(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吊り上げアームは、前記本体部から前方上方側へ延出された突出端部の高さが、装着状態における使用者の頭頂部に相当する高さ位置と同程度、もしくは、それよりも低い領域に設定されている請求項1〜5のいずれか一項記載のアシストスーツ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、アシストスーツSを背中に装着した使用者を起点として、使用者にとっての前方側(
図4における矢印F参照)に相当する方向がアシストスーツSの「前」方向を示している。同様に、後方側(
図4における矢印B参照)に相当する方向が「後」方向を示し、右方側(
図4における矢印R参照)に相当する方向が「右」方向を示し、左方側(
図4における矢印L参照)に相当する方向が「左」方向を示すように記載している。
また、図示はしていないが、アシストスーツSの適宜部分には、合成樹脂製や金属製のカバー部材が設けられ、可動部分や、保護の必要な部分を覆うように構成されている。
【0021】
〔全体構成〕
図1〜4は、本発明におけるアシストスーツSの一つの実施形態を示すものである。
アシストスーツSは、ベルト装着具7を用いて、使用者に背負わせた状態で装着可能な扁平形状の本体部1を備えている。
この本体部1に対して、後述する脚部操作装置2や、吊り上げアーム3が取り付けられているとともに、吊り上げアーム3に操作ワイヤ6(索状体に相当する)を介して把持操作具4が装備されている。
また、その本体部1には、操作ワイヤ6を介して装備された把持操作具4を駆動するための巻き上げウインチ5、及び脚部操作装置2や巻き上げウインチ5の作動を制御する制御装置C、ならびに電力供給用のバッテリーVなどが設けられている。
【0022】
〔本体部の構成について〕
本体部1は、所定間隔を隔てて上下方向に沿う状態で立設された左右一対の金属パイプ製の縦フレーム10と、その縦フレーム10の上下方向の中間部同士、及び下部同士を接続する上下一対の横フレーム11,12とを備えて、矩形枠状の一体物として構成されている。左右の縦フレーム10と上下の横フレーム11,12との一体化は、溶接による連結、もしくはボルト連結等の手段を採用することができる。
本体部1の上部には、使用者の肩部を越えて前方に延出された吊り上げアーム3が設けられている。この吊り上げアーム3は、後述する把持操作具4を吊り下げ状態に装着するものであり、縦フレーム10の上部から前方斜め上方に向けて延出されている金属パイプ部分によって構成されている。
【0023】
上下両横フレーム11,12のうち、上側に配置した横フレーム11には、
図1及び
図2に示すように、把持操作具4を昇降駆動させる巻き上げウインチ5として、リール装置50と、そのリール装置50を駆動する第一電動モータM1が取り付けられている。
リール装置50や第一電動モータM1は、それぞれの回転軸心が水平方向に沿い、かつリール装置50が第一電動モータM1の上方側に位置して横フレーム11の扁平な面に沿うように配置されている。これにより、本体部1の薄型設計が可能となり、本体部1から後方への突出寸法を可能な限り減少させてある。
【0024】
下部側の横フレーム12には、
図1乃至
図4に示すように、左右両側に脚部操作装置2が各別に取り付けられている。
この脚部操作装置2は、本体部1と使用者の脚部太腿部分とを連結して、各脚部操作装置2の作動によって、上半身に対して折り曲げ姿勢にある使用者の脚部を押し下げ方向に操作する。これによって、脚部を反力受け点として使用者の起立動作を補助するように構成されたものである。
【0025】
上側の横フレーム11と下側の横フレーム12との中間位置には、前記左右の縦フレーム10の間に架け渡された状態で中間取付板13が固定されている。
この中間取付板13には、巻き上げウインチ5に備えた第一電動モータM1や脚部操作装置2に備えた第二電動モータM2の作動を制御するための制御装置C、及び第一電動モータM1や第二電動モータM2に電力を供給するバッテリーVが取り付けられている。つまり、中間取付板13に対して制御装置Cが固定され、制御装置CのカバーケースC1の背面側にバッテリーVが固定されている。
【0026】
上記のように本体部1では、巻き上げウインチ5のリール装置50が、巻き上げウインチ5の第一電動モータM1や、制御装置Cや、バッテリーVよりも上方側に配置されているから、把持操作具4までの操作ワイヤ6の経路長さを短縮でき、ワイヤ量の削減を図れる。
