(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
<光送受信モジュールの構成>
図1は、実施形態における光送受信モジュール10の構成を例示する図である。光送受信モジュール10は、
図1に示されるように、光受信モジュール100、光送信モジュール200を有する。
【0013】
光受信モジュール100は複数の光受信器101を有する。各光受信器101は、受光素子と、受光素子から出力される電気信号を増幅する増幅器を有する。光受信モジュール100には、複数の光受信器101の何れかに各々対応する複数の光導波路を含む受信光導波路102が光学的に結合されている。また、受信光導波路102の先端には受信コネクタ103が設けられている。受信コネクタ103には、例えば光信号を導く光ファイバが接続される。受信光導波路102は、受信コネクタ103から入力される光信号を光受信モジュール100に導く。
【0014】
光送信モジュール200は、複数の光送信器201を有する。各光送信器201は、レーザ光源と、レーザ光源を駆動する駆動回路を有し、与えられたデータ信号から光信号を生成する。光送信モジュール200には、複数の光送信器201の何れかに各々対応する複数の光導波路を含む送信光導波路202が光学的に結合されている。また、送信光導波路202の先端には送信コネクタ203が設けられている。送信コネクタ203には、例えば光信号を導く光ファイバが接続される。送信光導波路202は、光送信モジュール200により生成される光信号を送信コネクタ203に導く。
【0015】
受信光導波路102及び送信光導波路202は、例えばポリマ導波路である。受信コネクタ103及び送信コネクタ203は、例えばMTコネクタやPMTコネクタである。
【0016】
<光受信モジュールの構成>
図2は、実施形態における光受信モジュール100の回路構成を例示する図である。
【0017】
図2に示されるように、本実施形態における光受信モジュール100には4つの光受信器101が設けられている。なお、光受信モジュール100に設けられる光受信器101の数は4つに限られるものではない。
【0018】
各光受信器101は、受光素子111と、増幅器121を有する。受光素子111は例えばフォトダイオード(PD:Photodiode)であり、アノード端子、カソード端子を有する。増幅器121は例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans-Impedance Amplifier)であり、信号入力端子、信号出力端子、バイアス端子、接地端子を有する。
【0019】
受光素子111のアノード端子は、増幅器121の信号入力端子に電気的に接続される。また、受光素子111のカソード端子は、増幅器121のバイアス端子に電気的に接続される。増幅器121のバイアス端子にバイアス電位を与えることで、受光素子111のカソード端子にもバイアス電位が与えられる。
【0020】
受光素子111に光信号が入力すると、入力する光信号の強度に応じた電流信号が増幅器121の信号入力端子に導かれる。増幅器121は、受光素子111により生成された電流信号を増幅して信号出力端子から出力する。
【0021】
図3は、実施形態における光受信モジュール100の構成を例示する図である。
図3(A)は、光受信モジュール100の上面図である。
図3(B)は、
図3(A)のA−A断面概略図である。
図3(C)は、
図3(A)のB−B断面概略図である。また、
図4は、実施形態における光受信モジュール100の構成を例示する底面図である。
【0022】
光受信モジュール100は、
図3(A)及び(B)に示されるように、基板105の第1面105aに受光モジュール110、増幅モジュール120及び容量素子140が実装されている。なお、
図3(A)において、受光モジュール110、増幅モジュール120及び容量素子140は破線で示されている。
【0023】
受光モジュール110は複数の受光素子を有する。増幅モジュール120は、それぞれが受光モジュール110の受光素子に対応する複数の増幅器を有する。受光モジュール110、増幅モジュール120及び容量素子140は、例えばフリップチップ実装により基板105の第1面105aに実装される。増幅モジュール120は、基板105との間に充填されるアンダーフィル115によって基板105に固定されている。
【0024】
基板105の第1面105aには、
図3(A)に示されるように、複数のカソード配線パターン131、複数のアノード配線パターン132、制御信号線133、第1面バイアス電極135a、第1面接地電極137aが形成されている。
