【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による既設道路の更新施工方法は、二以上の鋼製の主桁上に鉄筋コンクリート製の床版が設置されてなる既設道路の更新方法であって、床版のうち、主桁上の部分のみを残置し、他の部分を撤去する第一のステップ、下面に二以上の凹部を備えた新設の床版ブロックを、それぞれの凹部が前記二以上の主桁上の部分に嵌るようにして設置し、この床版ブロックの設置を道路の延伸方向に繰り返す第二のステップからなるものである。
【0011】
本発明の既設道路の更新施工方法は、主桁を残し、主桁上にある鉄筋コンクリート製の床版を撤去するに当たり、床版の中で主桁上の部分のみを撤去せずに残し、その他の床版を撤去することに特徴を有する施工方法である。
【0012】
主桁上の床版を撤去しないことから、主桁の上面から突出して床版内に埋設されているずれ止めを露出させるようにして床版を撤去し、主桁の上面を清掃する際に要する多大な斫り時間を解消することができ、従来の更新施工方法に比して施工時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
本発明の更新施工方法では、二以上の主桁において、床版の主桁上の部分のみを残してそれ以外の床版を撤去した後、プレキャスト製の床版ブロックを各主桁に架け渡すようにして設置する。たとえば、主桁が二本の場合は二本の主桁に床版ブロックが架け渡され、主桁が五本の場合は五本の主桁に床版ブロックが架け渡される。この際、前者の形態では床版ブロックの下面の二箇所に凹部が設けてあり、後者の形態では床版ブロックの下面の五箇所に凹部が設けてある。
【0014】
ここで、床版ブロックはその下面において各主桁上の部分が嵌り込む凹部を備えており、各主桁上の部分をそれぞれ対応する凹部に嵌め込みながら、二以上の主桁への床版ブロックの設置がおこなわれる。
【0015】
このように、二以上の主桁に対し、それぞれの主桁上の部分を対応する凹部に嵌め込みながら床版ブロックが設置されることから、床版ブロックが主桁の側方へずれる惧れはない。
【0016】
第二のステップでは、この床版ブロックの設置を道路の延伸方向に繰り返しおこなうことにより、多数の床版ブロックからなる新設道路が施工され、既設道路の更新施工が完了する。
【0017】
上記するように、主桁上の部分が凹部に嵌り込むことで床版ブロックが主桁の側方にずれる惧れがないことに加えて、道路の延伸方向に多数の床版ブロックが設置されていることから、床版ブロックが道路の延伸方向へずれる惧れもない。
【0018】
また、本発明による既設道路の更新施工方法の好ましい実施の形態において、前記主桁の上面にずれ止めが取り付けてあり、床版がずれ止めを埋設して既設道路が構成されており、第一のステップで残置される前記主桁上の部分が、主桁上の鉄筋コンクリートのうち、ずれ止めを埋設する中立軸よりも下方の主桁側の部分のみである方法を挙げることができる。
【0019】
既設床版の主桁上の部分のうち、中立軸よりも上の部分は曲げモーメントによる引張領域(負の曲げモーメントの領域)となっており、この領域ではクラックが生じている。
【0020】
中立軸よりも下側の領域には、主桁と床版を繋ぐずれ止めが埋設されており、この領域は主桁上の部分の中でも圧縮領域となることから、クラックの発生がなく、健全な領域となっている。そこで、本発明の更新施工方法では、主桁上の部分を残置するものの、主桁上の部分でもクラックが含まれる中立軸よりも上の部分は撤去し、中立軸よりも下の健全な部分を本明細書における「主桁上の部分」として採用し、残置するものである。
【0021】
このように主桁上の部分の中でも健全な領域のみを残してこの領域と床版ブロックとの一体化を図ることにより、接続構造の構成要素の一方が古い鉄筋コンクリートからなる主桁上の部分であっても、高い接続強度を期待することができる。
