(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541803
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20190628BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
H01L29/78 617A
H01L29/78 617N
H01L29/78 622
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-563061(P2017-563061)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公表番号】特表2018-518839(P2018-518839A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】CN2016084245
(87)【国際公開番号】WO2016192624
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】201510305703.X
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515179314
【氏名又は名称】昆山工研院新型平板顕示技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】KUNSHAN NEW FLAT PANEL DISPLAY TECHNOLOGY CENTER CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】515179325
【氏名又は名称】昆山国顕光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】KUNSHAN GO−VISIONOX OPTO−ELECTRONICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】単 奇
(72)【発明者】
【氏名】黄 秀▲チィ▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡 世星
(72)【発明者】
【氏名】張 小宝
(72)【発明者】
【氏名】郭 瑞
(72)【発明者】
【氏名】林 立
(72)【発明者】
【氏名】高 孝裕
【審査官】
辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−082487(JP,A)
【文献】
特開2010−141308(JP,A)
【文献】
特開平07−249778(JP,A)
【文献】
特開2010−123938(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074338(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/200190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ゲート(1)、下部ゲート(4)、上部絶縁層(6)、下部絶縁層(7)、半導体層(5)、ソース(2)及びドレイン(3)を含む薄膜トランジスタであって、
前記下部ゲート(4)の上に前記下部絶縁層(7)が設けられ、前記下部絶縁層(7)の上に前記半導体層(5)が設けられ、前記半導体層(5)は、それぞれ前記ソース(2)とドレイン(3)に重ね接続され、前記半導体層(5)に前記上部絶縁層(6)が被覆され、前記上部絶縁層(6)の上に上部ゲート(1)が設けられ、
前記半導体層(5)における導電チャネルと平行の平面において、前記上部ゲート(1)の正射投影と前記ソース(2)の正射投影との間に第1隙間(8)があり、前記上部ゲート(1)の正射投影と前記ドレイン(3)の正射投影との間に第2隙間(9)があり、
前記第1隙間(8)又は前記第2隙間(9)の幅は、前記半導体層(5)の半導体材料の固有抵抗及び許容可能なリーク電流に基づいて調整され、
前記下部ゲートがターンオン電圧に達していないが、前記上部ゲートがターンオン電圧に達した場合に、前記半導体層(5)を流れるリーク電流は、Ileak=Ud/(2R*W/D)として表され、ただし、Udはドレイン電圧、Rは半導体層(5)の固有抵抗、Wは半導体層(5)の幅、Dは第1隙間(8)又は第2隙間(9)の幅であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記上部絶縁層(6)の表面にソース孔(14)とドレイン孔(15)があり、
前記半導体層(5)は、それぞれ前記ソース(2)とドレイン(3)に重ね接続され、
