(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1付与部材および前記第2付与部材のそれぞれは、超硬合金で構成されるとともに前記圧電素子で発生した電荷を取り出すための電極としての機能を備えることを特徴とする請求項1記載の圧力検出装置。
前記第1付与部材および前記第2付与部材のそれぞれは、超硬合金で構成されるとともに前記圧電素子で発生した電荷を取り出すための電極としての機能を備えることを特徴とする請求項5記載の圧力検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る圧力検出装置5を備えた内燃機関1の概略構成図である。また、
図2は、
図1に示す圧力検出装置5のII部の拡大図である。
内燃機関1は、シリンダ2aを有するシリンダブロック2と、シリンダ2a内を往復動するピストン3と、シリンダブロック2に締結されてシリンダ2aおよびピストン3などとともに燃焼室Cを形成するシリンダヘッド4と、を備えている。また、内燃機関1は、シリンダヘッド4に装着されて燃焼室C内の圧力を検出する圧力検出装置5と、圧力検出装置5が検出した圧力に基づいて内燃機関1の作動を制御する制御装置6と、圧力検出装置5とシリンダヘッド4との間に介在して燃焼室C内の気密性を保つためのシール部材7と、圧力検出装置5と制御装置6との間で電気信号を伝送する伝送ケーブル8と、を備えている。そして、
図2に示すように、伝送ケーブル8は、3本のケーブルすなわち第1ケーブル81、第2ケーブル82および第3ケーブル83と、これら第1ケーブル81〜第3ケーブル83を圧力検出装置5に接続するためのコネクタ80とを有している。
【0011】
また、
図2に示すように、シリンダヘッド4には、燃焼室Cと外部とを連通する連通孔4aが形成されている。連通孔4aは、燃焼室C側から、第1孔部4bと、第1孔部4bの孔径から徐々に径が拡大している傾斜部4cと、第1孔部4bの孔径よりも孔径が大きい第2孔部4dと、を有している。第2孔部4dを形成する周囲の壁には、圧力検出装置5に形成された後述するハウジング30の雄ねじ332aがねじ込まれる雌ねじ4eが形成されている。
【0012】
以下に、圧力検出装置5について詳述する。
図3は、圧力検出装置5の概略構成図である。
図4は、
図3に示す圧力検出装置5のIV−IV部の断面図である。
図5は、
図4に示す圧力検出装置5のV部の拡大図である。また、
図6は、
図4に示す圧力検出装置5のVI部の拡大図である。
圧力検出装置5は、燃焼室C内の圧力を電気信号に変換する圧電素子10を有するセンサ部100と、センサ部100からの電気信号を処理する信号処理部200と、信号処理部200を保持する保持部材300と、を備えている。この圧力検出装置5をシリンダヘッド4に装着する際には、センサ部100の後述するダイアフラムヘッド40の方から先に、シリンダヘッド4に形成された連通孔4aに挿入していく。以下の説明において、
図4の左側(センサ部100側)を圧力検出装置5の先端側、右側(保持部材300側)を圧力検出装置5の後端側とする。
【0013】
先ずは、センサ部100について説明する。
センサ部100は、受けた圧力を電気信号に変換する圧電素子10と、筒状であってその内部に圧電素子10などを収納する円柱状の孔が形成されたハウジング30と、を備えている。以下では、ハウジング30に形成された円柱状の孔の中心線方向を、単に中心線方向と称す。
また、センサ部100は、ハウジング30における先端側の開口部を塞ぐように設けられて、燃焼室C内の圧力が作用するダイアフラムヘッド40と、ダイアフラムヘッド40と圧電素子10との間に設けられた第1電極部50と、圧電素子10に対して第1電極部50とは反対側に配置された第2電極部55と、を備えている。
また、センサ部100は、第2電極部55を電気的に絶縁するアルミナセラミック製の絶縁リング60と、絶縁リング60よりも後端側に設けられて、信号処理部200の後述する覆い部材23の端部を支持する支持部材65と、第2電極部55と後述する伝導部材22との間に介在するコイルスプリング70と、を備えている。
【0014】
圧電素子10は、圧電縦効果の圧電作用を示す圧電体を有している。圧電縦効果とは、圧電体の電荷発生軸(電気軸)と同一方向に外力を作用させると、電気軸方向の圧電体の表面に電荷が発生する作用をいう。本実施形態に係る圧電素子10は、中心線方向が電気軸の方向となるようにハウジング30内に収納されている。
なお、圧電素子10の具体的な構成については後述する。
【0015】
ハウジング30は、
図5に示すように、先端側に設けられた第1ハウジング31と、後端側に設けられた第2ハウジング32と、を有する。
第1ハウジング31は、内部に、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された円柱状の孔310が形成された薄肉円筒状の部材である。外周面には、中心線方向の中央部に、外周面から突出する突出部315が周方向の全域に渡って設けられている。
孔310は、先端側から後端側にかけて順に形成された、第1孔311と、第1孔311の孔径よりも大きな孔径の第2孔312と、から構成される。突出部315は、先端部に、先端側から後端側にかけて徐々に径が大きくなる傾斜面315aを有し、後端部に、中心線方向に垂直な垂直面315bを有している。
【0016】
第2ハウジング32は、
