特許第6541602号(P6541602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541602経路生成装置、経路生成システム、経路生成方法および経路生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541602
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】経路生成装置、経路生成システム、経路生成方法および経路生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   G01C21/34
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-67555(P2016-67555)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-181243(P2017-181243A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502324066
【氏名又は名称】株式会社デンソーアイティーラボラトリ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】土井 浩史
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/042978(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/141308(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/153380(WO,A1)
【文献】 特開2015−148533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 − 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付ける指示受付部と、
車両の状態を取得する車両状態取得部と、
車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを経路生成のための候補として選択する候補選択部と、を備え
前記候補選択部は、前記車両の状態と、前記複数ある進行方向のそれぞれが選択される確率との関係に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択する経路生成装置。
【請求項2】
前記複数ある進行方向は、複数の分岐点を含み、そのうちの1つを前記候補選択部は候補として選択する、請求項1に記載の経路生成装置。
【請求項3】
前記車両の状態は、前記複数の分岐点のそれぞれまでの距離を含む、請求項2に記載の経路生成装置。
【請求項4】
前記複数ある進行方向は、車線変更および少なくとも1つの分岐点を含み、そのうちの1つを前記候補選択部は候補として選択する、請求項1に記載の経路生成装置。
【請求項5】
前記車両の状態は、前記分岐点までの距離と、前記車両が現在いる車線と、を含む、請求項4に記載の経路生成装置。
【請求項6】
前記車両の状態は、さらに前記車両の速度を含む、請求項3または5に記載の経路生成装置。
【請求項7】
前記候補選択部は、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として推定する、請求項1乃至6のいずれかに記載の経路生成装置。
【請求項8】
前記候補選択部は、車両周辺の道路交通状況、車両周辺の道路特性、乗員の走行履歴、および、目的地のうちの少なくとも1つを考慮して、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として推定する、請求項7に記載の経路生成装置。
【請求項9】
前記指示受付部は、前記選択された候補が正しいか否かの指示を乗員から受け付ける、請求項1乃至8のいずれかに記載の経路生成装置。
【請求項10】
前記確率を乗員の運転履歴に基づいて更新する確率更新部を備える、請求項1乃至9のいずれかに記載の経路生成装置。
【請求項11】
乗員から車両進行方向の指示が入力されるインターフェースと、
請求項1乃至11のいずれかに記載の経路生成装置と、
前記候補選択部が選択した候補を提示する出力インターフェースと、を備える経路生成システム。
【請求項12】
指示受付部が、乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付けるステップと、
車両状態取得部が、車両の状態を取得するステップと、
地図情報取得部が、車両周辺の地図情報を取得するステップと、
候補選択部が、前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを経路生成のための候補として選択するステップと、を備え
前記候補選択部は、前記車両の状態と、前記複数ある進行方向のそれぞれが選択される確率との関係に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択する経路生成方法。
【請求項13】
コンピュータに、
乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付けるステップと、
