレシア社製)を巻き付け、貯蔵期間中において保水処理を行った。
【0110】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用した以外は同様にして、水分減少率を調べた。
【0111】
その結果を、
図11に示す。
図11において、LED・Gは、緑色LEDを、LED・Rは、赤色LEDを示す。
図11に示すように、緑色LED照射のオオバは、白熱灯照射および赤色LED照射のオオバに比べて、水分減少率が低かった。これにより、緑色光照射によって、オオバの水分減少が抑制されることがわかった。
【0112】
[実施例9]
(緑色光照射によるオオバのポリフェノール含有量への影響)
ビニール温室において、前記実施例5で使用した標準型および高輝度型の緑色LEDを用い、照射時間1〜2時間として、平成24年4月26日から毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、オオバのポリフェノール含有量を測定した。本実施例では、試料数はn=20とした。本実施例において、試料の採取は、平成24年5月22日から平成24年8月9日までの間で行った。
【0113】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとした以外は同様にして、オオバのポリフェノール含有量を測定した。
【0114】
その結果を、
図12に示す。
図12に示すように、白熱灯を使用した場合と比較して、標準型および高輝度型の緑色LEDを使用した場合の方が、ポリフェノール含有量が高かった。また、高輝度型緑色LEDを使用した場合、電照開始初期からポリフェノール含有量の向上が見られた。さらに、緑色LEDで電照を続けることで、ポリフェノール向上効果は持続することがわかった。
【0115】
[実施例10]
(緑色光照射のオオバの生育への影響)
本実施例では、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、緑色光照射のオオバの生育への影響を調べた。本実施例において、調査項目は、主枝長、主枝節数および茎径とした。本実施例において、試料数は、n=10とした。
【0116】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を
0.5〜1.1μmol/m
2/sとした以外は同様にして、成育への影響を調べた。
【0117】
その結果を、
図13に示す。
図13(a)は、主枝長を示し、
図13(b)は、主枝節数(節)を示し、
図13(c)は、茎径を示す。
図13(a)〜(c)に示すとおり、白熱灯を使用した場合と比較して、緑色光照射により、主枝長、主枝節数、茎径すべてが増加し、成育が促進されることがわかった。
【0118】
[実施例11]
(緑色光照射のオオバの根への影響)
本実施例では、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、栽培終了時のオオバについて、根の外観の確認と、根のTTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)染色による活性の測定を行い、緑色光照射のオオバの根への影響を調べた。まず、5株のオオバから根を採取し、水洗後に前記根をプラスチックシャーレに入れ、0.1%TTC溶液を満たし、37℃暗所で5.5時間反応させた。その後、染色反応を示す根を1gずつ採取し、20mlの酢酸エチル中で2分磨砕し、抽出液を得た。そして、波長480nmにおける抽出液の吸光度を測定した。
【0119】
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m
2/sとした以外は同様にして、根の外観の確認と根のTTC活性の測定を行った。
【0120】
その結果を
図14および
図15に示す。
図14は、根の状態を撮影した写真であり、
図15は、根のTTC活性を測定したグラフである。
図14に示すように、緑色LEDで照射したオオバは、白熱灯および赤色LEDを使用した場合と比較して、根が成長して密集していることがわかる。また、
図15に示すように、緑色LEDで照射したオオバは、赤色LED照射および白熱灯照射のオオバと比べて、TTC活性(ABS WL:480nm)が高いことから、根の活性が高く、栽培終了時も生育が良好であることがわかった。
【0121】
[実施例12]
(緑色光照射のオオバの品質への影響)
本実施例では、緑色光照射のオオバの品質(ビタミンC含有量、葉の光沢)への影響を調査した。
【0122】
まず、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、ビタミンC含有量を調べた。本実施例では、オオバの試料を同量の5%メタリン酸水溶液で粉砕して濾過を行い、得られた濾液を測定試料として、小型反射式光度計RQフレックス(Merck社製)による簡易分析により、ビタミンC含有量を調査した。本実施例において、試料数は、n=44とした。また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用した以外は同様にして、ビタミンC含有量を調べた。
【0123】
その結果を
図16(a)に示す。
図16(a)に示すように、緑色LEDを照射したオオバは、赤色LED照射および白熱灯照射のオオバと比べて、ビタミンC含有量が向上した。
【0124】
次に、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、葉の光沢を調べた。本実施例では、分光測色計(コニカミノルタ センシング(株)製 CM−700d)を用いて試料1枚につき2点を測定し、得られた計測値のL値を光沢の指標とした。本実施例において、試料数は、n=10とした。また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m
2/sとした以外は同様にして、葉の光沢を調べた。
【0125】
その結果を、
図16(b)に示す。
図16(b)に示すように、緑色LEDを照射したオオバは、白熱灯照射のオオバと比べて、葉の光沢の向上が見られた。