特許第6541743号(P6541743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許6541743飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法
<>
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000002
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000003
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000004
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000005
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000006
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000007
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000008
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000009
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000010
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000011
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000012
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000013
  • 特許6541743-飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541743
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20190628BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20190628BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20190628BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20190628BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20190628BHJP
   B64C 25/32 20060101ALI20190628BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20190628BHJP
   G01N 21/88 20060101ALN20190628BHJP
   G01B 11/02 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   F03D17/00
   F03D80/50
   B64C27/08
   B64C39/02
   B64D47/08
   B64C25/32
   G01C5/00 L
   !G01N21/88 Z
   !G01B11/02 H
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-199215(P2017-199215)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-73999(P2019-73999A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 慶助
(72)【発明者】
【氏名】木村 保貴
(72)【発明者】
【氏名】森井 喜之
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0168420(US,A1)
【文献】 特開2010−229824(JP,A)
【文献】 特開2016−042087(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/010206(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第03020963(EP,A1)
【文献】 特開2017−090145(JP,A)
【文献】 特開2017−140899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 17/00
F03D 80/50
B64C 25/32
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の風車翼の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記風車翼の停止中における、前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
を備えた
風力発電設備の検査方法。
【請求項2】
前記UAVは、当該UAVを前記風力発電設備の表面に押し付けるための少なくとも1つのスラスタ用プロペラをさらに含み、
前記スラスタ用プロペラを用いて前記風力発電設備に前記UAVを押し付けるステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項3】
前記UAVは、前記風力発電設備に当接する3点支持部と、前記3点支持部が前記風力発電設備の表面に当接する際の衝撃を吸収するための弾性部材と、をさらに含み、
前記3点支持部の各々を結ぶ領域の内側に推力を作用させて前記UAVを前記風力発電設備に押し付けるステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項4】
