特許第6541285号(P6541285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541285デラミネーション防止複合封止材および太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6541285
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】デラミネーション防止複合封止材および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20190628BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20190628BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   C08L23/08
   C08K5/54
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-11645(P2018-11645)
(22)【出願日】2018年1月26日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】518031262
【氏名又は名称】株式会社ハイブリッド太陽電池研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】仲濱 秀斉
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−011116(JP,A)
【文献】 特開2015−056599(JP,A)
【文献】 特開平08−306947(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/077866(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/032560(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/132589(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/128861(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/17940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
C08K 5/54
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーストレート型太陽電池モジュールの充填材として、(A)EVA(エチレン酢酸ビニルアセテート)封止材/(B)エチレン環状オレフィン共重合体フィルム/(A)EVA封止材の3層構造からなる以下の(A)、(B)の品質;
(A)EVA封止材のDSCで測定した融点;Tmが55℃〜75℃、
(B)エチレン環状オレフィン共重合体フィルムのDSCで測定したガラス転移温度Tg;70℃〜80℃で、かつ、そのフィルム厚みが20μm〜38μm、
を満たしており、
前記(B)層の樹脂組成物は、エチレン環状オレフィン共重合体フィルムの成膜前に作成するマスターバッチに紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐光安定剤が添加されており、そのガラス転移温度;Tgが原料樹脂のTgと比べ2℃から7℃低下するものであり、
前記樹脂組成物は、シランカップリング剤を添加したものである、デラミネーション防止複合封止材。
【請求項2】
結晶系の太陽電池モジュールであって、受光面側とバックシート側の両面に請求項1のデラミネーション防止複合封止材を使用した、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デラミネーション防止複合封止材および太陽電池モジュールに関し、詳しくは、太陽電池モジュールにおける太陽電池発電素子の封止材およびその製造方法並びにそれを用いて作製された太陽電池モジュールに関する。さらに詳しくは、カバーガラスと発電素子の間、あるいは、バックシートと発電素子の間、あるいは、発電素子の表面、裏面に積層により配置することによって、超長期間において、デラミネーション(層間剥離)不良を一切起こさない太陽電池用デラミネーション防止フィルムおよびそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの生産量は年々増加し、低炭素化の代表格であった原子力発電所に取って代わる基幹エネルギー源になりつつある。中東では、2セント/Wのコストまで低下しており、名実ともに主要なエネルギー源となってきている。
【0003】
太陽電池モジュールの拡大は、W単価の低下、つまり、セルの変換効率向上が大きく寄与している。結晶系では、単結晶ウエハの低コスト化に加え、PERCセルやヘテロジャンクションセル、N型セルなどが次々に開発され、市場に投入されている。
