(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合部が、前記突条部の先端側において前記水路形成部材と前記蓋部材との装着方向に対して傾斜する傾斜面を有するとともに、当該傾斜面の形成部位において先端側に向かうに従って幅狭となるように形成されている1から3のいずれか一項に記載の排水案内具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水路形成部材と蓋部材との間に排水路を備える排水案内具において、部品点数を増加させることなくドレン水の漏洩を適切に抑止することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排水案内具は、
ドレン水を排水するための排水路が形成された水路形成部材と、
前記水路形成部材に対して着脱自在であるとともに装着状態で前記排水路を覆う蓋部材と、を備え、
前記水路形成部材は、前記排水路に対して幅方向の両側に設けられた一対の被係合部を含み、
前記蓋部材は、一対の前記被係合部に係合する一対の係合部を含み、
一対の前記被係合部は、前記排水路に沿って延びる凹条部と、当該凹条部における上部開口において先端部どうしを向かい合わせた状態で対向する一対のリブ状栓体と、をそれぞれ有し、
一対の前記係合部は、前記凹条部に沿って延び且つ一対の前記リブ状栓体の先端部どうしの間隔よりも幅広に形成された突条部をそれぞれ有する。
【0007】
この構成によれば、水路形成部材の凹条部の上部開口において先端部どうしを向かい合わせた状態で一対のリブ状栓体が設けられ、その一対のリブ状栓体どうしが対向する隙間に、蓋部材の突条部が嵌合する。このとき、突条部はリブ状栓体の先端部どうしの間隔よりも幅広に形成されているので、一対のリブ状栓体は、突条部の進入に伴って凹条部の奥側に向かって傾くように弾性変形する。そして、水路形成部材に対する蓋部材の装着完了後は、一対のリブ状栓体が、蓋部材の突条部に対して幅方向(厚み方向)の両側から弾性復元力によって密着する。よって、一方のリブ状栓体と突条部との密着部及び他方のリブ状栓体と突条部との密着部の2箇所でのシールが実現されるので、ドレン水の漏洩を適切に抑止することができる。しかも、蓋部材の係合部と水路形成部材の被係合部との嵌合構造を利用してシールが実現されるので、シール材の設置が不要であり、部品点数が増加することもない。
【0008】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0009】
1つの態様として、前記係合部が、前記突条部の先端側において前記突条部よりも幅広且つ前記凹条部よりも幅狭に形成された膨大部をさらに有すると好適である。
【0010】
この構成によれば、膨大部が凹条部よりも幅狭に形成されるので、突条部の先端側に膨大部を有する係合部を、凹条部に対して適切に挿入させることができる。また、膨大部が突条部よりも幅広に形成されるので、一対のリブ状栓体が突条部に対して幅方向の両側から弾性復元力によって密着した状態で、抜け止めを図ることができる。
【0011】
1つの態様として、前記膨大部が、前記突条部に対して幅方向の一方側にのみ向かって膨出するように形成されていると好適である。
【0012】
この構成によれば、膨大部が突条部に対して幅方向の両側に向かって膨出するように形成された構成と比較して、凹条部に対する係合部の挿入時の抵抗を小さく抑えることができる。よって、水路形成部材に対する蓋部材の装着操作を容易に行うことができる。
【0013】
1つの態様として、前記係合部が、前記突条部の先端側において前記水路形成部材と前記蓋部材との装着方向に対して傾斜する傾斜面を有するとともに、当該傾斜面の形成部位において先端側に向かうに従って幅狭となるように形成されていると好適である。
【0014】
この構成によれば、突条部の先端側に形成された傾斜面によって一対のリブ状栓体を円滑に弾性変形させながら挿入することができるので、凹条部に対する係合部の挿入時の抵抗を小さく抑えることができる。よって、水路形成部材に対する蓋部材の装着操作を容易に行うことができる。
【0015】
1つの態様として、前記突条部の厚みが、一対の前記リブ状栓体の先端部どうしの間隔の1.5倍以上2倍以下であると好適である。
【0016】
