(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の錠剤を、複数の搬送列に整列させつつ搬送しながら、錠剤の搬送方向に直交する幅方向に沿って配列された複数のノズルを有するヘッドから錠剤の表面に向けてインクを吐出することにより、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷方法であって、
a)前記ヘッドよりも搬送方向の下流側において、錠剤の表面を撮影し、得られた画像に基づいて、前記ノズルの異常の有無を検知する工程と、
b)前記工程a)において前記ノズルの異常を検知した場合に、錠剤に対して前記ヘッドを、前記幅方向に相対移動させる工程と、
を有する、錠剤印刷方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット方式の印刷装置では、インクジェットヘッドの複数のノズルの一部に、目詰まり等の異常が発生する場合がある。ノズルに異常が発生すると、錠剤の表面に印刷された画像に欠陥が生じる。インクジェット方式の印刷装置では、そのような印刷欠陥が発生すると、装置を一旦停止させて、ノズルの洗浄やメンテナンスを行う。そして、異常が解消された後に、印刷を再開する。しかしながら、ノズルに異常が発生する度に印刷処理を停止させると、錠剤印刷装置の生産性が低下する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ノズルに異常が発生したとしても、錠剤への印刷処理を継続させることができる錠剤印刷装置および錠剤印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、複数の錠剤を保持しつつ搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される錠剤の表面に向けてインクを吐出するヘッドと、前記搬送機構上の錠剤に対して前記ヘッドを、錠剤の搬送方向に直交する幅方向に相対移動させる移動機構と、前記ヘッドよりも搬送方向の下流側において、錠剤の表面を撮影する検査カメラと、前記錠剤印刷装置内の各部を動作制御する制御部と、を備え、前記搬送機構は、複数の錠剤を、前記幅方向に間隔をあけた複数の搬送列に整列させつつ搬送し、前記ヘッドは、インクの液滴を吐出する複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、前記搬送機構上の前記搬送列に対向する位置と、前記搬送列に対向しない位置との双方に亘って前記幅方向に配列され、前記制御部は、前記検査カメラにより取得された画像に基づいて、前記ノズルの異常の有無を検知し、前記ノズルの異常を検知した場合に、前記移動機構を動作させる。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の錠剤印刷装置であって、前記移動機構は、前記ヘッドを前記幅方向に移動させる。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の錠剤印刷装置であって、前記移動機構は、複数の錠剤の前記幅方向の最小間隔よりも小さい移動量で、錠剤に対して前記ヘッドを相対移動させる。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の錠剤印刷装置であって、錠剤の搬送方向に沿って配列され、互いに異なる色を含むインクを吐出する複数の前記ヘッドを有し、前記制御部は、前記検査カメラにより取得された画像に基づいて、前記ノズルの異常を検知した場合に、異常のあるノズルを有するヘッドを特定し、特定された前記ヘッドのみを移動させるように、前記移動機構を制御する。
【0011】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の錠剤印刷装置であって、複数の錠剤を前記複数の搬送列に整列させつつ、前記搬送機構に供給するフィーダと、前記フィーダ上の複数の錠剤を、前記搬送列ごとに堰き止める複数のストッパと、をさらに備え、前記制御部は、前記検査カメラにより取得された画像に基づいて、前記ノズルの異常を検知した場合に、異常のあるノズルに対応する前記搬送列を特定し、特定された前記搬送列の前記ストッパを動作させる。
【0012】
本願の第6発明は、第5発明の錠剤印刷装置であって、前記ストッパは、錠剤に当たる凹状の接触面を有する。
【0013】
本願の第7発明は、第5発明または第6発明の錠剤印刷装置であって、前記制御部は、前記ストッパを動作させ、前記ストッパと前記ヘッドとの間に位置する錠剤が前記ヘッドを通過した後、前記特定された搬送列へのインクの吐出を停止させる。
