特許第6541522号(P6541522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541522
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】通信システム及び信号特性表示方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20190628BHJP
   H04L 27/18 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H04L27/00 A
   H04L27/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-177246(P2015-177246)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-55230(P2017-55230A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】517121630
【氏名又は名称】APRESIA Systems株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 統
【審査官】 太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/038554(WO,A2)
【文献】 特開2011−71812(JP,A)
【文献】 特開2007−53494(JP,A)
【文献】 特開平8−254559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00
H04L 27/18
H04B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と管理端末とを備える通信システムであって、
前記管理端末は、
コマンドラインインタフェースと、
管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するコマンド送信部と、
前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のためのコマンドラインインタフェースデータを受信してコマンドラインインタフェース画面へ出力するコマンドラインインタフェースデータ受信部と、
を有し、
前記通信装置は、
所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部と、
前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す原データを取得する原データ取得部と、
前記コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するコマンドラインインタフェース情報取得部と、
前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含む前記コマンドラインインタフェースデータを作成する変換部と、
前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するコマンドラインインタフェースデータ送信部と、
を有し、
前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む、
通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の通信システムにおいて、
前記変換部は、前記コマンドラインインタフェースデータを作成する際、
前記コマンドラインインタフェース画面の最大領域内に、前記信号特性表示情報を表示するための第1の領域を確保し、
前記第1の領域における文字のマスに、前記原データにおける時点毎の複数の信号点をプロットし、
前記マス毎に、前記信号点の個数をカウントし、
前記マス毎に、前記個数に応じて、複数の段階における該当する段階を判断し、
前記マス毎に、前記段階に応じて、特定の文字を割り当てる、
通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の通信システムにおいて、
前記変換部は、前記第1の領域に前記信号空間ダイヤグラムを表示する場合に、前記原データにおける前記信号点のI軸及びQ軸の数値の最大範囲、または当該最大範囲のうち前記管理者により指定された範囲を表示対象として、前記最大領域に合わせた正方形または長方形の領域となるように前記第1の領域の縦横のサイズを決定する、
通信システム。
【請求項4】
請求項1記載の通信システムにおいて、
前記コマンドラインインタフェース情報取得部は、前記管理端末との通信に基づいて、前記コマンドラインインタフェース情報を取得し、
前記コマンドラインインタフェース情報は、前記コマンドラインインタフェース画面における縦横のサイズを示す情報と、使用文字セットにおける文字サイズを示す情報と、を含む、
通信システム。
【請求項5】
請求項1記載の通信システムにおいて、
前記通信装置は、品質分析部を備え、
前記品質分析部は、前記原データを対象に、所定の品質分析処理により、所定の品質指標値を算出し、当該品質指標値を含む品質分析結果情報を、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための、文字で表現された品質分析結果データを作成して、前記コマンドラインインタフェースデータに添える、
通信システム。
【請求項6】
通信装置と管理端末とを備える通信システムであって、
前記管理端末は、
コマンドラインインタフェースと、
管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するコマンド送信部と、
前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のための原データを受信する原データ受信部と、
コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するコマンドラインインタフェース情報取得部と、
前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含むコマンドラインインタフェースデータを作成する変換部と、
前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドラインインタフェース画面へ出力するコマンドラインインタフェースデータ出力部と、
を有し、
前記通信装置は、
所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部と、
前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す前記原データを取得する原データ取得部と、
前記原データを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信する原データ送信部と、
を有し、
前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む、
通信システム。
【請求項7】
通信装置と管理端末とを備える通信システムにおける信号特性表示方法であって、
前記管理端末は、コマンドラインインタフェースを有し、
前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部を有し、
前記管理端末で実行するステップとして、
管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するステップと、
前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のためのコマンドラインインタフェースデータを受信してコマンドラインインタフェース画面へ出力するステップと、
を有し、
前記通信装置で実行するステップとして、
前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す原データを取得するステップと、
前記コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するステップと、
前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含む前記コマンドラインインタフェースデータを作成するステップと、
前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するステップと、
を有し、
前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む、
信号特性表示方法。
【請求項8】
通信装置と管理端末とを備える通信システムにおける信号特性表示方法であって、
前記管理端末は、コマンドラインインタフェースを有し、
前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部を有し、
前記管理端末で実行するステップとして、
管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するステップと、
前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のための原データを受信するステップと、
コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するステップと、
前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含むコマンドラインインタフェースデータを作成するステップと、
前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドラインインタフェース画面へ出力するステップと、
を有し、
前記通信装置で実行するステップとして、
前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す前記原データを取得するステップと、
前記原データを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するステップと、
を有し、
前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む、
信号特性表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関する。また、本発明は、ネットワークの伝送信号の特性等を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムとして、利用者網と光伝送網とが接続されてネットワークを構成するシステム等がある。その通信システムとして、利用者網に接続されてレイヤ2やレイヤ3の転送を行うスイッチ装置と、光伝送網に接続されて波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を行う伝送装置とが接続されるシステムがある。この伝送装置は、メディアコンバータとも呼ばれ、利用者網からの電気信号または光信号を、WDMにより光信号に変換し、光伝送網の光ケーブルに乗せて伝送する。WDMでは、1本の光ケーブルに、複数の異なる波長の光信号が乗せられる。
【0003】
ネットワークの伝送信号の特性等の表示に係わる先行技術例としては、特開2012−124834号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、伝送路特性表示装置として、直交周波数分割多重変調方式に対応した伝送信号の特性を表すIQモニタ図形を、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)に対応した画面に表示する旨が記載されている。このIQモニタ図形は、変調による信号点を2次元平面上に表現する情報であり、一般に、信号空間ダイヤグラム(Constellation diagram)やコンステレーション図とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−124834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における伝送信号の特性をGUI画面に表示する方式は、特性を視覚的に詳細に表現できる利点がある。特に、信号空間ダイヤグラムを表示する用途の場合、特許文献1のように、GUI方式を採用することで、特性を詳細に表示できる。しかし、GUI方式は、GUI処理の実現のためのハードウェア及びソフトウェアの資源及びその実装を必要とし、開発コスト等のコストが高くなる点がある。また、GUI方式では、モニタに係わる処理時間が長くなり、高速度の応答表示には向かない点がある。
【0006】
一方、一般的なコマンドラインインタフェース(CLI)を用いて情報を画面に表示する方式は、GUI処理のためのハードウェア及びソフトウェアの資源及びその実装が不要であり、低コストで実現できる点がある。また、CLI方式は、モニタに係わる処理時間が短くなり、高速度の応答表示に向いている点がある。
【0007】
従来の通信システムでは、CLI方式で運用管理保守(OAM:Operations, Administration, and Maintenance)を行っている。即ち、CLIを持つ管理端末から、スイッチ装置や伝送装置にアクセスして、OAMを行っている。OAMは、例えば構成管理、状態検出、障害対応、等が挙げられる。
【0008】
従来の通信システムにおいて、伝送信号の特性を表す信号空間ダイヤグラム等の情報を管理端末の画面にGUI方式で表示する場合、従来のCLI方式のOAMと、そのGUI方式の信号特性表示とが並存し、方式が別になってしまう。その場合、管理端末には、CLI及びGUIの両方のハードウェア及びソフトウェアの実装が必要であり、コストが高くなる。また、管理者は、管理端末で、CLI方式のOAMと、GUI方式の信号特性表示とを使い分けて連係する作業が必要となり、作業の効率や品質が低下する恐れがある。
【0009】
即ち、従来の通信システムに、信号特性表示機能を実装するにあたり、GUI方式の信号特性表示を適用した場合、コスト、処理時間、作業効率、等の点で課題がある。
【0010】
本発明の目的は、通信システムの信号特性モニタを含むOAMに関して、従来のCLI方式のOAMと共存しつつ、好適な信号特性表示を低コストで実現でき、OAMに係わる作業の効率や品質を確保または向上できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のうち代表的な実施の形態は、通信システム及び信号特性表示方法であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0012】
(1) 一実施の形態の通信システムは、通信装置と管理端末とを備える通信システムであって、前記管理端末は、コマンドラインインタフェースと、管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するコマンド送信部と、前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のためのコマンドラインインタフェースデータを受信してコマンドラインインタフェース画面へ出力するコマンドラインインタフェースデータ受信部と、を有し、前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部と、前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す原データを取得する原データ取得部と、前記コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するコマンドラインインタフェース情報取得部と、前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含む前記コマンドラインインタフェースデータを作成する変換部と、前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するコマンドラインインタフェースデータ送信部と、を有し、前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む。
【0013】
(2) 一実施の形態の通信システムは、通信装置と管理端末とを備える通信システムであって、前記管理端末は、コマンドラインインタフェースと、管理者の操作に基づいて信号特性表示のための所定のコマンドを前記通信装置へ送信するコマンド送信部と、前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のための原データを受信する原データ受信部と、コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するコマンドラインインタフェース情報取得部と、前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含むコマンドラインインタフェースデータを作成する変換部と、前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドラインインタフェース画面へ出力するコマンドラインインタフェースデータ出力部と、を有し、前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部と、前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す前記原データを取得する原データ取得部と、前記原データを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信する原データ送信部と、を有し、前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む。
【0014】
