(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541676
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】多−層吸収材
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20190628BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20190628BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/025
【請求項の数】35
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-554172(P2016-554172)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2017-501590(P2017-501590A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2013073993
(87)【国際公開番号】WO2015073049
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】14/079,119
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516142034
【氏名又は名称】アーク・テクノロジーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARC Technologies,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デユラント,トツド
(72)【発明者】
【氏名】ボルダク,ノエル
【審査官】
梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−502978(JP,A)
【文献】
特開平09−162590(JP,A)
【文献】
特開2008−135485(JP,A)
【文献】
特開2005−158960(JP,A)
【文献】
特開2000−244167(JP,A)
【文献】
特開2007−036081(JP,A)
【文献】
特開昭62−183599(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/126690(WO,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02795873(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 1/00 − 43/00
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多−層吸収材であって、電磁線の受容に適応した放射線−受容面を有する近位層と、該近位層を介して伝送される受容された放射線がもしあるなら少なくともその一部を受容するために近位層に隣接して配置される遠位層と、前記層の少なくとも1つ内に分布する複数の放射線−吸収性添加剤であって、約20GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数における電磁エネルギーを吸収することができる該放射線−吸収性添加剤とを含んでなり、ここで
該近位層は約1GHz〜約110GHzの範囲内の電磁線の少なくとも1つの周波数に関して該遠位層の屈折率の実数部より小さい実数部を有する屈折率を示し、
且つ、
該少なくとも1つの周波数における該層の屈折率の実数部が以下の関係:
【数1】
[式中、
nrdは遠位層の屈折率の実数部を示し、
nrpは近位層の屈折率の実数部を示し、そして
f(GHzの単位における)は近位層及び遠位層の屈折率の実数部における差が決定される周波数を示す]
を満たし、且つ、
該多−層吸収材が約20GHz〜約110GHzの範囲内の周波数内の周波数帯における入射放射線に関して約0.3より小さい反射率と約0.3より小さい伝送係数を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項2】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、近位層の屈折率の実数部が約20GHz〜約80GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関して遠位層の屈折率の実数部より小さい、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項3】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該約20GHz〜約110GHzの周波数範囲内の少なくとも1つの周波数帯に及ぶ波長に関して近位層の屈折率の実数部が遠位層の屈折率の実数部より小さい、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項4】
請求項3に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約5GHzの帯域幅を有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項5】
請求項3に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約10GHzの帯域幅を有する請求項3の多−層吸収材。
【請求項6】