また、当該アシストスーツSの中枢となる制御装置Cは、上方を巻き上げウインチ5で、後方をバッテリーVでそれぞれガードされているから、他物との衝突による損傷を回避し易く、正常な機器制御を維持し易い。
【0027】
バッテリーVは、巻き上げウインチ5の第一電動モータM1、制御装置C、及び、脚部操作装置2における左右一対の第二電動モータM2、センサー類(図示せず)等に対する電源として用いられている。
制御装置Cは、後述する把持操作具4に備えた操作スイッチ42や、センサー類からの信号を受けて、それぞれに対応する装置の駆動制御を行えるように構成されている。
【0028】
〔脚部操作装置について〕
左右一対の脚部操作装置2は、次のように構成されている。
図1乃至
図4に示すように、各脚部操作装置2は、平面視での形状が「L」字形状の腰部フレーム2Aと、腰部フレーム2Aの前端部に、横軸心x1周りで前後方向に揺動自在に支持された揺動アーム部2Bと、揺動アーム部2Bの先端側部分に設けられて使用者の太腿部分に当接自在な当接部2Cとを備えて構成されている。
脚部操作装置2のそれぞれは、左右の腰部フレーム2A同士の間隔を調整して、例えば、使用する使用者の腰幅や足間隔に合わせて、左右の脚部操作装置2を適切に配置することができるように、前記横フレーム12に対する取付位置を左右方向で変更して、位置調節可能に構成されている。
【0029】
脚部操作装置2の腰部フレーム2Aは、「L」字形状のうち、左右方向に沿い下部側の横フレーム12に当接した基端側部分が、横フレーム12に対してボルト連結され、前方向に突出した先端側部分に、前記揺動アーム部2Bを横軸心x1周りに揺動駆動させるギヤボックス20が内蔵されている。そして、ギヤボックス20の後方側には、揺動アーム部2Bの駆動用の第二電動モータM2が連設されている。この第二電動モータM2の回転力が、ギヤボックス20を経由することで、横軸心x1周りの回転力として変換されて揺動アーム部2Bに減速状態で伝達される。
【0030】
脚部操作装置2の駆動は、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を検出するポテンショメータ(図示せず)や、リール装置50の回転角を検出するポテンショメータ52などのセンサーによる検出信号と、後述する把持操作具4に備えた操作スイッチ42からの操作信号とに基づいて行われる。そのために、把持操作具4に備えた操作スイッチ42が操作されたことの操作信号と、その操作時点における腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢の検出信号と、リール装置50の回転角の検出信号が制御装置Cで検出可能に構成されている。
【0031】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42が操作されていない状態では、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢がどのような状態であっても、脚部操作装置2に対するアシスト操作は行われない。
把持操作具4に備えた操作スイッチ42が上昇側に操作されたことの操作信号と、その操作時点における腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢として、使用者が腰を落としたしゃがみ込み姿勢であることの検出信号が制御装置Cで検出されると、脚部操作装置2におけるアシスト操作が行われる。
つまり、操作スイッチ42が上昇側に操作されていてもリール装置50による巻き取り動作は行わず、これに優先して腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を、使用者のしゃがみ込み姿勢から起立姿勢への動きをアシストするように、腰部フレーム2Aに対して揺動アーム部2Bを横軸心x1周りで押し下げる方向に操作する。そして腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢が使用者の起立姿勢に相当する状態であることが検出されると、前記リール装置50による操作ワイヤ6(索状体に相当する)の巻き取りが行われ、起立状態からの荷物の上方側への持ち上げ動作がアシストされる。
【0032】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42が下降側に操作されたことの操作信号と、その操作時点における腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢として、使用者が起立した姿勢であることの検出信号が制御装置Cで検出されると、前記リール装置50による操作ワイヤ6の繰り出しが行われる。この繰り出しは、操作ワイヤ6に制動を掛けながらゆっくりと行われ、使用者が把持操作具4を持ったままで手を伸ばすことが可能な範囲で行われるように、リール装置50における繰り出し限界が設定されている。