車両の状態を取得するステップと、
車両周辺の地図情報を取得するステップと、
前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを経路生成のための候補として選択するステップと、を実行させ
前記候補として選択するステップは、前記車両の状態と、前記複数ある進行方向のそれぞれが選択される確率との関係に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択する経路生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員からの指示に基づいて経路を生成する経路生成装置、経路生成システム、経路生成方法および経路生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転の技術が発達しつつあるが、自動運転中であっても、道路状況の変化などにより手動で経路を変更したいことも多々ある。ところが、交差点が迫ってきている段階で経路変更の判断をした場合、当該交差点に到達するまでの時間が短いため、カーナビゲーションの地図表示などから経路を変更するのは間に合わないことがある。
そこで、特許文献1,2では、ステアリングホイールやジョイスティック装置で進行方向を指示して、経路を変更させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−214123号公報
【特許文献2】特開2012−214125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2では、1つの指示に対応する進行方向が複数ある可能性を考慮していないため、例えば1つ先の交差点において、左折の方向が「真左」と「左斜め前」がある場合、1つの「左折」指示では適切な経路変更が行えない。そのため、進行方向をより細かく指示しなければならず、乗員にとって手間である。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、進行方向が複数ある場合でも適切な経路を生成できる経路生成装置、経路生成システム、経路生成方法および経路生成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付ける指示受付部と、車両の状態を取得する車両状態取得部と、車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得部と、前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択する候補選択部と、を備える経路生成装置が提供される。
車両の状態を考慮することで、複数ある進行方向のうちの1つを適切に選択できる。
【0007】
前記複数ある進行方向は、複数の分岐点を含み、そのうちの1つを前記候補選択部は候補として選択してもよい。
この場合、前記車両の状態は、前記複数の分岐点のそれぞれまでの距離を含むのが望ましい。
【0008】
前記複数ある進行方向は、車線変更および少なくとも1つの分岐点を含み、そのうちの1つを前記候補選択部は候補として選択してもよい。
この場合、前記車両の状態は、前記分岐点までの距離と、前記車両が現在いる車線と、を含むのが望ましい。
前記車両の状態は、さらに前記車両の速度を含んでもよい。
【0009】
前記候補選択部は、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として推定してもよい。
【0010】
この場合、前記候補選択部は、車両周辺の道路交通状況、車両周辺の道路特性、乗員の走行履歴、および、目的地のうちの少なくとも1つを考慮して、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として推定するのが望ましい。
【0011】
前記指示受付部は、前記選択された候補が正しいか否かの指示を乗員から受け付けてもよい。
【0012】
前記候補選択部は、前記車両の状態と、前記複数ある進行方向のそれぞれが選択される確率との関係に基づいて、前記複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択してもよい。
【0013】
当該経路生成装置は、前記確率を乗員の運転履歴に基づいて更新する確率更新部を備えるのが望ましい。
これにより、乗員に合った経路を生成できる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、乗員から車両進行方向の指示が入力されるインターフェースと、上記経路生成装置と、前記候補選択部が選択した候補を提示する出力インターフェースと、を備える経路生成システムが提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付けるステップと、車両の状態を取得するステップと、車両周辺の地図情報を取得するステップと、前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択するステップと、を備える経路生成方法が提供される。
【0016】
