特許第6541329号(P6541329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541329
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】非発酵ビール様発泡性飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20190628BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C12G3/04
   A23L2/00 B
   A23L2/00 U
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-217166(P2014-217166)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-82894(P2016-82894A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年7月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 道代
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎介
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/119064(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/119065(WO,A1)
【文献】 特開2001−095541(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080357(WO,A1)
【文献】 特開2013−128451(JP,A)
【文献】 特開2011−188833(JP,A)
【文献】 特開2014−155495(JP,A)
【文献】 特開2011−217706(JP,A)
【文献】 特開2014−128251(JP,A)
【文献】 特開平4−200378(JP,A)
【文献】 特開平3−262460(JP,A)
【文献】 特開平3−083557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
C12G
C12C
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クアシンと、ナリンジンとを含有し、
クアシン含有量が30〜90ppbであり、
ナリンジン含有量が1〜15ppmであり、
ホップを原料としないことを特徴とする、非発酵ビール様発泡性飲料。
【請求項2】
麦芽を原料としない、請求項1に記載の非発酵ビール様発泡性飲料。
【請求項3】
さらに、酸味料及び起泡剤からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の非発酵ビール様発泡性飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップを原料としない場合であっても、ビールらしい苦味を有する非発酵ビール様発泡性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールとは異なり、発酵工程を経ずに製造される非発酵ビール様発泡性飲料は、特別な発酵装置を要することなく製造することができるため、低コストで大量生産するのに向いている。非発酵性ビール様発泡性飲料においてホップを使用した場合、好ましい苦味は付与できるものの、本来発酵中に低減されるホップ由来の生臭い香気が製品に残存してしまう傾向がある。一方で、ホップを用いずに製造された非発酵ビール様発泡性飲料は、ビールらしい苦味が劣るという問題がある。
【0003】
非発酵ビール様発泡性飲料においては、ビールらしい風味や香味になるように、甘味料、酸味料、苦味物質、香料等を適宜添加する。飲料に配合される苦味物質としては種々のものが知られており、例えば、ホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、アロイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β−グルコオリゴ糖、キナ抽出物等が挙げられる。また、単に甘味料、酸味料、苦味物質を選択して混合した場合に生じる香味のばらつき感を抑制するために、グルコン酸ナトリウムを含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。その他、ノンアルコールビール様発泡性飲料において、酸味料と苦味物質の濃度を特定の範囲内に調節することによってアルコール感を付与する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−217706号公報
【特許文献2】特開2011−254731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビールらしい苦味はホップに含まれている様々な物質によって達成されている。このため、非発酵ビール様発泡性飲料を製造する際に、ホップに替えて1種類の苦味物質のみを使用しただけでは、ビールらしい苦味にすることが非常に困難である。
【0006】
本発明は、ホップを原料としない場合であっても、ビールらしい苦味を有する非発酵ビール様発泡性飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、非発酵ビール様発泡性飲料において、特定の2種以上の苦味物質を適切に組み合わせて配合することによって、ビールらしい苦味を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、下記[1]〜[]である。
[1] クアシンと、ナリンジンとを含有し、クアシン含有量が30〜90ppbであり、ナリンジン含有量が1〜15ppmであり、ホップを原料としないことを特徴とする、非発酵ビール様発泡性飲料。
[2] 麦芽を原料としない、前記[1]非発酵ビール様発泡性飲料。
