特許第6541350号(P6541350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541350抗CXCR4抗体による血液悪性腫瘍の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541350
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】抗CXCR4抗体による血液悪性腫瘍の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20190628BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20190628BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190628BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20190628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190628BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20190628BHJP
   C12N 15/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   A61K39/395 T
   A61K39/395 E
   A61K39/395 N
   A61K31/136
   A61K31/282
   A61K31/4184
   A61K31/454
   A61K31/573
   A61K31/675
   A61K31/69
   A61K31/7048
   A61K31/7068
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 105
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   C07K16/28
   C12N15/00ZNA
【請求項の数】20
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2014-541315(P2014-541315)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2014-533279(P2014-533279A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012064395
(87)【国際公開番号】WO2013071068
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月6日
【審判番号】不服2017-14914(P2017-14914/J1)
【審判請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】61/557,815
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/569,113
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・アール・カーン
(72)【発明者】
【氏名】チン・パン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフィーヌ・エム・カルダレッリ
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 田村 聖子
【審判官】 冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0070244号明細書
【文献】 特表2010−505830号公報
【文献】 特表2009−528379号公報
【文献】 国際公開第2010/105008号
【文献】 国際公開第2010/135468号
【文献】 Blood,2002年,vol.100,Abstract No.5027
【文献】 Expert Rev Hematol., 2011 June, Vol.4 No.3, p.271−283
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00−39/44
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
REGISTRY(STN)
CAPLUS(STN)
MEDLINE(STN)
BIOSIS(STN)
EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫に罹患した対象において、対象の多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを直接的に誘導することにより、対象を処置するための医薬組成物を製造するための、対象における多発性骨髄腫細胞表面で発現したCXCR4受容体に特異的に結合する抗体またはその断片の使用であって、当該CXCR4受容体に特異的に結合する抗体が、配列番号25に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含み、配列番号29に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗体であり、該抗体またはその断片が対象の多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを直接的に誘導するために用いられるものである、該使用
【請求項2】
対象がヒトであり、抗体またはその断片がヒトCXCR4受容体に結合する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
多発性骨髄腫が、再発したかまたは難治性の多発性骨髄腫である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
医薬組成物中の抗体またはその断片が、単独療法として対象に投与されるためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
抗体またはその断片が、CXCR4受容体の活性を阻害し、化学療法剤に対する多発性骨髄腫細胞の感受性を増加させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
医薬組成物中の抗体またはその断片が、手術、放射線照射および/または1種または複数の治療薬と組み合わせて対象に投与されるためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
医薬組成物中の抗体またはその断片が、少なくとも1種の化学療法剤と組み合わせて対象に投与されるためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1種の化学療法剤が、
(a)レナリドミドおよびデキサメタゾンである、または
(b)ボルテゾミブおよびデキサメタゾンである、
請求項7に記載の使用。
【請求項9】
抗体またはその断片が、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体またはその断片である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
抗体またはその断片が、配列番号1に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号9に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号13に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号17に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、および配列番号21に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、請求項1〜のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
抗体またはその断片が、BMS−936564またはその断片である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
抗体またはその断片が、IgG1またはIgG4抗体またはその断片である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
医薬組成物中の抗体またはその断片が、約0.1〜10mg/kg体重の範囲の用量で対象に投与されるためのものである、請求項4に記載の使用。
【請求項14】
用量が、0.3、1、3、または10mg/kg体重である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
医薬組成物が、レナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて対象に投与されるためのBMS−936564またはその断片を含み、その投薬治療計画が:
(a)1、8、15、22、29および36日目(サイクル1)ならびに1、8、15および22日目(サイクル2およびその後のサイクル)に静脈への注入として投与されるBMS−936564(1、3または10mg/kg);
(b)21日間(15〜35日目;サイクル1)および1〜21日目(サイクル2およびその後のサイクル)に経口投与されるレナリドミド(25mg);および
(c)15、22、29および36日目(サイクル1)および1、8、15および22
日目(サイクル2およびその後のサイクル)に投与されるデキサメタゾン(40mg)、
を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項16】
医薬組成物が、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせて対象に投与されるためのBMS−936564またはその断片を含み、その投薬治療計画が:
(a)1、8、15、22および29日目(サイクル1)ならびに1、8および15日目(サイクル2およびその後のサイクル)に静脈への注入として投与されるBMS−936564(1、3または10mg/kg);
(b)15、18、22および25日目(サイクル1)ならびに1、4、8、11日目(サイクル2およびその後のサイクル)に静注として投与されるボルテゾミブ(1.3mg/m);および
(c)15、16、18、19、22、23、25および26日目(サイクル1)ならびに1、2、4、5、8、9、11および12日目(サイクル2およびその後のサイクル)に投与されるデキサメタゾン(20mg)、
を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項17】
多発性骨髄腫に罹患した対象における多発性骨髄腫細胞の成長および/または増殖を阻害すること、および/またはアポトーシスを誘導することにより、対象を処置する方法に用いられる、単位用量の抗CXCR4抗体またはそのCXCR4結合断片を含むキットであって、該方法は、対象の多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを直接的に誘導するために抗体またはその断片を対象に投与することを含み、当該CXCR4抗体が配列番号25に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含み、配列番号29に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含むものであり、該キットが、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗CXCR4抗体の使用のための指示書をさらに含む、キット。
【請求項18】
抗CXCR4抗体またはその断片が、BMS−936564またはその断片である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
1種または複数の追加の治療薬をさらに含む、請求項17または18に記載のキット。
【請求項20】
1種または複数の化学療法剤をさらに含む、請求項17または18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願全体にわたって、様々な刊行物は、著者名および日付または特許番号または公開番号を括弧内に記載する。これらの刊行物の完全な引用は、本明細書の最後、特許請求の範囲の直前に見出すことができる。本明細書で説明し、特許請求した本発明の日付時点で当業者に公知の技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。しかし、本明細書の参照文献の引用は、このような参照文献が本発明の従来技術であることを承認するものと解釈すべきではない。
【0002】
発明の分野
本発明の開示は、細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体、ならびに癌、特に急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)および慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの非ホジキンリンパ腫(NHL)を含めた血液悪性腫瘍の処置方法におけるこれらの抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ケモカインは、細胞輸送および血管新生を調節し、腫瘍の微小環境においても重要な役割を果たす約50種類の小タンパク質のファミリーである(Vicari et al., 2002)。その構造に応じて、ケモカインはC−Cケモカイン(システイン−システインモチーフを含有する)またはC−X−Cケモカイン(システイン−X−システインモチーフを含有する)に分類される。したがって、このようなケモカインに結合する受容体は、それぞれCCRファミリーまたはCXCRファミリーのメンバーとして分類される。
【0004】
CXCRファミリーの1メンバーはCXCR4受容体(CXCR4)で、CD184としても知られており、1つの細胞外N末端尾部および3つの細胞外ループからなる7回膜貫通型ドメインGタンパク質共役受容体である。CXCR4の細胞内カルボキシ末端は、βおよびγサブユニットおよび百日咳毒素感受性Giαサブユニットからなるヘテロ3量体Gタンパク質に結合している(Loetscher et al., 1994)。現在のところ、CXCR4のリガンドの1つ、CXCL12として知られているケモカイン(間質細胞由来因子1またはSDF−1としても知られており、本明細書では、同義に使用されている)のみが同定されている(Bleul et al., 1996; Oberlin et al., 1996)。CXCL12のCXCR4への結合は、ホスホリパーゼCの活性化を刺激し、その後、細胞質遊離カルシウムの上昇を引き起こす。CXCR4の連結は最終的に、走化性および遊走の誘導を招く(Tachibana et al., 1998; Zou et al., 1998)。CXCR4はまた、胚形成、恒常性維持および炎症において役割を果たす。CXCR4またはCXCL12を欠損するように操作されたマウスによる研究によって、臓器の脈管化ならびに免疫および造血系におけるCXCR4/CXCL12経路の関与が示されている(Tachibana et al., 1998)。さらに、CXCR4は、Tリンパ増殖性HIV−1単離物の共受容体としての機能が示されたことがある(Feng et al., 1996)。
【0005】
健康な成人では、CXCR4はBおよびT細胞、単球、マクロファージ、NKおよび樹状細胞ならびにCD34骨髄(BM)前駆細胞を含む造血系細胞で主に発現する(Lee et al., 1999)。CXCR4はまた、内皮および上皮細胞、星状膠細胞ならびに神経細胞において低レベルで発現する(Gupta et al., 1998; Hesselgesser et al., 1997)。CXCL12は、内皮細胞の遊走および増殖を誘導することが示され、VEGFと一緒に新血管新生を増強することが示された(Guleng et al., 2005)。CXCR4の過剰発現はまた、白血病、リンパ腫、膵臓、乳腺、卵巣、肺、前立腺および結腸直腸腫瘍を含む癌の75%で見出され、CXCL12との相互作用は、BM微小環境内での造血幹細胞のホーミングおよび維持に必須である(Mohle et al., 1998)。CXCR4のバイサイクラムアンタゴニストであるプレリキサホル(AMD3100;Mozobil)は、幹細胞を血流に動員することが示された(Dar et al., 2011)。別のCXCR4アンタゴニストバイサイクラムであるAMD3100およびAMD3465は、CXCR4/CXCL12シグナル伝達をブロックすることによってAML腫瘍細胞の薬剤感受性を増加させる(Nervi et al., 2009; Zeng et al., 2009)。
【0006】
AMLは、BMに蓄積し、正常な血液細胞の産生を妨害する異常な白血球細胞の迅速な増殖を特徴とする、骨髄系血液細胞の急激に成長する癌である。AMLでは、CXCR4はBM細胞のCD34画分で強く発現する。AML細胞におけるCXCR4レベルの低さは、無再発および全生存期間を長くする良好な予後と相関する。CXCR4受容体の発現が低いと、BMの化学的に保護された環境において発現したCXCL12に向かう原発性AML細胞の遊走が減衰する(Tavor et al., 2004)。
【0007】
多発性骨髄腫(MM)は、形質細胞の悪性増殖から生じる癌の1形態である。非ホジキンリンパ腫後に、2番目に多く頻発する血液の癌で、毎年世界中で約80,000の新たな症例があり(米国では20,000例)、約62,000の死亡例がある(米国では10,500の死亡例/年)(Jemal et al., 2008; 2009)。MM細胞は、BMで優先的に増殖し、正常な血液細胞および正常な抗体の産生を妨害し、免疫不全、骨格破壊、低カルシウム血症、BMおよび腎不全を引き起こす。AMLに加えて、CXCL12の血清レベルは、MMの患者で上昇し、CXCR4発現はMMの進行期の徴候である髄外性形質細胞腫において増加する。さらに、CXCL12/CXCR4軸の遮断は、MM細胞の遊走およびこれらの細胞のBMへのホーミングを減衰させる(Alsayed et al., 2007)。
【0008】
非ホジキンリンパ腫は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ球の癌のどの異なる群も含む。NHLは、いかなる年齢でも発生でき、正常より大きなリンパ節、発熱および体重減少がしばしば特徴的である。NHLの多くの異なる種類では、高悪性度(増殖が速い)から低悪性度(増殖が遅い)型まで重症度が著しく異なり、B細胞またはT細胞のいずれかから形成され得る。B細胞NHLには、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病/小リンパ性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫が含まれる。T細胞NHLには、菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫および前駆Tリンパ芽球性リンパ腫が含まれる。2012年に米国ではNHLの新たな症例が約70,000例に上り、約19,000例が亡くなるものと推定される。高レベルのCXCR4発現が試験した19種類の原発性NHL細胞株のうち18種類で示された(Bertolini et al., 2002)。CXCL12が濾胞性NHL細胞の遊走を促進し(Corcione et al., 2000)、CXCR4−CXCL12回路網がCLL細胞の遊走に重要であるらしいことも示された(Burger et al., 1999)。
【0009】
数多くの望ましい特性を示すヒト抗CXCR4モノクローナル抗体は、2006年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/827,851号の優先権を主張するPCT国際公開第WO2008/060367号(出願番号PCT/US2007/021152)に既に記載されている。これらの両出願の開示は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。WO2008/060367に開示したように、インビトロ(in vitro)研究では、これらのモノクローナル抗体がCXCR4発現細胞に低いナノモル親和性で結合し、CXCL12がCXCR4発現細胞に結合するのをブロックし、CXCL12誘導性遊走およびカルシウム流を低いナノモルEC50値で阻害することが示されている。前臨床試験で予期しない有利な抗固形腫瘍特性を示した、完全なヒトモノクローナル抗体の1つ、BMS−936564(WO2008/060367ではF7と称されており、以前にはMDX−1338とも称されており、3つの呼び方は全て本明細書では同義に使用されている)はさらに調査するために選択され、インビボにおいて(in vivo)血液癌に対するその活性が測定され、その抗癌活性の基礎となる機構がさらに解明された。BMS−936564抗体はまた、再発/難治性AML、MMおよびNHLの患者における第1相治験に入った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
本発明の開示は、ヒトCXCR4に結合し、治療用抗体に望ましい数多くの特性を示す単離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体を提供する。これらの特性には、細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に低nM親和性で結合し、ヒトCXCR4に結合するSDF−1を阻害EC5050nM以下で阻害し、CXCR4を発現する細胞におけるSDF−1誘導性カルシウム流を阻害EC503nM以下で阻害し、CXCR4を発現する細胞のSDF−1誘導性遊走を阻害EC5050nM以下で阻害し、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HuVEC)による毛細管形成を阻害し、CXCR4を発現する多種多様な細胞においてアポトーシスを誘導し、インビトロにおいて腫瘍細胞増殖を阻害し、インビボにおいて腫瘍増殖を阻害し、CXCR4腫瘍細胞の転移を阻害し、かつ/またはCXCR4腫瘍を有する対象の生存期間を延長させる能力が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい態様では、本開示は、単離されたモノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体またはそれらの抗原結合部分に関し、前記モノクローナル抗体は、
(a)細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に結合し、
(b)SDF−1(CXCL12)のヒトCXCR4への結合を阻害し、
(c)ヒトCXCR4を発現する細胞におけるSDF−1誘導性カルシウム流を阻害し、
(d)ヒトCXCR4を発現する細胞のSDF−1誘導性遊走を阻害し、かつ
(e)ヒト臍帯静脈内皮細胞による毛細管形成を阻害する。
さらにより好ましくは、この抗体はまた、ヒトCXCR4を発現する細胞のアポトーシスを誘導し、インビボにおいて腫瘍細胞アポトーシスを誘導し、かつ/またはCXCR4腫瘍細胞の増殖を阻害する。
【0012】
本開示はまた、血液悪性腫瘍を含むCXCR4を発現する癌に罹患した対象を処置するための方法であって、細胞表面で発現したヒトCXCR4に特異的に結合する抗CXCR4抗体の治療有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。ある種の実施形態では、抗CXCR4抗体は、CXCR4の活性を阻害する。好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、CXCR4発現標的細胞のアポトーシスを誘導する。したがって、抗CXCR4抗体は、ある種の実施形態では、単独療法として使用される。その他の実施形態では、抗CXCR4抗体は、その他の抗癌剤と組み合わせて使用される。好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、MM、AMLまたはNHLである。好ましい実施形態では、抗体はヒト抗体である。より好ましくは、抗体はBMS−936564である。