前記検査システムは、前記UAVに搭載された3Dレーザプロファイラをさらに備え、
前記3Dレーザプロファイラを用いて前記損傷部の傷の深さ又は変形の度合いを計測するステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項5】
前記検査システムは、前記UAVに搭載された打音装置及び集音装置をさらに備え、
前記打音装置による前記風力発電設備への打音を前記集音装置で集音して前記風力発電設備の異常の有無を検出するステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項6】
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、若しくは、目視により、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
を備え、
前記UAVは、少なくとも2つのレーザポインタをさらに含み、
前記少なくとも2つのレーザポインタ間の距離を予め設定するステップと、
前記少なくとも2つのレーザポインタから前記風力発電設備の表面にレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ光の光跡を含む前記風力発電設備の表面を前記第1撮像装置で撮影して前記第1画像を取得し、該第1画像中における前記光跡に基づき前記損傷部の寸法を計測するステップと、をさらに備える
ことを特徴とする風力発電設備の検査方法。
【請求項7】
前記検査システムは、データ処理装置をさらに含み、
前記データ処理装置を用いて前記損傷部の寸法を計測するステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項8】
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、若しくは、目視により、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
前記検査システムは、前記UAVに搭載された3Dレーザプロファイラをさらに備え、
前記3Dレーザプロファイラを用いて前記損傷部の傷の深さ又は変形の度合いを計測するステップをさらに備え、
前記第1画像と前記3Dレーザプロファイラの画像とを重ね合わせるステップをさらに備える
ことを特徴とする風力発電設備の検査方法。
【請求項9】
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、若しくは、目視により、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
を備え、
前記検査システムは、データ処理装置をさらに含み、
前記データ処理装置を用いて前記損傷部の寸法を計測するステップと、
前記データ処理装置により、前記第2撮像装置の位置を基準にした風車翼の位置座標に基づき前記第2撮像装置のデフォルメ画像を3D画像として取り込み、前記風車翼の3D設計データと合成して2D図面に加工するステップをさらに備える
ことを特徴とする風力発電設備の検査方法。
【請求項10】
前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項11】
前記UAVは、少なくとも2つのレーザポインタをさらに含み、
前記少なくとも2つのレーザポインタ間の距離を予め設定するステップと、
前記少なくとも2つのレーザポインタから前記風力発電設備の表面にレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ光の光跡を含む前記風力発電設備の表面を前記第1撮像装置で撮影して前記第1画像を取得し、該第1画像中における前記光跡に基づき前記損傷部の寸法を計測するステップと、
前記レーザポインタを用いて得られた前記風車翼の表面の画像に基づき前記2D図面上に前記損傷部の寸法を反映させるステップと、をさらに備える
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項12】
前記UAVの高度を計測し、該高度と前記データ処理装置に予め記録された風車翼データとを用いて前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えることを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項13】
前記UAVは、該UAVの高度を計測するためのレーザ計測器をさらに含む
ことを特徴とする請求項12に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項14】
前記風車翼データは、前記風車翼のアジマス角又はピッチ角を含み、
前記風車翼データと前記UAVの前記高度とに基づき前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備える
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の風力発電設備の検査方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の風力発電設備の検査方法を実現するための構成を備えた風力発電設備の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は飛翔体を用いた風力発電設備の検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電設備における風車翼の損傷検査の際には、停止させた状態の風車翼を、例えば、タワーやプラットフォーム上からカメラで撮影したり、ハブから垂下させたロープやゴンドラを介して作業員が目視や打音検査で確認したりする方法がとられている。
【0003】