] さらに、酸味料及び起泡剤からなる群より選択される1種以上を含有する、前記[1]又は[2]の非発酵ビール様発泡性飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ホップを原料としない場合であっても、ビールらしい苦味を有する非発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書においては、「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、ビールらしさを有する発泡性飲料(ビール様発泡性飲料)とは、アルコール含有量、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有する発泡性飲料である。
【0011】
また、本発明及び本願明細書における非発酵ビール様発泡性飲料とは、発酵工程を経ずに製造される飲料であって、ビールらしさと炭酸ガスによる発泡性を有する飲料を意味する。非発酵ビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。具体的には、発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等が挙げられる。
【0012】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、クアシン、アブシンチン、ナリンジン、ゲンチオオリゴ糖、ペプチド、ミネラル、及びカラメル(糖のカラメル化反応物)からなる群より選択される2種以上の苦味物質を含有することを特徴とする。非発酵ビール様発泡性飲料の原料とする苦味物質として特定の苦味物質を2種類以上組み合わせて用いることにより、ホップに由来するビールらしい苦味と同質若しくは近似する苦味を付与することができる。
【0013】
クアシンとしては、クワッサ(ニガキ)抽出物、カッシア抽出物等のような、天然物からの抽出物であってクアシンを含有するものを用いることもできる。カッシア抽出物としては、ジャマイカカッシア抽出物、スリナムカッシア抽出物等が挙げられる。アブシンチンとしては、ニガヨモギ抽出物のような、アブシンチンを含有する天然物抽出物を用いることもできる。カラメルとしては、糖をそのまま熱処理してカラメル化したものであってもよく、糖に酸若しくはアルカリを加えたものを熱処理してカラメル化したものであってもよく、糖に亜硫酸化合物又はアンモニウム化合物を加えたものをカラメル化したものであってもよく、糖に亜硫酸化合物又はアンモニウム化合物を加えた後に酸若しくはアルカリを加えたものを熱処理してカラメル化したものであってもよい。苦味物質として用いられるペプチドとしては、ロイシン、イソロイシン、バリンといった分岐鎖アミノ酸を少なくとも1個有する2〜4アミノ酸からなるペプチドが挙げられる。苦味物質として用いられるミネラルとしては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、硫酸カルシウム等のカルシウム塩等が挙げられる。
【0014】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、苦味物質として、少なくともクアシンを含有するものが好ましい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料がクアシンを含有する場合、非発酵ビール様発泡性飲料のクアシン含有量は、30〜90ppbが好ましく、40〜80ppbがより好ましく、40〜60ppbがさらに好ましい。
【0015】
クアシンは舌に残るイガイガした苦味であり、クアシン単独使用では、ホップに類似した苦味を達成することはできない。クアシンとは苦味の質や苦味が感じられるピークの異なる苦味物質をクアシンと共に配合することにより、ビールらしい厚みのある苦味を達成することができる。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、苦味物質として、クアシンと、アブシンチン、ナリンジン、ゲンチオオリゴ糖、及びカラメルからなる群より選択される1種以上の苦味物質を含有することが好ましく、よりホップと同質又は近似したビールらしい厚みのある苦味を呈することができるため、クアシンとナリンジン又はカラメルとを含有することがより好ましい。
【0016】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料がクアシンとナリンジンを含有する場合、非発酵ビール様発泡性飲料のナリンジン含有量は、1〜30ppmが好ましく、3〜15ppmがより好ましく、5〜10ppmがさらに好ましい。
【0017】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料がクアシンとカラメルを含有する場合、非発酵ビール様発泡性飲料のカラメル含有量は、150〜1800ppmが好ましく、150〜1500ppmがより好ましく、300〜1200ppmがさらに好ましい。
【0018】
クアシン等の特定の苦味物質を2種以上組み合わせて配合することにより、ホップと同質又は近似した苦味を呈することができる。このため、本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、ホップを原料としないものが好ましいが、ホップを原料としてもよい。
【0019】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、1種又は2種以上の酸味料を含有することが好ましい。酸味料を含有することにより、香味のバランスに優れ、よりビールらしさの強い非発酵ビール様発泡性飲料が得られる。酸味料としては、飲食品に配合可能な酸味料であれば特に限定されるものではなく、最終製品に求められる品質特性に応じて、その配合量と共に適宜決定される。本発明においては、酸味料として酸を用いることが好ましい。当該酸味料としては、酸などの一般的に飲食品の製造に使用されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、リン酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、及びそれらの塩等が挙げられる。これらの有機酸は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0020】
酸含有量が多くなりすぎると、苦味が強調されてしまい、飲み辛くなる。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料が酸を含有する場合、飲料のpHが3.0〜5.0となるように、酸の添加量を調整することが好ましい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料のpHとしては、特に、3.2〜4.6の範囲内であることが好ましく、3.6〜4.0の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