【0013】
本開示はさらに、血液悪性腫瘍を含む癌に罹患した対象を処置するための医薬組成物を調製するためのCXCR4抗体の使用を提供する。
【0014】
本開示はまた、対象の癌を処置するためのキットであって、(a)投与1回分の抗CXCR4抗体、および(b)本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗CXCR4抗体を使用するための指示書を含むキットを提供する。好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、BMS−936564である。
【0015】
本開示のその他の特性および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかとなるだろうが、それらは限定するものと解釈すべきではない。本出願全体にわたって引用した全参照文献、ジェンバンク(GENBANK)(登録商標)登録、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】図1は、F7(BMS−936564)ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域(A)のヌクレオチド配列(配列番号33)およびアミノ酸配列(配列番号25)を示す。CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号5)およびCDR3(配列番号9)領域を描写し、V、DおよびJ生殖系列由来を指示する。F7の軽鎖可変領域(B)のヌクレオチド配列(配列番号37)およびアミノ酸配列(配列番号29)も示す。CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号17)およびCDR3(配列番号21)領域を描写し、VおよびJ生殖系列由来を指示する。
図1-2】図1−1に同じ。
【0017】
図2図2は、ヒト抗CXCR4抗体F7、F9、D1およびE2の細胞表面に天然ヒトCXCR4を発現するCEM細胞への結合を示す。
【0018】
図3図3はFITC標識抗CXCR4抗体F9と一連の未標識ヒト抗CXCR4抗体との間のCEM細胞への結合の抗体競合を示す。
【0019】
図4-1】図4は、BMS−936564結合のフローサイトメトリー分析を示す。抗体は、AML細胞株Nomo−1およびHL−60(A)、CXCR4トランスフェクトR1610、CEMおよびRamos細胞株(B)、MM細胞株、JJN−3RおよびMOLP8(C)ならびに原発性AML患者血液細胞(D)に結合する。
図4-2】図4−1に同じ。
図4-3】図4−1に同じ。
図4-4】図4−1に同じ。
【0020】
図5図5は、125I標識CXCL12のCEM細胞で発現したCXCR4への結合の抗CXCR4ヒト抗体F7(BMS−936564)、F9およびD1による阻害を示す。E2抗体は、CXCL12のCEM細胞への結合を阻害しない。
【0021】
図6-1】図6は、125I標識CXCL12のCEM細胞への結合の抗CXCR4抗体MDX−1338(BMS−936564)(A)または抗CXCL12抗体(B)による阻害ならびに125I標識CXCL12のRamos細胞への結合のMDX−1338(6C)による阻害を示す。リガンド結合アッセイは、MDX−1338、抗CXCL12またはアイソタイプ対照抗体の増加する濃度の存在下で125I−CXCL12 100pMをCEM細胞とインキュベートすることによって実施した。非特異的結合(NSB)を確認するために、未標識CXCL12を1000倍モル過剰(100nM)で添加した。達成可能な全結合(全体)を確認するために、抗体または未標識競合物を含めずに125I−CXCL12を添加した。
図6-2】図6−1に同じ。
図6-3】図6−1に同じ。
【0022】
図7図7は、CEM細胞におけるCXCL12(SDF−1)誘導性カルシウム流の抗CXCR4ヒト抗体F7(BMS−936564)、F9およびD1による阻害を示す。E2は、CXCL12誘導性カルシウム流をあまり阻害しない。
【0023】
図8-1】図8は、CXCR4細胞におけるCXCL12誘導性カルシウム流の抗CXCR4抗体MDX−1338(BMS−936564)または抗CXCL12抗体による阻害を示す。カルシウム流アッセイは、試験抗体またはアイソタイプ対照の存在下または非存在下で、Ramos細胞(A)またはCEM細胞(B)のいずれかをカルシウム4色素とインキュベートすることによって実施した。色素を添加した細胞を、Ramos細胞は50nM、CEM細胞は5nMのCXCL12と共に室温でインキュベートした。20秒から200秒の間の蛍光の曲線下面積を定量して、EC50を算出した。
図8-2】図8−1に同じ。
【0024】
図9図9は、CEM細胞のCXCL12誘導性遊走の抗CXCR4ヒト抗体F7(BMS−936564)およびF9による阻害を示し、一方、抗体D1およびE2はあまり遊走を阻害しない。
【0025】
図10-1】図10は、CXCR4細胞のCXCL12誘導性遊走の抗CXCR4抗体MDX−1338(BMS−936564)または抗CXCL12抗体による阻害を示す。Ramos(A)およびCEM(B)細胞による遊走アッセイは、それぞれCXCL12 1.25nMおよび0.05nMの存在下で実施した。下の区画に遊走した標識細胞の数は、Fusion(PerkinElmer)プレートリーダーで測定した。各点は、n=3を表す。
図10-2】図10−1に同じ。
【0026】
図11-1】図11は、抗CXCL12による無阻害と比較した(A)インビトロにおけるRamos腫瘍細胞増殖の抗CXCR4ヒト抗体F7(BMS−936564)、F9およびE2による阻害、および(B)Ramos細胞増殖のMDX−1338(BMS−936564)による阻害を示す。(B)では、様々なペプチドCXCR4アンタゴニストの効果も示す。
図11-2】図11−1に同じ。
【0027】
図12-1】図12は、皮下腫瘍モデルにおけるインビボでのRamos腫瘍細胞増殖の抗CXCR4ヒト抗体F7(BMS−936564)およびF9による阻害を示す。図12Aは、平均腫瘍容量増殖曲線を示し、図12Bは腫瘍容量増殖中央値曲線を示し、図12Cは%体重変化の中央値を示す。
図12-2】図12−1に同じ。
図12-3】図12−1に同じ。
【0028】
図13-1】図13は、Ramos全身性腫瘍細胞モデルにおける抗CXCR4ヒト抗体F9(A)または抗CXCR4抗体、BMS−936564および抗CXCL12抗体(B)で処置したマウスの生存パーセントを示す。BMS−936564は、このRamos全身性モデルにおいて高度に有効であり、一方、抗CXCL12Abは有効性を示さない。
図13-2】図13−1に同じ。
【0029】
図14-1】図14は、Ramos細胞をMDX−1338(BMS−936564)10μg/mLまたはアイソタイプ対照と37℃で24時間インキュベートすることによって実施したアポトーシスアッセイの結果を示す。細胞は、アネキシンV−FITCおよびヨウ化プロピジウムで染色した(A)。アネキシンVのみに陽性またはアネキシンVおよびPIの両方に2重陽性の細胞のパーセントを測定した(B)。
図14-2】図14−1に同じ。
【0030】
図15図15は、MDX−1338(BMS−936564)によるアポトーシスの誘導がCXCR4特異的であることを示す。MDX−1338またはアイソタイプ対照をCXCR4トランスフェクト細胞(A)またはR1610親細胞(B)に添加し、アネキシンV−FITCおよびPIで染色した。アネキシンVのみに陽性またはアネキシンVおよびPIの両方に2重陽性であった細胞のパーセントを例示する。
【0031】
図16図16は、ブロッキングCXCR4抗体、MDX−1338(BMS−936564)およびリツキシマブ(キメラ抗CD20モノクローナル抗体)陽性対照によるRamos細胞リンパ腫異種移植のインビボにおける腫瘍増殖阻害ならびにブロッキング抗CXCL12抗体による腫瘍増殖の無阻害を示す。
【0032】
図17-1】図17は、MDX−1338(BMS−936564)によるHL60細胞(A)およびNomo−1(B)急性骨髄性白血病異種移植のインビボにおける腫瘍増殖阻害を示す。シタラビンは、予測通りシタラビン耐性Nomo−1腫瘍の腫瘍増殖を阻害しなかった。
図17-2】図17−1に同じ。
【0033】
図18-1】図18は、MDX−1338(BMS−936564)による様々なCXCR4+多発性骨髄腫細胞異種移植のインビボにおける腫瘍増殖阻害を示す。A、MDX−1338単独でまたはレナリドミドもしくはボルテゾミブと組み合わせて処置したMOLP8細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;B、MDX−1338またはレナリドミドもしくはボルテゾミブで処置したJJN−3R細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;C、MDX−1338単独でまたはボルテゾミブと組み合わせて処置した親JJN−3細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;D、MDX−1338単独でまたはレナリドミドと組み合わせて処置した親JJN−3細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;E、MDX−1338単独またはレナリドミド(REVLIMID(登録商標))との組合せによるRPMI−8226細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;F、MDX−1338単独またはボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))との組合せによるRPMI−8226細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;G、MDX−1338単独またはレナリドミドとの組合せによるMM.1S細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;H、MDX−1338単独またはボルテゾミブとの組合せによるOMP−2細胞異種移植の腫瘍増殖阻害;I、MDX−1338単独またはレナリドミドとの組合せによるOPM−2細胞異種移植の腫瘍増殖阻害。
図18-2】図18−1に同じ。
図18-3】図18−1に同じ。
図18-4】図18−1に同じ。
図18-5】図18−1に同じ。
図18-6】図18−1に同じ。
図18-7】図18−1に同じ。
図18-8】図18−1に同じ。
図18-9】図18−1に同じ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明の開示は、細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体に関する。ある種の実施形態では、本開示の抗体は、特定の重鎖および軽鎖生殖系列配列から得られ、かつ/または特定のアミノ酸配列を含む可変領域もしくはCDRなどの特定の構造特色を含む。本開示はまた、癌、特に、血液悪性腫瘍、腫瘍転移、HIV感染、炎症および血管新生などのCXCR4の発現が関連した、またはCXCR4/CXCL12経路が関与する疾患または障害におけるCXCR4活性を調節するために、またはその他の形でそれらを処置するために、この抗体を使用する方法に関する。
【0035】
用語
本開示をより容易に理解できるように、ある種の用語を最初に定義する。本出願で使用したように、本明細書で別段明白に規定しない限り、以下の用語はそれぞれ、以下に記載した意味を有するものとする。さらなる定義は、本出願全体にわたって記載する。
【0036】
「投与」とは、当業者に公知の様々な方法および送達系のいずれかを使用した治療薬を含む組成物の対象への物理的導入を意味する。本発明の抗体のための好ましい投与経路には、例えば、注射もしくは注入による静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄またはその他の非経口投与経路が含まれる。本明細書では、「非経口投与」という表現は、経腸および局所投与以外の、通常、注射による投与様式を意味し、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、リンパ内、病巣内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションが含まれる。あるいは、本発明の抗体は、局所、表皮または粘膜投与経路などの非経口経路によって、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下または局所的に投与することができる。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1回または複数の長期間にわたって実施することができる。
【0037】
「抗体」(Ab)には、限定はしないが、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質イムノグロブリンまたはそれらの抗体結合部分が含まれるものとする。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、Cから構成される。VおよびV領域はさらに、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称する領域が分散した相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域に細区分することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順番、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、イムノグロブリンが、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または要素に結合するのを媒介することができる。
【0038】
抗体は通常、同種(cognate)抗原に高い親和性で特異的に結合し、10−5から10−11−1以下の解離定数(K)に反映される。約10−4−1より大きなKは一般的に、非特異的結合を示すと考えられる。本明細書では、抗原に「特異的に結合する」抗体とは、抗原および実質的に同一の抗原に、Kが10−7M以下、好ましくは10−8M以下、さらにより好ましくは5×10−9M以下、最も好ましくは10−8Mと10−10M以下の間であることを意味する高い親和性で結合するが、関連のない抗原には高い親和性では結合しない抗体を指す。抗原は、所与の抗原に対して高い程度の配列同一を示すならば、例えば、所与の抗原の配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、またはさらにより好ましくは少なくとも99配列同一性を示すならば、所与の抗原に対して「実質的に同一」である。例として、ヒトCXCR4に特異的に結合する抗体はまた、ある種の霊長類種のCXCR4抗原と交差反応し得るが、ある種のげっ歯類種のCXCR4抗原またはCXCR4以外の抗原、例えば、ヒトPD−L1抗原とは交差反応することはない。
【0039】
イムノグロブリンは、限定はしないが、IgA、分泌IgA、IgGおよびIgMを含む通常公知のアイソタイプのいずれかから得ることができる。IgGサブクラスはまた、当業者には周知で、限定はしないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれる。「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgGl)を意味する。「抗体」には、例として、天然に生じるおよび天然には生じない抗体の両方、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラおよびヒト化抗体、ヒトまたは非ヒト抗体、完全に合成された抗体ならびに1本鎖抗体が含まれる。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低下させるために組換え法によってヒト化することができる。明白に記載されていないならば、また文脈上別段に指示していないならば、「抗体」という用語はまた、前述のイムノグロブリンのいずれかの抗原結合断片または抗原結合部分を含み、1価および2価断片または部分を含み、1本鎖抗体を含む。
【0040】
「単離された抗体」とは、様々な抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、CXCR4に特異的に結合する単離された抗体は、CXCR4以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、CXCR4に特異的に結合する単離された抗体は、様々な種のCXCR4分子などのその他の抗原との交差反応性を有していてもよい。さらに、単離された抗体は、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0041】
「抗抗原抗体」、「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現は、本明細書では、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と同義に使用する。
【0042】
「モノクローナル抗体」(「mAb」)という用語は、単一な分子組成物の抗体分子、すなわち、1次配列が本質的に同一で、単一な結合特異性および特定のエピトープに親和性を示す抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体、トランスジェニックまたは当業者に公知のその他の技術によって生成することができる。
【0043】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系列イムノグロブリン配列から得られた可変領域を有する抗体を意味する。さらに、抗体が定常領域を含有するならば、この定常領域はまた、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列から得られる。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、インビトロにおけるランダムまたは部位特異的変異誘発によって、またはインビボにおける体細胞突然変異によって導入された突然変異)。しかし、本明細書では、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列から得られたCDR配列がヒトフレームワーク配列に接合された抗体は含まないものとする。「ヒト」抗体および「完全なヒト」抗体という用語は、同義に使用される。
【0044】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト抗体のCDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全てをヒトイムノグロブリンから得られた対応するアミノ酸で置換した抗体を意味する。ヒト化形態の抗体の一実施形態では、CDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全てがヒトイムノグロブリンのアミノ酸と置換しているが、一方、1つまたは複数のCDR領域内のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸は変化していない。アミノ酸の小さな添加、欠失、挿入、置換または改変は、抗体が特定の抗原に結合する能力を阻害しない限り、許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体と類似の抗原特異性を保持する。
【0045】
「キメラ抗体」とは、可変領域が1つの種から得られ、定常領域は別種から得られる抗体、例えば、可変領域がマウス抗体から得られ、定常領域がヒト抗体から得られる抗体を意味する。
【0046】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合断片」とも呼ばれる)は、全抗体に結合した抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1種または複数の断片を意味する。
【0047】
「癌」とは、体内の異常細胞の無秩序な増殖を特徴とする様々な疾患の大きな群を意味する。未制御の細胞分裂および増殖分裂および増殖は、近隣の組織に侵入し、リンパ系または血流を通って身体の遠い部分に転移することもある悪性腫瘍の形成を引き起こす。
【0048】
「CXCR4」(「C−X−Cケモカイン受容体4」)という用語には、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。例えば、CXCR4に特異的な抗体は、ある種の場合では、ヒト以外の種のCXCR4と交差反応することができる。その他の実施形態では、ヒトCXCR4に特異的な抗体は、ヒトCXCR4に完全に特異的であってもよく、種またはその他の種類の交差反応性を示さなくてもよい。「ヒトCXCR4」という用語は、ジェンバンク(登録商標)受入番号P61073(配列番号51)を有するヒトCXCR4の完全なアミノ酸配列などのヒト配列CXCR4を意味する。CXCR4はまた、当技術分野では、例えば、LESTR、フーシンまたはCD184として知られている。ヒトCXCR4配列は、例えば、非保存領域に保存された突然変異または突然変異を有することによって配列番号51のヒトCXCR4とは異なっていてもよいが、CXCR4は配列番号51のヒトCXCR4と実質的に同じ生物学的機能を有する。例えば、ヒトCXCR4の生物学的機能は、CXCR4の細胞外ドメインに本開示の抗体が特異的に結合するエピトープを有することであるか、あるいはヒトCXCR4の生物学的機能は、ケモカインが結合することまたは転移プロセスにおいて関与することである。
【0049】
特定のヒトCXCR4配列は一般的に、アミノ酸配列が配列番号51のヒトCXCR4と少なくとも90%同一であり、その他の種(例えば、マウス)のCXCR4アミノ酸配列と比較したとき、アミノ酸配列がヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。ある種の場合では、ヒトCXCR4は、アミノ酸配列が配列番号51のCXCR4と少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%同一であってもよい。ある種の実施形態では、ヒトCXCR4配列は、配列番号51のCXCR4と10個以下のアミノ酸の違いを示す。ある種の実施形態では、ヒトCXCR4は、配列番号51のCXCR4と5個以下、またはさらに4、3、2もしくは1個以下のアミノ酸の違いを示してもよい。パーセント同一性は、本明細書で説明したように測定することができる。
【0050】
「CXCR4を発現する癌」または「CXCR4癌」は、この癌を特徴付ける悪性腫瘍細胞が、細胞表面にCXCR4を発現する、好ましくは高レベルのCXCR4を発現する癌である。
【0051】
