特許第6541609号(P6541609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541609
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ふるい部材
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/46 20060101AFI20190628BHJP
   B07B 1/04 20060101ALI20190628BHJP
   B07B 1/12 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B07B1/46 A
   B07B1/04 Z
   B07B1/12 Z
   B07B1/46 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-82918(P2016-82918)
(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-192873(P2017-192873A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 克清
(72)【発明者】
【氏名】三輪 好範
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−285593(JP,A)
【文献】 特開平02−026680(JP,A)
【文献】 米国特許第04313992(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0092608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/46
B07B 1/04
B07B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物と金属の少なくとも一方よりなる塊状体(4)をふるい分けする、ふるい目が開口したふるい部材(1)であって、
第1の孔(23)が開口した環状の金属板よりなる基板(21)と、該基板上に配置され、該塊状体(4)が載置する載置面(2a)を形成するセラミックスチップ(20)と、該基板(21)と該セラミックスチップ(20)の間に介在して接合固定する弾性体よりなる接合材層(22)と、を有するスクリーン部(2)と、
複数の該スクリーン部(2,2)を溶接で固定する金属よりなる基部(3)と、
を有し、
該ふるい目は、該スクリーン部(2)の該第1の孔に連通した状態で該ふるい部材を貫通する第1貫通孔、及び間隔を隔てた状態で配された複数のスクリーン部(2,2)の間(30)で該ふるい部材を貫通する第2貫通孔、により形成され、
該基部は、該第1貫通孔に対応する孔、及び該第2貫通孔に対応する孔が複数形成されていることを特徴とするふるい部材。
【請求項2】
前記接合材層(22)は、前記基板(21)と前記セラミックスチップ(20)を加硫接着するゴムである請求項1記載のふるい部材。
【請求項3】
前記スクリーン部は、方形状の外周形状を有し、
複数の前記スクリーン部は、間隔を隔てた状態で前記基部に固定され、
前記ふるい目が、前記第1貫通孔、及び前記第2貫通孔により形成される請求項1〜2のいずれか1項に記載のふるい部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塊状体のふるい分けに用いられるふるい部材に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や製銑工場では、原料であるコークスや焼結鉱などの塊状体を、振動ふるいスクリーンを用いて所定のサイズにふるい分けする。振動ふるいスクリーンは、ふるい部材(スクリーン)を装着した枠体を加振することで、ふるい部材上に投入又は配置された塊状体(被選別物)をふるい分ける。
【0003】
振動ふるいスクリーンに用いられるふるい部材は、多数の孔やスリットが開口した板状の部材、多数の棒状〜板状の部材を所定間隔で配した略すのこ状の部材、網状の部材、等の構成を有する。そして、孔やスリット等の開口のサイズ(開口幅)に基づいて塊状体をふるい分けする。
【0004】
振動ふるいスクリーンは、例えば、コークス等の原料(塊状体)をベルトコンベアでふるい部材上に投入する。ふるい部材は、振動し、外径の小さな塊状体が開口を通じて下方に落下してふるい分けされる。
振動ふるいスクリーンは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ふるい部材を、素線により形成された網部材とすることが記載されている。