図4に示すように、内部に、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された円柱状の孔320が形成された筒状の部材であり、外部に、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された外周面330が設けられている。
孔320は、先端側から後端側にかけて順に形成された、第1孔径を有する第1円柱孔321と、第1孔径よりも小さな第2孔径を有する第2円柱孔322と、第2孔径よりも大きな第3孔径を有する第3円柱孔323と、第3孔径よりも大きな第4孔径を有する第4円柱孔324と、第4孔径よりも大きな第5孔径を有する第5円柱孔325と、から構成される。
第2ハウジング32における先端部は、第1ハウジング31における後端部にしまりばめで嵌合(圧入)されるように、第1円柱孔321における第1孔径は、第1ハウジング31の外周面の径以下となるように設定されている。
【0017】
外周面330は、先端側から後端側にかけて、第1外周面331と、第1外周面331の外径よりも大きな外径の第2外周面332と、第2外周面332の外径よりも大きな外径の第3外周面333と、第3外周面333の外径よりも大きな外径の第4外周面334と、第4外周面334の外径よりも小さな外径の第5外周面335と、から構成される。
第2外周面332における先端部には、シリンダヘッド4の雌ねじ4eにねじ込まれる雄ねじ332aが形成されている。第3外周面333には、後述する第1シール部材71がすきまばめで嵌め込まれ、第3外周面333の外径と第1シール部材71の内径との寸法公差は、例えば零から0.2mmとなるように設定される。第4外周面334における後端部は、周方向に等間隔に6つの面取りを有する正六角柱に形成されている。この正六角柱に形成された部位が、圧力検出装置5をシリンダヘッド4に締め付ける際に、締付用の工具が嵌め込まれ、工具に付与された回転力が伝達される部位となる。第5外周面335における中心線方向の中央部には、外周面から凹んだ凹部335aが全周に渡って形成されている。
【0018】
また、
図6に示すように、第2ハウジング32は、第4円柱孔324から第5円柱孔325への移行部分であり、第5円柱孔325における先端部には、信号処理部200の後述する覆い部材23の基板被覆部232における先端側の端面が突き当たる突当面340が設けられている。突当面340には、後述する信号処理部200における回路基板部21の第2接続ピン21bが差し込まれるピン用凹部340aが形成されている。
【0019】
第1ハウジング31および第2ハウジング32は、燃焼室Cに近い位置に存在するため、少なくとも、−40〜350〔℃〕の使用温度環境に耐える材料を用いて製作することが望ましい。具体的には、耐熱性の高いステンレス鋼材、例えば、JIS規格のSUS630、SUS316、SUS430等を用いることが望ましい。そして、第1ハウジング31および第2ハウジング32を構成する材料の線膨張係数(以下の説明では、「ハウジング線膨張係数αh」と称することがある)は、10〜12(×10
−6/K)の範囲であることが望ましい。
【0020】
ダイアフラムヘッド40は、
図5に示すように、円筒状の円筒状部41と、円筒状部41の内側に形成された内側部42と、を有している。
円筒状部41における後端部は、ハウジング30の第1ハウジング31における先端部としまりばめで嵌合(圧入)されて、この先端部の内部に入り込む進入部41aと、この先端部における端面31aと同形状に形成され、嵌合された際にこの端面31aが突き当たる突当面41bと、を有している。
内側部42は、円筒状部41における先端側の開口を塞ぐように設けられた円盤状の部材であり、後端側の面における中央部にはこの面から圧電素子10側に突出する突出部42aが設けられている。また、内側部42の、先端側の面における中央部にはこの面から圧電素子10側に凹んだ凹部42bが設けられている。
ダイアフラムヘッド40を構成する材料としては、高温でありかつ高圧となる燃焼室C内に存在するため、弾性が高く、かつ耐久性、耐熱性、耐触性等に優れた合金製であることが望ましく、具体的には、耐熱性に優れるステンレス鋼材、例えばSUH660等を用いることが望ましい。そして、ダイアフラムヘッド40を構成する材料の線膨張係数(以下の説明では、「ダイアフラム線膨張係数αd」と称することがある)は、10〜12(×10
−6/K)の範囲であることが望ましい。
【0021】
第1付与部材の一例としての第1電極部50は、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された円柱状の部材であり、第1円柱部51と、第1円柱部51の半径よりも大きな半径の第2円柱部52と、から構成される。第1円柱部51の外径はダイアフラムヘッド40の進入部41aの内径よりも小さく、第2円柱部52の外径は第1ハウジング31の第1孔311の孔径と略同じである。そして、第1円柱部51における先端側の端面がダイアフラムヘッド40の内側部42の突出部42aと、第2円柱部52における後端側の端面が圧電素子10における先端側の面とに接触するように配置される。第2円柱部52の外周面が第1ハウジング31の内周面と接触すること、および/または第1円柱部51における先端側の端面がダイアフラムヘッド40と接触することによって、圧電素子10における先端部は、ハウジング30と電気的に接続される。
第1電極部50は、燃焼室C内の圧力を圧電素子10に作用させるものであり、圧電素子10側の端面である第2円柱部52における後端側の端面が圧電素子10の端面の全面を押すことが可能な大きさに形成される。また、第1電極部50は、ダイアフラムヘッド40から受ける圧力を均等に圧電素子10に作用させることができるように、中心線方向の両端面が、それぞれ平滑面に形成されるとともに、中心線方向と直交する面に沿って互いに略平行に設けられている。
