特許第6542005号(P6542005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542005
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】厚さ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   G01B15/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-72930(P2015-72930)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191684(P2016-191684A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米川 栄
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−258146(JP,A)
【文献】 特開昭64−054210(JP,A)
【文献】 特開2001−004350(JP,A)
【文献】 特開昭63−071610(JP,A)
【文献】 実開昭62−193505(JP,U)
【文献】 特開2014−021099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して放射線を照射する放射線源と、
前記測定対象物を介して、前記放射線源と対向する位置に複数配置され、当該測定対象物を透過した放射線を検出する、複数の放射線検出部と、
前記放射線源と、前記複数の放射線検出の各々と、の間を前記測定対象物が通過する時に、前記測定対象物のパスアングル変動が生じている場合に、当該複数の放射線検出部の出力結果に基づいて、前記測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の厚さ、およびパスアングル変動による前記測定対象物の傾きの角度を算出する制御部と、を備え、
前記複数の放射線検出部の各々は、パスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の表面からの垂直方向を示した軸に対して、所定の角度傾けられて設置され、
前記制御部は、式(1)および式(2)により、パスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の厚さを算出し、式(3)により、パスアングル変動が生じている場合の前記測定対象物の傾きの角度を算出する、
厚さ測定装置。
【数1】
tは、前記測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の厚さであり、
、t、およびtは、前記測定対象物のパスアングル変動が生じている場合に、前記複数の放射線検出部の各々によって測定された前記測定対象物の厚みであり、
φは、前記複数の放射線検出部の相互の傾きの角度であり、
A=a/(−d)、B=b/(−d)、C=c/(−d)、D=d/(−d)=−1であり、
θは、前記測定対象物のパスアングル変動が生じている場合の前記測定対象物の傾きの角度である。
【請求項2】
前記放射線検出を3個以上備える、
請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項3】
前記放射線検出を4個以上備え、
前記制御部は、前記放射線源と、前記4個以上の放射線検出の各々と、の間を前記測定対象物が通過する時に、前記測定対象物のパスアングル変動が生じている場合に、前記4個以上の放射線検出のうちいずれか3個の出力結果に基づいて、前記測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の厚さを算出する、
請求項2記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記4個以上の放射線検出の出力結果のうち、異常値か否かを判断する閾値を満たした出力結果に基づいて、前記測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の前記測定対象物の厚さを算出する、
請求項3記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
前記放射線源が放射する前記放射線は、X線又はγ線である、
