特許第6541375号(P6541375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541375
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ワイヤレス温度センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/02 20060101AFI20190628BHJP
   G01K 7/32 20060101ALI20190628BHJP
   H03H 9/42 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G01K1/02 E
   G01K7/32 S
   H03H9/42
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-42964(P2015-42964)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-11945(P2016-11945A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-117648(P2014-117648)
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(72)【発明者】
【氏名】新井 勲
(72)【発明者】
【氏名】小峰 伸一
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 陽一
(72)【発明者】
【氏名】早田 智史
(72)【発明者】
【氏名】木下 嘉将
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−259156(JP,A)
【文献】 特開2009−265025(JP,A)
【文献】 米国特許第06075463(US,A)
【文献】 特開2004−279397(JP,A)
【文献】 特開2004−347451(JP,A)
【文献】 特表2004−515757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
H03H 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板を含む第一の構造体及び第二の構造体を用意する工程と、
前記絶縁基板を含む第一の構造体にアンテナ電極及びGND電極を配置してアンテナを形成する工程と、
前記アンテナによって受信した信号に応じて動作し、応答信号を前記アンテナに出力する温度検出素子に配置された一対の素子ボンディングパッドを前記アンテナ電極及び前記GND電極にそれぞれ電気的に接続するとともに、前記温度検出素子を前記第一の構造体に固定する工程と、
第二の構造体が前記温度検出素子の側壁側に配置されるように、前記第一の構造体及び前記第二の構造体を接合して組み立てる工程と、
を有すること特徴とするワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項2】
前記第一の構造体及び前記第二の構造体を接合して組み立てる工程は、さらに、前記温度検出素子が前記第二の構造体の内側に接触するように、前記第一の構造体及び前記第二の構造体を接合して組み立てることを含む、請求項1に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項3】
前記第二の構造体は、前記第一の構造体に接合される側と反対側に開口部を有する、請求項1に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項4】
前記第一の構造体及び前記第二の構造体を接合して組み立てる工程は、さらに、前記第二の構造体と前記温度検出素子との間に熱伝導体を配置するように、前記第一の構造体及び前記第二の構造体を接合して組み立てることを含む、請求項1に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項5】
前記第二の構造体は、ポーラス構造又はメッシュ構造を有する、請求項1に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項6】
前記アンテナを形成する工程は、さらに、
前記絶縁基板の一方の面上に前記アンテナ電極となる導体パターンを配置し、
前記絶縁基板の内層に前記GND電極となる導体パターンを配置し、
前記絶縁基板に、前記アンテナ電極と導通する第一のビアホール及び前記GND電極と導通する第二のビアホールを形成し、
前記絶縁基板の他方の面上に、前記第一のビアホールと導通する第一の電極パッド及び前記第二のビアホールと導通する第二の電極パッドを形成することを含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項7】
前記アンテナを形成する工程は、さらに、前記絶縁基板の前記他方の面上に、前記第二の電極パッドと導通し、且つ、前記温度検出素子及び前記第二の構造体に熱的に接続する熱伝導層を形成することを含む、請求項6に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項8】
前記温度検出素子を前記第一の構造体に固定する工程は、さらに、前記温度検出素子を、前記熱伝導層上の前記第二のビアホールの上に固定することを含む、請求項7に記載のワイヤレス温度センサの製造方法。
【請求項9】
絶縁基板にアンテナ電極及びGND電極が配置されたアンテナを有する第一の構造体と、
前記第一の構造体の前記アンテナ電極が配置された面とは裏面側に固定され、前記アンテナによって受信した信号に応じて動作し、応答信号を前記アンテナに出力する温度検出素子と、
前記温度検出素子の側壁側に配置され、前記第一の構造体に接合した第二の構造体と、を備え、
前記温度検出素子は、前記温度検出素子に配置された一対の素子ボンディングパッドを前記アンテナ電極及び前記GND電極にそれぞれ電気的に接続されるように、前記第一の構造体に固定される、ことを特徴とするワイヤレス温度センサ。
【請求項10】
前記温度検出素子は、前記第二の構造体の内側に接触するように固定されている、請求項9に記載のワイヤレス温度センサ。
【請求項11】
前記第二の構造体は、前記第一の構造体に接合した側と反対側に開口部を有する、請求項9に記載のワイヤレス温度センサ。
【請求項12】
前記第二の構造体と前記温度検出素子との間に配置された熱伝導体をさらに備える、請求項9に記載のワイヤレス温度センサ。
【請求項13】
前記第二の構造体は、ポーラス構造又はメッシュ構造を有する、請求項9に記載のワイヤレス温度センサ。
【請求項14】
前記絶縁基板に形成され、前記温度検出素子及び前記第二の構造体に熱的に接続された熱伝導層を更に備える、請求項9〜13の何れか一項に記載のワイヤレス温度センサ。
【請求項15】
前記絶縁基板内に形成され、前記GND電極及び前記熱伝導層と導通するビアホールを更に備え、
前記温度検出素子は、前記熱伝導層上の前記ビアホールの上に固定される請求項14に記載のワイヤレス温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤレス温度センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度測定には、有線ケーブルを用いたいくつかの手法がある。例として、サーミスタや熱電対による温度−抵抗特性や熱起電力を利用する方法や、物体から放射される赤外線から温度を測定する放射温度計、圧電素子や弾性表面波素子の物理特性が温度によって変化する原理を利用した方法等がある。
【0003】
しかしながら、例えば、半導体プロセスにおいてチャンバー内のウエハーの温度を測定する場合、チャンバー内に配置した測定部から外部に出力するために接続される有線ケーブルの配置は、チャンバーや付随する装置等の制約を受けてしまう。この課題の解決策として、弾性表面波素子に送受信アンテナを設けたユニットが、外部アンテナから発信された信号によって動作し、測定情報を含んだ応答信号を返信するワイヤレスの温度センサが知られている。(例えば特許文献1参照)
【0004】
図27(a)は、特許文献1に記載された第一の具体例における温度センサの容器本体101の平面図であり、図27(b)は蓋107の平面図である。図27(a)に示す様に、振動板104に取り付けられた電極と容器本体101に取り付けられた外部端子102及び103とが、リード線105及び106により各々接続されている。また、図27(b)に示す様に、蓋107に形成されたコイル108の両端と、図27(a)に示す外部端子102及び103とは、図示しないリード線により各々接続されている。
【0005】