一方で、例えば、特許文献1には、検査対象構造物を検査するための検査手段を搭載した無人飛翔体(unmanned airial vehicle:以下、単に飛翔体又はUAVとも称する)、及び、該飛翔体を用いて検査対象構造物を検査する方法が開示されている。上記特許文献1には、飛翔体に搭載した検査手段としての打音装置により、トンネルや橋梁等の検査対象面を打撃して打音による壁面検査を行う方法や、打撃による飛行姿勢への影響を低減するべくバランスを調整する構成等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/139928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、風力発電設備においては、損傷位置における検査対象構造物の構造を考慮して短期間に適切な補修を行うことにより、補修に要する期間やコストの低減を図ることが好ましい。このため、例えば風車翼全体中における損傷部の位置を検査段階で特定することができれば好適である。しかし、上記特許文献1には検査対象構造物全体中における損傷部の位置を特定する構成について何ら開示されておらず、風力発電設備の検査に用いるには大幅な改良が必要であるという問題があった。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の少なくとも一実施形態は、UAVを用いた風力発電設備の検査において、損傷部の位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査方法は、
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、若しくは、目視により、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
を備えている。
【0008】
上記(1)の方法によれば、第2撮像装置の位置、撮像の際の第2撮像装置の光軸の傾斜角及び第2画像、若しくは、目視により、風力発電設備の損傷部の位置を特定することができる。また、特定した損傷部の位置に向けてUAVを浮上させ、第1撮像装置を用いて損傷部を撮像することができる。よって第1撮像装置による第1画像及び/又は第2撮像装置による第2画像から、損傷部の位置を特定することができる。
なお、第2画像内にUAVが撮像されている場合は、第2画像内のUAVの寸法とUAVの既知の寸法とから、第1撮像装置による撮像時におけるUAVと第2撮像装置との間の距離がわかり、この距離と第2撮像装置の光軸の傾斜角とから、第1撮像装置による撮像時におけるUAVの高さを求めることができる。
また、風車翼全体中における損傷部の位置の特定や損傷程度の把握に際して、例えば、高所の損傷部に作業員が直接接近して検査する必要がなく、検査に伴う危険性を大幅に低減することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記UAVは、当該UAVを前記風力発電設備の表面に押し付けるための少なくとも1つのスラスタ用プロペラをさらに含み、
前記スラスタ用プロペラを用いて前記風力発電設備に前記UAVを押し付けるステップをさらに備える。
【0010】
上記(2)の方法によれば、スラスタ用プロペラを用いて風力発電設備にUAVを押し付けることにより、第1撮像装置による撮像の際には第1撮像装置と損傷部との距離を一定に保つことができる。よって、第1画像の精度を向上させることができるから、風力発電設備の検査精度を向上させることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記UAVは、前記風力発電設備に当接する3点支持部と、前記3点支持部が前記風力発電設備の表面に当接する際の衝撃を吸収するための弾性部材と、をさらに含み、
前記3点支持部の各々を結ぶ領域の内側に推力を作用させて前記UAVを前記風力発電設備に押し付けるステップをさらに備えてもよい。
【0012】
上記(3)の方法によれば、3点支持部と弾性部材とにより、より安定してUAVを風力発電設備に押し付けて固定させることができる。また、UAVを風力発電設備に押し付けて固定する際に風力発電設備の表面やUAVへのダメージを低減することができるほか、風力発電設備の表面にUAVが固定されるまでの操作時間の短縮を図ることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1つに記載の方法において、
前記検査システムは、前記UAVに搭載された3Dレーザプロファイラをさらに備え、
前記3Dレーザプロファイラを用いて前記損傷部の傷の深さ又は変形の度合いを計測するステップをさらに備えていてもよい。
【0014】
上記(4)の方法によれば、3Dレーザプロファイラを用いた計測により、損傷部の傷の深さや風力発電設備の変形の度合いを計測することができる。例えば、損傷部の傷口の3次元的な立体画像や、風力発電設備の形状に関する既知のデータと3Dレーザプロファイラによって取得したデータとを比較することで本来の形状からの変形の度合いを取得することにより、適切な補修を行うためのデータを得ることが可能となる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか一つに記載の方法において、
前記検査システムは、前記UAVに搭載された打音装置及び集音装置をさらに備え、
前記打音装置による前記風力発電設備への打音を前記集音装置で集音して前記風力発電設備の異常の有無を検出するステップをさらに備えていてもよい。
【0016】
上記(5)の方法によれば、打音装置及び集音装置を用いて風力発電設備を検査することにより、目視では見逃す可能性のある損傷や、表面には表れない内部の損傷の有無を検出することができるから、風力発電設備の検査精度をさらに向上させることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の方法において、
前記UAVは、少なくとも2つのレーザポインタをさらに含み、
前記少なくとも2つのレーザポインタ間の距離を予め設定するステップと、