請求項3に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約20GHzの帯域幅を有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項7】
請求項3に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約50GHzの帯域幅を有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項8】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該近位層及び遠位層がポリマー材料を含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項9】
請求項8に記載の多−層吸収材であって、該ポリマー材料が熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー及び液晶ポリマーのいずれかを含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項10】
請求項8に記載の多−層吸収材であって、該ポリマー材料がポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ、ポリエチレン及びシリコーンのいずれかを含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項11】
請求項8に記載の多−層吸収材であって、該ポリマー材料がアクリロニトリルブタジエンスチレン及びエチレン酢酸ビニルのいずれかを含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項12】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該放射線吸収性添加剤が誘電体を含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項13】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該添加剤が複数の炭素粒子を含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項14】
請求項13に記載の多−層吸収材であって、該炭素粒子が約500マイクロメートルより小さい平均粒度を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項15】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該放射線吸収性添加剤が約50%に等しいか又はそれより小さい体積分率を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項16】
請求項15に記載の多−層吸収材であって、該添加剤が約1%〜約50%の範囲内の体積分率を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項17】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該放射線吸収性添加剤が該近位層及び遠位層の両層内に分布する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項18】
請求項17に記載の多−層吸収材であって、該近位層中の該添加剤の濃度が該遠位層中の該添加剤の濃度より高い、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項19】
請求項17に記載の多−層吸収材であって、該近位層中の該添加剤の濃度が該遠位層中の該添加剤の濃度と実質的に同じであり、且つここで該近位層が該遠位層の厚さより大きい厚さを有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項20】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該少なくとも1つの周波数が24GHz及び77GHzのいずれかである、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項21】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該近位層及び遠位層のそれぞれが約0.001インチ〜約0.2インチの範囲内の厚さを有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項22】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該近位層及び遠位層のそれぞれが約0.01インチ〜約0.2インチの範囲内の厚さを有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項23】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該近位層及び遠位層のそれぞれが約0.1インチ〜約0.2インチの範囲内の厚さを有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項24】
請求項1に記載の多−層吸収材であって、該2つの層の全体的な厚さが約0.002インチ〜約10インチの範囲内である、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項25】
