【実施例】
【0024】
図1は、本発明の一実施例としての生地の積層裁断装置1の概略的な構成および動作を示す。生地の積層裁断装置1は、上流側から下流側に配置される、延反機構2と、ラベル貼り付け機構3と、裁断機構4と、ピックアップ機構5とを含み、積層生地6を搬送しながら処理する。延反機構2は、生地7をロール状の原反8から延反して一定長ずつ切断しながら延反テーブル2a上で積層する。ラベル貼り付け機構3は、ラベル貼り付けテーブル3a上の積層生地6の上面にラベル6bを貼り付ける。ラベル6bは、矩形などの一定形状で、基本的に各パーツ6aで裁断される領域の内部に貼り付けられ、パーツ6aの名称などの識別情報が文字、バーコード、二次元バーコードなどで印字される。裁断機構4は、裁断テーブル4a上の積層生地6を裁断する。ピックアップ機構5は、裁断機構4で裁断された積層生地6が搬入されるピックアップテーブル5aを備え、パーツ6aの取出しが可能である。延反テーブル2a、ラベル貼り付けテーブル3a、裁断テーブル4aおよびピックアップテーブル5aは、連動可能な搬送機能を備え、コンベアとしても動作する。延反機構2では、最上層の生地7に、原点シール9を自動的に貼り付ける機能と、最下層の生地7の延反開始前に、延反テーブル2a上に後述する下敷紙14を自動的に敷く機能とを備えている。
【0025】
図1(a)は、裁断機構4で積層生地6をパーツ6aに裁断している状態を示す。
図1(b)は、裁断機構4で裁断されるパーツ6aの位置に、ラベル貼り付け機構3でラベル6bを貼り付けている状態を示す。裁断機構4での裁断とラベル貼り付け機構3でのラベル貼り付けとは、並行して行うことが可能である。
図1(c)は、裁断機構4およびラベル貼り付け機構3での並行動作とともに、延反機構2で生地7を延反している状態を示す。
図1(b)および
図1(c)では、ピックアップ機構5に備えられる投影手段5bによって、特許文献3と同様、あるいはパーツ6aの輪郭や形状塗り潰しでの色分けなどの仕分け情報の投影も行われる。ピックアップ機構5でのパーツ6aの取り出しは作業者による人手で行い、特に、裁断した積層生地6からのパーツ6bの取り出し作業が終了し、次の取り出し作業が可能であることを生地の積層裁断装置1に知らせる必要があるので、全体的な制御を行う制御装置10を設置しておく。
【0026】
本実施例の生地の積層裁断装置1は、延反機構2の原反8側で原点シール9を積層生地6の上面に自動的に貼り付け、延反された積層生地6を裁断テーブル4a上に搬入して、裁断機構4で原点シール9を検出することができる。裁断機構4は、検出した原点シール9の位置に基づいて積層生地6を裁断するので、搬送の際に積層生地6の位置がずれていても、積層生地6に合わせて裁断することができる。裁断機構4の下流側にピックアップ機構5を設けるので、裁断機構4で裁断された積層生地6を裁断テーブル4aからピックアップテーブル5aに自動的に搬送することができる。このようにして、延反機構2での自動的な延反および裁断機構4での自動的な裁断で、複数枚の生地を積層状態にする延反から、パーツ6aに裁断するまでの工程を自動化することができる。
【0027】
図2と
図4とは、
図1の生地の積層裁断装置1の延反機構2の動作と構成とを示す。延反機構2は、原反8から引出した生地7を延反テーブル2a上に引出す生地送りベルト11を備える。生地送りベルト11の一端は、移動体12に設けられ、延反テーブル2aの搬送方向であるX軸方向に往復移動しながら、生地7を延反テーブル2a上に積み重ねる。生地送りベルト11の他端には、延反テーブル2aの内部でX軸方向に移動可能な移動ローラー13が設けられる。移動ローラー13の移動は、移動体12の移動に同期して行われる。移動ローラー13は、移動体12が上流側に後退する際には下流側に前進して、延反テーブル2a上に渡る生地送りベルト11が移動する際の弛みを吸収し、移動体12が下流側に前進する際には上流側に前進して生地送りベルト11の過度の緊張を防ぐ。
【0028】
