(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541381
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ガス検知器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/16 20060101AFI20190628BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20190628BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20190628BHJP
G01N 27/404 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
G01N27/16 Z
G01N27/26 371A
G01N27/416 331
G01N27/404 341Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-49517(P2015-49517)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-170020(P2016-170020A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】東 慎士
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−257161(JP,A)
【文献】
特開2009−244255(JP,A)
【文献】
特開2006−118939(JP,A)
【文献】
特開2003−262611(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0092063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠駆動式センサおよび連続駆動式センサの少なくとも二つ以上のセンサと、
直流電圧を前記連続駆動式センサに出力できる基準電圧部と、各センサの出力値および前記基準電圧部の電圧値を認識できる制御部と、各センサの出力値を表示できる表示部と、を備え、
前記制御部および前記表示部を備えたメイン基板と、
前記間欠駆動式センサ、前記連続駆動式センサおよび前記基準電圧部を備えたセンサ基板と、を備え、
前記メイン基板および前記センサ基板がケーブルコネクタを介して電気的に接続してあり、
前記制御部は、前記間欠駆動式センサを通電したときの前記制御部において認識された前記基準電圧部の電圧値、および、前記間欠駆動式センサに通電しないときの前記制御部において認識された前記基準電圧部の電圧値の差分電圧値を算出し、さらに前記連続駆動式センサから得た出力値として前記制御部において認識された電圧値に前記差分電圧値を加える或いは差引して反映させた補正値を前記表示部に表示させるように制御するガス検知器。
【請求項2】
前記制御部は、前記間欠駆動式センサを通電したときに前記補正値を前記表示部に表示させ、前記間欠駆動式センサに通電しないときに前記連続駆動式センサから得た出力値として前記制御部において認識された電圧値を前記表示部に表示させる請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記間欠駆動式センサが接触燃焼式ガスセンサであり、前記連続駆動式センサが定電位電解式ガスセンサである請求項1または2に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠駆動式センサおよび連続駆動式センサの少なくとも二つ以上のセンサを備えたガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガス漏洩警報やCOガス漏洩警報の機能を有する複合型のガス検知器が知られていた。このガス検知器では、可燃性ガス漏洩警報は例えば接触燃焼式ガスセンサによる出力に基づいており、COガス漏洩警報は例えば定電位電解式ガスセンサによる出力に基づいて行っていた。
【0003】
接触燃焼型ガスセンサは、雰囲気中の酸素と可燃性ガスとの酸化反応による発熱をヒータの抵抗変化として可燃性ガスの濃度を検出する。通常、現場での使用の便を考慮して駆動電力を電池とするため、検出部のヒータにおける消費電力を節減するべく間欠駆動式とする場合があった。
【0004】
定電位電解式ガスセンサは、周囲の環境変化に対して反応極の電位を制御して一定に維持することによって、反応極と対極との間に周囲の環境変化に相当する電流を生じさせる。そのため、通常、定電位電解式ガスセンサの駆動方式は連続駆動式としていた。この場合、ベースを浮かすことでマイナス方向のセンサ出力にも対応できるように、直流電圧を安定して出力できる基準電圧ICを定電位電解式ガスセンサに接続して反応極の電位を制御して一定に維持していた。