【0022】
また、本発明による既設道路の更新施工方法の好ましい実施の形態において、第二のステップでは、前記主桁上の部分の上に充填材を充填した後に床版ブロックの凹部を該主桁上の部分に嵌めるものである。
【0023】
充填材を介して主桁上の部分と床版ブロックを接続することにより、既設の主桁上の部分と新設の床版ブロックの接続界面が所定のせん断付着強度を有することとなり、主桁と床版ブロック全体の有効高さを備えた合成梁を形成することができる。より具体的には、このせん断付着強度が接続界面に生じる水平せん断力以上の強度を有していることで、主桁上の部分と床版ブロックが同じ挙動を示す一体化(上記する合成梁の形成)を図ることができる。したがって、たとえば主桁上のずれ止めの有する水平せん断強度と同程度のせん断付着強度を備えた充填材を適用することで、上記する合成梁を形成することができる。
【0024】
ここで、適用する充填材としては、普通モルタルなどのセメント系充填材、エポキシ樹脂やエポキシ樹脂モルタルなどのエポキシ系充填材、アクリル樹脂やアクリル樹脂モルタルなどのアクリル系充填材、ポリマー系充填材などを挙げることができる。
【0025】
また、本発明による既設道路の更新施工方法の好ましい実施の形態は、第二のステップの実施に当たり、前記新設の床版ブロックの上面において、該床版ブロックの長手方向に延びて二以上の凹部に跨る長さの補強材を取り付けておくものである。
【0026】
床版ブロックがその下面に複数の凹部を備えていることで、床版ブロックの設置に際して該床版ブロックがクレーン等で吊り上げられた際に、凹部を有する箇所が構造弱部となり、床版ブロックが過度に撓んだり、床版ブロックの凹部周辺を起点としたクラックが発生する可能性がある。
【0027】
そこで、本実施の形態の更新施工方法では、新設の床版ブロックの上面において、該床版ブロックの長手方向(道路の延伸方向に直交する方向)に延びて二以上の凹部に跨る長さの補強材を取り付けておくものである。
【0028】
この補強材は、H型鋼やI型鋼、棒状のコンクリートブロックなど、所定の剛性を備えたものから形成できる。
【0029】
また、本発明は更新施工された道路にも及ぶものであり、この道路は、二以上の鋼製の主桁と、主桁上にあって更新されずに残置された鉄筋コンクリート製の部分と、下面に二以上の凹部を備え、凹部が鉄筋コンクリート製の部分に嵌って設置されている新設の床版ブロックと、からなり、複数の前記床版ブロックが道路の延伸方向に併設されているものである。
【0030】
本発明の更新施工された道路は、既述する本発明の既設道路の更新施工方法にて施工されたものである。
【0031】
主桁上に更新されずに鉄筋コンクリート製の部分を残置し、ここに床版ブロックの下面の凹部を嵌め込んで双方を一体化することにより、短工期にて更新施工された道路を施工することができる。
【0032】
また、この更新施工された道路においても、前記主桁の上面にずれ止めが取り付けてあり、残置された鉄筋コンクリート製の部分が、更新前の主桁上の鉄筋コンクリートのうち、ずれ止めを埋設する中立軸よりも下方の主桁側の部分であるのが好ましい。
【0033】
中立軸よりも下方の主桁側の部分は、クラックのない健全な部分であることより、新旧の鉄筋コンクリート同士の接続部に関し、高い接続強度を期待することができる。
【0034】
さらに、鉄筋コンクリート製の部分と床版ブロックの凹部の間に充填材が介在しているのが好ましい。
【0035】
充填材を介して主桁上の鉄筋コンクリート製の部分と床版ブロックを接続することにより、既設の鉄筋コンクリート製の部分と新設の床版ブロックの接続界面が所定のせん断付着強度を有することとなり、主桁と床版ブロック全体の有効高さを備えた合成梁を形成することができ、作用する活荷重に起因する鉛直変位を可及的に小さくすることができる。