【0022】
また、第1電極部50を構成する材料としては、周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物を Fe、Co、Niなどの鉄系金属で焼結した複合材料(所謂超硬合金)を用いることが望ましい。ここで、超硬合金としては、例えばWC−Co系合金、WC−TiC−Co系合金、WC−TaC−Co系合金、WC−TiC−TaC−Co系合金、WC−Ni系合金等が挙げられる。そして、第1電極部50を構成する材料の線膨張係数(以下では、「第1電極線膨張係数αe1」と称することがある)は、5〜6(×10
−6/K)の範囲であることが望ましい。
【0023】
第2付与部材の一例としての第2電極部55は、円柱状の部材であり、先端側の端面が圧電素子10における後端側の端面に接触し、後端側の端面が絶縁リング60に接触するように配置される。第2電極部55における後端側の端面には、この端面から後端側に突出する円柱状の突出部55aが設けられている。突出部55aは、端面側の基端部と、この基端部の外径よりも小さな外径の先端部と、を有する。突出部55aの外径は絶縁リング60の内径よりも小さく設定されるとともに、突出部55aの長さは絶縁リング60の幅(中心線方向の長さ)よりも長く設定され、突出部55aの先端が絶縁リング60から露出している。この第2電極部55は、第1電極部50との間で圧電素子10に対して一定の荷重を加えるように作用する部材であり、圧電素子10側(先端側)の端面は、圧電素子10の後端側の端面の全面を押すことが可能な大きさに形成されるとともに、平滑面且つ圧電素子10の後端側の端面と平行な面に形成されている。第2電極部55の外径は第1ハウジング31の第2孔312の孔径よりも小さくなるように設定されており、第2電極部55の外周面と第1ハウジング31の内周面との間には隙間がある。
【0024】
また、第2電極部55を構成する材料としては、第1電極部50と同様に超硬合金を用いることが望ましく、第1電極部50と第2電極部55とを、同一組成の超硬合金で構成することがさらに望ましい。そして、第2電極部55を構成する材料の線膨張係数(以下では、「第2電極線膨張係数αe2」と称することがある)は、5〜6(×10
−6/K)の範囲であることが望ましい。
【0025】
絶縁リング60は、アルミナセラミックス等により形成された円筒状の部材であり、内径(中央部の孔径)は、第2電極部55の突出部55aの基端部の外径よりもやや大きく、外径は、第1ハウジング31の第2孔312の孔径と略同じに設定されている。第2電極部55は、突出部55aが絶縁リング60の中央部の孔に挿入されて配置されることで、第2電極部55の中心位置と第1ハウジング31の第2孔312の中心とが同じになるように配置される。
【0026】
支持部材65は、先端側から後端側にかけて、内部に、径が異なる複数の円柱状の孔650が形成され、外周面の径が同一の、筒状の部材である。
孔650は、先端側から後端側にかけて順に形成された、第1孔651と、第1孔651の孔径よりも大きな孔径の第2孔652と、第2孔652の孔径よりも大きな孔径の第3孔653と、から構成される。第1孔651の孔径は、第2電極部55の突出部55aの基端部の外径よりも大きく、この突出部55aが支持部材65の内部まで露出する。第2孔652の孔径は、後述する信号処理部200の伝導部材22における先端部の外径よりも大きい。第3孔653の孔径は、後述する信号処理部200の覆い部材23における先端側の端部の外径よりも小さく、この覆い部材23が第3孔653を形成する周囲の壁にしまりばめで嵌合される。これにより、支持部材65は、覆い部材23の端部を支持する部材として機能する。
【0027】
コイルスプリング70は、内径が、第2電極部55の突出部55aにおける先端部の外径以上で基端部の外径より小さく、外径が、後述する伝導部材22の挿入孔22aの径よりも小さい。コイルスプリング70の内側に第2電極部55の突出部55aの先端部が挿入されるとともに、コイルスプリング70は、後述する伝導部材22の挿入孔22aに挿入される。コイルスプリング70の長さは、第2電極部55と伝導部材22との間に圧縮した状態で介在することができる長さに設定されている。コイルスプリング70の材質としては、弾性が高く、かつ耐久性、耐熱性、耐触性等に優れた合金を用いるとよい。また、コイルスプリング70の表面に金メッキを施すことで、電気伝導を高めるとよい。
【0028】
次に、信号処理部200について説明する。
信号処理部200は、
図3および
図4に示すように、センサ部100の圧電素子10から得られる微弱な電荷である電気信号を少なくとも増幅処理する回路基板部21と、圧電素子10に生じた電荷を回路基板部21まで導く棒状の伝導部材22と、これら回路基板部21、伝導部材22などを覆う覆い部材23と、回路基板部21などを密封するOリング26と、を備えている。
【0029】
回路基板部21は、センサ部100の圧電素子10から得られる微弱な電荷を増幅するための回路を構成する電子部品などが実装された実装基板210を有する。実装基板210における先端部には、伝導部材22における後端部を電気的に接続するための第1接続ピン21aと、接地用および位置決め用の第2接続ピン21bとが、半田付けなどにより接続されている。また、実装基板210における後端部には、伝送ケーブル8の先端部に設けられたコネクタ80を介して制御装置6と電気的に接続するための第3接続ピン21cが3つ、半田付けなどにより接続されている。これら3つの第3接続ピン21cは、それぞれ、制御装置6から実装基板210への電源電圧およびGND電圧の供給、実装基板210から制御装置6への出力電圧の供給に用いられる。
