(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541402
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およびベースセット
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20190628BHJP
B65D 63/12 20060101ALI20190628BHJP
F16L 3/137 20060101ALI20190628BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
F16B2/08 S
F16B2/08 Z
F16B2/08 U
B65D63/12 A
F16L3/137
H02G3/30
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-82246(P2015-82246)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-200253(P2016-200253A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−207963(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0131721(US,A1)
【文献】
特開2009−131055(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0167880(US,A1)
【文献】
特開2013−113330(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/030725(WO,A1)
【文献】
実開昭50−036962(JP,U)
【文献】
特開2004−314998(JP,A)
【文献】
特開2011−057246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00− 2/26
F16L 3/00− 3/26
B65D 61/00−63/18
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持物を取り囲んで保持する結束具と、抑制部材とを備える、結束装置であって、
前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備え、
前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有し、
前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容し、
前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する抑制手段とを備え、かつ、
前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成され、また、
前記締結部には、前記帯状部の、反挿入方向への移動を許容するよう、前記係合部を前記被係合部から外すように操作する操作部が、前記係合部から、前記帯状部の挿入方向側に延出するように設けられ、前記抑制部材は、前記操作部を受容する受容空間を有する、被保持物の結束装置。
【請求項2】
前記抑制手段は、前記受容空間に受容された前記操作部に当接して、前記係合部の、前記被係合部から外れる側への移動を抑制する抑制部からなる、請求項1に記載の被保持物の結束装置。
【請求項3】
被保持物を取り囲んで保持する結束具と、抑制部材とを備える、結束装置であって、
前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備え、
前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有し、
前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容し、
前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備え、かつ、
前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成される、被保持物の結束装置。
【請求項4】
前記抑制手段は、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するための逃がし空間内に挿入される、挿入部からなる、請求項3に記載の被保持物の結束装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の結束装置と、取付面に固定されるベース体とを備える、固定装置であって、
前記ベース体は、前記被保持物を支持する支持部を備え、
前記帯状部は、前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むように回される、被保持物の固定装置。
【請求項6】
前記ベース体は、前記支持部の両側に、前記帯状部が通る通孔を有し、それら通孔の少なくとも一方は、前記帯状部が圧入される大きさに形成されている、請求項5に記載の被保持物の固定装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の結束装置と被保持物とからなる結束構造であって、
前記帯状部で前記被保持物を取り囲んだ状態で、その帯状部が前記締結部の挿入路に挿入されて、
前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置が保持され、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのが抑制されている、被保持物の結束構造。
【請求項8】
請求項5または6に記載の固定装置と被保持物とからなる固定構造であって、
前記ベース体が、前記取付面に固定され、
前記帯状部で前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲んだ状態で、その帯状部が前記締結部の挿入路に挿入されて、