ビールの外観上の最大の特徴は、容器に注いだ際に白い綺麗な泡が立つことである。そこで、本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、NIBEM値が80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。なお、NIBEM値は、注がれた泡の崩壊速度を電気伝導度で測定したものであり、ビール等の泡持ち評価に一般的に用いられているものである。非発酵ビール様発泡性飲料のNIBEM値は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。
【0022】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、1種又は2種以上の起泡剤を含有することが好ましい。起泡剤としては、例えば、大豆食物繊維、大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、キラヤサポニン等が挙げられる。これらの起泡剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、大豆食物繊維、大豆ペプチド、アルギン酸エステル、及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、大豆食物繊維、大豆ペプチド及びキラヤサポニンからなる群より選択される1種以上を含有することがより好ましい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料における当該起泡剤の含有量は、用いる起泡剤の種類や組合せ、最終製品に求められる品質特性等に応じて適宜調整される。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、起泡剤が、飲料のNIBEM値が80以上となるように添加されていることが好ましい。
【0023】
苦味物質として用いられるカラメルは、淡褐色〜茶褐色の物質であるため、着色料としても機能する。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料において、苦味物質としてカラメルを用いない場合や、苦味物質として用いるカラメル量では飲料の色が所望の色度に届かない場合には、さらに、着色料を含有させることもできる。該着色料としては、ビールらしい色を付与可能であり、かつ飲食可能な色素であれば特に限定されるものではなく、廃糖蜜、濃色麦芽エキス等が挙げられる。
【0024】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、色度が2°EBC以上であることが好ましく、5°EBC以上であることがより好ましく、7°EBC以上であることがさらに好ましく、7〜16°EBCであることがよりさらに好ましい。なお、色度は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。EBCとは、ビールの分析での色度の単位で、ビールの色の濃淡を数値(EBC色度の9つのガラスディスクを持ったコンパレーターにより目視で測定する、若しくは波長430nmでの吸光度を基に算出する。)であらわしたものである。
【0025】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、さらに、香味料を含有していてもよい。該香味料としては、ビールフレーバー、ビール香料、ホップ香料等が挙げられる。ホップ香料とは、例えば、ホップに含まれている香味成分であるリナロール(Linalool)、フムレンエポキシド、エステル類等を主要成分として含有する香料である。該エステル類としては、具体的には、エチルイソブチレイト、エチル−2−メチルブチレイト、及び、エチルイソバレレイト等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、1種又は2種以上の甘味成分を含有することが好ましい。該甘味成分としては、単糖よりも、比較的甘味度の低いものが好ましく、具体的には、多糖類、水溶性食物繊維、甘味系アミノ酸等が挙げられる。比較的甘味度の低い甘味成分を用いることにより、適度な甘味が付与され、さらにボディ感やコクが強くなり、よりビールらしさの強い非発酵ビール様発泡性飲料が得られる。多糖類とは、3以上の単糖が重合した糖質を意味する。多糖類は、主にその大きさによって、でんぷん、デキストリン、及びオリゴ糖に大別される。オリゴ糖は、3〜10個程度の単糖が重合した糖質であり、デキストリンは、でんぷんを加水分解して得られる糖質であって、オリゴ糖よりも大きなものを指す。水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。甘味系アミノ酸としては、アラニンやグリシンが挙げられ、アラニンが好ましい。また、該甘味成分としては、少量の含有量で充分な甘味を達成でき、かつカロリーも抑えられることから、高感度甘味料を使用してもよい。当該高感度甘味料としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、酵素処理ステビア、スクラロース等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、麦芽、大麦や小麦等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等を原料として製造されたものであってもよい。麦汁は発酵させない場合には青臭い不快臭が残存するため、本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料としては、特に、麦芽を原料として用いずに製造されたものが好ましい。