発電効率向上には、インターコネクタの本数の増加も寄与している。2本から3本、現在は4本が主流となり、5本化も近い将来に具現化される勢いである。これに伴い、フィンガー電極の線幅も狭くなっており、5本化では、フィンガー本数210本、その間隔は30μmとなり、セル表面の凹凸がますます増加する傾向にある。
【0004】
一方で、インターコネクタの断面積は大きいほど電気抵抗が減り、モジュールの発電変換効率アップに大きく寄与することが知られている。このインターコネクタの高さは、通常は120μmであるが、発電効率向上を狙って、150μm、200μmへと厚みの大きいタイプの採用が増えている。このように、封止材のセルへのラミネーション加工は難しい方向へ進んでおり、セル表面の凸凹に対応した新しい材料および封止材が求められている。
【0005】
ところで、産業用太陽光発電において、太陽電池モジュール交換に繋がるトラブルが2つある。それは、PID(Potential Induced Degradation)とデラミネーション不良である。
【0006】
PIDは、大規模な太陽光発電所において、出力が急激に低下する現象で、メガソーラーでよく見られる事例となっている。その発生原因として、太陽電池モジュール内の太陽電池セルと、フレームの間で大きな電位差・電圧の差ができているところに、高い湿度や温度といった特殊環境が加わることがある。このとき、発電した電流がセル上のフィンガー電極で集められる。そして、インターコネクタを通してパネルのジャンクションBOXケーブルに直列に流れる経路の中で、このインターコネクタに電極に流れず、セル内部でシャント(ショート)する。この電流は、「漏れ電流」と称され、太陽電池モジュールの発電劣化現象の劣化促進に大きく関わっていることが知られている。PID発生セルは太陽光を受けても発電しなくなるため、発電量が激減する現象である。
【0007】
一般にトランスレスの接地で起こる現象と言われているが、トランス設置では、プラント設備費が高いこと、DC/AC変換効率が低いことからほとんど採用されておらず、太陽電池モジュール側での対策により、現在は、PIDフリーの製品が多く生産されている。
【0008】
PID対策の特許文献は多く存在する。そのメカニズムから対策を示し、技術公開しているのは、特許公報第5965004号である。これによれば、特許文献1には、セルとカバーガラスの間にフッ素系フィルムなどによる高絶縁フィルムを積層する技術が紹介されている。あるいは、特許文献2には、ガラスから放出されるアルカリ金属の影響を軽減するため、ガラス表面をシランカップリング剤で表面処理技術が紹介されている。また特許文献3には、環状オレフィン系樹脂からなる層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる層とを有し、少なくとも1層の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる層が、前記環状オレフィン系樹脂からなる層を基準として太陽電池セルから遠い側に配置した太陽電池モジュールが開示されている。
【0009】
特許文献4では、PID現象の発生メカニズムを開示し、その対策として、ナトリウムバリア層として、環状オレフィン樹脂フィルムをカバーガラスとセルの間に積層することを開示している。
【0010】
P型シリコン半導体において、カバーガラス側のシリコンセル面積の15%程度以上の面積をナトリウムイオンが堆積して覆うと、pn構造のn層の一部(15%面積以上)がP化し、その結果、その部分にシャント電流が流れ、そのセルは半導体の性質を失い、発電しなくなる。つまり、PID現象はセルに関するトラブルであり、その対策として、ナトリウムバリアフィルムをガラスと発電素子の間に位置することによって防御できるとしている。
【0011】
デラミネーション(白濁)の発生状況を図1に示す。インターコネクタを起点として、封止材の白濁部分が広がる現象で、太陽電池モジュールのエッジ部に近いセルのインターコネクタ部から発生し、その白濁部は、インターコネクタに沿って拡大する現象である。この白濁した太陽電池モジュールは、外観不良として交換は必須である。太陽電池モジュールメーカとしては、非常に怖い現象である。これまでは、15年以上稼働した発電プラントで見受けられる問題であったが、近年、10年未満程度で発生する事例が観られ、大きな問題になっている。
【0012】
デラミネーションは、セルからの封止材の剥がれにより、その部分は、光が散乱されるため白濁して見えている。つまり、インターコネクタを含むその周辺のEVA封止材とセル表面との「接着剥がれ」の問題である。
太陽電池モジュールにおけるこのデラミネーション発生メカニズムが解き明かされていないため、その対策技術が全くなく、製品保証の範疇で、「パネル交換」の対応しかできないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2013−502051号公報
【特許文献2】特開2008−273783号公報
【特許文献3】特開2006−198922号公報