前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置が保持され、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのが抑制されている、被保持物の固定構造。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の結束装置を用いた結束方法であって、
前記帯状部で前記被保持物を取り囲むとともに、その帯状部を前記締結部の挿入路に挿入し、
前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置を保持して、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する、被保持物の結束方法。
【請求項10】
請求項5または6に記載の固定装置を用いた固定方法であって、
前記ベース体を、前記取付面に固定し、
前記帯状部で前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むとともに、その帯状部を前記締結部の挿入路に挿入し、
前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置を保持して、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する、被保持物の固定方法。
【請求項11】
被保持物を取り囲んで保持する結束具に対し用いられる抑制部材であって、
前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備え、
前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有し、
前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容し、
前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備え、かつ、
前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成される、結束具用の抑制部材。
【請求項12】
請求項5または6に記載の固定装置における、ベース体と抑制部材とを備えるベースセットであって、
それらベース体と抑制部材とが、分離可能に、合成樹脂により一体に成形されている、ベースセット。
【請求項13】
取付面に固定されるベース体と、被保持物を取り囲んで保持する結束具に対し用いられる抑制部材とを備える、ベースセットであって、
前記ベース体は、前記被保持物を支持する支持部を備え、
前記結束具は、前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むように回される可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備え、
前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有し、
前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容し、
前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備え、
前記ベース体と前記抑制部材とが、分離可能に、合成樹脂により一体に成形されている、ベースセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被保持物を強固に保持することができる、被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およ
びベースセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッダー等の管状体を固定する固定具として、
図16に示すものがあった(例えば、特許文献1、2参照)。この固定具23は、壁21に固定される台座24と、保持部材25とからなっていた。ここで、台座24は、受口24aを備えた。そして、保持部材25は、ヘッダー22を抱持するU字状の抱持部25aと、その抱持部25aの両端から延出する延出片25b、25bとを備えていた。そこで、それら延出片25b、25bが、前記受口24aに挿入されて係止されることで、保持部材25が台座24に取り付けられ、ヘッダー22は、これら台座24と保持部材25とからなる固定具23を介して、壁21に固定された。
【0003】
また、ヘッダーを、保温材とともに固定する固定部材として、
図17に示すものがあった(例えば、特許文献3参照)。この固定部材33は、壁等の支持部に固定される支持アングル34と、その支持アングル34に取り付けられるバンド部材35とからなっていた。バンド部材35は、U字状に形成され、このバンド部材35は、ヘッダー32aおよび保温材32bを取り囲むようにして支持アングル34に取り付けられた。こうして、ヘッダー32aおよび保温材32bは、これら支持アングル34とバンド部材35とからなる固定部材33を介すことで、支持部に固定された。
【0004】
また、配線・配管材を吊りボルトに固定する保持具として、
図18に示すものがあった(例えば、特許文献4参照)。この保持具43は、吊りボルト41に固定される本体44と、その本体44から連設されて配線・配管材42を保持する保持部45とからなっていた。そして、保持部45は、配線・配管材42が載る台座45aと、その台座45aから延設され可撓性を有して配線・配管材42に回されるバンド45bとからなっていた。また、一般に、配線・配管材等を取り囲んで保持するものとして、可撓性を有する結束バンドが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−285501号公報
【特許文献2】特開2007−321808号公報
【特許文献3】特開2005−180519号公報
【特許文献4】特開2010−60086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来の固定具23(
図16参照)とか固定部材33(
図17参照)においては、決まったサイズのヘッダー22、32aとか保温材32bにしか用いることができず、異なるサイズのヘッダーとか保温材に対して用いることができなかった。また、前記従来の保持具43(
図18参照)とか一般の結束バンドにおいては、可撓性を有するバンドによって、異なるサイズの配線・配管材に対して用いることはできたが、強い力で引っ張られたり振動等が加わることで緩みが生じたりする虞があった。