入力層及び出力層を有するポリマースタックを形成し、該入力層は入射電磁線を受容するための放射線−受容面を含み、該出力層は受容した放射線がもしあれば少なくともその一部が出口面を介してスタックを出る出口面を含むように互いに対して配置される複数のポリマー層と、前記ポリマー層の少なくとも1つ内に分布する複数の放射線−吸収性添加剤であって、約20GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数における電磁エネルギーを吸収することができる該放射線−吸収性添加剤とを含んでなる多−層吸収材であって、ここで
約20GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関する該ポリマー層の実数誘電率が、該入力層から該出力層へ漸進的に増加し、
且つ、
該少なくとも1つの周波数における該層の屈折率の実数部が以下の関係:
【数1】
[式中、
nrdは遠位層の屈折率の実数部を示し、
nrpは近位層の屈折率の実数部を示し、そして
f(GHzの単位における)は近位層及び遠位層の屈折率の実数部における差が決定される周波数を示す]
を満たし、且つ、
該多−層吸収材が約20GHz〜約110GHzの範囲内の周波数内の周波数帯における入射放射線に関して約0.3より小さい反射率と約0.3より小さい伝送係数を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項26】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、1つもしくはそれより多い周波数に関する該ポリマー層の実数誘電率が約20GHz〜約80GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関して該入力層から該出力層へ漸進的に増加する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項27】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該層のそれぞれが該約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関して約0〜約50の範囲内の実数誘電率を示す、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項28】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該周波数の1つもしくはそれより多くにおけるいずれか2つの隣接層の実数屈折率における差が、該周波数倍されると約1〜約20の範囲内である、多−層吸収材。
【請求項29】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該少なくとも1つの周波数が24GHz及び77GHzのいずれかである、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項30】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約20GHzの帯域幅を有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項31】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該周波数帯が少なくとも約50GHzの帯域幅を有する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項32】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該添加剤が複数の炭素粒子を含む、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項33】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該放射線−吸収性添加剤が該ポリマー層のそれぞれ内に分布する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項34】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該少なくとも1つの層中の該放射線−吸収性添加剤の体積分率が約1%〜約50%の範囲内である、ことを特徴とする多−層吸収材。
【請求項35】
請求項25に記載の多−層吸収材であって、該層中の該添加剤の濃度が該入力層から該出力層へ漸進的に増加する、ことを特徴とする多−層吸収材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本記述は一般的に電磁吸収材(electromagnetic absorbers)、そしてさらに特定的に多−層電磁吸収材を目的とする。
【背景技術】
【0002】
電磁吸収材は、電子装置を電磁干渉から遮蔽するかあるいはアンテナによる電磁信号の伝送(transmission)及び/又は受信におけるサイドローブを最小にするような多様な用途を見出している。多くの用途において、電磁吸収材は1つもしくはそれより多い問題の周波数における低い反射率のみでなく、低い伝送係数(transmission coefficient)を示すことが望ましい。しかしながら多くの通常の電磁吸収材は望ましい反射率及び伝送係数を示すことができない。
【0003】
従って強化された電磁吸収材に対する、そして特に低い反射率ならびに低い伝送係数を示す電磁吸収材に対する要求がある。
【発明の概要】
【0004】
概略