図27(c)は、同特許文献に記載された第二の具体例における温度センサの断面図であって、蓋125を容器本体121に気密封止する前の断面図である。振動板123は、溝130を備え、容器本体121に取り付けられている。蓋125上にはコイル126が形成されている。振動板123は容器本体121に取り付けられ、リード線124により外部端子122に接続され、外部端子122とコイル126とがリード線128により接続された後、容器本体121と蓋125とが気密封止される。
【0006】
上記の第一及び第二の具体例の何れにおいても、蓋(107又は125)に設けられたコイル(108又は126)と、容器本体(101又は121)に設けられた振動板(104又は123)とは、リード線で結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5341381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、各々別体として用意された蓋と容器本体とをリード線で接続した後に、容器にリード線が格納される様に蓋を容器本体に実装する製造方法では、実装時に、リード線が撓んで断線したり、実装後に、撓んだリード線が振動板に接触して動作不良が生じたりすることがある。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決しようとするものであり、製造が容易で、且つ、信頼性が向上したワイヤレス温度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイヤレス温度センサの製造方法は、絶縁基板を含む第一の構造体及び第二の構造体を用意する工程と、絶縁基板を含む第一の構造体にアンテナ電極及びGND電極を配置してアンテナを形成する工程と、温度検出素子がアンテナ電極及びGND電極に電気的に接続されるように、温度検出素子を第一の構造体に固定する工程と、第二の構造体が温度検出素子の側壁側に配置されるように、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てる工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記の構成により、絶縁基板にアンテナ電極とGND電極とが設けられた第一の構造体に温度検出素子が固定されるので、製造が容易で、且つ、信頼性が向上したワイヤレス温度センサを製造することができる。
【0012】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てる工程は、さらに、温度検出素子が容器を構成する第二の構造体の内側に接触するように、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てることを含んでもよい。
【0013】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを製造することが可能となる。
【0014】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、第二の構造体は、第一の構造体に接合される側と反対側に開口部を有してもよい。
【0015】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを製造することが可能となる。
【0016】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てる工程は、さらに、第二の構造体と温度検出素子との間に熱伝導体を配置するように、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てることを含んでもよい。
【0017】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを製造することが可能となる。
【0018】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、第二の構造体は、ポーラス構造又はメッシュ構造を有してもよい。
【0019】
上記の構成により、環境温度(雰囲気温度)をより正確に測定することが可能となる。
【0020】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、アンテナを形成する工程は、さらに、絶縁基板の一方の面上にアンテナ電極となる導体パターンを配置し、絶縁基板の内層にGND電極となる導体パターンを配置し、絶縁基板に、アンテナ電極と導通する第一のビアホール及びGND電極と導通する第二のビアホールを形成し、絶縁基板の他方の面上に、第一のビアホールと導通する第一の電極パッド及び第二のビアホールと導通する第二の電極パッドを形成することを含んでもよい。
【0021】
上記の構成により、絶縁基板上に形成されたアンテナ電極及び絶縁基板内に形成されたGND電極によって送受信機能に優れたパッチアンテナが構成されるため、アンテナ特性が向上したワイヤレス温度センサを製造することができる。
【0022】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、アンテナを形成する工程は、さらに、絶縁基板の他方の面上に、第二の電極パッドと導通し、且つ、温度検出素子及び第二の構造体に熱的に接続する熱伝導層を形成することを含んでもよい。
【0023】
上記の構成により、第二の構造体内を伝わる熱が熱伝導層を介して温度検出素子に効率よく伝わるため、温度測定の応答性及び追従性が向上したワイヤレス温度センサを製造することができる。
【0024】
ワイヤレス温度センサの製造方法では、温度検出素子を第一の構造体に固定する工程は、さらに、温度検出素子を、熱伝導層上の第二のビアホールの上に固定することを含んでもよい。
【0025】
上記の構成により、ビアホールによって蓋の内部に移動する熱量を減ずることが可能となるため、温度測定の応答性が向上し、且つ、熱の影響によるアンテナ特性の変動が低減されたワイヤレス温度センサを製造することができる。
【0026】
本発明に係るワイヤレス温度センサは、絶縁基板にアンテナ電極及びGND電極が配置されたアンテナを有する第一の構造体と、第一の構造体のアンテナ電極が配置された面とは裏面側に固定された温度検出素子と、温度検出素子の側壁側に配置され、第一の構造体に接合した第二の構造体と、を備え、温度検出素子は、温度検出素子がアンテナ電極及びGND電極に電気的に接続されるように、第一の構造体に固定される、ことを特徴とする。
【0027】
上記の構成により、絶縁基板にアンテナ電極とGND電極とが設けられた第一の構造体に温度検出素子が固定されるので、製造が容易で、且つ、信頼性が向上したワイヤレス温度センサを提供することができる。
【0028】
ワイヤレス温度センサでは、温度検出素子は、第二の構造体の内側に接触するように、容器の内部に固定されていてもよい。
【0029】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを提供することが可能となる。
【0030】
ワイヤレス温度センサでは、第二の構造体は、第一の構造体に接合した側と反対側に開口部を有してもよい。
【0031】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを提供することが可能となる。
【0032】
ワイヤレス温度センサは、第二の構造体と温度検出素子との間に配置された熱伝導体をさらに備えてもよい。
【0033】
上記の構成により、温度測定の応答性が更に向上したワイヤレス温度センサを提供することが可能となる。
【0034】
ワイヤレス温度センサでは、第二の構造体は、ポーラス構造又はメッシュ構造を有してもよい。
【0035】
上記の構成により、環境温度(雰囲気温度)をより正確に測定することが可能となる。
【0036】
ワイヤレス温度センサは、絶縁基板に形成され、温度検出素子及び第二の構造体に熱的に接続された熱伝導層を更に備えてもよい。
【0037】
上記の構成により、第二の構造体内を伝わる熱が熱伝導層を介して温度検出素子に効率よく伝わるため、温度測定の応答性及び追従性が向上したワイヤレス温度センサを提供することができる。
【0038】
ワイヤレス温度センサは、絶縁基板内に形成され、GND電極及び熱伝導層と導通するビアホールを更に備え、温度検出素子は、熱伝導層上のビアホールの上に固定されてもよい。
【0039】
上記の構成により、ビアホールによって蓋の内部に移動する熱量を減ずることが可能となるため、温度測定の応答性が向上し、且つ、熱の影響によるアンテナ特性の変動が低減されたワイヤレス温度センサを製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、絶縁基板にアンテナ電極とGND電極とが設けられた第一の構造体に温度検出素子が固定されるので、製造が容易で、且つ、信頼性が向上したワイヤレス温度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ワイヤレス温度センサ1の構造を説明するための図である。