前記ソース(2)は前記ソース孔(14)により前記半導体層(5)の表面に重ね接続され、前記ドレイン(3)は前記ドレイン孔(15)により前記半導体層(5)の表面に重ね接続されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記半導体層(5)は、それぞれ前記ソース(2)とドレイン(3)に重ね接続され、
前記ソース(2)とドレイン(3)とが前記下部絶縁層(7)の上に設けられ、前記半導体層(5)は同時に前記ソース(2)の表面、ドレイン(3)の表面及び下部絶縁層(7)の表面に重ね接続されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
作動時に、前記上部ゲート(1)の電圧が上部ゲート(1)のターンオン電圧より高く保持されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第1隙間(8)及び/又は第2隙間(9)の幅は1μmを超えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第1隙間(8)及び/又は第2隙間(9)の幅は3μmであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体層(5)の厚さは30nmであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項2に記載の薄膜トランジスタの製造方法であって、
基板に金属層を堆積し、前記金属層をパターン化して下部ゲート(4)を形成するステップと、
前記下部ゲート(4)の表面に下部絶縁層(7)を堆積し、前記下部絶縁層(7)の表面に半導体層(5)を堆積し、さらに、前記半導体層(5)の表面に上部絶縁層(6)を堆積するステップと、
前記上部絶縁層(6)の表面の、ソース(2)とドレイン(3)に対応する位置をそれぞれエッチングして、ソース孔(14)とドレイン孔(15)を形成し、前記ソース孔(14)とドレイン孔(15)の底部は、前記半導体層(5)に導通するステップと、
前記上部絶縁層(6)の表面、ソース孔、及びドレイン孔に金属層を堆積し、前記金属層をパターン化してソース(2)、ドレイン(3)及び上部ゲート(1)を形成し、前記半導体層(5)における導電チャネルと平行の平面において、前記上部ゲート(1)の正射投影と前記ソース(2)の正射投影との間に第1隙間(8)があり、前記上部ゲート(1)の正射投影と前記ドレイン(3)の正射投影との間に第2隙間(9)があるステップと、
を含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記上部ゲート、ソース及びドレインは、一回のパターン化により同時に形成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願者が2015年6月4日に出願した中国出願CN201510305703.X号(発明の名称「薄膜トランジスタ及びその製造方法」)の優先権を主張する。該出願は、全体として参考することにより本願明細書に援用されている。
本発明は、光電表示の技術分野、特に薄膜トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、薄膜トランジスタの移動度を向上させるために、上下ダブルゲート構造を採用して半導体層内にダブルチャンネルを形成するように誘導することにより導電チャネルを拡大することができる。
【0003】
図1は、従来技術で提供するダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタの構造模式図である。
図1に示すように、該薄膜トランジスタの上部ゲート1はソース2とドレイン3に重ねて被覆されている。上部ゲート1と下部ゲート4がともにターンオン電圧(ターンオン電圧は、閾値電圧であり、ゲート電圧が該ターンオン電圧より高いと、半導体層内に導電チャネルを形成するように誘導する。)に達すると、半導体層5内に互いに平行の上下2つの導電チャネルを形成するように誘導することができる。上部ゲート1はソース2とドレイン3に重ねて被覆されている(半導体層5における導電チャネルと平行の平面で、上部ゲート1の正射投影は、それぞれソース2の正射投影とドレイン3の正射投影に一部重なっている)ので、ドレイン3が独立して上の導電チャネルによりソース2との導通を実現することができる。なお、ドレイン3は独立して下の導電チャネルによりソース2との導通を実現することもできる。しかし、このようなダブルゲート構造の薄膜トランジスタは、上下の導電チャネルによる同時導通により移動度の向上を保証することが困難である。それは、プロセス技術によって、上部ゲート1の下の上部絶縁層6と下部ゲートの上の下部絶縁層7の静電容量等のパラメータが整合しにくいことで、上部ゲート1と下部ゲート4とにそれぞれ形成された上下2つの導電チャネルのターンオン電圧が異なるから、従来技術における薄膜トランジスタの構造では、上下の導電チャネルの同時導通が形成しにくいためである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施例は、上記の事情を鑑み、薄膜トランジスタ及びその製造方法を提供することにより、従来技術において薄膜トランジスタの上部ゲートと下部ゲートが上下の導電チャネルの同時導通を実現しにくいという問題を解決する。