(3) 一実施の形態の信号特性表示方法は、通信装置と管理端末とを備える通信システムにおける信号特性表示方法であって、前記管理端末は、コマンドラインインタフェースを有し、前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部を有し、前記管理端末で実行するステップとして、管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するステップと、前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のためのコマンドラインインタフェースデータを受信してコマンドラインインタフェース画面へ出力するステップと、を有し、前記通信装置で実行するステップとして、前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す原データを取得するステップと、前記コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するステップと、前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含む前記コマンドラインインタフェースデータを作成するステップと、前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するステップと、を有し、前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む。
【0015】
(4) 一実施の形態の信号特性表示方法は、通信装置と管理端末とを備える通信システムにおける信号特性表示方法であって、前記管理端末は、コマンドラインインタフェースを有し、前記通信装置は、所定の変調方式で対象信号を変調して伝送信号を生成し、所定の復調方式で伝送信号から復調して対象信号を生成する変復調部を有し、前記管理端末で実行するステップとして、管理者の操作に基づいて信号特性表示のためのコマンドを前記通信装置へ送信するステップと、前記通信装置から前記コマンドに対する応答として前記信号特性表示のための原データを受信するステップと、コマンドラインインタフェース画面の状態を示すコマンドラインインタフェース情報を取得するステップと、前記コマンドラインインタフェース情報及び前記原データに基づいて、変換により、前記コマンドラインインタフェース画面に表示するための信号特性表示情報を含むコマンドラインインタフェースデータを作成するステップと、前記コマンドラインインタフェースデータを前記コマンドラインインタフェース画面へ出力するステップと、を有し、前記通信装置で実行するステップとして、前記管理端末からの前記コマンドに従って前記伝送信号の特性を表す前記原データを取得するステップと、前記原データを前記コマンドに対する応答として前記管理端末へ送信するステップと、を有し、前記信号特性表示情報は、文字で表現された信号空間ダイヤグラムを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、通信システムの信号特性モニタを含むOAMに関して、従来のCLI方式のOAMと共存しつつ、好適な信号特性表示を低コストで実現でき、OAMに係わる作業の効率や品質を確保または向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1の通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1の通信システムにおける、CLI画面の表示例を示す図である。
図3】実施の形態1における、適用可能な信号空間ダイヤグラムの例を示す図である。
図4】実施の形態1における、CLI画面のサイズ等を示す図である。
図5】実施の形態1における、CLI画面内の信号特性表示領域等の例を示す図である。
図6】実施の形態1における、CLI画面内の信号特性表示領域における拡大表示の場合の例を示す図である。
図7】実施の形態1における、CLI画面の信号空間ダイヤグラムの表示例を示す図である。
図8】実施の形態1における、CLI画面の損失曲線の表示例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態2の通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
(実施の形態1)
図1図8を用いて、本発明の実施の形態1の通信システム及び信号特性表示方法について説明する。実施の形態1の信号特性表示方法は、実施の形態1の通信システムで実行されるステップを有する方法である。
【0020】
[通信システム]
図1は、実施の形態1の通信システムの構成を示す。実施の形態1の通信システムは、通信装置1、及び管理端末2を備える。通信装置1と管理端末2は、管理用の通信が可能に接続されている。通信装置1と管理端末2は、直接、ポート間がケーブル等で接続されるか、もしくは、図示しない管理用のIP網等を通じて接続される。
【0021】
通信装置1は、通信網101に接続され、通信網101に対してデータ通信を行う機能を有する。通信装置1は、一例として、光伝送網に接続されてWDMによる光伝送を行う伝送装置である。
【0022】
通信装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13を有する。制御部11は、通信装置1を制御する。制御部11は、CPU、ROM、RAM等により構成され、ソフトウェアプログラム処理を行う。制御部11は、CLI対応処理部100を含む。記憶部12は、一次記憶装置や二次記憶装置で構成され、制御部11が使用するプログラムやデータを格納する。
【0023】
通信部13は、変復調部31と、通信ポートである複数のポートとを含む。複数のポートとして、ポート32、ポート33を含む。ポート32は、通信網101に接続され、データ通信を行うためのポートである。ポート33は、管理端末2と接続される管理用のポートである。
【0024】
通信部13は、通信装置1の種類にもよるが、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、ラインカード、またはWDMモジュール等で構成される。ラインカードは、イーサネット(登録商標)等の通信インタフェースに対応したモジュールである。WDMモジュールは、所定の光通信インタフェースにおけるWDMに対応した変換処理を行う機能を持つモジュールである。WDMモジュールは、光伝送網へ送信するための波長が異なる複数の光信号を、合波により、1つの光信号に変換し、また、光伝送網から受信した光信号を、分波により、複数の光信号に変換する。
【0025】
変復調部31は、ポート32を用いた通信網101に対するデータ通信のための変調及び復調を行う。変復調部31は、所定の変調方式で、通信網101への送信対象のデータ信号を変調処理して送信信号を生成する。送信信号は、ポート32から通信網101へ伝送信号として送信される。また、変復調部31は、所定の変調方式に対応した所定の復調方式で、通信網101からポート32を通じて受信された受信信号を復調処理して受信データ信号を生成する。変復調部31は、一例としてWDMモジュールに対応したものの場合、光信号の合波の際の変調、及び光信号の分波の際の復調を行う。
【0026】
通信装置1の通信部13のポート33と、管理端末2の通信部23のポート34との間では、CLI方式の通信が行われる。即ち、当該ポート間では、管理端末2からのコマンドや、通信装置1からのコマンド処理結果、等の文字列が、例えばIP(Internet Protocol)におけるパケット等の形式で授受される。
【0027】
管理端末2は、通信装置1を含む通信システムを対象としてOAMを行う。管理者は、管理端末2を操作し、OAMに係わる作業を行う。管理端末2は、一般的なPC等で構成される。
【0028】
管理端末2は、制御部21、記憶部22、通信部23、入力装置24、表示装置25を有する。制御部21は、CPU、ROM、RAM等で構成され、管理端末2を制御する。制御部21は、ソフトウェアプログラム処理を行う。制御部21は、CLIを実現するCLI部200を含む。記憶部22は、一次記憶装置や二次記憶装置で構成され、制御部21が使用するプログラムやデータを格納する。入力装置24は、キーボードやマウス等がある。表示装置25は、例えば液晶表示装置がある。通信部23は、通信装置1とのリンクに接続されるポート34を含み、通信装置1とのCLI方式の通信を行う。
【0029】
管理端末2は、ユーザインタフェースとして、CLI部200により実現される、一般的なCLIを有する。このCLIは、汎用的なソフトウェアにより実現されるCLIを含め、各種のCLIが適用可能である。
【0030】
管理端末2は、CLI部200により、CLI画面を、表示装置25の画面内に表示する。管理者は、CLI画面に対して、コマンドを入力する。CLI部200は、入力されたコマンドに応じたコマンド処理を行う。CLI部200は、入力されたコマンドに応じて、通信装置1にコマンドを送信する。CLI部200は、通信装置1からのコマンド処理結果を受信し、CLI画面に表示する。CLI画面には、特に、信号特性表示機能による、通信装置1の伝送信号の特性及び品質等を表す情報が表示される。管理者は、CLI画面のコマンド処理結果等を見る。
【0031】
管理端末2は、OAMの一部として、特に、通信装置1の通信機能における変復調を含む伝送信号の特性及び品質等を表示する信号特性表示機能を有する。通信装置1のCLI対応処理部100、及び管理端末2のCLI部200は、この信号特性表示機能に対応した実装を有する。管理端末2の実装としては、CLI部200における信号特性表示機能に係わるコマンドを発行する機能を有する。通信装置1の実装としては、CLI対応処理部100における、信号特性表示機能に係わるコマンドの処理機能を有する。管理端末2の実装としては、基本的に、従来の管理端末に、特定のコマンドを発行する機能を追加するのみで済み、GUI方式の信号特性表示機能の実装は不要である。
【0032】
[機能ブロック構成]
図1において、実施の形態1の通信システムにおける、通信装置1の制御部11や管理端末2の制御部21の機能ブロック構成を説明する。
【0033】