1つの側面において、電磁線の受容に適応した放射線−受容面を有する近位層(proximal layer)及び該近位層を介して伝送される受容された放射線がもしあるなら少なくともその一部を受容するために近位層に隣接して配置される遠位層(distal layer)を含む多−層電磁吸収材を開示し、ここで該近位層は約1GHz〜約110GHzの範囲内の電磁線の少なくとも1つの周波数に関して該遠位層の屈折率の実数部より小さい実数部を有する屈折率を示す。例えば近位層と遠位層の屈折率の実数部における差は約3〜約6の範囲内であることができる。
【0005】
いくつかの態様において、近位層の屈折率の実数部は、約20GHz〜約80GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関して遠位層の屈折率の実数部より小さい。
【0006】
いくつかの態様において、近位層の屈折率の実数部は、約1GHz〜約110GHzの周波数範囲内の少なくとも1つの周波数帯に及ぶ波長に関して遠位層の屈折率の実数部より小さい。いくつかの態様において、周波数帯は少なくとも約5GHz又は少なくとも約10GHz又は少なくとも約20GHz又は少なくとも約50GHzの帯域幅を有する。
【0007】
いくつかの態様において、上記の多−層吸収材中で近位層は24GHz及び/又は77GHzの周波数において該遠位層の屈折率の実数部より小さい実数部を有する屈折率を示す。
【0008】
いくつかの態様において、上記の多−層吸収材中で該少なくとも1つの周波数における近位層及び遠位層の屈折率の実数部は以下の関係を満たし:
【0010】
式中、
n
rdは
遠位層の屈折率の実数部を示し、
n
rpは
近位層の屈折率の実数部を示し、そして
f(GHz(ギガヘルツ)の単位における)は近位層及び遠位層の屈折率の実数部における差が決定される周波数を示す。言い換えると、与えられる周波数における近位層と遠位層の屈折率の実数部の間の差は、その周波数倍されると約1〜約20の範囲内である。
【0011】
いくつかの態様において、近位層及び遠位層はポリマー材料、例えば熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマーを含む。例えばポリマー材料は中でもポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン(例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリウレタン、エポキシ、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル及びシリコーンのいずれかであることができる。
【0012】
いくつかの態様において、上記の多−層吸収材はその層の少なくとも1つ内に分布する複数の放射線−吸収性添加剤を含み、ここで添加剤は約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数において電磁エネルギーを吸収することができる。例えば放射線−吸収性添加剤は誘電体を含むことができ、例えばそれらは約500ミクロンより小さい平均寸法を有する粒子の形態にあることができる。
【0013】
いくつかの態様において、添加剤が分布する多−層吸収材の1つもしくはそれより多い層内における添加剤の体積分率は約50%に等しいか又はそれより小さいことができる。例えば添加剤の体積分率は約1%〜約50%の範囲内であることができる。
【0014】
いくつかの態様において添加剤は1つの層内のみに分布するが、他の態様において、添加剤は多−層吸収材の複数の層内に分布することができ、例えばそれらは多−層吸収材のすべての層内に分布することができる。
【0015】
いくつかの態様において、添加剤は複数の炭素粒子を含む。いくつかの態様において、炭素粒子は約500ミクロンより小さい平均粒度を示すことができる。
【0016】
多−層吸収材のいくつかの態様において、近位層中の添加剤の濃度は遠位層中の添加剤の濃度より高い。いくつかの他の態様において、近位層中の添加剤の濃度は遠位層中の添加剤の濃度と実質的に同じであり、近位層は遠位層の厚さより大きい厚さを有する。
【0017】
いくつかの態様において、多−層吸収材は、約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの入射放射線周波数に関して約0.3に等しいかそれより小さい反射率(reflectance coefficient)を示す。例えば反射率は約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの入射放射線周波数に関して0〜約0.3の範囲内であることができる。さらなる例としていくつかの態様において、多−層吸収材は24GHz及び77GHzの入射放射線周波数の両方に関してそのような反射率を示すことができる。
【0018】
いくつかの態様において、多−層吸収材は約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの入射放射線周波数に関して約0.3に等しいか又はそれより小さい伝送係数を示す。例えば伝送係数は約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの入射放射線周波数に関して約0〜約0.3の範囲内であることができる。さらなる例としていくつかの態様において、多−層吸収材は24GHz及び77GHzの入射放射線周波数に関してそのような伝送係数を示すことができる。
【0019】
いくつかの態様において、多−層吸収材の各層の厚さは約0.001インチ(0.0025mm)〜約0.5インチ(12.7mm)の範囲内であることができる。いくつかの態様において、多−層吸収材は約0.002インチ(0.05mm)〜約10インチ(2
