(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541362
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
H01J65/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-23353(P2015-23353)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-146295(P2016-146295A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(72)【発明者】
【氏名】今井 正人
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−235607(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/078249(WO,A1)
【文献】
特表2013−544016(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0061667(US,A1)
【文献】
特開2003−168396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00−65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外側管と、
前記外側管の内側に配置され、
内側のランプ軸上に照射空間を有する筒状の内側管と、
前記外側管と前記内側管との間に放電空間とを有するエキシマランプにおいて、
前記外側管の管壁内部に埋設された内側電極と、
前記外側管外表面に配設され、
前記内側管とランプ軸を介して前記内側電極と少なくとも一部が対向する外側電極とを有し、
前記放電空間で生じた紫外線を前記照射空間に照射する
ことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のエキシマランプにおいて、
前記外側電極の端部が前記内側電極の端部よりランプ軸方向端部側に突出し、
前記外側電極を前記外側管の外周面全周を覆い被さるように設けたことにより、
前記放電空間で生じた紫外線が前記外側管の外周面から放射されない
ことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエキシマランプにおいて、
前記内側電極は第1外側管の内表面と第2外側管の外表面の間に配置され、
前記外側管は前記第1外側管と前記第2外側管が溶着により一体として形成され、
前記内側電極の一端に前記内側電極への給電手段を有し、
前記第1外側管の前記給電手段側の端部は、
前記第2外側管の縮径開始部よりランプ軸方向端部側に突出している
ことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のエキシマランプにおいて、
前記照射空間に配置または流動する被照射物質に紫外線を照射する
ことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のエキシマランプにおいて、
前記照射空間に配置された非導電性物質に紫外線を照射する
ことを特徴とするエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体バリア放電、あるいは容量結合型高周波放電によって放電発光するエキシマランプに関し、特に、二重管構造を有し、内側管の内側の被照射物質に紫外線を照射するエキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
内側管の内側に紫外線を照射する二重管構造のエキシマランプには、外側管の外面に高電圧電極として外側電極を設け、内側管より内側に低電圧電極として内側電極を設けた構造のエキシマランプと、内側電極を有さずに内側管内側に充填される導電性流体を低電圧電極として使用する構造のエキシマランプとがある。(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されているエキシマランプにおいて、内側管の内側に内側電極を設けると、内側管の内側に向けて放射される紫外線の一部を内側電極が遮ってしまい、内側管内側の物質(以下、被照射物質)に照射される紫外線が低下し、紫外線照射効率が低下する問題がある。また、被照射物質と内側電極の間で化学反応が生じ、互いに変質する問題がある。それに対して、内側管内側に充填されている被照射物質が導電性流体である場合は上記のような問題は生じない。しかしながら、被照射物質は導電性流体に限定されるので、被照射物質として非導電性の流体に紫外線を照射することが出来ない。また、被照射物質が導電性流体であっても、内側管内側に十分充填されていないと、内側管と被照射物との間の空間が生じ、誘電体バリア放電が妨げられることから、好適に紫外線を照射することが出来ない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−544016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点に鑑みて、この発明が解決しようとする課題は、エキシマランプにおいて、被照射物質の導電性や内側管への充填状態に関わらず、被照射物に紫外線を効率よく照射できるエキシマランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエキシマランプは、筒状の外側管と、外側管の内側に配置された筒状の内側管と、外側管と内側管との間に放電空間とを有し、放電空間で生じた紫外線を内側管の内側に照射するエキシマランプであり、内側電極を外側管の管壁内部に埋設し、外側電極の少なくとも一部が内側管を介して内側電極と対向するように、外側電極を外側管外表面に配設した構造を有する。
【0007】
