特許第6541621号(P6541621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541621
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】筒状編地の編成方法、および筒状編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/24 20060101AFI20190628BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   D04B1/24
   D04B1/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-112978(P2016-112978)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-218687(P2017-218687A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一良
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−040413(JP,A)
【文献】 特開2013−053380(JP,A)
【文献】 特開2016−060990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00〜 1/28
21/00〜21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後に対向する一側針床と他側針床を備える横編機を用いて筒状編地を編成する途中に、往路編成と復路編成とで構成される折り返し編成を繰り返し、前記筒状編地の一部に折り返し端の周縁が傾斜する傾斜縁部を形成する筒状編地の編成方法において、
前記往路編成の終端編目の折り返し端側に隣接する既存編目に割増やしを行なって、前記既存編目を対向する編針に移動させると共に、前記既存編目が係止されていた編針に新規編目を編成する工程Aと、
前記工程Aの前記既存編目を割増やし目と規定する、または前記既存編目のウエール方向に続く連続編目を編成し、その連続編目を割増やし目と規定し、前記終端編目と前記新規編目との間に前記割増やし目を移動させる工程Bと、を行い、
前記割増やし目を前記工程Aの前記既存編目と見做す、または前記割増やし目のウエール方向に続く連続編目を編成し、その連続編目を前記工程Aの前記既存編目と見做し、前記工程Aと同様の編成を行う工程Cを1回以上行った後、前記復路編成を行う筒状編地の編成方法。
但し、前記工程Cを複数回行う場合、各工程Cを行なう前にも前記工程Bを行う。
【請求項2】
複数の前記折り返し編成を繰り返す際、一部の前記折り返し編成における前記工程Cの回数を変化させる請求項1に記載の筒状編地の編成方法。
【請求項3】
前記工程Bにおける前記割増やし目の移動時または移動後に、前記一側針床に係止される編目列の編幅方向の外端部と、前記他側針床に係止される編目列の編幅方向の外端部と、の編幅の差を3目以内にする請求項1または請求項2に記載の筒状編地の編成方法。
【請求項4】
往路編目列と復路編目列の折り返し端の周縁が傾斜することで形成される傾斜縁部を備える筒状編地において、
前記傾斜縁部の少なくとも一部が、前記往路編目列の終端編目と前記復路編目列の始端編目との間に形成される複数の増し目によって構成され、
前記増し目は、割増やしによって編成された筒状編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機を用いた筒状編地の編成方法、およびその筒状編地の編成方法によって編成された筒状編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機を用いた往路編成と復路編成とを備える折り返し編成によって、筒状編地に傾斜縁部を形成することが行われている。例えば、特許文献1には、折り返し編成の一種である引き返し編成を用いて、ニットウェア(筒状編地)の衿ぐりの一部を構成する傾斜縁部を編成する技術が開示されている。なお、編成の分野では、折り返し編成のうち、折り返し端でタック編成などを行いながら徐々に編幅を減らす編成を、特に引き返し編成と呼んでいる。
【0003】