【0005】
本発明の実施例が提供する薄膜トランジスタは、上部ゲート、下部ゲート、上部絶縁層、下部絶縁層、半導体層、ソース及びドレインを含み、前記下部ゲートの上に前記下部絶縁層が設けられ、前記下部絶縁層の上に前記半導体層が設けられ、前記半導体層は、それぞれ前記ソースとドレインに重ね接続され、前記半導体層に前記上部絶縁層が被覆され、前記上部絶縁層の上に上部ゲートが設けられ、前記半導体層における導電チャネルと平行の平面において、前記上部ゲートの正射投影と前記ソースの正射投影との間に第1隙間があり、前記上部ゲートの正射投影と前記ドレインの正射投影との間に第2隙間がある。
【0006】
本発明の実施例は、
基板に金属層を堆積し、前記金属層をパターン化して下部ゲートを形成するステップと、
前記下部ゲートの表面に下部絶縁層を堆積し、前記下部絶縁層の表面に半導体層を堆積し、さらに前記半導体層の表面に上部絶縁層を堆積するステップと、
前記上部絶縁層の表面におけるソースとドレインに対応する位置をそれぞれエッチングして、ソース孔とドレイン孔を形成し、前記ソース孔とドレイン孔の底部は前記半導体層に導通するステップと、
前記上部絶縁層表面、ソース孔及びドレイン孔に金属層を堆積し、前記金属層をパターン化して、ソース、ドレイン及び上部ゲートを形成し、前記半導体層における導電チャネルと平行の平面において、前記上部ゲートの正射投影と前記ソースの正射投影との間に第1隙間があり、前記上部ゲートの正射投影と前記ドレインの正射投影との間に第2隙間があるステップと、
を含む薄膜トランジスタの製造方法をさらに提供する。
【0007】
本発明の実施例が提供する薄膜トランジスタは、半導体層における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲートの正射投影とソースの正射投影との間に第1隙間があり、上部ゲートの正射投影と前記ドレインの正射投影との間に第2隙間があるため、上部ゲートは上導電チャネルの導通を独立して形成することができない。下部ゲートがターンオン電圧になった場合に限り、下部ゲートの誘導による下導電チャネルにより上導電チャネルの導通を間接に形成することができ、上下の導電チャネルの同時導通を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来技術のダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタの構造模式図である。
【
図2】本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの構造模式図である。
【
図3】本発明別の実施例が提供する薄膜トランジスタの構造模式図である。
【
図4】本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電原理の模式図である。
【
図5】本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電原理の模式図である。
【
図6】本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電実験結果の図である。
【
図7】本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの製造方法のフロー模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の目的、技術手段、及び利点をより明らかにするために、図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
図2は本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの構造模式図である。
図2に示すように、該薄膜トランジスタは、上部ゲート1、下部ゲート4、上部絶縁層6、下部絶縁層7、半導体層5、ソース2(source)及びドレイン3(drain)を含み、下部ゲート4の上に下部絶縁層7が設けられ、下部絶縁層7の上に半導体層5が設けられ、半導体層5はそれぞれソース2とドレイン3に重ね接続され、半導体層5に上部絶縁層6が被覆され、上部絶縁層6の上に上部ゲート1が設けられ、半導体層5における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲート1の正射投影とソース2の正射投影との間に第1隙間8があり、上部ゲート1の正射投影とドレイン3の正射投影との間に第2隙間9がある。
【0011】