図2】(a)は温度検出素子30の平面図であり、(b)は温度検出素子30の図2(a)に示すC−C線に沿った断面図であり、(c)は温度検出素子30の図2(a)に示すD−D線に沿った断面図である。
図3】ワイヤレス温度センサ1の平面図であり、(b)はワイヤレス温度センサ1の側面図である。
図4】ワイヤレス温度センサ1の図3(b)に示すB−B線に沿った断面図である。
図5】ワイヤレス温度センサ1による温度検出方法を説明するための図である。
図6】弾性表面波素子における反射弾性表面波強度Rwpの時間的変化を示すグラフである。
図7】ワイヤレス温度センサ1を用いた温度測定システムの構成を説明するための図である。
図8】ワイヤレス温度センサ1の製造工程の概要を示すフローチャートである。
図9】ワイヤレス温度センサ1の第一の構造体組み立て工程を説明するための図である。
図10】ワイヤレス温度センサ1の温度検出素子実装工程を説明するための図である。
図11】ワイヤレス温度センサ1の容器組み立て工程を説明するための図である。
図12】他のワイヤレス温度センサ2の構造を説明するための図である。
図13】ワイヤレス温度センサ2の第一の構造体組み立て工程を説明するための図である。
図14】更に他のワイヤレス温度センサ3の構造を説明するための図である。
図15】(a)はワイヤレス温度センサ2の図示しない測定対象物からの熱の伝搬経路を模式的に表した断面図であり、(b)はワイヤレス温度センサ3の図示しない測定対象物からの熱の伝搬経路を模式的に表した断面図である。
図16】更に他のワイヤレス温度センサ4の構造を説明するための図である。
図17】ワイヤレス温度センサ4の製造方法を説明するための図である。
図18】更に他のワイヤレス温度センサ5の構造を説明するための図である。
図19】ワイヤレス温度センサ5の温度検出素子実装工程を説明するための図である。
図20】更に他のワイヤレス温度センサ6の構造を説明するための図である。
図21】ワイヤレス温度センサ6を図20の方向6Dから観た図である。
図22】更に他のワイヤレス温度センサ7の構造を説明するための図である。
図23】ワイヤレス温度センサ7を図22の方向7Dから観た図である。
図24】更に他のワイヤレス温度センサ8の構造を説明するための図である。
図25】ワイヤレス温度センサ8の温度検出素子実装及び全体組み立て工程を説明するための図である。
図26】更に他のワイヤレス温度センサ9の構造を説明するための図である。
図27】従来例の圧電振動子、温度センサ、及び、温度測定方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るワイヤレス温度センサの実施の形態を詳述する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。なお、各図面の寸法は正確な寸法を反映したものではなく、説明のため部品の大きさが誇張して描かれることがあり、又、説明のため一部の部品を省略することがある。同一要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0043】
図1は、ワイヤレス温度センサ1の構造を説明するための図である。なお、図1に示す図は、ワイヤレス温度センサ1の図3(a)に示すA−A線に沿った断面図である。
【0044】
図1に示す様に、ワイヤレス温度センサ1は、蓋10及び容器本体20とから成る容器50と、容器50の内部に固定された温度検出素子30とを有する。温度検出素子30は、蓋10に実装されている。
【0045】
蓋10は、第一の構造体であり、絶縁基板12にアンテナ電極層11とGND電極層13とを積層して形成されたマイクロストリップアンテナ(以下、アンテナと称する。)である。マイクロストリップアンテナは、平面アンテナやパッチアンテナとも呼ばれ、小型薄型化が可能でありながら高利得であって帯域が狭く広い指向性を有するアンテナである。
【0046】
絶縁基板12は、略1mmの厚さを有し、一般にLTCC(Low Temperature Cofired Ceramics)として知られている低温焼成セラミック材であるCaO−Al23−SiO2−B23によって形成される。しかしながら、これに限定されず、絶縁基板12は、他のLTCCを用いて形成しても良い。他のLTCCとしては、BaO−Al23−SiO2−Bi23、BaOTiO2−ZnO、及びBaO−Nd23−Bi23−TiO2、BaO−R23−TiO2(Rはアルカリ金属)等が含まれる。
【0047】
絶縁基板12の厚さは、略1mmに限らず、使用されるセラミック材によって異なるが、アンテナとしての特性を確保するのに充分な厚みであればよい。
【0048】
絶縁基板12は、一般にHTCC(High Temperature Cofired Ceramics)として知られている熱伝導率の高い高温焼成セラミック材を用いて形成してもよい。HTCCには、例えば、酸化アルミニウム(Al23)や窒化アルミニウム(AlN)等が含まれる。
【0049】
アンテナ電極層11は、Cuで形成された、厚さ10〜15μm程度の電極層である。アンテナ電極層11は、他の厚さであってもよい。アンテナ電極層11は、絶縁基板12を貫通する第一のビアホールであるアンテナビアホール11hを通じて、絶縁基板12の蓋実装面15mに設けられた第一の電極パッドであるアンテナ接続パッド15aに、電気的に接続されている。アンテナビアホール11h及びアンテナ接続パッド15aは、Cuで形成されている。
【0050】
GND電極層13は、Cuで形成された、厚さ10〜15μm程度の電極層である。GND電極層13は、他の厚さであってもよい。GND電極層13は、絶縁基板12に設けられた第二のビアホールであるGNDビアホール13hを通じて、絶縁基板12の蓋実装面15mに設けられた第二の電極パッドであるGND接続パッド15bに、電気的に接続されている。GND電極層13は、アンテナビアホール11hを貫通させるためのGNDパターン開口部13wを備えている。なお、GNDパターン開口部13wには、絶縁基板12を形成するセラミック材が充填されていても良い。GNDビアホール13h及びGND接続パッド15bは、Cuで形成されている。
【0051】
上述の導体パターン(すなわち、アンテナ電極層11、アンテナビアホール11h、及びアンテナ接続パッド15a、並びに、GND電極層13、GNDビアホール13h、及びGND接続パッド15b)は、Cuを用いて形成されているが、他の金属を用いてもよい。導体パターンには、電気伝導率が高いAg又はCuを用いることが好ましい。特に、蓋10の絶縁基板12にLTCCを使用した場合には、電気伝導率が高いAg又はCuを用いることで、効率のよいアンテナ特性を得ることができる。
【0052】
容器本体20は、第二の構造体であり、一般にHTCCとして知られている高温焼成セラミック材であるAl23で形成されている。容器本体20には、後述する方法で本体キャビティ20cが形成されている。容器本体20には、Al23に限らず、窒化アルミニウム(AlN)等の他のHTCCを用いることもできる。
【0053】
更に、容器本体20は、HTCCに限らず、上述のLTCC等の他のセラミック材、比誘電率が高いリジット基板、ポリイミド等の高分子材料、及び酸化被膜を有する金属等で形成してもよい。
【0054】
温度検出素子30は、蓋10の絶縁基板12の蓋実装面15mに実装されている。温度検出素子30は、素子ボンディングパッド34a及び34bを有する。素子ボンディングパッド34aは、ボンディングワイヤ35aによって、第一の電極パッドであるアンテナ接続パッド15aに接続されている。素子ボンディングパッド34bは、ボンディングワイヤ35bによって、第二の電極パッドであるGND接続パッド15bに接続されている。したがって、素子ボンディングパッド34aはアンテナ電極層11と、且つ、素子ボンディングパッド34bはGND電極層13と、それぞれ電気的に接続されている。
【0055】
図2(a)は温度検出素子30の平面図であり、図2(b)は温度検出素子30の図2(a)に示すC−C線に沿った断面図であり、図2(c)は温度検出素子30の図2(a)に示すD−D線に沿った断面図である。
【0056】
図2(a)において、温度検出素子30は弾性表面波素子であり、弾性表面波素子基板31、弾性表面波素子基板31の表面に設けられた櫛形電極32a、32b、及び反射体33を有する。櫛形電極32aの端部には素子ボンディングパッド34aが、且つ、櫛形電極32bの端部には素子ボンディングパッド34bが、それぞれ形成されている。弾性表面波素子基板31は、櫛形電極32a、32b、及び反射体33が設けられた面と略垂直である4つの面から成る側壁31aを有する。
【0057】