【0014】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれか1発明の錠剤印刷装置であって、前記制御部は、前記検査カメラにより取得された画像に基づいて、各錠剤の表面における印刷欠陥の有無を判定し、同一のノズルに対応する前記幅方向の位置において、前記印刷欠陥の発生率が、予め設定された閾値を超えた場合に、前記ノズルに異常があると判断する。
【0015】
本願の第9発明は、複数の錠剤を、複数の搬送列に整列させつつ搬送しながら、錠剤の搬送方向に直交する幅方向に沿って配列された複数のノズルを有するヘッドから錠剤の表面に向けてインクを吐出することにより、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷方法であって、a)前記ヘッドよりも搬送方向の下流側において、錠剤の表面を撮影し、得られた画像に基づいて、前記ノズルの異常の有無を検知する工程と、b)前記工程a)において前記ノズルの異常を検知した場合に、錠剤に対して前記ヘッドを、前記幅方向に相対移動させる工程と、を有する。
【0016】
本願の第10発明は、第9発明の錠剤印刷方法であって、前記工程b)では、前記ヘッドを前記幅方向に移動させる。
【0017】
本願の第11発明は、第9発明または第10発明の錠剤印刷方法であって、前記工程b)では、複数の錠剤の前記幅方向の最小間隔よりも小さい移動量で、錠剤に対して前記ヘッドを相対移動させる。
【0018】
本願の第12発明は、第9発明から第11発明までのいずれか1発明の錠剤印刷方法であって、前記ヘッドは、錠剤の搬送方向に沿って配列され、互いに異なる色を含むインクを吐出する複数のヘッドを含み、前記工程a)では、前記ノズルの異常を検知した場合に、異常のあるノズルを有するヘッドを特定し、前記工程b)では、特定された前記ヘッドのみを移動させる。
【0019】
本願の第13発明は、第9発明から第12発明までのいずれか1発明の錠剤印刷方法であって、c)前記工程a)おいて前記ノズルの異常を検知した場合に、異常のあるノズルに対応する前記搬送列を特定し、特定された前記搬送列における錠剤の供給を堰き止める工程をさらに有する。
【0020】
本願の第14発明は、第13発明の錠剤印刷方法であって、前記工程c)では、錠剤を供給するフィーダに、ストッパを突出させることによって、錠剤の供給を堰き止め、前記ストッパは、錠剤に当たる凹状の接触面を有する。
【0021】
本願の第15発明は、第14発明の錠剤印刷方法であって、d)前記工程c)において錠剤の供給を堰き止め、前記ストッパと前記ヘッドとの間に位置する錠剤が前記ヘッドを通過した後、前記特定された搬送列へのインクの吐出を停止させる。
【0022】
本願の第16発明は、第9発明から第15発明までのいずれか1発明の錠剤印刷方法であって、前記工程a)では、撮影により得られた画像に基づいて、各錠剤の表面における印刷欠陥の有無を判定し、同一のノズルに対応する前記幅方向の位置において、前記印刷欠陥の発生率が、予め設定された閾値を超えた場合に、前記ノズルに異常があると判断する。
【発明の効果】
【0023】
本願の第1発明〜第16発明によれば、一部のノズルに異常が発生した場合に、錠剤に対してヘッドを幅方向に相対移動させる。これにより、錠剤に対してインクを吐出するノズルを、異常が発生したノズルから他のノズルに切り替える。このようにすれば、ノズルに異常が発生したとしても、錠剤への印刷処理を継続させることができる。したがって、錠剤印刷の生産性を高めることができる。
【0024】
特に、本願の第2発明および第10発明によれば、錠剤を幅方向に移動させる機構を設ける必要がない。
【0025】
特に、本願の第3発明および第11発明によれば、小さい移動量で、使用するノズルを切り替えることができる。
【0026】
特に、本願の第5発明および第13発明によれば、搬送列ごとに錠剤の供給を止めることができる。これにより、ノズルの異常が発生した搬送列については印刷を停止して、不良品の発生を低減できる。また、異常のない搬送列については印刷を継続することで、生産性の低下を抑制できる。
【0027】
特に、本願の第6発明および第14発明によれば、ストッパが突出したときの錠剤への衝撃を緩和できる。
【0028】
特に、本願の第7発明および第15発明によれば、インクの無駄な吐出を停止させて、インクの使用量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0031】
<1.錠剤印刷装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤を搬送しながら、各錠剤の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、ホッパー10、フィーダ部20、搬送ドラム30、印刷前カメラ40、第1印刷部50、第2印刷部60、搬出コンベア70、および制御部80を有する。