本明細書では、「血液悪性腫瘍」という用語には、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ性悪性腫瘍ならびに脾臓およびリンパ節の癌が含まれる。本発明で開示した抗CXCR4抗体による処置に適しているリンパ腫の例には、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫の両方が含まれる。B細胞リンパ腫には、ホジキンリンパ腫およびほとんどの非ホジキンリンパ腫の両方が含まれる。B細胞リンパ腫の非限定的例には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、小細胞型リンパ球性リンパ腫(慢性リンパ球性白血病と重複する)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、バーキットリンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症が含まれる。T細胞リンパ腫の非限定的例には、節外性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫および血管免疫芽球性T細胞リンパ腫が含まれる。血液悪性腫瘍にはまた、限定はしないが、二次性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL;慢性リンパ性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄性白血病(AML;急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病(B−PLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および骨髄形成異常症(MDS)などの白血病が含まれる。血液悪性腫瘍にはさらに、限定はしないが、多発性骨髄腫(MM)およびくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)などの骨髄腫が含まれる。その他の血液および/またはB細胞もしくはT細胞関連癌は、血液悪性腫瘍という用語に包含される。例えば、血液悪性腫瘍にはまた、樹状細胞、血小板、赤血球、ナチュラルキラー細胞、ならびに、例えば、好塩基球、好酸球、好中球および単球などの多型核白血球を含む他の造血細胞の癌が含まれる。これらの前悪性腫瘍および悪性腫瘍は、分類の仕方を変えることによって異なる名称を有することが多く、異なる名称に分類されたリンパ腫を有する患者も本発明の治療計画によって利益を得ることができることは、当業者には明らかであろう。
【0052】
「SDF−1」という用語は、CXCR4のリガンドである間質細胞由来因子1を意味する。「SDF−1」という用語は、SDF−1αおよびSDF−1βなどのSDF−1の様々なアイソフォームを包含する。ヒトSDF−1αのアミノ酸配列は、ジェンバンク(登録商標)受入番号NP_954637を有する。ヒトSDF−1βのアミノ酸配列は、ジェンバンク(登録商標)受入番号NP_000600を有する。ヒトSDF−1はまた、米国特許第5,756,084号に記載されている。SDF−1はまた、CXCL12として知られている。ヒトSDF−1のアミノ酸配列は、本明細書でCXCR4について記載したNP_954637またはNP_000600のSDF−1とは異なっていてもよい。
【0053】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の一部から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を意味する。本明細書では、「細胞表面受容体」という表現には、例えば、細胞の細胞膜を横断するシグナルおよびこのようなシグナルの伝達を受けることができる分子および分子の複合体が含まれる。本開示の細胞表面受容体の1例は、CXCR4受容体である。
【0054】
「対象」には、いかなるヒトまたは非ヒト動物も含まれる。「非ヒト動物」という用語には、限定はしないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、マウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類、ニワトリなどの鳥類、両生類ならびには虫類などの脊椎動物が含まれる。好ましい実施形態では、対象は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレットまたはげっ歯類などの哺乳類である。より好ましい実施形態では、対象はヒトである。「対象」、「患者」および「個体」という用語は、本明細書では同義に使用する。
【0055】
本発明の抗体などの薬物または治療薬の「治療有効量」または「治療有効用量」とは、単独で、または別の治療薬と組み合わせて使用したとき、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および長さの増加、または疾患苦痛による機能障害または身体障害の防御によって明らかな疾患の退縮を促進する薬物の任意の量である。薬物の治療有効量または用量には、疾患を発症するかまたは疾患を再発する危険性がある対象に単独で、または別の治療薬と組み合わせて投与したとき、疾患の発症または再発を阻害する薬物の任意の量である「予防的に有効な量」または「予防的に有効な用量」が含まれる。治療薬が疾患退縮を促進する能力は、当業者に公知の様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価することができる。
【0056】
例として、抗癌剤は、対象における癌退縮を促進する。好ましい実施形態では、薬物の治療有効量は、癌を排除する点まで癌退縮を促進する。「癌退縮の促進」とは、単独で、または抗悪性腫瘍薬と組み合わせて薬物の有効量を投与すると、腫瘍増殖またはサイズの低下、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の減少、疾患症状がない期間の頻度および長さの増加、疾患苦痛による機能障害または身体障害の防御、そうでなければ患者における疾患症状の改善がもたらされることを意味する。さらに、処置に関する「有効な」および「有効性」という用語には、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、患者における癌退縮を促進する薬物の能力を意味する。生理学的安全性とは、薬物の投与によって生じる細胞、器官および/または生物レベルでの毒性またはその他の有害な生理学的効果(有害作用)のレベルを意味する。
【0057】
腫瘍の処置の例として、治療有効量または用量の薬物は、細胞増殖または腫瘍増殖を未処置対象に対して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%阻害することが好ましい。最も好ましい実施形態では、治療有効量または用量の薬物は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害し、すなわち、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する。化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、化合物が細胞増殖を阻害する能力を調べることによって評価することができ、このような阻害は、当業者に公知のアッセイによってインビトロにおいて測定することができる。本発明のその他の好ましい実施形態では、腫瘍退縮が認められ、少なくとも約20日間、より好ましくは少なくとも約40日間、またはさらにより好ましくは少なくとも約60日間継続し得る。
【0058】
対象の「処置」または「治療」とは、疾患に関連した症状、合併症、状態または生化学的徴候の逆行、軽減、改善、阻害、減速または発生、進行、発症、重症度もしくは再発の予防を目的とした対象に実施する任意の種類の介入もしくは方法または活性剤の投与を意味する。
【0059】
本開示の様々な態様を以下の項でさらに詳細に説明する。
【0060】
抗CXCR4抗体
本開示のヒトモノクローナル抗CXCR4抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックまたはトランスクロモソミックマウスを使用して生成することができる。本明細書では、これらのトランスジェニックマウスにはHUMAB MOUSE(登録商標)(Lonberg et al., 1994)、およびこれらのトランスクロモソミックマウスにはKM MOUSE(登録商標)(WO02/43478)と呼ばれるマウスが含まれる。本発明の抗CXCR4抗体例の生成は、WO2008/060367に詳細に記載されている。本開示の抗体は、特定の機能的特色または特質が特徴である。例えば、抗体は、細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に結合する。好ましくは、本開示の抗体は、CXCR4に高い親和性、例えば、K1×10−7M以下で結合する。本開示の抗CXCR4抗体は、好ましくは、以下の特徴、
(a)細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4への結合、
(b)SDF−1のCXCR4への結合の阻害、
(c)CXCR4を発現する細胞におけるSDF−1誘導性カルシウム流の阻害、
(d)CXCR4を発現する細胞のSDF−1誘導性遊走の阻害、
(e)ヒト臍帯静脈内皮細胞による毛細管形成の阻害、
(f)ヒトCXCR4へのKD1×10−7M以下での結合、
(g)CXCR4を発現する細胞におけるアポトーシスの誘導、
(h)インビトロにおけるCXCR4腫瘍細胞増殖の阻害、
(i)インビボにおけるCXCR4腫瘍細胞増殖の阻害および/またはCXCR4腫瘍細胞アポトーシスの誘導、
(j)CXCR4腫瘍細胞の転移の阻害、および/または
(k)CXCR4腫瘍を有する対象の生存時間の延長、
の1つまたは複数を示す。
【0061】
好ましくは、本開示の抗体は、ヒトCXCR4にK5×10−8M以下で結合し、ヒトCXCR4にK2×10−8M以下で結合し、ヒトCXCR4にK5×10−9M以下で結合し、ヒトCXCR4にK4×10−9M以下で結合し、ヒトCXCR4にK3×10−9M以下で結合し、またはヒトCXCR4にK2×10−9M以下で結合する。
【0062】
好ましくは、抗体は、SDF−1のヒトCXCR4への結合を、阻害のEC50が50nM以下、より好ましくは30nM以下、または15nM以下、または10nM以下、または5nM以下、または3nM以下(例えば、阻害のEC50が28.60nM以下、または12.51nM以下、または2.256nM以下)で阻害する。
【0063】
好ましくは、本開示の抗体は、ヒトCXCR4を発現する細胞におけるSDF−1誘導性カルシウム流を阻害のEC50が3nM以下、より好ましくは2nM以下、または1nM以下、または0.9nM以下、または0.8nM以下、または0.7nM以下、または0.6nM以下、または0.5nM以下、または0.4nM以下(例えば、0.9046nM以下、0.5684以下、または0.3219nM以下)で阻害する。
【0064】
好ましくは、本開示の抗体は、ヒトCXCR4を発現する細胞のSDF−1誘導性遊走を阻害のEC50が50nM以下、より好ましくは30nM以下、または20nM以下、または15nM以下(例えば、18.99nM以下、または12.44以下)で阻害する。
【0065】
細胞表面で発現した天然ヒトCXCR4に対する抗体の結合能力を評価する標準的アッセイは、当技術分野では公知で、例えば、天然に天然CXCR4を発現するか、または天然CXCR4を発現するようにトランスフェクトされた細胞株を使用したフローサイトメトリー分析が含まれる。適切なアッセイを実施例で詳細に説明する。天然CXCR4を発現する好ましい細胞株は、CEM T細胞株である。SDF−1の結合の阻害、SDF−1誘導性カルシウム流の阻害、SDF−1誘導性細胞遊走の阻害、HuVECによる毛細管形成の阻害、インビトロおよび/またはインビボにおけるCXCR4を発現する細胞におけるアポトーシスの誘導、インビトロおよび/またはインビボにおけるCXCR4腫瘍細胞増殖の阻害、および/またはCXCR4腫瘍細胞の転移の阻害を評価するために適切なアッセイはまた、実施例において詳細に説明する。抗体の結合親和性はまた、スキャッチャード分析などの標準的方法によって測定することができる。
【0066】
本発明の抗CXCR4抗体はまた、前記抗体の抗原結合部分を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によっても実施され得ることは十分に示されてきた。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、V、V、CおよびCH1ドメインからなる1価の断片、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結した2個のFab断片を含む2価の断片、(iii)VおよびCH1ドメインからなるFd断片、ならびに(iv)抗体の1腕のVおよびVドメインからなるFv断片が含まれる。
【0067】
最初、パパインおよびペプシンなどの酵素によるタンパク質分解によって得られたこれらの断片は、その後、単価および多価抗原結合断片に操作された。例えば、Fv断片の2個のドメイン、VおよびVは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を使用して、VおよびV領域が組み合わさって1本鎖可変断片(scFv)として知られる1価の分子を形成する単一のタンパク質鎖になることを可能にする合成リンカーペプチドによって一緒にすることができる。2価(Divalent)または2価(bivalent)scFv(ジ−scFvまたはバイ−scFv)は、2個のVおよび2個のV領域を含有する直列型scFvとして知られるように単一のペプチド鎖内に2個のscFvを連結することによって操作することができる。ScFvダイマーおよびより大きなマルチマーはまた、2つの可変領域を一緒に折り畳むには短すぎ、scFvsを二量体化し、ダイアボディを生成するか、またはその他のマルチマーを形成する10個未満のアミノ酸のリンカーペプチドを使用して生成することができる。ダイアボディは、対応するscFvよりもずっと高い親和性で同種抗原に結合し、scFvのK値よりも最大で40倍低い解離定数を有することが示された。非常に短いリンカー(≦3アミノ酸)は、ダイアボディよりも抗原に対してさらに高い親和性を示す3価トライアボディまたは4価テトラボディの形成をもたらす。その他の変異体には、scFv−CH3二量体であるミニボディおよびより大きなscFv−Fc断片(scFv−CH2−CH3二量体)が含まれ、単離されたCDRであっても抗原結合機能を示すことができる。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の組換え技術を使用して操作し、断片は完全な抗体と同じ方法で有用性をスクリーニングする。前記のタンパク質分解され、操作された抗体断片および関連変異体(さらに詳細についてはHollinger et al., 2005; Olafsen et al., 2010を参照)は全て、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含されるものとする。
【0068】
モノクローナル抗体F7、F9、D1およびE2
本開示の好ましい抗体は、実施例1および2に記載されているように単離し、構造的に特徴付けたヒトモノクローナル抗体F7(BMS−936564)、F9、D1およびE2である。F7、F9、D1およびE2のVアミノ酸配列を配列番号25、26、27および28それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVアミノ酸配列を配列番号29、30、31および32それぞれに示す。さらに、ある種のフレームワーク残基が生殖系列残基で置換されているF7、F9、D1およびE2の代替型を作出し、本明細書では、F7GL、F9GL、D1GLおよびE2GLと称する。F7GL、F9GL、D1GLおよびE2GLのVアミノ酸配列を配列番号41、42、43および44それぞれに示す。F7GL、F9GL、D1GLおよびE2GLのVアミノ酸配列を配列番号45、46、47および48それぞれに示す。本開示のその他の抗CXCR4抗体には、WO2008/060367に記載されているようなCXCR4に特異的に結合する抗体を作出するために、様々なVおよびV領域、または様々なCDRを「混合し、合致させる」ことによって生じる抗体が含まれる。
【0069】
したがって、一態様では、本開示は、F7、F9、D1もしくはE2の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3またはそれらの組合せを含む抗体を提供する。F7、F9、D1およびE2のVCDR1のアミノ酸配列を配列番号1〜4それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVCDR2のアミノ酸配列を配列番号5〜8それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVCDR3のアミノ酸配列を配列番号9〜12それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVCDR1のアミノ酸配列を配列番号13〜16それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVCDR2のアミノ酸配列を配列番号17〜20それぞれに示す。F7、F9、D1およびE2のVCDR3のアミノ酸配列を配列番号21〜24それぞれに示す。前記で同定したCDR領域は、Kabatシステム(Kabat et al., 1991)を使用して描写された。
【0070】
一態様では、本開示は、CXCR4、好ましくはヒトCXCR4に特異的に結合し、VおよびV領域の組合せを含み、それぞれが3つの相補性決定領域(CDR)を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。好ましい実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、
(a)配列番号25もしくは41に記載されている配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号29もしくは45に記載されている配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、
(b)配列番号26もしくは42に記載されている配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号30もしくは46に記載されている配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、
(c)配列番号27もしくは43に記載されている配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号31もしくは47に記載されている配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、または
(d)配列番号28もしくは44に記載されている配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号32もしくは48に記載されている配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、
を含む。
【0071】
その他の好ましい実施形態では、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、
(a)配列番号1に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号9に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号13に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号17に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号21に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、
(b)配列番号2に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号6に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号10に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号14に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号18に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号22に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、
(c)配列番号3に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号7に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号11に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号15に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号19に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号23に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、あるいは
(d)配列番号4に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号8に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号12に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号16に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号20に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号24に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、
を含む。
【0072】
さらなる実施形態では、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、
(a)配列番号25もしくは41に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域および配列番号29もしくは45に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号26もしくは42に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域および配列番号30もしくは46に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号27もしくは43に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域および配列番号31もしくは47に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域、あるいは
(d)配列番号28もしくは44に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む重鎖可変領域および配列番号32もしくは48に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸またはそれらの保存的改変物を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0073】
好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体またはそれらの抗原結合部分は、
(a)配列番号1に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号5に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号9に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号13に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号17に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、および
(f)配列番号21に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、
を含む。