【0030】
伝導部材22は、棒状(円柱状)の部材であり、先端部には、第2電極部55の突出部55aの先端部が挿入される挿入孔22aが形成されている。伝導部材22における後端部は、回路基板部21の実装基板210に、導線(図示せず)および第1接続ピン21aを介して電気的に接続される。伝導部材22の材質としては、真鍮及びベリリウム銅等を例示することができる。この場合、加工性およびコストの観点からは、真鍮が望ましい。これに対して、電気伝導性、高温強度、信頼性の観点からは、ベリリウム銅が望ましい。
【0031】
覆い部材23は、伝導部材22の外周を覆う伝導部材被覆部231と、回路基板部21の実装基板210の側面および下面を覆う基板被覆部232と、実装基板210に接続された第3接続ピン21cの周囲を覆うとともに伝送ケーブル8の先端部に設けられたコネクタ80が嵌め込まれるコネクタ部233と、を有している。
【0032】
伝導部材被覆部231は、
図3に示すように、中心線方向に沿って延び、伝導部材22を先端部が露出するように覆っている。
また、伝導部材被覆部231は、先端側から後端側にかけて段階的に外径が異なるように、複数の円筒形状の部分から構成される。具体的には、先端側から後端側にかけて、第1外径を有する第1円筒部241と、第1外径よりも小さな第2外径を有する第2円筒部242と、第2外径よりも大きな第3外径を有する第3円筒部243と、第3外径よりも大きな第4外径を有する第4円筒部244とが並んで形成されている。
第1円筒部241における第1外径は、支持部材65の第3孔653の孔径よりも大きく形成されている。これにより、伝導部材被覆部231における先端部は、支持部材65の第3孔653を形成する周囲の壁にしまりばめで嵌合(圧入)される。
【0033】
図3に示すように、伝導部材被覆部231には、伝導部材被覆部231の外周面から突出するとともに、それぞれが中心線方向に延びる複数の凸部250が設けられている。本実施の形態では、凸部250は、伝導部材被覆部231の第2円筒部242における先端部に設けられる第1凸部251と、伝導部材被覆部231の第4円筒部244に設けられる第2凸部252を有する。
この例では、第1凸部251は、第2円筒部242の外周面において、周方向に沿って90度間隔で4個設けられている。また、第2凸部252は、第4円筒部244の外周面において、周方向に沿って90度間隔で4個設けられている。
なお、この例では、4個の第1凸部251は、伝導部材被覆部231における第2円筒部242と一体的に形成され、4個の第2凸部252は、伝導部材被覆部231における第4円筒部244と一体的に形成されている。
【0034】
信号処理部200においては、
図5に示すように、第2円筒部242に設けられた4個の第1凸部251が、それぞれ第2ハウジング32における第2円柱孔322を形成する壁に当接する。また、
図6に示すように、第4円筒部244に設けられた複数の第2凸部252が、それぞれ第2ハウジング32における第4円柱孔324を形成する壁に当接する。これにより、伝導部材被覆部231が第2ハウジング32に支持されることになる。
【0035】
基板被覆部232は、基本的には円筒状の部位であり、その側面には、実装基板210を内部に設置するための矩形の開口部232aが設けられている。また、基板被覆部232における後端側には、ハウジング30内および実装基板210設置部を密封するためのOリング26用のリング溝232bが形成されている。
【0036】
コネクタ部233は、基板被覆部232における後端側の端面232cから突出し、実装基板210に接続された3つの第3接続ピン21cの周囲を覆うように形成された薄肉の部位である。コネクタ部233における後端部は開口しており、内部に伝送ケーブル8の先端部に設けられたコネクタ80を受け入れることが可能になっている。また、コネクタ部233における後端側には、内部と外部とを連通する孔233aが形成されており、伝送ケーブル8のコネクタ80に設けられたフックがこの孔233aに引っ掛ることで、伝送ケーブル8のコネクタ80がコネクタ部233から脱落することが抑制される。
【0037】
以上のように構成された覆い部材23は、樹脂などの絶縁性を有する材料にて成形されている。また、覆い部材23は、伝導部材22、第1接続ピン21a、第2接続ピン21bおよび3つの第3接続ピン21cとともに一体成形されている。より具体的には、覆い部材23は、これら伝導部材22、第1接続ピン21a、第2接続ピン21bおよび3つの第3接続ピン21cをセットした金型に加熱した樹脂が押し込まれることで成形される。
【0038】
信号処理部200をユニット化するにあたっては、成形された覆い部材23の開口部232aから、回路基板部21の実装基板210を挿入し、基板被覆部232の中央部に設置する。実装基板210を設置する際、板厚方向に貫通されたスルーホールに、第1接続ピン21a、第2接続ピン21bおよび3つの第3接続ピン21cの先端を通し、半田付けする。その後、第1接続ピン21aと伝導部材22とを導線を用いて接続する。また、覆い部材23の基板被覆部232のリング溝232bにOリング26を装着する。Oリング26は、フッ素系ゴムからなる周知のO状のリングである。
【0039】
次に、保持部材300について説明する。
保持部材300は、薄肉円筒状の部材であり、