前記リール装置50による操作ワイヤ6の繰り出しが限界に達した後も操作スイッチ42が下降側に操作されていると、使用者の起立姿勢からしゃがみ込み姿勢への動きを許容するように、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を変更する。この姿勢変更は、腰部フレーム2Aに対して揺動アーム部2Bを、横軸心x1周りで押し下げる方向とは逆方向へ緩やかに作動させて、使用者がしゃがみ込み姿勢となることを許すように、使用者の姿勢変更動作がアシストされる。
【0033】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42の上昇側もしくは下降側への操作が解除される、あるいは操作スイッチ42が上昇側と下降側との両方が同時操作されると、リール装置50による操作ワイヤ6の巻き取り、あるいは繰り出しの操作が停止され、脚部操作装置2に対するアシスト操作は解除される。
【0034】
〔吊り上げアームについて〕
本体部1の上部から前方に延出された吊り上げアーム3は次のように構成されている。
吊り上げアーム3は、左右一対の縦フレーム10を構成する金属パイプの上部側を前方側へ曲げ加工することによって、縦フレーム10と一体の金属パイプによって構成されている。
つまり、縦フレーム10を構成する金属パイプのうち、上下に位置する横フレーム11,12を繋いで使用者の腰部から肩部程度の上下方向長さを有した範囲のものが縦フレーム10として用いられているが、使用者の肩部を越えて縦フレーム10の上部から前方斜め上方に向けて延出されている箇所の金属パイプ部分が、吊り上げアーム3として用いられる。
この吊り上げアーム3は、側面視で使用者の頭部を迂回するように上方側に高く延出されるのではなく、側面視で使用者の頭部の側方を横切って前方上方側に延出されている。
これによって、吊り上げアーム3の上端部が、使用者の頭頂部を大きく越えない程度の比較的低い高さ位置に設定されている。
【0035】
また、
図1に示すように、吊り上げアーム3は、水平方向前方を向く使用者の目線hLよりも上方側を通って前方上方へ延出されている。そして、その吊り上げアーム3の上端部の位置が、水平方向前方を向く使用者の視野に入りやすい位置に設けられている。つまり、一般的に水平方向前方を向く人の上下方向での視野角は、上方側約60度、下方側約70度(
図1における破線の範囲を参照)といわれているので、吊り上げアーム3の上端部の位置を、この視野内に位置するように設定してある。
【0036】
図2乃至
図4に示されるように、縦フレーム10を構成する部位は、左右の金属パイプが略平行に配置してあるのに対して、吊り上げアーム3を構成する部分では、左右の金属パイプの上端側が、前方上方側ほど左右に拡がる傾斜状態に形成されている。
縦フレーム10の左右方向の間隔は、使用者の肩幅より狭く(例えば、肩幅の半分程度)設定してある。また、吊り上げアーム3の上端部における左右方向の間隔は、使用者の肩幅より広く(例えば、肩幅の2倍程度)設定してある。
平面視における吊り上げアーム3の上端部の前後方向位置は、使用者の肩の位置よりも前方に延出されていることにより、使用者の顔や胴部よりも前方側の位置(例えば、使用者のつま先の鉛直線上近く)に設定してある(
図1参照)。
【0037】
このように構成された吊り上げアーム3は、その前方側へ延出された左右それぞれの上端部に、2個の滑車31,31が同一の水平方向軸心x2回りで回動するように取り付けられている(
図8乃至
図10参照)。
この2個の滑車31,31には、1個の把持操作具4に一端側を取り付けられた2本の操作ワイヤ6が掛けられている。したがって、左右の吊り上げアーム3の計4個の滑車31に、計4本の操作ワイヤ6が掛けられた状態となる。
各操作ワイヤ6の他端側はリール装置50に備えた4個の巻き取りドラム51(
図2、及び
図13参照)に個々に係止されていて、リール装置50による巻き取り、あるいは繰り出しの作動に伴って4個の巻き取りドラム51が同時に作動し、4本の操作ワイヤ6が同時に同方向に巻き取り、あるいは繰り出し操作される。
【0038】
吊り上げアーム3の上端部には、前記滑車31の上方側及び横側方を覆う端部カバー30が装着されている。この端部カバー30には、