制御部21のCLI部200は、コマンド送信部61、及びCLIデータ受信部62を含む。CLI部200は、ユーザである管理者のユーザ設定に基づいて、CLI画面を構成し、表示装置25の画面内に表示する。CLI部200は、ユーザ設定に基づいて、CLI画面の状態を規定するCLI情報202を管理している。CLI情報202は、後述するが、CLI画面のサイズ、文字のサイズ、使用文字セット、等を把握可能とする情報を含んでいる。
【0034】
コマンド送信部61は、CLI画面で管理者により入力されたコマンドが、信号特性表示機能に係わる所定のコマンドである場合、そのコマンドに対応した指示を含むコマンドを、通信部23を通じて通信装置1へ送信する処理を行う。
【0035】
CLIデータ受信部62は、通信装置1から上記コマンドに対する応答として受信したCLIデータを取得し、そのCLIデータをCLI画面へ出力する処理を行う。これにより、表示装置25の画面内のCLI画面に、コマンド処理結果として、文字で表現された信号特性表示情報等が表示される。
【0036】
制御部11のCLI対応処理部100は、原データ取得部51、CLI情報取得部52、変換部53、品質分析部54、CLIデータ送信部55を有する。原データ取得部51は、変復調部31から、信号特性表示のための原データを取得する処理を行う。CLI情報取得部52は、管理端末2からCLI情報を取得する処理を行う。変換部53は、原データ及びCLI情報を用いて、変換により、CLI方式の信号特性表示情報を含むCLIデータを作成する処理を行う。品質分析部54は、原データを用いて伝送信号の品質を分析する所定の品質分析処理を行い、CLI方式の品質分析結果情報を作成する処理を行う。CLIデータ送信部55は、CLIデータを、通信部13を通じて管理端末2へ送信する処理を行う。
【0037】
[処理シーケンス]
図1の通信システムにおいて、信号特性表示に係わる処理シーケンスは以下の通りである。以下、処理シーケンスを構成するステップの順に説明する。
【0038】
(1) 管理者は、管理端末2で、信号特性表示のためのコマンドを入力する。CLI部200は、入力されたコマンドを解釈し、当該コマンドが、信号特性表示に係わる所定のコマンドである場合、コマンド送信部61を用いる。コマンド送信部61は、入力されたコマンドに対応したコマンド201を作成する。コマンド送信部61は、そのコマンド201を、通信部23のポート34から、通信装置1へ向けて送信する。
【0039】
コマンド201の内容は、例えば、指定された任意のタイミングや期間で、あるいは一定時間間隔のタイミング毎に、通信装置1の伝送信号の特性を表すCLIデータを取得するための指示を含む。本例では、コマンド201の内容は、コマンド入力の時点から一定時間後の時点までの期間を対象として、信号特性表示を行うための指示を含む。
【0040】
コマンド201の内容は、詳しくは、対象期間で、一定時間間隔のタイミング毎に、自動的に、伝送信号の原データをスナップショットとして取得させる指示を含む。そして、コマンド201の内容は、それらの各時点の原データを用いて信号空間ダイヤグラム等を作成して表示させる指示を含む。
【0041】
上記(1)のステップにおけるコマンド201の内容は、上記に限らず可能である。例えば、管理者は、予め、管理端末2からコマンドにより通信装置1にユーザ設定を行う。通信装置1は、そのユーザ設定に基づいて、指定のタイミングで自動的に原データを取得してCLIデータを作成し、指定のタイミングで管理端末2へ送信する。
【0042】
(2) 通信装置1は、管理端末2からのコマンド201を、通信部13のポート33で受信する。通信部13は、そのコマンド201を、制御部11のCLI対応処理部100へ転送する。
【0043】
(3) CLI対応処理部100の原データ取得部51は、コマンド201で示す指示に応じて、通信部13の変復調部31から、指定された時点や期間の伝送信号の原データ203を取得する。原データ取得部51は、取得した原データ203を、変換部53へ出力する。
【0044】
原データ203は、信号特性表示情報を作成するために必要な原データである。原データ203は、変復調部31の変復調方式に対応した送信信号や受信信号等の伝送信号における特性を表す数値データである。原データ203は、時点毎に複数の信号点の数値データを含んでいる。1つの信号点の数値データは、後述する信号空間ダイヤグラム内の1つの位置座標に相当する。
【0045】
原データ取得部51は、例えば、変復調部31から得た原データ203における時点毎の複数の信号点の数値データについて、信号空間ダイヤグラムのI軸及びQ軸のそれぞれで−1から+1の範囲になるように正規化して出力する。
【0046】
(4) CLI情報取得部52は、管理端末2からCLI情報202を取得する。CLI情報取得部52は、通信部13を通じた管理端末2との通信に基づいて、管理端末2のCLI部200から、CLI情報202を取得する。CLI情報取得部52は、CLI情報202から、CLI画面のサイズや表示分解能等を把握可能な情報を得る。
【0047】
変換部53での変換の際には、CLI情報202が必要である。これは、管理端末2のCLI及びそのCLI画面の状態に合わせたCLIデータを生成するためである。CLI情報202を取得する方式は、各種が可能であり、実施の形態1では、以下の(4A)で示す方式を用いる。
【0048】
(4A) CLI情報取得部52は、変換部53での変換の都度、CLI情報202を取得するために、CLI情報要求を、管理端末2へ送信する。CLI情報取得部52は、CLI情報要求を含むパケットを作成し、通信部13のポート33から管理端末2へ送信する。
【0049】
管理端末2は、そのパケットを通信部23のポート34で受信し、そのCLI情報要求をCLI部200へ転送する。CLI部200は、そのCLI情報要求に応じて、その時点で設定されているCLI情報202を応答する。CLI部200は、CLI情報202を含むパケットを作成し、通信部23のポート34から通信装置1へ送信する。通信装置1は、そのパケットを受信し、CLI情報202をCLI情報取得部52へ与える。
【0050】
CLI情報取得部52は、原データ203に伴い、管理端末2から取得したCLI情報202を、変換部53へ出力する。
【0051】
CLI情報取得部52は、管理端末2から取得したCLI情報202を、メモリに保持しておいてもよい。CLI情報取得部52は、変換部53での次の変換が要求されたタイミングで、メモリに保持されているCLI情報202を参照し、そのCLI情報202をそのまま使用可能である場合には、そのCLI情報202を変換部53へ与える。CLI情報取得部52は、メモリのCLI情報202が使用できない場合には、改めて、上記と同様に、CLI情報要求を管理端末2へ送信し、最新のCLI情報202を取得して、変換部53へ与える。
【0052】
通信装置1に接続される管理端末2及びそのCLIは、同じである場合もあるし、異なる場合もある。また、管理端末2及びそのCLIが基本的に同じものに固定されている場合でも、ユーザ設定等によって、そのCLIの設定状態が変更されている場合がある。
【0053】
よって、そのことを考慮して、CLI情報取得部52は、その都度、接続されている管理端末2及びそのCLI部200から、最新のCLI情報202を取得する。これにより、異なる管理端末2の異なるCLIや、CLI画面の状態の変化に対しても、柔軟に対応でき、即ち、各種のCLIに対応できる好適な信号特性表示機能を実現できる。
【0054】
(4B) CLI情報202に関する他の方式として、以下の変形例も可能である。CLI情報取得部52は、最初に管理端末2から通信装置1に送信されたコマンド201に一緒に添えられたCLI情報202を用いてもよい。この方式の場合、管理端末2のCLI部200のコマンド送信部61は、最初にコマンド201を送信する際に、そのコマンド201の中に、その時の最新のCLI情報202を添える。CLI情報取得部52は、そのコマンド201に添えられたCLI情報202を取り出して、変換部53での変換に用いるようにする。
【0055】
(4C) CLI情報202に関する他の方式として、以下の変形例も可能である。予め、通信装置1にCLI情報202が設定される。例えば、管理者は、コマンドに基づいて、管理端末2のCLI部200に設定されているCLI情報202を参照する。管理者は、コマンドに基づいて、通信装置1にアクセスし、CLI対応処理部100にそのCLI情報202を設定する。
【0056】
CLI情報取得部52は、変換部53での変換が要求されたタイミングで、その設定済みのCLI情報202を参照して用いる。CLI情報取得部52は、CLI情報202が設定されていない場合には、(4A)等の方式と同様に、管理端末2からCLI情報202を取得する。
【0057】
管理端末2及びそのCLIが一種類に固定である場合には、(4C)のように予めCLI情報202を設定しておくことにより、通信装置1と管理端末2との間のCLI情報202に係わる通信を省略することができる。管理端末2及びそのCLIが他の種類に変更される場合には、CLI情報202の設定を更新すればよい。
【0058】
(5) 変換部53は、原データ取得部51からの原データ203を入力し、CLI情報取得部52からのCLI情報202を入力する。変換部53は、CLI情報202を用いて、その原データ203を、CLI方式のCLIデータ204に変換する変換処理を行い、その変換後データであるCLIデータ204を出力する。このCLIデータ204には、伝送信号の特性を表す情報として、CLI方式の信号空間ダイヤグラム等の信号特性表示情報が含まれている。変換部53の変換処理の内容については後述する。