前記少なくとも2つのレーザポインタから前記風力発電設備の表面にレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ光の光跡を含む前記風力発電設備の表面を前記第1撮像装置で撮影して前記第1画像を取得し、該第1画像中における前記光跡に基づき前記損傷部の寸法を計測するステップと、をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記(6)の方法によれば、予め設定された2つのレーザポインタ間の距離に基づき、第1画像に写った2つのレーザポインタ間の距離と比較することで、損傷部の寸法を計測することができる。よって、UAVを用いた風力発電設備の検査の精度を大幅に向上させることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか一つに記載の方法において、
前記検査システムは、データ処理装置をさらに含み、
前記データ処理装置を用いて前記損傷部の寸法を計測するステップをさらに備えていてもよい。
【0020】
上記(7)の方法によれば、データ処理装置を用いて損傷部の寸法を計測することができる。例えば、上記(1)で述べた方法による風力発電設備に対するUAVの位置と第1画像中に占める損傷部の大きさから損傷部の実際の寸法を計測することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(7)の何れか一つに記載の方法において、
前記第1画像と前記3Dレーザプロファイラの画像とを重ね合わせるステップをさらに備えていてもよい。
【0022】
上記(8)の方法によれば、第1画像と3Dレーザプロファイラの画像とを重ね合わせることにより、損傷部の立体的なイメージをより詳細に把握することができる。これにより、該損傷部への適切な補修を行うためのより正確な情報を得ることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)に記載の方法において、
前記データ処理装置により、前記第2撮像装置の位置を基準にした風車翼の位置座標に基づき前記第2撮像装置のデフォルメ画像を3D画像として取り込み、前記風車翼の3D設計データと合成して2D図面に加工するステップをさらに備えていてもよい。
【0024】
上記(9)の方法によれば、第2撮像装置の位置を基準にした風車翼の位置座標に基づいて第2撮像装置のデフォルメ画像を3D画像として取り込み、風車翼の3D設計データと合成した2D図面を得ることができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の方法において、
前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0026】
上記(10)の方法によれば、第2撮像装置の位置から見た風車翼のデフォルメ画像(第2画像)に基づき、風車翼の3D設計データと関連付けられた2D図面上に、損傷部の位置を反映させることができる。これにより、第1撮像装置及び/又は第2撮像装置から求めた損傷部の位置が、風車翼全体中においてどの辺りに位置するかを図面上で視覚的に容易に認識することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の方法において、
前記レーザポインタを用いて得られた前記風車翼の表面の画像に基づき前記2D図面上に前記損傷部の寸法を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0028】
上記(11)の方法によれば、2つのレーザポインタ間の既知の距離と、第1画像に写ったレーザ光の間隔とを参照して求めた損傷部の寸法を、2D図面上に反映させることができる。これにより、損傷部の寸法を2D図面上で視覚的に容易に把握することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れか一つに記載の方法において、
前記UAVの高度を計測し、該高度と前記データ処理装置に予め記録された風車翼データとを用いて前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0030】
上記(12)の方法によれば、計測して得られたUAVの高度と前記データ処理装置に予め記録された風車翼データとを用いることにより、損傷部の正確な位置を2D図面上に反映させることができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の方法において、
前記UAVは、該UAVの高度を計測するためのレーザ計測器をさらに含んでもよい。
【0032】
上記(13)の方法によれば、レーザ計測器によりUAVの高度を計測することで、上記(12)で述べた効果を得ることができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)に記載の方法において、
前記風車翼データは前記風車翼のアジマス角又はピッチ角を含み、
前記風車翼データと前記UAVの前記高度とに基づき前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0034】
上記(14)の方法によれば、風車翼データに風車翼のアジマス角又はピッチ角が含まれることにより、任意の風車翼の配置において取得された第2画像を3D画像で取り込んで2D図面に加工することができる。つまり、任意の風車翼の配置において撮像された損傷部の位置を、図面上に反映させることができる。
【0035】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査システムは、
上記(1)乃至(14)の何れか一つに記載の風力発電設備の検査方法を実現するための構成を備える。
【0036】
上記(15)の構成によれば、上記(1)乃至(14)の何れか一つに記載した作用・効果を奏する風力発電設備の検査システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の幾つかの実施形態によれば、UAVを用いた風力発電設備の検査において、損傷部の位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態に係る風力発電設備の検査システムを示す概略図である。
図2】一実施形態における飛翔体(UAV)の構成を示す平面図である。