請求項1乃至のいずれか一つに記載の厚さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板の圧延工程では、圧延された金属板に放射線を照射し、金属板を透過後の放射線の減衰量から、当該金属板の厚さを測定する厚さ測定装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−128756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、金属板の厚みを計測する際に、当該金属板にパスアングル変動が生じている(金属板が傾いている)場合に、当該金属板の厚みを計測する際に誤差が生じる可能性があった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、金属板にパスアングル変動が生じている場合でも厚みの計測誤差を抑止する厚さ測定装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の厚さ測定装置は、放射線源と、複数の放射線検出部と、制御部と、を備える。放射線源は、測定対象物に対して放射線を照射する。複数の放射線検出部は、測定対象物を介して、放射線源と対向する位置に複数配置され、当該測定対象物を透過した放射線を検出する。制御部は、放射線源と、複数の放射線検出の各々と、の間を測定対象物が通過する時に、測定対象物のパスアングル変動が生じている場合に、当該複数の放射線検出部の出力結果に基づいて、測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の測定対象物の厚さ、およびパスアングル変動による測定対象物の傾きの角度を算出する。複数の放射線検出部の各々は、パスアングル変動が生じていない場合の測定対象物の表面からの垂直方向を示した軸に対して、所定の角度傾けられて設置される。また、制御部は、式(1)および式(2)により、パスアングル変動が生じていない場合の測定対象物の厚さを算出し、式(3)により、パスアングル変動が生じている場合の測定対象物の傾きの角度を算出する。
【数1】
tは、測定対象物のパスアングル変動が生じていない場合の測定対象物の厚さであり、
、t、およびtは、測定対象物のパスアングル変動が生じている場合に、複数の放射線検出部の各々によって測定された測定対象物の厚みであり、
φは、複数の放射線検出部の相互の傾きの角度であり、
A=a/(−d)、B=b/(−d)、C=c/(−d)、D=d/(−d)=−1であり、
θは、測定対象物のパスアングル変動が生じている場合の測定対象物の傾きの角度である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態のX線厚さ測定装置の構成を例示したブロック図である。
図2図2は、実施形態の制御部で実現されるソフトウェア構成を例示したブロック図である。
図3図3は、実施形態の測定対象物と、複数の電離箱と、の間の位置関係を例示した図である。
図4図4は、実施形態の複数の電離箱の測定値の相互関係を例示した図である。
図5図5は、実施形態の厚さ測定装置の制御部における、測定対象物の厚さ算出処理の手順を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の第1の電離箱処理部における、厚みの算出手順の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に実施形態の厚さ測定装置について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態のX線厚さ測定装置の構成を例示したブロック図である。図1に示されるように、本実施形態のX線厚さ測定装置1は、X線源101と、4個の電離箱121〜124と、4個のAD変換器131〜134と、制御部100と、を備える。
【0010】
X線源101は、測定対象物150に対してX線を照射するX線管111を有する。
【0011】
4個の電離箱121〜124は、測定対象物150を介して、X線源101と対向する位置に複数配置されている。そして、4個の電離箱121〜124は、測定対象物150を透過したX線を検出し、X線検出結果を示したアナログ信号を出力する。
【0012】
電離箱は、2枚の電極で挟まれ、ガスで満たされた円筒状の装置とする。電離箱121〜124に放射線が入った場合に通電が生じる。これにより、電離箱121〜124は、X線(放射線)を検出できる。
【0013】
また、X線(放射線)が、測定対象物150を通過する際に減衰が生じるが、厚さによって、減衰率が異なる。そこで、本実施形態では、X線が測定対象物150を透過した際に検出される減衰量に基づいて厚さを測定する。
【0014】
また、本実施形態では、放射線検出部として、電離箱を用いた例について説明するが、他の放射線検出部を用いても良い。
【0015】