【0025】
カソード配線パターン131及び第1面バイアス電極135aは一体的に形成されている。各カソード配線パターン131は、第1面バイアス電極135aから櫛歯状に突出するように形成されている。
【0026】
カソード配線パターン131とアノード配線パターン132とは、各アノード配線パターン132が2つのカソード配線パターン131の間に挟まれるように交互に形成されている。
【0027】
各カソード配線パターン131は、PD−カソード接続部151によって、受光モジュール110の受光素子のカソード端子に接続されている。また、各カソード配線パターン131は、TIA−カソード接続部152によって、増幅モジュール120の増幅器のバイアス端子に接続されている。各カソード配線パターン131は、PD−カソード接続部151及びTIA−カソード接続部152を介して、受光モジュール110の受光素子のカソード端子と、増幅モジュール120の増幅器のバイアス端子とを電気的に接続する。
【0028】
各アノード配線パターン132は、PD−アノード接続部153によって、受光モジュール110の受光素子のアノード端子に接続されている。また、各アノード配線パターン132は、TIA−アノード接続部154によって、増幅モジュール120の増幅器の信号入力端子に接続されている。各アノード配線パターン132は、PD−アノード接続部153及びTIA−アノード接続部154を介して、受光モジュール110の受光素子のアノード端子と、増幅モジュール120の増幅器の信号入力端子とを電気的に接続する信号線である。
【0029】
受光モジュール110の受光素子と増幅モジュール120の増幅器とは、カソード配線パターン131及びアノード配線パターン132によって接続され、
図2に示される光受信器101を構成する。
【0030】
制御信号線133は、増幅モジュール120の制御端子に電気的に接続され、増幅モジュール120に制御信号を入力する。
【0031】
第1面バイアス電極135aは、上記したように、複数のカソード配線パターン131と一体に形成されている。第1面バイアス電極135aには、バイアス電位が与えられる。また、第1面バイアス電極135aは、容量素子140を介して第1面接地電極137aに接続されている。
【0032】
基板105の第2面105bには、
図4に示されるように、第2面バイアス電極135bと、第2面接地電極137bが形成されている。
図4には、基板105の第1面105aに形成されているカソード配線パターン131及び第1面バイアス電極135aが破線で示されている。
【0033】
第2面バイアス電極135bは基板105の第1面105aに形成されている複数のカソード配線パターン131及び第1面バイアス電極135aを包含する領域に形成されている。第2面接地電極137bは、第2面バイアス電極135bを取り囲むように、基板105の周縁に形成されている。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、第1面105aに形成されている各カソード配線パターン131は、第1バイアスビア141及び第2バイアスビア142を介して、第2面105bに形成されている第2面バイアス電極135bに接続されている。
【0035】
また、第1面105aに形成されている第1面バイアス電極135aと、第2面105bに形成されている第2面バイアス電極135bとは、電極ビア143を介して接続されている。
【0036】
第1面バイアス電極135a及び第2面バイアス電極135bの少なくとも一方には、不図示の電圧源からバイアス電位が与えられるが、互いに電極ビア143により接続されるているため第1面バイアス電極135aと第2面バイアス電極135bとは同じバイアス電位になる。また、各カソード配線パターン131には、一体的に形成されている第1面バイアス電極135a、及び第1バイアスビア141と第2バイアスビア142によって接続されている第2面バイアス電極135bから、バイアス電位が与えられる。
【0037】
基板105の第1面105aに形成されている第1面接地電極137aは、接地ビア144によって基板105の第2面105bに形成されている第2面接地電極137bに接続されている。第1面接地電極137a及び第2面接地電極137bの少なくとも一方に接地電位が与えられるが、接地ビア144により接続されているため第1面接地電極137aと第2面接地電極137bとは同じ接地電位になる。
【0038】
本実施形態における光受信モジュールでは、各アノード配線パターン132が、同じバイアス電位を与えられる2つのカソード配線パターン131の間に挟まれるように形成されている。このような構成により、隣り合うアノード配線パターン132の間のクロストークが低減する。
