(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の代表的な実施形態における水処理装置の構成を
図1〜
図13を参照して説明する。なお、本実施形態は、一般家庭、集合住宅等から排出される原水(「排水」ないし「被処理水」ともいう)を水処理領域に受け入れて処理する水処理装置について説明するものである。
【0016】
図1に示すように、水処埋装置100は、当該水処埋装置100の躯体(外郭)を構成する槽状の処理槽本体101を有する。
図1および
図3に示すように、処理槽本体101は、平面視で略矩形状に形成され、互いに平行な側壁101a,101bと、互いに平行な側壁101c,101dと、底壁101eおよび上壁101fによって構成される。この水処埋装置100は、屎尿と併せて生活雑排水(生活系の汚水)を処理する構成の水処理装置である。この処理槽本体101が、本発明における「槽本体」に対応する実施構成例である。
【0017】
図1に示すように、処理槽本体101は、流入管102、流出管103及びマンホール部104を備えている。流入管102は、被処理水(原水)を処理槽本体101の内部空間に導入するための開口部分として構成される。流出管103は、処理後の水を処理槽本体101の内部空間から導出するための開口部分として構成される。マンホール部104は、入槽用、内部点検用、清掃用のマンホールが形成された部位として構成される。
【0018】
なお、処理槽本体101のうちのマンホール部104側(上壁101f側)が槽上方または槽上部と規定され、その反対側(底壁101e側)が槽下方、槽下部または槽底部と規定される。また、処理槽本体101のうちの流入管102側(側壁101c側)が上流側と規定され、また流出管103側(側壁101d側)が下流側と規定される。また、
図1において、マンホール部104の延在面に沿った方向が水平方向(槽前後方向とも称す)と規定され、水平方向と交差する方向が鉛直方向(槽上下方向とも称す)と規定される。また、
図1の紙面に垂直な方向(槽前後方向と槽上下方向に直交する方向、
図3における上下方向)が槽左右方向と規定される。なお、
図1〜
図6における矢印は、被処理水の流れを示している。
【0019】
図1に示すように、処理槽本体101の内部空間には、流入管102を通じて受け入れた原水を貯留しつつ所定の水処理がなされる水処理領域が形成されている。この水処理領域には、沈殿分離槽120、清掃孔130、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160及び消毒槽170が形成されている。
図2に示すように、流入管102を通じて処理槽本体101(流入バッフル110)に流入した排水は、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160及び消毒槽170において順次処埋され、処理後の水は流出管103を通じて処理槽本体101の外部へと流出される。また、沈殿分離槽120と清掃孔130の間、および嫌気処理槽140と好気処理槽150の間では、被処理水が循環するように構成されている。なお、水処理装置100は、処理槽本体101外へと流出した水をそのまま放流する浄化槽として構成されてもよいし、或いは処理槽本体101外へと流出した水をトイレや散水用の水として再利用する水再利用装置として構成されてもよい。なお、
図1、および
図4〜
図6においては、被処理水の水面位置が示されているが、この水面位置は説明の便宜上図示した例示である。すなわち、処理槽本体101に流入する排水の量、および/または消毒槽170に移送される被処理水の量によって、図示された水面位置よりも上方または下方に被処理水の水面位置が変動することがある。
【0020】
流入バッフル110は、水処理領域のうちの最上流領域を構成している。流入管102から流入バッフル110に流入した排水は、沈殿分離槽120に移流される。沈殿分離槽120に流入した被処理水は固液分離処理され、被処理水から分離された固形成分は沈殿汚泥として沈殿分離槽120の底部に堆積される。流入バッフル110に排水が流入することで、排水が間接的に沈殿分離槽120に流入され、沈殿分離槽120おける沈殿した汚泥等の撹拌が抑制される。
【0021】
図1および
図3に示すように、沈殿分離槽120とその下流側の嫌気処理槽140の間には槽上下方向に延在する隔壁105が設けられている。この隔壁105は、側壁101a,101bおよび底壁101eに取り付けられる。