発明者らの検討によれば、突条部の厚みが一対のリブ状栓体の先端部どうしの間隔の1.25倍以下である場合には、基本的にはドレン水の漏洩を適切に抑止できるものの、過酷条件下ではドレン水が僅かに漏洩する場合があった。これに対して、突条部の厚みを一対のリブ状栓体の先端部どうしの間隔の1.5倍以上とすることで、ドレン水の漏洩を確実かつ適切に抑止できることが確認された。一方、突条部の厚みを一対のリブ状栓体の先端部どうしの間隔の2倍を超えて幅広にすると、水路形成部材と蓋部材との着脱操作の円滑性が損なわれる可能性がある。これらの点に鑑み、上記の構成によれば、水路形成部材と蓋部材との円滑な着脱操作を可能としつつ、ドレン水の漏洩を確実かつ適切に抑止することができる。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
排水案内具の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の排水案内具1は、ドレン水を排水するための排水路22が形成された水路形成部材2と、水路形成部材2に対して着脱自在であるとともに装着状態で排水路22を覆う蓋部材3とを備える。この排水案内具1は、以下の点によって特徴付けられる。すなわち、水路形成部材2は、排水路22に対して幅方向Wの両側に設けられた一対の被係合部25を含み、蓋部材3は、一対の被係合部25に係合する一対の係合部32を含む。一対の被係合部25は、排水路22に沿って延びる凹条部25Aと、当該凹条部25Aにおける上部開口において先端部どうしを向かい合わせた状態で対向する一対のリブ状栓体25Bとをそれぞれ有する。そして、一対の係合部32は、凹条部25Aに沿って延び且つ一対のリブ状栓体25Bの先端部どうしの間隔Dよりも幅広に形成された突条部32Aをそれぞれ有する。これにより、部品点数を増加させることなくドレン水の漏洩を適切に抑止することができる。以下、本実施形態に係る排水案内具1について、詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の説明において、各部材についての「延在方向」とは、ドレン水の排水経路に沿って延びる方向を表す。この場合において、排水案内具1の延在方向をここでは特に「長手方向L」と言う。また、「幅方向W」とは、長手方向Lに直交する方向のうち、水路形成部材2の底面に沿う方向を表す。また、以下の説明で用いる位置や方向、寸法等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の排水案内具1は、排水案内システム100に組み込まれて、建築物の一例としての集合住宅に設置されている。排水案内システム100は、建築物9の共用廊下91に面して設けられるパイプシャフト92から、共用廊下91の床面93を経由して、排水構造部95までに亘って設けられる。パイプシャフト92内に設置される給湯装置7から延出するドレン管77と床面93とに亘って接続案内具5が設けられ、床面93上において接続案内具5と排水構造部95とに亘って排水案内具1が設けられる。本実施形態では、排水構造部95は、共用廊下91におけるパイプシャフト92とは反対側の端部に窪み形成された排水溝95Aであり、排水案内具1は、接続案内具5と排水溝95Aとに亘って設けられている。
【0022】
図2に示すように、給湯装置7は、第一熱交換器71と第二熱交換器72とバーナ74とを備えている。第一熱交換器71及び第二熱交換器72は、第一熱交換器71が第二熱交換器72に対して下流側に位置する状態で、湯水流通路73に設けられている。湯水流通路73は、ループ状/非ループ状のいずれの状態に形成されていても良い。第一熱交換器71は、バーナ74に供給される燃料ガスの燃焼によって生じる燃焼ガスの排気顕熱を利用して、湯水流通路73内の湯水を加熱する。第二熱交換器72は、第一熱交換器71との熱交換で温度が低下した燃焼ガスの排気潜熱を利用して、第一熱交換器71よりも上流側で湯水流通路73内の湯水を予加熱する。このように、本実施形態の給湯装置7は、燃焼ガスによる排気顕熱に加えて排気潜熱をも利用して温水を生成する潜熱回収型給湯装置として構成されている。
【0023】
給湯装置7は、ドレン受け75とドレンタンク76とをさらに備えている。ドレン受け75は、第一熱交換器71及び第二熱交換器72の下方に配置され、潜熱回収用の第二熱交換器72の表面での凝縮によって生じるドレン水を受ける。ドレン受け75にはドレンタンク76が接続されており、ドレン受け75にて受けられたドレン水はドレンタンク76に貯留される。ドレンタンク76に流入するドレン水は酸性となっているため、中和処理又は希釈処理が施されることが好ましい。その後、ドレン水は、適宜のタイミングで、給湯装置7のドレンタンク76から延出するドレン管77を通って排出される。なお、ドレン管77は、可撓性を有する材料(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂とを混合した樹脂、熱可塑性エラストマー等)で構成されている。