図8に示すように前記操作ワイヤ6の挿通孔32と、ワイヤ止め部33とが一体に備えられている。
操作ワイヤ6は、
図9及び
図10に示すように、アウターワイヤ60とインナーワイヤ61とを備えたボーデンワイヤによって構成されている。このボーデンワイヤにおいて、前記把持操作具4とリール装置50とに連結されるのは、インナーワイヤ61であり、アウターワイヤ60はインナーワイヤ61の保護及び案内を行う。アウターワイヤ60は、吊り上げアーム3の上端部に近い位置でワイヤ止め部33に一端側が固定され、他端側がリール装置50に近い位置で背部ワイヤ止め53に固定される。
【0039】
図9及び
図10に示すように、端部カバー30の上向き面側には、2本のインナーワイヤ61を挿通可能な挿通孔32が形成されているとともに、その挿通孔32の近くで、2本のアウターワイヤ60を固定するためのワイヤ止め部33が設けられている。
ワイヤ止め部33は、上下方向に長い2つの長孔33aが形成されている。この長孔33aは、短径方向の寸法がインナーワイヤ61及びアウターワイヤ60のネジ部60aを挿通可能な大きさで、連結用ナット62(螺合部材に相当する))の外径よりも短く形成され、長径方向の寸法は、連結用ナット62の外径よりも大きく形成されている。
これにより、アウターワイヤ60のネジ部60aから外された連結用ナット62を、インナーワイヤ61に挿通させたまま、
図9に示すように平面視で斜め姿勢にして、
図10に示すように長孔33aを通過させることができる。このためには、長孔33aの短径方向の寸法は、連結用ナット62の厚み方向の寸法よりも大きくしてあって、一時的にインナーワイヤ61を屈曲させるように連結用ナット62を傾斜姿勢にして、その傾斜姿勢のままで通過可能な寸法に形成されている必要がある。
【0040】
このように構成されたワイヤ止め部33の両長孔33a,33aのそれぞれに各アウターワイヤ60のネジ部60aが差し込まれる。そして、ネジ部60aの端部側から連結用ナット62を締め込んで、ワイヤ止め部33をワイヤ6の長さ方向の前後から、連結用ナット62と締め込み用ナット63とで挟み込んだ状態とすることにより、2本のアウターワイヤ60をワイヤ止め部33に固定している(
図4,5参照)。
この連結用ナット62と、締め込み用ナット63と、アウターワイヤ60のネジ部60aとによって、アウターワイヤ60をワイヤ止め部33に固定する固定具を構成している。
【0041】
〔把持操作具について〕
左右の吊り上げアーム3に掛けられた4本の操作ワイヤ6のうち、各吊り上げアーム3毎に掛けられた2本の操作ワイヤ6の端部が1個の把持操作具4に取り付けられている。
この2本の操作ワイヤ6は、それぞれが、許容吊り上げ荷重として予め設定されている荷重に単独で耐え得る強度を有している。これは、長期の使用のうちに、万一、1本の操作ワイヤ6が破断したとしても、残りの1本の操作ワイヤ6によって許容吊り上げ荷重の荷物を吊り上げ状態に維持し得るようにするためである。
【0042】
具体的には、各吊り上げアーム3から垂下された2本のインナーワイヤ61,61の下端部が、一つの把持操作具4に取付られるのであるが、その2本のインナーワイヤ61,61のうち、一方のインナーワイヤ61が他方のインナーワイヤ61よりも少しだけ長く形成されている。
つまり、リール装置50に備えられた4個の巻き取りドラム51のうち、左右方向での外側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61に比べて、その巻き取りドラムよりも一つ内側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61が少し長く形成されている。この2本のインナーワイヤ61,61同士の間における長さの差は、通常の使用状態で荷物の荷重が作用するところの、短い方のインナーワイヤ61が経年変化で生じると予測される伸び量と同程度、あるいはそれ以上であるのが望ましい。
上記の2本のインナーワイヤ61,61の下端部は、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に連結固定してある。
【0043】
このように、2本のインナーワイヤ61,61同士の間における長さに差を持たせた状態で、吊り上げアーム3に把持操作具4を連結することにより、2本のインナーワイヤ61,61のうちの、長い方には吊り上げ荷物の荷重のほとんどが作用せず、短い方にのみ集中的に作用する。したがって、2本のインナーワイヤ61,61を装備しているが、一方のインナーワイヤ61が通常使用されるインナーワイヤ61として利用され、他方のインナーワイヤ61は、通常使用されるインナーワイヤ61が破断した場合にも荷物を吊り上げ状態に維持するための補助手段として用いられる。