【0007】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、異なるサイズの被保持物に対して用いることができ、かつ、その被保持物を強固に保持することができる、被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およ
びベースセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およ
びベースセットは、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る被保持物の結束装置は、被保持物を取り囲んで保持する結束具と、抑制部材とを備える。ここで、前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備える。前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有する。また、前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容する。そして、前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する抑制手段とを備える。そこで、前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成される。また、前記締結部には、前記帯状部の、反挿入方向への移動を許容するよう、前記係合部を前記被係合部から外すように操作する操作部が、前記係合部から、前記帯状部の挿入方向側に延出するように設けられ、前記抑制部材は、前記操作部を受容する受容空間を有する。
【0009】
この結束装置によると、結束具における可撓性を有する帯状部で被保持物を取り囲むことができ、この結束具、つまり結束装置を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物に対して用いることができる。そして、帯状部の一方端側に連設される締結部の挿入路に、帯状部をその先端側から挿入すると、その帯状部の被係合部と係合部が係合し、その帯状部は、反挿入方向への移動が規制される。そこで、抑制部材は、位置保持手段により、結束具における締結部との相対位置が保持される。そして、抑制部材における抑制手段が、係合部が被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。このため、係合部が被係合部に係合する係合状態が維持され、帯状部は、締結部に対する、反挿入方向への移動だけでなく、挿入方向の移動も規制される。すなわち、抑制部材により、係合部が被係合部と係合する係合状態がしっかりと保たれて、帯状部の移動が確実に規制されることから、被保持物を強固に保持することができる。
また、請求項2に記載の発明に係る被保持物の結束装置は、請求項1に記載の結束装置において、前記抑制手段は、前記受容空間に受容された前記操作部に当接して、前記係合部の、前記被係合部から外れる側への移動を抑制する抑制部からなる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る被保持物の結束装置は、被保持物を取り囲んで保持する結束具と、抑制部材とを備える。ここで、前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備える。前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有する。また、前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容する。そして、前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備える。
さらに、前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成される。
この結束装置によると、結束具における可撓性を有する帯状部で被保持物を取り囲むことができ、この結束具、つまり結束装置を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物に対して用いることができる。そして、帯状部の一方端側に連設される締結部の挿入路に、帯状部をその先端側から挿入すると、その帯状部の被係合部と係合部が係合し、その帯状部は、反挿入方向への移動が規制される。そこで、抑制部材は、位置保持手段により、結束具における締結部との相対位置が保持される。そして、抑制部材における抑制手段が、係合部が被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。このため、係合部が被係合部に係合する係合状態が維持され、帯状部は、締結部に対する、反挿入方向への移動だけでなく、挿入方向の移動も規制される。すなわち、抑制部材により、係合部が被係合部と係合する係合状態がしっかりと保たれて、帯状部の移動が確実に規制されることから、被保持物を強固に保持することができる。
また、請求項4に記載の発明に係る被保持物の結束装置は、請求項3に記載の結束装置において、前記抑制手段は、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するための逃がし空間内に挿入される、挿入部からなる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
また、請求項
5に記載の発明に係る被保持物の固定装置は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の結束装置と、取付面に固定されるベース体とを備える。ここで、前記ベース体は、前記被保持物を支持する支持部を備える。そして、前記結束装置における帯状部は、前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むように回される。この固定装置によると、ベース体が取付面に固定され、結束装置における帯状部が、被保持物とベース体の支持部との両方を取り囲むように回されることで、被保持物は、これらベース体と結束装置とを介して、取付面に固定される。
【0015】
また、請求項
6に記載の発明に係る被保持物の固定装置は、請求項