図4に示すように、隔壁105における上方領域には、沈殿分離槽120と嫌気処理槽140を連通する左右の開口部105a,105bが形成されている。
図3および
図4に示すように、隔壁105には、沈殿分離槽120と清掃孔130を区画するための区画壁131が取り付けられている。この区画壁131は、槽左右方向に関して、側壁101a,101bから離間して設けられ、槽前後方向に関して、側壁101c,101dから離間して設けられている。この区画壁131によって、清掃孔130が、槽左右方向に関する隔壁105の中央領域に対応して設定される。すなわち、清掃孔130は、処理槽本体101の槽左右方向に関する中心部を含み、
図3に示すように当該中心部に対して対称な形状を有する。換言すると、清掃孔130は、処理槽本体101の槽左右方向に関する中心と通過し、槽前後方向に延在する仮想平面に対して対称に形成されている。この清掃孔130に対して、開口部105a,105bは、清掃孔130の左右にそれぞれ設けられている。
【0022】
図1および
図4に示すように、区画壁131の下端部は、処理槽本体101の底部(底壁101e)から離間するように配置されており、これにより沈殿分離槽120の下方領域は、清掃孔130に連通している。すなわち、区画壁131の下端部は、清掃孔130の下端開口130aとして形成されており、下端開口130aは、底壁101eから上方に離間するように形成される。なお、区画壁131の上端部の清掃孔130の上端開口130bは、上壁101fから下方に離間するように形成される。清掃孔130には、ドラフトチューブとして形成された長尺状かつ網目状の濾材132および濾材132を貫通する第1散気管190が設けられている。具体的には、濾材132は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなる線材が立体的に絡まる網様体であり、全体として長尺状の円筒形状に形成され、中心部に第1散気管190が貫通する貫通孔が設けられている。
図4に示すように、濾材132は、区画壁131から清掃孔130の内側に向かって突出するリブ131aによって槽上下方向および槽左右方向の移動が規制されている。なお、濾材132は、区画壁131と隔壁105によって槽前後方向の移動が規制されている。第1散気管190は、
図4に示すように、清掃孔130において濾材132が配置されている側(
図4の右側)の領域に配置されている。第1散気管190の下端部から下端開口130aを介して清掃孔130内に空気が供給されると、清掃孔130の右側の領域には上向流が発生し、清掃孔130の左側の領域には下向流が発生する。これにより、清掃孔130内に旋回流が発生し、清掃孔130内の被処理水が撹拌される。
【0023】
第1散気管190から散気された空気は、濾材132を通過して細分化される。沈殿分離槽120の底部に堆積した汚泥は、旋回流(上向流および下向流)によって被処理水とともに清掃孔130内を循環する。清掃孔130において、汚泥は、細分化された空気によって効率的に好気処理される。水処理領域における水位の変動により、清掃孔130内の汚泥と沈殿分離槽120の底部の汚泥は往来し、これにより沈殿分離槽120内に気泡を含む汚泥が供給される。その結果、沈殿分離槽120においては、気泡を含む汚泥が浮上してスカム化し、高濃度に汚泥が貯留される。
【0024】
図3に示すように、沈殿分離槽120内の被処理水は、左右の開口部105a,105bを通じて、下流側の嫌気処理槽140に移送される。
【0025】
図1、
図3および
図5に示すように、嫌気処理槽140は、第1嫌気室141、第2嫌気室142を備えている。嫌気処理槽140とその下流側の好気処理槽150の間には槽上下方向および槽左右方向に延在する隔壁106が設けられている。この隔壁106は、側壁101a,101bおよび底壁101eに取り付けられる。これにより、隔壁106は、水処理装置100の水処理領域における槽前後方向(
図1、
図3の左右方向)に関して、前側(
図1、
図3の左側)の嫌気処理槽140等の上流側処理領域と後側(
図1、
図3の右側)の好気処理槽150等の下流側処理領域の複数の処理領域に区画する。この隔壁106の前側(上流側)には、
図3に示すように、嫌気処理槽140をさらに第1嫌気室141と第2嫌気室142とを区画するための区画壁143が取り付けられている。この区画壁143によって、第2嫌気室142が、槽左右方向に関する隔壁106の中央領域に対応して設定される。