【0005】
しかしながら、コークスや焼結鉱などの鉱物よりなる塊状体のふるい分けでは、塊状体自体の硬度が高いため、ふるい部材(網部材)が損傷を生じるという問題があった。特に、ふるい部材(網部材)が振動することで、塊状体と繰り返し摺接(素線と衝突)することでふるい部材の素線が切れるという問題があった。素線が切れるとふるい目のサイズが変化(増大)し、所望サイズでのふるい分けができなくなる。
【0006】
このような問題に対して、塊状体が接するふるい部材の上面(載置面)を硬質材料で形成する技術がある。具体的には、金属等からなる基材上に硬化肉盛溶接する技術、基材上にセラミックスを溶射する技術、基材上にアルミナセラミックスを貼り付け固定(ネジ止め)する技術、ジルコニアセラミックスを基材上に貼り付け固定(ネジ止め)する技術、等を例示できる。また、硬質材料(セラミックス)が損傷することを前提として、損傷したセラミックスを取り替え易い構造としたものもある。
【0007】
このようなふるい部材は、特許文献2〜4に記載されている。特許文献2〜4には、複数のグリズリバーが所定間隔でほぼ平行に架け渡されているグリズリ型振動篩が記載されている。グリズリ型振動篩は、隣接するグリズリバー間の間隙から塊状体が落下することで篩い分けを行う装置である。
【0008】
特許文献2には、グリズリバー上面に、所定のボルトでもってセラミックスプレートが接合される振動スクリーンであって、セラミックスプレートのボルト穴に、ボルトの頭が完全に沈み、かつその頭の上方に凹陥部が形成されるような深ざぐりを施して、ボルトを締め付けた際、形成される凹陥部に、セラミックス粒子を用いた耐摩耗剤を充填した振動スクリーンが記載されている。
【0009】
特許文献3には、振動篩の支持枠に取り付けられる支持バーと、支持バーの上面に配設されたエラストマーシートと、エラストマーシートを介して支持バーに支持されたセラミックスバーと、セラミックスバーの上面から下面に向かって挿通され、エラストマーシートを介してセラミックスバーを支持バーに対して留め付けている締結部材と、を具備するグリズリバーが記載されている。
【0010】
特許文献4には、支持板の上部にセラミックバーを取り付けた振動篩のグリズリーバーにおいて、セラミックバーを固着したセラミック受け部材の下部に形成した溝を支持板の上部に形成した突条に係合させて、セラミックバーを固着したセラミック受け部材を支持板に取り付ける構造にしたグリズリーバーが記載されている。
【0011】
これらのうち、アルミナやジルコニアのセラミックス(セラミックスチップ)を貼り付け固定したふるい部材(特にジルコニアセラミックスを用いる態様)は、セラミックスチップが高い耐摩耗性を備えており、ふるい目のサイズ変化が抑えられるという効果を発揮する。
【0012】
しかしながら、セラミックスチップを基材上に固定したふるい部材は、セラミックスチップ及び基材を高い精度で加工する必要があった。具体的には、セラミックスチップを基材上に強固に固定するためにネジ止め固定が採用される。しかし、ネジ止め固定は、セラミックスチップと基材の当接面を互いに一致する形状に高い精度で加工する必要がある。例えば、互いの当接面を平滑面とする加工が必要となっていた。つまり、固定のための成形が両者に必要となり、コストの上昇を招いていた。
また、貼り付け固定をネジ止めで行う場合、そのための加工コストが高くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−279526号公報
【特許文献2】特開平5−57244号公報
【特許文献3】特開2009−285593号公報
【特許文献4】特開2002−219416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような問題に対し、セラミックスチップ(アルミナチップ)と基材をゴムで加硫接着する方法で解決することを提供する。
しかしながら、加硫接着は、接着させる金属(セラミックスチップ)の表面に接着材(ゴムの種類によって分別されたもの)を均一に塗布し、金型で熱と圧力をかけて接着させる接着方法であり、金型サイズ以上の大きさのふるい部材を得られないという問題があった。
【0015】