弾性表面波素子基板31は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)の単結晶によって形成され、平面視寸法が約10mm×10mmで厚みが約2mmの矩形板形状を有する。弾性表面波素子基板31には、これに限らず、圧電性物質の単結晶基板、又は、ガラス基板若しくはSi基板の上に圧電性物質の薄膜を形成した基板等を用いても良い。圧電性物質には、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、水晶(SiO2)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト(La3Ta0.5Ga5.514)等が含まれるが、これらに限られない。
【0058】
櫛形電極32a及び櫛形電極32bは、弾性表面波素子基板31の一方の表面に、二対の電極が交互に配置される様に形成されている。櫛形電極32a及び櫛形電極32bは、Cuを用いて、スパッタリング法により形成されている。しかしながら、櫛形電極32a及び32bは、Au、Ti、Ni、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)等のCu以外の電極材料を用いて形成してもよく、又、スパッタリング法以外の製膜方法により形成してもよい。
【0059】
櫛形電極32a及び櫛形電極32bの電極間距離dは、弾性表面波素子が励起する弾性表面波の波長に応じた値が必要である。弾性表面波の伝搬速度をv、波長をλ、櫛形電極の励振周波数をfとするとv=f×λ、d=λ/2の関係がある。例えば、ニオブ酸リチウムの場合では、励振周波数が2.45GHzとすると、電極間距離dを約0.8μmとする必要がある。
【0060】
隣接する櫛形電極32a、32bの各電極幅及び各電極間距離は等間隔であるのが好ましい。上記の場合、各電極幅は電極間距離dの半分である約0.4μmとするのがより好ましい。伝搬速度vは弾性表面波を発生させる弾性表面波素子基板31の材質によって異なるので、電極間距離dは任意の材料、周波数の違いにより適宜選択可能である。
【0061】
反射体33は、弾性表面波素子基板31の櫛形電極32a及び32bが形成された表面に、櫛形電極32a及び櫛形電極32bと略同寸法に形成されている。反射体33は、櫛形電極32a及び32bと同様に、Cuを用いて、スパッタリング法により形成されている。しかしながら、反射体33は、Au、Ti、Ni、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)等のCu以外の電極材料を用いて形成してもよく、又、スパッタリング法以外の製膜方法により形成してもよい。
【0062】
反射体33は、櫛形電極32a及び32bに印加された高周波信号によって、弾性表面波素子基板31の表面に誘起された弾性表面波を反射し、再び櫛形電極32a及び櫛形電極32bを通じて外部に測定情報である応答信号を送信するために設けられる。なお、弾性表面波素子による温度測定の原理については後述する。
【0063】
図3(a)はワイヤレス温度センサ1の平面図であり、図3(b)はワイヤレス温度センサ1の側面図である。
【0064】
図3(a)に示す様に、略30mm×30mmのワイヤレス温度センサ1の上面、すなわち蓋10の表面に、寸法が略20mm×20mmのアンテナ電極層11が設けられている。ワイヤレス温度センサ1の外形寸法は、略30mm×30mmに限らず、弾性表面素子を実装するに充分な大きさであればよい。好適なアンテナ電極層11の外形寸法は蓋10の誘電率によって異なるが、上記寸法(略20mm×20mm)は、蓋10の比誘電率が例えば9.8程度の場合に好適な寸法である。しかしながら、アンテナ電極層11の寸法はこれに限られない。
【0065】
図3(b)に示す様に、ワイヤレス温度センサ1の容器50は、蓋10及び容器本体20から構成される。ワイヤレス温度センサ1の全体の厚さは略8mmであるが、これに限らず、任意に設定することができる。
【0066】
図4は、ワイヤレス温度センサ1の図3(b)に示すB−B線に沿った断面図である。なお、B−B断面の位置を理解しやすい様に、図1にも同様のB−Bの符号を付している。
【0067】
図4に示す様に、GND電極層13は絶縁基板12の内層に設けられ、GNDパターン開口部13wは、アンテナビアホール11hを貫通させるためにGND電極層13の中央左に設けられている。GND電極層13の外形寸法は、略25mm×25mmであるが、これに限られない。なお、高周波特性のさらなる向上のために、GND電極層13の形状はより大きくすることが好ましい。
【0068】
図5は、ワイヤレス温度センサ1による温度検出方法を説明するための図である。
【0069】
ワイヤレス温度センサ1による温度検出方法は、弾性表面波素子基板31を伝搬する弾性表面波の伝搬速度が温度に依存するとの原理に基づく。換言すると、励起弾性表面波Tw及び反射弾性表面波Rwの伝搬時間が弾性表面波素子基板31の温度に依存することを利用する。そのため、予め「伝搬時間対弾性表面波素子基板温度」の校正表を作成しておく。
【0070】
まず、図示しない外部装置が、上述したアンテナ(アンテナ電極層11、絶縁基板12、及びGND電極層13で構成されるマイクロストリップアンテナ)に固有の励起周波数を含む高周波信号を送信する。図5に示す様に、当該アンテナによって受信した高周波信号は、ボンディングワイヤ35a及び35bを通じて櫛形電極32a及び櫛形電極32bに印加され、弾性表面波素子基板31に電気−機械変換効果をもたらす。すなわち、弾性表面波素子基板31の表面に、櫛形電極の電極間距離dで決定される励起弾性表面波Twが発生する。
【0071】
励起弾性表面波Twは、弾性表面波素子基板31の表面を伝搬し、反射体33で反射して、反射弾性表面波Rwとなって再び櫛形電極32a及び櫛形電極32bに戻る。次いで、反射弾性表面波Rwの一部は、弾性表面波素子基板31に機械−電気変換効果をもたらし、高周波信号に変換され、当該アンテナにより外部に応答信号が発信される。一方、反射弾性表面波Rwのうち高周波信号に変換されなかった一部は、櫛形電極32a及び櫛形電極32bによって反射され、弾性表面波素子31上を再び反射体33へ向かって進行する。以下、反射弾性表面波Rwは、弾性表面波素子基板31上で反射体33と櫛形電極32a及び32bとの間を往来しつつ、その一部が徐々に櫛形電極32a及び32bによって高周波信号に変換されながら、減衰していく。
【0072】
アンテナによって発信された応答信号が上記外部装置に達し、上記外部装置が応答信号を受信すると、上記外部装置は、高周波信号を送信してから応答信号を受信するまでの時間を計測する。
【0073】
高周波信号を送信してから応答信号を受信するまでの時間を計測したら、高周波信号を送信してから応答信号を受信するまでの時間から、弾性表面波素子における弾性表面波の伝搬時間を算出する。そして、予め作成しておいた「伝搬時間対弾性表面波素子基板温度」の校正表に基づいて、算出した伝搬時間から弾性表面波素子基板31の温度を求める。そして、弾性表面波素子基板31の温度に基づいて、弾性表面波素子基板31を装着した対象物の測定温度を決定する。
【0074】
図6は、弾性表面波素子における反射弾性表面波強度Rwpの時間的変化を示すグラフである。
【0075】
図6に示すグラフでは、縦軸が反射弾性表面波Rwの強度Rwpを示しており、横軸が弾性表面波の伝搬時間Tを示している。反射弾性表面波Rwは櫛形電極32a及び櫛形電極32bと反射体33との間で反射を繰り返すので、時刻T1〜時刻T3の複数のタイミングで反射弾性表面波Rwが観測される。反射弾性表面波Rwの強度Rwpは、時刻T1におけるRw1、すなわち、一番初めに検出される反射弾性表面波Rwの強度が最も大きく、測定に有利である。
【0076】
図7は、ワイヤレス温度センサ1を用いた温度測定システムの構成を説明するための図である。
【0077】
温度表示装置40は、複数のワイヤレス温度センサのそれぞれに温度測定を行うための高周波信号を発信し、各ワイヤレス温度センサの応答信号を受信し、且つ、上記校正表に基づいて各ワイヤレス温度センサの測定温度を表示する構成となっている。
【0078】
図7に示す例では、温度表示装置40の測定温度の表示部は一つであり、当該表示部は、複数のワイヤレス温度センサの中からスイッチ等によって選択された所定のワイヤレス温度センサが検知する温度を表示する。しかしながら、複数のワイヤレス温度センサのそれぞれに対応する個別の表示部を温度表示装置40に設けてもよい。
【0079】
図7に示す例では、ワイヤレス温度センサ1A〜1Cの三個を使用し、各々弾性表面波伝搬距離Lが異なる様に設計されている。各々のワイヤレス温度センサにはそれぞれの「伝搬時間対弾性表面波素子基板温度」の構成表がある。
【0080】
温度表示装置40から各ワイヤレス温度センサに固有の励起周波数を含む高周波信号を送信する。各ワイヤレス温度センサから弾性表面波の伝搬時間分遅れた応答信号が生じる。なお、ワイヤレス温度センサ1A〜1Cは、測定対象物(図示せず)との間で熱勾配を生じない様に、測定対象物に密着させて装着するのが好ましい。