図5に示すように、区画壁143の下端部は、処理槽本体101の底部から離間するように配置されており、これにより第1嫌気室141の下方領域は、第2嫌気室142に連通している。
【0026】
また、
図3に示すように、隔壁106の後側(下流側)には、隔壁106の下流側の領域を好気処理槽150と処理水槽160に区画するための区画壁161が取り付けられている。区画壁143で区画される第2嫌気室142の槽左右方向の長さは、区画壁161で区画される処理水槽160の槽左右方向の長さより長くなるように設定される。これにより、
図3、
図5および
図6に示すように、隔壁106のうち、槽左右方向に関して、区画壁161の外側(処理水槽160の外側)であって、区画壁143の内側(第2嫌気室142の内側)において、第2嫌気室142と好気処理槽150を連通する左右の開口部106a,106bが設けられる。
【0027】
隔壁106は、区画壁143および区画壁161が隔壁106に予め取り付けられた状態で、処理槽本体101に組み付けられる。具体的には、隔壁106のそれぞれの面に対して区画壁161および区画壁143が取り付けられたアセンブリ体が構成される。その後、アセンブリ体を処理槽本体101に取り付けることで、隔壁106、区画壁143および区画壁161が組み付けられる。これにより、水処理装置100の製造工程において、第2嫌気室142、好気処理槽150および処理水槽160が効率的かつ簡易的に設置される。
【0028】
図1および
図3に示すように、第1嫌気室141のうち槽上下方向における中間領域には、有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気性微生物が付着する所定量の嫌気濾材が充填された嫌気濾床144が処理槽本体101に支持されるように設けられている。嫌気濾材としては、平板状の濾材や骨格様球状の濾材を好適に用いることができる。この嫌気濾床144では、被処理水が嫌気処理及び濾過処理され、これによりBODの低減と汚泥物の除去が行なわれる。
【0029】
第1嫌気室141で嫌気処理された被処理水は、第1嫌気室141の下方領域から第2嫌気室142の下方領域に移送され、第2嫌気室142内を上昇する。その後、被処理水は、開口部106aおよび開口部106bを通過して好気処理槽150に移流される。
【0030】
この第2嫌気室142には、第1エアリフトポンプ180が設置されている。この第1エアリフトポンプ180は、嫌気処理槽140内に沈殿した汚泥を被処理水とともに、流入バッフル110に返送する。この第1エアリフトポンプ180は、嫌気濾床が設けられていない第2嫌気室142に設けられている。そのため、第1エアリフトポンプ180と嫌気濾床144との干渉が回避される。すなわち、第2嫌気室142は、嫌気処理槽140に流入した被処理水を第1嫌気室141内において下向流として流通させて嫌気処理する機能と、第1エアリフトポンプ180を嫌気濾床144から隔離する機能を有する。この第1エアリフトポンプ180が、本発明における「エアリフトポンプ」に対応する実施構成例である。
【0031】
図3に示すように、隔壁106の下流側には、槽左右方向に関する中央領域に処理水槽160が設定されている。具体的には、区画壁161で囲まれた領域が処理水槽160として設定されている。また、
図6に示すように、好気処理槽150は、処理槽本体101内において、処理水槽160を挟んで左側領域と右側領域が下部領域で連通するように形成される。この好気処理槽150の下部領域は、処理水槽160に連通している。
【0032】
図6に示すように、好気処理槽150内には、被処理水中の有機汚濁物質を好気分解(好気処理)する好気性微生物が付着する好気濾床151a,151bが設けられている。好気濾床151aは、好気濾床151bより下方の領域に設けられている。好気濾床151aは、網様ロール状の濾材によって構成されている。具体的には、網様ロール状の濾材は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなる線材が立体的に絡まる網状体であり、直径約100mm、長さ約100mmの円筒形に成形されている。したがって、好気濾床151aは、複数の網様ロール状の濾材が所定の領域に充填されて構成されている。なお、好気濾床151aの好気濾材は、網状体、球状体、板状体の濾材や、多孔質材料で成形された濾材を用いてもよい。