特許文献1の発明では、まず針床に係止されるニットウェアの左前身頃(右前身頃)をニットウェアの中央から遠ざかる方向に移動させている。次いで、引き返し編成を行う際、左前身頃(右前身頃)の移動により空針となった編針に増し目を形成する。そして、上述した左前身頃(右前身頃)の移動と、引き返し編成とを繰り返す。この一連の編成を行うことにより、衿ぐりの傾斜縁部に並ぶ増し目が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/084556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニットウェアの着用感や見栄えの向上のため、更に編幅方向に対する傾斜縁部の角度を大きくしたいというニーズがある。しかし、従来の引き返し編成では、往路編成によって編成された往路編目列の終端編目と、復路編成によって編成された復路編目列の始端編目と、の間に編成される増し目が一つしかない。そのため、U字型やV字型の衿ぐりの一部を構成する傾斜縁部の角度を大きくすると、衿ぐりの周長に比して衿ぐりに並ぶ編目の数が不足し、傾斜縁部の近傍に孔が空いたり、筒状編地が突っ張ったりするなどの問題が生じる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、往路編目列と復路編目列の間に複数の増し目を編成することができる筒状編地の編成方法を提供することにある。また、本発明の目的の一つは、往路編目列と復路編目列の間に複数の増し目によって構成される傾斜縁部を備える筒状編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の筒状編地の編成方法は、少なくとも前後に対向する一側針床と他側針床を備える横編機を用いて筒状編地を編成する途中に、往路編成と復路編成とで構成される折り返し編成を繰り返し、前記筒状編地の一部に折り返し端の周縁が傾斜する傾斜縁部を形成する筒状編地の編成方法であって、下記工程Aと工程Bを行い、工程Cを1回以上行なった後、前記復路編成を行なう。
[工程A]…前記往路編成の終端編目の折り返し端側に隣接する既存編目に割増やしを行なって、前記既存編目を対向する編針に移動させると共に、前記既存編目が係止されていた編針に新規編目を編成する。
[工程B]…前記工程Aの前記既存編目を割増やし目と規定する、または前記既存編目のウエール方向に続く連続編目を編成し、その連続編目を割増やし目と規定し、前記終端編目と前記新規編目との間に前記割増やし目を移動させる。
[工程C]…前記割増やし目を前記工程Aの前記既存編目と見做す、または前記割増やし目のウエール方向に続く連続編目を編成し、その連続編目を前記工程Aの前記既存編目と見做し、前記工程Aと同様の編成を行う。
但し、前記工程Cを複数回行う場合、各工程Cを行なう前にも前記工程Bを行う。
【0008】
ここで、割増やしとは、針床Xの編針XXに係止される既存編目Pを、針床Xに対向する針床Yの編針YYに移動させると共に、既存編目Pから引き出された新規編目Qを編針XXに編成する公知の編成技術のことである。
【0009】
本発明の筒状編地の編成方法の一形態として、複数の前記折り返し編成を繰り返す際、一部の前記折り返し編成における前記工程Cの回数を変化させる形態を挙げることができる。例えば、傾斜縁部の角度が小さい部分では、工程Cの回数を1回とし、傾斜縁部の角度が大きい部分では、工程Cの回数を2回以上とする形態を挙げることができる。工程Cの回数は6回以下とすることが好ましい。
【0010】
本発明の筒状編地の編成方法の一形態として、前記工程Bにおける前記割増やしの移動時または移動後に、前記一側針床に係止される編目列の編幅方向の外端部と、前記他側針床に係止される編目列の編幅方向の外端部と、の編幅の差を3目以内にする形態を挙げることができる。ここで、編幅方向の外端部とは、往路編成と復路編成の折り返し端側とは反対側の端部のことである。
【0011】
本発明の筒状編地は、往路編目列と復路編目列の折り返し端の周縁が傾斜することで形成される傾斜縁部を備える筒状編地であって、前記傾斜縁部の少なくとも一部が、前記往路編目列の終端編目と前記復路編目列の始端編目との間に形成される複数の増し目によって構成され、前記増し目は、割増やしによって編成された筒状編地である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筒状編地の編成方法では、往路編成の終了から復路編成を開始するまでの間に複数回の割増やしを行なっている。その結果、往路編成によって編成される往路編目列の終端編目と、復路編成によって編成される復路編目列の始端編との間に複数の増し目が形成された本発明の筒状編地を編成することができる。これら複数の増し目によって、往路編目列と復路編目列の折り返し端側に傾斜縁部の少なくとも一部が形成される。ここで、本発明の筒状編地の編成方法で編成したどの編目が、筒状編地の増し目となるかについては、実施形態にて説明を行なう。