当業者が理解できるように、半導体層5とソース2及びドレイン3との重ね接続の方式は、実際の設計需要に応じて調整されることができるが、半導体層5における導電チャネルとソース2及びドレイン3との導通を実現できればよく、本発明において、半導体層5とソース2及びドレイン3との重ね接続の方式は制限されない。
【0012】
本発明の一実施例においては、
図2に示すように、上部絶縁層6の表面にソース孔14とドレイン孔15とを含み、半導体層5とソース2及びドレイン3との重ね接続の方式は、ソース2が上部絶縁層6の表面のソース孔14により半導体層5の表面に重ね接続され、ドレイン3が上部絶縁層6の表面のドレイン孔15により半導体層5の表面に重ね接続されるように実現される。以上より分かるように、従来技術における上下ダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタと異なり、前記重ね接続方式を採用した場合に、上部ゲート1はソース2とドレイン3の上に重ねて被覆されておらず、ソース2及びドレイン3と同一層にある。さらに、半導体層5における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲート1の正射投影とソース2の正射投影及びドレイン3の正射投影との間にそれぞれ第1隙間8と第2隙間9があるため、半導体層5の、第1隙間8と第2隙間9に対応する領域は常に高抵抗状態にある。そのため、上部ゲート1がターンオン電圧に達し、且つ上部ゲート1に対応する半導体層5において低抵抗状態により上導電チャネルが誘導により形成されたとしても、上導電チャネルとソース2及びドレイン3との導通を実現できず、下部ゲート4がターンオン電圧になった場合に限り、下部ゲート4の誘導による下導電チャネルにより上導電チャネルの導通を間接に形成でき、上下の導電チャネルの同時導通を実現できる。
【0013】
また、
図1に示すように、従来技術において、上部ゲート1はソース2とドレイン3とに重ねて被覆されているので、上部ゲート1の製造のため、パッシベーション層16を別途に設計することによりマスクエッチングを行う必要がある。それにより、コストが増大する。一方、
図2に示す薄膜トランジスタ構造を用いる場合に、上部ゲート1とソース2及びドレイン3とは同一層にあるので、上部ゲート1の製造のため、マスクエッチング工程を別途設計する必要がなく、上部ゲート1、ソース2及びドレイン3は、一回のエッチングにより同時に形成されることができるため、製造コストが低減される。
【0014】
図3は本発明の別の実施例が提供する薄膜トランジスタの構造模式図である。
図2に示す構造と異なり、
図3に示す薄膜トランジスタ構造において、半導体層5とソース2及びドレイン3とに別の重ね接続方式により接続されることで、同様に、上下の導電チャネルの同時導通を実現できる。具体的には、ソース2とドレイン3は下部絶縁層7の上に設けられ、半導体層5は、ソース2の表面、ドレイン3の表面及び下部絶縁層7の表面に同時に重ね接続されている。このようにして、上部ゲート1と下部ゲート4はともにターンオン電圧になると、同様に、半導体層5において、誘導により互いに平行の上下2つの導電チャネルを形成するとともに、上下の導電チャネルとソース2及びドレイン3との同時導通を形成することができる。
【0015】
本発明の一実施例において、半導体層5の厚さは通常薄くされる。それは、ソース2/ドレイン3の電流が半導体層5を破壊して導電チャネルに到達する時の寄生抵抗が大きくなり過ぎることを避けるためである。しかし、導電チャネルの導通状態での深さは約3nm〜15nmであるので、半導体層5における上下の導電チャネルが同時にオンし且つ互いに影響を与えないように、半導体層5の厚さが10nm乃至200nmの範囲に設定されることができる。一実施例において、半導体層5の厚さは、具体的に30nmに設定されてもよい。この厚さは、半導体層5の上下の表面に十分に広い導電チャネルを形成することを保証できるだけでなく、ソース2/ドレイン3と導電チャネルとの重ね接続間の寄生抵抗をできるだけ低減することができる。
【0016】
前述したように、半導体層5における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲート1の正射投影とソース2の正射投影との間に第1隙間8があり、上部ゲート1の正射投影とドレイン3の正射投影との間に第2隙間9がある。ここで、第1隙間8の幅は第1半導体材料の高抵抗領域に対応し、第2隙間9の幅は第2半導体材料の高抵抗領域に対応する。上導電チャネル10とソース2及びドレイン3との間に半導体材料の高抵抗領域があるとともに、薄膜トランジスタの体積をできるだけ減少するために、第1隙間8と第2隙間9の幅は、半導体層5の半導体材料の固有抵抗及び許容可能な最小リーク電流に基づいて調整されることができる。下部ゲート4がターンオン電圧に達していないが、上部ゲートがターンオン電圧に達した場合に、半導体層5を流れるリーク電流は、I
leak=U
d/(2R*W/D)として表されることができる。ただし、U