一方、好気濾床151bは、ブロック状の(単一の)濾材によって構成されている。具体的には、ブロック状の濾材は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなる線材が立体的に絡まる網状体であり、ブロック状に一体に成形されている。したがって、上側の好気濾床151bは、下側の好気濾床151aの複数の濾材が流出を防止する蓋の機能を有する。この好気濾床151bは、処理槽本体101に支持されたネットや板状部材等の保持部材によって保持されている。なお、好気濾床151bの好気濾材は、一体に成形された濾材であれば、板状等の他の形状に成形されていてもよい。
【0033】
図6に示すように、好気処理槽150には、第2散気管191が設けられている。これにより、好気濾床151を通過する被処理水は、第2散気管191から供給される空気によって好気処理される。好気濾床151a,151bによって好気処理された被処理水は、好気処理槽150の下部領域に移送される。
【0034】
図1および
図6に示すように、処理水槽160には、第2エアリフトポンプ181が設けられている。第2エアリフトポンプ181は、処理水槽160の下部領域まで延在している。これにより、好気処理槽150から処理水槽160に移送される被処理水の一部は、処理水槽160に移送される前に、第2エアリフトポンプ181によって流入バッフル110に返送される。これにより、水処理装置100内の被処理水は、流入バッフル110、沈殿分離槽120、嫌気処理槽140および好気処理槽150を循環する。この第2エアリフトポンプ181が、本発明における「エアリフトポンプ」に対応する実施構成例である。
【0035】
図1および
図3に示すように、処理水槽160を形成する区画壁161の内側には、区画壁171によってさらに区画された消毒槽170が設けられている。この消毒槽170を形成する区画壁171は、区画壁161に取り付けられている。この区画壁171は、予め区画壁161に取り付けられており、隔壁106および区画壁143,161により形成するアセンブリ体の一部を構成する。また、処理水槽160には、処理水槽160内の被処理水を消毒槽170に移送するための第3エアリフトポンプ182が設けられている。
【0036】
消毒槽170には、消毒処理を行うための固形消毒剤が充填された薬剤筒(図示省略)が設けられている。この薬剤筒から溶出した消毒剤によって消毒処理がなされた後の水は、流出管103を通じて処理槽本体101の外部へと排出される。なお、消毒槽170の下流には、更に別の槽、例えば放流用のポンプが設置された放流ポンプ槽などを設けてもよい。
【0037】
これら第1〜第3エアリフトポンプ180〜182および第1、第2散気管190,191は、空気供給装置(図示省略)に接続されており、エアバルブによって空気の供給および遮断が切り替えられる。
【0038】
次に、
図7〜
図13を参照して、第1および第2エアリフトポンプ180,181の詳細な構成および区画壁143,隔壁106に対する取り付けについて説明する。
【0039】
図7に示すように、第1エアリフトポンプ180は、区画壁143に形成された貫通穴143Aを貫通するよう区画壁143に取り付けられる。なお、区画壁143に形成された貫通穴143Bは、第2エアリフトポンプ181の移送部210(
図10参照)が貫通する。また、
図8に示すように、第2エアリフトポンプ181は、隔壁106に形成された貫通穴106Aを貫通するように隔壁106に取り付けられる。この隔壁106および区画壁143が、本発明における「区画壁」に対応する実施構成例である。また、貫通穴106A,143Aが、本発明における「貫通孔」に対応する実施構成例である。
【0040】
図9〜
図11に示すように、第1および第2エアリフトポンプ180,181は、エアリフト効果によって汚泥とともに被処理水を汲み上げるエアリフト部200と、汲み上げられた被処理水を流入バッフル110に移送するための移送部210を主体として構成されている。
【0041】