【0081】
弾性表面波伝搬距離Lを変えることにより、各ワイヤレス温度センサではそれぞれ異なる伝搬時間をかけて櫛型電極32a、32bから反射体33を往復する。この伝搬時間の差からワイヤレス温度センサ1A〜1Cを区別することができる。さらに、この伝搬時間からそれぞれのワイヤレス温度センサに対応する「伝搬時間対弾性表面波素子基板温度」の校正表から測定対象物(図示せず)の温度を測定することができる。
【0082】
上述の様に、各ワイヤレス温度センサの弾性表面波伝搬距離Lが異なる様に設計する方法以外にも、各ワイヤレス温度センサの動作周波数が異なる様に設計してもよい。これは、例えば、櫛形電極32a、32bの電極間距離dを変化させることにより実現できる。櫛形電極の電極間距離dを変えることにより、各ワイヤレス温度センサは固有の高周波信号f1〜高周波信号f3によってのみ励起される。したがって、温度表示装置40に周波数掃引機能(図示せず)を設けることにより、高周波信号f1〜高周波信号f3を順次送受信し、測定対象物(図示せず)の温度を測定することが出来る。
【0083】
以上、温度測定に弾性表面波素子基板31の弾性表面波伝搬時間の温度特性を用いる方法を説明した。しかしながら、温度によるインピーダンス変調機能を反射体33に設け、反射弾性表面波の強度Rwpの絶対値に基づいて温度を測定する方法や、圧電素子や強誘電素子で共振回路を形成して共振周波数の温度特性を用いる方法等も有効である。
【0084】
図8は、ワイヤレス温度センサ1の製造工程の概要を示すフローチャートである。
【0085】
図8に示す様に、ワイヤレス温度センサ1の製造工程は、第一の構造体組み立て工程ST1と、温度検出素子実装工程ST2と、容器組み立て工程ST3とから構成される。
【0086】
第一の構造体組み立て工程ST1は、絶縁基板12を含む第一の構造体である蓋10を用意する工程及び第一の構造体にアンテナ電極11及びGND電極13を配置してアンテナを形成する工程である。温度検出素子実装工程ST2は、温度検出素子30がアンテナ電極11及びGND電極13に電気的に接続されるように、温度検出素子30を第一の構造体に固定する工程である。容器組み立て工程ST3は、第二の構造体である容器本体20を用意し、第二の構造体が温度検出素子30の側壁31a側に配置されるように、第一の構造体及び第二の構造体を接合して組み立てる工程である。
【0087】
図9は、ワイヤレス温度センサ1の第一の構造体組み立て工程ST1を説明するための図である。
【0088】
まず、図9(a)に示す様に、LTCCのセラミックグリーンシートを用いて第一の集合絶縁基板12bを形成し、Cuを用いて複数のアンテナビアホール11hを設ける。
【0089】
次に、図9(b)に示す様に、アンテナ電極形成工程として、図9(a)で作製した第一の集合絶縁基板12bにCuを用いた複数の導体パターンであるアンテナ電極層11を印刷形成し、各アンテナ電極層11と各アンテナビアホール11hとを接続する。
【0090】
次に、図9(c)に示す様に、LTCCのセラミックグリーンシートを用いて第二の集合絶縁基板12cを形成する。更に、ビアホール形成工程として、第二の集合絶縁基板12cに、アンテナ電極層11と接続するための複数のアンテナビアホール11h及びGND電極層13と接続するための複数のGNDビアホール13hを、Cuを用いて形成する。
【0091】
次に、図9(d)に示す様に、GND電極形成工程として、作製した第二の集合絶縁基板12cにCuを用いた複数の導体パターンであるGND電極層13を印刷形成する。GND電極層13のアンテナビアホール11hに跨る部分には、GNDパターン開口部13wを設け、GNDパターン開口部13w内にアンテナビアホール11hを形成する。更に、各GND電極層13と各GNDビアホール13hとを接続する。
【0092】
次に、図9(e)に示す様に、第二の集合絶縁基板12cの上部に第一の集合絶縁基板12bを重ね、各アンテナビアホール11hを接続する。次に、各アンテナビアホール11hにCuを用いたアンテナ接続パッド15aを、又、各GNDビアホール13hにCuを用いたGND接続パッド15bを、それぞれ形成する電極パッド形成工程を行う。そして、第一の集合絶縁基板12b及び第二の集合絶縁基板12cに適した約890℃で焼成する。
【0093】
第一の集合絶縁基板及び第二の集合絶縁基板の形成順は逆にしてもよい。すなわち、それぞれ表裏を返して印刷した後、第一の集合絶縁基板12bの上に第二の集合絶縁基板12cを重ねて焼成をしても良い。
【0094】
焼成後は、図9(f)に示す様に第一の構造体である集合蓋10bが得られる。ここで、各アンテナ電極層11と各アンテナビアホール11hと各アンテナ接続パッド15aとが一体となって導通し、各GND電極層13と各GNDビアホール13hと各GND接続パッド15bとが一体となって導通している。また、第一の集合絶縁基板12bと第二の集合絶縁基板12cとが一体となり、集合絶縁基板12aを形成する。
【0095】
上述した集合蓋10bにおける導体パターンは全てCuにより形成されるものとしたが、Cuに代えてAgにより形成されても良い。
【0096】
上述した焼成温度(約890℃)では、Ag及びCuのいずれについても、ワイヤレス温度センサのアンテナ特性に実質的な影響を及ぼす様な変化は生じない。
【0097】
図10は、ワイヤレス温度センサ1の温度検出素子実装工程ST2を説明するための図である。
【0098】
まず、図10(a)に示す様に、集合蓋10bの蓋実装面15mに複数の温度検出素子30を、チタン(Ti)とニッケル(Ni)との合金を用いた金属ろう付け法により実装する。なお、金属ろう付け法に用いる金属はこれらに限定されず、他の金属の組み合わせを用いても良い。
【0099】
次に、図10(b)に示す様に、各温度検出素子30の素子ボンディングパッド34a及び集合蓋10bのアンテナ接続パッド15aをボンディングワイヤ35aで接続する。同様に、各温度検出素子30の素子ボンディングパッド34b及び集合蓋10bのGND接続パッド15bをボンディングワイヤ35bで接続する。
【0100】
図10(c)は、温度検出素子30を集合蓋10bに接合する他の手法を示す断面図である。図10(c)に示す様に、温度検出素子30fの実装面には金バンプ36a及び36bが設けられている。
【0101】
詳述すると、素子ボンディングパッド34aは実装面の金バンプ36aと、素子ボンディングパッド34bは実装面の金バンプ36bと、それぞれ温度検出素子30fの内部に設けられた図示しないビアホールによって接続されている。また、金バンプ36aは実装面15mのアンテナ接続パッド15aと、金バンプ36bは実装面15mのGND接続パッド15bとは、それぞれ超音波法又は加圧法を用いて溶着されている。これら他の手法による製造工程、及びその製造物も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0102】
図10(d)は、温度検出素子30を集合蓋10bに接合する更に他の手法を示す断面図である。温度検出素子30の素子ボンディングパッド34a及び34bが形成された面は集合蓋10bに対向している。温度検出素子30は、素子ボンディングパッド34aがアンテナ接続パッド15aに金バンプ36aで接続され、且つ、素子ボンディングパッド34bがアンテナ接続パッド15bに金バンプ36bで接続されるように、集合蓋10bにフリップチップ実装されている。当該フリップチップ実装の構成については後述する。
【0103】
図11は、ワイヤレス温度センサ1の容器組み立て工程ST3を説明するための図である。
【0104】
まず、図11(a)に示す様に、セラミック材、ガラスフィラー、バインダー、及び溶剤等を混合攪拌させ、作成したHTCCのセラミックグリーンシートを用いて、本体底部集合基板21bを形成する。
【0105】
次に、図11(b)に示す様に、HTCCのセラミックグリーンシートを用いて本体側部集合基板22bを形成し、本体側部集合基板22bに複数の本体キャビティ20cを設ける。
【0106】
次に、図11(c)に示す様に、本体底部集合基板21bと本体側部集合基板22bとを重ねて約1610℃で高温焼成する。焼成後は、図11(d)に示す集合容器本体20bが得られる。
【0107】
次に、図11(e)及び(f)に示す様に、集合容器本体20b、及び、温度検出素子30を実装した集合蓋10bを、温度検出素子30の位置に本体キャビティ20cが合う様に重ねて接合し、集合ワイヤレス温度センサ1bを得る。これにより、温度検出素子30の側壁31a側に第二の構造体である集合容器本体20bが配置される。
【0108】
集合容器本体20b及び集合蓋10bは、例えば、金(Au)及び錫(Sn)を接着面に形成し、共晶接合する。AuとSnは高い熱伝導率を有するため、集合容器本体20b及び集合蓋10bは熱的に接続される。これにより、集合容器本体20b(容器本体20)が得た熱は、集合蓋10b(蓋10)を介してそれぞれの温度検出素子30に伝えることができる。なお、集合容器本体20b及び集合蓋10bを接合するための材料や接合方法は、これに限定されず、金属ろう付け法や、材料間を高温下で加圧融着する固相接合法等の他の接合方法を用いることもできる。