dはドレイン電圧、Rは半導体層5の固有抵抗、Wは半導体層5の幅、Dμmは第1隙間8/第2隙間9の幅である。
【0017】
本発明の一実施例において、半導体層5に用いられる半導体材料(例えば、金属酸化物)は、固有シート抵抗R=1e+12Ω、ドレイン電圧U
d=10V、半導体層5の幅W=5μm、第1隙間8/第2隙間9の幅D=1μm(ここで、1μmは、上部ゲート1とソース2/ドレイン3との間に第1隙間8/第2隙間9を加工するプロセス限界値である)となることができる場合に、得られたリーク電流I
leak=0.5pAであり、OLEDデバイス製品の需要を満たすことができる。従って、上部ゲート1とソース2/ドレイン3との間にある第1隙間8/第2隙間9の幅は最小1μmに達することができる。本発明の一実施例において、第1隙間8と第2隙間9の幅は具体的に3μmに設定されてもよい。それにより、フォトリソグラフィ装置の安定するプロセス条件での作動を保証でき、比較的に高い加工精度を実現するとともに、上部ゲート1のリーク電流を1pAオーダーに制御でき、同様にOLEDデバイス製品の需要を満たすことができる。本発明において、第1隙間8と第2隙間9の幅は特に制限されない。
【0018】
本発明の一実施例において、半導体層5は、金属酸化物(例えば、IGZO系酸化物)、又は非晶質シリコン、多結晶シリコン、又は微結晶シリコン材料等の半導体材料により製造されることができる。本発明において、半導体層5の製造材料は特に制限されない。
【0019】
本発明の一実施例において、上部ゲート1、下部ゲート4、ソース2及びドレイン3は、Mo金属材料又は他の導電性材料により製造されてもよい。本発明において、上部ゲート1、下部ゲート4、ソース2及びドレイン3の製造材料は、同様に制限されない。
【0020】
図4は本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電原理の模式図である。
図4に示すように、半導体層5とソース2及びドレイン3とは、
図2に示す重ね接続の方式を採用しており、下部ゲート4は下部ゲート4のターンオン電圧に達していないため、半導体層5において下導電チャネルの導通を形成することができない。従って、上部ゲート1は上部ゲート1のターンオン電圧に達したとしても、上部ゲート1がソース2とドレイン3の上に重ねて被覆されず、ソース2及びドレイン3と同一層にあり、一部の上部絶縁層6に被覆され、且つ上部ゲート1とソース2及びドレイン3との間に第1隙間8と第2隙間9があるため、上部ゲート1は、半導体層5における上部ゲート1に対応する比較的に短い上導電チャネル10のみに位置することができる。それにより、該上導電チャネル10とソース2及びドレイン3との間に第1隙間8に対応する半導体材料の高抵抗領域12、第2隙間9に対応する半導体材料の高抵抗領域13があるため、該上導電チャネル10とソース2及びドレイン3とが導通されることができない。以上より分かるように、下部ゲート4が下部ゲート4のターンオン電圧に達していない場合には、上部ゲート1は上部ゲート1のターンオン電圧に達したかどうかに関わらず、上導電チャネル10とソース2及びドレイン3との導通を実現することができない。
【0021】
図5は本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電原理の模式図である。
図5に示すように、半導体層5とソース2及びドレイン3とは、
図2に示す重ね接続の方式を採用しており、下部ゲート4は下部ゲート4のターンオン電圧に達しており、半導体層5における電流の方向は図の矢印に示したものである。具体的には、下部ゲート4は下部ゲート4のターンオン電圧に達したため、半導体層5において導電チャネル11が形成されており、半導体層5の厚さが薄いので、電流はドレイン3から半導体層5を破壊して下導電チャネル11に到達し、下導電チャネル11を経てさらに半導体層5を破壊してソース2を流れる。この場合に、上部ゲート1は上部ゲート1のターンオン電圧に達すると、電流は下導電チャネル11から半導体層5を破壊して上導電チャネル10に到達し、上導電チャネル10を経てさらに半導体層5を破壊し下導電チャネル11に戻り、最後にソース2を流れる。それにより、上導電チャネル10及び下導電チャネル11の同時導通が実現され、移動度の向上効果を奏する。
【0022】
当業者が理解できるように、上導電チャネル10及び下導電チャネル11の同時導通を実現するために、複数の方式により上部ゲート1及び下部ゲート4の回路構造を設置することができる。例えば、回路構造において、上部ゲート1と下部ゲート4を並列設置ではなく、それぞれ独立して設置させ、上部ゲート1の電圧を上部ゲート1のターンオン電圧より高い状態に保持する。しかし、第1隙間8と第2隙間9の存在により、上導電チャネル10はソース2及びドレイン3と導通することはなく、下部ゲート4が下部ゲートのターンオン電圧に達した場合に限り、上部ゲート1は、下部ゲート4の誘導による下導電チャネル11により間接に上導電チャネル10の導通を形成できる。本発明において、上部ゲート1と下部ゲート4各自の回路構造の設置は特に制限されない。
