特許第6541572号(P6541572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541572
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】板材支持体及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 49/06 20060101AFI20190628BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20190628BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B65G49/06 Z
   H01L21/68 A
   H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-544917(P2015-544917)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2014077569
(87)【国際公開番号】WO2015064374
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-224488(P2013-224488)
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 考紘
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256894(JP,A)
【文献】 特開2010−103226(JP,A)
【文献】 特開2007−262539(JP,A)
【文献】 特開2011−108822(JP,A)
【文献】 特開2009−147099(JP,A)
【文献】 特開平05−058429(JP,A)
【文献】 特開2012−089588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/00−49/08
H01L 21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢の矩形平板状の板材を着脱可能に支持する板材支持体において、
前記板材の周縁を囲繞する矩形枠状の基体と、
前記板材の下側の周縁の方向に並置されて前記基体に夫々突設されており、前記板材が載置される複数個の載置部と
を備え、
前記複数個の載置部は、前記板材の周縁下部における前記周縁の方向の中央部に対応する第1載置部と、前記板材の周縁下部における前記周縁の方向の両端部側に少なくとも1個ずつ対応する第2載置部とを含み
前記第1載置部は、前記基体からの突出長さが前記複数個の載置部の中で最短であり、
前記第2載置部は、前記基体からの突出長さが一定であることを特徴とする板材支持体。
【請求項2】
前記複数個の載置部、前記第1載置部と前記第2載置部との間に配されている第3載置部を更に含み、
該第3載置部は、前記基体からの突出長さが増減可能であることを特徴とする請求項1に記載の板材支持体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の板材支持体が支持する板材を搬送する搬送装置であって、
前記板材支持体を着脱可能に保持する保持体と、
該保持体を移動させる移動部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を支持する板材支持体及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置が備える液晶パネルは、矩形状のガラス基板を用いてなる。ガラス基板の一面側には、透光性を有する金属膜が形成されている。
ガラス基板に対する金属膜の形成は、成膜装置によって行なわれる(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の成膜装置は、ガラス基板を縦姿勢で保持する基板ホルダー部と、基板ホルダー部が搭載されるキャリアとを備える。成膜装置は、チャンバの内部にてキャリアを移動させることによってガラス基板を所定経路に沿って搬送しつつ、ガラス基板の一面側に金属膜を形成する。
【0003】
