特許第6541661号(P6541661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6541661固体発電装置および当該固体発電装置を具備する原子力発電施設
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541661
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】固体発電装置および当該固体発電装置を具備する原子力発電施設
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/02 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   G21D1/02 Z
【請求項の数】16
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-539228(P2016-539228)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2017-503163(P2017-503163A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014066734
(87)【国際公開番号】WO2015112251
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年10月23日
(31)【優先権主張番号】14/159,653
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05084909(US,A)
【文献】 米国特許第03591860(US,A)
【文献】 米国特許第05721462(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0083879(US,A1)
【文献】 米国特許第05672928(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 1/02
G21D 1/00
G21D 3/04
G21D 3/06
G21C 9/00
G21C 19/00
G21H 1/04
G21H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部と後部とを有し、当該前部と当該後部との間に絶縁体シールガスケットプレートが配設され、当該前部の前面がコレクタを形成する導電性ハウジング(12)と、
当該導電性ハウジング(12)の当該前部内に支持された、ガンマ線・電子放出体に実質的に張り付けられたガンマ線放出体から成る放射線応答物質(20)であって、原子力発電施設内の原子炉(34)の外部ではあるが、照射済原子燃料棒(38)の近くでのバックグラウンド放射線(30)に応答して電力を発生し、当該近さは当該原子力発電施設内の非常用機器を作動させるか、当該非常用機器を作動させるバッテリーを実質的に完全に充電するに十分な電力を発生させるほどの近さである、放射線応答物質(20)と、
当該放射線応答物質(20)と当該絶縁体シールガスケットプレートとの間、及び当該放射線応答物質と当該導電性ハウジング(12)の当該前部との間に配設された電気絶縁物質(26)と、
当該放射応答物質(20)に接続され、当該非常用機器又は当該バッテリーに当該十分な電力を運ぶように構成されたリード部と
から成る固体発電装置(10)。
【請求項2】
前記バックグラウンド放射線(30)の照射場内で、前記放射線応答物質(20)の電気出力所与の時間にわたって増加する、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項3】
前記放射線応答物質(20)が前記バックグラウンド放射線(30)に晒されることによって増殖するように構成されている、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項4】
前記放射線応答物質(20)が、バックグラウンド放射線(30)の場に置かれるまでは非放射性である、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項5】
前記導電性ハウジング(12)が、十分に薄いため、前記原子炉を内部に支持する原子炉キャビティ(36)の壁と前記原子炉の炉心収納する圧力容器外側との間の空間内に収まることを特徴とする、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項6】
前記放射線応答物質(20)が、タングステンにCo−59を張り付けたものである、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項7】
前記導電性ハウジング(12)および前記放射線応答物質(20)は柔軟性がある、請求項1の固体発電装置(10)。
【請求項8】
前部と後部とを有し、当該前部と当該後部との間に絶縁体シールガスケットプレートが配設され、当該前部の前面がコレクタを形成する導電性ハウジング(12)と、
当該導電性ハウジング(12)の当該前部内に支持された、ガンマ線・電子放出体に実質的に張り付けられたガンマ線放出体から成る放射線応答物質(20)であって、原子力発電施設内の原子炉(34)の外部ではあるが、照射済原子燃料棒(38)の近くでのバックグラウンド放射線(30)に応答して電力を発生し、当該近さは当該原子力発電施設内の非常用機器を作動させるか、当該非常用機器を作動させるバッテリーを実質的に完全に充電するに十分な電力を発生させるほどの近さである、放射線応答物質(20)と、
当該放射線応答物質(20)と当該絶縁体シールガスケットプレートとの間、及び当該放射線応答物質と当該導電性ハウジング(12)の当該前部との間に配設された電気絶縁物質(26)と、