従来技術では、大型のふるい部材を製造するためには、加硫接着のための金型を、大型のふるい部材に対応した大型のものとする必要があった。大型の金型の使用は、金型自身のコストが上昇する。また、加硫接着においては金型が大きくなるほど本質的に歪みが発生する。このため、大型のふるい部材の金型を作る試みもされなかった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、低コストな大型のふるい部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明者らはふるい部材について検討を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明のふるい部材は、鉱物と金属の少なくとも一方よりなる塊状体をふるい分けする、ふるい目が開口したふるい部材であって、第1の孔が開口した環状の金属板よりなる基板と、基板上に配置され、塊状体が載置する載置面を形成するセラミックスチップと、基板とセラミックスチップの間に介在して接合固定する弾性体よりなる接合材層と、を有するスクリーン部と、複数のスクリーン部を溶接で固定する金属よりなる基部と、を有し、ふるい目は、スクリーン部の第1の孔に連通した状態でふるい部材を貫通する第1貫通孔、及び間隔を隔てた状態で配された複数のスクリーン部の間でふるい部材を貫通する第2貫通孔、により形成され、基部は、第1貫通孔に対応する孔、及び第2貫通孔に対応する孔が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のふるい部材は、塊状体のふるい分けに用いる。塊状体のふるい分けは、複数のスクリーン部の上に塊状体を載置し、振動することで行われる。なお、「スクリーン部の上に塊状体を載置し」とは、塊状体をふるい部材上に配することを含み、ふるい部材上に投入することも含む。そして、ふるい部材が振動すると、塊状体がスクリーン部の上を転がるように相対的に移動(振動により相対的に往復動)する。そして、ふるい目のサイズよりも外径の小さな塊状体は、ふるい部材からふるい目内に落ちる。大径の塊状体は、ふるい部材の上に残る。これにより、塊状体のふるい分けを行うことができる。
【0019】
本発明のふるい部材は、塊状体がスクリーン部のセラミックスチップの載置面上を転がるように相対的に移動する。塊状体は、鉱物と金属の少なくとも一方よりなることから、硬質の材料となっている。つまり、塊状体がスクリーン部のセラミックスチップの載置面上を転がるように相対的に移動すると、硬質の塊状体と相対的に摺動(摺接、振動による衝突を含む)する。この場合でも、載置面がセラミックスチップにより形成されており、高い耐摩耗性を発揮できる。つまり、スクリーン部が高い耐摩耗性を備えることで、スクリーン部及びふるい部材の摩耗等による損傷が抑えられている。
【0020】
そして、本発明のふるい部材は、スクリーン部が、基部に溶接で固定されている。この構成によると、複数のスクリーン部を基部に固定する構成であり、スクリーン部の数を調節することで、所望のサイズのふるい部材となる。つまり、簡単かつ低コストで得られる大型のふるい部材となる。また、スクリーン部材が損傷(摩耗等によるふるい目の損傷)した場合、損傷が生じたスクリーン部材のみを交換可能となり、ふるい部材の使用性が向上する。
【0021】
その上で、本発明のふるい部材は、スクリーン部が弾性体よりなる接合材層を備えている。接合材層を弾性体で形成することで、セラミックスチップに塊状体が当たった衝撃を緩衝することができる。ふるい分けの振動時に、セラミックスチップの破損を抑えることができる。摺動面の損傷が抑えられることで、ふるい部材の耐久性が向上する。
【0022】
また、弾性体よりなる接合材層がスクリーン部と基部とを接合することで、スクリーン部と基部との対向面に特別な加工が必要なくなる。この結果、低コストで得られるスクリーン部となり、本発明のふるい部材は、簡単かつ低コストで得られるふるい部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1のふるい部材を示す斜視図である。
図2】実施形態1のふるい部材の構成を示す断面図である。
図3】実施形態1のふるい部材の構成を示す分解斜視図である。
図4】実施形態1のふるい部材でのふるい分けを示す断面図である。
図5】実施形態2のふるい部材の構成を示す断面図である。
図6】実施形態3のふるい部材の構成を示す上面図である。
図7】実施形態3のふるい部材の構成を示す上面図である。
図8】実施例の試験片の上面図である。
図9】実施例の試験片の構成を示す断面図である。
図10】比較例1の試験片の上面図である。
図11】比較例1の試験片の構成を示す断面図である。
図12】比較例2の試験片の上面図である。
図13】比較例2の試験片の構成を示す断面図である。
図14】耐衝撃試験の試験方法を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態を用いて本発明のふるい部材を具体的に説明する。
【0025】
[実施形態1]