54mm)の範囲内の全体的な厚さ(すなわちすべての層の厚さの合計)を有することができる。
【0020】
関連する側面において、入力層(input layer)及び出力層(output
layer)を有するポリマースタック(polymeric stack)を形成し、入力層は入射電磁線を受容するための放射線−受容面を含み、出力層は受容した放射線がもしあれば少なくともその一部が出口面を介してスタックを出る出口面を含むように互いに対して配置される複数のポリマー層を含む多−層吸収材を開示し、ここで約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数及びいくつかの場合にはすべての周波数に関する該ポリマー層の実数誘電率(real dielectric constants)は、該入力層から該出力層へ漸進的に増加する。
【0021】
いくつかの態様において、1つもしくはそれより多い周波数に関するポリマー層の実数誘電率は、約20GHz〜約80GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関して入力層から出力層へ漸進的に増加する。
【0022】
いくつかの態様において、多−層吸収材の層のそれぞれは、該約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関して約0〜約50の範囲内、例えば約10〜40又は20〜30の範囲内の実数誘電率を示す。
【0023】
関連する側面において、ポリマー材料及び第1の装入量(loading)の放射線吸収性添加剤を含み、電磁線を受容するための放射線−受容面を有する近位層及び該近位層を介して伝送される受容された放射線がもしあるならその少なくとも一部を受容するために該近位層に隣接して配置され、第2の装入量の放射線−吸収性添加剤を含む遠位層を含む多−層吸収材を開示し、ここで該層の誘電率の実数部及び虚数部は、該吸収材が約1GHz〜約100GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い放射線周波数における近位層の該放射線−受容面上の入射放射線に関して、例えば約20GHz〜約80GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関して約0.3に等しいか又はそれより小さい反射率及び約0.3に等しいか又はそれより小さい伝送係数を示すように設定される(configured)。
【0024】
いくつかの態様において、添加剤の第1の装入量(例えば添加剤の体積分率)は添加剤の第2の装入量より大きい。いくつかの他の態様において、第1及び第2の装入量は実質的に同じであり、近位層は遠位層より大きい厚さを有する。
【0025】
いくつかの態様において、近位層の誘電率の実数部は遠位層の誘電率のそれぞれの実数部より小さい。いくつかの態様において、近位層と遠位層の誘電率の実数部の間の差は約3〜約6の範囲内である。
【0026】
以下の詳細な記述を添付の図面と一緒に参照することにより、本発明の種々の側面のさらなる理解を得ることができ、図面を下記に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の簡単な記述
【
図1】
図1は、本発明の態様に従う多−層電磁吸収材を略図的に描いており、
【
図2】
図2は、1GHz〜約110GHzの周波数範囲内に配置される(disposed)10GHzの帯域幅を有する周波数帯を略図的に描いており、
【
図3】
図3は、本記述に従う多−層吸収材上のその種々の表面における入射放射線(radiation incident)の反射及び伝送の例を略図的に描いており、
【
図4】
図4は、近位層及び遠位層を有し、複数の放射線−吸収性添加剤がそれらの層内に分布する本発明の別の態様に従う多−層吸収材を略図的に描いており、
【
図5】
図5は、並んで配置されてポリマースタックを形成する4つのポリマー層を有する別の態様に従う多−層吸収材を略図的に描いており、そして
【
図6】
図6は、並んで配置されてポリマースタックを形成する4つのポリマー層を有し、ここで各層内に複数の放射線−吸収性添加剤が分布する別の態様に従う多−層吸収材を略図的に描いている。
【0028】
詳細な記述
本記述は一般的に、多−層吸収材が約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関して低い反射率ならびに低い伝送係数を示すように設定される異なる屈折率を有する2つもしくはそれより多い材料層を含む多−層電磁吸収材を目的とする。下記でさらに詳細に議論する通り、いくつかの態様において、多−層吸収材を形成する層の屈折率の実数部は、電磁線を受容するように設定される近位層から、層を通過した受容された電磁線がもしあったらその一部がそれを介して多−層吸収材を出る遠位層へ、漸進的に増加する。本発明の種々の側面を下記でさらに詳細に議論する。本明細書で用いられる多様な用語及び句に以下の定義を与える。
【0029】
周波数(f)における媒体の「屈折率」という用語は、当該技術分野におけるその意味と一致して本明細書で用いられ、複素数として定義され、その実数部(本明細書で屈折率とも呼ばれる)は真空中における電磁線の速度対媒体中におけるその周波数での放射線の速度の比であり、その虚数部は放射線が媒体を通過する時の媒体によるその周波数での放射線の吸収の指標(indicaive)である。さらに特定的に、周波数(f)における媒体(例えば多−層吸収材の層の1つ)の屈折率を以下の通りに定義することができ、
n(f)= n
r(f)+ in
i(f) 式(2)
式中、
n(f)は周波数(f)における屈折率を示し、
n
r(f)は周波数(f)における屈折率の実数部(本明細書で実数屈折率とも呼ばれる)を示し、