【0059】
(6) 更に、実施の形態1では、品質分析部54を用いて、伝送信号の品質を分析する品質分析処理を行い、その品質分析結果を、CLI方式で、CLIデータ204に添付することができる。管理者は、コマンドやユーザ設定によって、品質分析の実行有無、対象期間、種類や詳細等を、選択や指定が可能である。以下は、変換部53での変換と共に、所定の品質分析を実行する場合に対応した説明である。なお、品質分析を実行しない場合、変換部53からのCLIデータ204が、CLIデータ送信部55に出力される。
【0060】
品質分析部54は、入力された原データ203に基づいて、指定された品質分析処理を行い、伝送信号の品質を表す品質分析結果情報を得る。品質分析部54は、品質分析結果情報を、CLI画面に表示するために、CLI方式の文字で表現された表やグラフ等の形式になるように、CLI方式の品質分析結果データを作成する。品質分析部54は、その品質分析結果データを、変換部53からのCLIデータ204に添える。例えば、品質分析部54は、CLIデータ204内の文字の領域において、信号特性表示情報と共に、品質分析結果データの文字を記述する。品質分析部54は、品質分析結果データを含むCLIデータ204を、CLIデータ送信部55に出力する。
【0061】
上記に限らず、CLI対応処理部100は、信号特性表示情報のCLIデータと、品質分析結果情報のCLIデータとで、別個のCLIデータとして作成して出力してもよい。
【0062】
なお、変換部53からのCLIデータ204自体において、その信号特性表示情報が後述する信号空間ダイヤグラムである場合には、その信号空間ダイヤグラム自体が、伝送信号の品質を表す情報を含んでいる。即ち、信号空間ダイヤグラムにおける信号点の位置は、伝送の品質を表している。品質分析部54で行う品質分析は、信号空間ダイヤグラムで表す品質とは別に、所定の品質指標値を算出するものである。
【0063】
(7) CLIデータ送信部55は、変換部53からのCLIデータ204、または品質分析部54からのCLIデータ204を入力し、そのCLIデータ204を含むパケット等の形式のCLIデータ205を作成する。このCLIデータ205の内容は文字列である。CLIデータ送信部55は、そのCLIデータ205を、コマンド201への応答として、通信部13のポート33から管理端末2へ向けて送信する。
【0064】
(8) 管理端末2の通信部23は、通信装置1からのCLIデータ205のパケットをポート34で受信し、そのパケットに含まれているCLIデータを、CLI部200へ転送する。CLI部200のCLIデータ受信部62は、そのCLIデータを取得する。
【0065】
(9) CLIデータ受信部62は、取得したCLIデータを、CLI画面へ出力する。これにより、表示装置25の画面内のCLI画面に、信号空間ダイヤグラム等の信号特性表示情報や、品質分析結果情報等が表示される。
【0066】
管理者は、所望のタイミングや期間で、伝送信号の特性等を容易にモニタすることができる。管理者は、CLI画面を見て、通信装置1の伝送信号の特性や品質の状態を認識することができる。管理者は、CLI画面で、構成管理等の他のOAMの作業からすぐに信号特性確認作業等に連係することができ、また、信号特性確認作業等からすぐに他のOAMの作業に連係することもできる。即ち、管理者は、管理端末2のCLI画面で、通信装置1のOAMに係わる作業を効率的に行うことができる。
【0067】
[CLI画面]
図2は、管理端末2の表示装置25の画面内に表示されるCLI画面の例を示す。画面301は、表示装置25の画面を示す。その画面301内に、CLI画面302が表示されている。CLI画面302内において、信号特性表示情報として、CLI方式の信号空間ダイヤグラム303が表示されている。信号空間ダイヤグラム303では、I軸、Q軸、信号点が、文字で表現されている。なお、信号空間ダイヤグラムの表示において、他にも補助的な情報として、I軸及びQ軸の目盛りの数値や、信号点の文字の意味等が表示されてもよい。
【0068】
[信号空間ダイヤグラム]
変復調部31の変復調方式に対応した信号空間ダイヤグラムについて補足する。デジタル信号をアナログ信号に変換する変調方式として、位相偏移変調(PSK:Phase-Shift Keying)や振幅偏移変調等がある。位相偏移変調には、二位相偏移変調(BPSK:Binary PSK)、四位相偏移変調(QPSK:Quaternary PSK)、八位相偏移変調(8PSK)、等の各種の方式がある。
【0069】
PSKでは、基準信号の位相を変調させて、時点毎に複数の信号点を含む信号が生成される。複数の信号点は、異なる特定の位相を持つ。1つの位相の信号点には、特定のビットパターンがシンボルとして割り当てられる。
【0070】
PSK等の変調方式の伝送信号の特性の状態を表現するための手段として、信号空間ダイヤグラムがある。言い換えると、PSK等の位相変調信号の特性は、信号空間ダイヤグラムによって視覚的に表現可能である。信号空間ダイヤグラムは、同相(in-phase)の信号をI軸としてとり、それに対して直角の位相(quadrature-phase)の信号をQ軸としてとったガウス平面を有する。信号空間ダイヤグラムは、2次元平面であるガウス平面に、I軸の振幅とQ軸の振幅の組合せで、複数の信号点(constellation point)をプロットして表示した図である。信号空間ダイヤグラムは、信号の特性及び品質を、視覚的に直感的に把握することに適している。
【0071】
実施の形態1では、変復調部31の変復調方式の例として、QPSK方式とする。実施の形態1では、QPSK方式に対応した信号空間ダイヤグラムを、CLI方式の信号特性表示情報として表示する機能を有する。
【0072】
図3の(A)は、QPSKの場合の信号空間ダイヤグラムの概要を示す。横軸がI軸、縦軸がQ軸である。円の円周に、4種類の位相に対応した、4個の信号点が配置されている。平面の中心点と信号点との距離は振幅を表す。中心点からの角度は位相を表す。4個の信号点は、円の円周に、一定間隔で配置されており、即ち、振幅が同じで、位相が一定間隔で異なっている。即ち、ある時点には4個の信号点のうちどれか1つが選択され、1信号で2ビットの情報を符号化することができる。
【0073】
図3の(A)では、信号点P1〜P4を示す。信号点P1は、I軸の値が+0.5、Q軸の値が+0.5であり、位置座標(+0.5,+0.5)に相当する。同様に、信号点P2は、(−0.5,+0.5)に相当する。信号点P3は、(−0.5,−0.5)に相当する。信号点P4は、(+0.5,−0.5)に相当する。信号点P1は、ビット“11”を示す。信号点P2は、ビット“01”を示す。信号点P3は、ビット“00”を示す。信号点P4は、ビット“10”を示す。
【0074】
図3の(B)は、同様に、8PSKの場合の信号空間ダイヤグラムの概要を示す。平面における円の円周に、位相が45度ずれた8個の信号点が配置されている。各信号点のシンボルは、3ビットの情報を持つ。8個の信号点に対し、ビット“000”からビット“111”までが割り当てられている。ある時点には8個の信号点のうちどれか1つが選択され、3ビットの情報を符号化することができる。
【0075】
図3の(C)は、同様に、16QAMの場合の信号空間ダイヤグラムの概要を示す。16QAMは、直角位相振幅変調(QAM:Quadrature amplitude modulation)の1つであり、時点毎に16個の信号点を持つ。QAM方式では、位相変調に振幅変調が加えられている。平面において、ある時点の16個の信号点が、I軸及びQ軸のそれぞれで一定間隔として格子状に配置されている。各信号点のシンボルは、4ビットの情報を持つ。16個の信号点に対し、ビット“0000”からビット“1111”までが割り当てられている。ある時点には16個の信号点のうちどれか1つが選択され、4ビットの情報を符号化することができる。
【0076】
実施の形態1の通信システム及び信号特性表示方法は、適用可能な変復調方式及び信号空間ダイヤグラムとして、上記PSKやQAMを含む各種の方式が適用可能である。また、実施の形態1における信号特性表示機能により表示する信号特性表示情報としては、信号空間ダイヤグラムに限らず、伝送信号の特性や品質を表現するための各種の2次元図形が適用可能である。通信端末1のCLI対応処理部100は、表示可能とする種類の2次元図形に応じた実装を有する。
【0077】
[CLI情報]
図4及び図5を用いて、CLI画面及びCLI情報202について説明する。CLI情報202は、CLI画面に関する、横サイズ、縦サイズ、文字サイズ比率、使用文字セット、等の情報を含む。CLI方式の信号特性表示情報を作成するために、CLI情報202として、CLI画面のサイズ、及びその中の1文字のマスのサイズ等を把握可能な情報を用いる。
【0078】
図4は、CLI画面のサイズや表示分解能を示す。CLI画面の最大領域である矩形において、横サイズである列数をX1とし、縦サイズである行数をY1とする。CLI画面は、文字が表示されるので、表示される文字に対応したマスの単位での表示分解能を有する。例えば、あるCLI画面のユーザ設定状態において、横方向に80列で80文字、縦方向に24行で24文字が表示される。その場合、縦サイズはY1=24であり、横サイズはX1=80である。なお、CLI画面のサイズは、行数や列数に限らず、ドット数等で規定されても構わない。
【0079】