このように、一方のインナーワイヤ61にのみ吊り上げ荷物の荷重が作用し、他方のインナーワイヤ61には吊り上げ荷物の荷重が作用しない場合は、吊り上げ対象荷物の重量に対する荷重分担率は、前者が100%で後者が0%となる。
【0044】
左右の各把持操作具4は、
図1乃至
図4に示されているように、左右対称形状をしており、金属製のフック部40の外面に合成樹脂製のグリップ部41を一体的に取り付けて構成されている。
フック部40は、金属製の板材を折り曲げてチャンネル状に形成されており、平板状の上側部40aと、上側部40aの外側部から下方に延出された上下向きの平板状の横側部40bと、横側部40bの下部から内方に延出された平板状の下側部40cとを備えている。
【0045】
グリップ部41は合成樹脂製であり、水平面状の前側上面部41aと、前側上面部41aから斜め後方に下がる傾斜面状の後側上面部41bと(
図1参照)とを備えて構成されている。グリップ部41の前側上面部41aには、押しボタン型式の上昇操作用(又は下降操作用)の操作スイッチ42が備えられている。
当該実施形態のアシストスーツSにおいては、右のグリップ部41の操作スイッチ42は、上昇操作用として構成され、左のグリップ部41の操作スイッチ42は、下降操作用として構成されている。
尚、操作スイッチ42は、図には示さないケーブルによって、制御装置Cに電気的に接続されており、各操作スイッチ42の操作信号を送信できるように構成されている。
フック部40の下側部40cを、例えば、荷物に引っ掛けた状態で、操作スイッチ42を操作することで、上昇(又は下降)させることができる。
【0046】
〔ストッパーについて〕
左右の吊り上げアーム3と左右の把持操作具4との間には、吊り上げアーム3に対する把持操作具4の最接近距離L1を所定範囲に保つストッパー45が設けられている。
このストッパー45は、
図1及び
図5に示すように、吊り上げアーム3と把持操作具4との間に位置する2本のインナーワイヤ61,61のうち、通常の使用状態で荷物の荷重が作用するところの、短い方のインナーワイヤ61に対して連結固定されている。
【0047】
図6及び
図7に示すように、ストッパー45は、U字状に折り曲げられた板金製の止め板46と、その止め板46をインナーワイヤ61に対して連結固定する連結ボルト47とを備えている。
止め板46には、通常の使用状態では荷物の荷重が作用しないように長く設定された方のインナーワイヤ61に自由摺動可能に外嵌する筒状部46aと、通常の使用状態で荷物の荷重が作用するところの短い方のインナーワイヤ61を挟み込み固定する当接板部46bとが備えられている。
したがって、連結ボルト47を締め込んで当接板部46bで短い方のインナーワイヤ61を挟み込み固定した状態で、長い方のインナーワイヤ61は摺動可能に挿通された状態となり、荷物の荷重は短い方のインナーワイヤ61にのみ作用する。
【0048】
このようにして短い方のインナーワイヤ61に固定された止め板46は、巻き上げウインチ5による巻き取り作動で、短い方のインナーワイヤ61、及び長い方のインナーワイヤ61が巻き取られたとき、把持操作具4よりも先に、吊り上げアーム3の上端部に当接する。これにより、止め板46が吊り上げアーム3の上端部に当接した状態で、吊り上げアーム3の上端部と把持操作具4の上面部(前側上面部41a及び後側上面部41b)との間には、
図1及び
図5に示すように、最接近距離L1に相当する間隔が存在し、この位置が把持操作具4の上限位置となっている。
【0049】
したがって、把持操作具4のグリップ部41を把持して上昇操作用の操作スイッチ42を操作し続けた場合にも、巻き上げウインチ5による巻き取り作動で把持操作具4が上限位置に達した時点で、吊り上げアーム3の上端部と把持操作具4の上面部との間には十分な間隔が存在する。これによって、仮に制御系の故障等の何らかのトラブルが生じて巻き上げウインチ5が停止せずに把持操作具4の巻き上げが行われたとしても、把持操作具4が最接近距離L1を越えて吊り上げアーム3に異常接近することを機械的に阻止できる。
【0050】
〔ベルト装着具〕
ベルト装着具7は、本体部1の下部側の横フレーム12に固定されて、使用者の腰部に巻き付け可能な腰ベルト70と、下部側の横フレーム12及び上部側の横フレーム11にわたって固定されて、使用者の肩部に掛けられる肩ベルト71とを備えたものである。この腰ベルト70及び肩ベルト71を介してアシストスーツSが使用者に背負われた状態に装着される(