当該放射応答物質(20)に接続され、当該非常用機器又は当該バッテリーに当該十分な電力を運ぶように構成されたリード部と
から成る固体発電装置(10)を具備する原子力発電施設。
【請求項9】
前記バックグラウンド放射線(30)の照射場内で、前記放射線応答物質(20)の電気出力所与の時間にわたって増加する、請求項の原子力発電施設。
【請求項10】
前記放射線応答物質(20)が前記バックグラウンド放射線(30)に晒されることによって増殖するように構成されている、請求項の原子力発電施設。
【請求項11】
前記放射線応答物質(20)が、バックグラウンド放射線(30)場に置かれるまでは非放射性である、請求項の原子力発電施設。
【請求項12】
前記導電性ハウジング(12)が、十分に薄いため、前記原子炉を内部に支持する原子炉キャビティ(36)の壁と前記原子炉の炉心収納する圧力容器外側との間の空間内に収まることを特徴とする、請求項の原子力発電施設。
【請求項13】
前記放射線応答物質(20)が、タングステンにCo−59を張り付けたものである、請求項10の原子力発電施設。
【請求項14】
前記導電性ハウジング(12)および前記放射線応答物質(20)は柔軟性がある、請求項の原子力発電施設。
【請求項15】
原子炉圧力容器を具備し、壁が当該原子炉圧力容器の少なくとも下部を取り囲む原子炉キャビティ(36)内に当該原子炉圧力容器が支持されている請求項の原子力発電施設であって、
前記導電性ハウジング(12)は当該原子炉キャビティ内の当該原子炉圧力容器と当該壁との間に少なくとも部分的に支持されていることを特徴とする原子力発電施設。
【請求項16】
壁が使用済燃料(44)を取り囲む使用済燃料プール(42)を含み、当該使用済燃料プール内で当該使用済燃料に隣接して前記導電性ハウジング(12)が支持されていることを特徴とする、請求項の原子力発電施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して発電装置に関し、詳細には、比較的低い放射線環境に応答して発電する固体アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の福島第一原子力発電所の事故は、長期間の電源喪失に続いて原子炉炉心および使用済燃料プールの冷却システムに起こるであろう事態に対する懸念を深めた。津波により、サイト外電源が失われ、全電源喪失の期間が生じた。電源喪失により、原子炉および使用済燃料プールの冷却システムが停止した。冠水していた高放射性使用済燃料集合体によって加熱されたプールの温度上昇により、一部の使用済燃料プールの水が気化・蒸発して放散した。補給水を原子炉およびプールへ圧送するための電力が長期間にわたって失われると、燃料集合体が露出し、理論上燃料棒の温度が上昇して、燃料棒の被覆が破損し、環境への放射能漏れが起こるおそれがある。福島第一発電所では、破壊的な津波の後に機器およびセンサ用電源の完全な喪失を経験し、その結果、燃料集合体の冷却の維持に必要な弁機能を制御できなくなった。本発明の目的は、炉心冷却および監視システムが全交流電源喪失時に要求される重要な機能を引き続き遂行できるようにする原子力発電所のバッテリーの能力を大幅に拡充するために必要な電流を受動的に供給可能な装置の提供にある。
【発明の概要】
【0003】
上記および他の目的は、導電性ハウジング内に放射線応答物質が支持された固体発電装置によって達成される。この放射線応答物質は、原子力発電施設内の原子炉の外部ではあるが原子燃料棒の近傍のバックグラウンド放射線に応答して、施設内の非常用機器を作動させるか、かかる非常用機器を作動させるバッテリーを実質的に完全に充電するに十分な電力を発生させる。放射線応答物質とハウジングとの間に、絶縁体が配設されている。一実施態様において、放射線応答物質の電気出力は、バックグラウンド放射線場において所与の時間にわたって上昇する。最初の所与の回数の原子炉運転サイクルの後、たとえ原子炉が運転停止していても、放射線応答物質は、非常用機器を作動させるか、かかる非常用機器を作動させるバッテリーを実質的に完全に充電するに十分な電力を発生させる。
【0004】
放射線応答物質は、バックグラウンド放射線場に置かれるまでは非放射性であるのが好ましい。また、導電性ハウジングを十分に薄くすることにより、原子炉を内部に支持する原子炉キャビティの壁と原子炉の炉心を収納する圧力容器の外側との間の空間内に収めることができる。
【0005】
一実施態様において、放射線応答物質は、ガンマ線・電子放出体に実質的に張り付けられたガンマ線放出体である。そのような実施態様の1つにおいて、放射線応答物質は、Co−59とタングステンとを組み合わせたものである。導電性ハウジングと放射線応答物質は、柔軟性があるのが好ましい。
【0006】
さらに別の実施態様において、ハウジングの背面とガンマ線放出体との間に支持された電気絶縁性シールガスケットが、ハウジングの背面を、コレクタを形成するハウジングの前面から電気絶縁する。本発明はまた、かかる固体発電装置を具備する原子力発電施設も企図している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0008】
図1】本発明の原理を用いた例示的な好ましい実施態様の概略側面図である。
【0009】
図2図1に示す実施態様の正面図である。
【0010】
図3】本発明の電流発生機構の概略図である。
【0011】
図4】原子炉キャビティの断面図であり、原子炉キャビティの側壁と原子炉圧力容器との間において、原子炉キャビティの側壁に支持され、原子炉圧力容器の周りの少なくとも一部を延びる本発明の発電装置を示す。
【0012】
図5図4に示す原子炉キャビティの一部の断面図である。
【0013】