延反機構2は、最下層の生地7の延反開始前に、延反テーブル2a上に下敷紙14を供給して敷く下敷紙供給手段15と、最上層の生地7に、原反8側で原点シール9を貼り付けるシール貼り付け手段16とを含む。下敷紙供給手段15は、ロールから下敷紙14を引出し、延反テーブル2a上に引出したらカッターで切断する機能を備えている。シール貼り付け手段16は、原反8から引き出す生地7を、用尺と呼ばれる設定長で切断するカッター17を備える延反スタンド18の原反8側に設けられ、最上層となる生地7上に、切断前に原点シール9を貼り付けることができるので、貼り付け位置の精度を高めることができる。原点シール9は、テープ状の台紙に正方形などの特定形状に型抜きされて供給される。シール貼り付け手段16は、台紙から剥離して生地7上に原点シール9を貼り付ける。延反テーブル2aは、無端のベルトコンベアを備え、下敷紙14とともに積層生地6を排出して、ラベル貼り付け機構3側に送ることができる。延反機構2の各部の動作は、制御手段19によって制御される。
【0029】
図2(a)は、原点シール9が貼り付けられた生地7の先端を積層生地6の先端に降ろした移動体12が上流側に後退する途中の状態を示す。
図2(b)は、移動体12が延反スタンド18まで後退した状態を示す。
図2(c)は、積層生地6を、延反テーブル2aから搬出開始している状態を示す。
図2(d)は、積層生地6の先端がラベル貼り付けテーブル3aに搬入開始されている状態を示す。後述するように、原点シール9がラベル貼り付け機構3の検出手段20で検出される。
【0030】
図3と
図5および
図6とは、
図1の生地の積層裁断装置1のラベル貼り付け機構3および裁断機構4の動作と構成とを示す。
ラベル貼り付け機構3は、延反機構2と裁断機構4との間に配置され、ラベル貼り付けテーブル3a上に搬入する積層生地6の最上層に貼り付けられた原点シール9を検出する検出手段20と、検出された原点シール9の位置に基づいてラベル貼り付けを行うように制御する制御手段21とを備える。検出手段20は、ラベル貼り付けテーブル3aのX軸方向に往復移動可能なYビーム体22に設けられ、X軸方向に垂直で、ラベル貼り付けテーブル3aの幅方向となるY軸方向に往復移動可能なラベル貼り付けヘッド23に取付けられている。ラベル貼り付けヘッド23には、ラベル6bにパーツ情報を印字してから生地7上に貼り付けるラベル付与手段24も設けられている。
【0031】
裁断機構4は、原点シール9を検出する検出手段30と、検出手段によって検出された原点シール9の位置に基づいて裁断を行うように制御する制御手段31とを含む。裁断機構4は、裁断テーブル4aのX軸方向に往復移動可能なYビーム体32と、Yビーム体32に設けられ、X軸方向に垂直で、裁断テーブル4aの幅方向となるY軸方向に往復移動可能な裁断ヘッド33とをさらに含む。裁断ヘッド33には、積層生地6を裁断する裁断刃35が備えられている。積層生地6を裁断刃35で裁断する際には、積層生地6を裁断テーブル4a上に保持する。積層生地6の保持は、裁断テーブル4aの下方への吸引によって行い、裁断テーブル4aの表面は、裁断刃35の先端が上下動して侵入することを許容する剛毛ブラシで形成される。下敷紙14は、最下層の生地7が剛毛ブラシ内に吸い込まれないようにするために用いる。積層生地6は、吸引による保持のために、空気不透過性の密閉シート36で覆う。密閉シート36は、裁断テーブル4aの搬入側に設ける密閉シート供給手段37で、積層生地6の搬入に合わせて自動供給することができる。密閉シート供給手段37は、特許文献2と同様に、ロールから密閉シートを積層生地6の上面に繰り出し、積層生地6の搬入が終了すると密閉シート36を切断する機能を備えている。なお、密閉シート供給手段37を設けないで、密閉シート36のロールのみを搬入側に設置し、積層生地6の搬入に合わせて覆うように、作業者が操作することもできる。
【0032】
図3(a)は、延反テーブル2aとラベル貼り付けテーブル3aとを連動させて、積層生地6を搬送しながら、ラベル6bの貼り付けを行っている状態を示す。