1文字のマスにおいて、横サイズをX0、縦サイズをY0とする。文字サイズ比率をA1とし、A1=Y0/X0とする。文字サイズ比率は、ここでは、1文字のマスにおける横サイズX0に対する縦サイズY0の比率である。CLI画面で使用する文字セット等に応じて、文字サイズ比率A1が決まる。例えば、典型的なCLIにおける使用文字セットでは、一般的なASCII及び等幅フォントが用いられており、その場合、1文字の縦横の比が2:1であり、即ち、文字サイズ比率は、A1=2である。
【0080】
図4のCLI画面の例では、文字サイズ比率を考慮した、実際の縦横の比は、概ね、Y1×A1:X1=24×2:80=6:10であり、縦横サイズ比率が6/10=0.6である。本例では、CLI画面は、縦方向よりも横方向の辺が長い長方形である。縦方向とは画面内垂直方向、横方向とは画面内水平方向である。
【0081】
図5は、CLI画面内の信号特性表示領域等の構成を示す。図4に対応するCLI画面600の最大領域内に、第1の領域として、信号特性表示領域601と、第2の領域として、その他の領域である品質表示領域602と、が設けられている。
【0082】
本例では、信号特性表示領域601は、CLI画面600内で、左上点に寄せて、縦サイズY1に合わせた辺を持つ正方形の領域として設けられている。CLI画面600内で、信号特性表示領域601を除いた右横の空いた領域が、品質表示領域602として設けられている。信号特性表示領域601における横サイズをX2、縦サイズをY2とする。本例では、X2=Y2=Y1、X2<X1、である。本例では、信号特性表示領域601は、図3の(A)のQPSKの信号空間ダイヤグラムを表示するために、I軸及びQ軸の長さを同じとした正方形の領域として設けられている。
【0083】
CLI画面600内の詳しい構成は、上記例に限らず、管理者からのコマンドやユーザ設定に応じて、各種が可能である。CLI画面の他の構成として、以下が挙げられる。
【0084】
CLI画面の他の構成として、信号特性表示領域601を、CLI画面の最大領域に合わせた、横長の長方形の領域として設けることも可能である。変換部53は、CLI画面の最大領域内に信号特性表示領域を確保する際、原データにおける信号点の最大範囲、または当該最大範囲のうち管理者により指定された範囲に対応させて、最大領域内に収まるように、信号特性表示領域の縦横のサイズを決定する。変換部53は、指示や設定に応じて、信号特性表示領域を、縦横の長さが等しい正方形、または最大領域に合わせて縦または横に拡大した長方形となるようにする。
【0085】
また、CLI画面の他の構成としては、縦方向で信号特性表示領域601の下に続けて品質表示領域を設けることも可能である。また、例えば、信号特性表示領域601内で多くのマスが空白になっている領域がある場合には、その領域を品質表示領域とすることも可能である。
【0086】
図6は、CLI画面の他の構成として、信号特性表示機能のうちの拡大表示機能を利用して、信号空間ダイヤグラムの一部を拡大表示する場合の例を概略的に示す。図6のCLI画面700は、縦長の長方形の場合である。CLI画面700内に、拡大表示領域に対応した信号特性表示領域701が設けられている。また、信号特性表示領域701の下に、品質表示領域702が設けられている。信号特性表示領域701は、例えば横サイズがCLI画面700の横サイズと同じに合わせられ、縦サイズが横サイズと同じにされ、正方形の領域として設けられている。この信号特性表示領域701内において、図5のような信号特性表示領域601内から管理者により指定された任意の領域が、CLI方式で拡大表示される。本例では、図5の信号特性表示領域601のQPSKの信号空間ダイヤグラムの全体のうち、信号点P1を含む第1象限領域が拡大表示されている。
【0087】
CLI対応処理部100の拡大表示機能において、変換部53は、指定された拡大対象領域に対応付けられる原データを参照し、その原データを用いて拡大表示領域のマスに対する信号点のプロット等を実行する。これにより、変換部53は、拡大表示領域におけるCLI方式の文字の表現を得て、それをCLIデータとする。
【0088】
拡大対象領域の指定は、例えば、コマンドやそのパラメータを用いて、拡大対象領域の左上点及び右下点の座標を指定する方式でもよいし、予め設定された領域タイプから選択して指定する方式でもよい。領域タイプは、主なものが予め用意され、また、ユーザ設定も可能である。領域タイプとして、例えば、信号空間ダイヤグラムの象限領域がある。図3等に示すように、I軸及びQ軸の値の正負に応じて4つの象限領域があり、象限領域毎に選択可能とする。また、領域タイプとして、信号空間ダイヤグラムの平面における、中心点からの距離に応じた範囲を選択可能とする。例えば、図3の(A)の例で、I軸及びQ軸のそれぞれで−0.5から+0.5までの範囲に対応した矩形の領域を選択可能とする。
【0089】
[CLI方式の信号空間ダイヤグラム]
図7は、管理端末2のCLI画面におけるCLI方式の信号空間ダイヤグラムの表示例を示す。図7の表示例は、図5のCLI画面600の信号特性表示領域601に、図3の(A)のようなQPSKの信号空間ダイヤグラムを、CLIに対応した特定の文字を用いて表示している。図7の例では、1文字のマス毎に、時系列上で測定及び検出された該当する信号点に関する情報がまとめて表示される。マス毎に、信号点の測定に関する複数の段階が、特定の文字を用いて表示される。なお、図7では、わかりやすいように、格子状のマスを図示している。図7からマスを除いたものが、図2のCLI画面に対応する。
【0090】
変換部53は、CLI情報202で示される使用文字セットに対応して、信号特性表示領域601の信号空間ダイヤグラムの表現に使用する文字を決定する。図7の例では、使用する文字として、空白(“ ”)の他に、“+”,“*”,“@”,“C”等を有する。また、I軸やQ軸の表現のために、“I”,“Q”、罫線記号等が用いられている。信号点の表現として、“C”は理想値(Ideal)を示す。図3の(A)の例で言えば、信号点P1〜P4の位置が、“C”で示す理想値に対応する。
【0091】
また、本例では、信号点の表現として、1文字のマス毎に、測定に関する複数の段階、言い換えると出現の度合いを、4種類の文字を用いて表現している。空白(“ ”)は第1レベルであり、測定点無しを示す。“+”(プラス)は第2レベルであり、やや疎な測定点を示す。“*”(アスタリスク)は第3レベルであり、中間程度の測定点を示す。“@”(アットマーク)は最大である第4レベルであり、密な測定点を示す。
【0092】
GUI方式の場合には色のグラデーションを用いて表現できるが、CLI方式では黒白の2値で表現する。実施の形態1では、CLI方式として、色の違いではなく、文字の種類の違いによって、信号点の複数の段階等を表現する。
【0093】
変換部53は、原データ203の数値に基づいて、時点毎の複数の信号点を、CLI画面内のマスにプロットし、マス毎に、該当する信号点の個数に基づいて、段階を判断する。そして、変換部53は、マス毎の信号点の段階に応じて、所定の文字(“ ”,“+”,“*”,“@”)を割り当てる。
【0094】
本例で使用している4種類の文字(“ ”,“+”,“*”,“@”)は、信号点の粗密を表現するために、文字のマスにおける空白率に基づいて選択されている。ここでいう空白率は、1マスの領域内に白黒の2値で文字を表示する際の、文字線と背景との白黒の割合である。例えば文字“+”は空白率が相対的に高いので、第2レベルを表す文字とし、文字“@”は、空白率が相対的に低いので、第4レベルを表す文字としている。
【0095】
信号点に関する複数の段階の値は、4に限らず可能である。例えば、管理者は、ユーザ設定で、管理端末2から通信装置1のCLI対応処理部100に、複数の段階の値を設定可能である。
【0096】
また、信号点の複数の段階を表すための使用文字については、他の文字も勿論可能であり、CLIで使用可能な文字セットの文字の中から選択可能である。CLIで使用可能な文字は、例えばASCIIの印字可能文字であり、数字やアルファベットや所定の記号を含む。複数の段階を表すための使用文字の例として、数字(1,2,3等)やアルファベット(a,b,c等)を用いてもよく、数字の順序やアルファベットの順序で複数の段階を表現してもよい。
【0097】
また、CLI画面での使用文字として、半角文字に限らず、全角文字を使用してもよい。例えば、全角文字を用いる場合、“○”,“◎”,“●”等の記号を使用してもよい。また、CLI画面で信号特性表示情報を表現するために、横方向で隣り合う2つの半角文字の2つのマスを1組として仮想的に1つのマスとして対応付けるようにしてもよい。
【0098】
[変換部]
図2の変換部53の変換処理によるCLIデータ作成処理について、より詳しく説明する。変換部53は、原データ203及びCLI情報202を用いて、CLI方式の信号特性表示情報を含むCLIデータ204を作成する。その際、変換部53は、以下に示す処理を行う。以下、処理のステップの順に説明する。
【0099】
(1) まず、変換部53は、CLI情報202から、CLI画面の最大領域や文字サイズ比率等を把握する。変換部53は、その最大領域内に、信号特性表示領域601を設定する。変換部53は、表示対象の信号空間ダイヤグラムにおけるI軸及びQ軸の大きさ等に応じて、信号特性表示領域601の縦横のサイズを決定する。
【0100】