本形態のふるい部材1は、スクリーン部2と、基部3と、を有する。本形態のふるい部材1は、鉱物と金属の少なくとも一方よりなる塊状体4をふるい分けする。ふるい部材1を図1に斜視図で、図1中のA−A線での断面を図2に、分解斜視図を図3に、それぞれ示した。なお、本形態での上面とは、載置面2aを示す。
【0026】
(スクリーン部)
スクリーン部2は、セラミックスチップ20、金属板21、接合材層22を備える。
セラミックスチップ20は、ふるい部材1において塊状体4が載置される載置面2aを形成する。載置面2aは、ふるい部材1が振動すると、塊状体4が当接(摺接、振動により衝突)する。セラミックスチップ20は、塊状体4が載置する載置面2aを形成する表面が平面(平滑面)をなしている。また、セラミックスチップ20は複数が配列し、複数のセラミックスチップ20から形成される載置面2aも、平面(平滑面)をなしている。
【0027】
セラミックスチップ20の配置(配列)は、所望の形状のスクリーン部2を得ることができれば、限定されない。また、セラミックスチップ20自身の形状についても、その形状が限定されるものではない。例えば、方形状(正方形状、長方形状)、多角形状(三角形、六角形)、円形状(楕円、半円形状)等の形状を挙げることができる。すなわち、異なる形状のセラミックスチップ20を組み合わせて配列することができる。本形態では、図1〜3に示したように、方形状(正方形状)の上面をもつ略タイル状のセラミックスチップ20を並べて配列した。
【0028】
本形態のスクリーン部2は、セラミックスチップ20を8×3個の方形状の外周形状に沿って配列している。スクリーン部2は、セラミックスチップ20が存在しない空隙23が形成されている。空隙23は、ふるい部材1のふるい目となる。
【0029】
セラミックスチップ20は、セラミックスであればその具体的な材質が限定されるものではなく、耐摩耗性に優れたセラミックスが用いられる。セラミックスチップ20は、アルミナセラミックス、ジルコニアセラミックスより選ばれるセラミックスが用いられることが好ましい。加工性に優れるとともに安価に得られることから、アルミナセラミックスよりなることがより好ましい。
【0030】
セラミックスチップ20を形成するセラミックスは、耐衝撃性や耐摩耗性が必要とされることから、緻密なセラミックスであることが好ましい。気孔率が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0031】
金属板21は、基板に相当し、スクリーン部2の裏面2bを形成する。金属板21は、セラミックスチップ20が配列した形状と一致する形状をなしている。つまり、中央部に空隙23が形成された環状をなしている。
【0032】
金属板21を形成する材質は限定されるものではないが、鉄系金属であることが好ましい。ここで、鉄系金属とは、鉄、及び鉄を主成分とする合金を示す。鉄を主成分とする合金とは、鉄(Fe)の含有割合が最も大きな合金を示し、好ましくは鉄(Fe)の含有割合が50mass%以上の合金である。鉄を主成分とする合金としては、例えば、鋼を挙げることができる。
金属板21の厚さは、スクリーン部2の形状を保つことができる厚さであれば、限定されるものではない。
【0033】
接合材層22は、金属板21にセラミックスチップ20を接着(固定)する弾性体よりなる。接合材層22を形成する弾性体は、弾性変形可能な材質よりなる。
接合材層22は、接着材を固化(硬化)してなるものとすることができる。接合材層22を形成する接着材は、金属板21にセラミックスチップ20を接着することができる接着材であれば限定されるものではなく、樹脂系接着材や加硫接着の接着材を挙げることができる。加硫接着とは、未加硫ゴムで金属板21にセラミックスチップ20を、ゴムの加硫を行うことによって接着するものである。詳しくは、金属板21の表面に接着材(ゴムの種類によって分別されたもの)を均一に塗布し、セラミックスチップ20を配置し、金型で熱と圧力をかけて接着させる。なお、必要に応じて、セラミックスチップ20にも接着材を塗布する。
【0034】
スクリーン部2において、セラミックスチップ20、接合剤層22、金属板21の厚さの比は、それぞれの硬度や強度,接合材層の接合力,ふるい分けされる塊状体4の種類により適宜決定するものであり、限定されるものではない。例えば、2〜8:1〜4:1〜8とすることができる。
【0035】
(基部)
基部3は、複数のスクリーン部2を、間隔を隔てた状態で溶接により固定する金属よりなる部材である。本形態での基部3は、図3に示したように、複数のスクリーン部2を短辺方向に配列した状態で固定する板状の部材である。また、基部3は、方形状(正方形状)のセラミックスチップ20の一辺の長さと同じ長さの間隔を隔てた状態で固定する。
【0036】