特許文献1に記載の基板ホルダー部は、ガラス基板の周縁部を囲繞する枠体と、ガラス基板の下辺部が載置される複数個の載置部(文中「基板受け部」)とを備える。複数個の載置部は、ガラス基板の下辺部に沿う方向に並置されて、夫々枠体に突設されている。
【0004】
縦姿勢のガラス基板は、自重に起因する応力又は成膜中の熱膨張等によって、下方向へ凸状に変形しようとすることがある。仮に、各載置部の枠体からの突出長さが一定である場合、下方向へ変形しようとするガラス基板と、ガラス基板が載置されている載置部との間に大きな圧力が生じる。この結果、ガラス基板が割れてしまう虞がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の載置部は弾性を有する。このため、ガラス基板の下方向への変形に伴い、載置部が下方向に弾性変形する。故に、ガラス基板と載置部との間に大きな圧力が生じることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−262539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、弾性を有する載置部(以下、弾性載置部という)は、枠体からの突出長さが可変であるため、ガラス基板を枠体に対して位置決めすることが困難である。しかも、弾性載置部は、枠体からの突出長さが一定の載置部(以下、一定載置部という)に比べて構成が複雑である。
とはいえ、一定載置部には、構成が簡易であり、また、ガラス基板を枠体に対して容易に位置決めすることができるという利点がある一方、前述したようにガラス基板の割れを引き起こす虞があるという欠点がある。
【0008】
ところで、自重に起因する応力又は成膜中の熱膨張等によるガラス基板が変形しようとする力は、ガラス基板の下辺中央部におけるものが最も大きい。従って、一定載置部を用いた場合、ガラス基板と載置部との間に生じる圧力が最も大きくなる箇所は、1箇所(具体的にはガラス基板の下辺中央部と載置部との間)に集中する。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、構成が簡易であり、また、板材を容易に位置決めすることができ、しかも板材の破損を抑制することができる板材支持体及び搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る板材支持体は、縦姿勢の板材を着脱可能に支持する板材支持体において、前記板材の周縁方向に沿って配される基体と、前記周縁方向に並置されて前記基体に夫々突設されており、前記板材の周縁下部が載置される複数個の載置部とを備え、前記載置部の内、前記板材の周縁下部における前記周縁方向の中央部に対応する第1載置部は、前記基体からの突出長さが最短であり、前記板材の周縁下部における前記周縁方向の両端部側に少なくとも1個ずつ対応する第2載置部は、前記基体からの突出長さが一定であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る板材支持体は、前記載置部の内、前記第1載置部と第2載置部との間に配されている第3載置部は、前記基体からの突出長さが増減可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る搬送装置は、本発明に係る板材支持体が支持する板材を搬送する搬送装置であって、前記板材支持体を着脱可能に保持する保持体と、該保持体を移動させる移動部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、板材支持体において、縦姿勢の板材の周縁下部が、第1載置部及び第2載置部を含む複数個の載置部に載置される。
第1載置部は、板材の周縁下部における板材の周縁方向の中央部(以下、板材の周縁下部の中央部という)に対応する。第1載置部の基体からの突出長さは最短である。即ち、第2載置部の基体からの突出長さは第1載置部より長い。
第2載置部は、板材の周縁下部における板材の周縁方向の一端部側又は他端部側に対応する。第2載置部は一定載置部であり、基体に突設されている。故に、第2載置部に載置されることによって、板材は基体に対して容易に位置決めされる。
【0014】
第1載置部及び第2載置部は、板材の周縁方向の一端部側から他端部側へ向かう方向に沿って、第2載置部、第1載置部、及び第2載置部の順に並置されている。