図6】使用済燃料プールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2はそれぞれ、本発明の原理を用いた例示的な好ましい実施態様の概略的な側面図および正面図である。図1および図2に示す電流発生器は、外部ハウジング12を有する固体装置であり、絶縁体シールガスケットベースプレート18が導電性の前端部14を後端部16から封止している。放射線応答物質20が、ハウジングの前端部14と絶縁体シールガスケットベースプレート18との間に配設されており、Alなどの絶縁体26が当該放射線応答物質20と当該ハウジングの前部14との間に、さらには当該放射線応答物質20と当該絶縁体シールガスケットベースプレート18との間において、当該放射線応答物質20の両側に配設されている。絶縁体シールガスケットベースプレート18は、外部ガンマ線源(例えば原子炉容器)に最も近い面から装置内に「押し込まれる」電子が、内部のガンマ線放出体が発生する電子を相殺することがないようにする。
【0015】
本実施態様の放射線応答物質20は、例えばCo−59のようなガンマ線放出性物質がタングステンのようなガンマ線・電子放出体に実質的に張り付けられたものであり、リード部28が電流を供給される利用装置と電流発生器10との間で電子を導通させるエミッタを形成する。ハウジングの前端部14がコレクタを形成する。「ガンマ線放出体」という用語は、入射放射線に伴い内部で中性子またはガンマ線が崩壊するか捕獲されるとそれに応答してガンマ線を放出する物質の意味で使用する。同様に、「ガンマ線・電子放出体」という用語は、内部でガンマ線または中性子が崩壊するか捕獲されるとそれに応答して電子を放出する物質の意味で使用する。
【0016】
図3は、本発明の例示的な実施態様における電流発生機構の概略図である。装置10が中性子および/またはガンマ線源30から照射を受けると、放射線の一部が放射線応答物質内で崩壊して捕獲され、当該放射線応答物質から放出された電子がアルミニウム製ハウジングの前端部14に捕集され、エミッタ28からコレクタ14へ電流32が流れる。
【0017】
ガンマ線放出体(例えばCo−60)の表面積と厚さ、およびそれに対応するガンマ線・電子放出体(例えばタングステン)の表面積および望ましい厚さを当業者が調節することにより、予想される中性子およびガンマ線の照射場内で所望の電流を発生させることができる。当業者であれば、放出体20と外側のコレクタ14との間の絶縁体26の厚さも最適化して、装置の予想される動作温度範囲内でこの2つの領域間で短絡を起こすことなく最大電流を発生させることができる。
【0018】
図3に示すように、この装置における電流の一次供給源は時間の関数であり、I(t)で表される。装置のCo−59プレート22に隣接するタングステンプレート24内では、Co−59プレート内のCo−59と中性子との相互作用によって生まれるCo−60から発生するガンマ線によって、コンプトンおよび光電効果による散乱電子が発生する。この電流発生機構に加えて、中性子がタングステンなどの物質によって捕獲されると放出される中性子捕獲即発ガンマ線もまた、放出体20とコレクタ14との間隙を越えるに十分なエネルギーを有するコンプトンおよび光電効果による散乱電子を発生させる。この装置の表面積は、非常に大きくすることができる。この装置はまた、非常に薄く、柔軟にすることもできる。
【0019】
図4は、一つの応用例を示す。原子炉キャビティ36内に支持された原子炉容器34は、原子燃料集合体を収納する炉心38を包み込む。炉心38の全高にわたって原子炉容器34の周囲に延びるキャビティ壁40が、炉心38の全高の少なくとも一部にわたって本発明の装置10を支持する。したがって、この装置は原子炉容器キャビティの裏打ちに使用でき、原子炉容器34から漏出する活用されなかった中性子およびガンマ線を利用して貴重な電流を発生させることができる。図5は、原子炉キャビティの平断面図であり、キャビティ壁40の少なくとも一部が本装置10を取り巻いている。
【0020】
図6は、使用済燃料集合体44のラックが冷却材46中に懸架された使用済燃料プール42への本装置の考えられる別の応用例を示す。装置10は、冷却材46の水位より低い位置50で支持するか、あるいは、冷却材水位より高い位置48でプール壁に懸架することができる。電力供給の対象となる機器の要件を満たすために、必要に応じて使用済燃料プール42の周囲に多数の装置10を展開させ、直列または並列に接続することができる。装置10は、例えば、プールから蒸発した冷却材46を補充する目的で弁52に電力を供給するために、あるいは、冷却材46から熱を除去する目的で再循環システム54に電力を供給するために使用することができる。
【0021】
本発明の作動原理は、コバルトおよびタングステン以外の物質を使用して実現することもできる。この設計の重要な特徴は、比較的低い中性子およびガンマ線照射場に置かれると電力を発生可能であり、本質的に増殖する物質を使用することにより、たとえ原子炉または他の中性子およびガンマ線源が停止した場合でも、重要な計装および安全設備に給電するバッテリーに本装置が十分な電力を供給できるよう発電能力が増強されることである。本装置は、当初は非放射性であることが好ましい。
【0022】
ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCが提供するAP1000型原子炉システムに12フィート×12フィート×0.5インチの本装置を容器外に設置した場合に発生すると推定される電流は、容器キャビティ内の中性子束およびガンマ線量の公称値、Co−60生成率、タングステン中の中性子捕獲ガンマ線生成率、およびタングステン(Mirion IST)について入手可能な電流発生感度から求めることができる。この簡単な計算の結果、本装置は、1回の運転サイクルを終えて原子炉が運転停止した後、少なくとも3アンペアの定常電流を出力できることが示された。この値は、ガンマ線放出体およびガンマ線・電子放出体の厚さを最適化することによって容易に10倍に増やすことができる。電流値は、有意な量のCo−59がCo−60に変換されるまで、時間と共に線形的に増加する。2回の運転サイクルの後は、電流出力は2倍になる。
【0023】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6