【特許文献4】特開2015−179827号公報
【発明の概要】
【0014】
太陽電池モジュールにおいて、デラミネーションが発生しているモジュールは、10年以上、20年程度発電稼働しているものに観られることがある。また、その発生場所は、太陽電池モジュールの周辺部のセルで、セル表面のインターコネクタ部である。デラミネーションの進行は、インターコネクタに沿っており、EVA封止材の剥離である。さらに詳細に観察するとモジュール内の横バスバーは、茶色に着色し、フレーム方向にその変色部が流れている様子がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
デラミネーションは、インターコネクタ部周辺とセル表面の「接着」不良である。その対策発明として、1.EVA封止材の樹脂特性を踏まえたEVA封止材の加工条件との関係、2.セル表面の凹凸から推定される接着への物理的関係、3.セル表面と封止材の化学接着の長期信頼性に及ぼす環境劣化因子との関係を検討した。本発明の目的は、一切のデラミネーションを発生しない、太陽電池モジュール用デラミネーション防止フィルム及びそれを組み込んだ複合封止材並びにそれを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
鋭意検討の結果、EVA封止材は、セル表面、インターコネクタ、フィンガー電極との接着において、最も強固な接着力を発揮するものであり、50年間の実績を有する。その証拠として、世界中で生産されている太陽電池モジュールの約90%以上でEVA封止材が採用されている。つまり、初期(認証試験条件)の機械的接着シートとしては、太陽電池用封止材として、最良のシートである。よって、カバーガラスとの接着およびセルの封止(接着)する充填材は、EVA封止材シートを適用する。以下、デラミネーション発生メカニズムを説明し、EVA封止材を適用する対策発明を以下に記述する。
【0017】
EVA封止材とセル表面の間で発生するデラミネーションは、セル上のインターコネクタおよびフィンガー電極との凹凸部がすべての起点となっている。
太陽電池モジュール生産工程のラミネータ工程では、レイアップ工程で準備した、カバーガラスを最下部として、その上にEVA封止シート、直列配線したセルストリング、EVA封止シート、最上部にバックシートの順番に積層した太陽電池モジュールの層構造に熱と圧力を加えて、太陽電池モジュールを成型する。これにアルミフレームとジャンクションボックスを取り付けて製品となる。
【0018】
ラミネートの加工条件は、一般のゴム製品の金型成型と同じイメージで行われている。具体的には、EVA封止シートで、セルを覆う(封止)ため、EVA樹脂への予熱(予熱工程)と加圧して熱硬化するプレス工程を経て成型される。太陽電池の世界では、この予熱工程を「真空時間」と称し、熱板の熱はガラスを通してEVA封止材、およびバックシートへと伝わる。
【0019】
結晶性の樹脂の場合は、少なくともその樹脂の融点;Tm温度以上、非結晶性樹脂の場合は、ガラス転移温度;Tg以上になるまで待つ必要があり、これが予熱工程である。EVAは、結晶性の樹脂であり、融点は、エチレンと共重合する酢酸ビニルモノマーの含量により変化する。一般には、40℃から90℃まで変化した銘柄を入手することができる。
【0020】
太陽電池モジュールのサイズは大型化しており、シリコンセルを60枚直列したモジュールは、60直タイプと言われ、約幅900mm、約縦長さ1600mmの大きさである。ガラスの厚みは3mm強であり、熱板への押さえ付ける板は、ダイヤフラムゴムシートであり、熱源機能はない。そのため、ガラスは、ラミネータ熱板上で、「反り」が発生する。60直タイプでは、そのエッジ部は5cm程度も浮き上がる。よって、ガラス中心部とガラス周辺部では、温度上昇速度が全く異なっており、ガラスの「反り」が少なくなり、ガラス周辺部のEVA封止材がその材料の融点以上になるまで、ダイヤフラムゴムシートにて加圧できない。
【0021】
一方、セル上に覆い被さっているEVA封止材の状態を図4に示す。インターコネクタの高さは、EVA封止材厚みの半分程度もあり、インターコネクタの高さを一辺とする45°直角三角形の「隙間」(斜線部)が存在する。この隙間部分をラミネータ工程で埋めることが「封止」の機能発現には必要不可欠である。
【0022】
この隙間を埋めることは、樹脂加工技術に関することであり、ガラス面上の中心部、周辺部のラミネート加工時間内の温度上昇曲線を得ながら、その材料に適した真空時間決定が行われている。また、生産の品質管理としても重要な条件である。EVA樹脂の融点以下の温度で、プレスされた部分(ガラス周辺部)は、樹脂が流動しないので、隙間を充満することはない。そのため、EVA架橋反応と同時に発生する有機過酸化物の分解ガスがこの部分に集まり、成型後、ガラス周辺のセルのインターコネクタ部や横バスバー部分の凹凸部分に0.1〜1mm程度の無数の気泡が発生する。これは外観不良品として廃棄される。
【0023】