【0032】
ホッパー10は、多数の錠剤を一括して装置内に受け入れるための投入部である。ホッパー10は、錠剤印刷装置1の筐体100の最上部に配置されている。ホッパー10は、筐体100の上面に位置する開口部11と、下方へ向かうにつれて徐々に収束する漏斗状の傾斜面12とを有する。開口部11へ投入された複数の錠剤は、傾斜面12に沿って直進フィーダ21へ流れ込む。
【0033】
フィーダ部20は、ホッパー10へ投入された複数の錠剤を、搬送ドラム30まで搬送する機構である。本実施形態のフィーダ部20は、直進フィーダ21、回転フィーダ22、および傾斜フィーダ23を有する。直進フィーダ21は、平板状の振動トラフ211を有する。ホッパー10から振動トラフ211に供給された複数の錠剤は、振動トラフ211の振動によって、回転フィーダ22側へ搬送される。回転フィーダ22は、円板状の回転台221を有する。振動トラフ211から回転台221の上面に落下した複数の錠剤は、回転台221の回転による遠心力で、回転台221の外周部付近へ集まる。
【0034】
傾斜フィーダ23は、回転台221の外周部から搬送ドラム30まで、斜め下向きに延びる板状のスロープ231を有する。
図2は、搬送ドラム30付近の斜視図である。
図2に示すように、スロープ231の上面には、複数(
図2の例では8本)の搬送溝232が設けられている。回転台221の外周部へ搬送された複数の錠剤は、それぞれ、複数の搬送溝232のいずれか1つに供給され、搬送溝232に沿って斜め下向きに流れ落ちる。このように、複数の錠剤は、複数の搬送溝232に分散供給されることによって、複数の搬送列に整列される。そして、各搬送列の複数の錠剤が、先頭のものから順に搬送ドラム30へ供給される。
【0035】
なお、本実施形態の傾斜フィーダ23には、搬送列ごとに錠剤を堰き止めるストッパ機構233が設けられている。ストッパ機構233の詳細については、後述する。
【0036】
搬送ドラム30は、傾斜フィーダ23から第1搬送コンベア51へ、複数の錠剤を受け渡す機構である。搬送ドラム30は、略円筒形状の外周面を有する。搬送ドラム30は、図示を省略したモータから得られる動力により、幅方向に延びる回転軸を中心として、
図1および
図2中の矢印の方向へ回転する。
図2に示すように、搬送ドラム30の外周面には、複数の吸着孔31が設けられている。複数の吸着孔31は、上述した複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送ドラム30の外周面に、周方向に沿って配列されている。
【0037】
搬送ドラム30の内部には、図示を省略した吸引機構が設けられている。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔31のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。吸着孔31は、当該負圧によって、傾斜フィーダ23から供給される錠剤を、1つずつ吸着保持する。また、搬送ドラム30の内部には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構は、搬送ドラム30の内側から後述する第1搬送コンベア51側へ向けて、局所的に加圧された気体を吹き付ける。これにより、第1搬送コンベア51に対向しない吸着孔31においては、錠剤の吸着状態を維持しつつ、第1搬送コンベア51に対向する吸着孔31のみにおいて、錠剤の吸着が解除される。搬送ドラム30は、このように、傾斜フィーダ23から供給される複数の錠剤を吸着保持しつつ回転し、それらの錠剤を、第1搬送コンベア51へ受け渡すことができる。
【0038】
印刷前カメラ40は、搬送ドラム30の各吸着孔31における錠剤の有無を確認するための撮像部である。印刷前カメラ40は、搬送ドラム30の外周面を撮影し、得られた画像データを制御部80へ送信する。制御部80は、受信した画像データに基づいて、搬送ドラム30の複数の吸着孔31に、それぞれ錠剤が保持されているか否かを検知する。これにより、各時刻における搬送列ごとの錠剤の有無を判断する。制御部80は、当該判断結果に基づき、搬送される錠剤のみにインクを吐出するように、第1ヘッドユニット52および第2ヘッドユニット62を制御する。
【0039】
第1印刷部50は、錠剤の一方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第1印刷部50は、第1搬送コンベア51、第1ヘッドユニット52、第1検査カメラ53、および第1定着部54を有する。
【0040】