【0109】
図11(f)に示す様に、組み立てられた集合ワイヤレス温度センサ1bを裁断線dcに沿って分割し、図11(g)に示す個片化したワイヤレス温度センサ1を得る。なお、上述の例では、一度に三個のワイヤレス温度センサを製造する方法を述べたが、一度に製造するワイヤレス温度センサの数量を更に増やすことも可能である。
【0110】
ワイヤレス温度センサ1では、温度検出素子30は、絶縁基板12にアンテナ電極層11とGND電極層13とを積層して形成されたアンテナ(蓋10)に実装される。したがって、製造が容易で、且つ、信頼性が向上したワイヤレス温度センサを提供することができる。
【0111】
図12は、他のワイヤレス温度センサ2の構造を説明するための図である。
【0112】
ワイヤレス温度センサ2は、上述のワイヤレス温度センサ1の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ2について、ワイヤレス温度センサ1と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ1と同様の点については適宜説明を省略する。
【0113】
図12に示すワイヤレス温度センサ2と図1に示すワイヤレス温度センサ1との差異は、絶縁基板に設けられた熱伝導層の有無の点であり、他は同様である。
【0114】
図12に示す様に、ワイヤレス温度センサ2は、絶縁基板12の下部に設けられた熱伝導層17を更に有する。熱伝導層17は、略25mm×25mmの寸法を有しており、端部において容器本体20と熱的に接続している。熱伝導層17のアンテナ接続パッド15aの形成位置には、熱伝導層開口部17wが設けられている。しかしながら、熱伝導層17の形状及び寸法は、容器本体20と熱的に接続できる限り、任意に設計することができる。
【0115】
熱伝導層17は、Cuを用いて形成されるが、他の金属を用いてもよい。熱伝導層17は、GND接続パッド15bに電気的に接続されている。熱伝導層17及びGND接続パッド15bは、同一の材料によって一体的に形成してもよい。なお、図12では、熱伝導層17は、GND接続パッド15bではなく、アンテナ接続パッド15aに電気的に接続されていてもよい。
【0116】
温度検出素子30は熱伝導層17上に金属ろう付けされている。温度検出素子30の素子ボンディングパッド34aは、ボンディングワイヤ35aを介してアンテナ接続パッド15aに電気的に接続されている。温度検出素子30の素子ボンディングパッド34bは、ボンディングワイヤ35bを介してGND接続パッド15b(又は熱伝導層17)に電気的に接続されている。
【0117】
図13を用いて、ワイヤレス温度センサ2の第一の構造体組み立て工程を説明する。なお、ワイヤレス温度センサ2の製造方法のうち他の工程(温度検出素子実装工程及び容器組み立て工程)は、ワイヤレス温度センサ1と同様であるので、説明を省略する。
【0118】
まず、図13(a)に示す様に、第一の集合絶縁基板12bを形成する。第一の集合絶縁基板12bの形成については、ワイヤレス温度センサ1と同様であるので、説明は省略する。
【0119】
次に、図13(b)に示す様に、Cuを用いてアンテナ接続パッド15a及びGND接続パッド15b(熱伝導層17)を複数形成する。各熱伝導層17には、熱伝導層開口部17wが設けられている。
【0120】
次に、図13(c)に示す様に、アンテナビアホール11h及びGNDビアホール13hが形成されたLTCCのセラミックグリーンシートに、図13(b)に示すアンテナ接続パッド15a及びGND接続パッド15b(熱伝導層17)を貼付する。このとき、熱伝導層開口部17wがアンテナビアホール11hの位置に合う様に貼付する。更に、アンテナ接続パッド15a及びGND接続パッド15b(熱伝導層17)とアンテナビアホール11h及びGNDビアホール13hとを各々接続して、第二の集合絶縁基板12dを得る。
【0121】
次に、図13(d)に示す様に、作成した第二の集合絶縁基板12dに、Cuを用いてGND電極層13を印刷形成し、GND電極層13をGNDビアホール13hと接続する。なお、GND電極層13にはGNDパターン開口部13wが設けられ、GNDパターン開口部13w内にはアンテナビアホール11hが形成されている。
【0122】
次に、図13(e)に示す様に、図13(d)に示した第二の集合絶縁基板12dに、第一の集合絶縁基板12bを重ね、アンテナビアホール11h及びGNDビアホール13hを各々接続する。更に、これを約890℃で焼成し、図13(f)に示す集合蓋10Abを得る。
【0123】
ワイヤレス温度センサ2は、絶縁基板12の下部に設けられた熱伝導層17を有し、熱伝導層17は、容器本体20及び温度検出素子30のそれぞれと熱的に接続されている。そのため、容器本体20に伝わった測定対象物の熱は、容器本体20から熱伝導層17を介して温度検出素子30へ伝わることができる。したがって、熱が蓋10A内に散逸することを防ぎ、ワイヤレス温度センサ2としての熱応答性が更に向上する。
【0124】
ワイヤレス温度センサ2では、温度検出素子30がGND接続パッド15bに接続されているので、耐ノイズ性が向上し、温度センサとしての特性と信頼性が向上する。
【0125】
図14は、更に他のワイヤレス温度センサ3の構造を説明するための図である。
【0126】
ワイヤレス温度センサ3は上述のワイヤレス温度センサ2の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ3について、ワイヤレス温度センサ2と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ2と同様の点については適宜説明を省略する。
【0127】
図14に示すワイヤレス温度センサ3と図12に示すワイヤレス温度センサ2との差異は、GNDビアホールの位置の点であり、他は同様である。
【0128】
図14に示す様に、ワイヤレス温度センサ3では、温度検出素子30はGNDビアホール13hの上に固定されている。ここで、「GNDビアホール13hの上に固定されている」とは、図14に示す様に、温度検出素子30の略中心の位置が、GNDビアホール13hの略中心の位置に等しい場合を含むが、これに限られない。例えば、GNDビアホール13hの略中心の位置が温度検出素子30の領域に含まれる場合や、GNDビアホール13hの領域が温度検出素子30の領域に含まれる場合も、これに含まれる。
【0129】
GNDビアホール13hの位置は、蓋10Aの略中心付近に限らず、任意に配置することができる。温度検出素子30は、GNDビアホール13hの位置に合わせて、「GNDビアホール13hの上に固定」することができる。
【0130】
図15(a)はワイヤレス温度センサ2の、図示しない測定対象物からの熱の伝搬経路を模式的に表した断面図である。図15(b)はワイヤレス温度センサ3の、図示しない測定対象物からの熱の伝搬経路を模式的に表した断面図である。なお図15(a)及び図15(b)においては、説明のため断面を表すハッチングを省略している。
【0131】
図15(a)に示す様に、ワイヤレス温度センサ2では、Hに示す様に、図示しない測定対象物から容器本体20に伝わった熱が、容器本体20内部を移動し、やがて熱伝導層17へと伝わる。熱伝導層17へと伝わった熱は、熱伝導層17内部を温度検出素子30に向かって移動するが、当該熱の一部は、H1に示す様に、GNDビアホール13hを通じて絶縁基板12に移動する。これは、Cuで形成されたGNDビアホール13hの熱抵抗が低いためである。
【0132】
図15(b)に示す様に、ワイヤレス温度センサ3では、Hに示す様に、図示しない測定対象物から容器本体20に伝わった熱が、容器本体20内部を移動し、やがて熱伝導層17へと伝わる。熱伝導層17へと伝わった熱は、H2に示す様に、熱伝導層17内部を温度検出素子30に向かって移動する。このとき、温度検出素子30に至る経路の途中に、熱抵抗が低いGNDビアホール13hは存在しないため、熱の殆どが熱伝導層17を経由して温度検出素子30に流入する。
【0133】
このように、ワイヤレス温度センサ3では、温度検出素子30はGNDビアホール13hの上に固定されているため、ビアホールによって蓋10の内部に移動する熱量を減ずることが可能となる。したがって、ワイヤレス温度センサ3では、温度測定の応答性が向上し、且つ、熱の影響によるアンテナ特性の変動が低減される。
【0134】
図16は、更に他のワイヤレス温度センサ4の構造を説明するための図である。
【0135】