図1乃至
図4参照)。
【0051】
腰ベルト70は、
図4に示すように、腰部フレーム2Aを介して本体部1に取り付けられている。使用者の腰部分を取り囲む状態に装着可能に構成されている。
具体的には、腰ベルト70は、腰部分の後面部分から左右両側面部分に至る後周部70Aと、腰部分の左側面部分から全面部分に至る左周部70Bと、腰部分の右側面部分から全面部分に至る右周部70Cと、左周部70Bの前端と右周部70Cの前端とを着脱自在なバックル部70Dとを備えて構成してあり、バックル部70Dに備えたベルト長さ調整機構(図示せず)によって、使用者の腰回りに合わせてベルトの長さを調整できるように構成されている。
【0052】
また、腰ベルト70の各部(後周部70A、左周部70B、右周部70C)の内周部には、腰周り部に当接自在なパッド73が、それぞれ一体に設けられている。
そして、後周部70Aと左周部70Bとの連結部、及び、後周部70Aと右周部70Cとの連結部には、それぞれバックル方式でベルトの長さを調整できるベルト長さ調整機構74(位置変更機構の一例)が備えられている。
このベルト長さ調整機構74を設けてあることで、左周部70Bと右周部70Cとにそれぞれ設けてあるパッド73を、装着対象の使用者の体格に合わせて、使用者の両脇腹部の最適な個所に位置させることができる。
【0053】
肩ベルト71は、
図1に示すように、左右にそれぞれ設けてあり、上端部は、上側の横フレーム11に取り付けてあり、下端部は、腰ベルト70の後周部70Aに取り付けてある。
【0054】
これら腰ベルト70と肩ベルト71によって、アシストスーツSを使用者の背中に安定した状態に装着することができる。
アシストスーツS、及び、荷物の重量は、腰ベルト70を介して主に使用者の腰部に作用し、この腰部によって安定的に支持される。
また、肩ベルト71は、主に本体部1が使用者の背中部から後方に離れようとする状態を止める機能を発揮する。
【0055】
〔別実施形態の1〕
上記の実施の形態では、2本のインナーワイヤ61,61の下端部を、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に連結固定した構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図11に示されるように、一方のインナーワイヤ61に比べて少し長く設定された他方のインナーワイヤ61の下端部を、弱い付勢バネ44を用いて、その少し長く設定された他方のインナーワイヤ61が張り状態に引っ張られるように構成してもよい。このようにすれば、長く設定された他方のインナーワイヤ61の弛みを解消することができる。
この場合、少し長く設定された他方のインナーワイヤ61にもある程度の引っ張り力が働くことになるが、荷物の荷重に比べれば微々たるものであるため、その他方のインナーワイヤ61の耐久性を劣化させる要因とはなりにくい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0056】
〔別実施形態の2〕
上記の実施の形態では、長さの異なる2本のインナーワイヤ61,61の下端部を、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に連結固定した構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図12に示されるように、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に段差を設け、この段差を有した取付ブラケット43に、長さの同じ2本のインナーワイヤ61,61を連結して、一方のインナーワイヤ61に比べて他方のインナーワイヤ61が弛む状態に連結してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0057】
〔別実施形態の3〕
上記の実施の形態では、2本のインナーワイヤ61,61の下端部と把持操作具4との連結箇所で、一方のインナーワイヤ61に比べて他方のインナーワイヤ61が弛む状態に連結する構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図13に示されるように、リール装置50における巻き取りドラム51と2本のインナーワイヤ61,61の基端側の端部との連結状態によって、一方のインナーワイヤ61に比べて他方のインナーワイヤ61が弛む状態に連結された構造としてもよい。