【0074】
別の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体またはそれらの抗原結合部分は、
(a)配列番号2に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号6に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号10に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号14に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号18に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、および
(f)配列番号22に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、
を含む。
【0075】
抗CXCR4抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の実施形態では、本開示は、本開示の抗CXCR4モノクローナル抗体のいずれかと同じ、ヒトCXCR4上のエピトープ領域(すなわち、同じかまたは重複するエピトープ)に結合する抗体またはそれらの抗原結合部分を提供する(すなわち、CXCR4への結合に対して本開示のモノクローナル抗体のいずれかと交差競合する能力を有する抗体)。好ましい実施形態では、交差競合研究用の参照抗体は、モノクローナル抗体F7(BMS−936564)(配列番号25および配列番号29でそれぞれ示したVおよびV配列を有する)またはモノクローナル抗体F9(配列番号26および配列番号30でそれぞれ示したVおよびV配列を有する)またはモノクローナル抗体D1(配列番号27および配列番号31でそれぞれ示したVおよびV配列を有する)またはモノクローナル抗体E2(配列番号28および配列番号32でそれぞれ示したVおよびV配列を有する)であってもよい。したがって、本開示は、ヒトCXCR4への結合に対して参照抗体またはその参照抗原結合部分と交差競合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供し、参照抗体またはその部分は、
(a)配列番号25に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号29に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号26に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号30に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号27に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号31に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域、または
(d)配列番号28に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号32に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0076】
好ましい態様では、本発明の交差競合する抗CXCR4モノクローナル抗体は、配列番号49に記載されているヒトV3〜48生殖系列配列から得られた配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含むV領域および/または配列番号50に記載されているヒトVL15生殖系列配列から得られた配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含むV領域を含む。
【0077】
交差競合する抗体は、標準的CXCR4結合アッセイにおいて、例えば、参照抗体をFITCで標識し、試験抗体がFITC標識参照抗体のCEM細胞への結合を阻害する能力を評価するCEM細胞によるフローサイトメトリーにおいて、F7、F9、D1、E2または本発明の任意のその他の参照抗CXCR4抗体と交差競合する能力に基づいて同定することができる。
【0078】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、本開示のモノクローナル抗体の1種または組合せ、あるいはそれらの抗原結合部分を含有し、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された組成物、例えば、医薬組成物を提供する。本明細書では、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合したありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、この担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。本発明の医薬組成物には、1種または複数の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体および/または保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含めることができる。
【0079】
投与計画は、最適な所望する応答、例えば、治療応答または最小有害作用を実現するために調節する。
【0080】
ヒト抗CXCR4抗体の投与では、投薬量は、対象体重の約0.0001から100mg/kg、好ましくは約0.01から約20mg/kg、より好ましくは0.1から10mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、0.1、0.3、1、3、5または10mg/kg体重であってもよく、より好ましくは0.3、1、3または10mg/kg体重であってもよい。投与計画は通常、抗体の一般的な薬物動態特性に基づいた持続的な受容体占有を引き起こす曝露を実現するように計画する。処置計画の例には、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3ヵ月に1回または3から6ヵ月に1回の投与が含まれる。IgG4抗体は通常2〜3週間の半減期を有することを考慮すると、本開示の抗CXCR4抗体の好ましい投与計画には、0.3〜20mg/kg体重、好ましくは1〜10mg/kg体重で、応答が完了するか、または進行性疾患を確認するまで、7または14日毎を6週、8週または12週サイクルまで抗体を静脈内投与により与えることが含まれる。
【0081】
投薬量および投与計画は、処置期間中変化することがある。例えば、本開示の抗CXCR4抗体の投与計画には、1、3または10mg/kg体重の静脈内投与(IV)が含まれ、抗体は以下の投薬計画、(i)7日毎を6週サイクルまで、(ii)2週毎を6投与まで、その後は3ヵ月毎、(iii)3週毎、(iv)1〜10mg/kg体重を1回、以後は2〜3週毎に1mg/kg体重のうちの1つを使用して投与する。
【0082】
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2種類以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与した各抗体の投薬量は、指示した範囲内である。抗体は通常、何度も投与される。1回の投薬の間隔は、例えば、1週間、1ヵ月、3ヵ月毎または一年であってもよい。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血液レベルを測定することによって指定されるので、不規則であってもよい。いくつかの方法では、投薬量は、血漿抗体濃度が約1〜1000μg/ml、いくつかの方法では約25〜300μg/mlを実現するように調節する。
【0083】
あるいは、抗体は、より少ない頻度での投与が必要とされる場合では、徐放製剤として投与することができる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化する。一般的に、ヒト抗体の半減期は最長を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体がそれに続く。投与の投薬量および頻度は、処置が予防的であるか、または治療的であるかに応じて変化させることができる。予防適用では、比較的低用量が比較的少ない頻度の間隔で、長期間にわたって投与される。患者によっては、残りの人生の間ずっと処置を受け続ける。治療適用では、疾患の進行が抑えられるか、または停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされることが時々ある。その後、患者は予防的投与計画を受けることができる。
【0084】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性を有さず、特定の患者、組成物および投与様式について所望する治療応答を実現するために有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択した用量レベルは、使用した本開示の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排泄速度、処置の持続期間、使用した特定の組成物と併用したその他の薬物、化合物および/または物質を含む様々な薬物動態因子、処置する患者の年齢、性別、体重、症状、一般的健康状態および既往歴などの医薬分野で周知の要素によって左右されよう。本発明の組成物は、当技術分野で周知の様々な方法の1つまたは複数を使用して、1種または複数の投与経路を介して投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望する結果に応じて変化するものである。
【0085】
この活性化合物は、移植物、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤などの化合物が迅速に放出されるのを防止する担体と共に調製できる。生分解性生体適合ポリマー、例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤の多くの調製方法は、特許権が与えられ、または一般に当業者に知られている。例えば、Robinson (1978)を参照のこと。
【0086】
治療組成物は、当技術分野で公知の医療装置によって投与することができる。例えば、好ましい実施形態では、本開示の治療組成物は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号または第4,941,880号で開示された装置などの無針皮下注射装置で投与することができる。これらの特許の対象物は、参照により本明細書に組み込まれる。多くのその他のこのような移植物、送達系およびモジュールが当業者には公知である。
【0087】
本発明の使用および方法
本開示の抗体、抗体組成物および方法は、例えば、細胞表面で発現したCXCR4に特異的に結合する抗体またはその断片の治療有効量を対象に投与することを含む、CXCR4を発現する癌に罹患した対象を処置するための方法を含むCXCR4関連障害の診断および処置に関するインビトロおよびインビボにおける数多くの診断上および治療上の有用性を有する。好ましい対象には、CXCR4活性が関係するか、媒介または調節するか、またはCXCR4/CXCL12経路が関与する血液悪性腫瘍などの障害を有するヒト患者が含まれる。癌患者を処置するためのこれらの方法のある種の実施形態では、抗CXCR4抗体またはその断片を単独療法として投与し、一方、その他の実施形態では、抗悪性腫瘍化学療法剤などの別の薬剤と組み合わせて投与する。CXCR4に対する抗体を別の薬剤と組み合わせて投与するとき、この2つは、いずれかの順番で、または同時に投与することができる。
【0088】
CXCR4は、様々な種類の腫瘍細胞上で発現することが知られており、腫瘍転移に関与することも知られている。さらに、T細胞へのHIVの侵入のための共受容体として、CXCR4はHIV感染に関与することが知られている。さらに、CXCR4/CXCL12経路は、炎症症状に関与することが示されたことがある。さらに、CXCR4/CXCL12経路は、血管新生または新血管新生に関与することが示されたことがある。したがって、本開示の抗CXCR4抗体(および免疫複合体および二特異性分子)は、以下を含む様々な臨床症状で使用することができる。
【0089】
A.癌
CXCR4の過剰発現はまた、癌の約75%で示されており、ある種の場合では、CXCR4発現と患者の予後または生存の間には逆相関が立証されたことがある。CXCR4発現またはCXCR4/CXCL12経路が関与した癌の種類の非限定的な例には、乳癌(Muller et al., 2001)、卵巣癌(Scotton et al., 2001)、前立腺癌(Taichman et al., 2002)、非小細胞肺癌(Spano et al., 2004)、膵癌(Koshiba et al., 2000)、結腸直腸癌(Zeelenberg et al., 2003)、腎癌(Schrader et al., 2002)および甲状腺癌(Hwang et al., 2003)、鼻咽頭がん(Wang et al., 2005)、黒色腫(Scala et al., 2005)、腎細胞がん(Staller et al., 2003)、神経芽細胞腫(Geminder et al., 2001)、神経膠芽腫(Rempel et al., 2000)、横紋筋肉腫(Libura et al., 2002)および骨肉腫(Laverdiere et al., 2005)などの固形腫瘍ならびに急性リンパ芽球性白血病(Crazzolara et al., 2001)、急性骨髄性白血病 (Mohle et al., 1998; Rombouts et al., 2004)、多発性骨髄腫(Alsayed et al., 2007; Azab et al., 2009)、慢性リンパ性白血病(Mohle et al.,1999; Burger et al., 1999)、慢性骨髄性白血病(Jin et al., 2008)および非ホジキンリンパ腫(Bertolini et al., 2002; Weng et al., 2003)などの血液悪性腫瘍が含まれる。
【0090】
さらに、この経路は、複数の新生物における転移プロセスの刺激に関係する(Murphy, 2001)。臨床研究では、CXCR4は、転移する傾向の増加および生存率の減少に関与することがあり、急性骨髄性白血病、乳がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、卵巣がんおよび膵がんの予後指標と同定されたことがあり、CXCR4の発現がより多さは疾患の重症度に相関する(Spoo et al., 2007; Hiller et al., 2011; Ottaiano et al., 2006; Spano et al., 2004; Jiang et al.; 2006; Marechal et al., 2009)。
【0091】
骨髄間質細胞(BMSC)はCXCL12を分泌し、CXCR4との相互作用は、BM微小環境内における造血幹細胞のホーミングおよび維持に必須である(Mohle et al., 1998)。白血病細胞は、CXCR4を高レベルで発現し、その経路は白血病細胞のBMへの遊走において重要な役割を果たし、その結果として、白血病細胞の増殖および生存を支持する。CXCR4は、CXCL12を発現するBMなどの器官に広がる転移に必須である。まとめると、CXCR4はBMにおける造血幹細胞のホーミングおよび維持の両方において重要な役割を果たし、NHLおよびMM患者における自己移植において顆粒球コロニー刺激因子と組み合わせて使用するためにFDAによって承認された低分子CXCR4アンタゴニスト、AMD3100(プレリキサホル;モゾビル)で示されたように、CXCR4のアンタゴニストは、幹細胞を血流中に動員する(Dar et al., 2011)。別のCXCR4阻害剤、AMD3465は、CXCL12およびストロマ誘導性化学走性と拮抗することが示され、白血病細胞における生存促進性シグナル伝達経路のCXCL12誘導性活性化を阻害した(Zeng et al., 2009)。さらに、AMD3465は、単独で、または顆粒球コロニー刺激因子と組み合わせて、AML細胞および前駆細胞の循環への動員を誘導し、化学療法およびソラフェニブの抗白血病効果を増強し、動物の白血病の苦しみの著しい減少および生存期間の延長を引き起こすことが示された(Zeng et al., 2009)。このような発見は、CXCR4/CXCL12相互作用の遮断を使用して、防御された骨髄微小環境を標的とすることによって、化学療法に対して白血病細胞を感受性にすることができることを示唆している。
【0092】
実施例で説明するように、CXCR4を対象とした新規のファーストインクラスのヒト治療用モノクローナル抗体を開発した。これらのモノクローナル抗体がCXCR4発現細胞に低いナノモル親和性で結合し、CXCL12がCXCR4発現細胞に結合するのをブロックし、CXCL12誘導性遊走およびカルシウム流を低いナノモルEC50値で阻害する。注目すべきことに、CXCL12誘導性カルシウム流および遊走をブロックすることに加えて、実施例で示されたデータはまた、CXCR4を発現する腫瘍細胞のアポトーシスを抗体依存的に誘導することがこれらのヒト抗CXCR4抗体の作用機構であることを示している。抗体誘導性のアポトーシスは、複数の造血器腫瘍異種移植モデルに対してインビボにおいて着実な有効性をもたらした。BMからのCXCR4腫瘍細胞の動員を増加させ、それによって薬剤感受性を増加させるが、このような腫瘍細胞を直接殺滅しない低分子CXCR4アンタゴニストの作用に基づくと、癌細胞を殺滅する本発明の抗CXCR4抗体の有効性は驚くべきものであり、予期せぬものであった。
【0093】
CXCR4は増殖、遊走/浸潤および血管新生を含む癌の複数の基本的な局面において役割を果たすので、アンタゴニストは、CXCR4が発現する悪性腫瘍に干渉する多種多様な手段となる可能性がある。経路の詳細な検討を開始するために、CXCR4およびCXCL12それぞれに対する完全なヒトモノクローナル抗体を開発した。抗CXCR4および抗CXCL12抗体は両方とも、リガンドがCXCR4に結合するのを阻害し、カルシウム流および遊走などのリガンド誘導性細胞応答の阻害を引き起こす(実施例4〜6)。これらの機能に加えて、CXCR4/CXCL12軸は、血管新生の促進に関係することがある(Guleng et al., 2005); Ping et al., 2011)。抗CXCR4(実施例7)および抗CXCL12(データは示さず)抗体は両方とも、インビトロにおける血管新生の証拠である内皮管形成も阻害した。
【0094】
CXCR4/CXCL12相互作用の遮断の効果を調べるために、腫瘍増殖の減衰における抗体の有効性を様々なインビボにおける異種移植モデルにおいて試験した。NHL(バーキットリンパ腫)のモデルでは、Ramos細胞をSCIDマウスに移植し、リツキシマブを陽性対照として使用した。驚くべきことに、抗CXCL12抗体は腫瘍増殖を制御せず、ビヒクルおよびアイソタイプ対照と区別することはできないものと考えられた。対照的に、抗CXCR4抗体BMS−936564は、リツキシマブと同様の活性で腫瘍増殖のほとんど完全な制御を示した(実施例14)。化学走性のインビトロにおける阻止は、2種類の抗体の間では類似していたので(実施例6)、抗腫瘍制御がCXCL12/CXCR4軸の阻止に左右されるとは考えにくい。したがって、BMS−936564の直接的な細胞傷害性効果を、Ramos細胞増殖アッセイにおいて試験した。CXCL12は、細胞増殖を促進する自己分泌因子とされてきており、別の研究では、CXCL12siRNAはBR5−1増殖を阻害した(Liu et al., 2011; Righi et al., 2011)。増殖の阻害は部分的であったが、抗CXCR4による増殖の用量に依存した阻害が認められ、一方、AMD3100および抗CXCL12抗体は効果を有さなかった(実施例8)。最近、CXCR4の特異的アンタゴニストであることが報告された14残基ポリペプチド(BKT140)が、多発性骨髄腫細胞の増殖を阻害することが示された(Beider et al., 2011)。AMD3100は弱い部分的な作動薬であり、一方、BKT140は逆作動薬として作用することが示唆された(Zhang et al., 2002)。
【0095】
前記のことを考慮して、本開示の抗CXCR4抗体は、癌細胞の表面で発現したCXCR4受容体に特異的に結合する抗体またはその断片の治療有効量を対象に投与することを含む、CXCR4を発現する癌に罹患した対象を処置するための方法で使用することができる。ある種の実施形態では、この処置方法は、以前に癌に罹患した対象、または癌になる危険性がある対象に予防的に使用する。好ましい実施形態では、対象はヒトであり、抗体またはその断片はヒトCXCR4受容体に結合する。その他の好ましい実施形態では、CXCR4受容体に結合する抗体またはその断片は、受容体の活性を阻害する。したがって、抗体またはその断片は、BM微小環境内での造血幹細胞のホーミングおよび維持を遮断し、かつ/またはBMから末梢への細胞の動員を増加させ、それによって造血癌細胞の化学療法剤に対する感受性を増加させる。その他の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体およびその断片は、CXCR4発現細胞のアポトーシスを誘導する。標的癌細胞のアポトーシスは、単独療法としての抗体の使用を可能にする。
【0096】
ある種の実施形態では、抗体またはその断片は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体またはその断片である。好ましい実施形態では、抗体またはその断片は、ヒト抗体またはその断片である。その他の好ましい実施形態では、抗体またはその断片は、その配列が配列番号25に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域にCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを、その配列が配列番号29に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域にCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。
【0097】
ある種の実施形態では、KabatシステムによるCDR配列の描写にしたがって、抗CXCR4抗体またはその断片は、その配列が配列番号1に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、その配列が配列番号5に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、その配列が配列番号9に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、その配列が配列番号13に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、その配列が配列番号17に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、およびその配列が配列番号21に記載されている連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0098】
本発明の方法のその他の実施形態では、抗CXCR4抗体またはその断片は、配列番号25に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号29に記載されている配列を有する連続的に連結したアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む。好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体またはその断片は、IgG1もしくはIgG4抗体またはその断片である。より好ましい実施形態では、抗体またはその断片は、BMS−936564またはそのCXCR4結合断片である。
【0099】
