【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査方法は、
少なくとも1つの飛翔用プロペラを含むUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と、
前記UAVに搭載され、風力発電設備の損傷部を撮像して第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記風力発電設備の所定位置に配置され、前記UAV又は前記損傷部を撮像して第2画像を生成する第2撮像装置と、を備えた風力発電設備の検査システムを用いて、
前記第2撮像装置の位置、前記第2撮像装置の撮像における光軸の傾斜角及び前記第2画像を取得して、若しくは、目視により、前記損傷部の位置を特定するステップと、
特定された前記損傷部の位置まで前記飛翔用プロペラを用いて前記UAVを浮上させるステップと、
前記第1撮像装置を用いて前記損傷部を撮像するステップと、
を備えている。
【0008】
上記(1)の方法によれば、第2撮像装置の位置、撮像の際の第2撮像装置の光軸の傾斜角及び第2画像、若しくは、目視により、風力発電設備の損傷部の位置を特定することができる。また、特定した損傷部の位置に向けてUAVを浮上させ、第1撮像装置を用いて損傷部を撮像することができる。よって第1撮像装置による第1画像及び/又は第2撮像装置による第2画像から、損傷部の位置を特定することができる。
なお、第2画像内にUAVが撮像されている場合は、第2画像内のUAVの寸法とUAVの既知の寸法とから、第1撮像装置による撮像時におけるUAVと第2撮像装置との間の距離がわかり、この距離と第2撮像装置の光軸の傾斜角とから、第1撮像装置による撮像時におけるUAVの高さを求めることができる。
また、風車翼全体中における損傷部の位置の特定や損傷程度の把握に際して、例えば、高所の損傷部に作業員が直接接近して検査する必要がなく、検査に伴う危険性を大幅に低減することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記UAVは、当該UAVを前記風力発電設備の表面に押し付けるための少なくとも1つのスラスタ用プロペラをさらに含み、
前記スラスタ用プロペラを用いて前記風力発電設備に前記UAVを押し付けるステップをさらに備える。
【0010】
上記(2)の方法によれば、スラスタ用プロペラを用いて風力発電設備にUAVを押し付けることにより、第1撮像装置による撮像の際には第1撮像装置と損傷部との距離を一定に保つことができる。よって、第1画像の精度を向上させることができるから、風力発電設備の検査精度を向上させることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記UAVは、前記風力発電設備に当接する3点支持部と、前記3点支持部が前記風力発電設備の表面に当接する際の衝撃を吸収するための弾性部材と、をさらに含み、
前記3点支持部の各々を結ぶ領域の内側に推力を作用させて前記UAVを前記風力発電設備に押し付けるステップをさらに備えてもよい。
【0012】
上記(3)の方法によれば、3点支持部と弾性部材とにより、より安定してUAVを風力発電設備に押し付けて固定させることができる。また、UAVを風力発電設備に押し付けて固定する際に風力発電設備の表面やUAVへのダメージを低減することができるほか、風力発電設備の表面にUAVが固定されるまでの操作時間の短縮を図ることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1つに記載の方法において、
前記検査システムは、前記UAVに搭載された3Dレーザプロファイラをさらに備え、
前記3Dレーザプロファイラを用いて前記損傷部の傷の深さ又は変形の度合いを計測するステップをさらに備えていてもよい。
【0014】
上記(4)の方法によれば、3Dレーザプロファイラを用いた計測により、損傷部の傷の深さや風力発電設備の変形の度合いを計測することができる。例えば、損傷部の傷口の3次元的な立体画像や、風力発電設備の形状に関する既知のデータと3Dレーザプロファイラによって取得したデータとを比較することで本来の形状からの変形の度合いを取得することにより、適切な補修を行うためのデータを得ることが可能となる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか一つに記載の方法において、
前記検査システムは、前記UAVに搭載された打音装置及び集音装置をさらに備え、
前記打音装置による前記風力発電設備への打音を前記集音装置で集音して前記風力発電設備の異常の有無を検出するステップをさらに備えていてもよい。
【0016】
上記(5)の方法によれば、打音装置及び集音装置を用いて風力発電設備を検査することにより、目視では見逃す可能性のある損傷や、表面には表れない内部の損傷の有無を検出することができるから、風力発電設備の検査精度をさらに向上させることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の方法において、
前記UAVは、少なくとも2つのレーザポインタをさらに含み、
前記少なくとも2つのレーザポインタ間の距離を予め設定するステップと、