【0024】
図3及び
図4に示すように、排水案内具1は、水路形成部材2と、この水路形成部材2に対して着脱自在な蓋部材3とを備えている。水路形成部材2及び蓋部材3は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等の熱可塑性エラストマー;等で形成することができる。搬送時や施工時の取り扱いの容易性の観点からは、可撓性を有する材料(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂とを混合した樹脂、熱可塑性エラストマー等)が好ましい。これらの中では、一例として、軟質の塩化ビニル樹脂を好ましく用いることができる。
【0025】
水路形成部材2は、ドレン水を排水するための排水路22が形成された本体部21と、この本体部21に対して幅方向Wの両側に設けられた一対のスロープ部27とを含む。本体部21は、排水路22の形成部を提供する水路形成部材2の主要部分である。本体部21には、左右対称状の排水路22が形成されている(
図4を参照)。本実施形態の排水路22は、幅方向Wの中央部において長手方向Lに沿って延びるように設けられた中央堰部23によって、第一流路部22Aと第二流路部22Bとに隔離可能に形成されている。本実施形態では、これらの対をなす第一流路部22A及び第二流路部22Bにより、“一対の平行流路部”が構成されている。
【0026】
中央堰部23は、幅方向Wの両端部から幅方向Wの中央に向かうに従って次第に上方となる山型状の隆起部として構成されている。この中央堰部23により、物理的には1つの空間からなる排水路22が、機能的には2つの流路部(第一流路部22A及び第二流路部22B)に隔離可能となっている。排水案内具1を流れるドレン水の水量が少ない場合には、第一流路部22Aと第二流路部22Bとは互いに独立した流路部として機能する。ドレン水の水量が規定量を超えて多くなると、ドレン水が中央堰部23を乗り越えて移動し、第一流路部22Aと第二流路部22Bとが一体の流路部として機能する。排水路22(第一流路部22A及び第二流路部22B)は、例えば1/50〜1/200程度(好ましくは1/100程度)の水勾配となるように設置されている。
【0027】
本体部21における排水路22の幅方向Wの両側には、一対の側堤部24が形成されている。側堤部24は、所定幅を有しつつ長手方向Lに沿って延びるように形成されている。蓋部材3は、この側堤部24の上面に載置される状態で、水路形成部材2に取り付けられる。側堤部24は、蓋部材3を載置支持するための“支持部”としても機能する。一対の側堤部24には、被係合部25がそれぞれ形成されている。すなわち、水路形成部材2は、排水路22に対して幅方向Wの両側に設けられた一対の被係合部25を含む。本実施形態では、被係合部25は、側堤部24の上面に開口しつつ長手方向L(すなわち、側堤部24の延在方向)に沿って延びるように形成されている。被係合部25には、蓋部材3の係合部32が係合される。
【0028】
スロープ部27は、全体として、本体部21側から幅方向Wの外側に向かうに従って低位となるように形成されている。スロープ部27は、床面93との一体感が創出されやすいように、例えば1°〜10°程度の比較的緩やかな傾斜角度で形成されている。このような傾斜角度であれば、人がその上を歩いても傾斜を感知しにくいという利点がある。また、バリアフリーにも対応可能である。本実施形態では、スロープ部27の上面には、長手方向Lに沿って延びる凹凸部28が形成されている。このような凹凸部28を備えることで、スロープ部27に滑り止め効果を付与することができるという利点がある。
【0029】
図4に示すように、蓋部材3は、幅方向Wの中央部に設けられる天板部31と、この天板部31における幅方向Wの両側に設けられる一対の係合部32とを含む。天板部31は、排水路22の上方開口部を覆う蓋部材3の主要部分である。係合部32は、天板部31における幅方向Wの両端部に、下方に向かって突出しつつ長手方向L(すなわち、被係合部25の延在方向)に沿って延びるように形成されている。一対の係合部32は、それぞれ対応する被係合部25に係合する。これらの係合部32と被係合部25との嵌合及び離脱に応じて、蓋部材3は、水路形成部材2に対して着脱自在となっている。そして、水路形成部材2に蓋部材3が装着された状態(装着状態)で、蓋部材3は水路形成部材2に形成された排水路22を覆う。蓋部材3は、装着状態で排水路22の上方開口部を覆う。