基部3は、スクリーン部2の裏面2bを固定可能な形状を有する。本形態では、図3に示した略はしご状の形状である。基部3の略はしご状の形状は、スクリーン部2を固定したときに、スクリーン部2の空隙23、スクリーン部2,2間のすき間30、に一致する孔が開口する。
【0037】
基部3の略はしご状の形状は、スクリーン部2を固定したときに、金属板21が全面で当接できる形状である。また、基部3とスクリーン部2は、互いに対向する表面が、密着可能な形状をなしており、本形態では両面が互いに平面をなしている。
【0038】
基部3は、スクリーン部2の金属板21を溶接で固定する。基部3と金属板21との溶接は、その方法が限定されない。例えば、アーク溶接、TIG溶接、スポット溶接、レーザー溶接等の熱を加える溶接方法を挙げることができる。また、本形態において、溶接は、ろう接を含む。
基部3と金属板21の溶接は、基部3と金属板21の少なくとも一方にアンダーカット形状を形成しておき、溶融した金属を当該アンダーカットに流入させて溶接する方法を用いてもよい。
【0039】
基部3と金属板21の溶接箇所については、ふるい部材1を振動ふるいとして使用したときに基部3とスクリーン部2とが固定できる位置であれば、溶接箇所の位置(配置)については限定されるものではない。
【0040】
基部3を形成する金属は、その種類が限定されるものではない。溶接による接合性を得られることから、金属板21を形成する金属と同種の金属であることが好ましい。すなわち、鉄系金属であることが好ましい。
基部3は、その外周部に、図示しない接続部が形成される。接続部は、ふるい部材1を振動ふるい装置に接続するための部材である。
【0041】
(その他の構成)
本形態のふるい部材1は、基部3のサイズ、すなわちスクリーン部2が並ぶ数は限定されるものではない。1m以上の長さの大型のふるい部材となっていることが好ましい。
【0042】
[本形態の作用効果]
(ふるい分け方法)
本形態のふるい部材1の動作を説明する。まず、図4に示したように、ふるい部材1の載置面2a上に塊状体4を載置する。塊状体4は、大径〜小径の塊が混合している。なお、図4は、本形態のふるい部材1を、図2と同様に示した図である。
【0043】
そして、載置面2a上に塊状体4が載置した状態で、ふるい部材1を振動(加振)する。ふるい部材1の振動は、基部3の接続部を介して行う。ふるい部材1の振動方向は、任意の方向を選択でき、例えば、空隙23が並ぶ方向(図4での左右方向)で振動する。この振動により、塊状体4が載置面2a上を相対的に移動する。塊状体4が相対的に移動して空隙23の開口の上や、スクリーン部2,2間のすき間30に到達すると、空隙23(すき間30)の開口より小径の塊状体粒子が空隙23を通じて下方に落下する。つまり、大径の塊状体粒子が載置面2a上に残り、塊状体4のふるい分けを行うことができる。
【0044】
(第1の効果)
本形態のふるい部材1は、塊状体4をふるい分けするふるい部材であって、ふるい目として、複数のスクリーン部2,2の間の間隔30、スクリーン部2に開口した孔23、の少なくとも一方を有し、複数のスクリーン部2を溶接で固定している金属よりなる基部3と、金属板21(基板)と、載置面2aを形成するセラミックスチップ20と、金属板21とセラミックスチップ20の間に介在して接合固定する弾性体よりなる接合材層22と、を有するスクリーン部2と、を有する。
【0045】
上記のように、本形態のふるい部材1は、塊状体4をふるい分けするときに、載置面2a上を塊状体4が転がるように摺動する。本形態のふるい部材1は、載置面2aがセラミックスチップ20により形成されている。セラミックスチップ20は、高い耐摩耗性を備えていることから、本形態のふるい部材1は、塊状体4との摺動による損傷が抑えられる。つまり、高い耐久性を発揮できる。
【0046】
また、本形態のふるい部材1は、弾性体よりなる接合材層22が金属板21とセラミックスチップ20とを接合固定する。弾性体よりなる接合材層22は、塊状体4がセラミックスチップ20と衝突したときの衝撃を緩衝する。塊状体4とセラミックスチップ20との衝突は、ふるい部材1を振動したときに塊状体4が載置面2a上を移動して発生する。この衝突は、特に、ふるい部材1のふるい目を区画する端縁部において生じる。接合材層22が衝撃を緩衝することで、セラミックスチップ20が損傷することが抑えられる。つまり、高い耐久性を発揮できる。
【0047】
その上、本形態のふるい部材1は、複数のスクリーン部2を基部3に固定(溶接)して形成される。スクリーン部2を基部3に溶接固定することで、スクリーン部2を基部3に一体に固定でき、塊状体4のように質量の大きな塊のふるい分けを行っても、スクリーン部2が基部3から外れなくなる。
【0048】