【0013】
上記本発明の筒状編地では、往路編目列の終端編目と復路編目列の始端編目との間に、傾斜縁部となる複数の増し目が形成されているため、傾斜縁部に並ぶ増し目が不足するといった問題を回避することができる。その結果、筒状編地の傾斜縁部の近傍に孔が空いたり、筒状編地が突っ張ったりするといった不具合を回避することができる。
【0014】
一部の折り返し編成の工程Cの繰り返し数を変化させることで、傾斜縁部の角度に対応した最適な数の増し目を形成できる。例えば、U字型の衿ぐりを形成する際に、衿ぐりの傾斜縁部の角度を徐々に変化させる場合、傾斜縁部の角度が大きい部分で工程Cの回数を多くすることで、傾斜縁部に並ぶ増し目の数が不足することを回避できる。
【0015】
折り返し編成を繰り返すにあたり、一側針床と他側針床に係止される編目列の外端部の差を小さくすることで、両編目列を繋ぐ渡り糸に過剰な張力が作用することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】傾斜縁部を含む衿ぐりを有するセーターの概略構成図である。
図2】傾斜縁部の編成手順を模式的に示す編成イメージ図である。
図3】実施形態1の傾斜縁部の編成に係る編成工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本実施形態1では、本発明の筒状編地の編成方法を用いて、身頃と袖を有するセーター(筒状編地)の衿ぐりの一部に傾斜縁部を形成する例を説明する。
【0018】
図1に示すセーター100(筒状編地)は、身頃50と、セットインタイプの袖(左袖61・右袖62)と、を有する。身頃50は便宜上、編地の中央を境界として左前身頃51と右前身頃52と後身頃53とに分けることができる。その身頃50には、前身頃側が概略U字状になった衿ぐり70が形成されており、その衿ぐり70には筒状の衿80が設けられている。この衿ぐり70によって、左前身頃51と右前身頃52とが離隔された離隔部50dが形成される。横編機を用いてこのセーター100を編成するには、脇部に至るまで身頃50と袖61,62を編成し、さらに衿ぐり70の下端部73の位置まで、身頃50と袖61,62を編成しながら、袖61,62を身頃50に接合する。次いで、袖61,62の編成と減らしとを行いながら身頃50と衿ぐり70の輪郭を形成する。そして、衿ぐり70を構成する編目に連続して周回編成により衿80を編成する。
【0019】
上記セーター100の衿ぐり70には、その下端部73から斜め上方(即ち、セーター100の編幅方向とウエール方向の両方に交差する方向)に延びる傾斜縁部71,72が形成されている。本例では、この傾斜縁部71,72の形成に本発明の筒状編地の編成方法を用いる。
【0020】
セーター100の左前身頃51に形成される傾斜縁部71近傍の編目の状態を図2のイメージ図に基づいて説明する。図中の四角形の枠は編目を、V字は増し目を示しており、左右方向の太線矢印は折り返し編成の往路編成1と復路編成2の方向を示している。往路編成1から復路編成2に移行する側(紙面左側)が折り返し端側である。
【0021】
図2に示すように、傾斜縁部71の角度は、往路編成1と復路編成2とで構成される折り返し編成の折り返し位置を徐々に折り返し端から離れる側(右側)にズラすことで調整される。往路編成1によって編成される往路編目列10の終端編目11の位置と、復路編成2によって編成される復路編目列20の始端編目21の位置は、図2とは異なり、編幅方向の折り返し端側と反対側(紙面右側)にズレていても良い。復路編目列20の始端編目21の位置を右側にズラすことで、傾斜縁部71の角度を小さくすることができる。
【0022】
本例のセーター100では、往路編目列10の終端編目11と、復路編目列20の始端編目21との間に2つの増し目5が形成されている。これらの増し目5は、後述する筒状編地の編成方法に示すように、割増やしを利用することで編成される編目である。これらの増し目5はいずれも、終端編目11と始端編目21とを繋ぐ編糸で構成されている。