【0030】
図1に示すように、内部に排水路22を有する排水案内具1は、パイプシャフト92の外部に設置されている。排水案内具1は、共用廊下91を横断する状態で、当該共用廊下91に設置されている。排水案内具1は、その第一端部E1が排水構造部95(本例では排水溝95A)に臨む状態で、共用廊下91の床面93に設置されている。排水案内具1の第二端部E2(第一端部E1とは反対側の端部)には、接続案内具5が接続されている。
【0031】
図1及び
図5に示すように、接続案内具5は、パイプシャフト92内に設置された給湯装置7よりも鉛直下側において、パイプシャフト92の内外に亘って設けられている。接続案内具5は、給湯装置7から延出するドレン管77と、排水案内具1の第二端部E2とを連通接続している。接続案内具5は、互いに接続される第一接続案内部材51と第二接続案内部材55とアダプタ部材59とを含んでいる。第一接続案内部材51、第二接続案内部材55、及びアダプタ部材59は、水路形成部材2及び蓋部材3に関して説明した各種の材料を用いて形成することができる。それらの中では、一例として、軟質の塩化ビニル樹脂を好ましく用いることができる。
【0032】
第一接続案内部材51は、ドレン管77の下流側端部に接続されている。第一接続案内部材51は、上下方向に沿って配置される第一延在部51Aと、この第一延在部51Aに対して交差する方向(本例では水平方向)に沿って配置される第二延在部51Bとを有する。第一延在部51Aの内部には、ドレン管77との接続口から下方に延びる第一流下水路部52が形成されている。第二延在部51Bの内部には、第一流下水路部52の下端部からパイプシャフト92の外部に向かって水平方向に延びる水平水路部53が形成されている。本実施形態では、水平水路部53には、第一流下水路部52側から排水案内具1側(第二接続案内部材55側)に向かうに従って次第に下方となる勾配(下り勾配)が設けられている。下り勾配は、例えば1/10〜1/200程度(好ましくは1/100程度)に設定されて良い。但し、そのような構成に限定されることなく、水平水路部53に下り勾配が設けられなくても良い。
【0033】
第二接続案内部材55は、第一接続案内部材51(第二延在部51B)の下流側端部に接続されている。第一接続案内部材51と第二接続案内部材55とが接続された状態で、これらは全体としてクランク状の屈曲形状を呈する。第二接続案内部材55の内部には、水平水路部53に連通されて下方に延びる第二流下水路部56が形成されている。本実施形態では、第二流下水路部56の上流側領域に、上下方向に沿う案内板57が設置されている。案内板57は、そのエッジ部分が第二流下水路部56における水平水路部53側の壁面に接する状態で設置されている。このような案内板57を備えることで、第一接続案内部材51の水平水路部53を流れてくるドレン水を効率的に第二流下水路部56へと導くことができる。
【0034】
図3及び
図5に示すように、アダプタ部材59は、第二接続案内部材55(第二流下水路部56)の下流側端部に接続されている。また、アダプタ部材59は、排水案内具1に接続されている。アダプタ部材59は、給湯装置7で生じて第一接続案内部材51及び第二接続案内部材55の内部を通って自然流下してきたドレン水を、排水案内具1の内部の排水路22へと円滑に導く役割を果たす。流入したドレン水は、排水路22を通って、建築物9の排水構造部95(本例では排水溝95A)へと排水される。
【0035】
ところで、排水案内具1の設置箇所(本例では建築物9の共用廊下91)の近傍の見栄え及び環境等を良好に保つためには、水路形成部材2と蓋部材3との装着面間からのドレン水の外部への漏洩を適切に抑止することが必要である。この場合において、コスト低減の観点からは、例えばシール材等を追加的に設けることなく、部品点数を増加させずにドレン水の漏洩を適切に抑止できることが好ましい。この点に鑑み、本実施形態の排水案内具1は、以下に説明するような防水構造を備えている。
【0036】