図3(b)は、ラベル貼り付け機構3でのラベル6bの貼り付けで、積層生地6の後端が延反テーブル2aから搬出され、延反機構2で次の延反が開始されている状態を示す。
図3(c)は、ラベル貼り付けテーブル3aから裁断テーブル4aに搬出される積層生地6の先端付近に貼り付けられている原点シール9が裁断機構4の検出手段30で検出される状態を示す。なお、裁断テーブル4a上に搬入する積層生地6上は、密閉シート36で覆われる。
図3(d)は、ラベル貼り付けテーブル3aと裁断テーブル4aとが連動し、密閉シート36で覆われた積層生地6を移動させて裁断機構4がパーツ6aに裁断しながら、ラベル貼り付け機構3でのラベル6bの貼り付けを行っている状態を示す。延反機構2では、次に処理する積層生地6の準備が進められている。
【0033】
検出手段30は、密閉シート36で覆われた最上層の生地7に貼り付けられた原点シール9を検出する必要があるので、原点シール9には、回帰反射型のシールを使用することが好ましい。回帰反射型は、入射した光を入射した方向に反射することができる。密閉シート36の表面に光沢があっても、表面に対して傾斜して入射した光は異なる方向に反射されるので、検出手段30は、密閉シート36が存在しても、原点シール9を容易に検出することができる。原点シール9は、回帰反射型ばかりではなく、金属箔などの光沢を有するもの、つや消しで光沢を有しないものなど、密閉シート36で覆われる積層生地6の表面で容易に識別可能なものであれば使用可能である。
【0034】
ラベル貼り付け機構3および裁断手段4では、検出手段20,30としてカメラを使用し、原点シール9の画像を撮像する。原点シール9は、たとえば正方形など、単純な形状となるように形成されている。原点シール9の形状は、正方形に限らず、円形や正三角形など、他の形状であってもよい。生地7の模様に応じて、識別しやすい形状の原点シール9を使い別けることもできる。延反機構2のシール貼り付け手段16は、たとえば生地7の先端の一方の角からX軸方向およびY軸方向にそれぞれ一定の距離をあけて原点シール9を貼り付ける。制御手段21,31は、検出手段20,30によって検出された原点シール9の画像を、単純な形状に修正し、形状に基づいて積層生地6の基準の位置を算出する。
【0035】
なお、シール貼り付け手段16は、延反されて積層された積層生地6の最上層に原点シール9を貼り付ける位置に設けることもできる。本実施例の移動体12や、原反8をバケットに搭載しながら移動して生地7を引き出しながら積層させる形式の延反機構でのバケットなど、移動する部分にシール貼り付け手段16を設置して、積層生地7上に原点シール9を貼り付けるようにしてもよい。
【0036】
図7は、ピックアップ機構5の構成を示す。生地の積層裁断装置1の全体的な制御を行う制御装置10には、情報の表示を行ったり情報入力を行ったりするための操作部I/F10aが備えられている。操作部I/Fには、生地の積層裁断装置1の全体的な運転開始や停止の操作や、ピックアップテーブル5a上からのパーツ6aの取り出し作業が終了して、ピックアップテーブル5a上に次の裁断済み積層生地6の搬入が可能になったことを知らせる操作が行われる。制御装置10は、ピックアップテーブル5aのコンベアとしての動作の制御と、投影手段5bによる投影画像を裁断されたパーツ6aのピックアップテーブル5a上への搬入に同期して行われるようにする制御とを、併せて行う。なお、延反機構2には制御手段19、ラベル貼り付け機構3には制御手段21、および裁断機構4には制御手段31がそれぞれ設けられ、制御装置10からは動作用のデータや指示が与えられ、各機構の動作はそれぞれの制御手段によって制御されているけれども、制御装置10で各機構まで制御させるようにしてもよい。
【0037】
図8は、制御装置10によって、各機構のテーブルを連動させる制御手順を概略的に示す。ステップa1では、たとえば