このような構造を有することで、内側管周辺の放電空間で誘電体バリア放電または容量結合型高周波放電(以下 放電)が発生し、放電によって生じた紫外線を内側電極に遮られることなく、被照射物質に照射することができる。
【0008】
更に本発明のエキシマランプは、外側管外周面に外側電極と電気的に接続された外側補助電極を配設し、外側補助電極と内側電極との外側管周方向に沿った距離が、外側電極と内側電極との外側管周方向に沿った距離より小さい構造を有する。
【0009】
このような構造を有することで、外側補助電極と内側電極との放電空間を介した離間距離は、外側電極と内側電極との距離より短くなる。そのため、放電空間において、まず内側電極と外側補助電極との間で放電が生じ、放電ガスが活性化することで、内側電極と外側電極との間で放電が生じやすくなり、良好な始動性を得ることができる。
【0010】
更に本発明のエキシマランプは、外側電極を外側管の外周面全周に設けた構造を有する。
【0011】
このような構造を有することで、内側電極と外側電極との放電空間を介した離間距離が最短となる部分を有し、良好な始動性を得ることができる。また、放電空間内の放電の斑が抑制され、被照射物質に均一に紫外線を照射することができる。
【0012】
本発明のエキシマランプは、内側電極の一端に内側電極への給電手段を有し、給電手段側の外側管端部は、外側電極よりランプ軸方向端部側に突出した構造を有する。
【0013】
このような構造を有することで、内側電極への給電手段と外側電極との間で外側管外表面に沿った沿面放電が生じることを抑制することができる。
【0014】
更に本発明のエキシマランプは、内側管の内側に配置された非導電性物質に紫外線を照射するエキシマランプに好適である。
【発明の効果】
【0015】
二重管構造を有するエキシマランプにおいて、被照射物質の導電性や内側管への充填状態に関わらず、被照射物に紫外線を好適かつ、効率よく照射できるエキシマランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるエキシマランプの第1実施形態の概略外観図である。
【
図2】本発明によるエキシマランプの第1実施形態の軸線を通る概略断面図である。
【
図4】本発明によるエキシマランプの第2実施形態の概略外観図である。
【
図6】本発明によるエキシマランプの第3実施形態の軸線を通る概略断面図である。
【
図8】第3実施形態の他の例を示した軸線を通る概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図3を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の概略外観図であり、
図2は、第1の実施形態の軸線を通る概略断面図であり、
図3は
図2のV−V線に沿う概略断面図である。
【0018】
エキシマランプ(以下ランプ)は、
図1に示すように外側管1と内側管2とによる二重管構造を有し、外側管1の外周面に外側電極5を配設し、内側管2の内側に紫外線を照射するランプである。
【0019】
図2および
図3に示すように、ランプは、それぞれ石英ガラスなどの誘電材料から成る筒状の第1外側管101と、第1外側管の内側に第1外側管と同軸に配置された誘電材料から成る筒状の第2外側管102とが、溶着により一体として形成された外側管1と、外側管1の内側に同軸上に配置された紫外線透過性を有する筒状の内側管2と、外側管1の両端が縮径して内側管2と溶着することにより外側管1と内側管2の間に形成されるランプ径方向断面ドーナツ状の放電空間3と、外側管1の管壁内部に埋設された内側電極4と、少なくとも一部が内側電極4と内側管2を介して対向する、外側管1の外周面に配設した外側電極5と、内側電極4と電気的に接続された内側給電線6と、外側電極5と電気的に接続された外側給電線7と、により構成される。
【0020】
放電空間3には、Xeなどの希ガス、もしくは希ガスとハロゲンガスとの混合ガスが放電ガスとして封入される。内側管2の内側には被処理物質が配置または流動する照射空間8を有する。
【0021】
内側電極4は例えば箔または膜状の電極であり、例えばモリブデン材やアルミニウム材で構成される。内側電極4は第1外側管101の内表面と第2外側管102の外表面の間に配置され、第1外側管101と第2外側管102が溶着により外側管1として一体とになることで、外側管1の管壁内部に埋設される。内側電極4の一方の端には内側給電線6が電気的に接続され、内側給電線6は外側管1外部に取り出されている。他の端は、完全に外側管1の管壁内部に埋め込まれて終端している。内側給電線6は内側電極4の外部への電気的接続のために設けられているが、内側給電線6を設けずに内側電極4の一端を内側給電線6として外部へ取り出してもよい。内側電極4の内側管2側表面は紫外線を反射する特性を有していても良い。
【0022】
外側電極5は例えば箔または膜状の電極であり、例えばモリブデン材やアルミニウム材で構成される。外側電極5は、少なくとも一部が内側管2を介して内側電極4と対向するように外側管1の外周面に配設されており、加えて外側電極5は、少なくとも一部が内側電極4とランプ軸を介して対向していることが望ましい。外側電極5の内側管2側表面は紫外線を反射する特性を有していても良い。
【0023】
内側給電線6と外側給電線7は、交流高電圧電源(図示せず)に接続されており、内側給電線6および外側給電線7を介してランプに電力が供給される。
【0024】
外側電極5と内側電極4との間に高周波高電圧が印加されると、誘電体(外側管1)を介して、放電空間3において
図3の破線A(少なくとも一方)のように内側管4の周辺で放電が発生する。放電によって生じた紫外線は内側管2を透過して、照射空間8に照射される。
【0025】
外側電極5の少なくとも一部が内側管2を介して内側電極4と対向すると、放電が内側管4の近辺で発生するが、加えて外側電極5の少なくとも一部がランプ軸を介して内側電極4と対向するとことによって、
図3の破線Aのように放電が内側管2の周辺を覆うように発生する。そのため、紫外線は照射空間8に均一に放射することができる。
【0026】