つまり、リール装置50では、4個の巻き取りドラム51を、一本の角軸(図示せず)に支持させて回転駆動するように構成されているが、その個々の巻き取りドラム51の位相を異ならせることによって、一つの把持操作具4に連結される2本のインナーワイヤ61,61の張り状態を変更するようにしてもよい。
この構造では、巻き取りドラム51の連結溝51aの存在位置を、回転軸心x3に沿う方向で、最外側に位置する巻き取りドラム51と、それよりも内側に位置する巻き取りドラム51とで、ほぼ90度異なる状態で角軸に装着している。これによって、最外側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61の基端が、それよりも内側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61の基端よりも、吊り上げアーム3の上端部から遠くなり、これが通常使用されるインナーワイヤ61となる。そして、内側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61が少し弛んだ連結状態となって、これが補助のインナーワイヤ61となる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0058】
〔別実施形態の4〕
上記の実施形態では、2本のインナーワイヤ61における荷重分担率を、一方のインナーワイヤ61がほぼ100%で他方のインナーワイヤ61がほぼ0%となるようにした構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図11に示した付勢バネ44を、より強いバネにして、少し長く設定された他方のインナーワイヤ61にも把持操作具4に作用する荷物の加重を分担させるようにしてもよい。このようにすれば、一方のインナーワイヤ61の荷重分担率を100%よりも少なくし、他方のインナーワイヤ61の荷重分担率を0%よりも大きくすることができる。
また、このように荷重分担率を異ならせた2本のインナーワイヤ61,61を採用する構造に限らず、荷重分担率を等しくしたものであってもよい。つまり、荷重分担率を等しくしても、2本のインナーワイヤ61,61が全く同時に破断する可能性はきわめて低いので、1本が破断した後、その破断したインナーワイヤ61を交換すれば、継続して使用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0059】
〔別実施形態の5〕
上記の実施の形態では、一つの把持操作具4に、2本の操作ワイヤ6,6を備えさせた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。例えば、3本以上の操作ワイヤ6,6を用いた構造のものであってもよい。また、操作ワイヤ6に限らず、帯状体などを用いてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0060】
〔別実施形態の6〕
上記の実施の形態では、吊り上げアーム3の上端部が使用者の頭頂部よりも少し高い位置にある構造のものを例示したが、この構造に限られるものではなく、例えば
図14に示すように、吊り上げアーム3の上端部が使用者の頭頂部よりも低いものであってもよい。
その他、図示はしないが、吊り上げアーム3の上端部付近の角度を変更可能にしたり、吊り上げアーム3として、本体部1側からの延出角度が異なるものと交換可能に構成するなどして、吊り上げアーム3の上端部の位置を変更できるようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0061】
〔別実施形態の7〕
上記の実施の形態では、ベルト装着具7として、腰ベルト70と肩ベルト71との双方を備えた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、ベルト装着具7を肩ベルト71だけ、あるいは腰ベルト70だけ、を備えた構造のもので構成してもよい。この場合、腰ベルト70だけの場合は、本体部1側に肩ベルト71に代わる固定の肩掛け部等を形成しておくのが望ましい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0062】
〔別実施形態の8〕
上記の実施形態では、本体部1に巻き上げウインチ5と脚部操作装置2の双方を備えた構造のものを例示したが、脚部操作装置2を備えずに、巻き上げウインチ5だけを備えた構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。