5に記載の固定装置において、前記ベース体は、前記支持部の両側に、前記帯状部が通る通孔を有し、それら通孔の少なくとも一方は、前記帯状部が圧入される大きさに形成されている。
【0016】
また、請求項
7に記載の発明に係る被保持物の結束構造は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の結束装置と被保持物とからなる結束構造であって、前記帯状部で前記被保持物を取り囲んだ状態で、その帯状部が前記締結部の挿入路に挿入されている。そして、前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置が保持され、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのが抑制されている。
【0017】
また、請求項
8に記載の発明に係る被保持物の固定構造は、請求項
5または
6に記載の固定装置と被保持物とからなる固定構造であって、前記ベース体が、前記取付面に固定され、前記帯状部で前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲んだ状態で、その帯状部が前記締結部の挿入路に挿入されている。そして、前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置が保持され、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのが抑制されている。
【0018】
また、請求項
9に記載の発明に係る被保持物の結束方法は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の結束装置を用いた結束方法であって、前記帯状部で前記被保持物を取り囲むとともに、その帯状部を前記締結部の挿入路に挿入する。その後、前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置を保持して、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。
【0019】
また、請求項
10に記載の発明に係る被保持物の固定方法は、請求項
5または
6に記載の固定装置を用いた固定方法であって、前記ベース体を、前記取付面に固定する。そして、前記帯状部で前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むとともに、その帯状部を前記締結部の挿入路に挿入する。その後、前記位置保持手段により、前記抑制部材の、前記締結部との相対位置を保持して、前記抑制手段により、前記係合部が前記被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。
【0020】
また、請求項
11に記載の発明に係る結束具用の抑制部材は、被保持物を取り囲んで保持する結束具に対し用いられる。ここで、前記結束具は、前記被保持物を取り囲む可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備える。そして、前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有する。また、前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容する。そして、前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備える。
さらに、前記抑制部材は、前記挿入路を貫通する前記帯状部の、前記締結部よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体と、その抑制部材本体に設けられて前記帯状部を受け入れる貫通路と、前記抑制部材自身の、前記締結部側への移動を許容するとともに前記帯状部の先端側への移動を規制するよう、その帯状部に係合する規制部とを有して、それら貫通路と規制部によって前記位置保持手段が形成される。
【0021】
この抑制部材が用いられる結束具は、可撓性を有する帯状部で被保持物を取り囲むことができ、この結束具を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物に対して用いることができる。そして、帯状部の一方端側に連設される締結部の挿入路に、帯状部をその先端側から挿入すると、その帯状部の被係合部に係合部が係合し、その帯状部は、反挿入方向への移動が規制される。そこで、抑制部材は、位置保持手段により、結束具における締結部との相対位置が保持される。そして、抑制部材における抑制手段が、係合部が被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。このため、係合部が被係合部に係合する係合状態が維持され、帯状部は、締結部に対する、反挿入方向への移動だけでなく、挿入方向の移動も規制される。すなわち、抑制部材により、係合部が被係合部に係合する係合状態がしっかりと保たれて、帯状部の移動が確実に規制されることから、被保持物を強固に保持することができる。
【0022】
また、請求項
12に記載の発明に係
るベースセットは、請求項
5または
6に記載の固定装置における、ベース体と抑制部材とを備えるベースセットであって、それらベース体と抑制部材とが、分離可能に、合成樹脂により一体に成形されている。こうして、ベース体と抑制部材とが一体に成形されることで、施工の途中までは、一体のまま取り扱うことができる。そして、抑制部材が必要となったときに、ベース体から分離してその抑制部材を使用することで、抑制部材を別途用意することなく、施工作業を進めることができる。
また、請求項13に記載の発明に係るベースセットは、取付面に固定されるベース体と、被保持物を取り囲んで保持する結束具に対し用いられる抑制部材とを備える。ここで、前記ベース体は、前記被保持物を支持する支持部を備える。前記結束具は、前記被保持物と前記支持部との両方を取り囲むように回される可撓性を有する帯状部と、その帯状部の一方端側に連設される締結部とを備える。前記締結部は、締結部本体と、その締結部本体に設けられて前記帯状部がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路と、その帯状部の、挿入方向への移動を許容するとともに反挿入方向への移動を規制するよう、その帯状部に係合する係合部とを有する。また、前記帯状部には、前記係合部と係合する被係合部が、その帯状部の長手方向に沿って複数並んで設けられ、前記係合部は、前記帯状部の、反挿入方向への移動に対しては、前記被係合部と係合して、その反挿入方向への移動を規制し、前記帯状部の、挿入方向への移動に対しては、前記被係合部から外れて、その挿入方向への移動を許容する。そして、前記抑制部材は、その抑制部材自身と前記締結部との相対位置を保持する位置保持手段と、前記係合部が、前記被係合部から外れる側である、前記帯状部側とは反対の側に移動するのを抑制する抑制手段とを備える。そこで、前記ベース体と前記抑制部材とが、分離可能に、合成樹脂により一体に成形されている。