【0028】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、さらに、エタノールを含有していてもよい。アルコールを含有することにより、香気成分の香り立ちがよくなり、よりビールらしさが付与される。ただし、アルコール濃度が高くなりすぎると、アルコール臭が強くなりすぎ、ビールらしさが損なわれやすい。本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料がエタノールを含有する場合、飲料中のエタノール濃度は1容量%以上10容量%未満が好ましく、1〜9容量%がより好ましく、1〜8容量%がさらに好ましく、1〜7容量%がよりさらに好ましい。なお、エタノールは、酒類の製造において一般的に用いられている原料エタノールが用いられる。
【0029】
本発明に係る非発酵ビール様発泡性飲料は、例えば、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。具体的には、以下の工程(a)〜(b)を有する製造方法により製造し得る。
(a)液体及び固体の原料を混合することにより、調合液を調製する工程、及び
(b)前記工程(a)により得られた調合液に炭酸ガスを加える工程。
【0030】
まず、工程(a)において、液体及び固体の原料を混合することにより、調合液を調製する。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料(例えば、苦味物質、酸味料、起泡剤、着色料、甘味成分、香味料等)、及び必要に応じてアルコールを混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、及びアルコール、必要に応じて原料水を混合してもよい。
【0031】
工程(a)において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、工程(b)の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、珪藻土濾過により除去することがより好ましい。
【0032】
次いで、工程(b)として、工程(a)により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、非発酵ビール様発泡性飲料を得る。炭酸を加えることによって、ビールと同様の爽快感が付与される。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、工程(a)により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、工程(a)により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
【0033】
炭酸ガスを添加した後、得られた非発酵ビール様発泡性飲料に対して、さらに香料等の原料を添加してもよく、また濾過等の不溶物を除去する処理を行ってもよい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。
【実施例】
【0034】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[製造例1(ベース液の調製)]
表1に記載の組成により調合液を調製した後、これに炭酸ガスを3.0gas volになるように加えることにより、ベース液を調製した。ベース液の原料としては、表1中に示す松谷化学株式会社の「ファイバーソルII」(製品名)、不二製油株式会社の「ソヤファイブ−S−LN」(製品名)、キリン協和フーズ株式会社の「サネット」(製品名)、第一アルコール株式会社の「酒類原料用アルコール」、和光純薬工業株式会社の「リン酸」、「クエン酸」及び「リンゴ酸」を用いた。
【0036】
【表1】
【0037】
[実施例1]
製造例1で製造したベース液に、クワッサ抽出物を飲料中のクアシン濃度が表2となるように、また、「カラメルSP」(商品名、天野実業株式会社製のカラメル)を飲料中の濃度が表2となるように、それぞれ添加してサンプルを調製した。各サンプルに対して、苦味についての官能評価を実施した。官能評価は、3名の専門パネルにより3段階評価(◎:十分にビールらしい苦味である、○:ビールらしい苦味がある、×:苦味はあるが、ビールらしい苦味ではない)にて行った。評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
この結果、クアシン単独使用では、舌にイガイガ感が残り、苦味の質としてはビールらしさに欠けていたが、クアシン30〜90ppbを含有させたサンプルのうち、カラメル150〜1200ppmも含有させたものでは、ビールらしい厚みのある苦味を達成することができた。
【0040】
[実施例2]
製造例1で製造したベース液に、クワッサ抽出物を飲料中のクアシン濃度が表3となるように、また、「テイストBT」(商品名、オルガノフードテック株式会社製)を飲料中の濃度が表3となるように、それぞれ添加してサンプルを調製した。「テイストBT」は、「カラメルSP」よりもやや苦味の強いカラメルである。実施例1と同様にして、各サンプルに対して、苦味についての官能評価を実施した。評価結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
この結果、実施例1と同様に、クアシン30〜90ppbを含有させたサンプルのうち、カラメル150〜1200ppmも含有させたものでは、ビールらしい厚みのある苦味を達成することができた。
【0043】
[実施例3]
製造例1で製造したベース液に、クワッサ抽出物を飲料中のクアシン濃度が表4となるように、また、ナリンジン(池田物産株式会社製)を飲料中の濃度が表4となるように、それぞれ添加してサンプルを調製した。実施例1と同様にして、各サンプルに対して、苦味についての官能評価を実施した。評価結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
この結果、クアシン30〜50ppbとナリンジン1〜30ppmを含有させたものと、クアシン90ppbとナリンジン1〜15ppmを含有させたものでは、ビールらしい厚みのある苦味を達成することができた。
【0046】
[比較例]
製造例1で製造したベース液に、クワッサ抽出物を飲料中のクアシン濃度が表5となるように、また、カフェイン(白鳥製薬株式会社製)を飲料中の濃度が表5となるように、それぞれ添加してサンプルを調製した。実施例1と同様にして、各サンプルに対して、苦味についての官能評価を実施した。評価結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
この結果、クアシンとカフェインを組合せて含有させたサンプルでは、舌に貼り付くような苦味が強調され、ビールらしい苦味を達成することができなかった。