本明細書に記載されている処置方法に適している癌には、固形腫瘍および血液悪性腫瘍が含まれる。ある種の実施形態では、固形腫瘍は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、膵癌、甲状腺癌、結腸直腸癌および腎癌、鼻咽頭がん、黒色腫、腎細胞がん、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、横紋筋肉腫および骨肉腫から選択される。その他の実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、急性骨髄性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫および前駆Tリンパ芽球性リンパ腫から選択される。好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病または慢性リンパ性白血病である。
【0100】
多発性骨髄腫(MM)は、悪性腫瘍の蓄積、イムノグロブリン分泌、骨髄内の形質細胞を特徴とする形質細胞悪性腫瘍で、骨の破壊、骨髄機能不全、腎機能障害および末梢神経障害を引き起こし得る。従来処置の後の生存中央値は、3〜4年で、高用量の処置に続いて自己造血幹細胞移植(HSCT)を行うことによって5〜7年に延長することができる(Raab et al., 2009)。
【0101】
MMのために通常使用される最近承認された治療計画には、導入用のメルファランをベースにした治療計画ならびに導入用および再発した対象用のボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))またはサリドマイドもしくはレナリドミド(REVLIMID(登録商標))を含む免疫調節剤(IMiD)をベースにした治療計画が含まれる。再発した、または難治性MMを有する対象では、処置選択肢にはHSCT、以前の化学療法処置計画の反復または新たな治療計画が含まれる。HSCTには、処置に関連した罹患の高い危険性が伴う。さらに、対象によっては、パフォーマンスステータスの乏しさまたは合併症のために、HSCTに適さない者もいる。現在のところ、完治はせず、現在の療法では、疾患の進行を遅らせ、生存期間を延長させ、症状を最小限に抑えることしかできない。初期治療を乗り切ったMM対象のほとんど全てが、一連の治療にも関わらず再発するか、または難治性になり、さらなる治療を必要とする(Jemal et al., 2005)。したがって、MMの対象には、未だに満たされていない重大な医療上のニーズがある。本処置方法の好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫で、再発したかまたは難治性のMMが含まれる。
【0102】
急性骨髄性白血病(AML)は、成人における最も一般的な急性白血病で、症例の80%を占める。米国では、毎年13,000人超の患者がAMLと診断され、8,820人超が亡くなっている(Cancer Facts and Figures, 2008)。成人AMLの処置には、寛解を実現するための導入化学療法および再発を回避するための寛解後化学療法(幹細胞移植を行うかまたは行わない)が含まれる。寛解導入率は、50%から85%の範囲である。疾患は、対象の大部分で再発する。再発したAMLの処置に伴う寛解率は比較的低く、永続的な利益を得る患者はほとんどいない(Breems et al., 2005)。
【0103】
再発したかまたは難治性AMLの成人を処置するための現在の選択肢には、化学療法およびHSCTが含まれる。同種HSCTは、初回導入不成功または初回完全寛解(CR)を越えた場合に選択される処置と考えられており、患者の約20%においてのみ長期健存率がもたらされる。しかし、HSCTは、様々な理由から多数の患者に適切ではなく、利用不可能である(例えば、早期再発、移植施設の利便性の悪さ)。このことから、再発したかまたは従来の化学療法では難治性の患者は予後が悪く、新たに急性白血病と診断された患者と比較して化学療法に対する応答性が悪いという事実と共に、このような患者集団のために新たな標的化剤を開発する必要があることが要求される。本処置方法の好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病で、再発したAMLが含まれる。
【0104】
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、西洋諸国における最も一般的な白血病で、米国における白血病全体の30%を占める。2011年では、約14,570例が新たにCLLと診断され(Siegel et al., 2011)、4,400人の患者が亡くなる。この疾患は、機能不全の進行、モノクローナルリンパ球が特徴で、リンパ節腫大、脾腫大、肝腫大、ならびに末梢血および骨髄における著しいリンパ球増加症を引き起こす。ほとんどのCLL患者は最初、化学療法に対して完全なまたは部分的な寛解を示すが、HSCTによって処置された患者以外は、ほとんど全てが処置の中断後再発するか、または難治性疾患を発症する。現在のCLLのための最初の処置には、従来の化学療法および/またはモノクローナル抗体(リツキシマブ)療法が含まれる。ほとんどの患者の生存は、5〜10年で、徐々に罹患率が増加する。再発/難治性CLLの患者では、現在の処置選択肢では疾患は治癒せず、生存中央値は16ヵ月と推定されている。本処置方法の好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病で、再発したCLLが含まれる。
【0105】
濾胞性リンパ腫(FL)は、米国および西欧における2番目に最も一般的なリンパ腫で、NHL(全体)の約20%および低級リンパ腫の大部分を占める。ほとんどの患者は最初の療法に応答するという事実にもかかわらず(約40〜80%が完全に寛解する)、使用した治療計画に応じて、ほとんど全ての患者が後に進行性疾患を発症する。また、最高10%が最初の処置に対して難治性である。したがって、新たな、より効果的な療法が必要とされている。本処置方法の好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、濾胞性リンパ腫で、再発したFLが含まれる。
【0106】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、NHLの最も一般的な種類で、成人の症例の25〜30%を占める(75歳を上回る患者のNHLの40%)。DLBCLにはいくつかのサブタイプがあり、限定はしないが、胚中心B(GCB)型、活性化B細胞型(ABC)および縦隔原発型が含まれる(Gisselbrecht et al., 2011)。処置した患者の3年全生存率(OS)はGCBで84%、ABCで56%である。ほとんどのDLBCL患者は、従来の療法で治癒しない。再発後、患者の少なくとも60%が従来の処置に感受性を保持しており、一方第2の処置計画で10%未満が長期間の健存率を示す(Gisselbrecht et al., 2010)。化学感受性疾患の患者サブセットの場合、再発したかまたは難治性の(r/r)DLBCLは、その後の高用量化学療法および移植を目的とした化学療法(リツキシマブを用いるかまたは用いない)で処置する。第2の化学療法計画、その後のHSCTに応答した約50%は、2年後に応答性を維持している。第2の療法に失敗したか、または移植後に再発した移植を行っていない候補では、治療は姑息的である。移植を行わない場合、r/rDLBCLにおいて化学療法でもたらされる疾患制御は短期間である。原発性難治性患者は、第2の化学療法計画でCRが実現される見込みはなく、再発後、2回目の寛解は通常長続きしない(Singer et al., 1986)。DLBCLは最初、化学物質反応性の疾患なので、化学感受性を回復させるために本開示の抗CXCR4抗体などの薬剤を添加することがこの疾患を処置するための堅実な戦略である。本処置方法の好ましい実施形態では、血液悪性腫瘍は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、再発したかまたは難治性のDLBCLが含まれる。
【0107】
HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp120のCXCR4への結合によってCXCR4媒介アポトーシスを示すHIV−1研究のデータがきっかけとなって(Garg et al., 2006; Berndt et al., 1998)、本開示の抗CXCR4抗体BMS−936564がCXCR4発現細胞株のアポトーシスを誘導する能力を測定した。BMS−936564誘導性アポトーシスは、20種類を上回る異なるCXCR4発現細胞株で示され(実施例11および表3および4を参照のこと)、この機構が1つの細胞種に限定されないことが確認された。
【0108】
アポトーシスはまた、慢性リンパ球性白血病の微小残存病変(MRD)のインビトロモデルにおいて示された(Kashyap et al., 2012)。MRDの根絶は、CLLの処置の最も困難な目標の1つである。このMRDモデルでは、CXCL12を発現して分泌し、CLL患者の原発性白血病細胞の生存を支持する間質細胞の共培養をベースにしており、CLL細胞は生存能の増加を示し(48時間で20〜60%)、化学療法剤に対して耐性を示した。しかし、BMS−936564のナノモル濃度(2〜200nM)は、単独で培養したCLL細胞ならびにMRDモデルを使用してインキュベートしたCLL細胞の細胞死を誘導した。アポトーシスは17p欠失患者のCLL細胞およびインビトロにおけるフルダラビン耐性のCLL細胞において認められたので、BMS−936564のアポトーシス促進活性は、P53非依存性と考えられる。BMS−936564はまた、CLL細胞においてCXCL12媒介F−アクチン重合を、低分子CXCR4阻害剤AMD−3100よりも低濃度で阻害した。これらのデータは、BMS−936564がMRDの一因となり得るインビボでの腫瘍微小環境に存在するCLL細胞を効果的に標的化できることを示唆している(Kashyap et al., 2012)。
【0109】
開示した抗CXCR4抗体のアポトーシス効果は、低分子CXCR4アンタゴニスト、例えば、AMD3100では示されない特性で、これらの抗体は、癌患者を処置するために単独で、単独療法として使用することができることを示している。インビボAMLおよびMM腫瘍モデルにおけるCXCR4アンタゴニストの効果に関する以前の研究によって、これらのアンタゴニストは、化学療法に対する腫瘍細胞の感受性を増強するのに有効であることが示唆された(Azab et al., 2009; Zeng et al., 2009)。対照的に、本明細書において実施例で示したデータは、多種多様なAML、NHLおよびMMモデルにおいてBMS−936564を単独療法として投与すると、統計学的に有意な腫瘍増殖阻害が実現したことを示唆している。したがって、本処置方法のある種の実施形態では、抗CXCR4抗体またはその断片は単独療法として投与する。好ましい実施形態では、この抗体またはその断片は、CXCR4発現細胞のアポトーシスを誘導する。したがって、本開示は、細胞表面で発現したCXCR4受容体に特異的に結合する抗体またはその断片の治療有効量を癌に罹患した対象に投与することを含む、血液悪性腫瘍の大部分の細胞を含むCXCR4を発現する癌細胞のアポトーシスの誘導方法を提供する。
【0110】
BMS−936564はIgG抗体なので、インビボにおける有効性はADCCまたはCDCで説明することはできない。しかし、抗体がCXCR4発現細胞に一旦結合すると、抗原提示細胞上で発現したFcγR1受容体に結びつき、食作用を誘導することができる。BMS−936564の有効性がインビボで認められた細胞株は、インビトロにおいてアポトーシスを誘導するためにBMS−936564に対する抗Fc2次抗体を必要とした(実施例11)。これは、それらの特定の細胞株ではCXCR4の発現が低いためであり得る。アポトーシス開始の機構が近隣にCXCR4分子をもたらすことに依存し、細胞表面上のCXCR4の密度が、抗CXCR4抗体が及ぶ結合距離よりも低ければ、このギャップを架橋し、受容体を引き合わせてアポトーシスシグナルを発するために高親和性抗Fc2次抗体が必要であり得る。インビボでは、これはFcγR1受容体によって達成することができる。
【0111】
本明細書に記載されているデータは、細胞動員における役割に加えて、CXCR4発現標的細胞のアポトーシスに関与する抗CXCR4抗体の新たな作用機構を示唆している。これらのデータは、BMS−936564がMM、AMLならびにFLおよびDLBCLなどの様々なNHLを含む血液悪性腫瘍、ならびに固形腫瘍の悪性腫瘍の効果的な治療法を提供できることを示唆している。しかし、本発明の方法は、本開示の抗CXCR4抗体の作用の任意の特定の機構に必ずしも限定されない。例えば、BMS−936564がEMT関連タンパク質Twist、SnailおよびSlugを阻害し、E−カドヘリンを上方制御することが示されたことからも明らかなように、CXCR4は、MM細胞における間葉転換(EMT)に対して上皮を調節することができ、本開示の抗CXCR4抗体はEMTを阻害することができる(Roccaro et al., 2012)。これらのデータは、CXCR4がEMTを調節する能力によって妥当な治療標的になり得るという見解を実証している。
【0112】
CXCR4/CXCL12軸がMM細胞のBMへのホーミングおよび輸送において主要な役割を果たし、腫瘍細胞とBMとの相互作用の遮断が治療薬に対する高い感受性をもたらすことが以前に示されたことがある(Alsayed et al., 2007; Azab et al., 2009)。これらの発見は、新規抗CXCR4ヒト抗体、BMS936564がMM細胞のBMへのホーミングおよび接着を妨げ、これらの細胞を治療薬に対して感受性にすることができることを示唆している。特に、CXCR4を標的化するこの原理の妥当性はさらに、原発性MM細胞(CD138)、MM細胞株(MM.1S、RPMI.8226)および原発性MM骨髄間質細胞(BMSC)を使用してCXCL12およびBMSCへの遊走を評価したRoccaro et al.(2012)によって報告されたインビボデータによって実証される。細胞傷害性はMTTによって測定し、DNA合成はチミジン取り込みによって測定した。インビボ黒色腫マウスモデルを使用して、抗CXC4の腫瘍細胞転移調節に対する効果を検証した。(1)BMS−936564で処置したマウスは、ビヒクル処置マウスと比較して遠位骨髄ニッチへのMM細胞の少ない内転移を呈し、CXCR4が腫瘍細胞内転移の重要な調節作用を示し得るという仮説を支持しており、(2)黒色腫異種移植モデルにおいて、BMS−936564処置マウスはビヒクル処置マウスと比較して減少した数の転移の数を示し、(3)BMS−936564はインビトロにおいて遊走、接着および生存に関してMM細胞を機能的に標的化することが示された(Roccaro et al., 2012)。
【0113】
BMS936564は、MM細胞のCXCL12および原発性MMのBMSCへの遊走を用量依存的に阻害することがさらに示された。原発性MM細胞のBMSCへの接着はまた、BMS936564によって用量依存的に阻害されるが、原発性BM由来CD138細胞に対する細胞傷害性も誘導した。BMS936564抗体は、BM環境の場合、腫瘍細胞のBMSC誘導性増殖を抑えることによってMM細胞を標的化した。さらに、BMS936564はMM細胞においてボルテゾミブ誘導性細胞傷害性を相乗的に増強した(Roccaro et al., 2012)。実施例11に記載されているように、MM細胞におけるアポトーシス経路のBMS936564依存性活性化は、カスパーゼ−9およびPARPの切断によって示された。CXCL12誘導性ERK、AktおよびSrcリン酸化は、BMS936564によって用量依存的に阻害された。重要なことに、実施例16に記載されているように、BMS936564は、インビボにおいて異種移植マウスモデルのMM細胞増殖を阻害した。
【0114】
全体として、これらのデータは、MM細胞上のCXCR−4の抗CXCR4抗体による標的化は、おそらく多様な機構を使用して、一般的に癌の、具体的にはMMの処置のために有効な手段をもたらすことを明らかに示している。
【0115】
本開示の抗CXCR4抗体はまた、手術および/または放射線照射などのその他の癌の処置と組み合わせて使用することができ、かつ/または抗CXCR4抗体の治療効果を増強または増大する1種またはその他の複数の治療薬、例えば、細胞傷害性薬物、放射毒性剤または免疫抑制剤と共に共投与することができる。抗体は、薬剤に連結するか(免疫複合体として)、または薬剤とは別に投与することができる。後者の場合(別々の投与)、抗体は、その薬剤の前、後または同時に投与することができ、あるいは従来の化学療法薬および腫瘍関連抗原または免疫調節標的と結合する抗体を含むその他の公知の治療薬と共投与することができる。化学療法薬には、特に、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、ブレオマイシン硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン、ベンダムスチン、リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシドが含まれる。本開示の抗CXCR4抗体またはその抗原結合断片と化学療法薬との共投与は、ヒト腫瘍細胞に対して細胞傷害性効果を生じる様々な機構を介して影響を及ぼす2種類の抗癌剤を提供する。このような共投与によって、腫瘍細胞の薬剤に対する耐性の発現または腫瘍細胞を抗体に反応させなくする抗原性の変化による問題を解決することができる。
【0116】
その他の実施形態では、対象はさらに、例えば、対象をサイトカインで処置することによって、FcγまたはFcγ受容体の発現または活性を調節、例えば、増強または阻害する薬剤で処置することができる。多特異的分子で処置する間に投与するために好ましいサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。
【0117】
本開示の抗体はまた、Ig融合タンパク質などの1種または複数の追加的治療用抗体またはその他の結合剤と組み合わせて使用することができる。本開示の抗CXCR4抗体と組み合わせて投与することができるその他の抗体または結合剤の非限定的例には、CTLA−4、PSMA、CD30、IP−10、IFN−γ、CD70、PD−1、PD−L1、KIR、TNF、TNF−R、VEGF、VEGF−R、CCR5、IL−1、IL−18、IL−18R、CD19、CD52、CS1、EGFR、CD33、CD20、Her−2、CD25、gpIIb/IIIa、IgE、CD11a、α4インテグリン、IFNαおよびIFNAR1に対する抗体または結合剤が含まれる。
【0118】
CXCR4経路の遮断およびMM細胞などの血液癌細胞とそれらの骨髄微小環境との間の相互作用の遮断が、MMについてのレナリドミドおよびボルテゾミブなどでの抗癌治療に対する感受性化をより大きくするという証拠がますます増加している。実施例に記載されているように、MM細胞株において単独療法として、および化学療法と組み合わせたBMS−936564に関する非臨床データおよび異種移植研究によって、BMS−936564はMMにおいて活性があり、レナリドミド/デキサメタゾンおよびボルテゾミブなどの治療計画の有効性を増強することができることが示される。前臨床試験によってまた、AMD3100によるCXCR4阻害は、骨髄間質細胞からのMM細胞の脱接着およびこれらの細胞の末梢への動員を引き起こし、ボルテゾミブに対する感受性の増加をもたらすことが示された(Azab et al., 2009)。同様に、本開示の抗CXCR4抗体は、BMの防御環境から悪性腫瘍細胞を放出する能力によって化学療法の効果を高める。MM細胞の動員およびそれらの薬剤感受性の増加に加えて、これらの抗体は、その他の可能性のある機構の中でもアポトーシスによってMM細胞を直接殺滅するさらなる効果を有する(実施例11)。BMS−936564は、単独で、またはレナリドミドもしくはボルテゾミブと組み合わせて投与すると、インビボにおいてMM腫瘍増殖を阻害することが示された(実施例16)。
【0119】
本明細書に記載されている治療方法のある種の実施形態では、この方法はさらに、少なくとも1種の化学療法剤を抗CXCR4抗体またはその断片と組み合わせて対象に投与することを含む。ある種の実施形態では、癌はMMで、少なくとも1種の化学療法剤は、レナリドミドプラス低用量デキサメタゾンまたはボルテゾミブプラスデキサメタゾンである。これらの化学療法の組合せは、再発したかまたは難治性MMの対象における治療価値が確認されている標準的な治療計画で、これらの化学療法剤の安全特性はよく特徴付けられている。ある種の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体はサイクル1では最初の2週間は単独療法として毎週投与し、その後はレナリドミドプラス低用量デキサメタゾンまたはボルテゾミブプラスデキサメタゾンを含む化学療法計画と組み合わせる。
【0120】
例えば、レナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせたBMS−936564によるMMの処置では、投薬治療計画の例は、(1)1、8、15、22、29および36日目(サイクル1)ならびに1、8、15および22日目(サイクル2およびその後のサイクル)に単回60分IV注入として投与されたBMS−936564(1、3または10mg/kg);(2)21日間(15〜35日目;サイクル1)および1〜21日目(サイクル2およびその後のサイクル)に投与されたレナリドミド(25mg経口);ならびに(3)15、22、29および36日目(サイクル1)および1、8、15および22日目(サイクル2およびその後のサイクル)に投与されたデキサメタゾン(40mg)を含む。
【0121】
ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせたBMS−936564によるMMの処置では、投薬治療計画の例は、(1)1、8、15、22および29日目(サイクル1)ならびに1、8および15日目(サイクル2およびその後のサイクル)に単回60分IV注入として投与されたBMS−936564(1、3または10mg/kg);(2)15、18、22および25日目(サイクル1)ならびに1、4、8、11日目(サイクル2およびその後のサイクル)にIVプッシュとして3〜5秒投与されたボルテゾミブ(1.3mg/m);ならびに(3)15、16、18、19、22、23、25および26日目(サイクル1)ならびに1、2、4、5、8、9、11および12日目(サイクル2およびその後のサイクル)に投与されたデキサメタゾン(20mg)を含む。
【0122】
ある種の実施形態では、この治療計画は、再発した、難治性AML患者のための標準治療と考えられているので、癌はAMLで、本開示の抗CXCR4抗体またはその断片と組み合わせて癌患者に投与した少なくとも1種の化学療法剤は、ミトキサントロン、エトポシドおよび/またはシタラビンである(Amadori et al., 1991)。ある種の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体はサイクル1では最初の2週間は単独療法として毎週投与し、その後はミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビンを含む化学療法計画と組み合わせる。
【0123】
例えば、単独療法としてのBMS−936564によるAMLの処置では、治療計画の一例は、サイクル1で1日目およびその後のサイクルで1、8および15日目に単回60分IV注入としてBMS−936564(0.3、1、3または10mg/kg)を投与することを含む。
【0124】
化学療法と組み合わせたBMS−936564によるAMLの処置では、投薬計画の一例は、(1)化学療法1日目の1回目の化学療法の前にBMS−936564を投与することを含む。BMS−936564は、サイクル2およびその後のサイクルでは1、8および15日目に投与する。さらに、サイクル2〜13では、化学療法は以下の計画から構成される(28日サイクル):(2)1から5日目に15分に亘るミトキサントロン(8mg/mIV)(3)1から5日目に1時間に亘るエトポシド(100mg/mIV)、および(4)1から5日目に1時間に亘るシタラビン(Ara−C;1g/mIV)。
【0125】