図3(d)のラベル貼り付け機構3のように、下流側の裁断機構4の裁断テーブル4aのコンベアと、ラベル貼り付けテーブル3aのコンベアを連動する。ステップa2では、たとえばラベル6bの貼り付けを終了し、積層生地6を下流側に搬出完了か否かを判断する。搬出完了でなければステップa1に戻り、搬出完了であれば、ステップa3で、上流側、たとえば延反機構2の延反テーブル2aで積層生地6の準備が完了し、コンベアからの搬出が可能か否かを判断する。搬出可能でないと判断されると、ステップa3を続け、搬出可能であると判断されるとステップa4に移る。ステップa4では、上流側、たとえば延反機構2のコンベアと連動し、ラベル貼り付けテーブル3a上に搬入する積層生地6上にラベル6bを貼り付けながら搬入を続ける。ステップa5では、上流側からの搬出が完了したか否かを判断する。搬出完了でないと判断されると、ステップa4に戻り、搬出完了と判断されると、ステップa6に移る。ステップa6では、積層生地6の搬送を行いながら、たとえばラベル貼り付けの処理を行う。ステップa7では、積層生地6の先端がテーブルの先端に達したか否かを判断する。達していないと判断するとステップa6に戻り、達していると判断されると、ステップa8で下流側との連動が可能か否かを判断する。連動可能でないと判断されるとステップa9で搬送を停止し、ステップa8を繰返す。ステップa8で、連動可能であると判断されるとステップa1に戻る。
【0038】
なお、裁断機構4でも、下流側のピックアップ機構5と上流側のラベル貼り付け機構3との間で、同様の連動動作を行わせることができる。
【0039】
図9は、制御装置10によって、ラベル貼り付け機構3および裁断機構4の検出手段20,30で原点シール9の位置を検出し、制御手段21,31で積層生地6の基準位置を算出するように制御する概略的な手順を示す。ステップb1では、検出手段20,30をコンベアの搬入側で待機させる。搬入後、直ちに原点シール9を検出可能にするためである。ラベル貼り付けヘッド23および裁断ヘッド33は、Yビーム体22,32で、Y軸方向については原点側に寄せておく。テーブルの搬入側に、検出手段20,30を固定しておくこともできる。積層生地6の搬送で原点シール9の位置が多少ずれても、検出手段20,30の視野内には入れることができる。ステップb2では、検出手段20,30が原点シール9を検出したか否かを判断する。検出していないと判断されればステップb1に戻り、検出したと判断されるとステップb3でコンベアの搬入を一旦停止する。ステップb4では、Yビーム体22,32を移動させる。ステップb5では、原点シール9を形状も含めて認識したか否かを判断し、認識していなければ、ステップb4に戻る。ステップb5で原点シール9を認識すると、Yビーム体22,32を停止し、原点シール6の位置から基準位置を算出する。
【0040】
以上の説明では、延反された積層生地6にラベル6bを貼り付けていたけれども、ラベル6bは貼り付けなくてもよい。ラベル6bの貼り付けが不要なら、ラベル貼り付け機構3を省くこともできる。ラベル貼り付け機構3を設ける場合、ラベル貼り付け機構3の制御手段21および裁断機構4の制御手段31は、ラベル貼り付けおよび裁断を、共通のマークデータに基づいて行うように、それぞれ制御する。マークデータは、CADなどのデザイン装置で作成され、積層生地6として積層する生地7の長さについての用尺、生地7に配置するパーツ6aの位置および形状についての情報を含む。マークデータは、制御装置10に入力され、裁断データに変換されて、ラベル貼り付け機構3の制御手段21および裁断機構4の制御手段31に与えられる。制御装置10からは、用尺と積層枚数のデータが延反機構2の制御手段19に与えられる。共通のマークデータを利用するので、延反機構2、ラベル貼り付け機構3、および裁断機構4にそれぞれ個別の制御データを作成して入力する必要はなく、データの一元化を図ることができる。なお、延反機構2の制御に必要な延反データや裁断機構4の制御に必要な裁断データをそれぞれ作成し、延反機構2の制御手段19や裁断機構4の制御手段31に直接入力して、制御装置10では機構相互間の連動状態を制御するようにしてもよい。