このベースセットによると、抑制部材が用いられる結束具は、可撓性を有する帯状部で被保持物を取り囲むことができ、この結束具を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物に対して用いることができる。そして、帯状部の一方端側に連設される締結部の挿入路に、帯状部をその先端側から挿入すると、その帯状部の被係合部と係合部が係合し、その帯状部は、反挿入方向への移動が規制される。そこで、抑制部材は、位置保持手段により、結束具における締結部との相対位置が保持される。そして、抑制部材における抑制手段が、係合部が被係合部から外れる側に移動するのを抑制する。このため、係合部が被係合部に係合する係合状態が維持され、帯状部は、締結部に対する、反挿入方向への移動だけでなく、挿入方向の移動も規制される。すなわち、抑制部材により、係合部が被係合部と係合する係合状態がしっかりと保たれて、帯状部の移動が確実に規制されることから、被保持物を強固に保持することができる。また、ベース体が取付面に固定され、帯状部が、被保持物とベース体の支持部との両方を取り囲むように回されることで、被保持物は、ベース体と結束具および抑制部材とを介して、取付面に固定される。また、ベース体と抑制部材とが一体に成形されることで、施工の途中までは、一体のまま取り扱うことができる。そして、抑制部材が必要となったときに、ベース体から分離してその抑制部材を使用することで、抑制部材を別途用意することなく、施工作業を進めることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明に係る被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およ
びベースセットによれば、結束具における可撓性を有する帯状部で被保持物を取り囲むことができ、この結束具を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物に対して用いることができる。そして、この結束具に対し抑制部材を用いることで、被保持物を強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の一実施の形態の、被保持物を結束具を用いて締め付けた状態を示す、断面図である。
【
図2】同じく、抑制部材を用いた、被保持物の結束構造を示す、断面図である。
【
図6】同じく、抑制部材を示し、(a)は、断面図、(b)は、斜視図、(c)は、他の斜視図である。
【
図8】同じく、被保持物をベース体で支持して結束具で締め付けた状態を示す、断面図である。
【
図9】同じく、抑制部材を用いた、被保持物の固定構造を示す、断面図である。
【
図10】同じく、ベースセットを示す断面図である。
【
図11】同じく、ベースセットを示す平面図である。
【
図12】同じく、ベースセットを示す斜視図である。
【
図13】この発明の変形例の結束構造を示す、断面図である。
【
図14】この発明の他の変形例の抑制部材を示す、断面図である。
【
図15】この発明のさらに他の変形例の結束構造を示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係る被保持物の結束装置、被保持物の固定装置、被保持物の結束構造、被保持物の固定構造、被保持物の結束方法、被保持物の固定方法、結束具用の抑制部材、およ
びベースセットを実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1〜
図12は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、壁面とか床面等、その他の取付面を示す。2は、配線・配管材(配線材または配管材)とか、管継ぎ手(エルボー、チーズ、ヘッダー等、その他の管継ぎ手)とかの被保持物を示す。3は、その被保持物2を取り囲んで保持する結束具を示す。4は、結束具用の抑制部材を示す。5は、結束装置を示し、この結束装置5は、前記結束具3と前記抑制部材4とを備える。6は、前記取付面1に固定されるベース体を示す。7は、固定装置を示し、この固定装置7は、前記結束装置5と前記ベース体6とを備える。8は、結束構造を示す。9は、固定構造を示す。10は、ベースセットを示す。
【0027】
ここで、結束具3は、
図1ならびに
図3〜
図5に示すように、被保持物2を取り囲む可撓性を有する帯状部11と、その帯状部11の一方端側に連設される締結部12とを備える。そして、締結部12は、締結部本体12aと、その締結部本体12aに設けられて帯状部11がその一方端とは反対の先端から挿入されて貫通する挿入路12bと、その帯状部11の、挿入方向Pへの移動を許容するとともに反挿入方向Q(つまり、抜出し方向)への移動を規制するよう、その帯状部11に係合する係合部12cとを有する。詳細には、帯状部11には、締結部12の係合部12cと係合する被係合部11aが、その帯状部11の長手方向に沿って複数並んで設けられる。そこで、係合部12cは、帯状部11の、反挿入方向Qへの移動に対しては、被係合部11aと係合して、その反挿入方向Qへの移動を規制し、帯状部11の、挿入方向Pへの移動に対しては、被係合部11aから外れて、その挿入方向Pへの移動を許容する。
【0028】
また、締結部12には、帯状部11の、反挿入方向Qへの移動を許容するよう、係合部12cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すように操作する操作部12dが、係合部12cから、帯状部11の挿入方向P側に延出するように設けられる。
【0029】
抑制部材4は、被保持物2を取り囲んで保持する前記結束具3に対し用いられる。この抑制部材4は、その抑制部材4自身と締結部12との相対位置を保持する位置保持手段Xと、結束具3における係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのを抑制する抑制手段Yとを備える。詳細には、