ある種の実施形態では、癌はCLLまたはFLで、本開示の抗CXCR4抗体またはその断片と組み合わせて癌患者に投与した少なくとも1種の化学療法剤は、ベンダムスチンおよび/またはリツキシマブである。前臨床試験では、いくつかの白血病およびリンパ腫細胞株においてベンダムスチンとリツキシマブの間には抗腫瘍相乗作用があることが示され(Rummel et al., 2002)、その結果、後者は、ベンダムスチンを含む化学療法によって誘導されるアポトーシスに対してB細胞リンパ腫を感受性にした(Chow et al., 2002)。ベンダムスチンプラスリツキシマブ(BR)の組合せは、未処置、リツキシマブで予め処置した、またはリツキシマブでは難治性のリンパ腫患者において有効性を示した(Friedberg et al., 2008)。ある種の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、ベンダムスチンおよびリツキシマブと組み合わせて投与する。
【0126】
DLBCLの処置方法の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチンおよび/またはエトポシドと組み合わせて使用する(Kewalramani et al., 2004)。どんな化学療法計画も、再発したかまたは難治性DLBCLにおいて優位性を示さなかった。R−ICE(リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシド)は、その他の治療計画と同程度の有効性があり、応答性患者におけるR−DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビン、シスプラチン)それに続く高用量化学療法および自己由来HSCTよりも毒性が少ないため、r/rDLBCLにおいて最も一般的に使用される治療計画の1つである(Gisselbrecht et al., 2010)。ある種の好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシドと組み合わせて投与する。
【0127】
例えば、単独療法としてBMS−936564でFL、DLBCLおよびCLL対象を処置する場合、好ましい治療計画には、1サイクルの1日目ならびにその後のサイクルの1、8、15、22、29、36、43および50日目に単回60分IV注入としてBMS−936564(0.3〜10mg/kg)を投与することが含まれる。
【0128】
CLL、FLおよびDLBCL対象を処置するために化学療法と組み合わせて投与する場合、実施形態の一例には、化学療法1日目の1回目の化学療法の前のBMS−936564の投与、およびBMS−936564の注入が完了して少なくとも1時間後の化学療法の投与が含まれる。BMS−936564は、サイクル2およびその後のサイクルでは1および8日目に投与する。
【0129】
CLLのための化学療法は、以下の治療計画(28日サイクル):サイクル2およびその後のサイクルの1日目にリツキシマブ(375mg/mIV)、次いでその後のサイクルの1日目に500mg/mならびにサイクル2の1日目に60分に亘るベンダムスチン(70mg/mIV)から構成される。
【0130】
FLのための化学療法は、以下の治療計画(28日サイクル):サイクル2およびその後のサイクルの1日目にリツキシマブ(375mg/mIV)、次いでその後のサイクルの1日目に500mg/mならびにサイクル2の1日目に60分に亘るベンダムスチン(90mg/mIV)から構成される。
【0131】
DLBCLのための化学療法は、以下の治療計画(28日サイクル):サイクル2およびその後のサイクルの1日目にリツキシマブ(375mg/mIV);サイクル2およびその後のサイクルの4日目に開始するメスナ(2−メルカプトエタンスルホン酸Na;5000mg/m)の24時間に亘る連続IV注入と共に4日目のイホスファミド(5000mg/m)連続IV注入;サイクル2およびその後のサイクルの4日目のカルボプラチン(カルバート式によって計算された標的AUC5mg/mL・分を生じる投薬量;最大用量=800mg);サイクル2およびその後のサイクルの3〜5日目の毎日のエトポシド(100mg/mIV)から構成される。
【0132】
本発明の一態様は、CXCR4癌に罹患した対象を処置する医薬品を調製するための本開示の任意の抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分の使用である。医薬品を調製するための本開示の任意の抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分の使用は、本明細書で開示した癌の全範囲に広く適用することができる。これらの使用の好ましい実施形態では、癌には、血液悪性腫瘍、例えば、再発したかまたは難治性の多発性骨髄腫、再発した急性骨髄性リンパ腫、再発した慢性リンパ球性白血病、再発した濾胞性リンパ腫あるいは難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が含まれる。この開示はまた、本明細書に記載されている抗CXCR4抗体を使用する処置方法の全実施形態に対応する本開示の任意の抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分の医学的使用を提供する。
【0133】
本開示の範囲内にはまた、本開示の任意の抗CXCR4抗体またはその抗原結合断片またはそれらの組成物および使用指示書を含むキットがある。したがって、本開示は、対象の癌を処置するためのキットであって、(a)投与1回または複数回分の本開示の抗CXCR4抗体またはそれらのCXCR4結合断片のいずれか、および(b)本明細書に記載されている治療方法のいずれかにおいて抗CXCR4抗体またはその断片を使用するための指示書を含むキットを提供する。例えば、ある種の実施形態では、キットの抗CXCR4抗体は、配列番号25に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域にCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを、および配列番号29に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域にCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。好ましい実施形態では、抗CXCR4抗体は、BMS−936564である。このキットはさらに、免疫抑制試薬、化学療法剤または放射性毒性薬物、または異なる抗原を標的とする1種または複数の追加的抗体などの本明細書に記載されている1種または複数の追加的治療用試薬を含有していてもよい。
【0134】
キットは通常、キットの内容物の企図する使用を指示した標識および使用指示書を含む。標識という用語には、キット上で、もしくはキットと一緒に供給され、もしくは別の方法でキットに付属する任意の文書または記録物質が含まれる。医薬キットのある種の実施形態では、抗CXCR4抗体は、単位投与形態でその他の治療薬と一緒に同梱してもよい。
【0135】
B.HIV感染を含むウイルス感染
CXCR4は、HIVがT細胞に侵入するための共受容体であることが示され、さらに、ある種のマウス抗CXCR4抗体は、HIV単離物がT細胞に侵入するのを阻害できることが示された(Hou et al., 1998; Carnec et al., 2005を参照のこと)。したがって、CXCR4は、ウイルスが細胞に侵入するための受容体として使用することができ、CXCR4に対する抗体は、CXCR4を受容体として使用するこのようなウイルスの細胞侵入を阻害するために使用することができる。HIV−1外被糖タンパク質gp120がCXCR4に結合することによるCXCR4媒介性アポトーシスが報告された(Garg et al., 2006)。
【0136】
研究によって、CXCR4に架橋結合した抗体はgp120誘導によって認められる細胞死を模倣することができることが明らかになり(Berndt et al., 1998)、それによってHIV−1感染を防御するために抗ケモカイン受容体抗体を使用すると、受容体発現T細胞の効率的および迅速な破壊が生じ得ることが示唆された。したがって、本開示のヒト抗CXCR4抗体は、ウイルスが細胞に侵入するのを阻害するために使用することができ、そこではウイルスはCXCR4を細胞侵入のための受容体として使用し、したがって、ウイルス感染が阻害される。好ましい実施形態では、抗体はHIVがT細胞に侵入するのを阻害するため、例えば、HIV/AIDSの処置または予防において使用される。抗体は、単独で、またはその他の抗ウイルス剤、例えば、AZTまたはプロテアーゼ阻害剤などの抗レトロウイルス薬と組み合わせて使用することができる。
【0137】
C.炎症症状
CXCR4/CXCL12経路は、限定はしないが、炎症性肝疾患(Terada et al., 2003)、自己免疫関節炎(Matthys et al., 2001)、アレルギー性気道疾患(Gonzalo et al., 2000)および歯周病(Hosokawa et al., 2005)を含む様々な炎症症状において役割を果たすことが示された。
【0138】
したがって、CXCL12のCXCR4への結合を阻害する本開示のヒト抗CXCR4抗体は、炎症性肝疾患、自己免疫関節炎、アレルギー性気道疾患、歯周病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、炎症性皮膚障害(例えば、乾癬、扁平苔癬)、自己免疫甲状腺疾患、シェーグレン症候群、肺炎症(例えば、慢性閉塞性肺疾患、肺サルコイドーシス、リンパ球性肺胞炎)および炎症性腎疾患(例えば、IgA腎障害、糸球体腎炎)からなる群から選択された障害を含む炎症障害における炎症を阻害するために使用することができる。抗体は、単独で、または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン)、メトトレキセート、COX−2阻害剤、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ)および免疫抑制剤(6−メルカプトプリン、アザチオプリンおよびシクロスポリンAなど)などのその他の抗炎症薬と組み合わせて使用することができる。
【0139】
D.血管新生
CXCL12は、CXCR4発現造血前駆細胞(hemangiocyte)の動員によって新血管新生を誘導することが示された(Jin et al., 2006)。さらに、CXCR4/CXCL12経路の阻止は、VEGFに依存しない方法で血管新生を阻害することによってインビボにおける腫瘍増殖を減衰させることができる(Guleng et al., 2005)。さらに、実施例7で示したように、本開示の抗体は、インビトロにおいて毛細管形成を阻害することができる。したがって、CXCL12がCXCR4に結合するのを阻害する本開示の抗CXCR4抗体は、CXCR4/CXCL12経路を妨害することによって血管新生を阻害するために使用することができる。血管新生の阻害は、例えば、腫瘍増殖または腫瘍転移を阻害するために使用することができる(腫瘍がCXCR4であるかどうかに関わらない)。抗体は、単独で、または抗VEGF抗体などのその他の抗血管新生薬と組み合わせて使用することができる。
【0140】
E.自家幹細胞移植
末梢血幹細胞は、例えば、ある種の血液悪性腫瘍の処置において、自家幹細胞移植に使用するための好ましい幹細胞源である。末梢血からの幹細胞の収集には、BMから末梢血へのCD34幹細胞の動員が必要である。様々なサイトカイン、ケモカインおよび接着分子が、CXCR4およびSDF−1の相互作用を含めて、このプロセスの調節に関与してきた(Gazitt, 2001に概括されている)。さらに、低分子CXCR4アンタゴニストがBMから末梢へのCD34幹細胞の迅速な動員を刺激することが示された(例えば、Devine et al., 2004; Broxmeyer et al., 2005; Flomenberg et al., 2005を参照のこと)。したがって、CXCR4活性を阻害する本開示の抗CXCR4抗体(すなわち、アンタゴニスト抗体)は、例えば、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫などの血液障害の処置において、移植(例えば、自家移植)におけるCD34幹細胞の使用を可能にするために、BMから末梢血へのCD34幹細胞の動員を刺激するために使用することができる。この抗体は、単独で、またはG−CSFおよび/またはGM−CSFなどの幹細胞の動員を刺激するために使用されるその他の薬剤と組み合わせて使用することができる。したがって、別の実施形態では、本発明は、対象においてBMから末梢血へのCD34幹細胞の動員を刺激する方法を提供し、この方法には、BMから末梢血へのCD34幹細胞の動員が刺激されるように、対象に本発明の抗CXCR4抗体を投与することが含まれる。この方法はさらに、自家幹細胞移植で使用するためなどに、末梢血からCD34+幹細胞を収集することを含むことができる。
【0141】
本発明はさらに、以下の実施例によって例示されるが、実施例はさらに限定するものと解釈すべきではない。本出願全体にわたって引用した全図面および全参照文献、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例1】
【0142】
CXCR4およびCXCL12に対するヒトモノクローナル抗体の生成
抗CXCR4ヒトモノクローナル抗体は、第一に、ヒト抗体遺伝子を発現するトランスジェニックトランスクロモソミックマウス(PCT公開番号WO02/43478および米国特許第7,041,870号に記載されたMedarex KM MOUSE(登録商標)、Milpitas、CA)を、ヒトCXCR4をトランスフェクトしたR1610細胞で免疫して、ヒトCXCR4に特異的なヒトイムノグロブリンのレパートリーをマウスで生じさせ、その後、第二に、ヒト抗体ライブラリーをマウスの脾細胞から調製し、ファージにディスプレイし、したがって、次いでこのファージを磁気プロテオリポソームに組み込まれたヒトCXCR4(CXCR4−MPL)でパニングすることによって、CXCR4に親和性を有する可変領域断片の発現についてスクリーニングする組合せアプローチを使用して生成した。関心のある可変領域断片は、Fab発現ベクターに再クローニングし、FabはトランスフェクトしたCXCR4発現細胞に対する抗原結合について再度試験した。FabクローンF7(後にMDX−1338またはBMS−936564に名称変更)、F9、D1およびE2をさらに分析するために選択した。全抗体は、標準的な分子生物学技術を使用してFabから生成した。この組合せアプローチは一般的に、米国特許第6,794,132号に記載されており、詳細はWO2008/060367に具体的に記載されている
【0143】
抗CXCL12抗体を生成するために、Medarex KM(登録商標)トランスジェニックマウスを組換えヒトCXCL12で免疫した(Peprotech、Rocky Hill、NJ)。脾臓溶解物をプールし、以前に記載したように処理した(米国特許第6,794,132号)。適切なファージディスプレイ手法を使用して、Biositeは抗体断片を生成した(Fabライブラリー)。CXCL12に結合したファージは、ビオチン化CXCL12を使用して選択した。選択した抗原反応性Fabは、完全長IgG(S228P)に変換し、CHO細胞で再度発現させた。
【0144】
半抗体形成を低下させるために、S228Pヒンジ突然変異を含有するアイソタイプ対照抗体IgG(Angal et al., 1993)をBiologics Discovery California、Sunnyvale、CAで生成した。
【実施例2】
【0145】
ヒト抗CXCR4モノクローナル抗体F7、F9、D1およびE2の構造特性
実施例1に記載されているようにファージディスプレイライブラリースクリーニングから得られたF7、F9、D1およびE2Fabクローンの重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列は、標準的DNA配列決定技術を使用して配列決定した。
【0146】
F7の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図1Aならびに配列番号33および25にそれぞれ示す。F7の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図1Bならびに配列番号37および29にそれぞれ示す。
【0147】
F7重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン重鎖配列に対して比較することによって、F7重鎖は、ヒト生殖系列V3〜48のV区域、ヒト生殖系列4〜23のD区域およびヒト生殖系列JH6BのJH区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してF7V配列をさらに分析することによって、図1Aならびに配列番号1、5および9それぞれに示したように、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域が描写された。F7軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン軽鎖配列に対して比較することによって、F7軽鎖は、ヒト生殖系列VL15のV区域およびヒト生殖系列JK1のJK区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してF7V配列をさらに分析することによって、図1Bならびに配列番号13、17および21それぞれに示したように、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域が描写された。
【0148】
F9の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号34および26にそれぞれ示す。F9の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号38および30にそれぞれ示す。F9重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン重鎖配列に対して比較することによって、F9重鎖は、ヒト生殖系列V3〜48のV区域、ヒト生殖系列4〜23のD区域およびヒト生殖系列JH6BのJH区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してF9V配列をさらに分析することによって、配列番号2、6および10それぞれに示したように、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域が描写された。F9軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン軽鎖配列に対して比較することによって、F9軽鎖は、ヒト生殖系列VL15のV区域およびヒト生殖系列JK1のJK区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してF9V配列をさらに分析することによって、配列番号14、18および22それぞれに示したように、軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域が描写された。
【0149】
D1の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号35および27にそれぞれ示す。D1の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号39および31にそれぞれ示す。D1重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン重鎖配列に対して比較することによって、D1重鎖は、ヒト生殖系列V3〜48のV区域、ヒト生殖系列4〜23のD区域およびヒト生殖系列JH6BのJH区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してD1V配列をさらに分析することによって、配列番号3、7および11それぞれに示したように、重鎖CDR1、CDR2およびCD3領域が描写された。D1軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン軽鎖配列に対して比較することによって、D1軽鎖は、ヒト生殖系列VL15のV区域およびヒト生殖系列JK1のJK区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してD1V配列をさらに分析することによって、配列番号15、19および23それぞれに示したように、軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域が描写された。
【0150】
E2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号36および28にそれぞれ示す。E2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号40および32にそれぞれ示す。E2重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン重鎖配列に対して比較することによって、E2重鎖は、ヒト生殖系列V3〜48のV区域、ヒト生殖系列4〜23のD区域およびヒト生殖系列JH6BのJH区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してE2V配列をさらに分析することによって、配列番号4、8および12それぞれに示したように、重鎖CDR1、CDR2およびCD3領域が描写された。E2軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖系列イムノグロブリン軽鎖配列に対して比較することによって、E2軽鎖は、ヒト生殖系列VL15のV区域およびヒト生殖系列JK1のJK区域を利用することが示された。CDR領域決定のKabatシステムを使用してE2V配列をさらに分析することによって、配列番号16、20および24それぞれに示したように、軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域が描写された。
【0151】
F7、F9、D1およびE2のVおよびV領域のフレームワーク配列の分析では、それらが得られた生殖系列配列と比較すると、生殖系列とは異なる様々なフレームワークアミノ酸残基が同定された。生殖系列配列にフレームワーク残基を回復させるために、VおよびV区域のN末端領域のある種のフレームワーク残基を「逆突然変異」用に選択した。なぜならば、N末端部分のこれらの非生殖系列残基は、実施例1に記載されているファージディスプレイライブラリーを作製するために使用したプライマーによってコードされたからである。特に、F7、F9、D1およびE2のVおよびV区域の改変された形態(生殖系列では、「GL」型と称する)は、標準的分子生物学技術を使用して、指示したフレームワーク位置の生殖系列アミノ酸残基を置換して生成する。特異的に逆突然変異したアミノ酸およびF7、F9、D1およびE2の元の可変領域の配列を有するGL変異体の配列の配列比較は、WO2008/060367に提供されている。
【0152】
F7、F9、D1およびE2Fab断片は、標準的組換えDNA技術を使用して完全長抗体に変換する。例えば、Fab断片の1つのVおよびV領域をコードするDNAは、可変領域が定常領域に操作可能に連結するように、重鎖および軽鎖定常領域を有する発現ベクターにクローニングすることができる。 あるいは、完全長重鎖および完全長軽鎖を発現するために別々のベクターを使用することができる。完全長抗体の生成における使用に適した発現ベクターの非限定的な例には、米国特許第7,674,618号に記載されたpIEベクターが含まれる。F7(BMS−936564)Fab断片は、完全長IgG(S228P)抗体に変換し、CHO細胞で再発現させた。
【実施例3】
【0153】
抗CXCR4ヒトモノクローナル抗体の結合の特徴
この実施例では、抗CXCR4抗体の結合の特徴は、フローサイトメトリーによって調べた。
【0154】