例えば、前述のように、原データ203は−1から+1の範囲に正規化されている。なお、変換部53で正規化処理を行ってもよい。図3の(A)のようにQPSKの信号空間ダイヤグラムを表示する場合、4個の信号点の理想値は、(−0.5,−0.5),(−0.5,+0.5),(+0.5,−0.5),(+0.5,+0.5)である。信号特性表示領域601の範囲を、原データ203の最大範囲である−1から+1の範囲に合わせ、正方形の領域とする。図5のように、CLI画面は、横長の最大領域で、縦長の文字のマスであり、X1>Y1×A1(例えば80>24×2)である。この場合、正確なアスペクト比で表現できるのは、短辺に合わせた範囲であり、縦方向でY1、横方向でY1×A1とした範囲である。即ち、信号特性表示領域601の例では、縦サイズY2は24行分(24文字分)のサイズ、横サイズX2は24×2=48列分(48文字)のサイズである。即ち、この信号特性表示領域601では、I軸の−1から+1の範囲は、横方向の48列、48文字分の分解能で表現され、Q軸の−1から+1の範囲は、縦方向の24行、24文字分の分解能で表現される。
【0101】
(2) 変換部53は、原データ203における時点毎の複数の信号点のI軸及びQ軸の値を、信号特性表示領域601にプロットする。言い換えると、変換部53は、原データ203の詳細な数値を、それよりも粗い表示分解能を持つ信号特性表示領域601の文字のマスの単位にプロットするように量子化する。即ち、変換部53は、信号点のI軸及びQ軸の値が、信号特性表示領域601の格子状の複数のマスにおけるどのマスに収まるかを決定する。
【0102】
信号点のI軸及びQ軸の値を(i,q)とする。例えば、信号点の値が(i,q)=(+0.5,+0.5)とする。この場合、信号特性表示領域601のI軸では、48文字のうち、左端から約36文字、右端から約12文字の位置にある列が該当し、Q軸では、24文字のうち、上端から約6文字、下端から約18文字の位置にある行が該当する。それらの該当する列と行が交差する文字が、その信号点が収まる文字のマスに該当する。図7の例では、理想値“C”で示す(i,q)=(+0.5,+0.5)の信号点は、I軸で左端から36文字、及びQ軸で上端から6文字の位置にあるマスが該当する。同様に、変換部53は、複数の信号点をプロットする。
【0103】
実際に測定される信号点の数値データは、例えば(i,q)=(+0.5731,+0.4096)といったように、理想値からのズレを有する。信号点は、そのズレの大きさに応じて、理想値が収まるマスまたはその周辺のいずれかのマスに収まることになる。
【0104】
(3) 変換部53は、対象期間の原データ203について、信号特性表示領域601のマス毎に、該当する信号点の個数をカウントする。
【0105】
(4) 変換部53は、信号特性表示領域601のマス毎の信号点の個数に基づいて、マス毎に、信号点の測定に関する複数の段階を算出する。即ち、変換部53は、マス毎の信号点の個数の最小値から最大値までの範囲を、所定の複数の段階に区分し、各マスの個数のカウント値が、どの段階に該当するかを判断する。
【0106】
(5) 変換部53は、信号特性表示領域601のマス毎に、信号点の段階を、特定の文字で表現する。変換部53は、各マスをどの文字で表示するかを決定する。変換部53は、ユーザ設定または指示に基づいて、前述のように、複数の段階を表す所定の文字(例:“ ”,“+”,“*”,“@”)を使用する。変換部53は、マス毎に、信号点の段階に応じた文字を割り当てる。
【0107】
以上の処理により、信号特性表示領域601の全てのマスの文字が決定され、その信号特性表示領域601を含むCLIデータ204が得られる。このCLIデータ204は、図7のように、縦横に文字が配列されたデータである。このCLIデータが管理端末2のCLI画面に出力された場合、図2のように表示される。
【0108】
[他の信号特性表示情報]
信号空間ダイヤグラム以外に、他の信号特性表示情報として、以下も適用可能である。
【0109】
(1) 他の信号特性表示情報として、伝送信号の2値信号のアイパターン(eye pattern)を表示してもよい。アイパターンは、信号波形の遷移を重ね合わせて表現した図である。アイパターンの場合も、変換部53は、信号特性表示領域のマス毎に、アイパターンの線の重なりをカウントし、マス毎の段階を判断して、マス毎の使用文字を決定すればよい。
【0110】
(2) 他の信号特性表示情報として、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)の損失曲線を表示してもよい。OTDRは、光ファイバの光信号の伝送損失等を算出する機能を有する測定器である。この場合、通信装置1には、OTDRのような測定器が接続または内蔵される。
【0111】
図8は、変換部53でCLI方式の損失曲線を作成し、CLI画面に表示する例を示す。図8のCLI画面内には、損失曲線として、横軸に損失(“Loss”、単位はdB)をとって表示し、縦軸に距離(“Distance”、単位はm)をとって表示している。マス毎にプロットされた文字の意味として、文字“*”は測定結果OK(損失が閾値範囲内である場合)を示し、文字“!”は測定結果NG(損失が閾値超過である場合)を示し、文字“|”は閾値を示す。この損失曲線の例では、距離が25000m程度までは測定結果OKであり、損失が閾値以内になっていることを示す。
【0112】
[品質分析]
品質分析部54で実行する所定の品質分析の例は以下である。品質分析部54は、品質分析で、品質指標値として、少なくとも、EVM(エラー・ベクトル・マグニチュード)を計算する。EVMは、信号点の理想的な位置に対して、実際の信号点がどの程度近いか遠いかを表す指標値である。EVM指標値は、例えば、全ての信号点に関して、各信号点の理想的な位置と実際の信号点の位置との距離ベクトルを用いて、それらの平均値をとる演算、等により算出することができる。
【0113】
品質分析結果情報をCLI方式でCLI画面に表示する方式については、以下が可能である。
【0114】
(1) 品質分析結果情報を、信号特性表示情報とは別に表示する場合、以下が可能である。品質分析部54は、所定の品質分析で、品質分析結果情報を得た後、その品質分析結果情報を、CLI方式の品質分析結果データに変換する。品質分析部54は、品質分析結果情報の内容に応じて、CLI画面内でその品質分析結果情報を表示するための領域を決定する。この領域は、例えばCLI画面内の左上点から始まる所定のサイズの領域である。
【0115】
品質分析部54は、CLI画面内の領域に品質分析結果情報を表示するために、所定の文字を用いて、EVM指標値等を表現する。品質分析部54は、当該領域内に文字を配置して、CLI方式の品質分析結果データとして出力する。
【0116】
(2) 品質分析結果情報を、信号特性表示情報と一緒に1つのCLI画面内にまとめて表示する場合、以下が可能である。品質分析部54は、変換部53から信号特性表示情報を含むCLIデータを得る。品質分析部54は、品質分析結果情報の内容に応じて、CLI画面内で、信号特性表示情報を表示する領域に対して、品質分析結果情報を表示する領域を決定する。品質分析部54は、例えば、図5のように、CLI画面内で、信号空間ダイヤグラムを表示するための信号特性表示領域601の隣の空いた領域に、品質表示領域602を確保する。この品質表示領域602は、例えばEVM指標値等を表現するために十分なサイズを持つ領域が確保される。
【0117】
品質分析部54は、その品質表示領域602に、品質分析結果情報であるEVM指標値等を表現するように、所定の文字を配置する。これにより、品質分析部54は、CLI方式で信号特性表示情報に品質分析結果情報が添えられたCLIデータを作成して出力する。
【0118】
[効果等]
以上説明したように、実施の形態1の通信システム及び信号特性表示方法によれば、通信システムの信号特性モニタを含むOAMに関して、従来のCLI方式のOAMと共存しつつ、好適な信号特性表示を低コストで実現できる。そして、実施の形態1によれば、OAMに係わる作業の効率や品質を確保または向上できる。
【0119】
実施の形態1によれば、CLI方式で迅速に伝送信号の特性や品質等を表示でき、GUIのためのハードウェア及びソフトウェアの資源及びその実装が不要であり、開発コスト等のコストが低減できる。また、実施の形態1によれば、迅速な対応が求められるOAM作業でも、高速度の応答表示が可能である。CLIは、汎用的なソフトウェアで実現でき、専用のソフトウェアは不要である。管理端末2に、通信装置及びGUI方式に対応した専用のソフトウェアを入手及びインストールすることは不要である。
【0120】
実施の形態1によれば、CLI画面で、既存のOAM作業の情報と並存して、通信システムの信号特性表示情報を表示して状態をモニタすることができるので、OAMの効率や品質を高めることができる。また、CLIの場合、CLI画面での文字列の入力により操作が可能である。CLIに習熟した管理者の場合、GUIよりもCLIの方が操作を速く容易に行うことができるので、OAMの効率を高めることができる。
【0121】
特に、実施の形態1では、通信装置1で原データからの変換により特有のCLIデータを作成してから、CLIデータを管理端末2に送信してCLI画面に表示させる。よって、通信装置1と管理端末2との間の通信において、データ量が比較的少なく、高速である。管理端末2では、CLIデータへの変換処理が不要であり、変換部53に相当するプログラム等の実装が不要である。管理端末2としては、CLIを備える装置であればよく、既存の多くの装置が適用可能である。
【0122】