しかし、EVA封止材とセル界面の化学接着反応が不十分という状態で止まった場合は、外観不良としては識別できないので、規格出力を確認後、製品は出荷され、発電プラントに設置されることになる。こうした製品が稼働10年経過ごろ、デラミネーション不良を発生したものと推測できる。
【0024】
現在、生産コストダウンを目的に、より高速にセルとの接着強度を発揮する、ウルトラファーストキュアタイプのEVA封止材が使用されている。ラミネータ工程での加工時間短縮は、生産コストダウンの切り札であり、生産現場では常に短縮化のプレッシャが加わっている。
【0025】
先に述べたEVAの予熱時間の短縮は、ガラスの「反り」が発生する現在の加工法ではその解消は難しい。生産現場では、コストダウンを目的に製品外観検査による予熱時間短縮化の検討を日々行っている。こうした中、熱板上の温度がばらつき、EVA樹脂の融点以上の温度に上昇しない部分が生じる条件で生産される製造ラインでは、潜在的にインターコネクタ回りにデラミネーション発生する製品が出荷される可能性が極めて高い状況にある。
【0026】
デラミネーション発生は、上述した加工条件が及ぼすEVA封止材の流動性と関係することを述べた。この隙間が充填されていることが、デラミネーション発生対策の根幹である。その上で、EVA封止材とセル表面および凹凸部、その代表であるインターコネクタとの化学接着構造が環境劣化因子に影響を受けることなく、長期安定化する技術を検討し、本発明に至った。
【0027】
スーパーストレート型太陽電池モジュールの充填材として、(A)EVA(エチレン酢酸ビニルアセテート)封止材/(B)エチレン環状オレフィン共重合体フィルム/(A)EVA封止材の3層構造からなる複合封止材において、以下の(A)(B)の品質を満たしているデラミネーション防止フィルムおよびデラミネーション防止複合封止材が提供される。
【0028】
(A)EVA封止材のDSCで測定した融点;Tmが55℃〜75℃。
(B)エチレン環状オレフィン共重合体フィルムのDSCで測定したガラス転移温度Tg;0℃〜0℃で、かつ、そのフィルム厚みが20μm〜38μmである。
【0029】
EVA樹脂は、分子内にエステル構造を有しているので熱的に弱く、150℃以下のラミネート成型温度がメーカより推奨されている。一方、この極性基;酢酸ビニル構造を有することで、シランカップリング反応を通して、シリコンセルやガラスと強固な接着を発揮することができる。よって、デラミネーション発生防止には、強い接着を得ることができるEVA封止材を複合封止材の構成材として使用する。融点は55℃〜75℃、好ましくは、58℃〜70℃さらに好ましくは、60℃〜65℃である。55℃を下回る品質は酢酸ビニルの含量が高いことを意味するので、ラミネータ成型温度で劣化し易くなり、脱酢酸が起こり易くなるので好ましくない。75℃を超えるとラミネータ加工時のガラス周辺部の温度の方が低くなることもあり得る温度なので、上述のインターコネクタ回りの「隙間」が埋まらない可能性のある成型となるので好ましくない。
【0030】
セル上の凹凸部がEVA樹脂で埋まったのち、架橋剤:有機過酸化物の分解により発生したラジカルで、EVA封止材の架橋構造の形成とEVAの酢酸ビニルとシランカップリング剤を介して、セル表面との間にポリシラノール結合構造が形成され、接着反応が完了する。接着反応は、温度と圧力により進行し、不十分な場合は、デラミネーション発生の原因となる。生産工程では、セルとEVAの接着強度を測定し、一定の強度が発現されていることを確認しながら生産している。
【0031】
EVA樹脂の分子構造および接着界面のポリシラノール構造は湿気(水蒸気)に弱い、所謂、加水分解し易い構造である。さらにアルカリ環境下では、室温で容易にアルカリ加水分解が進行することが知られている。10年、20年という長期間を経たのち、デラミネーションが発生する原因は、この加水分解反応が関わっているからであると結論付けた。
【0032】
EVA封止材とガラスとの接着のガラス周辺部、その端部は、常に雨水により濡れる機会が多い。晴天時には、フレーム内部の雨水が水蒸気化し、EVA封止材の層内に侵入し易い状況になることは容易に想定できる。また、発電時には、ガラスからフレームに「漏れ電流」が発生する。そのことによって、端部は、ガラス中のナトリウムの移動が起こり、アルカリ性となり、アルカリ加水分解反応がフレーム内のガラス周辺部に起こる。そこが起点となって、水蒸気の侵入経路の入口が形成される。インターコネクタ周辺の凹凸部に「隙間」があれば、容易に水蒸気侵入がモジュール内に起こり、インターコネクタに沿ってデラミネーションが進行する。その「隙間」がなくとも、インターコネクタ回りの接着強度が低下(不完全)している太陽電池モジュールは、同様にデラミネーションが進行すると考えられる。インターコネクタ周辺部の接着界面は水蒸気侵入により、次々に加水分解反応が進行し、このデラミネーションが伝搬、モジュール内部に位置するセルまで到達し、ついには全面白濁の太陽電池モジュールとなる。
【0033】