4個のAD変換器131〜134は、4個の電離箱121〜124の各々に対応するように設けられた変換器であり、電離箱121〜124からのX線検出結果を示したアナログ信号を、X線検出結果を示したデジタル信号に変換し、制御部100に出力する。
【0016】
制御部100は、X線厚さ測定装置1全体を制御する。例えば、制御部100は、X線源101によるX線の照射を制御する。
【0017】
また、制御部100は、AD変換器131〜134から入力されたデジタル信号に基づいて、測定対象物150の厚さを算出する。
【0018】
従来、一つの電離箱で検出されたX検出結果に基づいて、X線の減衰率を算出し、当該減衰率から測定対象物の厚みを導出していた。しかしながら、当該手法では、測定対象物でパスアングル変動が生じている場合、パスアングル変動が生じている状態、換言すれば傾いている状態での測定対象物の厚みを算出することになっていた。このような場合に、測定対象物に対して斜めにX線が透過するため、測定誤差が生じていた。
【0019】
そこで、本実施形態のX線厚さ測定装置1では、4個の電離箱121〜124を備えることとした。そして、4個の電離箱121〜124のそれぞれから導出された厚さから、パスアングル変動(測定対象物150の移動方向に対する傾き)が生じていない場合の測定対象物150の厚みを導出する。本実施形態では、電離箱が4個の場合について説明するが、電離箱は複数備えていればよく、例えば3個又は5個以上であってもよい。
【0020】
図2は、本実施形態の制御部100で実現されるソフトウェア構成を例示したブロック図である。図2に示されるように、本実施形態の制御部100は、入力部201と、第1の電離箱処理部211と、第2の電離箱処理部212と、第3の電離箱処理部213と、第4の電離箱処理部214と、選択部205と、補正済み厚さ演算部206と、出力部207と、を備えている。
【0021】
本実施形態の制御部100は、X線源101と、複数の電離箱121〜124の各々と、の間を測定対象物150が通過する時に、測定対象物150のパスアングル変動が生じている場合に、複数の電離箱121〜124の出力結果に基づいて、測定対象物150のパスアングル変動が生じていない場合の測定対象物150の厚さを算出する。次に、制御部100の具体的な構成について説明する。
【0022】
入力部201は、AD変換器131〜134を介して、4個の電離箱121〜124から入力されたX線検出結果を示したデジタル信号を、電離箱に対応する電離箱処理部211に出力する。
【0023】
第1の電離箱処理部211は、第1の電流検出部202Aと、第1の厚さ演算部203Aと、第1の補正部204Aと、を備え、第1の電離箱121の測定結果に基づいた測定対象物150の厚みを算出する。
【0024】
第1の電流検出部202Aは、入力部201から、第1の電離箱121によるX線検出結果を示したデジタル信号から、第1の電離箱121が出力した電流値を検出する。なお、本実施形態は、電流値を検出する例について説明するが、電圧値等あってもよい。
【0025】
第1の厚さ演算部203Aは、第1の電流検出部202Aが検出した電流値に基づいて、X線源101から、第1の電離箱121方向における、測定対象物150の厚さを算出する。
【0026】
第1の補正部204Aは、第1の厚さ演算部203Aが算出した測定対象物150の厚さの補正を行う。例えば、測定対象物150は、温度や材質によって厚みが変化する場合もある。そこで、本実施形態の第1の補正部204Aは、温度や材質等の現在の条件に基づいた厚みの補正を行う。
【0027】
また、本実施形態は、パスアングル変動が生じていない場合の測定対象物150の表面からの垂直方向から傾くように、第1の電離箱121が設置されている。そこで、第1の補正部204Aは、電離箱121の傾きに応じた補正を行う。なお、具体的な補正については後述する。そして、第1の補正部204Aにより補正された厚みは、選択部205に出力される。
【0028】
第2の電離箱処理部212は、第2の電流検出部202Bと、第2の厚さ演算部203Bと、第2の補正部204Bと、を備え、第2の電離箱122の測定結果に基づいた測定対象物150の厚みを算出する。なお、第2の電流検出部202B、第2の厚さ演算部203B、及び第2の補正部204Bは、X線源101から第2の電離箱122方向における、測定対象物150の厚さを算出する以外、第1の電流検出部202A、第1の厚さ演算部203A、及び第1の補正部204Aと同様の処理を行っているものとして説明を省略する。
【0029】