【0039】
また、第1バイアスビア141は、
図3(A)及び(B)に示されるように、TIA−カソード接続部152の近傍であって、増幅モジュール120の増幅器のバイアス端子とカソード配線パターン131との接続位置近傍に形成されている。カソード配線パターン131は、増幅器のバイアス端子との接続位置近傍で第1バイアスビア141を介して第2面バイアス電極に接続されることで、受光素子と増幅器との間における電位変動が低減されて一定のバイアス電位に保たれる。
【0040】
受光素子と増幅器との間でカソード配線パターン131のバイアス電位が一定に保たれることで、カソード配線パターン131とアノード配線パターン132との間に形成される電界の変動が低減され、クロストークの低減効果が向上する。したがって、光受信モジュール100における高速信号伝送特性が向上する。
【0041】
図5は、実施形態における第1バイアスビア141の位置とカットオフ周波数との関係を例示する図である。
図5に示されるグラフは、横軸が第1バイアスビア141の位置、縦軸がカットオフ周波数を示している。
【0042】
第1バイアスビア141の位置は、
図3(B)に示す、増幅モジュール120の増幅器のバイアス端子とカソード配線パターン131とを接続するTIA−カソード接続部152の位置をゼロ点としている。また、カソード配線パターン131の延伸方向において、ゼロ点から受光モジュール110側をプラス(+)、ゼロ点から受光モジュール110とは反対側をマイナス(−)としている。
【0043】
カットオフ周波数は、本実施形態に係る光受信モジュール100のカソード配線パターン131における、Sパラメータのシミュレーション結果から求められた値である。
【0044】
図5に示されるように、カットオフ周波数は、第1バイアスビア141がTIA−カソード接続部152と同じ位置に形成されている場合に最も高く、第1バイアスビア141の位置がTIA−カソード接続部152から離れるにしたがって低下する。したがって、第1バイアスビア141をTIA−カソード接続部152の近傍位置に形成することで、光受信モジュール100において優れた高速信号伝送特性を得られることが分かる。
【0045】
また、第1バイアスビア141は、例えば、カソード配線パターン131の延伸方向の、TIA−カソード接続部152の位置から±0.5mmの範囲内に形成されることが好ましい。
【0046】
ここで、第1バイアスビア141は、基板105に形成されている貫通孔が銅メッキで塞がれた穴埋めビアとし、非貫通孔となっていることが好ましい。第1バイアスビア141は、例えばスルーホールに充填材を充填することで形成してもよいが、形成方法はこれらに限られない。
【0047】
第1バイアスビア141は、上記したように、基板105の第1面105aと増幅モジュール120との間のTIA−カソード接続部152の近傍に形成される。第1バイアスビア141が貫通孔となっている場合には、基板105と増幅モジュール120との間に充填されるアンダーフィル115が、第1バイアスビア141を介して第2面105b側に漏れ出す可能性がある。そこで、第1バイアスビア141を穴埋めビアとすることで、アンダーフィル115の第2面105b側への漏出を防止できる。
【0048】
また、カソード配線パターン131と第2面バイアス電極135bとを接続する第2バイアスビア142は、
図3(A)及び(B)に示されるように、受光モジュール110と増幅モジュール120との間の中間位置に形成されている。このような位置に第2バイアスビア142を形成することで、カソード配線パターン131の電位変動をより低減してバイアス電位を均一に保つことが可能になる。
【0049】
したがって、高密度化された光受信モジュール100においても、隣接するアノード配線パターン132の間に生じるクロストークを低減し、優れた高速信号伝送特性を得ることが可能になる。
【0050】
また、基板105には、第1バイアスビア141及び第2バイアスビア142以外に、カソード配線パターン131と第2面バイアス電極135bとを接続するビアを1つ以上設けてもよい。
【0051】
<光受信モジュールの製造方法>
図6は、実施形態における光受信モジュール100の製造方法を例示する図である。
図6(A)〜(E)には、
図3(A)のA−A断面が示されている。
【0052】
図6(A)に示すように、基板105の第1面105a及び第2面105bには、それぞれ銅箔106が積層されている。基板105は、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルムである。