実施の形態1に対する比較例として、特許文献1のような従来技術を用いて信号空間ダイヤグラム等の信号特性表示情報をGUI画面に表示する方式を、従来のCLI方式のOAMを行う通信システムに適用した場合、以下のようなシステムになる。即ち、比較例のシステムでは、GUI機能を持つ管理端末は、通信装置から原データを取得し、原データから専用のソフトウェアを用いて変換によりGUI方式の信号特性表示情報を作成し、GUI画面に表示する。
【0123】
しかし、従来の通信システムでは、管理者は、主にCLI方式でOAMに係わる作業を行っており、管理端末は、CLI機能を持つが、詳細なGUI機能は持っていない。OAMに係わる管理端末は、CLIで制御される装置が多い。よって、比較例のシステムでは、管理端末にGUI機能や専用のプログラム等の実装が別途必要になり、コストが高くなる。また、管理端末で、既存のCLI画面の情報と、GUI画面の情報とを使い分けてOAMに係わる作業を行わなければならないので、作業効率が低下する恐れがある。
【0124】
一方、実施の形態1によれば、管理端末2で、CLI方式で、信号特性表示情報を含むOAMに係わる情報をまとめて表示することができ、既存のOAMの作業との連係や切り替えも容易であり、作業の効率や品質を高めることができる。
【0125】
また、変換部53は、CLIデータを作成する際、CLI画面の最大領域内に、信号特性表示領域である第1の領域を確保し、その第1の領域において、信号点を、マス毎に段階に応じた特定の文字で表現する。これにより、伝送信号の特性をCLI方式で管理者にわかりやすく伝えることができる。
【0126】
また、変換部53は、第1の領域に信号空間ダイヤグラムを表示する場合、I軸及びQ軸の最大範囲または指定された範囲を表示対象として、最大領域に合わせた正方形または長方形の領域となるように第1の領域の縦横のサイズを決定する。これにより、CLI画面内に、第1の領域を、そのサイズを含めて好適に確保して、信号特性表示情報を好適に表示することができる。
【0127】
また、CLI情報取得部52は、管理端末2との通信に基づいて、CLI画面のサイズ等を含むCLI情報を取得し、変換部53の変換処理に用いるようにする。これにより、管理端末2のCLIの種類や状態に合わせた、好適なCLI方式の信号特性表示機能を提供できる。
【0128】
また、品質分析部54は、所定の品質分析処理により、所定の品質指標値を含む品質分析結果情報を、CLI方式の品質分析結果データとして作成する。これにより、CLI画面に、CLI方式の信号特性表示情報と共にCLI方式の品質分析結果情報を表示することができ、OAM作業を支援することができる。
【0129】
また、変換部53は、CLI画面の最大領域内に、信号特性表示領域である第1の領域を例えば正方形で確保し、余った領域を、例えば品質分析結果情報を表示する第2の領域として確保する。これにより、CLI画面のスペースを有効活用して、管理者に効率的に情報を伝えることができる。
【0130】
[変形例]
実施の形態1の通信システム及び信号特性表示方法の変形例として、以下が挙げられる。信号特性モニタ対象となる図1の通信装置1は、WDMを行う伝送装置に限らず、レイヤ2やレイヤ3の転送を行うスイッチ装置等、各種の装置が適用可能である。
【0131】
実施の形態1では、管理端末2のCLI画面で得られる伝送信号の特性や品質等の情報の利用については、通信システムの事業者の管理者のみが、OAMのために参照する。これに限らず、その情報を、通信システムの顧客に提供してもよい。後者の場合、例えば、管理端末2で得たCLIデータを、顧客の端末に転送して、顧客の端末のCLI画面に表示させてもよい。また、通信装置1からCLIデータを顧客の端末へ転送して、顧客の端末のCLI画面に表示させてもよい。この場合、CLI方式の信号特性表示情報を、通信サービスの品質等を示すレポートとして顧客に提供することができる。
【0132】
(実施の形態2)
図9を用いて、本発明の実施の形態2の通信システム及び信号特性表示方法について説明する。実施の形態2の信号特性表示方法は、実施の形態2の通信システムで実行されるステップを有する方法である。以下、実施の形態2の構成における実施の形態1の構成とは異なる部分について説明する。実施の形態2は、実施の形態1に対して主に異なる構成の部分として、通信装置1ではなく管理端末2で、原データからCLIデータを作成する処理を行う。
【0133】
図9は、実施の形態2の通信システムの構成を示す。通信装置1の制御部11は、CLI対応処理部100として、原データ取得部51、原データ送信部56を含む。管理端末2の制御部21は、CLI部200として、コマンド送信部70、原データ受信部71、CLI情報取得部72、変換部73、品質分析部74、CLIデータ出力部75を含む。
【0134】
図9の通信システムにおいて、信号特性表示に係わる処理シーケンスは以下の通りである。以下、処理シーケンスを構成するステップの順に説明する。
【0135】
(1) 管理者は、管理端末2で、信号特性表示のためのコマンドを入力する。CLI部200は、入力されたコマンドを解釈し、当該コマンドが、信号特性表示に係わる所定のコマンドである場合、コマンド送信部70を用いる。コマンド送信部70は、入力されたコマンドに応じた指示を含むコマンド211を作成する。
【0136】
コマンド211の内容は、例えば、指定された任意のタイミングや期間で、あるいは一定時間間隔のタイミング毎に、通信装置1の伝送信号の原データ213を取得して、CLIデータを作成するための指示を含む。コマンド211の詳しい内容は、実施の形態1と同様に各種が可能である。
【0137】
実施の形態2では、管理端末2と通信装置1との間の通信で、原データを授受するために、CLI上で動作するFTP等のファイル形式を扱うプロトコルを用いる。コマンド送信部70は、FTP等のプロトコルに従い、コマンド211を発行する。コマンド送信部70は、そのコマンド211を、通信部23のポート34から通信装置1へ送信する。
【0138】
(2) 通信装置1は、管理端末2からのコマンド211を、通信部13のポート33で受信する。通信部13は、そのコマンド211を、制御部11のCLI対応処理部100へ転送する。原データ取得部51は、コマンド211の指示に応じて、通信部13の変復調部31から、指定された時点の伝送信号の原データ213を取得する。
【0139】
原データ送信部56は、原データ取得部51により取得した原データ213を管理端末2へ送信する際、FTP等のプロトコルに対応したファイル形式で原データ213を送信する。原データ送信部56は、原データ213として、例えば、時点毎の数値データのファイルを通信部13に渡す。ファイルは、複数の時点を含む所定期間の数値データとしてもよい。通信部13は、FTP等のプロトコルに従い、その原データ213を、ファイル形式の原データ214として、ポート33から管理端末2へ向けて送信する。
【0140】
なお、通信装置1は、実施の形態1と同様に、ユーザ設定等に基づいて、指定のタイミングで自動的に原データ213を取得して、指定のタイミングで管理端末2へ送信してもよい。
【0141】
(3) 管理端末2は、通信装置1から原データ214のファイルを受信する。通信部23は、そのファイルをポート34で受信し、制御部21のCLI部200へ転送する。原データ受信部71は、そのファイルの原データ214を取得し、変換部73へ出力する。
【0142】
(4) CLI情報取得部72は、管理端末2内に管理されているCLI情報212を取得し、変換部73へ出力する。
【0143】
(5) 変換部73は、原データ受信部71からの原データ214を入力し、CLI情報取得部72からのCLI情報212を入力する。変換部73は、CLI情報212を用いて、その原データ213を、CLI方式の信号特性表示情報を含むCLIデータ215に変換し、そのCLIデータ215を出力する。
【0144】
(6) 更に、実施の形態1と同様に、品質分析部74を用いて、伝送信号の品質を分析する品質分析処理を行い、CLI方式の品質分析結果データを、CLIデータ215に添付することができる。品質分析部54は、品質分析結果データを含むCLIデータ215を、CLIデータ出力部75に出力する。
【0145】
(7) CLIデータ出力部75は、変換部73または品質分析部74からのCLIデータ215を入力し、そのCLIデータ215を、CLI画面へ出力する。
【0146】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、従来のCLI方式のOAMと共存しつつ、好適な信号特性表示を低コストで実現でき、OAMに係わる作業の効率や品質を確保または向上できる。
【0147】
特に、実施の形態2では、通信装置1から原データを管理端末2へ送信し、管理端末2で原データからの変換により特有のCLIデータを作成する。よって、管理端末2に変換部73のようなプログラム等の実装が必要であるが、通信装置1には、変換部53に相当するプログラム等の実装が不要であり、通信装置1自体の構成を簡略にできる。
【0148】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0149】
1…通信装置、2…管理端末、11…制御部、12…記憶部、13…通信部、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、24…入力装置、25…表示装置、31…変復調部、32,33,34…ポート、100…CLI対応処理部、101…通信網、200…CLI部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9