【0005】
尚、本発明における従来技術となる上述したガス検知器は、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなガス検知器において、マイコン等のガス検知動作に係る機能部材をメイン基板に搭載し、上述した複数のセンサをセンサ基板に搭載し、これら基板どうしをリード線やフレキシブルケーブルによってコネクタを介して電気的に接続する場合があった。
【0007】
この場合、間欠駆動式の接触燃焼型ガスセンサに対して間歇的に電流を流したときには、リード線、フレキシブルケーブルやコネクタ等の接触部分において接触抵抗が発生し、その影響でメイン基板のグランド電位およびセンサ基板のグランド電位に電位差が生じる虞があった。
【0008】
このような電位差が生じると、接触燃焼型ガスセンサに対して間歇的に電流を流す度に、接触燃焼型ガスセンサと同じセンサ基板に搭載してある連続駆動式の定電位電解式ガスセンサの見かけ上の出力値に影響を及ぼす虞があった。尚、このような影響は、センサ基板上に搭載した基準電圧ICの出力にも生じている。
【0009】
従って、本発明の目的は、間欠駆動式センサの間欠駆動の度に、連続駆動式センサの出力値に影響を及ぼすのを未然に防止できるガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知器の第一特徴構成は、間欠駆動式センサおよび連続駆動式センサの少なくとも二つ以上のセンサと、直流電圧を
前記連続駆動式センサに出力できる基準電圧部と、各センサの出力値および前記基準電圧部の電圧値を認識できる制御部と、各センサの出力値を表示できる表示部と、を備え、
前記制御部および前記表示部を備えたメイン基板と、前記間欠駆動式センサ、前記連続駆動式センサおよび前記基準電圧部を備えたセンサ基板と、を備え、前記メイン基板および前記センサ基板がケーブルコネクタを介して電気的に接続してあり、前記制御部は、前記間欠駆動式センサを通電したときの
前記制御部において認識された前記基準電圧部の電圧値、および、前記間欠駆動式センサに通電しないときの
前記制御部において認識された前記基準電圧部の電圧値の差分電圧値を算出し、さらに前記連続駆動式センサから得た出力値
として前記制御部において認識された電圧値に前記差分電圧値を
加える或いは差引して反映させた補正値を前記表示部に表示させるように制御する点にある。
【0011】
本構成によれば、制御部によって、上述した接触抵抗の影響で生じた電位差である差分電圧値を加える或いは差引して調節した補正値を演算し、当該補正値を表示部によって表示できる。これにより、センサ出力の変動を見かけ上無くして、接触抵抗の影響を排除した値を表示部に表示することができる。そのため、本発明のガス検知器であれば、間欠駆動式センサの間欠駆動の度に、連続駆動式センサの出力値に影響を及ぼすのを未然に防止できる。
【0012】
本発明に係るガス検知器の第二特徴構成は、前記制御部は、前記間欠駆動式センサを通電したときに前記補正値を前記表示部に表示させ、前記間欠駆動式センサに通電しないときに前記連続駆動式センサから得た出力値
として前記制御部において認識された電圧値を前記表示部に表示させる点にある。
【0013】
本構成によれば、補正値と連続駆動式センサから得た出力値とを、間欠駆動式センサの通電の有無によって切り替えて表示することができる。これにより、常に間欠駆動式センサの間欠駆動の影響を受け難い値を表示できるガス検知器とすることができる。
【0014】
本発明に係るガス検知器の第三特徴構成は、前記間欠駆動式センサを接触燃焼式ガスセンサとし、前記連続駆動式センサを定電位電解式ガスセンサとした点にある。
【0015】
本構成によれば、接触燃焼式ガスセンサによってメタン、イソブタン等の可燃性ガスの濃度を測定することができ、定電位電解式ガスセンサによって一酸化炭素や硫化水素など毒性ガスを測定することができるため、複合型のガス検知器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】接触燃焼型ガスセンサ(間欠駆動式)オン時の電圧レベルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示したように本発明のガス検知器Xは、間欠駆動式センサ10および連続駆動式センサ20の少なくとも二つ以上のセンサSと、直流電圧を安定して出力できる基準電圧部30と、各センサSの出力値および基準電圧部30の電圧値を認識できる制御部40と、各センサSの出力値を表示できる表示部50と、を備える。
【0018】