このデラミネーション発生メカニズムを踏まえ、初期界面接着力最大を発揮するEVA封止材を用い、加水分解し難い層構造を提供することでデラミネーション防止できる充填材を完成するに至った。その複合封止材の層構造を図3に示す。EVA封止材とセル表面の接着界面に水蒸気が通過し難い機能を持たせるため、水蒸気バリア性が極めて高い、環状オレフィンフィルムをそのEVA封止材でサンドイッチした構造を考案した。そのためには、環状オレフィンフィルムとEVAは分子レベルで一体化させる必要がある。EVA含有の有機過酸化物架橋剤により、環状オレフィンフィルムのエチレン連鎖とEVAのエチレン連鎖の水素引抜によるラジカル部分の架橋反応により、それぞれの界面は分子レベルで一体化するので、本複合封止材は、EVAの接着力を保持しながら、水蒸気バリア性を発現することができる。
【0034】
EVA封止材にサンドイッチされた環状オレフィンフィルムのTgは、70℃〜80℃であることが必須である。80℃を超えると、ラミネート加工において、インターコネクタ周辺の「隙間」が埋まらないことがあるため好ましくない。70℃を下回るとフィールドでパネル温度が100℃程度になることが多々あり、その場合そのフィルムがシュリンクし、セル表面上に亀の甲羅状の皺を発生させるため好ましくない。これは、年間のヒートサイクルにより、その皺が亀裂に成長する可能性がある。
【0035】
この環状オレフィンフィルムの積層により、複合充填剤の絶縁性が向上し、「漏れ電流」の低減が期待できる。ガラス周辺はアルカリ環境にならなくなり、加水分解し難くなることによって、水蒸気侵入の入口が形成しなくなる。本フィルムは、複合充填材にデラミネーション防止機能を付与するフィルムである。
【0036】
さらに、このフィルムの厚みはデラミネーション防止と強く相関していることを発見した。本来、環状オレフィンフィルムは、ガラス転移温度以上に環境温度が上昇するとシュリンクする。一般には、シュリンクフィルムとして販売されている。検討の結果、ガラス転移温度にプラス20℃以上の環境温度上昇時に大きくシュリンクすることが分かった。本複合充填材は、ラミネート加工にて、150℃程度で圧縮、熱硬化させているので、シュリンクしない構造で太陽電池モジュール内の充填材として機能するが、そのフィルム厚みが50μmを超えると亀状の皺が発生することが分かった。50μm以下の薄いフィルムでは、それぞれの界面はEVA分子と架橋により一体化するので、フィルム界面の性質はフィルム自身の性質を決定づけることになり、シュリンクしない。このシュリンクが層内に発生すると、結果として、デラミネーションを誘発することになるので、環状オレフィンのフィルム厚みは極めて重要な物性値であることを発見し、本発明に至った。フィルム厚みが20μmを下回るとフィルム巻き取り工程で破断のリスクが生じるため好ましくない。
【0037】
エチレン環状オレフィンフィルムの成膜前に作成するマスターバッチに紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐光安定剤を添加し、そのマスターバッチのガラス転移温度;Tgが原料樹脂のTgと比べ2℃から7℃低下するよう添加量とブレンド温度を調整した(B)層の樹脂組成物である。このマスターバッチのガラス転移温度は、フィルムの収縮率に影響を与える。2℃より小さいと安定剤の添加量が少なすぎることを意味するので好ましくない。7℃を超えるとフィルム収縮率が大きくなることがあるので好ましくない。
【0038】
EVA封止材とより強固に一体化することによって、環状オレフィンの収縮による亀の甲羅状の皺を押さえるため、環状オレフィン樹脂にシランカップリング剤を添加した樹脂組成物を用いることがより好ましい。
【0039】
また、受光面側とバックシート側の両面にデラミネーション防止複合封止材を使用した結晶系太陽電池モジュールは、裏面からの水蒸気や金属イオンの移動を防ぐので、超長期間に亘り、一切のデラミネーションを発生しないモジュールとして好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、太陽電池モジュール加工ライン、具体的には、スタンダードキュア方式、ファーストキュア方式、ウルトラファーストキュア方式で、本発明のデラミネーション防止フィルムとEVA封止材を供給するのみで、ラミネータの加工条件の変更を伴わず、長期間に亘り、デラミネーション発生のない、太陽電池モジュールを提供する。さらにデラミネーション発生原因対策は、すなわち、太陽電池モジュールの生涯発電量の最大化に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】デラミネーション現象を説明する模式図。
図2】スーパーストレート太陽電池モジュールの構造の模式断面図。
図3】環状オレフィンフィルムをEVA封止材でサンドイッチした複合封止材の層構造を示す本発明の複合充填材の模式断面図。
図4】セル上に覆い被さっているEVA封止材の状態を示す模式断面図。
図5】デラミネーション試験の回路模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態の一つの例としての太陽電池用デラミネーション防止フィルムおよびその製作方法、並びにそれを用いた太陽電池モジュールについて説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0043】