図9に示すように、エアリフト部200は、縦管201と、縦管201と移送部210を連通させる横管202と、縦管210にエアリフト効果を生じさせるための空気を供給する空気供給口205を備える。縦管201と横管202は、継手を介して一体状に形成されている。横管202は、先端部に当該横管202と移送部210を連結する環状の連結部203を備えている。なお、横管202は、一体的に成形されて連結部203が設けられることが好ましいが、別部材として形成された連結部203を接合することで横管202が形成されてもよい。連結部203の端部204は、移送部210が挿入されるように開口されている。この縦管201および横管202がそれぞれ、本発明における「縦管」および「横管」に対応する実施構成例である。また、横管202が、本発明における「小径部」に対応する実施構成例である。また、エアリフト部200が、本発明における「第1構成部材」に対応する実施構成例である。
【0042】
図10に示すように、移送部210は、小径管211と大径管212を備える。小径管211と大径管212は、一体状に成形されている。小径管211は、エアリフト部200の横管202の連結部203に挿入されて、横管202に接続される。大径管212は、小径管211に接続されている。この小径管211および大径管212が、本発明における「横管」に対応する実施構成例である。また、小径管211および大径管212がそれぞれ、本発明における「小径部」および「大径部」に対応する実施構成例である。また、移送部210が、本発明における「第2構成部材」に対応する実施構成例である。なお、移送部210としては、大径管212に接続される移送管がさらに設けられていてもよい。この移送管は、典型的には、大径管212に挿入されて固定される。一方で、移送管に大径管212が挿入されて固定されるように構成されていてもよい。
【0043】
小径管211は、大径管212の中心に対して偏心するように設けられている。具体的には、小径管211の軸中心が、大径管212の軸中心より下方に位置するように設定される。小径管211と大径管212の接続領域は段付き状に形成されており、これにより大径管212の端面213が構成される。端面213には、大径管212の軸方向に関して、小径管211側に突出する係合凸部214が形成されている。
【0044】
図11に示すように、移送部210の小径管211がエアリフト部200の連結部203に挿入されて、エアリフト部200と移送部210が連結される。被処理水を移送するエアリフトポンプ180,181において、縦管201の管径は、エアリフト効果によって被処理水を汲み上げる際に、供給される空気量に対応して設定される。すなわち、縦管201の管径が小さい場合には、少ない空気量で被処理水を汲み上げることができるが、縦管201の管径が大きい場合には、被処理水を汲み上げるために多くの空気を供給する必要がある。そのため、縦管201は、被処理水の汲み上げ量を考慮して、比較的小さい径の管が用いられる。
【0045】
一方で、移送部210は多少の勾配が設定されて略水平方向を延在している。この位相部210は、エアリフト部200において汲み上げられた被処理水とともに汚泥を移送するため、特に汚泥の滞留を抑制するべく移送部210の管径は大きい方が好ましい。同様に、汚泥の滞留を抑制するべく、エアリフト部200の横管202の管径も大きい方が好ましいが、エアリフト部200の縦管201と横管202の管径が異なる場合には、縦管201と横管202の径が異なる特注品を用いる必要があり、エアリフト部200の製造コストアップにつながる。そのため、エアリフト部200の縦管201と横管202は、同径に設定されている。この縦管201と横管202の管径は、例えば直径30mmが設定される。したがって、移送部210では、汚泥の滞留を抑制するべく、エアリフト部の横管202と接続される小径管211に対して、管径が大きい大径管212を設けている。小径管211の管径は、エアリフト部200の横管202と同径の30mmが設定される。一方、大径管212の管径は、例えば直径50mmが設定される。
【0046】
以上のエアリフトポンプ180,181は、
図12および
図13に示すように、エアリフト部200と移送部210が区画壁143,隔壁106をそれぞれ挟持するように取り付けられる。具体的には、隔壁106,区画壁143の一方の面側から隔壁106,区画壁143に形成された貫通穴106A,143Aに対して移流部210の小径管211が挿入されるとともに、隔壁106,区画壁143の他方の面側に配置されたエアリフト部200の連結部203に挿入される。これにより、連結部203の端部204と大径管212の端面213によって隔壁106,区画壁143がそれぞれ挟持される。
【0047】