また、本形態のふるい部材1は、スクリーン部2を形成した後に基部に固定(溶接)して形成できる。このことは、ふるい部材1の製造において、ふるい部材1の載置面2aを一度に接合材で接合加工する必要がなくなる。つまり、接合加工を行う金型の大型化を防止できる。
以上に詳述したように、本形態のふるい部材1は、簡単にかつ安価に製造することが可能となっている。
【0049】
さらに、本形態のふるい部材1は、スクリーン部2を組み合わせることで、並んだ方向が長い(例えば、1m以上の)大型のふるい部材を形成できる。この構成となることで、大型のふるい部材1であっても、簡単にかつ安価に製造することが可能となっている。特に、本形態のふるい部材1は、複数のスクリーン部2を基部3に固定(溶接)して形成されており、固定するスクリーン部2の数を増やすことで、より大型のふるい部材を得られる。
【0050】
その上、本形態のふるい部材1は、セラミックスチップ20が部分的に損傷を生じても、当該チップを備えたスクリーン部2を交換することで、ふるい部材1の再利用が可能となる。つまり、本形態のふるい部材1は、メンテナンス性にも優れたものとなる。
【0051】
(第2の効果)
本形態のふるい部材1は、接合材層22が、金属板21とセラミックスチップ20を加硫接着するゴムである。この構成となることで、接合材層22が、弾性体よりなるとともに、金属板21とセラミックスチップ20を接合固定することができる。
【0052】
(その他の効果)
本形態において、塊状体4は、鉱物と金属の少なくとも一方よりなる塊状体である。本形態のふるい部材1は、塊状体4と摺動する載置面2aがセラミックスチップ20により形成されている。セラミックスチップ20は、高い耐摩耗性を発揮できることから、塊状体4が鉱物であっても、セラミックスチップ20の損傷が抑えられる。つまり、高い耐久性を発揮できる。
【0053】
本形態のふるい部材1は、基部3が、複数のスクリーン部2の間隔に対応した孔、ふるい目となる孔の少なくとも一方を有する。この構成となることで、スクリーン部2でふるい分けした塊状体4の塊を、ふるい部材1の下方に落とすことができ、連続的にふるい分けを行うことができる。
【0054】
本形態のふるい部材1において、セラミックスチップ20が、アルミナセラミックス、ジルコニアセラミックスより選ばれる。セラミックスチップ20をアルミナセラミックス、ジルコニアセラミックスより選択することで、より高い耐摩耗性を発揮できる。
セラミックスチップ20は、安価であることから、アルミナセラミックスであることがより好ましい。
【0055】
[実施形態2]
本形態は、基部3の形状が異なること以外は、実施形態1と同様な構成である。
上記の形態では、基部3が板状の形状をなしているが、この板状の形状に限定されるものではない。つまり、基部3は、複数のスクリーン部2を固定することができる構成であればよい。
【0056】
本形態の基部3は、図5に示したように、先端にスクリーン部2が固定される、略くし状の形状を有する。具体的には、本形態の基部3は、基部本体部31と、基部本体部31から上方に向かって突出した複数の突出部32と、を有する。
基部本体部31は、突出部32を介してスクリーン部2を固定できる強度(硬度)を備える。本形態の基部本体部31は、板状〜柱状をなす部材である。
突出部32は、基部本体部31に一体に形成されている。そして、基部本体部31から上方に突出する。突出部32の先端面32aは、スクリーン部2を溶接固定する。先端面32aは、スクリーン部2(の金属板21)の裏面2bと略一致する形状を有する。
【0057】
(本形態の効果)
本形態のふるい部材1は、基部3の構成が異なること以外は実施形態1と同様の構成を備えている。つまり、実施形態1と同様な作用効果を有する。
【0058】
[実施形態2の変形形態]
実施形態2では、突出部32の先端面32aがスクリーン部2(の金属板21)の裏面2bと略一致する形状をなすように形成されているが、表面の形状(表面の凹凸形状)が一致する形状であれば、先端面32aの外周形状が異なっていてもよい。すなわち、突出部32の先端面32aは、スクリーン部2(の金属板21)の裏面2bよりも大きな外形を有していても、小さな外形を有していても、いずれでもよい。
【0059】
[実施形態3]
本形態は、スクリーン部2の形状が異なること以外は、実施形態1と同様な構成である。
上記の形態ではスクリーン部2が中央にふるい目となる空隙23を備えた方形状をなしているが、スクリーン部2は、この形状に限定されるものではない。つまり、スクリーン部2は、ふるい部材1を形成したときにふるい目を有する形状であればよい。
【0060】
例えば、図6〜7に上面図で示した形状を挙げることができる。