第1搬送コンベア51は、一対のプーリ511と、一対のプーリ511の間に掛け渡された環状の搬送ベルト512とを有する搬送機構である。搬送ベルト512は、その一部分が、搬送ドラム30の外周面に近接して対向するように配置される。一対のプーリ511の一方は、図示を省略したモータから得られる動力で回転する。これにより、搬送ベルト512が、
図1および
図2中の矢印の方向へ回動する。このとき、一対のプーリ511の他方は、搬送ベルト512の回動に伴い従動回転する。
【0041】
図2に示すように、搬送ベルト512には、複数の吸着孔513が設けられている。複数の吸着孔513は、複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送方向に配列されている。すなわち、複数の吸着孔513は、幅方向および搬送方向に、それぞれ間隔をあけて配列されている。搬送ベルト512における複数の吸着孔513の幅方向の間隔は、搬送ドラム30における複数の吸着孔31の幅方向の間隔と等しい。
【0042】
搬送ベルト512には、図示を省略した吸引機構が設けられている。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔513のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。吸着孔513は、当該負圧によって、搬送ドラム30から渡される錠剤を、1つずつ吸着保持する。これにより、第1搬送コンベア51は、複数の錠剤を、幅方向に間隔をあけた複数の搬送列に整列された状態で保持しつつ、搬送する。また、搬送ベルト512には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構を動作させると、後述する第2搬送コンベア61に対向する吸着孔513の気圧が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔513における錠剤の吸着が解除され、第1搬送コンベア51から第2搬送コンベア61へ、錠剤が受け渡される。
【0043】
第1ヘッドユニット52は、第1搬送コンベア51により搬送される錠剤の表面に向けてインクを吐出する、インクジェット方式のヘッドユニットである。第1ヘッドユニット52は、搬送方向に沿って配列された4つのヘッド521を有する。4つのヘッド521は、錠剤の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインクを吐出する。これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤の表面に、多色画像が記録される。
【0044】
各ヘッド521は、インクの液滴を吐出可能な複数のノズル522を有する。
図3は、搬送ベルト512に保持された複数の錠剤9と、複数のノズル522との位置関係を、概念的に示した図である。
図3に示すように、複数のノズル522は、各ヘッド521の下面に、幅方向に沿って配列されている。
図3の例では、複数のノズル522が搬送方向の前方と後方とに2列に配置されている。そして、各列の複数のノズル522が、幅方向に沿って交互に配置(千鳥状に配置)されている。このようにすれば、複数のノズル522を、幅方向により密に配置することができる。ただし、複数のノズル522は、搬送方向の同一位置に一列に配置されていてもよく、三列以上に配置されていてもよい。
【0045】
上述の通り、搬送ベルト512は、複数の錠剤9を複数の搬送列L(本実施形態では8列)に整列させつつ搬送する。複数のノズル522は、各搬送列Lの上方に位置するノズル522と、各搬送列Lの隙間の上方に位置するノズル522と、を含む。すなわち、複数のノズル522は、搬送ベルト512上の複数の搬送列Lに対向する位置と、搬送列Lに対向しない位置との双方に亘って、幅方向に配列されている。印刷処理時には、複数のノズル522のうち、搬送列Lの上方に位置するノズル522のみからインクの液滴が吐出される。
【0046】
なお、ノズル522からのインクの吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル522内のインクを加圧して吐出させる、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、ヒータに通電してノズル522内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式を用いてもよい。また、第1ヘッドユニット52から吐出されるインクには、食品衛生法で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0047】