【0023】
図6は本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの導電実験結果図である。
図6に示すように、Vgは下部ゲート4の電圧、Vthは下部ゲート4のターンオン電圧、|Id|は半導体層5に導通する電流の大きさであり、比率とは、本発明の薄膜トランジスタと従来のシングルゲート構造との移動度の比をいう。実験条件は、ドレイン電圧Vd=0.1V、Vg=−10〜20Vである。
図6から分かるように、本発明の実施例が提供する薄膜トランジスタ構造を採用することにより、同様に、従来のシングルゲート薄膜トランジスタに対して2倍以上の移動度を得ることができる。
【0024】
図7は本発明の一実施例が提供する薄膜トランジスタの製造方法フロー模式図である。形成された薄膜トランジスタにおける半導体層5とソース2及びドレイン3とは
図2に示す重ね接続の方式を採用している。
図7に示すように、該薄膜トランジスタの製造方法は、以下のステップを含む。
【0025】
ステップ701:基板に金属層を堆積し、金属層をパターン化して下部ゲート4を形成する。ここで、基板としてガラス板を用いることができる。
【0026】
ステップ702:下部ゲート4の表面に下部絶縁層7を堆積し、下部絶縁層7の表面に半導体層5を堆積し、さらに半導体層5の表面に上部絶縁層6を堆積する。
【0027】
本発明の一実施例において、下部絶縁層7が下部ゲート4に貼り付けられており、且つ下部ゲート4がゲート(gate)とも呼ばれるため、該下部絶縁層7は、ゲート絶縁層(gate insulate)と呼ばれてもよい。
【0028】
本発明の一実施例においては、後に、エッチングによりソース孔14とドレイン孔15を形成する必要があるため、上部絶縁層6は、エッチストップ層(ESL)とも呼ばれてもよい。
【0029】
ステップ703:上部絶縁層6の表面におけるソース2とドレイン3に対応する位置をそれぞれエッチングして、ソース孔14とドレイン孔15を形成し、ソース孔14とドレイン孔15の底部は半導体層5と導通する。それにより、ソース孔14とドレイン孔15に引き続き形成されるソース2とドレイン3は、半導体層5に重ね接続されることができる。
【0030】
ステップ704:上部絶縁層6の表面、ソース孔14、及びドレイン孔15に金属層を堆積し、金属層をパターン化してソース2、ドレイン3、及び上部ゲート1を形成し、半導体層5における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲート1の正射投影とソース2の正射投影との間に第1隙間8があり、上部ゲート1の正射投影とドレイン3の正射投影との間に第2隙間9がある。以上より分かるように、上部ゲート1、ソース2及びドレイン3は同一層にあるので、上部ゲート1の製造のため、マスクエッチング工程を設計する必要がなく、上部ゲート1、ソース2及びドレイン3は一回のパターン化で同時に形成されることができ、製造コストが節約される。最終製造された薄膜トランジスタに、パッシベーション層、陽極を堆積し、又はOLED製造等の他の工程を引き続き行うことができる。
【0031】
本発明の実施例が提供する薄膜トランジスタは、半導体層5における導電チャネルと平行の平面において、上部ゲート1の正射投影とソース2の正射投影との間に第1隙間8があり、上部ゲート1の正射投影とドレイン3の正射投影との間に第2隙間9があるため、上部ゲート1は独立して導電チャネル10の導通を形成できず、下部ゲート4がターンオン電圧になった場合に限り、下部ゲート4の誘導による下導電チャネル11により間接に上導電チャネル10の導通を形成でき、上下の導電チャネルの同時導通を実現できる。
【0032】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨と原則を超えない限り、すべての修正、修改や同等の置換等は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の薄膜トランジスタは、従来の生産設備による工業生産に適され、高集積化、高解像度の液晶パネル等の関連技術分野の製品に応用されることができる。その構造により半導体層上下の導電チャネルの同時導通性能が改善される。
【0034】
本発明の薄膜トランジスタ製造方法は、従来の生産設備を十分に利用して生産プロセスを形成することができ、大規模な工業生産に適され、形成された薄膜トランジスタが高移動度を有する。
【符号の説明】
【0035】
1 上部ゲート
4 下部ゲート
6 上部絶縁層
7 下部絶縁層
5 半導体層
2 ソース
3 ドレイン
8 第1隙間
9 第2隙間
10 上導電チャネル
11 下導電チャネル
12 第1半導体材料の高抵抗領域
13 第2半導体材料の高抵抗領域
14 ソース孔
15 ドレイン孔
16 パッシベーション層