図6に示すように、水路形成部材2の一対の被係合部25は、長手方向L(又は排水路22)に沿って延びる凹条部25Aと、当該凹条部25Aにおける上部開口に設けられた一対のリブ状栓体25Bとをそれぞれ有する。凹条部25Aは、側堤部24の上面から凹状に窪むように形成されている。凹条部25Aは、矩形状(本例では底部の隅部が丸みを帯びた矩形状)の断面形状を有する溝部として構成されている。この凹条部25Aは、蓋部材3の係合部32よりも幅広に形成されている。凹条部25Aの幅(幅方向Wの長さ)Cは、係合部32の最大幅よりも大きく設定されている。
【0037】
1つの凹条部25Aに対して2つ一組で設けられた一対のリブ状栓体25Bは、凹条部25Aの上部開口において、凹条部25Aにおける幅方向Wの両側の内壁から互いに反対向きに突出するように形成されている。一対のリブ状栓体25Bは、先端部どうしを向かい合わせた状態で対向している。本実施形態では、一対のリブ状栓体25Bは、先端部どうしを隙間を隔てて向かい合わせた状態で対向している。一対のリブ状栓体25Bのそれぞれの突出長さ(凹条部25Aにおける対応する内壁からの突出長さ)は、それらの総和が凹条部25Aの幅C以下となるように設定されている。つまり、一方のリブ状栓体25Bの突出長さと他方のリブ状栓体25Bの突出長さとの合計長さが、凹条部25Aの幅C以下となるように設定されている。本実施形態では、一対のリブ状栓体25Bは、互いに同程度の突出長さを有しており、本例では凹条部25Aの幅Cのおよそ1/3の長さとなっている。この場合、一対のリブ状栓体25Bの先端部どうしの間隔(幅方向Wの間隔)Dは、凹条部25Aの幅Cのおよそ1/3であり、1つのリブ状栓体25Bの突出長さと同程度である。
【0038】
蓋部材3の一対の係合部32は、長手方向L(すなわち、凹条部25Aの延在方向)に沿って延びる突条部32Aをそれぞれ有する。突条部32Aは、凹条部25Aの形成位置に対応する位置において、天板部31の下面から下方に向かって突出するように形成されている。突条部32Aは、一対のリブ状栓体25Bの先端部どうしの間隔(以下、「栓体間間隔」と言う)Dよりも幅広に形成されている。突条部32Aの厚み(幅方向Wの厚み)Tは、少なくとも栓体間間隔Dよりも大きく設定されていれば良く、例えば栓体間間隔Dの1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、・・・等であって良い。突条部32Aの厚みTは、例えば栓体間間隔Dの1.25倍以上であることが好ましく、栓体間間隔Dの1.5倍以上であることが特に好ましい。
【0039】
このような突条部32Aに係るサイズ設定により、一対のリブ状栓体25Bどうしが対向する隙間に突条部32Aが嵌合するとき、一対のリブ状栓体25Bは、
図6の下段に示すように、突条部32Aの進入に伴って凹条部25Aの奥側に向かって傾くように弾性変形する。そして、水路形成部材2に対する蓋部材3の装着完了後は、一対のリブ状栓体25Bが、突条部32Aに対して幅方向W(厚み方向)の両側から弾性復元力によって密着する。こうして、一対のリブ状栓体25Bの一方と突条部32Aとの密着部、及び、一対のリブ状栓体25Bの他方と突条部32Aとの密着部の2箇所でのシールが実現される。排水路22に対して幅方向Wの両側で、それぞれ二重のシールが施されるので、ドレン水の漏洩を適切に抑止することができる。しかも、水路形成部材2の被係合部25と蓋部材3の係合部32との嵌合構造を利用してシールが実現されるので、シール材を別途設置する必要もない。
【0040】
特に本実施形態では、一対のリブ状栓体25Bのそれぞれの突出長さが凹条部25Aの幅Cのおよそ1/3に設定され、栓体間間隔Dも凹条部25Aの幅Cのおよそ1/3となっている。これにより、一方のリブ状栓体25Bの突出長さと栓体間間隔Dと他方のリブ状栓体25Bの突出長さとの比が、およそ1:1:1となっている。そして、それぞれのリブ状栓体25Bの突出長さと同程度の栓体間間隔Dに、当該栓体間間隔Dよりも幅広に形成された突条部32Aが嵌合している。このようなリブ状栓体25B及び突条部32Aに係るサイズ設定により、突条部32Aとの嵌合時における一対のリブ状栓体25Bの弾性変形量を好適量とすることができる。その結果、一対のリブ状栓体25Bによる弾性復元力を好適な大きさとすることができ、上述したシール性(止水性)を良好に得ることができる。
【0041】