第3の電離箱処理部213は、第3の電流検出部202Cと、第3の厚さ演算部203Cと、第3の補正部204Cと、を備え、第3の電離箱123の測定結果に基づいた測定対象物150の厚みを算出する。なお、第3の電流検出部202C、第3の厚さ演算部203C、及び第3の補正部204Cは、X線源101から第3の電離箱123方向における、測定対象物150の厚さを算出する以外、第1の電流検出部202A、第1の厚さ演算部203A、及び第1の補正部204Aと同様の処理を行っているものとして説明を省略する。
【0030】
第4の電離箱処理部214は、第4の電流検出部202Dと、第4の厚さ演算部203Dと、第4の補正部204Dと、を備え、第4の電離箱124の測定結果に基づいた測定対象物150の厚みを算出する。なお、第4の電流検出部202D、第4の厚さ演算部203D、及び第4の補正部204Dは、X線源101から第4の電離箱124方向における、測定対象物150の厚さを算出する以外、第1の電流検出部202A、第1の厚さ演算部203A、及び第1の補正部204Aと同様の処理を行っているものとして説明を省略する。
【0031】
選択部205は、4個(第1の電離箱121〜第4の電離箱124)の厚さのうち、いずれか3個を選択する。例えば、4個の厚さに、異常値と考えられる厚さが含まれている場合、選択部205は、異常値と考えられる厚さを除いた、3個の厚さを選択する。本実施形態では、選択部205は、異常値と判断するための閾値を保持する。そして、選択部205は、任意の厚さが当該閾値を超えた場合に、当該厚さを異常値とみなす。そして、選択部205は、当該異常値とみなした厚さを除いた、3個を選択する。
【0032】
本実施形態では、3個の厚みから、測定対象物150のパスアングルが生じていない(傾いていない)場合の厚さを算出する。本実施形態では、4個の電離箱を設けているため、一つの電離箱が異常値を出力した場合でも、厚みを正確に算出できる。
【0033】
補正済み厚さ演算部206は、3個の厚みから、測定対象物150が傾いていない場合の測定対象物150の厚みを演算する。
【0034】
図3は、本実施形態の測定対象物150と、電離箱121、123と、の間の位置関係を例示した図である。図3に示されるように、本実施形態の角度θは、測定対象物150の移動方向201に対する、測定対象物150のパスアングル(傾き角)を示している。
【0035】
また、本実施形態では鉛直軸(Z軸)に対する各電離箱の傾きを角度Φとする。そして、電離箱相互の傾きを角度φとした場合に、tan(Φ)=√2・tan(φ)が成り立つ。但し、(0<φ<π/2)とする。なお、鉛直軸(Z軸)は、パスアングルが生じていない場合の板状の測定対象物150の(電離箱側の)表面(平面)からの垂直方向を示した軸とする。
【0036】
本実施形態では、各電離箱は、図3に示されるように鉛直軸から角度Φだけ傾けられて設置される。このため、電離箱121〜124では、当該傾きに応じた測定対象物150の厚さが測定される。しかしながら、本実施形態では、角度Φが無いものとして扱えるように補正部204A〜204Dが補正する。つまり、パスアングルが0度の1.0mmの板を測定した場合、本実施形態では、厚さ1.0mmを算出結果として出力するように第1の電離箱処理部211〜第4の電離箱処理部214の補正部204A〜204Dが補正する。
【0037】
図4は、本実施形態の電離箱121〜124の測定値の相互関係を例示した図である。図4に示される例では、X線源101によるX線焦点から鉛直直線と、板状の測定対象物150と、の交点を原点とする。そして板長方向をX軸、板幅方向をY軸、板厚方向(鉛直方向)をZ軸とする。
【0038】
そして、厚みt1が第1の電離箱121の測定対象となる。厚みt2が第2の電離箱122の測定対象となる。厚みt3が第3の電離箱123の測定対象となる。厚みt4が第1の電離箱124の測定対象となる。
【0039】
本実施形態は、測定対象物150の表面が平面であると仮定する。その場合に、測定対象物150の(電離箱側の)上面を面Pとした場合に、原点(座標0)に対する当該平面の方程式を得られれば、当該原点、換言すれば測定対象物150の(X線源101の)底面上の点から面Pの距離、つまり測定対象物150の厚さを求めることができる。そこで、次に、面Pの方程式について説明する。
【0040】
X線源101の焦点から電離箱121〜124の各々までの軸線と、測定対象物150の交点間(底面の交点から上面の交点まで)のベクトルは、式(1)〜式(4)となる。
【0041】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0042】
本実施形態の第1の電離箱処理部211〜第4の電離箱処理部214による算出結果では、各電離箱121〜124の設置角度に対応する補正が行われる。このため、式(5)〜式(8)が導出できる。
【0043】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0044】