【0023】
図2に示すように、本例のセーター100では、左前身頃51(右前身頃52)が2段分編成されるごとに、傾斜縁部71(72)の構成する2つの増し目5が編成されている。つまり、一段の編目列ごとに1つの増し目5が形成されている。そのため、傾斜縁部71,72の編目が不足して衿ぐり70(衿80)が小さく縮まったり、左前身頃51(右前身頃52)と衿ぐり70との間に皺や孔が生じることを回避することができる。その結果、傾斜角度が大きい傾斜縁部71,72を有する深い衿ぐり70を形成することができる。
【0024】
次に、傾斜縁部71の具体的な編成工程を図3に基づいて説明する。図3では、セーター100の左半分の編成のみを説明する。図中の「S+数字」は編成工程の番号を、FDは下部前針床(一側針床)を、FUは上部前針床(一側針床)を、BDは下部後針床(他側針床)を、BUは上部後針床(他側針床)を示す。BD,BUは、FD,FUに対して左右にラッキング可能で、前後の針床間で編目の目移しが可能である。各編成工程で編成動作に関わる部分は太線で示すと共に、当該工程で新たに編成された編目は塗り潰して示す。図中の上下方向の矢印は編目の移動方向を、丸囲み数字を付した左右方向の矢印は往路編成1と復路編成2の編成方向を示す。
【0025】
図3のS0に示すように、FDには左前身頃51と左袖61の前側部分が、BDには後身頃53と左袖61の後側部分が係止されている(破線の右側が左袖61)。この状態から本発明の筒状編地の編成方法を用いて傾斜縁部71を編成する。
【0026】
S1では、給糸口9を左方向に移動させ、往路編成1を行うと共に、往路編成1の終端編目11の折り返し端側に隣接する既存編目3に割増やしを行う(工程A相当)。往路編成1によって編成された往路編目列10は、左前身頃51と左袖61の一部となる。また、上記割増やしによって、S0でFDの編針に係止されていた既存編目3がFDに対向するBUの編針に移動されると共に、S0で既存編目3が係止されていたFDの編針に、既存編目3から引き出された新規編目12が編成される。
【0027】
ここで、図示する往路編目列10は天竺組織であるが、リブ組織とすることもできる。その場合、S0の左前身頃51の編目の一部をBUに移動させてから往路編成1を行なえば良い。
【0028】
S2では、給糸口9を右方向に移動させ、既存編目3のウエール方向に連続する連続編目14を編成する。実施形態では、この連続編目14を割増やし目13と規定する。ここで、連続編目14を編成せずに次に示すS3を行なっても構わない。その場合、既存編目3を割増やし目13と規定し、以降の編成を行なう。
【0029】
S3では、往路編目列10のうち、終端編目11を含む一部の編目列をFDからBUに移動させる。このS3の操作は、終端編目11と新規編目12の間に割増やし目13を挿入する準備である。
【0030】
S4では、割増やし目13と、S3でBUに移動させた編目列とを、FDの右方向(折り返し端から離れる方向)に1目分ズレた位置に移動させる(工程B相当)。このS4により、終端編目11と新規編目12との間に割増やし目13が移動される。また、S4により、左前身頃51の編目と左袖61の編目とが重ねられた重ね目15が形成される。重ね目15を形成して左袖61の編幅を減らすことで、終端編目11と新規編目12との間に割増やし目13を挿入しても、FDに係止される編目列の編幅とBDに係止される編目列の編幅とを揃えることができる。なお、重ね目15により左前身頃51の編幅は小さくならない。
【0031】
ここで、1回の折り返し編成を行なう度に左前身頃51の編目と左袖61の編目とが接合されるわけではない。そのため、編目11,12間への割増やし目13の挿入に伴い、FDに係止される編目列の編幅方向の外端(右側の端部)と、BDに係止される編目列の編幅方向の外端と、の差が大きくなり、両編目列を繋ぐ編糸が切れる恐れがある。そこで、両編目列の外端の差が大きくなる前に、当該差を3目以内にすることが好ましい。例えば、FDに係止される編目列の編幅を減らしたり、FDに係止される編目列の外端の編目を、BDに係止される編目列の外端の編目のさらに外側に回し込んだりすると良い。
【0032】
S5では、S4の割増やし目13を新たな既存編目3と規定し、給糸口9を右方向に移動させて、既存編目3に割増やしを行なう(工程Cに相当)。割増やしによって、BUに既存編目3(S2で編成された割増やし目13)がBUに移動され、割増やしを行なう前に既存編目3が係止されていたFDの編針に新規編目12が編成される。