本実施形態では、上述した各部材を、メイン基板B1およびセンサ基板B2の何れかに搭載した場合について説明する。このように複数の基板に各部材を分散して搭載することで、ガス検知器Xの内部の設計の自由度が増す。これら基板B1,B2は何れも平板状の基板とすることができ、リード線、フラットケーブルおよびフレキシブルケーブル等のケーブルC1によってコネクタC2を介して電気的に接続してある。ケーブルC1は複数設けることができる。本実施形態では二本のケーブルC1を設けた場合について説明する。
【0019】
メイン基板B1は、例えばガス検知動作に係る機能部材(制御部40,表示部50)を搭載するのがよい。表示部50は、各センサSの出力値を表示できる態様であれば、デジタル式やアナログ式等の表示手段を使用することができる。また、センサ基板B2は、各センサS(間欠駆動式センサ10,連続駆動式センサ20)や基準電圧部30を搭載するのがよい。
【0020】
本実施形態では、間欠駆動式センサを接触燃焼式ガスセンサとし、連続駆動式センサを定電位電解式ガスセンサとした場合について説明するが、これらに限定されるものではない。
【0021】
接触燃焼式ガスセンサに備えられている接触燃焼式ガス検知素子は、アルミナ等の金属酸化物焼結体に白金等の貴金属触媒を担持したガス感応部としての燃焼触媒部を、白金等の貴金属線に設けてあり、燃焼触媒部において検知対象となる可燃性ガスを貴金属触媒と接触・燃焼させることで、燃焼の際に生じる温度変化を貴金属線の抵抗値の変化として検出する。可燃性ガスの燃焼熱は可燃性ガスの濃度に比例し、LELまでほぼ直線であり、貴金属線の抵抗値は燃焼熱に比例するため、可燃性ガスの燃焼による貴金属線の抵抗の変化値を測定することによってメタン、イソブタン等の可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0022】
接触燃焼型ガスセンサは、雰囲気中の酸素と可燃性ガスとの酸化反応による発熱をヒータの抵抗変化として可燃性ガスの濃度を検出する。通常、現場での使用の便を考慮して駆動電力を電池とするため、検出部のヒータでの消費電力を節減するべく間欠駆動式、例えば8秒の周期で2秒間通電することが行われている。
【0023】
定電位電解式ガスセンサは、電極を電解液が密に収容される電解槽の電解液収容部内に臨んで設けて構成してあり、例えば電極としては、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる反応極、当該反応極に対する対極、反応極の電位を制御する参照極の3電極を設けてあり、また、これらが接触自在な電解液を収容した電解槽と、各電極の電位を設定するポテンシオスタット回路等を接続してある。
【0024】
定電位電解式ガスセンサは、周囲の環境変化に対して反応極の電位を制御して一定に維持することによって、反応極と対極との間に周囲の環境変化に相当する電流を生じさせる。そのため、通常、定電位電解式ガスセンサの駆動方式は連続駆動式としている。この場合、直流電圧を安定して出力できる基準電圧部30を定電位電解式ガスセンサに接続して反応極の電位を制御して一定に維持している。そして、反応極の電位が変化せず、またガス種によって酸化還元電位が異なることを利用することにより、ポテンシオスタット回路の設定電位によってはガスの選択的な検知が可能になる。
【0025】
定電位電解式ガスセンサは非常に高感度なセンサで、ガスの選択性に優れており、一酸化炭素や硫化水素など毒性ガスを測定することができる。
【0026】
本発明のガス検知器Xは、間欠駆動式センサ10および連続駆動式センサ20の少なくとも二つ以上のセンサSを備えることが可能であるため、上述したセンサSの他、さらに隔膜ガルバニ電池式センサ等のセンサSを搭載してもよい。隔膜ガルバニ電池式センサは、2つの電極(貴金属、卑金属)と隔膜、電解液で構成された電池の反応物質として酸素を利用した時に生ずる反応電流を測定するものであり、酸素ガス等を検知することができる。
【0027】
基準電圧部30は、直流電圧を安定して出力できる基準電圧ICを使用することができる。このような基準電圧ICとしてツェナーダイオードを用いることが可能であるが、この代わりに他の原理(例えばバンドキャップリファレンス等)による基準電圧ICを用いることもできる。また、ガス検知器Xの電源部(図外)は電池を用いるとよいが、これに限られるものではない。電池を用いることによって、ガス検知器Xを小型化することができる。
【0028】
制御部40は、各センサSの出力値および基準電圧部30の電圧値を認識できる態様であれば特に限定されるものではなく、例えば後述する演算手段や記憶手段を備えたマイコン等を使用することができる。
【0029】
制御部40は、間欠駆動式センサ10を通電したときの基準電圧部30の電圧値、および、間欠駆動式センサ10に通電しないときの基準電圧部30の電圧値の差分電圧値を算出し、さらに連続駆動式センサ20から得た出力値に差分電圧値を反映させた補正値Rを表示部50に表示させるように制御する(