このとき、隔壁106,区画壁143に形成された位置合わせ用の係合穴250に移送部210の係合凸部214が挿通される。これにより、第1および第2エアリフトポンプ180,181が区画壁143,隔壁106の所定の位置に位置合わせされた状態で取り付けられる。係合穴250と係合凸部214の係合によって、エアリフトポンプ180,181の位置合わせが行われるため、貫通穴106A,143Aの位置や大きさ等に関する製造上の許容公差を緩やかに設定することが可能となる。この係合穴250および係合凸部214がそれぞれ、本発明における「第1係合部」および「第2係合部」に対応する実施構成例である。
【0048】
また、移送部210の端面213とエアリフト部200の端部204が隔壁106,区画壁143を挟持するため、エアリフトポンプ180,181が隔壁106,区画壁143によって固定状に支持される。すなわち、大径管212の端面213は、エアリフトポンプ180,181を位置合わせするための係合凸部214を設けるスペースを提供する機能を備えるとともに、隔壁106,区画壁143を挟持する機能を備える。
【0049】
水処理領域における水位の変動に伴って、第1〜第3エアリフトポンプ180〜182の揚程が変動する。すなわち、水処理領域における被処理水の水位が高くなると、揚程が短くなり、エアリフトポンプによる被処理水の移送量が多くなる。一方、水処理領域における被処理水の水位が低くなると、揚程が長くなり、エアリフトポンプによる被処理水の移送量が少なくなる。そのため、エアリフトポンプを利用することにより、水処理装置100に流入する排水が多くなり水処理領域の水位が上昇した場合であっても、水位の上昇に応じてエアリフトポンプの能力を上げることができる。
【0050】
以上の実施形態によれば、エアリフトポンプ180,181においては、被処理水の汲み上げ能力によってエアリフト部200の縦管201の管径が設定される。このとき、エアリフト部200の横管202は、製造コストを考慮して、縦管201と同径に設定される。一方で、移送部210は、エアリフト部200の横管202に接続される小径管211と小径管211に連通する大径管212を備えている。そのため、移送部210において、被処理水とともに水平方向に移送される汚泥が滞留して汚泥が移送部210を閉塞することが抑制される。
【0051】
また、移送部210における汚泥の滞留を抑制するために、エアリフト部200側に対して流入バッフル110側が下方に位置するように移送部210(特に、大径管212)の勾配が設定される。鉛直方向における流入バッフル110側の大径管212の位置は、貯留される被処理水の水面よりも高い位置に設定される。この流入バッフル110側の大径部212の鉛直方向の位置および移送部210の勾配によって、鉛直方向におけるエアリフト部200側の移流部210の位置が決定される。この移送部210においては、小径管211の軸中心が大径管212の軸中心に対して下方に偏心するように設けられているため、小径管211軸中心を大径管212の軸中心に対して上方に偏心するように設けられる構成に比べて、エアリフト部200における揚程を短くすることができ、合理的である。その結果、エアリフト部200に供給される空気量を少なくすることができる。
【0052】
また、小径管211と大径管212を設けたことにより、小径管211と大径管212の接続部には、大径管212の端面213が形成される。この端面213を利用して、エアリフトポンプ180,181の位置合わせに利用される係合凸部214を設けることができる。さらに、移送部210の端面213とエアリフト部200の端部204によって区画壁143,隔壁106が挟持されるため、エアリフトポンプ180,181が区画壁143,隔壁106に強固に固定される。すなわち、複数の機能を備える端面213を構成することができる。
【0053】
また、以上の実施形態によれば、隔壁106のそれぞれの面に対して区画壁161および区画壁143が取り付けられたアセンブリ体が処理槽本体101に取り付けられる。これにより、処理槽本体101に対する隔壁106、区画壁143および区画壁161の組み付け作業が簡略化される。
【0054】
また、以上の実施形態によれば、水処理装置100において、平面視で清掃孔130が沈殿分離槽120に囲まれるように配置されている。そのため、複数の方向において沈殿分離槽120と清掃孔130の連通が図られる。すなわち、処理槽本体101の左右方向および前後方向において、沈殿分離槽120と清掃孔130が連通する。これにより、沈殿分離槽120と清掃孔130の間において被処理水が効率的に流通される。