図4に示すように、後端部に内周面から内側に突出した突出部300aが設けられている。保持部材300は、第2ハウジング32に装着された後、外部から、第5外周面335に設けられた凹部335aに対応する部位が加圧されることでかしめられる。これにより、保持部材300は、ハウジング30に対して移動し難くなり、信号処理部200がハウジング30に対して移動することを抑制している。
【0040】
ここで、上述した圧力検出装置5における電気的な接続構造について説明する。
先ず、圧電素子10における先端側の端面は、金属製の第1電極部50およびダイアフラムヘッド40を介して、金属製のハウジング30と電気的に接続される。
【0041】
これに対し、圧電素子10における後端側の端面は、金属製の第2電極部55と電気的に接続され、第2電極部55は、突出部55aを介して金属製のコイルスプリング70と電気的に接続される。また、コイルスプリング70は、金属製の伝導部材22と電気的に接続され、伝導部材22は、第1接続ピン21aを介して実装基板210の入力信号端子211aと電気的に接続される。他方、第2電極部55の突出部55aの外径は支持部材65の第1孔651の孔径よりも小さく、伝導部材22における先端部の外径は支持部材65の第2孔652の孔径よりも小さい。つまり、第2電極部55、コイルスプリング70および伝導部材22は、支持部材65と直接接触していないために、電気的に接続されていない。それゆえ、第2電極部55からコイルスプリング70および伝導部材22を介して実装基板210へと至る電荷信号の伝送経路は、それぞれが絶縁体で構成された、絶縁リング60および覆い部材23によって、金属製のハウジング30と電気的に絶縁される。
【0042】
以上のように構成された圧力検出装置5をシリンダヘッド4に装着する際には、センサ部100のダイアフラムヘッド40の方から先にシリンダヘッド4に形成された連通孔4aに挿入していき、ハウジング30の第2ハウジング32に形成された雄ねじ332aをシリンダヘッド4の連通孔4aに形成された雌ねじ4eにねじ込む。
圧力検出装置5をシリンダヘッド4に装着することにより、ハウジング30は、金属製のシリンダヘッド4と電気的に接続される。このシリンダヘッド4は、電気的に接地された状態にあるため、圧力検出装置5では、ハウジング30を介して、圧電素子10における先端部が接地される。ここで、この例では、圧電素子10の側面とハウジング30の内壁面とが接触し得る構造になっているが、圧電素子10が絶縁体で構成されていることにより抵抗値が極めて大きいことと、圧力変化に伴って発生する電荷が、圧電素子10における中心線方向の両端部に発生することとにより、特に問題とはならない。
【0043】
続いて、シール部材7について説明する。
シール部材7は、
図2に示すように、シリンダヘッド4における連通孔4aを形成する周囲の壁のセンサ部100の締め付け方向の端面と、圧力検出装置5のハウジング30の第3外周面333と第4外周面334とを接続する接続面との間に配置された第1シール部材71を有している。また、シール部材7は、シリンダヘッド4の連通孔4aの傾斜部4cと、圧力検出装置5のハウジング30の第1ハウジング31の傾斜面315aとの間に配置された第2シール部材72を有している。
【0044】
次に、本実施の形態の圧力検出装置5による圧力検出動作について説明する。
内燃機関1の作動時には、センサ部100のダイアフラムヘッド40の内側部42に、燃焼室C内で発生した燃焼圧が付与される。そして、ダイアフラムヘッド40に付与された燃焼圧が、第1電極部50と第2電極部55とによって挟まれた圧電素子10に作用することにより、この圧電素子10に燃焼圧に応じた電荷が生じる。圧電素子10に生じた電荷は、第2電極部55、コイルスプリング70および伝導部材22を介して、入力電荷として回路基板部21の実装基板210に供給される。実装基板210に供給された入力電荷は、実装基板210に設けられた各種回路にて積分処理および増幅処理がなされた後、その電荷に応じた外部出力電圧が、回路基板部21に接続された第3接続ピン21cおよび伝送ケーブル8を介して、制御装置6に供給される。
【0045】
ではここで、本実施の形態の圧力検出装置5で用いる圧電素子10について、より具体的に説明を行う。
本実施の形態の圧電素子10は、圧電性を有する酸化物単結晶のバルク体で構成される。そして、圧電素子10として用いられる酸化物単結晶は、圧電性を有する一方で、焦電性を有していないことが好ましい。
【0046】
また、圧電素子10に用いられる酸化物単結晶としては、種々の結晶構造を有するものを用いても差し支えないが、三方晶系の結晶構造を有するものを用いることが望ましい。そして、本実施の形態の圧力検出装置5が、比較的高温となり得る内燃機関1で使用されることを考慮すると、三方晶系の結晶構造を有する酸化物単結晶の中でも、A
3BC
3D
2O
14で表されるランガサイト型の結晶構造を有するものを用いることがさらに望ましい。さらに、ランガサイト型の結晶構造を有する酸化物単結晶の中でも、La
3Ta
0.5Ga
5.5O
14で表されるランガテイト(LTG)を用いることが望ましく、ランガテイトにおいてGaの一部をAlで置換した、La
3Ta
0.5Ga
5.5−xAl
xO
14で表されるAl置換ランガテイト(LTGA)を用いることがさらに望ましい。
なお、本実施の形態では、圧電素子10として、Al置換ランガテイト(LTGA)からなる酸化物単結晶を用いた。
【0047】
次に、圧電素子10として用いる酸化物単結晶の結晶軸について説明を行う。
Al置換ランガテイト(LTGA)、水晶(α−SiO