なお、栓体間間隔Dに対して突条部32Aの厚みTが過大となると、一対のリブ状栓体25Bどうしの隙間に突条部32Aを挿入させにくくなり、水路形成部材2に対する蓋部材3の装着操作の円滑性が損なわれる可能性がある。また、一対のリブ状栓体25Bが過度に変形して十分な弾性復元力(ひいては密着性)が得られない可能性がある。この点を考慮すれば、突条部32Aの厚みTは、例えば栓体間間隔Dの2.5倍以下であることが好ましく、栓体間間隔Dの2倍以下であることが特に好ましい。
【0042】
本実施形態では、蓋部材3の一対の係合部32は、突条部32Aに加えて、突条部32Aの先端側(装着方向Iの先端側)に形成された膨大部32Bをそれぞれ有する。なお、「突条部32Aの先端側」とは、装着状態において突条部32Aにおける一対のリブ状栓体25Bとの密着部よりも先端側となる位置を表す。膨大部32Bは、突条部32Aよりも幅広に形成されている。膨大部32Bは、その最大厚み(幅方向Wの最大厚み)が突条部32Aの厚みTよりも大きくなるように幅方向Wに膨らんで形成されている。本実施形態では、膨大部32Bは、突条部32Aに対して幅方向Wの一方側にのみ向かって膨出するように形成されている。膨大部32Bは、幅方向Wの中央側(排水路22側)にのみ向かって膨出するように形成されている。
【0043】
このような膨大部32Bを備えることで、一対のリブ状栓体25Bが突条部32Aに対して幅方向Wの両側から弾性復元力によって密着した状態で、膨大部32Bが離脱抑止部として機能する。つまり、仮に意図せず係合部32が被係合部25から抜け出る方向に移動したとしても、凹条部25Aの奥側に向かって傾いたリブ状栓体25Bの先端部が膨大部32Bに当接して、それ以上の移動が規制される。よって、蓋部材3の抜け止めを図ることができ、水路形成部材2と蓋部材3との装着状態を適切に維持することができる。もちろん、人為的に所定以上の大きさの力を加えることで、水路形成部材2から蓋部材3を脱着させることは可能である。
【0044】
なお、膨大部32Bは、凹条部25Aよりも幅狭に形成されている。よって、突条部32Aの先端側に膨大部32Bを有する係合部32を、凹条部25Aに対して適切に挿入させることができる。
【0045】
本実施形態では、係合部32は、水路形成部材2と蓋部材3との装着方向Iに対して傾斜する傾斜面32iを有する。傾斜面32iは、膨大部32Bの形成位置を基端部として、係合部32の先端側(装着方向Iの先端部側)に向かって形成されている。本実施形態では、傾斜面32iは、基端部側から先端側に向かうに従って、幅方向Wの中央側(排水路22側)から幅方向の外側(スロープ部27側)に向かって一定の傾きで傾斜するように形成されている。このような平坦状の傾斜面32iを備えることで、係合部32は、傾斜面32iの形成部位において、先端側に向かうに従って幅狭となるように形成されている。係合部32の先端部の厚み(幅方向Wの厚み)は、栓体間間隔D未満に設定されている。
【0046】
水路形成部材2に対する蓋部材3の装着操作時には、まず、一対のリブ状栓体25Bどうしが対向する隙間に、係合部32における幅狭の先端部が挿入される。係合部32の先端部の厚みは栓体間間隔Dよりも小さいので、その挿入操作を容易に行うことができる。蓋部材3をさらに押し込む際、係合部32の傾斜面32iは“ガイド面”として機能し、係合部32の挿入深さが深くなるに従って一対のリブ状栓体25Bを徐々に弾性変形させるように作用する。よって、一対のリブ状栓体25Bを円滑に弾性変形させながら、装着操作を行うことができる。凹条部25Aに対する係合部32の挿入時の抵抗を小さく抑えることができるので、水路形成部材2に対する蓋部材3の装着操作を容易に行うことができる。
【0047】
さらに本実施形態では、一対のリブ状栓体25Bの上面には、装着方向Iに対して傾斜する傾斜面25iがそれぞれ形成されている。傾斜面25iは、リブ状栓体25Bの先端側に向かうに従って凹条部25A側(凹条部25Aの底側)に向かうように、一定の傾きで傾斜するように形成されている。このような傾斜面25iは、水路形成部材2に対する蓋部材3の装着操作時に、一対のリブ状栓体25Bどうしが対向する隙間へと係合部32を誘導する“第2のガイド面”として機能する。よって、この点からも、水路形成部材2に対する蓋部材3の装着操作を容易に行うことができる。
【0048】