コンピュータに、乗員から車両の進行方向変更の指示を受け付けるステップと、車両の状態を取得するステップと、車両周辺の地図情報を取得するステップと、前記進行方向変更の指示が受け付けられた場合に、前記車両の状態および前記地図情報に基づいて、複数ある進行方向のうちの1つを候補として選択するステップと、を実行させる経路生成プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
車両の状態を考慮することで、進行方向が複数ある場合でも適切な経路を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の動作を説明する図。
図2】第1の実施形態に係る経路生成システムの概略構成を示すブロック図。
図3】交差点C1で左折する際に、左折の指示を位置sで行う確率P1(s)を模式的に示す図。
図4】交差点C1で左折する際に左折の指示を位置sで行う確率P1(s)と、交差点C2で左折する際に左折の指示を位置sで行う確率P2(s)を模式的に示す図。
図5A】交差点C1で左折する際に、左折の指示を位置sおよび車速vで行う確率P(s,v)を模式的に示す図。
図5B図5AのB−B断面図。
図5C図5AのC−C断面図。
図6図4の別の例を模式的に示す図。
図7】第2の実施形態の動作を説明する図。
図8】第3の実施形態に係る経路生成システムの概略構成を示すブロック図。
図9】確率の更新を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の動作を説明する図である。本実施形態では、片道1車線の道路において、車両100の進行方向に左折の交差点C1,C2が順に存在するケースを想定している。本実施形態に係る経路生成装置に対して、車両100の乗員がある位置で左折の指示を行ったとする。交差点C1,C2の間隔が狭い場合、交差点C2で左折する場合であっても、乗員は交差点C1の手前で左折の指示を行わなければならない。本実施形態では、このような場合に、経路生成装置が乗員の意図を汲み取り、交差点C1での左折(経路R1)なのか、交差点C2での左折(経路R2)なのかを適切に選択するものである。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る経路生成システムの概略構成を示すブロック図である。経路生成システムは、入力インターフェース1と、経路生成装置2と、出力インターフェース3とを備えている。この経路生成システムが車両100に備えられ、例えば自動運転に利用され得る。
【0022】
入力インターフェース1は乗員が経路生成装置2に対して指示を行うものである。入力インターフェース1は、ウインカー、レバー、ジョイスティック、タッチパッド、マイクなど、簡単な操作で指示を行えるものが望ましい。
【0023】
経路生成装置2は、指示受付部21と、車両状態取得部22と、地図情報データベース23と、地図情報取得部24と、候補選択部25とを有する。地図情報データベース23を除く各部は、その全部または一部がハードウェアで実装されてもよいし、所定の経路生成プログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよい。
【0024】
指示受付部21は、入力インターフェース1を介して、乗員からの指示を受け付ける。本実施形態の指示受付部21は、進行方向変更の指示として、右左折の指示を乗員から受け付けるものとする。
【0025】
車両状態取得部22は車両100の状態を取得する。車両100の状態とは、車両100に搭載されたGPS受信装置で取得された車両100の位置を含み得る。ここで、車両100の位置と、後述する地図情報とを組み合わせると、車両100から各交差点までの距離を算出できるので、車両100の位置と、車両100から各交差点までの距離とを等価に考えることもできる。また、車両100の状態とは、車速であってもよく、例えば車両100に搭載された車速センサから取得できる。
【0026】
地図情報データベース23は地図情報を記憶している。地図情報は、道路の形状や車線数などを含んでおり、さらにリアルタイムな道路交通状況を含んでいてもよい。なお、図2では地図情報データベース23が経路生成装置2に内蔵される例を示しているが、地図情報データベース23は経路生成装置2とは別個の記憶媒体であってもよいし、経路生成装置2とネットワークを介して接続されたものであってもよい。
【0027】
地図情報取得部24は車両100の周辺の地図情報を取得する。より具体的には、地図情報取得部24は、GPS受信装置からの情報などに基づいて車両100の自位置を把握し、その周辺、特に進行方向側の道路を含む地図情報を取得する。
【0028】
候補選択部25は、乗員から右左折の指示を受け付けると、車両100の状態および地図情報に基づいて、車両100の進行方向に交差点が複数ある場合に、その1つを乗員が意図する経路の候補として選択する。選択の手法は後述する。
【0029】
出力インターフェース3は、候補選択部25によって選択された候補を提示する。出力インターフェース3は、典型的には車両100のダッシュボードなどに設けられたディスプレイであり、例えば選択された候補である交差点を曲がる経路を地図情報上に矢印を重畳して表示する。
【0030】
出力インターフェース3に提示された候補について、入力インターフェース1を介して乗員がその正否を指示できてもよい。そして、候補が正しい旨の指示を指示受付部21が受け付けた場合、候補選択部25はその候補を承認して経路を生成してもよい。仮に、候補が正しくない旨の指示を指示受付部21が受け付けた場合、候補選択部25は代替候補を選択してもよい。