【0055】
また、以上の実施形態によれば、第1散気管190から供給される空気によって、清掃孔130内の被処理水に旋回流を発生させるとともに、旋回流による被処理水の流れによって沈殿分離槽120と清掃孔130の間において被処理水が効率的に流通される。また、第1散気管190から供給される空気が濾材132によって細分化されるため、清掃孔130内を旋回する被処理水に含まれる汚泥を細かい気泡によって効果的に好気処理することができる。
【0056】
以上の実施形態においては、隔壁106,区画壁143に円形の係合穴250が設けられていたが、これには限られない。例えば、
図14に示すように、区画壁143に係合凹部260が設けられており、係合凹部260と係合凸部214の係合によってエアリフトポンプ180が位置決めされるように構成されていてもよい。また、
図15に示すように、区画壁143に鉛直方向に延在する係合溝270が設けられていてもよい。この場合、鉛直方向に関するエアリフトポンプ180の位置調整がなされる。なお、
図14および
図15においては、区画壁143と第1エアリフトポンプ180の関係について説明したが、隔壁106と第2エアリフトポンプ181の関係も同様である。また、隔壁106,区画壁143に凹状の係合穴250、係合凹部260、係合溝270が形成されていたが、これには限られない。例えば、大径管212の端部213に凹部が形成されており、隔壁106、区画壁143に凸部が形成されていてもよい。
【0057】
また、以上の実施形態においては、隔壁106と区画壁143,161が予め一体となったアセンブリ体を構成していたが、これには限られない。例えば、隔壁106と区画壁161のみが一体となったアセンブリ体を構成してもよい。
【0058】
また、以上の実施形態においては、水処理装置100は、流入バッフル110、沈殿分離槽120、清掃孔130、嫌気処理槽140、好気処理槽150、処理水槽160及び消毒槽170の各処理要素によって構成される場合について説明したが、処理要素の数や種類に関しては必要に応じて種々選択が可能である。したがって、区画壁161で囲まれる領域に、処理水槽160のみを形成してもよく、処理水槽160と消毒槽170に加えて好気処理槽等を形成してもよい。
【0059】
また、以上の実施形態においては、一般家庭、集合住宅等から排出される原水を処理する水処理装置100について記載したが、本発明は、一般家庭、集合住宅以外に、商業施設、公共施設、工場等の設備から排出される原水を処理する水処理装置に対しても適用することが可能である。
【0060】
(実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
以上の実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、実施形態の構成に限定されるものではない。なお、実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
水処理装置100は、本発明の「水処理装置」に対応する構成の一例である。
第1エアリフトポンプ180は、本発明の「エアリフトポンプ」に対応する構成の一例である。
第2エアリフトポンプ181は、本発明の「エアリフトポンプ」に対応する構成の一例である。
縦管201は、本発明の「縦管」に対応する構成の一例である。
横管202は、本発明の「横管」に対応する構成の一例である。
小径管211は、本発明の「横管」に対応する構成の一例である。
大径管212は、本発明の「横管」に対応する構成の一例である。
小径管211は、本発明の「小径部」に対応する構成の一例である。
大径管212は、本発明の「大径部」に対応する構成の一例である。
エアリフト部200は、本発明の「第1構成部材」に対応する構成の一例である。
移送部210は、本発明の「第2構成部材」に対応する構成の一例である。
隔壁106は、本発明の「区画壁」に対応する構成の一例である。
区画壁143は、本発明の「区画壁」に対応する構成の一例である。
貫通穴106Aは、本発明の「貫通孔」に対応する構成の一例である。
貫通穴143Aは、本発明の「貫通孔」に対応する構成の一例である。
貫通穴106Aは、本発明の「第1係合部」に対応する構成の一例である。
係合凸部214は、本発明の「第2係合部」に対応する構成の一例である。