前記少なくとも2つのレーザポインタから前記風力発電設備の表面にレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ光の光跡を含む前記風力発電設備の表面を前記第1撮像装置で撮影して前記第1画像を取得し、該第1画像中における前記光跡に基づき前記損傷部の寸法を計測するステップと、をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記(6)の方法によれば、予め設定された2つのレーザポインタ間の距離に基づき、第1画像に写った2つのレーザポインタ間の距離と比較することで、損傷部の寸法を計測することができる。よって、UAVを用いた風力発電設備の検査の精度を大幅に向上させることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか一つに記載の方法において、
前記検査システムは、データ処理装置をさらに含み、
前記データ処理装置を用いて前記損傷部の寸法を計測するステップをさらに備えていてもよい。
【0020】
上記(7)の方法によれば、データ処理装置を用いて損傷部の寸法を計測することができる。例えば、上記(1)で述べた方法による風力発電設備に対するUAVの位置と第1画像中に占める損傷部の大きさから損傷部の実際の寸法を計測することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(7)の何れか一つに記載の方法において、
前記第1画像と前記3Dレーザプロファイラの画像とを重ね合わせるステップをさらに備えていてもよい。
【0022】
上記(8)の方法によれば、第1画像と3Dレーザプロファイラの画像とを重ね合わせることにより、損傷部の立体的なイメージをより詳細に把握することができる。これにより、該損傷部への適切な補修を行うためのより正確な情報を得ることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)に記載の方法において、
前記データ処理装置により、前記第2撮像装置の位置を基準にした風車翼の位置座標に基づき前記第2撮像装置のデフォルメ画像を3D画像として取り込み、前記風車翼の3D設計データと合成して2D図面に加工するステップをさらに備えていてもよい。
【0024】
上記(9)の方法によれば、第2撮像装置の位置を基準にした風車翼の位置座標に基づいて第2撮像装置のデフォルメ画像を3D画像として取り込み、風車翼の3D設計データと合成した2D図面を得ることができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の方法において、
前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0026】
上記(10)の方法によれば、第2撮像装置の位置から見た風車翼のデフォルメ画像(第2画像)に基づき、風車翼の3D設計データと関連付けられた2D図面上に、損傷部の位置を反映させることができる。これにより、第1撮像装置及び/又は第2撮像装置から求めた損傷部の位置が、風車翼全体中においてどの辺りに位置するかを図面上で視覚的に容易に認識することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の方法において、
前記レーザポインタを用いて得られた前記風車翼の表面の画像に基づき前記2D図面上に前記損傷部の寸法を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0028】
上記(11)の方法によれば、2つのレーザポインタ間の既知の距離と、第1画像に写ったレーザ光の間隔とを参照して求めた損傷部の寸法を、2D図面上に反映させることができる。これにより、損傷部の寸法を2D図面上で視覚的に容易に把握することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れか一つに記載の方法において、
前記UAVの高度を計測し、該高度と前記データ処理装置に予め記録された風車翼データとを用いて前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0030】
上記(12)の方法によれば、計測して得られたUAVの高度と前記データ処理装置に予め記録された風車翼データとを用いることにより、損傷部の正確な位置を2D図面上に反映させることができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の方法において、
前記UAVは、該UAVの高度を計測するためのレーザ計測器をさらに含んでもよい。
【0032】
上記(13)の方法によれば、レーザ計測器によりUAVの高度を計測することで、上記(12)で述べた効果を得ることができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)に記載の方法において、
前記風車翼データは前記風車翼のアジマス角又はピッチ角を含み、
前記風車翼データと前記UAVの前記高度とに基づき前記2D図面上に前記損傷部の位置を反映させるステップをさらに備えていてもよい。
【0034】
上記(14)の方法によれば、風車翼データに風車翼のアジマス角又はピッチ角が含まれることにより、任意の風車翼の配置において取得された第2画像を3D画像で取り込んで2D図面に加工することができる。つまり、任意の風車翼の配置において撮像された損傷部の位置を、図面上に反映させることができる。
【0035】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の検査システムは、
上記(1)乃至(14)の何れか一つに記載の風力発電設備の検査方法を実現するための構成を備える。
【0036】
上記(15)の構成によれば、上記(1)乃至(14)の何れか一つに記載した作用・効果を奏する風力発電設備の検査システムを得ることができる。