2)あるいはオルトリン酸ガリウム(GaPO
4)などの三方晶系の結晶構造は、c軸と、c軸と直交する面において120°の間隔で放射状に延びるa
1軸、a
2軸およびa
3軸とを有している。ここで、三方晶系の結晶構造において、c軸をZ軸とし、a
1軸、a
2軸およびa
3軸のうちのいずれか1つ(例えばa
1軸)をX軸とし、これらX軸とZ軸とに直交する軸をY軸とすることで、直交座標系における結晶学上のX軸、Y軸およびZ軸を定義することができる。なお、酸化物単結晶からなる圧電素子10においては、X軸のことを「電気軸」、Y軸のことを「機械軸」、そして、Z軸のことを「光学軸」と称することがある。
【0048】
続いて、圧電素子10として用いる酸化物単結晶の線膨張係数について説明を行う。
圧電性を有する酸化物単結晶では、通常、線膨張係数に異方性が存在する。
ここで、圧電素子10を構成する酸化物単結晶に関し、X軸に沿うX方向の線膨張係数を素子X方向線膨張係数αxとし、Y軸に沿うY方向の線膨張係数を素子Y方向線膨張係数αyとし、Z軸に沿うZ方向の線膨張係数を素子Z方向線膨張係数αzとしたとき、本実施の形態では、素子Y方向線膨張係数αyと素子Z方向線膨張係数αzとが、『αy>αz』の関係を有している。
なお、本実施の形態で圧電素子10として用いたAl置換ランガテイト(LTGA)の場合、素子X方向線膨張係数αxは約7.2(×10
−6/K)であり、素子Y方向線膨張係数αyは約7.2(×10
−6/K)であり、素子Z方向線膨張係数αzは約4.9(×10
−6/K)である。したがって、この場合においては、『αy>αz』であるのに加え、『αx>αz』であるとともに『αx≒αy』である。
【0049】
さらに、圧電素子10の形状および寸法について説明を行う。
図7は、圧電素子10の形状および寸法を説明するための図である。
本実施の形態の圧電素子10は、直方体状の形状を有している。これにより、圧電素子10は、X軸に沿う4つの稜線、Y軸に沿う4つの稜線およびZ軸に沿う4つの稜線を有しており、その結果、2つのXY平面と2つのYZ平面と2つのXZ平面とを備えている。
【0050】
ここで、圧電素子10に関し、X方向の長さをX方向素子長Lxとし、Y方向の長さをY方向素子長Lyとし、Z方向の長さをZ方向素子長Lzとしたとき、本実施の形態では、Y方向素子長LyとZ方向素子長Lzとが、『Ly<Lz』の関係を有している。すなわち、本実施の形態では、線膨張係数と素子長とに関し、Y方向とZ方向とで大小関係が逆転している。
なお、本実施の形態のように圧電素子10としてAl置換ランガテイト(LTGA)を用いた場合、Y方向素子長LyとZ方向素子長Lzとが、『3/7≦Ly/Lz≦6/7』の関係を有していることが望ましい。この理由については後述する。そして、この例では、X方向素子長LxとY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとが、『Lx:Ly:Lz=4.5:4.5:7』の関係を有しており、『Ly<Lz』であるのに加え、『Lx<Lz』であるとともに『Lx=Ly』である。
【0051】
今度は、第1電極部50と、圧電素子10と、第2電極部55との関係について説明を行う。
本実施の形態では、上述したように、圧力検出装置5の中心線方向と、圧電素子10における電気軸(X軸)とを一致させるように、第1電極部50と第2電極部55とを用いて、圧電素子10を挟み込んでいる。このため、第1電極部50(第2円柱部52)における後端側の端面と圧電素子10における一方(先端側)のYZ平面とが接触し、且つ、第2電極部55における先端側の端面と圧電素子10における他方(後端側)のYZ平面とが接触する。
【0052】
ここで、第1電極部50の第1電極線膨張係数αe1と、圧電素子10の素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとは、『αz<αe1<αy』の関係を有している。一方、第2電極部55の第2電極線膨張係数αe2と、圧電素子10の素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとは、『αz<αe2<αy』の関係を有している。
【0053】
そして、第1電極部50、圧電素子10および第2電極部55を内部に収容するハウジング30(より具体的には第1ハウジング31)のハウジング線膨張整数αhと、圧電素子10の素子X方向線膨張係数αx、素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとは、『αh>αx』、『αh>αy』および『αh>αz』の関係を有している。また、ハウジング30(より具体的には第1ハウジング31)のハウジング線膨張整数αhと、第1電極部50の第1電極線膨張係数αe1および第2電極部55の第2電極線膨張係数αe2とは、『αh>αe1』および『αh>αe2』の関係を有している。
【0054】
さらに、第1電極部50の先端側に位置するダイアフラムヘッド40のダイアフラム線膨張係数αdと、圧電素子10の素子X方向線膨張係数αx、素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとは、『αd>αx』、『αd>αy』および『αd>αz』の関係を有している。さらにまた、ダイアフラムヘッド40のダイアフラム線膨張係数αdと、第1電極部50の第1電極線膨張係数αe1および第2電極部55の第2電極線膨張係数αe2とは、『αd>αe1』および『αd>αe2』の関係を有している。
【0055】
なお、この例では、上述したように、αh=10〜12(×10