図3】一実施形態における飛翔体(UAV)の構成を示す背面図である。
図4】一実施形態における飛翔体(UAV)の構成を示す側面図である。
図5】一実施形態に係る風力発電設備の検査方法を示すフローチャートである。
図6】一実施形態における風力発電設備の検査方法を示す説明図であり、ロータ正面から見た図である。
図7】一実施形態における風力発電設備の検査方法を示す説明図であり、ロータ側面から見た図である。
図8】一実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。
図9】他の実施形態における翼損傷部の測定原理を示す説明図である。
図10】他の実施形態における第2撮像装置で撮像した画像例を示す図である。
図11】他の実施形態における飛翔体(UAV)の構成を示す正面図である。
図12】他の実施形態による翼損傷部の測定原理を示す説明図である。
図13】他の実施形態における第1撮像装置で撮像した翼損傷部の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0040】
図1は、一実施形態に係る風力発電設備の検査システムを示す概略図である。図2〜4は、それぞれ一実施形態における飛翔体(UAV)の構成を示す図であり、図2は平面図、図3は背面図、図4は側面図である。
図1図4に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査システム1は、少なくとも1つの飛翔用プロペラ12を含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人飛翔体。以下、単に飛翔体又はドローンとも称することがある)10と、UAV10に搭載され、風力発電設備(以下、単に風車2とも称する)の損傷部60を撮像して第1画像25を生成する第1撮像装置24と、風車2の所定位置に配置され、UAV10又は損傷部60を撮像して第2画像27を生成する第2撮像装置26と、を備えている。
【0041】
図1に示すように、風車2は、少なくとも一本(例えば3本)の風車翼5を備える。風車翼5は、放射状にハブ4に取り付けられ、風車翼5及びハブ4により風車2のロータ3が構成される。風車翼5で風を受けると、ロータ3が回転し、ロータ3に連結された発電機(不図示)で電力が生成されるようになっている。
図1に示す実施形態において、ロータ3は、タワー7の上方に設けられたナセル6によって支持されている。また、タワー7は、水上又は陸上に設けられたプラットフォーム8(基礎構造又は浮体構造等の土台構造)に立設されている。
なお、以下の本開示による風力発電設備の検査システム1及び風力発電設備の検査方法が適用され得る風力発電設備としては、例えば、風車翼5が挙げられるが、これに限定されることなく、例えば、ナセル6やタワー7等の検査に用いることも可能である。
【0042】
UAV10は、有線又は無線により、例えば、図8に示す操作部56から受信した操作信号や、予め設定されたプログラム(例えば、図8に示す検査プログラム54など)に基づき、無人で上昇、下降、前進、後退、旋回、停止(ホバリング)等の飛翔動作を行うことができるようになっている。本開示の例では、UAV10は、例えば、4枚の飛翔用プロペラ12を備えている。各飛翔用プロペラ12は、各々に対応して設けられた飛翔用プロペラ駆動モータ13(図8参照)によって駆動される。飛翔用プロペラ12の半径方向外側には該飛翔用プロペラ12の周方向に亘って環状のガード部16が配置されていてもよい。なお、UAV10を飛翔させるための技術については公知のものを適用し得るためここでは詳述しない。
【0043】
第1撮像装置24は、例えば、検査対象構造物としての風車翼5の検査面5Aを、CCD(charge−coupled device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサで撮像してデジタル画像に変換し、変換された画像データを有線又は無線によりコントローラ50に送信する。この第1撮像装置24は、UAV10のフレーム28に固定されている。
【0044】
第2撮像装置26は、例えば、垂直下方(アジマス角180度)で停止した風車翼5の側方に所定距離だけ離れた位置に配置されている。図1に示す例では、フルフェザーの状態の風車翼5の検査面5A(正圧面又は負圧面)側に向けて設置されている。この第2撮像装置26は、迎角を変化させることで撮像方向(光軸)を上下に変更できるようになっている。第2撮像装置26は、上記第1撮像装置24と同様に、CCD又はCMOS等のイメージセンサであってもよく、撮像により取得したデジタル画像データを有線又は無線によってコントローラ50に送信する。
【0045】
そして、本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査方法は、図5に非限定的に例示するように、上記検査システム1を用いることにより、第2撮像装置26の位置、第2撮像装置26の撮像における光軸Bの傾斜角α3及び第2画像27を取得して、若しくは、目視により、損傷部60の位置を特定する工程(ステップS10)と、特定された損傷部60の位置まで飛翔用プロペラ12を用いてUAV10を浮上させる工程(ステップS12)と、第1撮像装置24を用いて損傷部60を撮像する工程(ステップS20)と、を備えている。
風車翼5の検査面5Aに形成された損傷部60の大きさが比較的大きく、肉眼で目視可能な場合、該損傷部60に向け当該損傷部60の位置までUAV10を浮上させることができる。
一方、第2撮像装置26によって損傷部60の位置を特定する場合について図6及び図7に基づき説明する。図6は一実施形態における風力発電設備の検査方法を示す説明図であり、ロータ3の正面から見た図である。図7は一実施形態における風力発電設備の検査方法を示す説明図であり、ロータ3の側面から見た図である。
一実施形態に係る風力発電設備の検査方法は、検査対象とする風車翼5を垂直下方(アジマス角180度)にフルフェザーの状態で停止させる。この状態において、風車翼5の翼中心線Aの延長線がプラットフォーム8と交わる点から、正面視にて側方に配置された第2撮像装置26までの距離L1を予め定めた既知の値とすると、翼先端5Cの位置すなわち高さHtopは、