【0031】
候補選択部25の処理について、図1を用いて説明する。図1において、乗員が左折の指示を行った時点における車両100から交差点C1,C2までの距離をそれぞれs1,s2とし、その時の車速をvとする。例えば、車速vが十分に小さい場合、乗員は交差点C1での左折を意図していると考えられるので、候補選択部25は交差点C1(経路R1)を選択する。一方、距離s1が小さく、車速vがそれほど小さくない場合、乗員は交差点C2での左折を意図していると考えられるので、候補選択部25は交差点C2(経路R2)を選択する。
すなわち、指示を行った時点での車速vや、交差点において十分に減速しているために必要な距離から、候補選択部25は乗員が意図する交差点を推定できる。
【0032】
より具体的に説明する。まずは車両状態取得部22が取得する車両100の状態が交差点までの距離s1,s2のみ(すなわち車速vは取得しない)であるとして、選択する交差点との関係を述べる。
【0033】
図3は、交差点C1で左折する際に、左折の指示を位置sで行う確率P1(s)を模式的に示す図である。横軸は左折の指示を行う時点での車両100の位置であり、各位置と交差点C1との距離が、車両100から交差点C1までの距離に対応する。縦軸は各位置で左折の指示が行われる確率P1(s)を示している。すなわち、図3は、交差点C1で左折したい場合に、どの位置で左折の指示が行われる確率が高いかを示している。例えば、交差点C1で左折することを意図する場合、位置sa(交差点C1との距離sa1)において左折の指示が行われる確率がP1(sa)であることを示している。言い換えると、位置saにおいて左折の指示が行われた場合、乗員が交差点C1での左折を意図している確率がP1である。
このような確率分布が交差点ごとに予め候補選択部25に設定されている。
【0034】
図4は、交差点C1で左折する際に左折の指示を位置sで行う確率P1(s)と、交差点C2で左折する際に左折の指示を位置sで行う確率P2(s)を模式的に示す図である。交差点C1で左折する際の確率P1(s)を実線で、交差点C2で左折する際の確率P2(s)を破線で示している。これらの確率分布に基づいて、乗員から左折の指示を受け付けた場合に、次のようにして、候補選択部25は交差点C1,C2のいずれかを選択する。
【0035】
例えば、位置sa(交差点C1,C2までの距離がそれぞれsa1,sa2)において乗員から左折の指示を受け付けたとする。この位置saにおいて行われた左折の指示が交差点C1で左折を意図している確率はP1(sa)であり、交差点C2で左折を意図している確率はP2(sa)である。そして、図4よりP1(sa)<P2(sa)であるから、候補選択部25は交差点C2を選択する。
【0036】
別の例として、位置sb(交差点C1,C2までの距離がそれぞれsb1,sb2)において乗員から左折の指示を受け付けたとする。図4よりP1(sb)>P2(sb)であるから、候補選択部25は交差点C1を選択する。
【0037】
このように、候補選択部25は、交差点のそれぞれについて、位置(言い換えると各交差点までの距離)sと、各位置sで行われた進行方向変更の指示が当該交差点で右左折することを意図する確率P(s)との関係を予め記憶しておく。そして、候補選択部25は、進行方向の指示を受け付けた時点の位置sにおいて、最も確率P(s)が大きい交差点を、乗員が意図する交差点であると推定して選択する。具体的な推定の手法として、例えばベイズ推定を適用できる。また、形状などが類似する交差点については、同じ確率P(s)を設定してもよい。
【0038】
続いて、車速vをさらに考慮して交差点を選択することを説明する。
図5Aは、交差点C1で左折する際に、左折の指示を位置sおよび車速vで行う確率P(s,v)を模式的に示す図である。横軸は左折の指示を行う時点での車両100の位置sであり、図3の横軸と同様である。また、縦軸は左折の指示を行う時点での車速vである。そして、紙面垂直方向に、各位置sおよび各車速vで左折の指示が行われる確率P(s,v)が示される。
【0039】
図5Aの確率P(s,v)をB−B線(車速v1)およびC−C線(車速v2(<v1))で切ったものが、図5Bの確率P(s,v1)および図5Cの確率P(s,v2)にそれぞれ対応する。このような確率分布が交差点ごとに予め候補選択部25に設定されている。なお、すべての交差点で同じ確率分布を設定しておいてもよい。
【0040】
このように、候補選択部25は、位置(言い換えると各交差点までの距離)sと、車速vと、各位置sおよび各車速vで進行方向変更の指示が行われる確率P(s,v)との関係を予め記憶しておく。そして、候補選択部25は、進行方向の指示を受け付けた時点の位置sおよび車速vにおいて、最も確率P(s,v)が大きい交差点を、乗員が意図する交差点であると推定して選択してもよい。
【0041】
次に、図3図5Aに示す確率分布の設定手法の例を説明する。
第1例として、車両100周辺の道路交通状況を考慮して確率分布が設定されてもよく、この場合、候補選択部25は道路交通状況も考慮して候補となる交差点を選択することとなる。具体例として、候補選択部25は、車両100の進行方向あるいは交差点の通行量や、交差点での右左折待ち車両数を認識し、これを考慮することができる。例えば、図1において、交差点C1の左折先は混雑しているが、交差点C2の左折先は混雑していない場合、交差点C1で左折する確率を全体的に低くし、図4に代えて図6のような確率分布としてもよい。この場合、確率分布は固定ではなく、道路交通状況に応じて変動し得る。