ワイヤレス温度センサ4は上述のワイヤレス温度センサ1の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ4について、ワイヤレス温度センサ1と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ1と同様の点については適宜説明を省略する。
【0136】
図16に示すワイヤレス温度センサ4と図1に示すワイヤレス温度センサ1との差異は、第一の構造体及び第二の構造体の形状の点であり、他は同様である。
【0137】
図16に示す様に、ワイヤレス温度センサ4の第一の構造体である容器本体10Bの絶縁基板12は、容器本体側部23sを備えた容器形状を成し、第二の構造体である蓋25は蓋形状を形成している。
【0138】
図17を用いて、ワイヤレス温度センサ4の製造方法について説明する。なお、ワイヤレス温度センサ1と同様の工程については、適宜説明を省略する。
【0139】
まず、図17(a)に示す様に、第一の集合絶縁基板12b及び第二の集合絶縁基板12cを作成し、第二の集合絶縁基板12cの上に第一の集合絶縁基板12bを重ねる。なお、当該工程は図8(a)〜(e)を用いて説明した工程と同様なので、説明は省略する。
【0140】
次に、図17(b)に示す様に、LTCCのセラミックグリーンシートを用いて第三の集合絶縁基板12eを形成し、第三の集合絶縁基板12eに複数の本体キャビティ20cを設ける。
【0141】
次に、図17(c)に示す様に、第三の集合絶縁基板12e、第一の集合絶縁基板12b、及び第二の集合絶縁基板12cを重ね、約890℃で焼成する。焼成により、図17(d)に示す様な、第一の集合絶縁基板12b、第二の集合絶縁基板12c、及び第三の集合絶縁基板12eが一体化した集合容器本体10Bbを得る。
【0142】
次に、図17(e)に示す様に、集合容器本体10Bbの各本体キャビティ20c内に温度検出素子30を実装し、ボンディングワイヤ35a及びボンディングワイヤ35bでアンテナ接続パッド15a及びGND接続パッド15bにそれぞれ接続して、集合容器本体10Bbの組み立てを完了する。
【0143】
次に、図17(f)に示す様に、HTCC材のセラミックグリーンシートを用いて本体底部集合基板25cを形成し、この本体底部集合基板25cと集合容器本体10BbとをAu又はSnを用いて共晶接合し、集合ワイヤレス温度センサ4bを形成する。更に、集合ワイヤレス温度センサ4bを一点鎖線で示した裁断線dcに沿って個片化する。個片化したワイヤレス温度センサ4の斜視図を図17(f)の下段に示す。
【0144】
ワイヤレス温度センサ4においては、第一の構造体を容器形状に、第二の構造体を蓋形状すなわち板状の形状とすることによって、材質をより広範に選択可能となる。例えば、本ワイヤレス温度センサを、更に高精度の温度測定に用いる場合には、蓋25として薄膜状の金属板(必要に応じ表面に酸化膜を設け絶縁基板とすることも可能)を用いて応答性を向上させることが可能である。また、蓋25を高分子材料で形成し容器本体10Bに接着することで、焼成工程を減らし、生産の効率化を図ることも可能となる。
【0145】
図18は、更に他のワイヤレス温度センサ5の構造を説明するための図である。
【0146】
ワイヤレス温度センサ5は、上述のワイヤレス温度センサ1の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ5について、ワイヤレス温度センサ1と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ5と同様の点については適宜説明を省略する。
【0147】
図18に示すワイヤレス温度センサ5と図1に示すワイヤレス温度センサ1との差異は、温度検出素子の実装方法の点、及び、温度検出素子と容器本体との接触の点であり、他は同様である。
【0148】
図18に示す様に、温度検出素子30は、櫛形電極32a、32b及び反射体33等が設けられた面を蓋10に対向させて、蓋10にフリップチップ実装されている。素子ボンディングパッド34aは金バンプ36aを介してアンテナ接続パッド15aに、素子ボンディングパッド34bは金バンプ36bを介してGND接続パッド15bに、それぞれ接続されている。
【0149】
図18に示す様に、ワイヤレス温度センサ5では、温度検出素子30の蓋10に対向した面とは反対側の面は、容器本体20に接触している。しかしながら、温度検出素子30と容器本体20とは互いに接触していなくとも、両者の間で直接の熱伝導が生じる程度に互いに近接していてもよい。温度検出素子30の容器本体20に接触又は近接する箇所、及び、近接の場合には温度検出素子30と容器本体20との距離は、両者の間で直接の熱伝導が生じる限り、任意に設計することができる。
【0150】
以下、図19を用いて、ワイヤレス温度センサ5の温度検出素子実装工程を説明する。なお、ワイヤレス温度センサ5の製造方法の他の工程(第一の構造体組み立て国定及び容器組み立て工程)は、ワイヤレス温度センサ1と同様であるので、説明を省略する。なお、容器本体20の内側の空間の厚みは、実装面15mから温度検出素子30の蓋10とは反対側の面までの高さに相当する長さにしておくものとする。以下では説明の便宜上、一個のワイヤレス温度センサの製造工程を説明するが、複数のワイヤレス温度センサを同時に作成した後に個片化する製造方法を用いることも可能である。
【0151】
まず、図19(a)に示す様に、温度検出素子30の素子ボンディングパッド34aに金バンプ36aを、温度検出素子30の素子ボンディングパッド34bに金バンプ36bを、それぞれ形成する。
【0152】
次に、図19(b)に示す様に、温度検出素子30を反転して、金バンプ36aがアンテナ接続パッド15aに、金バンプ36bがGND接続パッド15bに、それぞれ接触するように、温度検出素子30を蓋実装面15mに載置する。
【0153】
次に、超音波振動により、各ボンディングパッド(15a、15b、34a、34b)、及び金バンプ36a、36bを融着及び接合することにより、図19(c)に示す様に、温度検出素子30を蓋10に実装する。以上で、ワイヤレス温度センサ5における温度検出素子実装工程が終了する。
【0154】
ワイヤレス温度センサ5では、温度検出素子30と容器本体20とは、互いに接触し、又は、両者の間で直接の熱伝導が生じる程度に互いに近接している。そのため、測定対象物から容器本体20へと伝わった熱は、図18のH3に示す様に、容器本体20から温度検出素子30へ直接移動することが可能である。したがって、ワイヤレス温度センサにおける温度測定の応答性が向上する。
【0155】
図20は、更に他のワイヤレス温度センサ6の構造を説明するための図であり、図21は、ワイヤレス温度センサ6を図20の方向6Dから観た図である。
【0156】
ワイヤレス温度センサ6は、上述のワイヤレス温度センサ5の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ6について、ワイヤレス温度センサ5と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ5と同様の点については適宜説明を省略する。
【0157】
図20に示すワイヤレス温度センサ6と図18に示すワイヤレス温度センサ5との差異は、容器本体の蓋に接合される側と反対側に設けられた開口部の有無の点であり、他は同様である。
【0158】
ワイヤレス温度センサ6の容器本体20Aは、蓋10に対向する面とは反対側に開口部20AWを有している。そのため、図21に示す様に温度検出素子30は外部に露出している。
【0159】
開口部20AWの形状は、矩形状に限らず、円形、多角形、又は不規則な形等の任意の形状であってよい。容器本体20Aは、例えば、図11(a)を用いて説明した本体底部集合基板21bを用いずに容器本体を作成することにより得ることができるが、他の方法によって作成することも可能である。
【0160】
温度検出素子30の縁には、温度検出素子30と蓋10との間を埋める様に封止樹脂70が設けられており、蓋10、温度検出素子30、及び封止樹脂70によって気密封止された空間6Sが形成されている。空間6Sは、櫛形電極32a、32b及び反射体33をその内部に含んでいる。
【0161】
ワイヤレス温度センサ6では、容器本体20Aの蓋10に接合される側と反対側に開口部20AWが設けられ、温度検出素子30が外部に露出しているため、温度測定時に、温度検出素子30を測定対象物の近くに配置することが可能となる。したがって、測定対象物の熱が温度検出素子30に伝わりやすくなり、ワイヤレス温度センサの熱応答性が向上する。
【0162】
ワイヤレス温度センサ6では、櫛形電極32a、32b及び反射体33は、封止樹脂70によって気密封止された空間6Sに含まれるため、外部の気体又は流体は空間6Sに侵入することができない。したがって、ワイヤレス温度センサのアンテナ特性の安定性が向上する。なお、空間6Sは真空であってもよく、空間6Sが真空である場合、ワイヤレス温度センサのアンテナ特性の安定性は更に向上する。
【0163】