このため、板材が下方向に凸状に変形しようとした場合であっても、板材の周縁下部の中央部と第1載置部との間に大きな圧力が生じ難い。何故ならば、板材の変形量が小さい場合には、板材は少なくとも2個の第2載置部に接触して第1載置部には接触しないからである。また、板材の変形量が大きい場合には、少なくとも2個の第2載置部に強く接触して第1載置部には軽くしか接触しないからである。
【0015】
板材の変形量の大小を問わず、板材と載置部との間に生じる圧力が最も大きくなる箇所は、1箇所(具体的には、板材の周縁下部の中央部と1個の第1載置部、又は隣り合う複数個の第1載置部との間)に集中せず、2箇所(具体的には、板材の周縁下部の中央部よりも板材の周縁方向の両側と、第1載置部を介在して離隔配置された少なくとも2個の第2載置部との間)に分散する。故に、板材と第2載置部夫々との間にも大きな圧力は生じ難い。
以上の結果、板材の破損が抑制される。
【0016】
このような板材支持体を保持し移動させることによって、搬送装置は、搬送装置自身の構成を従来のものから大幅に変更せずとも、板材を破損させることなく搬送することが可能である。
【0017】
本発明にあっては、第3載置部が、第1載置部と第2載置部との間に配されている。第2載置部は、板材の周縁方向の一端部側及び他端部側夫々に対応して少なくとも1個ずつ配されるため、第3載置部の個数は少なくとも2個である。つまり、第1載置部、第2載置部、及び第3載置部は、板材の周縁方向の一端部側から他端部側へ向かう方向に沿って、第2載置部、第3載置部、第1載置部、第3載置部、及び第2載置部の順に並置されている。また、第3載置部は、基体からの突出長さが増減可能である。
【0018】
第3載置部の基体からの突出長さは、板材の変形量に応じて、第1載置部の基体からの突出長さと第2載置部の基体からの突出長さとの中間に調節してあればよい。すると、板材が下方向に凸状に変形しようとした場合であっても、板材の周縁下部の中央部と第1載置部との間に大きな圧力が生じ難い。何故ならば、板材の変形量が小さい場合には、板材は第2載置部及び第3載置部に接触して第1載置部には接触しないからである。また、板材の変形量が大きい場合には、第2載置部及び第3載置部に強く接触して第1載置部には軽くしか接触しないからである。
【0019】
板材の変形量の大小を問わず、板材と載置部との間に生じる圧力が最も大きくなる箇所は、1箇所に集中せず、2箇所(具体的には、板材の周縁下部の中央部よりも板材の周縁方向の両側と、第1載置部を介在して離隔配置された少なくとも計4個の第2載置部及び第3載置部との間)に分散する。故に、板材と第2載置部夫々との間に生じる圧力を、第3載置部を備えていない場合よりも小さくすることができる。無論、板材と第3載置部夫々との間にも大きな圧力は生じ難い。
以上の結果、板材の破損が更に抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の板材支持体及び搬送装置による場合、基体からの突出長さが異なる2種類の載置部が適切に配されている。しかも、2種類の載置部の内、突出長さが長い方は一定載置部である。
以上の結果、板材支持体及び搬送装置は、全ての載置部が弾性載置部である場合に比べて、構成が簡易であり、しかも、板材を容易に位置決めすることができる。更に、板材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る板材支持体及び搬送装置の構成を略示する縦断面図である。
図2】板材支持体及び搬送装置の構成を略示する側面図である。
図3】板材支持体が備える第1載置部の外観を示す斜視図である。
図4】板材支持体が備える載置部に板材が載置されている状態を模式的に示す側面図である。
図5】従来の板材支持体が備える載置部に板材が載置されている状態を模式的に示す側面図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る板材支持体が備える載置部に板材が載置されている状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0023】
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る板材支持体1及び搬送装置4の構成を略示する縦断面図であり、図2は側面図である。
まず、板材2について説明する。