本実施形態の排水案内具1について、止水性能に関する評価試験を行った。この評価試験では、突条部32Aの厚みTが互いに異なる5種類の排水案内具1を準備した。具体的には、突条部32Aの厚みTがそれぞれ栓体間間隔Dの1倍、1.25倍、1.5倍、1.88倍、2倍に設定された5種類の排水案内具1を準備した。排水案内具1の第一端部E1を密閉した状態で、第二端部E2に試験水導入管を接続して1mの高さとなるように立設させた。試験水導入管に試験水を満たして水圧をかけた際の、水路形成部材2と蓋部材3との装着面間からのドレン水の漏洩の有無を、目視によって観察した。評価結果を下表に示す。
【0050】
試験例Aでは多量のドレン水の漏洩が認められたのに対して、試験例B〜Eでは、ドレン水の漏洩が認められないか、たとえ認められたとしてもその漏洩量はごく僅か(滲みが生じる程度)であった。このことから、突条部32Aの厚みTを栓体間間隔Dよりも大きくする(少なくとも1.25倍以上とする)ことで、ドレン水の漏洩を適切に抑止できることが確認された。特に、試験例C〜Eでは、1mの高さ分の水圧をかけた過酷条件下でも、ドレン水の漏洩は全く認められなかった。このことから、突条部32Aの厚みTを栓体間間隔Dの1.5倍以上とすることで、ドレン水の漏洩を確実に防止できることが確認された。
【0051】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、係合部32が突条部32Aに加えて膨大部32Bを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図7に示すように、係合部32が膨大部32Bを有さずに突条部32Aのみを有しても良い。このような構成であっても、一対のリブ状栓体25Bと突条部32Aとの間に二重のシールが施されるので、ドレン水の漏洩を適切に抑止することができる。
【0052】
(2)上記の実施形態では、係合部32が傾斜面32iを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図8に示すように、係合部32が傾斜面32iを有さずに、例えば断面半円状の膨大部32Bを有するように構成されても良い。
【0053】
(3)上記の実施形態では、膨大部32Bが突条部32Aに対して幅方向Wの一方側にのみ向かって膨出するように形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図9に示すように、膨大部32Bが突条部32Aに対して幅方向Wの両側に向かって膨出するように形成され、例えば円状(真円状、長円状、楕円状、・・・等)の断面形状を有するように形成されても良い。この場合、膨大部32Bにおける突条部32Aに対して幅方向Wの両側に向かって膨出する部分のそれぞれに、互いに反対向きに傾斜する一対の傾斜面32iが形成されても良い。
【0054】
(4)上記の実施形態では、スロープ部27の上面に凹凸部28が形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、スロープ部27が凹凸部28を有さずに、スロープ部27の上面が平坦状の傾斜面に形成されても良い。
【0055】
(5)上記の実施形態では、排水案内具1が、接続案内具5と排水構造部95の一例としての排水溝95Aとに亘って設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、排水案内具1は、例えば建築物9の外壁に沿って上下方向に配設された雨水管(排水溝95Aとの接続管を含む)や、床面93を貫通する状態に埋設された排水管等と、接続案内具5とに亘って設けられても良い。
【0056】
(6)上記の実施形態では、排水案内具1が建築物9の一例としての集合住宅の共用廊下91に設置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、排水案内具1は、例えばベランダ等に設置されて用いられても良い。また、排水案内具1は、例えば建築物9の他の一例としての戸建住宅等に設置されて用いられても良い。
【0057】
(7)上記の実施形態では、排水案内具1が、給湯装置7で生じるドレン水の排水を案内するために用いられる例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば排水案内具1は、空調装置の室内機及び室外機の少なくとも一方で生じるドレン水の排水を案内するために用いられても良い。
【0058】
なお、上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0059】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。