本発明における太陽電池用デラミネーション防止フィルムは、単独では、太陽電池用としての封止機能を発揮しない。充填材として必要な柔軟性と何よりもカバーガラスと発電素子との界面において、強固な化学的接着力を40年、60年の長期間に亘り保持する機能は、EVA封止材との複合体として発明の目的を満たすことができる。
【0044】
本発明のデラミネーション防止フィルムは、スーパーストレート構造(図2)において、カバーガラスと発電素子との間、あるいは、バックシートと発電素子との間に、EVA封止材でサンドイッチした形態で、発明の効果を発揮する。
【0045】
<デラミネーション防止フィルム>
本発明のデラミネーション防止フィルムは、環状オレフィン系重合体を主成分とする樹脂組成物からなる。環状オレフィン系重合体の中でもエチレン・ノルボルネンランダム共重合体が最も好ましい。メタロセン触媒でも良いし、バナジウム触媒により重合されたものも好適である。また、環状オレフィン成分を出発原料としてメタセシス触媒で開環重合し、水素添加して製造された環状オレフィンも好ましい。
【0046】
本発明の環状オレフィン系共重合体は、TOPAS(登録商標)(独TopasAdvanced Polymers社製)、APEL(登録商標)(三井化学社製)を使用することができる。
<樹脂組成物ならびに成型方法>
本発明のデラミネーション防止フィルムの組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤が添加されていることが好ましい。さらにシランカップリング剤を添加した樹脂組成物は、EVA封止材との共架橋が良好である。これら薬品は、一旦、マスターバッチを作製し、成膜での押出し機の途中から供給する。
【0047】
ここでは、コンパウンディングは、ニーダーを用いた。このマスターバッチ加工の成型温度は、180℃以上300℃以下、好ましくは、230℃以上290℃以下である。ここでの成型温度は、成膜したフィルムの収縮率に大きく依存することが分かった。また、安定剤やその他発明の機能を保持する目的で添加される薬品の種類と添加量によってもフィルムの収縮率が異なることが分かった。
【0048】
鋭意検討の結果、薬品添加前の樹脂のガラス転移温度に対し、2℃以上7℃以下、好ましくは、3℃から6℃であり、2℃より小さいと40年間を目指した長期耐候性を担保できない。7℃を上回ると環状オレフィンフィルムの収縮率が大きくなり、EVA封止材との界面が剥がれ、結果として、インターコネクタ回りにデラミネーションが発生するため好ましくない。
【0049】
シランカップリング剤は、ビニル基、メタクリ基、アクリル基およびエポキシ基の群から選ばれる化合物を用いることができる。紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系の添加が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の添加が好ましい。
【0050】
本発明における太陽電池封止材の成膜方法は公知の方法、たとえば、押出し機のヘッド先端にTダイを用いる押出しキャスト法やカレンダー法で成型することができる。ここでは、Tダイを用いた押出しキャスト法でフィルムを準備した。
【0051】
Tダイの温度は、80℃以上250℃以下であり、好ましくは、120℃以上180℃以下である。
成膜したフィルムの表面は、ブロッキング防止の目的で、エンボス加工や凹凸などの加工を行うことが好ましい。
【0052】
フィルムの厚みは、20μmから50μm、好ましくは、30から40μmである。20μmより薄いとフィルム成膜加工が難しくなるため好ましくない。50μmを超えると発電プラント現場でガラス表面が100℃程度になった場合、環状オレフィン共重合体のフィルム収縮が発生し、EVA封止材との界面において「剥がれ」が生じ、結果として、デラミネーションが発生するため好ましくない。
【0053】
発明の当該フィルムをEVA封止材でサンドイッチして、所定のラミネート条件で成型したのち、水蒸気透過性を評価した。
<太陽電池モジュール>
結晶系太陽電池モジュールの作成は、1.レイアップ工程、2.ラミネート工程、3.フレーミング工程の3工程からなる。レイアップ工程は、カバーガラスの上にEVA封止材、セルストリングスを直列にはんだ配線したセルマトリックス、その上にEVA封止材を敷き、バックシートを被せる。EVA封止材のズレや加工熱による収縮でガラスエッジ部分がむき出しにならないよう、5mmほどガラスサイズより大きくカットしたものを使用した。2.ラミネート工程は、熱版の温度と真空時間および加圧時間(大気圧)を設定して行われる。真空時間5分、加圧時間15分、熱板の温度は150℃に設定した。
【0054】