−6/K)、αd=10〜12(×10
−6/K)、αx≒7.2(×10
−6 /K)、αy≒7.2(×10
−6 /K)、αz≒4.9(×10
−6 /K)、αe1=5〜6(×10
−6 /K)、αe2=5〜6(×10
−6 /K)である。
【0056】
本実施の形態の圧力検出装置5は、上述したように例えば内燃機関1におけるシリンダ2a内の圧力(燃焼圧)を測定するために用いられる。このとき、燃料の燃焼に伴って圧電素子10にかかる圧力(圧縮力)は数百ニュートンに及ぶこととなる。また、圧電素子10には、圧力だけでなく、燃料の燃焼に伴う熱も伝達される。その結果、圧電素子10には、X軸に沿う圧縮力および復元力と、X軸、Y軸およびZ軸に沿う膨張力とが働くことになる。
【0057】
ここで、本実施の形態の圧電素子10は、上述したように第1電極部50と第2電極部55とに挟まれた状態となっている。したがって、燃料の燃焼に伴う熱は、圧電素子10だけでなく、第1電極部50および第2電極部55にも伝達される。このとき、例えば圧電素子10と第1電極部50との接触部位において、圧電素子10の熱膨張量と第1電極部50の熱膨張量とに大きな違いが存在していると、圧電素子10にかかる応力が過大となり、結果として圧電素子10に損傷を招いてしまう懸念がある。また、例えば圧電素子10と第2電極部55との接触部位において、圧電素子10の熱膨張量と第2電極部55の熱膨張量とに大きな違いが存在していると、圧電素子10にかかる応力が過大となり、結果として圧電素子10に損傷を招いてしまう懸念がある。なお、一般的な内燃機関1の場合、ダイアフラムヘッド40は例えば170℃〜250℃に加熱され、第1電極部50、圧電素子10および第2電極部55は例えば150℃〜200℃に加熱される。
【0058】
特に、本実施の形態では、第1電極部50および第2電極部55を、線膨張係数の異方性がほぼない金属材料で構成しているのに対し、圧電素子10のうち第1電極部50および第2電極部55と接触する面を、線膨張係数の異方性があるYZ平面で構成している。このため、圧電素子10にかかる応力が、Y方向とZ方向とで異なる大きさとなりやすい。
【0059】
そこで、本実施の形態では、圧電素子10における、Y方向およびZ方向の線膨張係数と素子長との関係を、上述したように『αy>αz』且つ『Ly<Lz』とし、第1電極部50および圧電素子10の線膨張係数の関係を、『αz<αe1<αy』とすることで、第1電極部50と圧電素子10との熱膨張量の違いを低減し、第1電極部50と圧電素子10との接触部位を起点とする圧電素子10の損傷を抑制している。
また、本実施の形態では、圧電素子10における、Y方向およびZ方向の線膨張係数と素子長との関係を、上述したように『αy>αz』且つ『Ly<Lz』とし、圧電素子10および第2電極部55の線膨張係数の関係を、『αz<αe2<αy』とすることで、圧電素子10と第2電極部55との熱膨張量の違いを低減し、圧電素子10と第2電極部55との接触部位を起点とする圧電素子10の損傷を抑制している。
【0060】
では、このことについて、具体例を挙げて説明を行う。
図8は、圧電素子10の形状と圧電素子10の熱膨張量との関係を模式的に示した図である。なお、ここでは、圧電素子10における素子Y方向線膨張係数αyと素子Z方向線膨張係数αzとが、『αy>αz』の関係を有しているものとする。
【0061】
図8(a)は、第1温度T1(例えば25℃とする、以下同じ)において、Y方向素子長Lyが第1Y方向素子長Ly1に設定され、且つ、Z方向素子長Lzが第1Y方向素子長Ly1と等しい第1Z方向素子長Lz1(Lz1=Ly1)に設定された圧電素子10を例示している。また、
図8(b)は、
図8(a)に示す圧電素子10を、第1温度T1よりも高い第2温度T2(例えば300℃とする、以下同じ)に加熱したときの状態を例示している。なお、
図8(b)においては、温度上昇に伴い、圧電素子10におけるY方向素子長Lyが第1Y方向素子長Ly1よりも大きい第2Y方向素子長Ly2(Ly2>Ly1)まで伸びており、圧電素子10におけるZ方向素子長Lzが第1Z方向素子長Lz1よりも大きい第2Z方向素子長Lz2(Lz2>Lz1)まで伸びている。
【0062】
一方、
図8(c)は、第1温度T1において、Y方向素子長Lyが第3Y方向素子長Ly3に設定され、且つ、Z方向素子長Lzが第3Y方向素子長Ly3よりも大きい第3Z方向素子長Lz3(Lz3>Ly3)に設定された圧電素子10を例示している。また、
図8(d)は、
図8(c)に示す圧電素子10を、第1温度T1よりも高い第2温度T2に加熱したときの状態を例示している。なお、
図8(d)においては、温度上昇に伴い、圧電素子10におけるY方向素子長Lyが第3Y方向素子長Ly3よりも大きい第4Y方向素子長Ly4(Ly4>Ly3)まで伸びており、圧電素子10におけるZ方向素子長Lzが第3Z方向素子長Lz3よりも大きい第4Z方向素子長Lz4まで伸びている。
【0063】
まず、
図8(a)に示すように、第1温度T1において圧電素子10のY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとを等しくした場合(Ly1=Lz1)について考えてみる。このとき、素子Y方向線膨張係数αyと素子Z方向線膨張係数αzとは、『αy>αz』の関係を有していることから、
図8(b)に示すように、第2温度T2(T2>T1)では、圧電素子10におけるY方向の伸び量(=Ly2−Ly1)が、圧電素子10におけるZ方向の伸び量(=Lz2−Lz1)よりも大きくなる。