図6には、方形状(正方形状)の網目が繰り返される網状の形状を示す。
図7には、棒状〜長尺板状の形状を示す。図7に示したように、棒状〜長尺板状のスクリーン部2を、間隔を隔てた状態で両端を基部3に固定する。
【0061】
(本形態の効果)
本形態のふるい部材1は、スクリーン部2の構成が異なること以外は実施形態1と同様の構成を備えている。つまり、実施形態1と同様な作用効果を有する。
詳しくは、図6〜7に例示したいずれの形状であっても、実施形態1と同様な作用効果を有する。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例として、スクリーン部に相当する試験片を作成し、耐衝撃試験でその効果を確認した。
【0063】
(実施例)
本例は、図8に上面図を、B−B線での断面を図9に示した試験片5である。本例の試験片5は、厚さ4.5mmの鉄板51に、20×20×10mmのアルミナチップ50を加硫接着して形成される。鉄板51は、一般構造用圧延鋼材(SS材)よりなり、金属板21(基板)に相当する。アルミナチップ50は、緻密なアルミナセラミックスよりなり、セラミックスチップ20に相当する。加硫接着のゴム52は接合材層22に相当する。加硫接着のゴム52は、6mmの厚さで形成された。
【0064】
(比較例1)
本例は、図10に上面図を、C−C線での断面を図11に示した試験片5である。本例の試験片5は、厚さ4.5mmの鉄板51に、20×20×10mmのアルミナチップ50を樹脂系接着材で接着して形成される。本例の試験片5において、樹脂系接着材(から形成される接着層53)は弾性を備えていない。このため、本例の試験片5は、実質的に鉄板51上にアルミナチップ50を固定した構成を有する。
【0065】
(比較例2)
本例は、図12に上面図を、D−D線での断面を図13に示した試験片5である。本例の試験片5は、厚さ4.5mmの鉄板51に、20×20×10mmの棒状のジルコニアチップ50をネジ止め+樹脂系接着材での接着により固定して形成される。本例の試験片5において、樹脂系接着材は比較例1と同様であり、実質的に鉄板51にジルコニアチップ50をネジ(ボルト54)でネジ止め固定した構成を有する。
【0066】
本例の試験片は、図13に示したように、ジルコニアチップ50と鉄板51とを貫通するボルト54により固定している。また、ジルコニアチップ50は、ボルト54の頭を覆うように、ジルコニアチップ片55が接着材ではめ込み固定されている。
【0067】
[評価]
各例の試験片に対し、耐衝撃試験を施した。
(耐衝撃試験)
耐衝撃試験は、各例の試験片に対し、先を丸めた鉄棒を上方から落とすことを繰り返しし、セラミックスチップが損傷を生じる回数を確認することで行われた。なお、耐衝撃試験は、図8に示したように、セラミックスチップの中央部、セラミックスチップの境界部、のそれぞれに鉄棒を落下させて行った。
【0068】
具体的には、図14にその概略構成を示したように、試験片5の所定の位置にガイド筒61を設置し、ガイド筒61内を所定の高さから鉄棒60を落下することで行った。鉄棒60の質量及び所定の高さを変更して試験を行った。試験結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示したように、アルミナチップを金属板に直接固定した比較例1は、境界部への1回の試験で破損を生じた。これに対し、実施例では、10回で破損が見られ、耐衝撃性が大幅に向上していることが確認できた。
【0071】
一方、実施例と比較例2を比較すると、いずれの条件での耐衝撃試験においても、同等の結果が確認できる。そして、比較例2の試験片は、従来のふるい部材の構成にあたる。すなわち、実施例の試験片によると、従来のふるい部材と同等の耐久性を備えていることが確認できる。なお、境界部への試験から、比較例1の試験片は実施例よりも耐衝撃性が低いことが明らかであるため、中央部への試験は省略した。
実施例のアルミナチップは、比較例2のジルコニアチップと比較して、材料及び加工に要するコストが低い。つまり、実施例の試験片(本発明のふるい部材)は、従来と同等な性能の試験片(ふるい部材)を、低コストで得られる効果を発揮できる。
【0072】
以上に説明したように、実施例の試験片から、低コストで本発明のふるい部材を得られる効果を発揮できる。また、この試験片を組み合わせることで、大型のふるい部材を低コストで得られることが確認できる。
【符号の説明】
【0073】
1:ふるい部材
2:スクリーン部 20:セラミックスチップ
21:金属板 22:接合材層
3:基部
4:塊状体
5:試験片
60:鉄棒 61:ガイド筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14