第1検査カメラ53は、第1ヘッドユニット52による印刷結果を確認するための撮像部である。第1検査カメラ53は、第1ヘッドユニット52よりも搬送方向の下流側において、第1搬送コンベア51により搬送される複数の錠剤の表面を撮影し、得られた画像データを制御部80へ送信する。制御部80は、受信した画像データに基づいて、各錠剤の表面に印刷された画像に、位置ずれやドット欠けなどの印刷欠陥が無いかどうかを判断する。また、制御部80は、当該印刷欠陥に基づいて、第1ヘッドユニット52のノズル522に異常が発生していないかどうか判断する。ノズル522の異常を検出する処理の詳細については、後述する。
【0048】
第1定着部54は、第1ヘッドユニット52から吐出されたインクを、錠剤に定着させる機構である。本実施形態では、第1検査カメラ53よりも搬送方向の下流側に、第1定着部54が配置されている。ただし、第1ヘッドユニット52と第1検査カメラ53との間に、第1定着部54が配置されていてもよい。第1定着部54には、例えば、第1搬送コンベア51により搬送される錠剤へ向けて、熱風を吹き付ける熱風乾燥式のヒータが用いられる。錠剤の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤の表面に定着する。
【0049】
第2印刷部60は、第1印刷部50による印刷後に、錠剤の他方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第2印刷部60は、第2搬送コンベア61、第2ヘッドユニット62、第2検査カメラ63、および第2定着部64を有する。第2搬送コンベア61は、第1搬送コンベア51から受け渡された複数の錠剤を保持しつつ搬送する。第2ヘッドユニット62は、第2搬送コンベア61により搬送される錠剤の表面に向けてインクを吐出する。第2検査カメラ63は、第2ヘッドユニット62よりも搬送方向の下流側において、第2搬送コンベア61により搬送される複数の錠剤の表面を撮影する。第2定着部64は、第2ヘッドユニット62から吐出されたインクを、錠剤に定着させる。
【0050】
第2搬送コンベア61、第2ヘッドユニット62、第2検査カメラ63、および第2定着部64の各々の詳細については、上述した第1搬送コンベア51、第1ヘッドユニット52、第1検査カメラ53、および第1定着部54と同等であるため、重複説明を省略する。
【0051】
搬出コンベア70は、印刷後の複数の錠剤を、錠剤印刷装置1の筐体100の外部へ搬出する機構である。搬出コンベア70の上流側の端部は、第2搬送コンベア61の下方に位置する。搬出コンベア70の下流側の端部は、筐体100の外部に位置する。搬出コンベア70には、例えば、ベルト搬送機構が用いられる。第2印刷部60における印刷処理の後、複数の錠剤は、吸着孔の吸引が解除されることによって、第2搬送コンベア61から搬出コンベア70の上面に落下する。そして、搬出コンベア70によって、複数の錠剤が、筐体100の外部へ搬出される。
【0052】
制御部80は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部80と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部80は、CPU等の演算処理部81、RAM等のメモリ82、およびハードディスクドライブ等の記憶部83を有するコンピュータにより構成される。記憶部83内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0053】
また、
図4に示すように、制御部80は、上述した直進フィーダ21、回転フィーダ22、搬送ドラム30(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、印刷前カメラ40、第1搬送コンベア51(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、第1ヘッドユニット52(4つのヘッド521を含む)、第1検査カメラ53、第1定着部54、第2搬送コンベア61、第2ヘッドユニット62、第2検査カメラ63、第2定着部64、および搬出コンベア70と、それぞれ通信可能に接続されている。また、制御部80は、後述する昇降機構524、移動機構525、ヘッド洗浄部526、およびエアシリンダ236とも、それぞれ通信可能に接続されている。制御部80は、記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムPやデータをメモリ82に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部81が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤に対する印刷処理が進行する。
【0054】
<2.ヘッドに付帯する機構について>
図5は、第1ヘッドユニット52のヘッド521に付帯する機構を、搬送方向の下流側から見た図である。