n
i(f)は周波数(f)における屈折率の虚数部(本明細書で虚数屈折率とも呼ばれる)を示し、
【0030】
【数2】
【0031】
である。
【0032】
屈折率n(f)の実数部を真空中における光の速度(c)対媒体中における光の速度(ν)の比として定義することができる:
【0033】
【数3】
【0034】
媒体の屈折率の虚数部(n
i(f))を、以下の式に従って媒体の長さ(z)を通過する周波数(f)を有する電磁線の強度の減衰に基づいて定義することができる:
【0035】
【数4】
【0036】
式中、
I
0は電磁線の初期強度を示し、
I
zは媒体の長さ(z)を通過した後の電磁線の強度を示し、そして
λ
0は真空中における周波数(f)を有する放射線の波長を示す。
【0037】
媒体の「誘電率」という用語も、以下の関係に従って媒体の複素屈折率(complex index of refraction)と関連付けられる複素数を指すための当該技術分野におけるその通常の意味と一致して本明細書で用いられる:
【0038】
【数5】
【0039】
式中、
εは複素誘電率を示し、
ε
rは誘電率の実数部(本明細書で実数誘電率とも呼ばれる)を示し、
ε
iは誘電率の虚数部(本明細書で虚数誘電率とも呼ばれる)を示し、
n
r及びn
iは上記で定義した屈折率の実数部及び虚数部である。
【0040】
「反射率」という用語は、例えばそれが異なる屈折率を有する2つの領域間の境界を形成する表面上における入射放射線の反射に関連する時、当該技術分野におけるその意味と一致して本明細書で用いられ、以下の関係に従って境界面で反射される光の強度対その表面上における入射放射線の強度の比として定義され得る:
【0041】
【数6】
【0042】
式中、
αは反射率を示し、
I
0は入射放射線の強度を示し、そして
I
rは入射放射線の反射される部分の強度を示す。
【0043】
材料、例えば本記述に従う多−層吸収材の「伝送係数」という用語は、当該技術分野におけるその意味と一致して本明細書で用いられ、以下の関係に従って材料を介して伝送される光の強度対材料の放射線−受容面上における入射光の強度の比として定義され得る:
【0044】
【数7】
【0045】
式中、
βは伝送係数を示し、
I
0は入射放射線の強度を示し、そして
I
tは入射放射線の伝送される部分の強度を示す。
【0046】
当該技術分野において理解される通り、材料の屈折率は一般に周波数依存性である。さらに、いくつかの場合、屈折率はテンソル量であり得、その値は材料中における放射線の
伝播の方向に依存する。いくつかの態様において屈折率がテンソル量であり得る範囲で、下記で議論する関係は放射線の伝播の方向に沿った屈折率及び誘電率の値を指す。
【0047】
本明細書で用いられる「周波数帯」という用語は、下限周波数(f
lower)と上限周波数(f
upper)の間の周波数の連続範囲を指し、且つここで周波数帯の帯域幅は:
帯域幅 = f
upper − f
lower 式(8)
として定義される。
【0048】
さらなる例として、
図2は20GHzから30GHzの範囲の10GHzの帯域幅を有する周波数帯(A)を略図的に描いている。
【0049】
「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は本明細書で互換的に用いられ、述べられる数値の+/−10%又は+/−5%内の変動を包含することが意図されている。
【0050】
図1は、近位層12及び遠位層14を含む本記述の態様に従う多−層吸収材10を略図的に描いている。近位層12は入射電磁エネルギー(放射線)を受容するように設定される入力面12a及び遠位層の入力面14aと接触している出力面12bを含む。遠位層14は出力面14bを含み、層12及び14を介して伝送される入射電磁エネルギーがもしあればその一部がそれを介して吸収材10を出る。下記でさらに詳細に議論する通り、この態様において、近位層及び遠位層のそれぞれはポリマー材料で形成されるが、他の態様において他の型の材料を用いることができる。
【0051】
下記でさらに詳細に議論する通り、この態様において、多−層吸収材10は選ばれた範囲内、例えば約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い放射線周波数に関して低い反射率及び低い伝送係数の両方を示す。例えばいくつかの実施において、多−層吸収材10は約1GHz〜約110GHzの範囲内、例えば約20GHz〜約80GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関して約0.3に等しいか又はそれより小さい反射率及び約0.3に等しいか又はそれより小さい伝送係数を示す。いくつかの態様において、多−層吸収材10はある周波数帯、例えば約1GHz〜約110GHzの範囲内に含まれるある周波数帯内のすべての周波数に関してそのような低い反射率及び伝送係数を示す。例えば多−層吸収材10は約5GHz〜約50GHzの範囲内の帯域幅を有する少なくとも1つの周波数帯に及んでそのような低い反射率及び伝送係数を示すことができ、ここで周波数帯は約1GHz〜約110GHzの周波数範囲内にあり、例えば
図2に描かれる周波数帯Aである。いくつかの場合、多−層吸収材10は約20GHz〜約110GHzの範囲内の複数の不連続の周波数において、例えば26GHz及び77GHzの周波数においてそのような低い反射率及び伝送係数を示すことができる。
【0052】