図3は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す模式断面図である。図3に示す太陽電池モジュールは、受光面の透明ガラス(カバーガラス):2から順に、本発明のデラミネーション防止複合充填材:(融点を測定して選ばれた市販のEVA封止材:3、本発明のデラミネーション防止フィルム:4、融点を測定して選ばれた市販のEVA封止材:3)、太陽電池素子:5、融点を測定して選ばれた市販のEVA封止材:6市販のバックシートを有してなる。
【0055】
<太陽電池セル>
太陽電池セルは、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、例えば、シリコン(単結晶、多結晶、アモルファス)、化合物半導体等を用いることができる。
【0056】
<太陽電池モジュールの製造方法>
市販の真空ラミネータにて、真空時間5分、プレス時間15分、成型温度150℃の条件で、60直列の太陽電池モジュールの構成にレイアップしたものを成型した。成型後、アルミフレームを取り付け、市販の端子BOXを固定し、太陽電池モジュールを準備した。
【0057】
<ラミネータ加工プロセスにおけるガラス表面の温度分布>
本発明の効果を分かりやすく説明するため、市販の真空ラミネータを用いて、熱板温度を150℃に設定し、60直用カバーガラスの上の中心部とエッジ角部に熱電対を取り付け、温度上昇を加工時間の変数で整理した。
【0058】
以下にその結果を示す。
【0059】
【表1】
真空時間(予熱工程)で、ガラスエッジ部周辺は、熱板と直接接している中心部と比べ、温度上昇が遅いことが分かる。プレス工程では、ダイヤフラムゴムシートで加圧した後、ガラスの中心部とエッジ周辺部の温度が同等となる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明のシートおよびそれを用いた太陽電池モジュールについての種々の測定および評価は以下のようにして行った。
【0061】
(1)ガラス転移温度測定、CompoundΔTg(℃)の測定
環状オレフィン樹脂、樹脂組成物、フィルム、シートについてのガラス転移温度は、DSC法により、昇温速度20℃/min、Second runでの測定値を採用した。
【0062】
CompoundΔTgは、ニーダーで、環状オレフィン樹脂に安定剤等を所定量添加後、ニーディングにより、安定剤等のマスターバッチコンパウンドを作製し、室温まで放冷のち、Tg測定し、バージン樹脂のTgとの差を計測。
【0063】
CompoundΔTgは、安定剤等の添加量とニーディングの温度と時間により変化する。添加量に比例して、ΔTgは大きくなる。また、ニーディングの温度が高く、混練の仕事量を多く加えるとΔTgは大きくなる傾向にある。
【0064】
このΔTgによって、フィルム収縮率に大きな影響があるため、発明の効果が発現する範囲を規定した。
(2)デラミネーション防止フィルムの収縮率評価
Tダイで成型した各厚み、組成でのフィルムを800mm正方形にカットし、MD方向(樹脂流動報告)とTD(MD方向に対して直角)方向の収縮率(式1)を算出した。
【0065】
収縮率値=(800mm−熱処理後の長さ)/800mm×10
(式1)大型ギヤーオーブンにて、5mmテフロン(登録商標)板上にフィルムを置き、100℃で30分間加熱処理して、放冷後の長さを測定した。
【0066】
(3)水蒸気透過率(ASTMF1249)
水蒸気透過試験機(MOCON社製、PERMATRAN W3/33)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で実施した。厚みは900μmとした。
【0067】
(4)デラミネーション(白濁)試験
KIKUSUI社TOS7210Sを用いて、恒温槽にて、80℃、85%RHの条件下、−2000Vdcを168時間印加した。配線は、同社推奨方法の図5に従った。
【0068】
評点は、以下に従って採点した。官能試験法は、図5に従った。
なお、本発明の「デラミネーションのない状態」とは、4点以上である。
5点(最高点):オリジナルと比較し、外観上全く変化なく、同等。
【0069】
4点:インターコネクタ回りに色変化(黄変)がわずかに認められる。
3点:シリコンセルのインターコネクタ部分に少なくとも1か所に白濁剥がれが5mm未満である。
【0070】
2点:シリコンセルのインターコネクタ部分に少なくとも1か所に白濁剥がれが5mm以上20mm未満である。
1点:シリコンセルのインターコネクタ部分の少なくとも1か所に白濁剥がれが20mm以上ある。
【0071】
(5)漏れ電流試験
上記試験中に計測される電流値を記録した。
(6)耐候性試験(耐紫外線試験)
メタリングR:530W/m(300〜400nm)の強度で、BPT63℃,50%、降雨なし、320時間連続照射での外観変化を以下の評点で採点した。本発明の効果は、評点4点以上である。
【0072】
5点(最高点):オリジナルと比較し、外観上全く変化がなく、同等。
4点:インターコネクタ回りに変色がわずかに認められる。
3点:インターコネクタ回りにミクロクラックが少なくとも1か所に20mm未満存在する。
【0073】
2点:インターコネクタ部分に少なくとも1か所に20mm以上あるいはセルフィンガー電極部上に亀の甲羅模様がセル全体の20%未満発生。