【0033】
S6では、給糸口9を左方向に移動させ、既存編目3のウエール方向に連続する連続編目14を編成する。実施形態では、この連続編目14を割増やし目13と規定する。ここで、連続編目14を編成せずに次に示すS7を行なっても構わない。その場合、既存編目3を割増やし目13と規定し、以降の編成を行なう。
【0034】
S7では、給糸口9を右方向に移動させ、往路編目列10の終端編目11の位置を始端とする復路編成2を行なう。復路編成2の始端編目21は、終端編目11のウエール方向に連続して編成される。始端編目21の位置は、終端編目11よりも右側(折り返し端から離れる側)であっても構わない。
【0035】
上述した編成工程では、S5で編成した新規編目12と、S6で編成した割増やし目13が、図2に示す終端編目11と始端編目21の間に形成される増し目5となる。
【0036】
S7の後は、S7の新規編目12(増し目5)と始端編目21との間に割増やし目13を移動させ、後身頃53と、図1の右前身頃52側の傾斜縁部72を編成する。傾斜縁部72の編成は、図3を左右反転させた編成を行なえば良い。
【0037】
ここで、S6の後に、終端編目11と新規編目12の間に割増やし目13を移動させてから、S7に示す復路編成2を行なうこともできる。
【0038】
<実施形態2>
図2に示す往路編目列10の終端編目11と復路編目列20の始端編目21との間に3つ以上の増し目5を編成することもできる。実施形態2の編成は、実施形態1の編成と組み合わせて使用することもできる。実施形態2では、3つの増し目5を編成する手順を、図3を利用して説明する。
【0039】
図2の二つ目の増し目5を編成するまでは図3のS1〜S6と同様に行なうことができる。S6の後は、S3,S4と同様の編成、即ちS6における終端編目11と新規編目12との間に割増やし目13を移動させる編成を行なう(2回目の工程B)。
【0040】
次いで、割増やし目13を新たな既存編目3と規定し、S5,S6と同様の編成、即ち既存編目3に対する割増やしと、連続編目14の編成を行なう(2回目の工程C)。最後に、連続編目14を割増やし目13と規定し、終端編目11と新規編目12の間に割増やし目13を移動させてから、復路編成2を行なう。割増やし目13は、3つ目の増し目となる。ここで、割増やし目13の移動は、復路編成2の後に行なっても良い。その場合、割増やし目13は、新規編目12と、復路編成2の始端編目21との間に移動させる。
【0041】
また、4つ以上の増し目を編成する場合、上述した考え方と同様の考え方に基づいて4つ目の増し目を編成することができる。つまり、回目の工程Cの後に3回目の工程Bを行ってから、回目の工程Cを行う。
【0042】
<実施形態3>
往路編成1と復路編成2との間に2つの増し目を形成する実施形態1の編成と、往路編成1と復路編成2との間に3つ以上の増し目を形成する実施形態2の編成に加えて、往路編成1と復路編成2との間に1つの増し目を編成する従来の折り返し編成を組み合わせることもできる。これらの編成を組み合わせることで、傾斜縁部の角度や周長、身頃の組織に応じた最適な数の増し目を傾斜縁部に形成することができる。例えば、身頃をリブ組織などで編成しても、リブ組織の収縮に応じた最適な数の増し目を傾斜縁部に形成すれば、傾斜縁部の近傍に孔が空くといった不具合をなくすことができる。
【0043】
<その他>
実施形態1〜3では4枚ベッド横編機を用いた傾斜縁部の編成を説明した。これに対して、2枚ベッド横編機を用いて傾斜縁部を編成することもできる。その場合、隣接する編目の間に空針が設けられた針抜き状態で編成を行う。
【0044】
以上説明した実施形態では、衿ぐりに傾斜縁部を形成したが、傾斜縁部の形成位置は衿ぐりの位置に限定されるわけではない。例えば、ノースリーブのアームホールに傾斜縁部を形成することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 往路編成 10 往路編目列 11 終端編目
2 復路編成 20 復路編目列 21 始端編目
3 既存編目
12 新規編目 13 割増やし目 14 連続編目 15 重ね目
5 増し目
100 セーター(筒状編地)
50 身頃 51 左前身頃 52 右前身頃 53 後身頃
50d 離隔部
61 左袖 62 右袖
70 衿ぐり 71,72 傾斜縁部 73 下端部
80 衿
図1
図2
図3