Htop=L1/cos(α1)・・・(1)
により算出される(図6参照)。
また、翼根5Bの取付位置すなわち高さHbrは、
Hbr=L1/cos(α2)・・・(2)
により算出される(図6参照)。ここで、α1はアジマス角180°の翼先端を撮像する際の第2撮像装置26の迎角であり、α2はアジマス角180°の翼根中央を撮像する際の第2撮像装置26の迎角である。なお、第2撮像装置26の迎角α1、α2、α3は、目視によって確認及び記録してもよいし、第2撮像装置26の迎角を適時に読み取ったり取得する構成としてもよい。
次に、UAV10の高度すなわち高さHuavは、UAV10の幅方向の2点間における既知の距離L2と、飛行中のUAV10における上記2点と第2撮像装置26とのなす角度θとを用いて、
Huav=L2/θ(rad)・・・(3)
により算出される。ただし、Huavは、HがL2に対して十分に大きいと仮定した場合の近似解である。上記UAV10の距離L2は、例えば、図3及び図7に示すように、UAV10の幅方向に沿って設けられたレール18の両端に離隔して配置された2つのポジションランプ20同士間の距離としてもよい。ポジションランプ20には、例えばLED等、遠方から視認可能な照明装置を用いてもよい。
【0046】
上記の方法によれば、第2撮像装置26の位置、撮像の際の第2撮像装置26の光軸Bの傾斜角α3及び第2画像27、若しくは、目視により、風車2の損傷部60の位置を特定することができる。また、特定した損傷部60の位置に向けてUAV10を浮上させ、第1撮像装置24を用いて損傷部60を撮像することができる。よって第1撮像装置24による第1画像25及び/又は第2撮像装置26による第2画像27から、損傷部60の位置を特定することができる。
なお、第2画像27内にUAV10が撮像されている場合は、第2画像27内におけるUAV10の寸法とUAV10の既知の寸法とから、第1撮像装置24による撮像時におけるUAV10と第2撮像装置26との間の距離D1がわかり、この距離D1と第2撮像装置26の光軸Bの傾斜角α3とから、第1撮像装置24による撮像時におけるUAV10の高さHを求めることができる。
また、風車翼5全体中における損傷部60の位置の特定や損傷程度の把握に際して、例えば、高所の損傷部60に作業員が直接接近して検査する必要がなく、検査に伴う危険性を大幅に低減することができる。
【0047】
幾つかの実施形態において、UAV10は、当該UAV10を風車2の表面に押し付けるための少なくとも1つのスラスタ用プロペラ14をさらに含んでいてもよい(図2図4参照)。スラスタ用プロペラ14は、その回転軸が上記飛翔用プロペラ12の回転軸と概ね直交するように配置されていてもよい。一実施形態ではスラスタ用プロペラ14が1つの場合を例示しているが、このようなスラスタ用プロペラ14を複数配置した構成としてもよい。スラスタ用プロペラ14は、各々に対応して設けられたスラスタ用プロペラ駆動モータ15により駆動される(図8参照)。スラスタ用プロペラ14の半径方向外側には該スラスタ用プロペラ14の周方向に亘って環状のガード部16が配置されていてもよい。
そして、上記方法では、このスラスタ用プロペラ14を用いて風車2にUAV10を押し付ける工程(ステップS14)をさらに備えていてもよい(図5参照)。
この方法によれば、スラスタ用プロペラ14を用いて風車2にUAV10を押し付けることにより、第1撮像装置24による撮像の際には第1撮像装置24と損傷部60との距離D2を一定に保つことができる。よって、第1画像25の精度を向上させることができるから、風車2の検査精度を向上させることができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、UAV10は、風車2に当接する3点支持部30をさらに含んでいてもよい。また、UAV10は、該3点支持部30が風車2の表面に当接する際の衝撃を吸収するための弾性部材32をさらに含んでいてもよい。
幾つかの実施形態における3点支持部30は、UAV10のうち、第1撮像装置24による撮像方向側である正面側に各々配置された3つの凸部で構成され得る。この3点支持部30は、UAV10を構成する他の要素よりも該UAV10の正面側に突出して設けられてもよい。幾つかの実施形態では、例えば図2図4に示すように、飛翔用プロペラ12の直下に配置された上側の2つの凸部と、これら2つの凸部の間で下方に配置された凸部とで構成され得る。ただし、他の実施形態において、3点支持部30は、例えば図11に示すように、上側に1つ、下側に2つの凸部により構成されてもよい。
弾性部材32は、例えば図4に示すように、各3点支持部30の基端部や先端部にばねやゴム、樹脂等の弾性体を配置して構成してもよいし、3点支持部30自体を弾性体で構成してもよい。
そして、上記ステップS12の押し付ける工程では、3点支持部30の各々を結ぶ領域の内側にスラスタ用プロペラ14の推力を作用させてもよい(図3参照)。つまり、スラスタ用プロペラ14は、その回転軸が、正面視又は背面視にて上記3点支持部30を結ぶ領域の内側に配置されるように構成されてもよい。複数のスラスタ用プロペラ14を設ける場合は、各スラスタ用プロペラ14による推力の中心が上記3点支持部30を結ぶ領域内となるように構成してもよい。
このように3点支持部30の各々を結ぶ領域の内側にスラスタ用プロペラ14の推力を作用させる方法によれば、3点支持部30と弾性部材32とにより、より安定的にUAV10を風車2に押し付けて固定させることができる。また、UAV10を風車2に押し付けて固定する際に風車2の表面やUAV10へのダメージを低減することができるほか、風車2の表面にUAV10が固定されるまでの操作時間の短縮を図ることができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、検査システム1は、例えば図2〜3及び図8に示すように、UAV10に搭載された3Dレーザプロファイラ34をさらに備えていてもよい。この3Dレーザプロファイラ34は、例えば図2に示すように、平面視にてUAV10の幅方向の中心を挟んで第1撮像装置24と反対側に配置されていてもよく、上記第1撮像装置24と同様にしてUAV10の正面側に向けて配置され、風車翼5の検査面5Aを走査可能に構成され得る。