【0042】
第2例として、一般的な選好性、具体的には車両100周辺の道路特性を考慮して確率分布が設定されてもよく、この場合、候補選択部25は道路特性も考慮して候補となる交差点を選択することとなる。具体例として、候補選択部25は、地図情報に含まれる道路の車線数や幅員や、通行量の多さ、有料道路か否かなどを考慮することができる。例えば、図1において、交差点C1の左折先の道路は狭いが、交差点C2の左折先の道路は広い場合、図4に代えて図6のような確率分布としてもよい。
【0043】
第3例として、乗員個人の選好性、具体的には車両100の乗員の走行履歴を考慮して確率分布が設定されてもよく、この場合、候補選択部25は乗員の走行履歴を考慮して候補となる交差点を選択することとなる。具体例として、候補選択部25は、乗員が過去によく通った道路であることや、好みの道路の特徴(広い道をよく通る、など)を考慮することができる。例えば、図1において、乗員が交差点C1を左折することはあまりないが、交差点C2をよく左折する場合、図4に代えて図6のような確率分布としてもよい。この場合、確率分布は、乗員に応じて、あるいは、車両に応じて異なり得る。
【0044】
第4例として、目的地を考慮して確率分布が設定されてもよく、この場合、候補選択部25は乗員の走行履歴を考慮して候補となる交差点を選択することとなる。目的地は、例えばカーナビゲーションに設定されたものを流用することができる。そして、目的地までの経路に関する評価値(到達までの所要時間など)が優れている交差点の確率が高く設定される。例えば、図1において、交差点C2を左折した先の道路上に目的地がある場合、図4に代えて図6のような確率分布としてもよい。
以上説明した第1〜第4例を組み合わせてもよいし、他の要因を考慮してもよい。
【0045】
このように、第1の実施形態では、乗員から右左折の指示があった場合に、車両100の状態に基づいて複数の交差点のうちの1つを選択する。そのため、複数の交差点のうちの適切なものを選択でき、適切な経路を生成できる。したがって、自動運転中に経路を変更したり、その時の道路状況などを鑑みて乗員が思い通りに右左折したりできる。なお、本実施形態は、交差点に限らず、任意の分岐点や、進行方向に3以上の交差点がある場合にも適用可能である。
【0046】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、複数の交差点がある場合にそのうちの1つを選択するものであった。以下に説明する第2の実施形態は、左折(または右折)および車線変更して直進のうちの1つを選択するものである。
【0047】
図7は、第2の実施形態の動作を説明する図である。本実施形態では、片道2車線(L1,L2)の道路において、車両100の進行方向に左折の交差点C1が存在するケースを想定している。本実施形態に係る経路生成装置2に対して、右車線L2にいる車両100の乗員がある位置で左方向へ移動する指示を行ったとする。本実施形態では、このような場合に、経路生成装置2が乗員の意図を汲み取り、交差点C1での左折(経路R3)なのか、左車線L1への車線変更(経路R4)なのかを適切に選択するものである。
経路生成システムの構成は図1に示すものと同様であり、以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態の指示受付部21は、進行方向変更の指示として、左または右への移動指示を受け付けるものとする。左への移動指示は左折または左車線への車線変更を意味し、右への移動指示は右折または右車線への車線変更を意味する。また、車両状態取得部22は、車両100の状態として、車両100が現在どの車線にいるのかを取得する。例えば、車両状態取得部22は、車載カメラを用いた画像認識、GPS受信装置で取得された車両100の位置情報、地図情報などを利用して、現在いる車線を特定できる。
【0049】
候補選択部25は、左または右への移動指示を受け付けると、車両100の状態および地図情報に基づいて、車両100の進行方向に交差点および複数車線がある場合に、分岐点での右左折および車線変更のうちの1つを候補として選択する。
【0050】
図7において、右車線L2にある車両100の乗員が左への移動指示を行った時点において、車両100から交差点C1までの距離をs1とする。例えば、距離s1が十分に小さい場合または十分に大きい場合、乗員は交差点C1での左折ではなく左車線L1への車線変更を意図していると考えられるので、候補選択部25は車線変更(経路R4)を選択する。一方、距離s1が車速vに応じた所定範囲の場合、乗員は交差点C1での左折を意図していると考えられるので、候補選択部25は交差点C1(経路R3)を選択する。
【0051】
このような選択は第1の実施形態で説明した図3図5と同様にして行うことができる。すなわち、車両状態取得部22が、車両100のいる車線と、車両100の位置とを取得する場合、候補選択部25は、位置(言い換えると、図7における交差点C1までの距離)sと、交差点C1を左折する場合に進行方向変更の指示が各位置sで行われる確率P1(s)と、左車線L1に車線変更をする場合に進行方向変更の指示が各位置sで行われる確率P2(s)と、の関係を予め記憶しておく。そして、候補選択部25は、進行方向の指示を受け付けた時点の位置sにおいて、確率P1(s)が大きい場合には交差点C1を、確率P2(s)が大きい場合には車線変更を、乗員の意図として推定して選択する。