【0053】
次に、例えば基板からエッチングにより銅箔106を部分的に除去し、
図6(B)に示すように、基板105の第1面105a及び第2面105bにそれぞれ配線や電極のパターンを形成する。
【0054】
基板105の第1面105aには、カソード配線パターン131、制御信号線133及び第1面バイアス電極135aの各パターンが形成される。また、第1面105aには、
図6には不図示のアノード配線パターン132及び第1面接地電極137aも同時に形成される。基板105の第2面105bには、第2面バイアス電極135b及び第2面接地電極137bの各パターンが形成される。
【0055】
続いて、
図6(C)に示すように、例えばエッチングにより、貫通孔107を基板105に形成する。各貫通孔107は第1バイアスビア141、第2バイアスビア142及び電極ビア143を構成するもので、基板105の第2面105b側から形成され、第1面105a側がカソード配線パターン131又は第1面バイアス電極135aによって塞がれている。
【0056】
ここで、貫通孔107の形成と同時に、基板105の第2面105b側に設けられる光導波路に導かれた光信号を受光素子に入力するための開口部を基板105に形成してもよい。
【0057】
次に、基板105に銅メッキを施し、各貫通孔107の内周面に銅メッキ層を形成し、
図6(D)に示すように、第1バイアスビア141、第2バイアスビア142及び電極ビア143を形成する。また、
図6(D)には不図示の接地ビア144も同時に形成する。
【0058】
第1バイアスビア141及び第2バイアスビア142は、基板105の第1面105aのカソード配線パターン131と第2面105bの第2面バイアス電極135bとを接続する。電極ビア143は、第1面105aの第1面バイアス電極135aと第2面105bの第2面バイアス電極135bとを接続する。
【0059】
続いて、
図6(E)に示すように、第1面105aに、受光モジュール110、増幅モジュール120及び容量素子140を実装する。受光モジュール110、増幅モジュール120及び容量素子140は、例えばフリップチップ実装により第1面105aに実装される。また、増幅モジュール120と第1面105aとの間にアンダーフィル115を充填し、増幅モジュール120を第1面105aに固定する。
【0060】
受光モジュール110は、PD−カソード接続部151によってカソード配線パターン131に接続される。また、受光モジュール110は、
図6(E)には不図示のPD−アノード接続部153によってアノード配線パターン132に接続される。増幅モジュール120は、TIA−カソード接続部152によってカソード配線パターン131に接続される。また、増幅モジュール120は、
図6(E)には不図示のTIA−アノード接続部154によってアノード配線パターン132に接続される。
【0061】
なお、受光モジュール110等を実装する前に、基板105の第1面105aのカソード配線パターン131等が露出する部分に、例えばソルダーレジストを塗布してもよい。また、カソード配線パターン131等の腐食防止及び受光モジュール110等との接触性向上のために、ソルダーレジストを塗布した基板105におけるカソード配線パターン131等の露出部分に例えば金メッキを施してもよい。
【0062】
また、基板105の第2面105bには、受光素子に入力する光信号を導く受信光導波路、受信光導波路により導かれた光信号を受光素子に集光するレンズシートが設けられる。
【0063】
本実施形態に係る光受信モジュール100は、上記にて例示した工程により製造されるが、工程の順序が入れ替えられてもよく、異なる工程が追加されてもよい。
【0064】
以上で説明したように、本実施形態に係る光受信モジュール100によれば、TIA−カソード接続部152の近傍に形成される第1バイアスビア141によって、受光素子と増幅器との間におけるカソード配線パターン131の電位変動が低減する。したがって、カソード配線パターン131に挟まれるように形成されているアノード配線パターン132間のクロストークが低減し、高速信号伝送特性が向上する。また、TIA−カソード接続部152の近傍に形成する第1バイアスビア141を穴埋めビアとすることで、増幅モジュール120と基板105の第1面105aとの間に充填されるアンダーフィル115の第2面105b側への漏出が防止されている。
【0065】
以上、実施形態に係る光受信モジュール及び光受信モジュールの製造方法について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。