図5に示すように、第1ヘッドユニット52は、ヘッド支持部523、昇降機構524、移動機構525、およびヘッド洗浄部526を、ヘッド521毎に備えている。ヘッド521は、ヘッド支持部523に固定されることによって、水平に支持される。ヘッド支持部523の材料には、例えば、剛性の高い金属が用いられる。昇降機構524は、ヘッド521およびヘッド支持部523を、一体として上下に昇降移動させる。昇降機構524には、例えば、エアシリンダが用いられる。
【0055】
移動機構525は、ヘッド521、ヘッド支持部523、および昇降機構524を、一体として幅方向に水平移動させる。移動機構525には、例えば、モータから得られる回転運動を、ボールねじにより直進運動に変換する機構が用いられる。移動機構525を動作させると、ヘッド支持部523は、ボールねじおよびボールねじと平行に延びるガイド軸に沿って、幅方向に移動する。これにより、第1搬送コンベア51の上方位置と、ヘッド洗浄部526の上方位置との間で、ヘッド521を移動させることができる。
【0056】
ヘッド洗浄部526は、印刷処理の前または後に、ヘッド521を洗浄する機構である。ヘッド洗浄部526の上方位置にヘッド521を配置した状態で、昇降機構524によりヘッド521を下降させると、ヘッド521の下面が、ヘッド洗浄部526内に収容される。ヘッド洗浄部526は、ヘッド521の下面を洗浄液中に浸漬させたり、ヘッド521の複数のノズル522を負圧により吸引したりして、ヘッド521の下面を洗浄する。これにより、ノズル522の目詰まり等が解消される。
【0057】
また、本実施形態の移動機構525は、ヘッド521を、錠剤9の搬送列Lの幅方向の最小間隔dよりも小さい単位で、幅方向に移動させることができる。移動機構525を細かく動作させると、第1搬送コンベア51上の錠剤9に対するヘッド521の相対位置が、幅方向に細かく変化する。その結果、ヘッド521の複数のノズル522のうち、各搬送列Lの上方に位置するノズル522が変更され、各搬送列Lの錠剤9に対してインクを吐出するノズル522が切り替えられる。
【0058】
なお、第2ヘッドユニット62にも、同様に、ヘッド支持部、昇降機構、移動機構、およびヘッド洗浄部が、ヘッド621毎に設けられている。したがって、第2ヘッドユニット62も、ヘッド621毎に洗浄処理を行うことができる。また、第2ヘッドユニット62も、各ヘッド621を幅方向に細かく変位させて、各搬送列Lの錠剤9に対してインクを吐出するノズル522を切り替えることができる。
【0059】
<3.ストッパ機構について>
続いて、傾斜フィーダ23に設けられたストッパ機構233について、説明する。ストッパ機構233は、傾斜フィーダ23の搬送溝232ごと(すなわち、錠剤9の搬送列ごと)に設けられている。
【0060】
図6は、1つのストッパ機構233の構造を示した図である。
図6に示すように、ストッパ機構233は、ストッパ部材234、付勢ばね235、およびエアシリンダ236を備えている。ストッパ部材234は、スロープ231の下方に配置されたクランク状の部材である。ストッパ部材234の材料には、例えば、錠剤9への接触が許容されるポリアセタールやアクリル等の樹脂が用いられる。ストッパ部材234は、幅方向に延びる回転軸234aを中心として、回転可能に支持されている。ストッパ部材234の一方の端部(以下、「第1端234b」と称する)は、付勢ばね235とエアシリンダ236との間に配置されている。ストッパ部材234の他方の端部(以下、「第2端234c」と称する)は、スロープ231に設けられた貫通孔231a内に配置されている。
【0061】
付勢ばね235は、スロープ231を支持する基台237と、ストッパ部材234の第1端234bとの間に、自然長よりも圧縮された状態で介挿されている。このため、ストッパ部材234の第1端234bは、付勢ばね235の反発力によって、常にエアシリンダ236側へ向けて加圧されている。
【0062】
エアシリンダ236は、シリンダケース236aと、シリンダケース236a内に供給される空気圧によってシリンダケース236aから突出および退避するロッド236bとを有する。ロッド236bを付勢ばね235側へ突出させると、ロッド236bに押されて付勢ばね235が縮み、ストッパ部材234の第1端234bが、基台237側へ変位する(
図6中の二点鎖線の状態)。この状態では、ストッパ部材234の第2端234cは、スロープ231の上面よりも下側に位置する。したがって、錠剤9は、スロープ231の当該搬送溝232において、第2端234cの上方を通過して、下流側へ流れることができる。
【0063】
一方、ロッド236bをシリンダケース236a側へ退避させると、付勢ばね235からの圧力によって、ストッパ部材234の第1端234bが、エアシリンダ236側へ変位する(