細胞表面上に天然ヒトCXCR4を発現するヒトT細胞株CEMは、F7、F9、D1およびE2抗体が天然の細胞表面CXCR4に結合する能力を調べるために使用した。完全長F7、F9、D1およびE2は、300nMから5pMの濃度範囲をもたらす1:3連続希釈系列で滴定した。次に、抗体をCEM細胞と混合し、結合させてからFITC結合抗ヒトIgG2次抗体で検出した。細胞は次に、蛍光サイトメトリーによって分析した。得られた平均蛍光強度を図2のグラフに示すが、4種類の抗CXCR4抗体全てがCEM細胞に結合することを示している。F7、F9、D1およびE2の結合のEC50はそれぞれ、21nM、14nM、80nMおよび290nMであった。
【0155】
一連の抗CXCR4抗体がCXCR4への結合に対して競合する能力を測定するために、競合実験を実施した。4種類のヒト抗CXCR4抗体、F9、F7、E2およびD1を、4種類の市販のマウスモノクローナル抗CXCR4抗体(12G5、708、716および717;それぞれR&D Systemsカタログ番号MAB170、MAB171、MAB172およびMAB173)と共に使用した。抗CXCR4抗体は、一定濃度のFITC標識抗CXCR4抗体F9の存在下で、300nMから5pMの濃度範囲をもたらす1:3連続希釈系列で滴定した。次に、抗体の混合物をCEM細胞に添加し、結合させた。各抗体がCEM細胞への結合に対してF9と競合する能力を蛍光サイトメトリーおよびFITCの検出によって評価した。得られた平均蛍光強度を図3のグラフに示すが、これによって、E2抗体だけはその他の抗体と比較して高濃度で部分的な阻害を示したが、調べた7種の抗体(F7、E2、D1、12G5、708、716および717)全てがCEM細胞への結合に対してF9と競合することができることを示している。
【0156】
別の一連の実験では、BMS−936564mAbが様々な異なる細胞株に結合する能力をフローサイトメトリーによってFACS滴定を実施することによって調べた。mAbの量を増加させて(0.001μg/ml未満から100μg/ml超まで)100,000細胞とインキュベートし、結合をフローサイトメトリーによって評価した。どれだけのCXCR4分子が各細胞に存在するかを大体示すBmax値も測定した。結合曲線に基づいて、抗体結合のEC50を決定した。その結果を以下の表1にまとめて示す。
【0157】
【表1】
【0158】
結果は、F7mAb(BMS−936564)は試験した6種類の細胞株それぞれに効果的に結合することができ、RamosおよびRaji細胞株で認められるEC50が最低であることを示している。これらのデータはまた、CXCR4受容体の発現が最高なのはRamosおよびNamalwa細胞で、最低なのはMDA−MB−231細胞およびDMS79細胞であることを示している。
【0159】
別の結合実験では、BMS−936564mAbがヒト末梢血単核細胞(PBMC)の様々なサブセットに結合する能力を調べた。ヒトPBMCは、標準的方法によって単離し、様々な細胞サブセットはFACSによって単離した。特に、以下の細胞サブセット(i)CD3、(ii)CD20、(iii)CD11bおよび(iv)CD14を単離した。BMS−936564mAb(33μg/ml)で実施したフローサイトメトリー実験は、アイソタイプを一致させた対照抗体と比較して、4種類のサブセットそれぞれに効果的に結合することが可能であることを示した。
【0160】
別の実験では、様々な一連のヒトCXCR4細胞株のBMS−936564結合についてフローサイトメトリーを使用して評価した。細胞を裸(naked)BMS−936564またはビオチン化BMS−936564の指示した濃度と共に懸濁し、その後抗体および細胞の混合物をヤギ抗ヒトFCγ−PEまたはPE結合ストレプトアビジンとインキュベートすることによって、細胞をフローサイトメトリー(FACS)染色用に調製した。細胞は、FACSによって、FSCおよびSSCによって同定した生きた細胞集団にゲートをかけることによって分析した。用量に依存した結合が、細胞株R1610−huCXCR4(ヒトCXCR4でトランスフェクトし、G418選択で維持したR1610ハムスター線維芽細胞);Ramos(ヒトBリンパ芽球性バーキットリンパ腫);CEM(ヒトTリンパ芽球性急性リンパ芽球性白血病);Nomo−1(ヒト急性骨髄性白血病);HL−60(ヒト前骨髄芽球);MOLP8(ヒトMM);およびJJN−3R(ボルテゾミブに対する耐性で選択したヒトMM細胞株)で認められた。図4参照のこと。R1610親細胞に対する結合は検出されなかった。幾何平均蛍光強度(GMFI)に基づいて、CXCR4レベルはR1610−huCXCR4およびRamos細胞で最高で、CEM(図4B)、Nomo−1およびHL60(図4A)がそれに続いた。多発性骨髄腫細胞株MOLP−8およびJJN−3Rの発現する受容体数は最低であった(図4C)。結合のEC50値を表2に示す。さらに、BMS−936564は、健康なドナーPBMC(データは示さず)ならびにAML患者から収集したPBMC試料7/8に様々なGMFIで結合した(図4D)。これらのデータは、CXCR4が複数の造血細胞株で発現し、AML患者では変化に富んで発現することを示している。
【0161】
【表2】
【実施例4】
【0162】
抗CXCR4および抗CXCL12抗体によるCXCL12のCXCR4への結合の阻害
CXCL12のCXCR4への結合を抗CXCR4ヒト抗体が阻害する能力を測定するために、125I標識CXCL12(PerkinElmer、Waltham、MA)および天然にCXCR4を発現するCEM細胞を使用して競合試験を実施した。CEM細胞に結合するCXCL12のブロックに関する抗CXCR4抗体の比較は、標準的な放射標識リガンド結合アッセイによって実施した。抗CXCR4抗体は、1:3に連続希釈して、300nMから137pMの濃度範囲を作製した。抗体を100μl中において比活性2000Ci/mmoleの125I−CXCL12 100pMの存在下で(Amersham、カタログ番号IM314−25UCI)、750,000CEM細胞に添加した。同じアイソタイプの関係の無い抗体を陰性対照として使用した。結合した可能性のある全放射標識リガンドは、125I−CXCL12を抗体非存在下で4℃で2時間CEM細胞に結合させることによって測定した。放射標識リガンドの非特異的結合は、未標識CXCL12 1μMの存在下で125I−CXCL12を結合させることによって測定した(Peprotech、カタログ番号300−28A)。細胞に関連した125I−CXCL12の量は、標準的方法によって測定した。結果は、図5に示すが、F7抗体(BMS−936564)はCXCL12がCEM細胞で発現したCXCR4に結合するのを最も効果的に阻止することを示している。F9およびD1抗体はまた、F7よりも控えめではあるが、CXCL12結合をブロックした。E2抗体は、CEM細胞のCXCR4に結合するが(実施例3に示した通り)、CXCL12がCEM細胞のCXCR4に結合するのを効果的にブロックしなかった。F7、F9およびD1によるCXCL12阻止のEC50はそれぞれ、2.3nM、12.5nMおよび28.6nMであった。
【0163】
別の実験では、BMS−936564および抗CXCL12抗体によるCXCL12のCXCR4への結合の阻止を比較した。BMS−936564、抗CXCL12および対照抗体の連続希釈を、125I−CXCL12のCXCR4CEM細胞への結合の阻止について試験した。125I−CXCL12(PerkinElmer、Waltham、MA)のCEM細胞上のCXCR4への結合の競合は、固定した濃度の125I−CXCL12(100pM)および5pMから300nMのBMS−936564の滴定を使用して示した。アイソタイプ抗体は、陰性対照として使用し、未標識CXCL12は陽性対照として使用した。プレートは室温で1時間インキュベートし、フィルターを洗浄し、取り出して、カウント毎分(CPM)は、PerkinElmer WIZARD(登録商標)ガンマカウンタ−(Waltham、MA)によって読み取った。インビトロの試験全てについて、データはグラフにして、GraphPad Prismソフトウェア(San Diego、CA)で、非線形回帰およびS字型用量反応曲線を使用して分析した。
【0164】
飽和結合試験は、放射標識CXCL12およびCXCR4hiCEM細胞を使用して実施した。125I−CXCL12のCEM細胞への結合のKは、4.3nMと測定された(データは示さず)。3.0から5.4nMの範囲である報告されたCXCL12のCXCR4へのKと同等である(DiSalvo et al., 2000)。最適以下の固定した濃度の125I−CXCL12(100pM)を使用して、BMS−936564を滴定すると、用量依存的な125I−CXCL12結合の阻害が認められ、EC50値は約2nMであった(図6A)。興味深いことに、抗CXCL12抗体はより強力で、125I−CXCL12のCEM細胞への結合の用量依存的な阻害を引き起こし、EC50値は約90pMであった(図6B)。
【0165】
BMS−936564はまた、125I−CXCL12のRamos細胞への結合を用量依存的にブロックすることが示され、EC50値は約11nMであった(図6C)。
【実施例5】
【0166】
抗CXCR4および抗CXCL12抗体によるCXCL12誘導性カルシウム流の阻害
抗CXCR4ヒト抗体がCXCL12によって誘導されたCEM細胞におけるカルシウム流を阻害する能力を測定するために、まずCEM細胞を蛍光色素カルシウム3で標識した(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)。抗CXCR4抗体は100nMから1pMの濃度範囲をもたらす1:3連続希釈系列で滴定し、200μl中で200,000個のCEM細胞に結合させ、室温で10分間インキュベートしてからFLEXSTATION(登録商標)機(Molecular Devices)に添加した。陰性対照として、同じアイソタイプの関係の無い抗体を使用した。次に、細胞を最終濃度50nMの組換えヒトCXCL12α(Peprotech)で刺激し、22μl容量中500nMとして最終容量222μlで添加した。得られたカルシウム流は、ウェル当たり200秒間測定した。陽性対照として、抗体非存在下で細胞をCXCL12α(0.1%BSAまたはHBSを含むハンクス緩衝生理食塩水(HBS)で作製)で刺激し、可能な限り最大なカルシウム流シグナルを実現した。ベースラインを測定するために、細胞を0.1%BSAを含むHBSで刺激した。カルシウムのCXCL12α刺激による放出は、経時的なカルシウム依存性蛍光の発生によって測定した。得られた蛍光トレースの曲線下面積は、カルシウム流の指標として報告した。抗CXCR4抗体によって得られたカルシウム流の阻害を図7に表す。データをプロットし、EC50は、GraphPad Prismソフトウェアおよび非線形曲線フィット、S字型用量反応式を使用して計算した。抗体F7(BMS−936564)、F9およびD1はCXCL12α誘導性カルシウム流を阻害した。抗体E2はCXCR4に結合したが(実施例3に示した通り)、CXCL12α誘導性カルシウム流をあまり阻害しなかった。F7、F9およびD1によるCXCL12誘導性カルシウム流の阻害のEC50はそれぞれ、0.90nM、0.32nMおよび0.57nMであった。
【0167】
別の実験では、BMS−936564および抗CXCL12がCXCL12誘導性カルシウム流を阻害する能力を比較した。RamosおよびCELL細胞にFLIPR(登録商標)カルシウム4色素(Molecular Devices)を添加し、固定濃度のCXCL12を使用してカルシウム流を刺激した。BMS−936564または抗CXCL12の50pMから100nMの滴定を使用して応答を阻害した。最大カルシウム応答はCXCL12マイナス抗体で設定した。ベースライン応答は、CXCL12を有さない細胞のバッファー刺激で確立した。カルシウム流は、FLEXSTATION(登録商標)(Molecular Devices)で読み取った。CXCL12は、細胞内のカルシウムの用量依存的な上昇を誘導することが示され、ピークカルシウム流はRamos細胞で50nM、CEM細胞で5nMに達した。カルシウム流を刺激するCXCL12の最適濃度を用いて、BMS−936564または抗CXCL12の滴定を使用して応答を阻害した(図6Cおよび6D)。BMS−936564および抗CXCL12はいずれも、用量依存的にCXCL12誘導性カルシウム流をブロックした。BMS−936564は、RamosにおいてEC50約10nM、CEMにおいて8nMでブロックしたが(図8Aおよび8B)、一方、抗CXCL12はEC50約35nM(Ramos)および2nM(CEM)細胞でブロックした(図8Aおよび8B)。
【実施例6】
【0168】
抗CXCR4および抗CXCL12抗体によるCEM細胞のCXCL12誘導性遊走の阻害
抗CXCR4ヒト抗体がCXCL12によって誘導されたCEM細胞の遊走を阻害する能力を測定するために、まずCEM細胞をBATDA(ビス(アセトキシメチル)2,2’:6’,2”−テルピリジン−6,6”−ジカルボキシレート)化学ルミネセンス遊走試薬(PerkinElmer)で標識した。抗CXCR4抗体は、100nMから1pMの濃度範囲をもたらす1:3連続希釈系列で滴定し、1ml当たり1000万個の細胞密度で標識CEM細胞に結合させた。陰性対照として、同じアイソタイプの関係の無い抗体を使用した。組換えヒトCXCL12α(Peprotech)5nMをウェル当たり30μlで、ウェル毎に直径5.7mmのフィルターを入れた96ウェルNeuroprobe遊走プレートの下部チャンバーに添加した。各ウェルは、5μMの細孔を有する。標識CEM細胞は、抗体と共に、または抗体無しで、ウェル当たり50万個の細胞の濃度で、容量50μlでフィルター上に添加した。遊走プレートは37℃で2.5時間インキュベートした。遊走した細胞は、プレートの下部チャンバーで補足され、溶解されて、DELFIA(登録商標)ユーロピウム検出溶液(Perkin Elmer)で検出された。化学ルミネセンスシグナルは、融合機器(Fusion instrument)で記録した。抗CXCR4抗体によって得られたCXCL12α誘導性遊走の阻害を図9に示す。結果によって、抗体F7およびF9は遊走を効果的に阻害するが、抗体D1およびE2は遊走をあまり阻害しないことが示された。F7およびF9によるCXCL12誘導性CEM細胞遊走の阻害のEC50は、それぞれ12.44nMおよび18.99nMであった。
【0169】
別の実験では、BMS−936564および抗CXCL12がRamosおよびCEM細胞のCXCL12誘導性遊走を阻害する能力を比較した。細胞をBATDAに添加した。固定濃度のCXCL12を使用して、Neuro Probe(Gaithersburg、MD)の遊走プレート上の5μm細孔を含有するフィルターを通る細胞の遊走を刺激した。BMS−936564または抗CXCL12の20pMから300nMの滴定量を細胞に添加した。最大遊走を確立するために、抗体を含まないCXCL12を使用した。CXCL12を含まない培地のみへの遊走は、バックグラウンド遊走を測定するために使用した。37℃で2時間インキュベーションした後、遊走した細胞は、DELFIA(登録商標)ユーロピウム溶液(Perkin Elmer)を溶解した細胞に添加することによって検出し、融合機器で時間分解蛍光によって検出した。Ramos遊走を誘導するためのCXCL12の最適濃度は、10ng/mL(1.25nM)であることが立証されたが、CEM細胞はCXCL12に対してより敏感で、CXCL12 0.05nMで最大遊走が示された。BMS−936564は、およそのEC50値がRamos細胞では1nMおよびCEM細胞では4nMでCXCL12誘導性遊走をブロックすることが示された(図10Aおよび10B)。抗CXCL12は、およそのEC50値が0.9nM(Ramos)および0.13nM(CEM)細胞でCXCL12誘導性遊走を阻害した(図10Aおよび10B)。
【実施例7】
【0170】
抗CXCR4抗体によるHuVEC毛細管形成の阻害
この実施例では、抗CXCR4ヒト抗体がヒト臍帯静脈内皮細胞(HuVEC)による毛細管形成を阻害する能力を調べた。MATRIGEL(登録商標)をRPMIで1:1に希釈して、96ウェルプレートのウェルに入れ、37℃で30分間重合化させた。80%コンフルエンスのHuVEC(Cambrex製、カタログ番号CC−2519)をトリプシン処理して、0.5%FBSを含むRPMIで1ml当たり1×10細胞で再懸濁した。抗体を最終濃度3μg/mlでHuVECと共に十分混合し、室温で30分間インキュベートした。同じアイソタイプの関係の無い抗体または媒体のみを陰性対照として使用した。管形成阻害の陽性対照として、マウス抗ヒトαvβ3(CD51/CD61)抗体(R&D Systems、カタログ番号MAB3050)を使用した。抗体を有するかまたは有さないHuVECをMATRIGEL(登録商標)でコーティングしたウェルに入れ、37℃で18時間インキュベートした。
【0171】
培地単独またはアイソタイプが一致した対照抗体と共にインキュベートしたHuVECは、毛細管を形成し、細胞当たり3〜5箇所の連結または分枝点によって細胞が連結し、プレート中に広がる様相を呈した。抗CXCR4ヒト抗体または抗αvβ3抗体のいずれかと共にインキュベートしたHuVECは、毛細管は形成しなかった。細胞は離れ離れになっており、分岐点はほとんどないかまたは全くなかった。CXCL12結合、CXCL12誘導性カルシウム流およびCXCL12誘導性遊走を最も効果的にブロックする抗CXCR4抗体、すなわちF7およびF9はまた、最も効果的に毛細管形成を阻害した。CXCR4には結合するが、CXCL12結合またはCXCL12誘導性効果をブロックしない抗CXCR4抗体E2は、毛細管形成を阻害しなかった。
【実施例8】
【0172】
抗CXCR4抗体はCXCR4発現細胞のインビトロ増殖を阻害するが、抗CXCL12は阻害しない
この実施例では、抗CXCR4ヒト抗体がインビトロにおいてRamos腫瘍細胞(ヒトバーキットリンパ腫細胞株)の増殖を阻害する能力を調べた。アッセイにおいて、1×10細胞/ウェルを、用量を増加させた(10−3から300nM)F7IgG4抗体、F9IgG1抗体、E2IgG1抗体、F9Fab’抗体またはアイソタイプ対照とインキュベートした。細胞を抗体と72時間インキュベートし、H−チミジンをインキュベーションの最後の24時間に添加して、細胞増殖をモニターした。インキュベーション後、細胞によるH−チミジンの取り込みを標準的技術によって測定した。結果を図11Aのグラフに示す。結果によって、F7IgG4、F9IgG1およびE2IgG1抗体はそれぞれ、これらの抗体と共にインキュベートしたときのH−チミジン取り込みの減少によって示されるように、Ramos細胞増殖を阻害することができたが、F9Fab’断片は細胞増殖を阻害しなかったことが示される。これらの結果は、抗CXCR4ヒト抗体がインビトロにおいて腫瘍細胞に対して直接的な抗増殖効果を有することを示しており、したがって、抗増殖効果を実現するために2次架橋結合を必要としない。
【0173】
別の実験では、MDX−1338、抗CXCL12および低分子CXCR4アンタゴニスト、AMD3100およびBKT140のRamos細胞の増殖に対する効果を比較した。Ramos細胞は増殖培地に1×10細胞/mLで懸濁し、アイソタイプ対照を含む関連のある抗体およびその他の試験薬剤と共にインキュベートし、37℃で72時間培養した。Cell−Titer−Glo(Promega)をウェルに添加して、混合し、室温で10分間インキュベートした。プレートをGloMaxルミノメータ−(Promega)で読み取った。結果を図11Bに示す。アイソタイプ対照と比較して、Ramos細胞増殖の最大約50%の阻害がBMS−936564 40nM処置で認められたが、抗CXCL12は細胞増殖を阻害しなかった。さらに、AMD3100、低分子CXCR4アンタゴニストは増殖を阻害しなかった。最近記載された14残基ペプチドアンタゴニスト、BKT140は、増殖を阻害したが、さらに高い濃度においてであった(100μM)。カンプトテシン(CPT)は、10μMで完全に細胞増殖を阻害した。
【実施例9】
【0174】
抗CXCR4抗体によるインビボにおける固形腫瘍細胞増殖の阻害
この実施例では、抗CXCR4ヒト抗体がインビボにおいて確立された固形腫瘍の増殖を阻害する能力を、Ramos皮下腫瘍細胞モデルを使用して調べた。このアッセイでは、10×10Ramos細胞/マウスを各マウスの側腹部領域に移植し、腫瘍の長さ×幅×高さ/2によって計算した平均サイズ40mmまで増殖させた。次に、マウスに1回目投与の抗体を腹腔内(IP)注射によって投与し(処置0日目とする)、2回目投与の抗体IP投与を7日目に行った。Fab’断片抗体で処置したマウスも、3日目および10日目に抗体IP投与を行った。マウスの群(n=8)を(i)ビヒクル;(ii)アイソタイプ対照(15mg/kg);(iii)F7IgG4(15mg/kg);(iv)F9IgG1(15mg/kg);(v)F9Fab’(10mg/kg)または(vi)抗CD20陽性対照(15mg/kg)のいずれかで処置した。腫瘍容量およびマウス体重を投与後0日目と30日目との間に一定間隔で測定した(約2〜3回/週)。実験の結果は、図12A、12Bおよび12Cに示しており、平均腫瘍容量(図12A)、腫瘍容量中央値(図12B)および%体重変化中央値(図12C)を示している。結果によって、陽性対照のように、F7IgG4およびF9IgG1抗体は、腫瘍容量増加によって測定すると腫瘍細胞増殖を著しく阻害するが、F9Fab’断片は、アイソタイプ対照と比較して、腫瘍細胞増殖を阻害しなかったことが示された。体重変化があまりないことによって示されるように、処置は全て良好な耐容性を示した。処置間の体重の違いは、腫瘍の重さによるものである可能性が最も高い。結果によって、抗CXCR4ヒト抗体はインビボにおいて確立された固形腫瘍の増殖を阻害できることが示される。
【実施例10】
【0175】
抗CXCR4抗体で処置することによってマウスの全身性腫瘍細胞モデルの生存時間が増加するが、抗CXCL12抗体では増加しない
この実施例では、抗CXCR4ヒト抗体がマウスの生存時間を増加させる能力を、Ramos全身性腫瘍細胞モデルを使用して調べた。このアッセイでは、0日目に1×10Ramos細胞/マウスを各マウスに静脈内注射(IV)した。次に、1日目(すなわち、腫瘍細胞をIV投与してから1日目)に、マウスに1回目投与の抗体を腹腔内(IP)注射し、5、8、15および22日目にさらに4回抗体をIP投与した(陽性対照抗体で処置したマウスは1日目のみ処置した)。マウスの群(n=8)を(i)ビヒクル;(ii)アイソタイプ対照(15mg/kg);(iii)F9IgG1(15mg/kg)または(iv)抗CD19陽性対照(15mg/kg)のいずれかで処置した。用量応答試験によって既に、15mg/kgが抗CD19の効果的な用量であることが見出されている(データは示さず)。生存パーセントは、投与後0日目と50日目の間で一定間隔で測定した(後肢麻痺は実験のエンドポイントとして使用した)。実験の結果を図13Aに示しており、経時的な生存パーセントを示している。ビヒクルかまたはアイソタイプ対照のいずれかで処置したマウスの生存日数の中央値はそれぞれ23日および25.5日であるが、抗CD19陽性対照投与で1回処置したマウスの生存日数の中央値は39日であった。注目に値すべきことに、F9IgG1抗体の5回投与で処置した群のマウスの100%が実験の終了まで生存した。これらの結果は、抗CXCR4ヒト抗体は全身腫瘍細胞モデルにおいてマウスの生存時間を増加させることができることを示している。
【0176】
BMS−936564および抗CXCL12抗体がマウスの生存時間を増加させる能力を比較するために、同様の実験を実施した。全身性Ramos腫瘍異種移植を有するSCIDマウスを、前述したように、15mg/kgのBMS−936564、抗CXCL12抗体、抗CD19陽性対照、ヒトIgG4もしくはIgG1アイソタイプ対照またはビヒクル(PBS)対照で処置した。BMS−936564は、このRamos全身性モデルにおいてマウスの生存時間を延長するのに非常に効果的で、抗CD19陽性対照よりもずっと効果的であることが見出された(図13B参照)。ビヒクルかまたはアイソタイプ対照で処置したマウスの生存日数の中央値は23〜24日であるが、抗CD19陽性対照の1回投与で処置したマウスの生存日数の中央値は39日であった。注目に値すべきことに、移植後120日の実験終了時に、BMS−936564を5回投与して処置した群のマウスの100%が生存した。対照的に、抗CXCL12抗体は、驚くべきことに全く有効性を示さず、ビヒクルおよびアイソタイプ対照の生存時間とほとんど同じ生存時間であった。これらのデータは、インビボにおいては、CXCL12誘導性効果の阻止以外の、またはそれに加えた機構が使用されるにちがいないことを示唆している。