板材2は矩形平板状になしてある。板材2は、例えばガラス基板のような脆い部材である。本実施の形態では、板材2の一面側に、後述する成膜装置によって金属膜が形成される。なお、板材2はガラスを用いてなるものに限定されない。図2中の板材2は正方形状であるが、長方形状でもよい。
【0024】
板材2は、前後方向に沿う縦姿勢で板材支持体1に支持される。以下では、板材2の周縁4辺部を、上辺部2a、下辺部(周縁下部)2b、前辺部2c、及び後辺部2dという。
縦姿勢に配された板材2は、自重に起因する撓み、又は熱膨張等によって、特に前後方向中央部が下方向へ凸状に変形し得る。
【0025】
次に、板材支持体1について説明する。
板材支持体1は、従来の載置部に替えて後述する載置部3,3,…を備えていることを除けば、従来の板材支持体と同様の構成であってもよい。
本実施の形態の板材支持体1は、前後方向に沿う縦姿勢の板材2を、着脱可能に支持する。このために、板材支持体1は、基体11、複数個の支持部材12,12,…、及び複数個の載置部3,3,…を備えている。
【0026】
基体11は、板材2の周縁4辺部を囲繞する矩形枠状をなしている。基体11は、板材2の上辺部2a、下辺部2b、前辺部2c、及び後辺部2dに沿うべき各L字棒状の上枠部111、下枠部112、前枠部113、及び後枠部114を一体的に有する。
上枠部111及び下枠部112夫々は横姿勢に配されている。上枠部111と下枠部112とは上下対称形状である。前枠部113及び後枠部114夫々は縦姿勢に配されている。前枠部113と後枠部114とは前後対称形状である。
【0027】
下枠部112は、L字の一側に相当する左板部11aと、L字の他側に相当する下枠本体11bとを一体に有している。左板部11aは縦姿勢の平板状になしてある。下枠本体11bは、左板部11aの下端部から後ろ方向へ突出する。
同様に、上枠部111(前枠部113又は後枠部114)は、L字の一側に相当する左板部11aと、L字の他側に相当する上枠本体11c(前枠本体11d又は後枠本体11e)とを一体に有している。上枠本体11c(前枠本体11d又は後枠本体11e)は、左板部11aの上端部(前端部又は後端部)から後ろ方向へ突出する。
【0028】
下枠部112の下枠本体11bの上部は、複数個の載置部3,3,…が上向きに突設されている。載置部3,3,…は、前後方向(即ち、板材2の下辺部2bの周縁方向)に並置されている。
以下では、載置部3,3,…の内のM個を第1載置部31,31という。ただし、Mは所定の自然数である。図2ではM=2の場合を例示している。
第1載置部31,31は、板材2の下辺部2bにおける前後方向中央部(即ち板材2の下辺部2bの中央部)に対応すべく、下枠部112の前後方向中央部に隣り合って配されている。
【0029】
また、以下では、第1載置部31,31以外の載置部3,3,…を、第2載置部32,32,…という。第2載置部32,32,…は、板材2の下辺部2bにおける前後方向両端部側に少なくとも1個ずつ対応すべく、下枠部112の前端部側及び後端部側夫々にN個ずつ配される。ただし、NはN≧2の所定の自然数である。図2ではN=3の場合を例示している。
つまり、N個の第2載置部32,32,…、2個の第1載置部31,31、及びN個の第2載置部32,32,…が、前側から後ろ側へこの順に並置されている。
【0030】
図3は、第1載置部31の外観を示す斜視図である。
ここで、図1図3を参照しつつ第1載置部31について詳述する。
各第1載置部31は、下枠部112の下枠本体11bからの突出長さが所定の突出長さA1である。即ち、第1載置部31は、基体11からの突出長さが一定の一定載置部である。
第1載置部31は、載置基部311及び接触板部300を一体的に有する。
【0031】
載置基部311は、長手方向が前後方向に沿う横姿勢の直方体状をなしている。接触板部300は載置基部311の上面に突設されている。接触板部300は矩形平板状であり、接触板部300の左面と載置基部311の左面とが面一になるよう配されている。
【0032】
第1載置部31は、載置基部311の下面が下枠部112の下枠本体11bに接触し、載置基部311の左面と接触板部300の左面とが下枠部112の左板部11aに接触するようにして、下枠部112に取り付けられている。つまり、第1載置部31は、下枠部112の左板部11aと下枠本体11bとからなる角部の内側に配されている。