図6中の実線の状態)。そうすると、ストッパ部材234の第2端234cは、スロープ231の上面よりも上側へ突出する。このように、ストッパ部材234の第2端234cをスロープ231の上面側へ突出させると、スロープ231の当該搬送溝232を流れる錠剤9は、
図6のように、ストッパ部材234の第2端234cに接触して停止する。これにより、当該搬送溝232における錠剤9の流れが堰き止められる。
【0064】
図7は、ストッパ部材234の第2端234cを、上方から見た図である。ストッパ部材234の第2端234cは、搬送方向上流側を向く接触面234dを有する。スロープ231の上流側から流れる錠剤9は、接触面234dに接触することによって、停止する。
図7のように、接触面234dは、凹状に湾曲していることが好ましい。このようにすれば、接触面234dが凸状または平坦である場合と比べて、第2端234cを突出させたときの錠剤9への衝撃を緩和できる。したがって、第2端234cを突出させたときに、錠剤9が上方へ飛び出したり、錠剤9が損傷したりすることを、抑制できる。
【0065】
<4.ノズル異常時の動作について>
続いて、錠剤印刷装置1におけるノズル522の異常検知および異常が生じたときの動作について、説明する。この錠剤印刷装置1は、第1ヘッドユニット52および第2ヘッドユニット62の双方について、ノズル522の異常の有無を検知し、検知結果に応じた動作を行う。ただし、以下の説明では、理解容易のため、第1ヘッドユニット52におけるノズル522の異常検知のみに着目して説明する。
【0066】
図8は、第1ヘッドユニット52におけるノズル522の異常検知および異常が生じたときの動作の流れを示したフローチャートである。錠剤印刷装置1の稼働時には、常に、第1検査カメラ53が、第1ヘッドユニット52よりも搬送方向の下流側において、搬送される複数の錠剤9を撮影する。これにより、第1ヘッドユニット52による印刷後の複数の錠剤9の画像が取得される(ステップS1)。取得された画像は、第1検査カメラ53から制御部80へ送信される。制御部80は、得られた画像に基づいて、ノズル522の異常の有無を検知する(ステップS2)。
【0067】
図9は、ステップS2の検知処理を、より詳細に示したフローチャートである。ステップS2では、まず、制御部80は、受信した画像に基づいて、各錠剤9の表面の印刷画像に、位置ずれやドット欠けなどの印刷欠陥が無いかどうかを判断する(ステップS21)。印刷欠陥が無い場合(ステップS21においてnoの場合)は、第1ヘッドユニット52のノズル522に異常は発生していないと判断する(ステップS22)。
【0068】
一方、印刷欠陥がある場合(ステップS21においてyesの場合)には、次に、同一のノズル522に対応する印刷欠陥の単位時間あたりの発生率を算出する(ステップS23)。印刷欠陥がどのヘッド521のどのノズル522に対応するかは、印刷欠陥を構成する色と、印刷欠陥の幅方向の位置とに基づいて、特定される。そして、同一のノズル522に対応する印刷欠陥の発生率が、予め設定された閾値を超えているかどうかを判定する(ステップS24)。
【0069】
当該印刷欠陥の発生率が、閾値を超えていない場合(ステップS24においてnoの場合)には、ノズル522に異常は無いと判断する(ステップS22)。一方、当該印刷欠陥の発生率が、閾値を超えた場合には、当該印刷欠陥に対応するノズル522に異常が発生していると判断する(ステップS25)。
【0070】
図8に戻る。ステップS2において、ノズル522の異常が無いと判断された場合には、ステップS1に戻り、引き続き画像の取得(ステップS1)と、画像に基づくノズル522の異常検知(ステップS2)とを繰り返す。
【0071】
一方、ステップS2において、ノズル522の異常があると判断された場合には、当該ノズル522が属するヘッド521を、幅方向に移動させることが可能かどうかを判断する(ステップS3)。例えば、錠剤印刷装置1における印刷処理の開始後、当該ヘッド521において初めての異常発生である場合には、ヘッド521の位置を幅方向にずらすことで、問題が解消される可能性が高い。そのような場合には、ヘッド521を幅方向に移動させることが可能と判断する。
【0072】
その場合、まず、錠剤9の搬送および印刷を一時的に停止させる(ステップS4)。そして、移動機構525を動作させることによって、ヘッド521の幅方向の位置を変更する(ステップS5)。
図10は、ステップS5におけるヘッド521の移動の様子を示した図である。