そして、上記の何れかの方法において、3Dレーザプロファイラ34を用いて損傷部60の傷の深さ又は変形の度合いを計測する工程(ステップS30)をさらに備えていてもよい(図5参照)。
この方法によれば、3Dレーザプロファイラ34を用いた計測により、損傷部60の傷の深さや風車2の変形の度合いを計測することができる。例えば、損傷部60の傷口の3次元的な立体画像や、風車2の形状に関する既知のデータと3Dレーザプロファイラ34によって取得したデータとを比較することで本来の形状からの変形の度合いを取得することにより、適切な補修を行うためのデータを得ることが可能となる。
【0050】
幾つかの実施形態において、検査システム1は、例えば図3〜4及び図8に示すように、UAV10に搭載された打音装置36及び集音装置38をさらに備えていてもよい。
そして、上記検査方法は、例えば、図5に示すように、打音装置36による風車2への打音を集音装置38で集音することで風車2の異常の有無を検出する工程(ステップS40)をさらに備えていてもよい。
この方法によれば、打音装置36及び集音装置38を用いて風車2を検査することにより、目視では見逃す可能性のある損傷や、表面には表れない内部の損傷の有無を検出することができるから、風車2の検査精度をさらに向上させることができる。
幾つかの実施形態では、打音装置36と集音装置38とを一体的に構成してもよい。これらの打音装置36及び集音装置38は、例えば、UAV10の幅方向に沿って配置された案内部としてのレール18に沿って、スライド用モータ22により任意に往復移動可能に構成されていてもよい。その際、レール18は、飛翔用プロペラ12又は3点支持部30の設置幅よりも外側まで打音装置36と集音装置38とを案内し得るように構成されていてもよい。このようにすれば、UAV10を検査面5Aに当接させつつ、検査面5Aの端部(図7に示す例では、風車翼5の前縁又は後縁)まで確実に検査することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、UAV10は、例えば図5及び図8に示すように、少なくとも2つのレーザポインタ40をさらに含み、少なくとも2つのレーザポインタ40間の距離を予め設定する工程(ステップS16)と、少なくとも2つのレーザポインタ40から風車2の表面にレーザ光を照射する工程(ステップS18:図12参照)と、レーザ光の光跡41を含む風車2の表面を第1撮像装置24で撮影して前記第1画像25を取得し(図13参照)、該第1画像25中における前記光跡41に基づき損傷部60の寸法を計測する工程(ステップS22)と、をさらに備えていてもよい。
この方法によれば、予め設定された2つのレーザポインタ40間の距離D3に基づき、第1画像25に写った2つのレーザポインタ40間の距離D3と比較することで、損傷部60の実際の寸法を計測することができる。よって、UAV10を用いた風車2の検査の精度を大幅に向上させることができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、検査システム1は、データ処理装置44をさらに含み、該データ処理装置44を用いて損傷部60の寸法を計測する工程(ステップS50)をさらに備えていてもよい(図5参照)。データ処理装置44は、例えば、図8に例示するコントローラ50であってもよい。このコントローラ50は、UAV10に搭載されていてもよいし、操作部56と一体に構成されていてもよいし、UAV10又は操作部56とは別体に配置されていてもよい。
このように検査システム1がデータ処理装置44を含む方法によれば、データ処理装置44を用いて損傷部60の寸法を計測することができる。例えば、風車2に対するUAV10の位置と第1画像25中に占める損傷部60の大きさとから損傷部60の実際の寸法を計測することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、第1画像25と3Dレーザプロファイラ34の画像35とを重ね合わせる工程(ステップS60)をさらに備えていてもよい。
この方法によれば、第1画像25と3Dレーザプロファイラ34の画像35とを重ね合わせることにより、損傷部60の立体的なイメージをより詳細に把握することができる。これにより、損傷部60への適切な補修を行うためのより正確な情報を得ることができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、データ処理装置44により、第2撮像装置26の位置を基準にした風車翼5の位置座標に基づき第2撮像装置26のデフォルメ画像27Aを3D画像として取り込み、風車翼5の3D設計データ48と合成して2D図面70に加工する工程(ステップS70)をさらに備えていてもよい(図5参照)。
この方法によれば、第2撮像装置26の位置を基準にした風車翼5の位置座標に基づいて第2撮像装置26のデフォルメ画像27Aを3D画像として取り込み、風車翼5の3D設計データ48(図8参照)と合成した2D図面70を得ることができる。
より詳細には、上記式(1)、(2)から、第2撮像装置26の位置を基準として翼先端5C及び翼根5B(翼根中心)等が定まり、風車翼5の各位置を座標で求めることができる。
図9は他の実施形態における翼損傷部の測定原理を示す説明図である。図10は他の実施形態における第2撮像装置で撮像した画像(第2画像27)の一例(デフォルメ画像27A)を示す図である。
図9に示すように、風車翼5の側面視にて、翼中心線A及び翼先端5Cからそれぞれ(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)の距離にある3つの損傷部60が存在するとする。そして、実際の距離をx3<x1とする。このとき、第2撮像装置26で撮像した第2画像27は、例えば、図10に示すように、近く(手前側)に見える翼先端5Cが大きく、遠方となる翼根5B側が小さくデフォルメされて撮像される。このような場合、第2画像27(デフォルメ画像27A)内ではx3>x1として表示される。