載置基部311の下面から接触板部300の上端面までの縦長さ(上下方向の長さ)は、下枠部112における下枠本体11bからの左板部11aの突出長さより短い。
本実施の形態では、載置基部311の下面から上面までの縦長さが突出長さA1である。
【0033】
次に、図1及び図2を参照しつつ第2載置部32について詳述する。
各第2載置部32は、下枠部112の下枠本体11bからの突出長さが所定の突出長さA2である。即ち、第2載置部32は、基体11からの突出長さが一定の一定載置部である。
第2載置部32は、載置基部321及び接触板部300を一体的に有する。
第2載置部32の接触板部300は、第1載置部31の接触板部300に対応する。
第2載置部32の載置基部321は、第1載置部31の載置基部311と略同様の形状である。ただし、載置基部321の下面から上面までの縦長さは突出長さA2である。そして、突出長さA2は、突出長さA1よりも長い。換言すれば、載置部3,3,…の内、第1載置部31の基体11からの突出長さA1は最短である。
【0034】
次に、支持部材12について詳述する。
本実施の形態における各支持部材12の構成は、第2載置部32の構成と同じである。つまり、支持部材12は、第2載置部32の載置基部321及び接触板部300に相当する支持基部及び接触板部を一体的に有する。
ただし、支持部材12,12,…は、上枠部111、前枠部113、及び後枠部114夫々に突設されている。このとき、支持部材12,12,…は、上枠部111(前枠部113又は後枠部114)の左板部11aと上枠本体11c(前枠本体11d又は後枠本体11e)とからなる角部の内側に配されている。
【0035】
上枠部111の上枠本体11cには、複数個の支持部材12,12,…が下向きに突設されている。上枠部111における支持部材12,12,…は、前後方向に並置されている。
前枠部113の前枠本体11d(又は後枠部114の後枠本体11e)には、複数個の支持部材12,12,…が後ろ向きに(又は前向きに)に突設されている。前枠部113(又は後枠部114)における支持部材12,12,…は、上下方向に並置されている。
なお、支持部材12の構成は、第1載置部31の構成と同じでも良く、載置部3の構成とは異なっていてもよい。
【0036】
次に、板材支持体1に対する板材2の取り付けについて説明する。
板材2は、上側の支持部材12,12,…、下側の載置部3,3,…、及び前後両側の支持部材12,12,…に囲繞された空間に、基体11の右側から嵌め込まれる。
【0037】
このとき、板材2の左面は、各支持部材12の接触板部と、各載置部3の接触板部300とに接触配置される。
また、板材2の上端面、前端面、及び左端面は、上側の支持部材12,12,…及び前後両側の支持部材12,12,…夫々の支持凸部に接触する。つまり、板材2の上辺部2a、前辺部2c、及び後辺部2dは、上側の支持部材12,12,…及び前後両側の支持部材12,12,…によって支持される。
更に、板材2の下端面は、各第2載置部32の載置基部321に接触する。つまり、板材2の下辺部2bは、載置部3,3,…(更に詳細には第2載置部32,32,…)に載置される。
【0038】
以上の結果、板材2は、上側の支持部材12,12,…と載置部3,3,…との間で挟持され、基体11に対して上下方向に位置決めされる。且つ、板材2は、前後両側の支持部材12,12,…間で挟持され、基体11に対して前後方向に位置決めされる。
更に、板材2は、基体11に着脱可能に取り付けられる図示しない板押さえによって、右側から左側に押し付けられる。この結果、板材は、支持部材12,12,…夫々の接触板部及び載置部3,3,…の接触板部300,300,…と板抑えとの間で挟持され、基体11に対して左右方向に位置決めされる。
板押さえを外せば、支持部材12,12,…及び載置部3,3,…から(即ち板材支持体1から)板材2を取り外すことは容易である。
【0039】
次に、板材支持体1の作用効果について説明する。
図4は、載置部3,3,…に板材2が載置されている状態を模式的に示す側面図である。図4では、各接触板部300の図示を省略してある。
図5は、従来の板材支持体が備える載置部300,300,…に板材が載置されている状態を模式的に示す側面図である。
まず、板材支持体1と従来の板材支持体との差異について説明する。