【実施例11】
【0177】
BMS−936564はCXCR4発現細胞のアポトーシスを誘導する
インビボにおけるBMS−936564の確かな抗腫瘍活性は、BMS−936564の作用機構を理解しようとする研究をさらに促した。具体的に、一連の実験は、抗CXCR4mAb F7(BMS−936564)が様々な細胞株においてアポトーシスを誘導する能力に注目した。アポトーシスアッセイでは、F7mAb10μg/mlをRamos細胞(500,000細胞)、Namalwa細胞(500,000細胞)またはCXCR4を発現するようにトランスフェクトしたR1610細胞(100,000細胞)のいずれかと共にインキュベートした。トランスフェクトしていないR1610細胞は陰性対照として使用した。抗CXCR4mAb F7またはアイソタイプ対照抗体は、細胞と共に37℃でインキュベートし、試料250μlを24、48および72時間目に取り出した。アポトーシスを検討するために、様々な時点の細胞をアネキシンV−FITC−FL1およびヨウ化プロピジウム−FL3と共にインキュベートし、その後フローサイトメトリーを行った。FL1、FL3およびFL1−FL3の2重陽性4分割領域(quadrant)で収集された細胞を一緒にした割合は、アポトーシスされていると見なされた。バックグラウンドを取り除くために、アイソタイプ抗体誘導性アポトーシス細胞のパーセントをBMS−936564誘導性アポトーシス細胞のパーセントから差し引いた。
【0178】
以下の表3にまとめて示した結果は、F7mAbはRamos、NamalwaおよびR1610−CXCR4細胞でアポトーシスを誘導することができるが、F7は親R1610細胞のアポトーシスの誘導に全く影響を与えなかったことを示し、応答はCXCR4特異的であったことを示している。
【0179】
【表3】
【0180】
別の実験では、BMS−936564が様々な細胞株(表4参照)でアポトーシスを誘導する能力を調べた。細胞(5×10細胞/mL)を10nM〜330nMのBMS−936564またはアイソタイプ対照と37℃で24時間インキュベートした。細胞のサブセットに対して(表4参照)、架橋結合抗体(ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナルAb)を6倍過剰で添加した。全種の細胞に対して、DNA酵素トポイソメラーゼIを阻害する細胞傷害性キノリンアルカロイドであるカンプトテシン(CPT)10μMをアポトーシス誘導の陽性対照として37℃で24時間添加した。その後、細胞をアネキシンV結合バッファー(10mM HEPES pH7.4、NaCl 140mM、CaCl 2.5mM)に再懸濁し、アネキシンV−APCおよび7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)またはヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。細胞を洗浄し、アネキシンV結合バッファーに再懸濁し、フローサイトメトリー(FACSアレイシステム、BD Biosciences、San Jose、CA)およびFlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.、San Carlos、CA)によって分析した。
【0181】
RamosヒトBリンパ芽球性バーキットリンパ腫(Cat.CRL−1596)、CCRF−CEMヒトTリンパ芽球性急性リンパ芽球性白血病(CCL−119)、HL−60ヒト前骨髄芽球(CCL−240)、NamalwaヒトBリンパ芽球性バーキットリンパ腫(CRL−1432)、RajiヒトBリンパ芽球性バーキットリンパ腫(CCL−86)、RPMI8226ヒト骨髄腫(CCL−155)、MM.1SヒトBリンパ芽球性MM(CRL−2974)、U226B1ヒト骨髄腫(TIB−196)、MV−4−11ヒト混合型B骨髄単球性白血病(CRL−9591)、MJヒトT細胞リンパ腫(CRL−8294)、HHヒトT細胞リンパ腫(CRL−2105)、HuT78ヒトリンパ芽球性皮膚リンパ腫(TIB−161)、NK92ヒトNK細胞非ホジキンリンパ腫(CRL−2407)細胞株は、ATCC、Manassas、VAから購入した。
【0182】
Nomo−1ヒト急性骨髄性白血病(ACC542)、MOLP−8MM(ACC569)、SU−DHL6ヒトB細胞非ホジキンリンパ腫(ACC572)、L540ヒトホジキンリンパ腫(ACC72)、KG−1ヒトAML(ACC14)、MOLP−8ヒトMM(ACC569)、OPM−2ヒトMM(ACC50)、L−363ヒト形質細胞白血病(ACC49)細胞株は、DSMZ、Braunschweig、Germanyから購入した。
【0183】
【表4-1】
【0184】
【表4-2】
【0185】
ATCCから購入したR1610ハムスター線維芽細胞(CRL−1657)を、ヒトCXCR4でトランスフェクトし、500μg/mLのG418を使用して選択した。DSMZから購入したJJN−3細胞(ACC541)をボルテゾミブに対する耐性についてBMSで選択した。ダナ−ファーバー癌研究所で認可されたNKLヒトNK細胞大顆粒球白血病細胞株;KHYG−1ヒトNK細胞白血病細胞株(JCRB0156)は、ヒューマンサイエンス振興財団のヒューマンサイエンス研究資源バンクから購入した。
【0186】
BMS−936564がCXCR4細胞のアポトーシスを誘導する能力を、低分子CXCR4−アンタゴニスト、AMD3100のアポトーシス能力と比較した。アポトーシスは、Ramos細胞を10μg/mLのBMS−936564またはアイソタイプ対照抗体と共に37℃で24時間インキュベートすることによって調べた。比較のために、Ramos細胞は、CXCL12誘導性カルシウム流および遊走を阻害した濃度に対応するAMD3100 6μMと共にインキュベートした。細胞は、アネキシンV−FITCおよびヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。アネキシンVのみに陽性またはアネキシンVおよびPIの両方に2重陽性の細胞のパーセントを測定した。BMS−936564は、未処置(1.7%および4.1%)、アイソタイプ対照抗体(0.5%および2.8%)でインキュベートした、またはAMD3100で処置した(2.0%および2.7%)細胞と比較して、アネキシンV(31.2%)およびアネキシンV/PI2重陽性染色(27.3%)の増加を誘導した(図14Aおよび14B)。
【0187】
BMS−936564に対するアポトーシス応答の特異性を確認するために、BMS−936564に結合しない親R1610細胞(データは示さず)およびBMS−936564に結合するヒトCXCR4でトランスフェクトしたR1610(図4)を使用して、アポトーシスを測定した。MDX−1338(BMS−936564)またはアイソタイプ対照をR1610細胞およびCXCR4トランスフェクト細胞に37℃で24時間添加し、次いでアネキシンV−FITCおよびヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。アネキシンVのみに陽性またはアネキシンVおよびPIの両方に2重陽性の細胞のパーセントを測定した。トランスフェクトした細胞R1610−hCXCR4は、BMS−936564とのインキュベーションに応答してアネキシンV染色およびアネキシンV/PI染色のレベルの増加を示したが(24.3%および11.4%)、アイソタイプ対照抗体(2.5%および0.9%)または未処置の場合(2.6%および0.9%)は極めてわずかな効果しか及ぼさなかった(図15A)。親R1610細胞は、BMS−936564処置後にアポトーシスを示さず(図15B)、hCXCR4の特異性が示唆された。これらの結果の後、BMS−936564はいくつかのCXCR4細胞株ならびに正常PBMCに対してアポトーシスを誘導することが示された(表4)。
【0188】
BMS−936564対アイソタイプ対照によって誘導された様々なCXCR4細胞株のアポトーシスに関するデータを表5にまとめて示す。
【0189】
【表5】
【0190】
表4および5にまとめて示したデータは、BMS936564がアポトーシスを誘導し、したがって、事実上CXCR4を発現する腫瘍細胞全てにおいて、効果的な治療薬であり得ることを示している。
【実施例12】
【0191】
抗CXCR4抗体によるインビボにおける腫瘍細胞増殖の阻害を示す追加的試験
この実施例では、抗CXCR4ヒト抗体がインビボにおいて確立された固形腫瘍の増殖を阻害するか、またはアポトーシスを誘導する能力を、実施例9で前述したRamosモデルと類似の他の腫瘍細胞モデルを使用して調べた。様々な腫瘍細胞株を調べた。代表的な実験および結果は以下の通りである。
【0192】
一実験では、7.5×10MDA−MB231ヒト乳癌細胞/マウスを各マウスの側腹部領域に移植し、移植後7日目には、腫瘍の長さ×幅×高さ/2によって計算した平均サイズ100mmまで増殖させた。マウスは、様々な処置群に無作為化し、移植後7日目に1回目の抗体投与を腹腔内(IP)注射し、移植後14日目に2回目IP投与の抗体を投与し、次いで移植後46日目に3回目を投与した。マウスの群(n=9)を(i)ビヒクル(PBS);(ii)IgG1アイソタイプ対照(15mg/kg);(iii)IgG4アイソタイプ対照(15mg/kg);(iv)F7IgG1(15mg/kg)または(v)F7IgG4(15mg/kg)のいずれかで処置した。腫瘍容量を一定間隔で測定し、各処置群の腫瘍容量の平均および中央値をそれぞれの間隔で測定した。この実験の結果を以下の表6にまとめて示し、移植後52日目の平均腫瘍容量(mm)および%腫瘍増殖阻害(TGI)および59日目の腫瘍容量中央値(mm)および%TGIを示している。さらに、F7IgG4処置群のマウスの1匹は59日目に腫瘍がなかった。結果は、F7mAbはインビボにおいてMDA−MB231乳癌細胞の増殖を阻害できることを示している。
【0193】
第2の実験では、5×10DMS79ヒト小細胞肺がん細胞/マウスを各マウスの側腹部領域に移植し、移植後7日目には、腫瘍の長さ×幅×高さ/2によって計算した平均サイズ160mmまで増殖させた。マウスを異なる処置群に無作為化し、Q3D×5(3日毎に5回)の投与計画で、抗体を腹腔内(IP)注射した。マウスの群(n=10)を(i)ビヒクル(PBS);(ii)IgG4アイソタイプ対照(10mg/kg)または(iii)F7IgG4(10mg/kg)のいずれかで処置した。腫瘍容量を一定間隔で測定し、各処置群に腫瘍容量の平均および中央値をそれぞれの間隔で測定した。この実験の結果を以下の表7にまとめて示し、移植後34日目の腫瘍容量の平均および中央値(mm)ならびに%腫瘍増殖阻害(TGI)を示している。結果は、F7mAbはインビボにおいてDMS79ヒト小細胞肺がん細胞の増殖を阻害できることを示している。
【0194】
【表6】
【0195】
【表7】
【0196】
抗CXCR4抗体が腫瘍増殖を阻害する能力について、前述したものおよび実施例9と類似の実験で、皮下異種移植腫瘍モデルをさらに試験した。SU−DHL−6B細胞リンパ腫細胞を使用する実験において、結果は、15mg/kgのF7IgG4mAbによる処置によって、約60%の腫瘍増殖阻害が引き起こされることを示した。同様に、Namalwaバーキットリンパ腫細胞を使用する実験において、結果は、3mg/kgのF7IgG4mAbによる処置によって、約70%の腫瘍増殖阻害が引き起こされることを示した。対照的に、NIH−H226肺がん細胞またはHPACヒト膵腺がん細胞を使用する実験において、F7mAbによる腫瘍増殖阻害は認められなかった。しかし、フローサイトメトリー実験においてF7mAbによってこれらの細胞を染色することによって、インビトロにおける発現は最小限であることが示された。インビボにおいて腫瘍細胞は免疫組織化学でmAbによって染色可能であるが、腫瘍増殖のどの段階でCXCR4が発現し始めるのかは明らかではない。これによって、これらの2つの細胞株によるCXCR4の発現では、抗CXCR4処置による腫瘍増殖阻害またはインビボにおけるアポトーシスの誘導を可能にするには不十分であることが示唆される。
【実施例13】
【0197】
抗CXCR4抗体によるインビボにおける肺転移の阻害
この実施例では、F7抗CXCR4mAbが肺転移を阻害する能力を、C57マウス全身性腫瘍モデルを使用して調べた。より具体的には、0.4×10個のB16−CXCR4細胞(ヒトCXCR4を発現するためにトランスフェクトされたB16細胞)をC57種のマウス30匹それぞれに静脈内注射した。マウスは、マウス各10匹の3つの群に無作為化し、次に、(i)ビヒクル(PBS);(ii)IgG4アイソタイプ対照(5mg/kg)または(iii)F7IgG4(5mg/kg)のいずれかで処置した。抗体またはビヒクルは、B16−CXCR4細胞を静脈内注射した30分後に腹腔内注射した。14日目に肺を採取し、肺転移小結節の数を計数した。結果は、以下の表8にまとめて示し、各群の肺転移の数の平均および中央値を示す。これらの結果は、F7mAbによる処置は、肺転移小結節の平均数の56%の低下を引き起こすが、アイソタイプ対照抗体による低下はほんの15%であったことを示し、F7mAbは、全身性腫瘍モデルにおいて、肺転移を阻害することができることを示唆する。
【0198】
【表8】
【実施例14】
【0199】
BMS−936564は、インビボにおいて非ホジキンリンパ腫(NHL)モデルの腫瘍増殖を阻害する
腫瘍増殖阻害におけるBMS−936564および抗CXCL12のインビボにおける活性は、腫瘍異種移植を有するSCIDマウスで試験した。SCIDマウスに、1cmシリンジおよび25ゲージ半インチ針を使用して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)0.1mLおよびMATRIGEL(登録商標)0.1mLに溶かしたRamos細胞(ヒトBリンパ芽球性バーキットリンパ腫細胞株)1000万個を皮下移植した。腫瘍のサイズの平均および中央値が80mmに達したとき、マウスを腫瘍容量にしたがって無作為化した(n=8)。0日目および7日目に、各動物に約200μLのBMS−936564(15mg/kg/投与)、抗CXCL12(15mg/kg/投与),ヒトIgG4アイソタイプ対照(15mg/kg/投与)、リツキシマブ(15mg/kg/投与)またはPBS(ビヒクル対照)を0.3mL IPで腹腔内(IP)注射した。用量応答試験によって既に、15mg/kgがリツキシマブの効果的な用量であることが見出されている(データは示さず)。抗体用量は全て十分に耐性があり、体重損失は認められなかった。腫瘍重量および体重は週2回測定した。腫瘍容量は、Fowler Electronic Digital Caliper(モデル62379−531;Fred V.Fowler Co.、Newton、MA)で三次元(L×W×H/2)で測定し、データはStudyLog Systems,Inc.(South San Francisco、CA)製のStudy Directorソフトウェアを使用して電気的に記録した。動物は、姿勢、毛づくろいおよび呼吸変化ならびに嗜眠を毎日検査した。腫瘍が2000mmの終点に達するか、または潰瘍が出現したとき、マウスを安楽死させた。
【0200】
BMS−936564および陽性対照、リツキシマブは、ビヒクルおよびアイソタイプ対照と比較したとき、腫瘍増殖を阻害した。BMS−936564による処置は、21日目に増殖阻害中央値99%をもたらし、この阻害は60日間維持された(図16)。対照的に、抗CXCL12は腫瘍増殖を阻害せず、アイソタイプ対照抗体と同程度の性能であった。
【実施例15】
【0201】
BMS−936564は、インビボ急性骨髄性白血病(AML)モデルの腫瘍増殖を阻害する
AMLにおける抗体の有効性を検討するために、2種類のシタラビン耐性マウス異種移植モデル、HL−60およびNomo−1を使用した。各細胞株におけるCXCR4発現は、FACS染色によって確認した(図4A)。SCIDマウスは、実施例14に記載されているように、HL−60細胞1000万個を皮下に移植した。腫瘍容量が約136mmに達したとき、マウスを無作為化し(n=10)、0、3、7、10および14日目にBMS−936564(10mg/kg/投与)、ヒトIgG4アイソタイプ対照(10mg/kg/投与)またはPBS(ビヒクル対照)をIP投与し、41日間モニターした。27日目に、腫瘍増殖阻害中央値は、アイソタイプおよびビヒクル群と比較して、それぞれ88%および83%であった(図17A)。
【0202】
Nomo−1モデルでは(実施例14のように、細胞750万個を皮下移植した)。腫瘍容量が約84mmに達したとき、マウスを無作為化し(n=9)、0、3、7、10および14日目にBMS−936564(10mg/kg/投与)、IgG4アイソタイプ対照(10mg/kg/投与)、PBS(ビヒクル対照)またはシタラビン(20、60もしくは90mg/kg/投与)を投与し、57日間モニターした。34日目に、BMS−936564処置マウスの腫瘍増殖阻害中央値は、アイソタイプまたはビヒクル対照と比較して、88%と著しく遅延した(図17B)。予測通り、シタラビン(アラビノフラノシルシチジンまたはAra−Cとしても知られている)は、腫瘍増殖を阻害しなかった(図17B)。
【実施例16】
【0203】
BMS−936564は、インビボ多発性骨髄腫(MM)モデルの腫瘍増殖を阻害する
様々なCXCR4骨髄腫細胞、すなわちMOLP8、JJN−3R、JJN−3、RPMI−8226、MM.1SおよびOPM−2は、SCID異種移植腫瘍モデルにおいてBMS−936564に対する感受性を試験した。実験全てにおいて、0および7日目に、マウスの腹腔内にIgG4アイソタイプ対照およびPBSビヒクル対照を注射した。MOLP−8細胞(250万個)を実施例14に記載されている通りに、SCIDマウスに移植した。腫瘍容量が約100mmに達したとき、マウスをマウス8匹の群に無作為化し(n=8)、0、3、7、10および14日目にBMS−936564(10mg/kg/投与)を単独で、またはレナリドミド(レブリミド(登録商標))50mg/kgと組み合わせて、またはボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))0.8mg/kgと組み合わせて投与した。BMS−936564は、25日目(各コホートのマウス全てが試験中残存した最後の日)にアイソタイプ抗体対照と比較したとき、平均腫瘍増殖を66%および56%と著しく遅延させた(図18A)。MOLP8腫瘍は、レナリドミドおよびボルテゾミブに対して比較的耐性で、BMS−936564の有効性は、いずれかの薬剤と一緒にしても向上しなかった(図18A)。42日目の試験終了時に、BMS−936564群では8匹中5匹のマウスが残存したが、アイソタイプ処置群ではマウスは残存しなかった。
【0204】
ボルテゾミブ耐性JJN−3R細胞(500万個)を前述した通りにSCIDマウスに移植した。腫瘍容量が約100mmのとき、マウスを無作為化し(n=8)、0、4、7、11および14日目にBMS−936564(10もしくは30mg/kg/IP投与)またはレナリドミド(50mg/kg/IP投与)またはボルテゾミブ(0.8mg/kg/IV投与)を投与し、25日間モニターした。経時的な腫瘍増殖中央値を図18Bに示す。レナリドミドもボルテゾミブも単独では腫瘍増殖を阻害しなかったが、25日目のBMS−936564で処置したマウスの腫瘍増殖阻害中央値は、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較して100%であった。試験終了時に、BMS−936564 30mg/kg群では、7匹中4匹のマウスには腫瘍がなかった。
【0205】
親JJN−3細胞を使用すると、ボルテゾミブおよびレナリドミドはいずれも、腫瘍阻害効果を実質上全く示さなかった。500万個のJJN−3細胞/マウスをSCIDマウスに移植し、腫瘍容量が約77mmに達したときマウスを8つの群に無作為化した。0、3、7、10および14日目に、マウスにMDX−1338(10mg/kg/IP投与)を単独で、またはボルテゾミブ(0.8mg/kg/IV投与)もしくはレナリドミド(50mg/kg/IP投与)と組み合わせて投与した。MDX−1338は、ビヒクル対照で処置したマウスと比較して、25日目に腫瘍増殖を52%阻害した(図18C)。ボルテゾミブは、このJJN−3細胞モデルにおける腫瘍増殖の阻害でわずかな効果を示したが、MDX−1338と組み合わせると、ビヒクル対照と比較してMDX−1338誘導性阻害のレベルは25日目に58%へとわずかに増加した(図18C)。レナリドミドは腫瘍増殖の阻害に効果が無く、レナリドミドとMDX−1338の組合せは同様に効果が無く、MDX−1338単独より低い阻害を示した(図18D)。
【0206】
RPMI−8226細胞(1000万個)を、実施例14に記載されている通りにSCIDマウスに移植した。腫瘍容量が約20mmに達したとき、マウスを無作為化し(n=8)、0、3、7、10および14日目にMDX−1338(10mg/kg/投与)を単独で、またはレナリドミド50mg/kgと組み合わせて、またはボルテゾミブ0.8mg/kgと組み合わせて投与した。MDX−1338は、44日目にビヒクル対照と比較したとき、平均腫瘍増殖を53%と著しく遅延させた(図18E)。レナリドミド単独は、このRPMI−8226モデルにおけるわずかな効果を示したが、MDX−1338の効果を増強した、すなわち、MDX−1338 10mg/kgと組み合わせたレナリドミド50mg/kgで認められる腫瘍増殖阻害は、44日目にアイソタイプ対照と比較して79%であった(図18E)。ボルテゾミブは、44日目の平均腫瘍増殖をアイソタイプ対照と比較して70%阻害するのに良好な効果を示し(図18F)、MDX−1338の効果をわずかに増強し、44日目の平均腫瘍増殖阻害をアイソタイプ対照と比較して61%から82%に増加させた(図18F)。
【0207】
MM.1S細胞(1000万個)をSCIDマウスに移植し、腫瘍容量が約30mmに達したときに無作為化し(n=8)、0、4、7、11および14日目にMDX−1338(10mg/kg/投与)を単独で、またはレナリドミド100mg/kgと組み合わせて投与した。MDX−1338は、25日目にアイソタイプ対照と比較したとき、平均腫瘍増殖を60%と著しく遅延させた(図21)。レナリドミド単独ではさらに効果的で、25日目に平均腫瘍増殖を70%遅延させ、MDX−1338とレナリドミドの組合せは、25日目に平均腫瘍増殖を86%阻害した(図18G)。
【0208】
【表9】
【0209】
OPM−2細胞(1000万個)を、前述の通りSCIDマウスに移植した。腫瘍容量が約77mmのとき、マウスを無作為化し(n=8)、0、4、7、11および14日目に、MDX−1338(10mg/kg/IP投与)を単独で、またはボルテゾミブ(0.8mg/kg/IV投与)もしくはレナリドミド(50mg/kg/IP投与)と組み合わせて投与した。MDX−1338は、ビヒクル対照で処置したマウスと比較して、24日目に腫瘍増殖中央値を45%阻害した(図18H)。ボルテゾミブは、24日目に腫瘍増殖を75%阻害し、MDX−1338とボルテゾミブの組合せは有効性が高く、24日目に腫瘍増殖中央値を99%阻害した(図18H)。レナリドミドはこのOPM−2モデルにおける最小限の有効性を示し、MDX−1338の有効性をあまり増強しなかった(図18I)。
【0210】
これらのMM細胞異種移植で得られた腫瘍増殖阻害結果は、CXCR4発現およびMDX−1338によって誘導されたアポトーシスに対する感受性と一緒に表9にまとめて示す。
【0211】
実施例14〜16は、確立された腫瘍に単独療法として投与すると、BMS−936564は複数のNHL、AMLおよびMM異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を示すことを示唆している。BMS−936564はIgG4抗体なので、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を惹起しない。実施例11で示したデータは、BMS−936564が腫瘍増殖阻害の1機構としてアポトーシスを誘導することを示唆している。
【0212】
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]