例えばこの態様において、近位層12及び遠位層14の屈折率は、約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより波長に関して約0.3に等しいか又はそれより小さい反射率及び約0.3に等しいか又はそれより小さい伝送係数を達成するように設定される。さらに特定的に、この態様において、近位層12は、実数部が遠位層14の屈折率の実数部より小さい屈折率を示す。いくつかのそのような態様において、近位層及び遠位層の屈折率の実数部は約1GHz〜約110GHzの範囲内、例えば約20GHz〜約80GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数(f)に関して上記の式(1)の関係を満たす。
【0053】
さらに、この態様において、近位層及び遠位層の屈折率の虚数部は、多−層吸収材の放射線−受容面を介して多−層吸収材に入る放射線の伝送を最小にするように設定される。言い換えると、2つの層の屈折率の虚数部は、入射電磁エネルギーが吸収材を介して伝播
する時に入力面12aにおける屈折を介して吸収材中に入った入射電磁エネルギーの部分の吸収を強化し、それにより遠位層14の出力面14bを介して吸収材を出る電磁エネルギーの量を最小にするように設定される。下記でさらに詳細に議論する通り、いくつかの態様において、放射線が多−層吸収材10を介して伝播する時に放射線吸収を強化するために、複数の放射線吸収性粒子を近位層及び遠位層の少なくとも1つそして好ましくは両方内に分布させる。
【0054】
いくつかの態様において、近位層及び遠位層12及び14の屈折率の実数部の間の差を、近位層の厚さと一緒に、多−層吸収材が約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数、そして好ましくは複数の周波数に関して低い反射率、例えば約0.3に等しいか又はそれより小さい反射率を示すことを保証するように選ぶことができる。例えば近位層と遠位層の屈折率の実数部における差は上記の式(1)を満たすことができる。さらに、近位層の厚さを以下の関係を満たすように選ぶことができる:
【0055】
【数8】
【0056】
式中、
tは近位層の厚さを指し、
pは整数であり、そして
λは近位層内の放射線の波長である。
【0057】
図3を参照し且つ特定の理論に縛られずに、いくつかの態様において、入射電磁線(矢印16により略図的に描かれる)が入力面12aに衝突する時、その一部はその表面で反射され(矢印18により略図的に描かれる)、別の部分は近位層に入って(矢印20により略図的に描かれる)近位層と遠位層の間の界面に伝播し、そこで放射線の一部は近位層と遠位層の屈折率の間の差の故にその界面において入力面12aに向かって反射して戻され(矢印22により略図的に描かれる)、放射線の別の部分(矢印24により略図的に描かれる)は近位層と遠位層の間の界面における屈折を介して遠位層14に入る。次いで放射線は遠位層14を介して伝播し、もしあればその一部は出力面14bを介して多−層吸収材10を出る(矢印26として略図的に描かれる)。この分析は例示目的のために示されるので、もっと高次の(higher order)反射は無視される。
【0058】
近位層の厚さを(例えば上記の式(9)に従って)、後方反射した放射線18又は少なくともその実質的な部分(例えば少なくとも80%又は少なくとも90%)が近位層12と遠位層14の界面において反射される放射線22と破壊的に干渉し、多−層吸収材10の反射率を最小にするように選ぶことができる。例えば近位層の厚さを、その層を介する放射線の往復光路(すなわち入力面12aから近位層と遠位層の間の界面への路及びその界面から入力面12に戻る路)がその層を介する放射線の半波長の整数倍であるように選ぶことができる。いくつかの実施において、近位層と遠位層の屈折率の間の差を、約1GHz〜約110GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に関してこの破壊的な干渉を強化するように選ぶことができる。例えば上記の通り、2つの層の屈折率は上記の式(1)を満たすことができる。
【0059】
さらに、近位層及び遠位層は、近位層12の入力面12aにおける屈折を介して多−層吸収材に入る電磁線の部分の吸収を強化するように設定される。例えばいくつかの態様において、近位層及び遠位層の1つ又は両方は、それらの中に分布する放射線−吸収性添加剤を含み、層を通過する放射線の吸収を増加させることができる。
【0060】
与えられる周波数における各層の屈折率の虚数部は、その周波数において層が与える放射線吸収のレベルの指標である。虚数屈折率に関する所望の値を得るために、添加剤が分布する層の屈折率の虚数部を調整するように放射線−吸収性添加剤の濃度を選ぶことができる。例えばいくつかの態様において、近位層及び/又は遠位層内に分布する放射線−吸収性添加剤の濃度は、多−層吸収材が約0.3に等しいか又はそれより小さい伝送係数を示すように選ばれる。一般に層内の放射線吸収性添加剤の濃度が向上するとその層の虚数屈折率の大きさは向上する。
【0061】
例えばいくつかの実施において、近位層及び遠位層のそれぞれ内に分布する放射線−吸収性添加剤の体積分率(すなわち添加剤により占有される体積対それぞれの層の体積の比)は約50%より小さい、例えば約1%〜約50%の範囲内であることができる。
【0062】
例えば
図4は、近位層12’及び遠位層14’を含む本記述に従う多−層吸収材10’の1つのそのような態様を略図的に描いている。炭素粒子の形態における複数の放射線−吸収性添加剤28が近位層12’及び遠位層14’のそれぞれ内に分布する。炭素粒子は層10’及び12’を通過する約1GHz〜約110GHzの範囲内の放射線の吸収を強化する。いくつかの態様において、炭素粒子は約500マイクロメートルより小さいか又は約250マイクロメートルより小さい平均寸法(すなわち直交三次元(X、Y及びZ)における粒子の寸法の平均)を示すことができる。
【0063】