図2および
図6に示すように、抑制部材4は、締結部12の挿入路12bを貫通する帯状部11の、締結部12よりも先端側に並んで取り付けられるべく、抑制部材本体4aと、その抑制部材本体4aに設けられて帯状部11を受け入れる貫通路4bと、抑制部材4自身の、締結部12側への移動を許容するとともに帯状部11の先端側への移動を規制するよう、その帯状部11に係合する規制部4cとを有する。より詳細には、規制部4cは、抑制部材4自身の、帯状部11の先端側への移動に対しては、帯状部11の前記被係合部11aと係合して、その先端側への移動を規制し、抑制部材4自身の、締結部12側への移動に対しては、前記被係合部11aから外れて、その締結部12側への移動を許容する。そこで、これら貫通路4bと規制部4cによって前記位置保持手段Xが形成される。
【0030】
また、抑制部材4は、締結部12における操作部12dを受容する受容空間4dを有する(
図2参照)。そして、締結部12と同様に、抑制部材4には、抑制部材4自身の、帯状部11の先端側への移動を許容するよう、規制部4cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すように操作する操作部4eが、規制部4cから、帯状部11の受け入れ方向P2側に延出するように設けられる。
【0031】
ベース体6は、前記被保持物2を支持する支持部6aを備える(
図8、
図9参照)。そして、結束具3における帯状部11は、被保持物2と支持部6aとの両方を取り囲むように回される。詳細には、ベース体6は、支持部6aの両側に、帯状部11が通る通孔6bを有する。すなわち、帯状部11がこれら通孔6b、6bを通ることで、帯状部11は、支持部6aの裏側に回されて、被保持物2と支持部6aとの両方を取り囲むこととなる。そして、これら通孔6b、6bの少なくとも一方は、帯状部11が圧入される大きさに形成されている。
【0032】
結束構造8は、結束具3と抑制部材4とを備えた前記結束装置5と、被保持物2とからなる(
図2参照)。ここにおいて、結束構造8は、結束具3の帯状部11で被保持物2を取り囲んだ状態で、その帯状部11が締結部12の挿入路12bに挿入されている。そして、前記位置保持手段Xにより、抑制部材4の、締結部12との相対位置が保持され、前記抑制手段Yにより、係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのが抑制されている。
【0033】
また、固定構造9は、結束装置5とベース体6とを備えた前記固定装置7と、被保持物2とかなる(
図9参照)。ここにおいて、固定構造9は、ベース体6が、取付面1に固定されている。そして、結束具3の帯状部11で被保持物2と支持部6aとの両方を取り囲んだ状態で、その帯状部11が締結部12の挿入路12bに挿入されている。さらに、前記位置保持手段Xにより、抑制部材4の、締結部12との相対位置が保持され、前記抑制手段Yにより、係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのが抑制されている。
【0034】
ベースセット10は、前記固定装置7における、ベース体6と抑制部材4とを備える(
図10〜
図12参照)。そして、ベースセット10は、それらベース体6と抑制部材4とが、分離可能に、合成樹脂により一体に成形されている。
【0035】
具体的には、結束具3は、帯状部11と締結部12とが、合成樹脂により一体に成形されている(
図3〜
図5参照)。帯状部11においては、前記被係合部11aは、帯状部11の一方の面(詳しくは、被保持物2を取り囲んだとき外側となる面)に突出する凸部からなる。そして、この凸部は、帯状部11の先端側の面が、傾斜面11bとなり、その反対側の面が、略垂直に起立する起立面11cとなっている。また、この帯状部11には、取付孔11dがあけられており、この取付孔11dを用いることで、結束具3を取付面1に固定することもできる。
【0036】
締結部12は、締結部本体12aが、略直方体形状に形成されて、その一面が、帯状部11における他方の面(詳しくは、被保持物2を取り囲んだときの内側となる面)と面一となって、帯状部11と繋がっている。そして、締結部本体12aには、前記挿入路12bを形成するために帯状部11の挿入方向Pに沿って貫通する孔12eがあけられている。そこで、前記係合部12cは、孔12eの天面12fにおける、帯状部11を挿入する入り口側(図示実施の形態においては、締結部12の、帯状部11に連設される側とは反対側)から突出し、孔12e内を、帯状部11の挿入方向Pに向かって延びている。この係合部12cは、その基端側を支点にして、弾性的に撓み変形可能であって、その延びた先に、孔12eの底面12gに向かって突出する爪12hを有する。この爪12hは、係合部12cの先端側が、略垂直に起立する起立面12iとなり、その反対側(つまり、係合部12cの基端側)が、傾斜面12jとなっている。そこで、この係合部12cと孔12eの底面12gとの間が、前記挿入路12bとなって、係合部12c(詳しくは、爪12h)が、挿入路12bに挿入された帯状部11(詳しくは、被係合部11a)と係合する。そして、係合部12cと孔12eの天面12fとの間が、係合部12c(詳しくは、爪12h)が帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外れる側(つまり、孔12eの天面12f側)に移動するための逃がし空間12kとなる。
【0037】
また、係合部12cの先端からは、外に突出するようにして、前記操作部12dが延設されている。この操作部12dは、前述したように、係合部12cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すように操作するためのものであって、人が、この操作部12dを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から離れる側に操作することで、係合部12cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すことができる。
【0038】
抑制部材4は、図示実施の形態においては、帯状部11に、抑制部材本体4aと締結部本体12aとの間に隙間を空けるようにして取り付けられる(
図2参照)。この抑制部材4は、