図22は、更に他のワイヤレス温度センサ7の構造を説明するための図であり、図23は、ワイヤレス温度センサ7を図22の方向7Dから観た図である。
【0164】
ワイヤレス温度センサ7は、上述のワイヤレス温度センサ6の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ7について、ワイヤレス温度センサ6と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ6と同様の点については適宜説明を省略する。
【0165】
図22に示す様に、ワイヤレス温度センサ7は容器本体20Aそのものを有さず、代わりに封止樹脂71が第二の構造体となる。封止樹脂71は、温度検出素子30の側壁31aを覆う様に形成され、温度検出素子30の側壁31a側に配置されている。
【0166】
ワイヤレス温度センサ7は容器本体を有さないため、温度検出素子30を測定対象物に直接取り付けることが容易となり、ワイヤレス温度センサの熱応答性が更に向上する。
【0167】
図24は、更に他のワイヤレス温度センサ8の構造を説明するための図である。
【0168】
ワイヤレス温度センサ8は、上述のワイヤレス温度センサ5の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ8について、ワイヤレス温度センサ5と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ5と同様の点については適宜説明を省略する。
【0169】
図24に示すワイヤレス温度センサ8と図18に示すワイヤレス温度センサ5との差異は、熱伝導体の有無の点であり、他は同様である。
【0170】
図24に示す様に、ワイヤレス温度センサ8は、温度検出素子30と容器本体20との間に配置された熱伝導体60を更に有している。熱伝導体60は、温度検出素子30及び容器本体20のいずれにも熱的に接続されており、例えば、高熱伝導性の樹脂により接着されている。あるいは、熱伝導体60は、温度検出素子30及び容器本体20に接着されていなくとも、これらに挟持されていてもよい。
【0171】
熱伝導体60は、高い熱伝導率を有する銀ペーストによって形成されている。しかしながら、熱伝導体60は、銀ペーストに限らず、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、セラミック材、金属、及び耐熱樹脂等の高い熱伝導率を有する物質によって形成されてもよい。
【0172】
更に、熱伝導体60は、蓋10及び容器本体20の気密性を保つために熱膨張率が小さいことが好ましい。
【0173】
以下、図25を用いて、ワイヤレス温度センサ8の温度検出素子実装及び全体組み立て工程を説明する。なお、ワイヤレス温度センサ8の第一の構造体組み立て工程は、ワイヤレス温度センサ1と同様であるので、説明を省略する。
【0174】
まず、図25(a)に示す様に、温度検出素子30を蓋10にフリップチップ実装する。なお、当該工程は、図19(a)〜(d)を用いて上述した工程と同様であるので、説明を省略する。
【0175】
次に、図25(b)に示す様に、温度検出素子30の蓋10とは反対側の面に、バインダーに銀粒子を混入したものを焼成して形成した銀ペーストである熱伝導体60を、高熱伝導性の樹脂を用いて接着する。
【0176】
次に、図25(c)に示す様に、温度検出素子30の位置に本体キャビティ20cが合う様に、容器本体20を温度検出素子30が実装された蓋10に重ねて接合し、図20に示すワイヤレス温度センサ8を得る。なお、接合方法は、図11(e)及び(f)を用いて上述した方法と同様であるので、説明を省略する。
【0177】
なお、上述の方法とは異なり、容器本体20の底に熱伝導体60を接着した後、熱伝導体60が温度検出素子30に接する様に、蓋10及び容器本体20を重ねて接合し、ワイヤレス温度センサ8を得ても良い。
【0178】
ワイヤレス温度センサ8では、熱伝導体60が温度検出素子30と容器本体20との間に配置されているため、容器本体20に伝わった測定対象物の熱は熱伝導体60を介して温度検出素子30へ伝わる。したがって、測定対象物の熱が温度検出素子30に伝わりやすくなり、ワイヤレス温度センサの熱応答性が向上する。
【0179】
図26は、更に他のワイヤレス温度センサ9の構造を説明するための図である。
【0180】
ワイヤレス温度センサ9は、上述のワイヤレス温度センサ5の変形例である。以下では、ワイヤレス温度センサ9について、ワイヤレス温度センサ5と異なる点について説明し、ワイヤレス温度センサ5と同様の点については適宜説明を省略する。
【0181】
図26に示すワイヤレス温度センサ9と図17に示すワイヤレス温度センサ5との差異は、容器本体の構造の点であり、他は同様である。
【0182】
ワイヤレス温度センサ9の容器本体20Bは、ワイヤレス温度センサ1の容器本体20と同様に、HTCCであるAl23で形成される。しかしながら、容器本体20Bは、容器本体20とは異なり、気体又は流体を通過させることが可能な構造であるポーラス(多孔質)構造を有する。例えば、容器本体20Bが金属によって形成される場合には、気体又は流体を通過させることが可能な構造としてメッシュ構造を採用してもよい。このように、容器本体20Bの構造として、容器本体20Bを形成する物質に合わせて、気体又は流体を通過させることが可能な構造を設計することができる。
【0183】
ワイヤレス温度センサ9の温度検出素子30の縁には、温度検出素子30と蓋10との間を埋める様に封止樹脂70が設けられており、蓋10、温度検出素子30、及び封止樹脂70によって気密封止された空間9Sが形成されている。空間9Sは、櫛形電極32a、32b及び反射体33をその内部に含んでいる。
【0184】
ワイヤレス温度センサ9は、容器本体20Bが気体又は流体を通過させる構造を有している。その為、図26のH4に示す様に、ワイヤレス温度センサ9の周囲の気体又は流体は、容器本体20Bを通過して蓋10及び容器本体20Bに囲まれた空間(空間9Sを除く)に出入りすることが可能となる。したがって、温度検出素子30が当該気体又は流体の温度を直接検出することが可能となるため、ワイヤレス温度センサ9により、環境温度(雰囲気温度)をより正確に測定することが可能となる。
【0185】
ワイヤレス温度センサ9では、櫛形電極32a、32b及び反射体33は、封止樹脂70によって気密封止された空間9Sに含まれる。そのため、容器本体20Bを通過して蓋10及び容器本体20Bに囲まれた空間に流入する気体又は流体は、空間9Sに侵入することができない。したがって、ワイヤレス温度センサのアンテナ特性の安定性が向上する。なお、空間9Sは真空であってもよく、空間9Sが真空である場合、ワイヤレス温度センサのアンテナ特性の安定性が更に向上する。
【0186】
上述したワイヤレス温度センサ1〜9は、温度測定のリモートセンシングを必要とする装置に適用可能である。
【0187】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であり、実施形態を適宜組み合わせてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0188】
1、1A〜1C、2、3、4、5、6、7、8、9 ワイヤレス温度センサ
1b 集合ワイヤレス温度センサ
10、10A、25 蓋
10b、10Ab、10Bb 集合蓋
11 アンテナ電極
11h アンテナビアホール
12 絶縁基板
12b 第一の集合絶縁基板
12c、12d 第二の集合絶縁基板
12e 第三の集合絶縁基板
13 GND電極
13h GNDビアホール
13w GNDパターン開口部
15a アンテナ接続パッド
15b GND接続パッド
15m、15ma 蓋実装面
17 熱伝導層
17w 熱伝導層開口部
20、10B 容器本体
20b 集合容器本体
20c 本体キャビティ
21b、25c 本体底部集合基板
22b 本体側部集合基板
23s 容器本体側部
30、30f 温度検出素子
31 弾性表面波素子基板
31a 側壁
32a,32b 櫛形電極
33 反射体
34a、34b 素子ボンディングパッド
35 ボンディングワイヤ
36a、36b 金バンプ
40 温度表示装置
50、50A、50B、50C、50D 容器
70、71 封止樹脂
101、121 容器本体
107、125 蓋
104、123 振動板
130 溝
102、103、122 外部端子
105、106、124、128 リード線
108、126 コイル
Tw 励起弾性表面波
Rw 反射弾性表面波
Rwp (反射弾性表面波の)強度
T、T1、T2、T3 時刻
d、d1、d2、d3 電極間距離
f1,f2,f3 高周波信号
t 伝搬時間
ST1 第一の構造体組み立て工程
ST2 温度検出素子実装工程
ST3 容器組み立て工程
dc 裁断線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27