従来の板材支持体の構成は、板材支持体1の構成と略同一である。ただし、従来の板材支持体が備える複数個の載置部300,300,…は、何れも、板材支持体1の第2載置部32と同一の構成を有する一定載置部である。
【0040】
板材支持体1に支持されている場合であっても、従来の板材支持体に支持されている場合であっても、板材2は、下方向へ凸状に変形しようとする。板材2が変形しようとする力は、板材2の下辺部2bの中央部におけるものが最も大きい。
ところで、板材2の自重に起因する撓み、又は熱膨張等による板材2の変形量は、板材2の縦長さ及び横長さ夫々に比べて微小である。また、板材2は、上側の支持部材12,12,…と下側の第2載置部32,32,…(又は載置部300,300,…)との間で挟持されるため、実際の板材2の下辺部2bは、第2載置部32,32,…(又は載置部300,300,…)から上方向に大きく離隔することはない。とはいえ、図4及び図5では、板材2の状態がわかりやすいように板材2の形状が大仰に表現されている。
【0041】
図5に示すように、従来の板材支持体に支持されている板材2の場合、下方向へ変形しようとする板材2と、載置部300,300,…との間に圧力が生じる。このとき、板材2及び載置部300,300,…間の圧力が最も大きくなる箇所は、板材2の下辺部2bの中央部と、基体11の前後方向中央部にて隣り合う2個の載置部300,300との間である。
即ち、従来の板材支持体においては、板材2及び載置部300,300,…間の圧力が最も大きくなる箇所が1箇所に集中する。この結果、板材2が破損する虞がある。
【0042】
一方、図4に示すように、板材支持体1に支持されている板材2の場合であっても、下方向へ変形しようとする板材2と、載置部3,3,…との間に圧力が生じる。ただし、このとき、板材2の下辺部2bの中央部と、基体11の前後方向中央部にて隣り合う2個の第1載置部31,31との間で大きな圧力が生じることは抑制される。
【0043】
何故ならば、各第1載置部31に係る突出長さA1は、各第2載置部32に係る突出長さA2よりも短いからである。このため、板材2の変形量が比較的小さければ(図4参照)、板材2は第1載置部31,31に接触せず、第1載置部31,31の前後両側に各1個位置する第2載置部32,32に接触するからである。或いは、板材2の変形量が比較的大きければ(不図示)、板材2は第1載置部31,31に軽く接触し、第1載置部31,31の前後両側に各1個位置する第2載置部32,32に強く接触するからである。
即ち、板材支持体1においては、板材2及び載置部3,3,…間の圧力が最も大きくなる箇所が2箇所に分散する。この結果、板材2の破損が抑制される。
【0044】
次に、図1及び図2を参照しつつ、搬送装置4について説明する。
搬送装置4は、従来の板材支持体に替えて板材支持体1が用いられることを除けば、従来の搬送装置と同様の構成であってもよい。
本実施の形態の搬送装置4は、板材支持体1によって支持されている板材2を、板材2の図示しない搬送路に沿って、前方向へ搬送する。このために、搬送装置4は、保持体41及び移動部42を備えている。
保持体41は、1個の板材支持体1、又は前後方向に複数個並置された板材支持体1,1,…夫々を、着脱可能に保持する。板材支持体1は、保持体41の上部に搭載される。
移動部42は、直線歯車411、及び複数個の円形歯車412,412,…(図1及び図2夫々に1個図示)等を備えている。
【0045】
直線歯車411は、保持体41の下部にて前後方向に沿い、下向きに突設されている。直線歯車411は、複数個の円形歯車412,412,…の少なくとも1個に噛合する。
複数個の円形歯車412,412,…は、回転軸が左右方向に沿う縦姿勢で、前後方向に並置されている。各円形歯車412は、外歯の平歯車である。円形歯車412は、図示しないベルト又はチェーン等を介して、図示しないモータが出力する回転運動を伝達されることによって、一方向に回転(図2中、前転)する。
【0046】
更に、移動部42は、前後方向に沿う案内レール、及び、案内レールに案内されつつ走行するローラ等(各不図示)を備えている。案内レールは、板材2の搬送路に沿って敷設される。ローラは、保持体41にて回転可能に支持される。
直線歯車411と円形歯車412との噛合によって、円形歯車412の回転は、直線歯車411の直進(前進)に変換される。直線歯車411が直進すると、保持体41が前方向へ移動する。このとき、保持体41は、ローラを介して案内レールに安定して支持されつつ移動する。この結果、板材支持体1によって支持されている板材2が前方向へ搬送される。