そこで、上記の幾つかの実施形態では、デフォルメ画像27Aを3D画像として取り込み、風車翼5の3Dデータ(3D設計データ48)と合成しながら、各方向からの2D図面に加工するようにしたものである。
【0055】
幾つかの実施形態では、2D図面70上に損傷部60の位置を反映させる工程(ステップS72)をさらに備えていてもよい。
この方法によれば、第2撮像装置26の位置から見た風車翼5のデフォルメ画像27A(第2画像27)に基づき、風車翼5の3D設計データ48と関連付けられた2D図面70上に、損傷部60の位置を反映させることができる。これにより、第1撮像装置24及び/又は第2撮像装置26から求めた損傷部60の位置が、風車翼5全体中においてどの辺りに位置するかを図面上で視覚的に容易に認識することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、レーザポインタ40を用いて得られた風車翼5の表面の画像に基づき2D図面70上に損傷部60の寸法を反映させる工程(ステップS74)をさらに備えていてもよい。
この方法によれば、2つのレーザポインタ40間の既知の距離D3により、第1画像25に写ったレーザ光の光跡41の間隔を参照して求めた損傷部60の寸法を、2D図面70上に反映させることができる。これにより、損傷部60の寸法を2D図面70上で視覚的に容易に把握することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、上記何れかの方法において、UAV10の高さHuav(高度)を計測し、該高さHuavとデータ処理装置44に予め記録された風車翼データ46とを用いて2D図面70上に損傷部60の位置を反映させてもよい。
この方法によれば、計測して得られたUAV10の高さHuavとデータ処理装置44に予め記録された風車翼データ46とを用いることにより、損傷部60の正確な位置を2D図面70上に反映させることができる。
例えば、上記(3)式で求めたUAV10の高さHuavに基づき、第2撮像装置26からの水平距離Luavは、
Luav=Huav×tan(α3)・・・(4)
で求めることができる。そして、このようにして求めたUAV10の座標に基づき、第1撮像装置24による第1画像25から求めた第1撮像装置24と損傷部60との相対的な位置関係とにより、2D図面70上に損傷部60の正確な位置を反映させてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態において、UAV10は、該UAV10の高度Huavを計測するためのレーザ計測器42をさらに含んでもよい(図8参照)。レーザ計測器42は、例えば、UAV10から下方のプラットフォーム8に向けてレーザ光を照射することでUAV10の高度Huavを測定してもよい。そして、レーザ計測器42を用いて計測したUAV10の高度Huavを用いて、上記2D図面70上に損傷部60の位置を反映させてもよい。
この方法によれば、レーザ計測器42でUAV10の高度Huavを計測することにより、上述した効果を簡易な方法で取得することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、上記の方法において、風車翼データ46は風車翼5のアジマス角又はピッチ角を含み、風車翼データ46とUAV10の高度Huavとに基づき、2D図面70上に損傷部60の位置を反映させてもよい。
この方法によれば、風車翼データ46に風車翼5のアジマス角又はピッチ角が含まれることにより、任意の風車翼5の配置において取得された第2画像27を3D画像で取り込んで2D図面70に加工することができる。つまり、任意の風車翼5の配置において撮像された損傷部60の位置を、2D図面上に反映させることができるものである。
【0060】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査システム1は、上記何れかに記載の風車2の検査方法を実現するための構成を備える。この構成によれば、上述した作用・効果を奏する風力発電設備の検査システム1を得ることができる。
【0061】
以上述べた構成によれば、UAVを用いた風力発電設備の検査において、損傷部の位置を特定することができる風力発電設備の検査システム及び風力発電設備の検査方法を提供することができる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0063】
1 風力発電設備の検査システム
2 風車(風力発電設備)
3 ロータ
4 ハブ
5 風車翼
5A 検査面
5B 翼根
5C 翼先端(基準点)
6 ナセル
7 タワー
8 プラットフォーム
10 飛翔体(UAV/ドローン)
12 飛翔用プロペラ
13 飛翔用プロペラ駆動モータ
14 スラスタ用プロペラ
15 スラスタ用プロペラ駆動モータ
16 ガード部
18 レール(案内部)
20 ポジションランプ
22 スライド用モータ(駆動部)
24 第1カメラ(第1撮像装置)
25 第1画像
26 第2カメラ(第2撮像装置)
27 第2画像
27A デフォルメ画像
28 フレーム
30 3点支持部
32 弾性部材
34 3Dレーザプロファイラ
35 画像
36 打音装置
38 集音装置
40 レーザポインタ
41 光跡
42 レーザ計測器
44 データ処理装置
46 風車翼データ
48 3D設計データ
50 コントローラ
51 CPU
52 RAM
53 ROM
54 検査プログラム
56 操作部
57 入力部
58 表示部
60 損傷部
70 2D図面
α1 アジマス角180°の翼先端を撮像する際の第2撮像装置の迎角
α2 アジマス角180°の翼根中央を撮像する際の第2撮像装置の迎角
α3 UAVを撮像する第2撮像装置の迎角
A 翼中心線
H 飛翔体の飛行高さ
D1 UAV−第2撮像装置間距離
D2 損傷部−第1撮像装置間距離
D3 レーザポインタ間距離
L1 翼中心線−第2撮像装置間距離
L2 ポジションランプ間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13