図2)。
【0030】
制御部40は、差分電圧値を演算する演算手段を備えるとよい。また、当該演算手段では、各センサSが検知した出力に基づき、被検知ガスの濃度を換算することができる。当該演算手段は、上記の演算や換算ができる公知の手段を使用すればよい。表示部50は、演算手段で算出した結果を、各センサSから得た出力値として表示することができる。さらに表示部50は、このような出力値に差分電圧値を反映させた補正値Rを表示することができる。
【0031】
間欠駆動式センサ10を通電したときの基準電圧部30の電圧値、および、間欠駆動式センサ10に通電しないときの基準電圧部30の電圧値は、それぞれ制御部40に備えた記憶手段に記憶しておけばよい。差分電圧値を求める場合は、このように記憶したそれぞれの電圧値を呼び出して演算手段により演算する。記憶手段は、複数種類の電圧値(電圧信号)を記憶できるメモリやストレージであれば、どのような態様でもよい。
【0032】
また、制御部40における演算手段が警報レベル以上の被検知ガス濃度を継続して検知した場合、警報信号を警報手段(図外)に送って当該警報手段により警報を発するように制御することができる。警報手段では、選択された警報音信号に基づいて音声により警報を発する。警報手段はスピーカおよびその駆動回路で構成され、警報音信号を警報音に変換して出力する。
【0033】
上述した差分電圧値を反映させた補正値Rは、制御部40における演算手段によって連続駆動式センサ20から得た出力値に、当該差分電圧値を加える或いは差引して演算することができる。
【0034】
間欠駆動式の接触燃焼型ガスセンサに対して間歇的に電流を流したときには、ケーブルC1やコネクタC2の接触部分において接触抵抗が発生し、その影響でメイン基板B1のグランド電位MGおよびセンサ基板B2のグランド電位SGに電位差PDが生じる虞があった(
図2)。このような電位差PDが生じると、接触燃焼型ガスセンサに対して間歇的に電流を流す度に、接触燃焼型ガスセンサと同じセンサ基板B2に搭載してある連続駆動式の定電位電解式ガスセンサの見かけ上の出力値(表示部50の表示値)が変動することがあった。このとき、基準電圧部30の出力の変動は、メイン基板B1のグランド電位MGおよびセンサ基板B2のグランド電位SGの電位差PDと同じ電位となる。
【0035】
本発明では、制御部40は、間欠駆動式センサ10を通電したときの基準電圧部30の電圧値、および、間欠駆動式センサ10に通電しないときの基準電圧部30の電圧値の差分電圧値を算出する。この差分電圧値は、上記電位差PDと同じ電位である。よって、このように差分電圧値を算出し、連続駆動式センサ20から得た出力値に差分電圧値を反映させた補正値Rを表示部50に表示させるように制御部40が制御すれば、上述した接触抵抗の影響で生じた電位差PDである差分電圧値を加える或いは差引して調節した補正値Rを表示できる。これにより、センサ出力の変動を見かけ上無くして、接触抵抗の影響を排除した値を表示部50に表示することができる。そのため、本発明のガス検知器Xであれば、間欠駆動式センサ10の間欠駆動の度に、連続駆動式センサ20の出力値に影響を及ぼすのを未然に防止できる。
【0036】
具体的には、上述した接触抵抗の影響でメイン基板B1のグランド電位MGがセンサ基板B2のグランド電位SGの方より高くなった場合(
図2)、連続駆動式センサ20から得た出力値に差分電圧値PDを差引きした値を補正値Rとする。或いは、接触抵抗の影響でメイン基板B1のグランド電位がセンサ基板B2のグランド電位の方より低くなった場合、連続駆動式センサ20から得た出力値に差分電圧値PDを加えた値を補正値Rとする。
【0037】
制御部40は、間欠駆動式センサ10を通電したときに補正値Rを表示部50に表示させ、間欠駆動式センサ10に通電しないときに連続駆動式センサ20から得た出力値を表示部50に表示させるように制御することができる。
【0038】
このように制御することにより、間欠駆動式センサ10を通電したときに補正値Rを表示して接触抵抗の影響を排除した値を表示し、間欠駆動式センサ10に通電しないときに連続駆動式センサ20から得た出力値に切り替えて表示することができる。これにより、常に間欠駆動式センサ10の間欠駆動の影響を受け難い値を表示できるガス検知器Xとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、間欠駆動式センサおよび連続駆動式センサの少なくとも二つ以上のセンサを備えたガス検知器に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
X ガス検知器
S センサ
10 間欠駆動式センサ
20 連続駆動式センサ
30 基準電圧部
40 制御部
50 表示部