【0047】
以上のような搬送装置4は、図示しない成膜装置に組み込まれている。成膜装置は、板材交換室、L(ロードロック)室、加熱室、及び成膜室を備える。成膜前の板材2は、板材交換室、L室、加熱室、及び成膜室の順に搬送され、成膜後の板材2は、成膜室、加熱室、L室、及び板材交換室の順に搬送される。
板材交換室では、成膜後の板材2が板材支持体1から取り外され、成膜前の板材2が板材支持体1に取り付けられる。
L室の内部は、板材2の加熱室への搬入に伴い、大気状態から真空状態へ移行し、板材2の板材交換室への搬出に伴い、真空状態から大気状態へ移行する。
加熱室を経て成膜室に至った板材2は、一面側に金属膜を形成される。
【0048】
従来の板材支持体を用いた場合、特に板材2をL室から板材交換室へ搬送する過程で、板材2に破損が生じ易い。実際に、従来の板材支持体を用いて複数枚の板材2,2,…に対する成膜処理を行なった場合、成膜処理を行なった枚数に対する破損した枚数の割合(即ち破損率)は、0.036%であった。
しかしながら、板材支持体1を用いた場合には、板材2に破損が生じることが抑制される。実際に、板材支持体1を用いて複数枚の板材2,2,…に対する成膜処理を行なった場合、破損率は0.011%であった。
しかも、板材2は支持部材12,12,…及び載置部3,3,…によって位置決めされるため、成膜装置による成膜精度が向上する。
【0049】
なお、本発明の実施の形態における第1載置部同士(又は第2載置部同士)は、本実施の形態の第1載置部31,31同士(又は第2載置部32,32,…同士)のように同寸法同形状である構成に限定されない。また、第2載置部の個数は、第1載置部の両側に同数の複数個ずつの構成に限定されず、1個ずつ、又は1個(少数個)と複数個(多数個)との組み合わせであってもよい。更に、載置部3,3,…の形状は、本実施の形態の形状に限定されるものではない。
【0050】
実施の形態 2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る板材支持体1が備える載置部3,3,…に板材2が載置されている状態を模式的に示す側面図である。図6は、実施の形態1の図4に対応する。
本実施の形態の板材支持体1及び搬送装置4は、実施の形態1の板材支持体1及び搬送装置4と略同様の構成である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0051】
実施の形態1,2は、互いに載置部3,3,…の構成が異なる。
実施の形態1の載置部3,3,…は、相隣る2個の第1載置部31,31と、第1載置部31,31の前後両側に3個ずつの第2載置部32,32,…とからなる。
一方、本実施の形態の載置部3,3,…は、実施の形態1の載置部3,3,…において、複数個の第2載置部32,32,…を同数個の第3載置部33,33,…に置き換えたものに相当する。以下は、2個の第2載置部32,32を2個の第3載置部33,33で置き換えた場合について説明する。
【0052】
2個の第3載置部33,33の内、一方は前側の第1載置部31と前側の第2載置部32,32,…との間に配されており、他方は後ろ側の第1載置部31と後ろ側の第2載置部32,32,…との間に配されている。
つまり、2個の第2載置部32,32,…、1個の第3載置部33、2個の第1載置部31,31、1個の第3載置部33、及び2個の第2載置部32,32,…が、前側から後ろ側へこの順に並置されている。
【0053】
各第3載置部33は、第2載置部32の載置基部321及び接触板部300に相当する載置基部及び接触板部を一体的に有する。第3載置部33は、第2載置部32と同様にして、下枠部112に取り付けられている。つまり、第3載置部33は、下枠部112の左板部11aと下枠本体11bとからなる角部の内側に配されている。
ただし、第3載置部33は、下枠部112の下枠本体11bからの突出長さが所定の範囲で増減可能である。このために、第3載置部33は、少なくとも載置基部が弾性を有する。第3載置部33の載置基部は、載置基部の上面に下向きの外力が加えられた場合に、載置基部の上面が下面に接近する方向に弾性変形する。つまり、第3載置部33は、下方向に弾性変形する弾性載置部である。
【0054】