1点:インターコネクタ部分に少なくとも1か所に20mm以上あるいはセルフィンガー電極部上に亀の甲羅模様がセル全体の20%以上発生。
【0074】
(実施例1〜6)
<エチレン・ノルボルネンランダム共重合体フィルムの準備>
デラミネーション防止フィルムの原料は、TOPAS(登録商標)の8007:100重量部に、紫外線吸収剤として2-ヒドロキシ4−n−オクトキシペンゾフェノン0.3質量部、耐光安定剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジル)セバケート0.1質量部を添加した。そして、2軸押出機を用いて230℃で混練し、環状オレフィン系樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のTgと環状オレフィン;TOPAS8007のTgを測定し、ΔTgを求めた。次にこのペレットを1000mm幅T−ダイ部での樹脂温度は120℃で、各種厚みのフィルムを得た。実施例1,2,3,4,5,6は、それぞれ、38、45、30、25、40、35μmを準備した。ここで得たフィルムは、フィルム収縮値の測定を行った。水蒸気透過性は、ここで得たフィルムをEVA−1でサンドイッチし、金属スペーサー900μmを適用して、プレス機で複合充填材(厚み;900μm)を作製して測定した。
【0075】
太陽電池モジュールは、得られたフィルムを、実施例1は、融点58℃の市販EVAでとサンドイッチした状態で積層(発明の「充填材」)し、真空時間5分、プレス時間;15分、熱板温度150℃の条件でラミネート加工を行った。
【0076】
実施例2は、融点67℃のEVA封止材、実施例3は、融点71℃のEVA封止材、実施例4は、融点67℃のEVA封止材、実施例5は、融点67℃のEVA封止材、実施例6は、融点71℃のEVA封止材と組み合わせた。
【0077】
比較例1〜6は、フィルム厚みが実施例と比較し大きく異なる。比較例1,2,3,4,5は、それぞれ、150μm、200μm、150μm、150μm、75μm、100μmである。比較例3は、エチレン・環状オレフィンのTgが実施例と異なり、106℃、比較例6は、90℃である。比較例7は、市販のEVA封止材(融点76℃)のみ適用の通常の太陽電池モジュール構造である。
【0078】
【表2】
デラミネーションを防止するフィルムおよびEVA封止材との複合からなる充填材の熱的性質は、ラミネート条件で、真空時間で到達するモジュールエッジ部周辺温度と比較して、融点が75℃以下のEVA封止材を適用しているので、インターコネクタとの間にできる隙間は埋められ、設計通りの接着強度が得られる。また、環状オレフィンフィルムのTgは、80℃以下であるので、複合充填材の中間層として、この隙間を埋めることに対し、何ら阻害しない。一方、太陽電池モジュールに組み込まれた後、フィルム厚みが50μm以下では、太陽電池モジュールの温度が高い状態(例えば100℃)でもほとんどシュリンクしないことを発見し、本発明に至った。
さらに、環状オレフィンフィルムが太陽電池モジュール内に積層されることによって、モジュール周辺部のフレーム部に流れる「漏れ電流」が大幅に低下し、ガラスから抽出されるナトリウムの移動が抑えられることに繋がり、セルと直接接触しているEVA封止材の加水分解が起こりにくくなり、デラミネーション防止を発現している。
紫外線を照射すると環状オレフィンフィルムは、亀の甲羅状の皺が発生し易くなる傾向にある。発明の範囲のCompoundΔTgが2℃から7℃では、複合充填材として、デラミネーションの発生はない。
【0079】
比較例7は、通常の太陽電池モジュールである。EVA封止材の融点が高いシートを太陽電池モジュールに採用した場合、インターコネクタ回りの接着反応が不十分となり、デラミネーション試験で最も悪い結果になった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、どのような厳しい環境下においても、デラミネーションしない太陽電池モジュールを得ることのできるデラミネーション防止フィルムとEVA封止材とを複合化した充填材を提供し、それを用いた太陽電池モジュールは一切のデラミネーションが発生しない製品を提供することができる。
【要約】
【課題】本発明は、安価で、重量が増加せず、設置ハンドリングが良好であって、実績のある選ばれたEVA封止材とデラミネーション防止フィルムとを複合化し、20年以上の長期間に亘り、一切のデラミネーションを発生しない太陽電池モジュールを提供することにある。
【解決手段】スーパーストレート構造の太陽電池モジュール構造において、環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度が70℃〜80℃であり、かつ、20μmから50μmの厚みフィルムを融点55℃から75℃以下のEVA封止材でサンドイッチして得られた複合充填材を用いることによって、超長期間に亘り、デラミネーションを一切発生しない太陽電池モジュールを提供することができる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5