例えば多−層吸収材10’は約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関して約0.3より小さい、例えば約0〜約0.3の範囲内の伝送係数を示すことができる。
【0064】
上記の代表的な多−層吸収材10/10’のそれぞれは2つの層(すなわち近位層12/12’及び遠位層14/14’)を含むが、本記述に従う多−層吸収材は3つかもしくはそれより多い層を含むことができる。いくつかの態様において、多−層吸収材の層の数は、例えば2〜20の範囲内又は2〜15の範囲内又は2〜10の範囲内又は5〜10の範囲内であることができる。
【0065】
例えば、
図5は別の態様に従う多−層吸収材30を略図的に描いており、それは互いに対して並んで配置されてポリマースタック40を形成する4つのポリマー層32、34、36及び38を含む。この態様において、層32はその入力面32aを介して放射線を受容するための入力層として働き、層38は出力面38bを有する出力層として働き、多−層吸収材を透過し且つ吸収材を介する伝播の間に吸収されなかった入力面32a上における入射放射線の少なくとも一部はそれを介してポリマースタック40を出る。
【0066】
この態様において、約1GHz〜約110GHzの範囲内の1つもしくはそれより多い周波数に関するポリマー層32、34、36及び38の実数誘電率は、入力層32から出力層38へ漸進的に増加する。言い換えると、各層は前の層の実数誘電率より大きい実数誘電率を有する。層の実数誘電率の増加は多様な関数形に従うことができる。例えばいくつかの態様において、層の実数誘電率は入力層32から出力層38へ直線状に増加するが、他の態様において増加は非−直線状であることができる。いくつかの態様において、いずれか2つの隣接層の実数誘電率は約1GHz〜約110GHzの範囲内の選ばれた周波数において上記の式(1)の関係を満たし、ここで近位層は光入力層又は光入力層により近い層に相当し、遠位層は光出力層又は光出力層により近い層に相当する。
【0067】
例えばいくつかの態様において、実数誘電率が入力層から出力層へ漸進的に増加するように、異なる実数誘電率を有する異なるポリマー材料の層を形成する。前の態様に類似して、上記で挙げたもののような多様なポリマー材料を用いて層32、34、36及び38
を形成することができる。
【0068】
いくつかの態様において、層32、34、36及び38の1つもしくはそれより多くはその中に分布する複数の放射線吸収性添加剤を含むことができる。例えば
図6は、上記の多−層吸収材30に類似して、並べて配置されてポリマースタック40’を形成する4つのポリマー層32’、34’、36’及び38’を含む本記述の態様に従う多−層吸収材30’を略図的に示し、ここで層は入力層32’から出力層38’へ増加する実数誘電率を示す。
【0069】
層32’、34’、36’及び38’のそれぞれ内に複数の放射線−吸収性添加剤28、例えば炭素粒子が分布する。前の態様におけると同様に、添加剤28は約500マイクロメートルより小さい平均寸法及び約1%〜約50%の範囲内、例えば約10%〜約40%の範囲内又は約15%〜約30%の範囲内の体積分率を有することができる。
【0070】
いくつかの実施においてポリマー層32’、34’、36’及び38’のそれぞれ内の放射線−吸収性添加剤の濃度(例えば体積分率)は他のいずれかの層内に分布する放射線−吸収性添加剤の濃度と同じであることができるが、他の実施において、層32’、34’、36’及び38’の少なくとも2つは異なる濃度(例えば体積分率)の添加剤28を有することができる。
【0071】
いくつかの態様において、多−層吸収材30’は約0.3に等しいか又はそれより小さい、例えば約0〜約0.3の範囲内の反射率及び約0.3に等しいか又はそれより小さい、例えば約0〜約0.3の範囲内の伝送係数を示すことができる。
【0072】
多様な製造方法を用いることにより、本記述に従う多−層吸収材を形成することができる。例えばいくつかの態様において、既知の混合法及び装置を用いて充填剤をポリマーに加えることができる。例えば連続ミキサー、密閉式ミキサー、遊星形ミキサー及び二軸スクリュー押出機をこの目的に用いることができる。充填剤をポリマーとブレンドしたら、押出し、カレンダリング、流延又はプレス成形(pressing)を含む種々の方法によりポリマーシートを形成することができる。次いで適した接着剤を用いて個々のシート層を接着することにより、上記の記述に従う多層シートを形成することができる。いくつかの態様において、複数のポリマーシートの同時押出及び同時−硬化のような1つのプロセスで上記の記述に従う多−層シートを形成することができる。
【0073】
本記述に従う多−層吸収材は多様な用途を見出すことができる。例えばそのような多−層吸収材は電磁遮蔽用途における使用に特に適しており、その用途では電磁線の高い吸収のみでなくシールド上における入射放射線の低い反射率も望ましい。例えば本記述に従う多−層吸収材を、例えば衝突回避レーダーシステムにおける迷放射線を吸収するために、自動車用途において用いることができる。他の用途において、サーバーのような電子装置を外部の干渉電磁線から遮蔽するために本記述に従う多−層吸収材を用いることができる。本記述に従う多−層吸収材を用いることができる他の用途の例には、電子囲い(electronic enclosure)からの電磁放射を減少させること及び/又は電子囲い内の電磁干渉に伴う問題の除去、試験装置内及びその近くの望ましくない物体のレーダーシグネチャー(radar signaure)を減少させること及びアンテナ性能を向上させることが含まれる。
【0074】
当該技術分野における通常の熟練者は、本発明の範囲から逸脱することなく上記の態様に種々の変更を成し得ることを認識するであろう。