内側電極4の内側管2側表面または外側電極5の内側管2側表面、もしくはその両方が紫外線反射特性を有すると、放電空間3から外側管1側に放射される紫外線の一部を照射空間8側に反射することができ、照射空間8への紫外線照射効率が向上する。
【0027】
内側電極4を高圧電極、外側電極5を接地電極とすることで、高圧電極が外側管1管壁内部に埋設され、外側管1外表面で沿面放電が生じることを防止するとともに、高圧電極が露出しない安全なランプを実現できる。
【0028】
図4および
図5を参照して第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態であるエキシマランプの概略外観図であり、
図5は
図4のW−W線に沿う概略断面図である。
【0029】
第2の実施形態は、第1の実施形態に加えて、外側管1の外周面に、外側電極5と電気的接続手段(図示せず)によって接続された外側補助電極501を配設する。外側補助電極501は外側管1の外周面において、外側補助電極501と内側電極4との外側管周方向に沿った距離が、外側電極5と内側電極4との外側管周方向に沿った距離より小さくなるように配設される。外側補助電極501の内側管2側表面は紫外線を反射する特性を有していても良い。外側補助電極501は少なくとも1つ以上配設されればよく、複数配設しても良い。
【0030】
内側電極4と外側電極5との間に高周波高電圧が印加されると、放電空間3において、まず内側電極4と外側補助電極501の間で
図5の破線Bのように放電が発生し、その後、内側電極4と外側電極5との間で
図5の破線Aのように放電が発生する。
【0031】
第1の実施形態では、内側電極4と外側電極5との間に放電に寄与しない内側管2および照射空間8があり、放電の始動電圧が高くなる場合がある。それに対して第2の実施形態では、まず放電距離の短い内側電極4と外側補助電極501との間で放電が発生し、放電ガスが活性化することから、第1の実施形態より低い始動電圧で内側電極4と外側電極5の間で放電を発生する。これにより、良好な始動性を得ることができる。
【0032】
外側補助電極501の内側管2側表面が紫外線反射特性を有すると、第1の実施形態と同様に、放電空間3から外側管1側に放射される紫外線の一部を照射空間8側に反射することができ、照射空間8への紫外線照射効率が向上する。
【0033】
図6乃至
図8を参照して第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態であるエキシマランプの軸線を通る概略的断面図であり、
図7は
図6のX−X線に沿う概略断面図である。
図8は第3実施形態の他の例を示した軸線を通る概略断面図である。
【0034】
第3の実施形態は、
図6および
図7に示すように外側電極5が外側管1の外周面全周に配設される。
【0035】
内側電極4と外側電極5との間に高周波高電圧が印加されると、まず
図7の破線Cのように放電距離が最小となる放電が発生し、その後、破線D、破線Aの順で順次放電が発生する。
【0036】
このように、放電距離が最小となる放電が生じることで、放電ガスが活性化し、順次、放電距離が長い放電が発生することから、始動電圧をより低くすることが出来るとともに、安定した始動性を得ることができる。
【0037】
また、第1の実施形態および第2の実施形態では、放電に斑が生じる場合があるが、第3の実施形態では外側管1の外周面全周に外側電極5があることから、例えば
図7の破線A、破線Cおよび破線Dのように放電空間3のランプ径方向ほぼ全域で放電が発生し、放電の斑が生じることを抑制できる。これにより、照射空間8により均一に紫外線を照射することができる。
【0038】
内側電極4の内側管2側表面または外側電極5の内側管2側表面、もしくはその両方が紫外線反射特性を有すると、放電空間3から外側管1側に放射される紫外線を照射空間8側に反射することができ、照射空間8への紫外線照射効率が向上するとともに、外側管1の外周面から紫外線が放射されない安全なランプを実現することができる。
【0039】
第3実施形態においては、
図6に示すように外側管1と外側電極5とはランプ軸方向長さが同一である(外側管1の外周を覆い被さるように外側電極5が配設されている)が、
図8に示すように、第1外側管101のランプ内側給電線6側端面が、外側電極5のランプ内側給電線6側端面よりランプ軸方向端部側に突出(第1外側管突出部9)していても良く、更に第1外側管突出部9が、第2外側管102の縮径開始部10よりランプ軸方向端部側に突出していても良い。
【0040】
内側電極4と外側電極5との間に高周波高電圧が印加されると、放電空間3で放電が発生する。第1外側管101の沿面放電防止距離Eだけランプ軸方向端部側に突出した第1外側管突出部9によって、外側電極5と内側給電線6が互いに十分絶縁され、外側管1の外表面上において、内側給電線6と外側電極5との間で沿面放電が発生することを防止することができる。さらに、第1外側管突出部9を、第2外側管102の縮径開始部10よりランプ軸方向端部側に突出させることによって、内側給電線6の引き出し部を介して内側電極4と外側電極5との間で沿面放電が発生することを防止することができる。
【実施例】
【0041】
図8を参照して、上記第3の実施形態を満たすランプの実施例について説明する。
【0042】
本発明の二重管構造を有し、内側電極4を外側管1管壁内部に埋設するエキシマランプにおいて、放電空間3の内側電極4と外側電極5とが対向する範囲で略均一に放電を発生させるには、放電空間3の外径、すなわち外側管1の内径が30(mm)以下であり、電極間に印加する高周波高電圧が3〜18(kV)であることが望ましい。
【0043】
外側管1の外表面上において沿面放電防止距離Eは、高周波高電圧によって変動するが、高周波高電圧が3〜18(kV)の範囲では少なくとも1(mm)以上であることが望ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 外側管
101 第1外側管
102 第2外側管
2 内側管
3 放電空間
4 内側電極
5 外側電極
501 外側補助電極
6 内側給電線
7 外側給電線
8 照射空間
9 第1外側管突出部
10 縮径開始部