図6に示すように、抑制部材本体4aが、略直方体形状に形成され、その抑制部材本体4aには、前記貫通路4bを形成するために、帯状部11の受け入れ方向P2に沿って貫通する孔4fがあけられている。そこで、前記規制部4cは、孔4fの天面4gにおける、帯状部11を受け入れる入り口側(つまり、締結部12と対面する側)から突出し、孔4f内を、帯状部11の受け入れ方向P2に向かって延びている。この規制部4cは、その基端側を支点にして、弾性的に撓み変形可能であって、その延びた先に、孔4fの底面4hに向かって突出する爪4iを有する。この爪4iは、規制部4cの先端側が、略垂直に起立する起立面4jとなり、その反対側(つまり、規制部4cの基端側)が、傾斜面4kとなっている。そこで、この規制部4cと孔4fの底面4hとの間が、前記貫通路4bとなって、規制部4c(詳しくは、爪4i)が、貫通路4bに受け入れられた帯状部11(詳しくは、被係合部11a)と係合する。ここにおいて、貫通路4bを通る帯状部11と規制部4cとの間には、締結部12と対面する側に、隙間があり、この隙間が、前述の受容空間4dとなる(
図2参照)。そして、規制部4cと孔4fの天面4gとの間が、規制部4c(詳しくは、爪4i)が帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外れる側(つまり、孔4fの天面4g側)に移動するための逃がし空間4mとなっている。
【0039】
また、規制部4cの先端からは、外に突出するようにして、前記操作部4eが延設されている。この操作部4eは、前述したように、規制部4cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すように操作するためのものであって、人が、この操作部4eを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から離れる側に操作することで、規制部4cを帯状部11(詳しくは、被係合部11a)から外すことができる。
【0040】
また、抑制部材4は、前述の抑制手段Yとして、抑制部4nを備える。この抑制部4nは、前記受容空間4dに受容された操作部12dに当接して、係合部12cの、被係合部11aから外れる側への移動を抑制するものであり、図示実施の形態においては、この抑制部4nは、規制部4cにおける、爪4iが突出する側の面からなっている。また、抑制部材4は、抑制手段Yとして、挿入部4pを備える。この挿入部4pは、係合部12cの、被係合部11aから外れる側への移動経路内(つまり、前記逃がし空間12k内)に挿入されるものであって、図示実施の形態においては、この挿入部4pは、規制部4cの基端から締結部12側に突出する(すなわち、操作部4eが延設される方向とは反対の方向に突出する)ように延出して形成される。
【0041】
ベース体6は、そのベース体6自身を取付面1に固定するための固定部6cと、前記支持部6aとを備える(
図10〜
図12参照)。固定部6cは、起立する筒部6dと、その筒部6dの下端部から側方に突出するフランジ部6eとを有する。そこで、筒部6dの内側の孔が固定のための第1固定孔6fとなる。そして、フランジ部6eには、固定のための第2固定孔6g、6gがあけられている。支持部6aは、筒部6dの側面から延設されており、被保持物2が当たる当接面6hが、弧状に窪んで形成される。そこで、前記通孔6bが、筒部6dから延設される支持部6aの、基端側と先端側とに設けられ、帯状部11は、これら通孔6b、6bを通ることで、支持部6aの裏側に回される。そして、図示実施の形態においては、基端側の通孔6bが、帯状部11が圧入される大きさ(詳しくは、圧入される幅)に形成される。
【0042】
ベースセット10は、
図10〜
図12に示すように、ベース体6と抑制部材4とが、成形型において、セット取りされたものであって、これらベース体6と抑制部材4とは、例えばランナー等からなる連結部10aを介して一体となっている。そして、このベースセット10から連結部10aを除去することで、ベース体6と抑制部材4とが互いに分離される。図示実施の形態においては、ベース体6における筒部6dの下部と、抑制部材4における抑制部材本体4aの下部とが、連結部10aによって繋がっている。そして、このベースセット10においては、抑制部材4は、ベース体6が固定される取付面1よりも上方に位置している。
【0043】
次に、以上に示す結束具3と抑制部材4とを備える結束装置5を用いた、被保持物2の結束方法、および、その結束装置5とベース体6とを備える固定装置7を用いた、被保持物2の固定方法について説明する。被保持物2の結束方法は、結束具3の帯状部11で、被保持物2を取り囲むともに、その帯状部11を結束具3における締結部12の挿入路12bに挿入する(
図1参照)。その後、前記位置保持手段Xにより、抑制部材4の、締結部12との相対位置を保持して(図示実施の形態においては、抑制部材4を、帯状部11の、締結部12よりも先端側に並ぶように取り付けて)、前記抑制手段Yにより、締結部12における係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのを抑制する(
図2参照)。また、被保持物2の固定方法は、始めに、ベース体6を、取付面1に固定する(
図7参照)。そして、結束具3の帯状部11で、被保持物2とベース体6の支持部6aとの両方を取り囲むとともに、その帯状部11を結束具3における締結部12の挿入路12bに挿入する(
図8参照)。その後、前記位置保持手段Xにより、抑制部材4の、締結部12との相対位置を保持して(図示実施の形態においては、抑制部材4を、帯状部11の、締結部12よりも先端側に並ぶように取り付けて)、前記抑制手段Yにより、締結部12における係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのを抑制する(
図9参照)。
【0044】
次に、以上の構成からなる結束装置5、固定装置7、結束構造8、固定構造9、結束方法、固定方法、抑制部材4、およびベースセット10の作用効果について説明する。結束具3は、可撓性を有する帯状部11を備えており、この結束具3における可撓性を有する帯状部11で被保持物2を取り囲むことができ、この結束具3(つまり、結束装置5、固定装置7、結束構造8、固定構造9、結束方法、固定方法)を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物2に対して用いることができる。そして、帯状部11の一方端側に連設される締結部12の挿入路12bに、帯状部11をその先端側から挿入すると、その帯状部11の被係合部11aと係合部12cが係合し、その帯状部11は、反挿入方向Qへの移動が規制される(