【0052】
なお、確率P1(s)は、交差点C1を左折する場合に進行方向変更の指示が各位置sで行われる確率P10(s)と、当該指示が左折である確率(位置sに依存しない一定値)P11との積であってもよい。そして、確率P2(s)は、左車線L1に車線変更をする場合に進行方向変更の指示が各位置sで行われる確率P20(s)と、当該指示が左折である確率(位置sに依存しない一定値)P21との積であってもよい。例えば、一般に車線変更より左折の方が頻繁に発生するのであれば、P11>P21と設定しておけばよい。
【0053】
また、車両状態取得部22がさらに車速vを取得する場合、候補選択部25は、位置sと、車速vと、交差点C1を左折する場合に進行方向変更の指示が各位置sおよび車速vで行われる確率P1(s,v)と、左車線L1に車線変更をする場合に進行方向変更の指示が各位置sおよび車速vで行われる確率P2(s,v)と、の関係を予め記憶しておく。そして、候補選択部25は、進行方向の指示を受け付けた時点の位置sおよび車速vにおいて、確率P1(s,v)が大きい場合には交差点C1を、確率P2(s,v)が大きい場合には車線変更を、乗員の意図として推定して選択する。
【0054】
このように、第2の実施形態では、乗員から左(右)への移動指示があった場合に、車両100の状態に基づいて、左(右)折を行う交差点および左(右)車線への車線変更のちの1つを選択する。そのため、左(右)折および車線変更のうちの適切なものを選択できる。なお、本実施形態は、3車線以上ある場合にも適用可能である。
【0055】
また、第1および第2の実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、進行方向に2つ以上の分岐点があり、かつ、車線変更の可能性もあるときに、候補選択部25はそのうちの1つを選択するようにしてもよい。そのためには、考え得る進行方向(どの交差点での右左折であるか、車線変更であるか)のそれぞれについて、車両100の状態(車両100の位置(交差点までの距離)s、車速v、車両100がいる車線など)との関係を予め候補選択部25が記憶しておき、複数ある進行方向のうち最も確率が高いものを候補として選択すればよい。
【0056】
(第3の実施形態)
次に説明する第3の実施形態は、図4などに示す確率分布を更新するものである。
図8は、第3の実施形態に係る経路生成システムの概略構成を示すブロック図である。図2との相違点として、経路生成装置2’は確率更新部26をさらに有する。確率更新部26は、乗員による指示および実際の運転の履歴を取得し、当該履歴に基づいて確率を更新する。
【0057】
早めに指示を出す乗員もいれば、交差点のぎりぎりで指示を出す乗員もいる。そのため、乗員ごとに履歴を取得し、乗員ごとの確率を生成することで、乗員の癖に合った経路を生成できる。
【0058】
図9は、確率の更新を説明する図である。同図(a)は、交差点C1で左折する際に、左折の指示を位置sで行う確率P1(s)が予め定められており、位置s0で左折の指示が行われる確率が最も高い。この確率P1(s)は乗員によらない初期設定である。
【0059】
ある乗員Aの運転履歴によれば、位置s0より交差点C1に近い位置sa0で左折の指示をすることが多かったとする。なお、位置sa0は車両状態取得部22が取得できる。この場合、確率更新部26は、確率P1(s)における位置sa0の確率を高くして、確率P1a(s)を生成する(図9(b))。その後も位置sa0で左折の指示をすることが多いのであれば、確率更新部26は、確率P1a(s)における位置sa0の確率をさらに高くする(図9(c))。このようにして、乗員A用の確率P1a(s)が更新される。
【0060】
一方、ある乗員Bの運転履歴によれば、位置s0より交差点C1から離れた位置sb0で左折の指示をすることが多かったとする。この場合、確率更新部26は、確率P1(s)における位置sb0の確率を高くして、確率P1b(s)を生成する(図9(d))。その後も位置sb0で左折の指示をすることが多いのであれば、確率更新部26は、確率P1b(s)における位置sb0の確率をさらに高くする(図9(e))。このようにして、乗員B用の確率P1b(s)が更新される。
そして、候補選択部25は更新された確率を用いて候補となる経路を選択する。
【0061】
このように、本実施形態では、確率分布を乗員の履歴に基づいて更新する。そのため、乗員に適した経路を適切に選択できる。
【0062】
なお、図5Aに示すように、交差点で左折する際に、左折の指示を位置sおよび車速vで行う確率P(s,v)が定められている場合、運転履歴として、左折指示を行う際の交差点に対する位置sのみならず車速vも車両状態取得部22が取得し、確率更新部26は確率P(s,v)を更新すればよい。
【0063】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 入力インターフェース
2 経路生成装置
21 指示受付部
22 車両状態取得部
23 地図情報データベース
24 地図情報取得部
25 候補選択部
26 確率更新部
3 出力インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9