【0064】
次に、
図8(c)に示すように、第1温度T1において圧電素子10のY方向素子長LyよりもZ方向素子長Lzを大きくした場合(Ly<Lz)について考えてみる。このとき、素子Y方向線膨張係数αyと素子Z方向線膨張係数αzとは、『αy>αz』の関係を有していることから、
図8(d)に示すように、第2温度T2(T2>T1)では、圧電素子10におけるY方向の伸び量(=Ly4−Ly3)と、圧電素子10におけるZ方向の伸び量(=Lz4−Lz3)との差が、第1温度T1においてY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとを等しくした圧電素子10を用いた場合(
図8(b)参照)よりも小さくなる。特に、第1温度T1における圧電素子10のY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとの比(Ly/Lz)を、圧電素子の素子Z方向線膨張係数αzと素子Y方向線膨張係数αyとの比(αz/αy)に近づける(Ly/Lz≒αz/αy)ことにより、温度上昇に伴う圧電素子10のY方向の伸び量とZ方向の伸び量とを、同じ大きさに近づけることが可能になる。
【0065】
なお、ここでは図示しなかったが、仮に、第1温度T1において圧電素子10のY方向素子長LyをZ方向素子長Lzよりも大きくした場合(Ly>Lz)には、第2温度T2におけるY方向の伸び量とZ方向の伸び量との差は、第1温度T1においてY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとを等しくした圧電素子10を用いた場合(
図8(b)参照)に比べて、さらに大きくなる。
【0066】
そして、本実施の形態では、例えば
図8(c)に示した構成において、第1電極部50の第1電極線膨張係数αe1と、圧電素子10の素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとが、『αz<αe1<αy』の関係を有している。このため、Y方向における第1電極部50と圧電素子10との熱膨張量の差、および、Z方向における第1電極部50と圧電素子10との熱膨張量の差、をそれぞれ小さくすることが可能になる。これにより、温度上昇に起因する圧電素子10の損傷を抑制することが可能になる。
【0067】
また、本実施の形態では、例えば
図8(c)に示した構成において、第2電極部55の第2電極線膨張係数αe2と、圧電素子10の素子Y方向線膨張係数αyおよび素子Z方向線膨張係数αzとが、『αz<αe2<αy』の関係を有している。このため、Y方向における第2電極部55と圧電素子10との熱膨張量の差、および、Z方向における第2電極部55と圧電素子10との熱膨張量の差、をそれぞれ小さくすることが可能になる。これにより、温度上昇に起因する圧電素子10の損傷を抑制することが可能になる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者は、圧電素子10としてAl置換ランガテイト(LTGA)単結晶を用い、Y方向素子長LyとZ方向素子長Lzとの関係を種々異ならせた圧電素子10を作製し、得られた各圧電素子10を
図2等に示す圧力検出装置5に組み込むとともに
図1に示す内燃機関1に装着し、圧電素子10の破壊が発生する温度(破壊発生温度)に関する評価を行った。
【0069】
なお、ここでは、圧電素子10におけるY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとを、「Ly:Lz」すなわち比で表すようにした。そして、「Ly:Lz」がそれぞれ、「2:7」、「3:7」、「4:7」、「4.5:7」、「5:7」、「5.5:7」、「6:7」、「7:7」、「8:7」となる9つの圧電素子10を準備した。なお、各圧電素子10におけるX方向素子長Lxは、それぞれのY方向素子長Lyと同じ大きさ(Lx=Ly)に設定した。
【0070】
図9は、Al置換ランガテイト(LTGA)で構成された圧電素子10の形状と破壊発生温度との関係を説明するための図である。
図9において、横軸はY方向素子長LyとZ方向素子長Lzとの比(Ly:Lz)であり、縦軸は破壊発生温度(℃)である。
【0071】
図9に示すように、「Ly:Lz」を「7:8」すなわちLy<Lzとなるように設定した圧電素子10を用いた場合、その破壊発生温度は100℃程度であった。また、「Ly:Lz」を「7:7」すなわちLy=Lzとなるように設定した圧電素子10を用いた場合、その破壊温度は240℃程度であった。
【0072】
一方、「Ly:Lz」を「3:7」〜「6:7」に設定した圧電素子10を用いた場合、その破壊発生温度はそれぞれ300℃以上となった。特に、これらの中で、「Ly:Lz」を「4.5:7」に設定した圧電素子10を用いた場合において、その破壊発生温度は、最も高いほぼ400℃となった。なお、「Ly:Lz」を「2:7」に設定した圧電素子10を用いた場合、その破壊発生温度は220℃程度となった。
【0073】
ここで、内燃機関1において圧力検出装置5を使用する場合、圧電素子10の温度は、上述したように150℃〜200℃となり得る。そして、安全性を確保するために若干の余裕を加味すると、内燃機関1で使用する圧力検出装置5に設けられた圧電素子10の破壊発生温度は、300℃以上であることが望ましい。したがって、このような用途で用いられる場合において、Al置換ランガテイトを用いた圧電素子10におけるY方向素子長LyおよびZ方向素子長Lzは、3/7≦Ly/Lz≦6/7の関係を満足していることが望ましいことになる。