図1、
図8参照)。そこで、抑制部材4を、帯状部11の、締結部12よりも先端側に並ぶように取り付けると、抑制部材4は、位置保持手段Xにより、結束具3における締結部12との相対位置が保持される(
図2、
図9参照)。そして、抑制部材4における抑制手段Yが、締結部12の係合部12cが被係合部11aから外れる側に移動するのを抑制する。このため、係合部12cが被係合部11aに係合する係合状態が維持され、帯状部11は、締結部12に対する、反挿入方向Qへの移動だけでなく、挿入方向Pの移動も規制される。すなわち、抑制部材4により、係合部12cが被係合部11aと係合する係合状態がしっかりと保たれて、帯状部11の移動が確実に規制されることから、被保持物2を強固に保持することができる。
【0045】
すなわち、結束具3における可撓性を有する帯状部11で被保持物2を取り囲むことで、この結束具3を異なるサイズとか異なる断面形状の被保持物2に対して用いることができ、さらには、この結束具3に対し抑制部材4を用いることで、被保持物2を強固に保持することができる。
【0046】
また、図示実施の形態においては、抑制部材4は、締結部12の挿入路12bを貫通する帯状部11の、締結部12よりも先端側に並んで取り付けられる。これにより、仮に、係合部12cや抑制手段Yによる、帯状部11の反挿入方向Qへの移動の規制に抗して、帯状部11が反挿入方向Qに移動しようとした場合、あるいは移動した場合であっても、締結部12よりも帯状部11の先端側に控える抑制部材4が、帯状部11が反挿入方向Qへ移動するのを阻止し、あるいは移動が進むのを阻止する。
【0047】
また、固定装置7(あるいは、固定構造9とか固定方法)においては、ベース体6が取付面1に固定され、結束装置5(詳しくは、結束具3)における帯状部11が、被保持物2とベース体6の支持部6aとの両方を取り囲むように回されることで、被保持物2は、これらベース体6と結束装置5とを介して、取付面1に固定される(
図9参照)。ここにおいて、ベース体6の支持部6aが、被保持物2を支持する。このため、被保持物2は、取付面1にしっかりと固定される。
【0048】
また、ベース体6において、帯状部11が通る通孔6bの少なくとも一方は、帯状部11が圧入される大きさに形成されている。このため、通孔6bに帯状部11を通すと、結束具3は、ベース体6に保持される。したがって、これらベース体6と結束具3とは、安易に分離することはなく、これらベース体6と結束具3とを一体として扱うことができる(
図7参照)。
【0049】
また、ベースセット10として、ベース体6と抑制部材4とが一体に成形されることで(
図10〜
図12参照)、施工の途中までは、一体のまま取り扱うことができる。そして、抑制部材4が必要となったときに、ベース体6から分離してその抑制部材4を使用することで、抑制部材4を別途用意することなく、施工作業を進めることができる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、抑制部材4は、帯状部11に、抑制部材本体4aと締結部本体12aとの間に隙間を空けるようにして取り付けられるが、
図13に示すように、隙間を空けることなく取り付けられてもよい。
【0051】
また、締結部12や抑制部材4には、操作部12d、4eが設けられているが、この操作部12d、4eは、なくともよい。また、締結部12に操作部12dを設けるとともに、抑制部材4に、抑制手段Yとしての抑制部4nを設けた場合には、抑制手段Yとしての挿入部4pは、なくともよい(
図14参照)。また、このように、挿入部4pがない場合には、締結部12と抑制部材4とは、同一形状に形成されてもよい。
【0052】
また、抑制部材4は、挿入路12bを貫通する帯状部11の、締結部12よりも先端側に並んで取り付けられて、その抑制部材4における、貫通路4bと規制部4cによって位置保持手段Xが形成されている。すなわち、帯状部11を介すことで、間接的に、抑制部材4自身と締結部12との相対位置が保持されるが、
図15に示すように、帯状部11を介すことなく、直接、抑制部材4自身と締結部12との相対位置が保持されてもよい。すなわち、抑制部材4は、締結部12に取り付けられるものであってもよい。図示実施の形態においては、抑制部材4は、鉤状に折り返すように形成されて、その全体で、締結部12における、前記天面12fを有する天板部12xを挟み込むことで、その締結部12に固定される。つまり、この抑制部材4の全体が、前記位置保持手段Xとなっている。そして、抑制部材4の、折り返された先端部分は、締結部12における係合部12cの、被係合部11aから外れる側への移動経路内(つまり、前記逃がし空間12k内)に挿入される挿入部4pとなって、前記抑制手段Yを形成する。
【0053】
また、結束具3において、締結部12(詳しくは、締結部本体12a)における、帯状部11を挿入する入り口側は、帯状部11に連設される側とは反対側でなくとも、係合部12cの延びる向きを逆にすることで、帯状部11に連設される側を、帯状部11を挿入する入り口側としてもよい(
図15参照)。
【0054】
また、抑制部材4における挿入部4pは、締結部12の逃がし空間12k内において、天面12fから離れているが(例えば、
図2参照)、天面12fに当たる厚みを有してもよい。
【0055】
また、ベース体6と抑制部材4とは、ベースセット10として一体に形成されるが、それらベース体6と抑制部材4とは、初めから別々に形成されていてもよい。
【0056】
また、結束具3は、一体に成形されなくとも、帯状部11と締結部12とが別々に成形されて、それらが、組み付けられて一体化されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 取付面
2 被保持物
3 結束具
4 抑制部材
4a 抑制部材本体
4b 貫通路
4c 規制部
4d 受容空間
4n 抑制部
4p 挿入部
5 結束装置
6 ベース体
6a 支持部
6b 通孔
7 固定装置
8 結束構造
9 固定構造
10 ベースセット
11 帯状部
11a 被係合部
12 締結部
12a 締結部本体
12b 挿入路
12c 係合部
12d 操作部
12k 逃がし空間
P 挿入方向
Q 反挿入方向
X 位置保持手段
Y 抑制手段