図10の例では、移動前のヘッド521において、黒塗りで示したノズル522aに異常が発生していると判断されたものとする。当該ノズル522aは、搬送ベルト512上の一部の搬送列Lの上方に位置する。ステップS5では、ヘッド521を幅方向に移動させることで、当該ノズル522aを、搬送列Lの上方から外れた位置に配置する。その結果、各搬送列Lの上方には、異常が発生していないノズル522またはそれまで使用していなかったノズル522が配置されることとなる。
【0073】
ヘッド521の移動が完了すると、錠剤印刷装置1は、錠剤9の搬送および印刷を再開する(ステップS6)。その後、再びステップS1に戻り、ステップS1以降の処理を行う。
【0074】
このように、この錠剤印刷装置1では、一部のノズル522に異常が発生したとしても、錠剤9に対してヘッド521を幅方向に相対移動させることで、錠剤9に対してインクを吐出するノズル522を、異常が発生したノズル522aから、他のノズル522に切り替えることができる。したがって、ヘッド521の洗浄や大がかりなメンテナンスを行うことなく、錠剤9への印刷処理を継続させることができる。これにより、錠剤印刷装置1の生産性を高めることができる。
【0075】
一方、錠剤印刷装置1における印刷処理の開始後、同一のヘッド521において複数回の異常が発生し、異常と判断された全てのノズル522を搬送列Lの上方位置から外すように、ヘッド521を移動させることができない場合には、ステップS3において、ヘッド521を幅方向に移動させることが不可能と判断する。
【0076】
その場合、異常と判断されたノズル522に対応する搬送列Lについて、ストッパ機構233を動作させる。すなわち、該当する搬送溝232の下方に設けられたエアシリンダ236のロッド236bを、シリンダケース236a側へ退避させる。これにより、ストッパ部材234の第2端234cを、スロープ231の上面よりも上方へ突出させる(ステップS7)。そうすると、スロープ231の当該搬送溝232における錠剤9の流れが、ストッパ部材234によって堰き止められる。したがって、当該搬送溝232から搬送ドラム30への錠剤9の供給が停止する。
【0077】
その後、しばらく経つと、当該搬送列において、ストッパ部材234の第2端234cから第1ヘッドユニット52までの搬送経路上に存在していた錠剤9が、全て第1ヘッドユニット52を通過する。そうすると、印刷前カメラ40により取得される画像から、当該搬送列の錠剤9が無くなる。制御部80は、印刷前カメラ40により取得される画像に基づいて、錠剤9が存在する搬送列に対してのみ、インクを吐出する。すなわち、異常が発生した搬送列については、第1ヘッドユニット52からのインクの吐出を停止する(ステップS8)。これにより、インクの無駄な吐出を停止させて、インクの使用量を低減する。
【0078】
このように、この錠剤印刷装置1では、ノズル522の異常が発生した搬送列における錠剤9の流れを堰き止めて、当該搬送列における印刷を停止させることができる。これにより、ノズル522に異常が生じたまま印刷を継続することを防止して、印刷欠陥の発生を低減できる。また、異常のない搬送列については、印刷を継続する。これにより、錠剤印刷装置1の生産性が過度に低下することを抑制する。
【0079】
<5.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0080】
上記の実施形態では、ステップS5において、錠剤9の幅方向の位置を変えることなく、ヘッド521を幅方向に移動させていた。しかしながら、ヘッド521の幅方向の位置を固定して、錠剤9を幅方向に移動させるようにしてもよい。すなわち、本発明の錠剤印刷装置は、搬送機構上の複数の錠剤とヘッドとを、幅方向に相対移動させる移動機構を有していればよい。ただし、上記の実施形態のように、ヘッド521を幅方向に移動させるようにすれは、洗浄のためにヘッド521を幅方向に移動させる機構と、ノズル522の切り替えのためにヘッド521を幅方向に移動させる機構とを、共通化できる。したがって、錠剤印刷装置1を、よりシンプルに構成することができる。
【0081】
また、上記の実施形態では、ストッパ部材234が、スロープ231の下側に配置されていた。そして、ストッパ部材234の第2端234cを、スロープ231に設けられた貫通孔231aから突出させていた。しかしながら、ストッパ部材234を、スロープ231の上側に配置し、ストッパ部材234を下降させることによって、錠剤9を堰き止めるようにしてもよい。このようにすれば、スロープ231に貫通孔231aを設ける必要がなくなる。
【0082】
また、上記の錠剤印刷装置1は、第1印刷部50および第2印刷部60によって、錠剤9の両面に印刷を行う装置であった。しかしながら、本発明の錠剤印刷装置は、錠剤9の片面のみに印刷を行う装置であってもよい。
【0083】
また、錠剤印刷装置1の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。