以下では、無負荷の場合の第3載置部33の基体11からの突出長さを突出長さA3という。本実施の形態では、突出長さA3は突出長さA2に等しい。一方、前述した外力が第3載置部33に加えられている場合の第3載置部33の基体11からの最短の突出長さは、突出長さA2よりも短い。
なお、突出長さA3は、突出長さA2に等しい構成に限定されないが、少なくとも突出長さA1よりは長い。
【0055】
板材支持体1に取り付けられた板材2の下端面は、各第2載置部32の載置基部321に接触すると共に、各第3載置部33の載置基部にも接触する。つまり、板材2の下辺部2bは、載置部3,3,…(更に詳細には第2載置部32,32,…及び第3載置部33,33)に載置される。
【0056】
各第3載置部33に係る突出長さは、板材2の載置(即ち外力の印加)によって、突出長さA4になる。ここで、突出長さA4は、突出長さA3(即ち突出長さA2)よりも短く、且つ、突出長さA1よりも長い。
このため、板材2の変形量が比較的小さければ、板材2は第1載置部31,31に接触せず、第1載置部31,31の前側にて相隣る各1個の第2載置部32及び第3載置部33と、第1載置部31,31の後ろ側にて相隣る各1個の第2載置部32及び第3載置部33とに接触する(図6参照)。或いは、板材2の変形量が比較的大きければ、板材2は第1載置部31,31に軽く接触し、第1載置部31,31の前後両側に位置する第2載置部32,32及び第3載置部33,33に強く接触する(不図示)。何れにせよ、各第3載置部33に係る突出長さA4は、第1載置部31に係る突出長さA1と第2載置部32に係る突出長さA2との中間の長さになる。
【0057】
従って、板材2の下辺部2bの中央部と、基体11の前後方向中央部にて隣り合う2個の第1載置部31,31との間で大きな圧力が生じることは抑制される。つまり、板材支持体1においては、板材2及び載置部3,3,…間の圧力が最も大きくなる箇所が2箇所に分散する。しかも、実施の形態1では2個の第2載置部32,32に荷重が加わるが、本実施の形態では計4個の第2載置部32,32及び第3載置部33,33に荷重が加わる。以上の結果、板材2の破損が更に抑制される。
【0058】
第3載置部33,33は弾性載置部である。このため、仮に、載置部3,3,…が全て第3載置部33,33,…である場合、板材2の上下方向の位置決めが困難になる。しかしながら、本実施の形態では、板材2の上下方向の位置決めは、上側の支持部材12,12,…と第2載置部32,32,…との間で行なわれれるため、特段の問題はない。
ただし、仮に、載置部3,3,…が全て第3載置部33,33,…である場合、第3載置部33,33,…に全体的に荷重が分散するため、実施の形態1,2よりも板材2の破損が更に抑制されると考えられる。とはいえ、実施の形態1であっても、破損率は0.011%であり、十分に実用的である。従って、載置部3,3,…が全て第3載置部33,33,…である必要はない。
【0059】
本実施の形態の第3載置部33は、第3載置部33の弾性により、板材2の載置に伴って突出長さが最適なものに自然に調整される構成である。しかしながら、本発明の実施の形態における第3載置部は、このような構成に限定されるものではない。例えば、第3載置部は、中空の載置基部と、この載置基部に対して出没可能に突設されている載置凸部と、載置基部の内部に収容されており、載置凸部を突出方向に付勢する弾性部とを有する構成でもよい。また、例えば、第3載置部は、載置基部に対して出没可能に突設されている載置凸部と、載置凸部の載置基部からの突出量を作業者が手動で増減させるための操作部とを有する構成でもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、請求の範囲と均等の意味及び請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、板材支持体1又は搬送装置4に、実施の形態1,2に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 板材支持体
11 基体
2 板材
2b 下辺部(周縁下部)
3 載置部
31 第1載置部
32 第2載置部
33 第3載置部
4 搬送装置
41 保持体
42 移動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6