式(5)〜式(8)を、平面の方程式の一般形a・x+b・y+c・z+d=0に当てはめると、式(9)〜式(12)を導出できる。
【0045】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0046】
式(9)〜式(12)に対して、A=a/(−d)、B=b/(−d)、C=c/(−d)、D=d/(−d)=−1とすることで、式(13)〜式(16)を導出できる。
【0047】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0048】
これらの式(13)〜式(16)で示された変数A、B、Cを未知数として行列表示することで、式(17)を表すことができる。
【0049】
【数17】
【0050】
未知数が3個のため、式(13)〜式(16)のうちいずれか3式を用いれば良い。そこで、本実施形態では、式(14)〜式(16)を用いることで、行列Mを、式(18)として表すことができる。
【0051】
【数18】
【0052】
そして、行列Mの行列式detMは、式(19)として表すことができる。なお、当然ながら、t2≠0、t3≠0、t4≠0は成り立つものとする。そこで、式(20)を導出することができる。
【0053】
【数19】
【数20】
【0054】
そして、式(17)及び式(20)から、式(21)を導出できる。
【0055】
【数21】
【0056】
上述したように、測定対象物150の厚みは、方程式の一般形a・x+b・y+c・z+d=0と、原点O(0,0,0)と、の距離に相当する。従って、厚みtは、式(22)で示すことができる。
【0057】
【数22】
【0058】
そして、式(22)で示された式に、式(21)で示した値を代入することで、厚みtを導出できる。
【0059】
また、測定対象物150の平面の傾きは、当該平面の法線ベクトル(a,b,c)と、z軸ベクトル(0,0,1)の角度になる。従って、式(23)から、パスアングル(傾き角)なる角度θを導出できる。
【0060】
【数23】
【0061】
本実施形態の補正済み厚さ演算部206は、入力された厚さt2、t3、t4、及び式(21)、式(22)に基づいて、パスアングルが生じていない場合の厚みtと、パスアングル(傾き角)なる角度θと、を算出する。
【0062】
出力部207は、パスアングルが生じていない場合の厚みtと、パスアングル(傾き角)なる角度θと、を、外部の装置に対して出力する。または、出力部207は、本実施形態のX線厚さ測定装置1が備えている(図示しない)表示装置に、厚みtと、角度θと、を出力する。これにより、監視者は、測定対象物150の正確な厚みtを把握できる。
【0063】
次に、本実施形態の厚さ測定装置1における、測定対象物150の厚さ算出処理について説明する。図5は、本実施形態の厚さ測定装置1の制御部100における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0064】
まず、入力部201が、4個の電離箱121〜124から、AD変換器131〜134を介して、X線検出信号(X線検出結果を示したデジタル信号)を入力処理する(S501)。
【0065】
次に、第1の電離箱処理部211が、第1の電離箱121から入力されたX線検出信号(X線検出結果を示したデジタル信号)から、第1の電離箱121による検出結果である厚みt1を算出する(S502)。
【0066】
第2の電離箱処理部212が、第2の電離箱122から入力されたX線検出信号(X線検出結果を示したデジタル信号)から、第2の電離箱122による検出結果である厚みt2を算出する(S503)。
【0067】
第3の電離箱処理部213が、第3の電離箱123から入力されたX線検出信号(X線検出結果を示したデジタル信号)から、第3の電離箱123による検出結果である厚みt3を算出する(S504)。
【0068】
第4の電離箱処理部214が、第4の電離箱124から入力されたX線検出信号(X線検出結果を示したデジタル信号)から、第4の電離箱124による検出結果である厚みt4を算出する(S505)。なお、本実施形態は処理の順序を制限するものではなく、例えばS502〜S504は、どの順序で行ってもよい。また、S502〜S504は、並列処理を行っても良い。
【0069】
選択部205は、閾値に基づいて、算出された4個の厚みt1〜t4のうち、異常な値の厚みを除く(S506)。なお、異常な値がない場合は、4個の厚みt1〜t4を次の処理に受け渡す。また、厚みt1〜t4が2個以上除かれた場合には、再び電離箱121〜124による計測から開始する。
【0070】
次に、選択部205は、4個の厚みt1〜t4を正常と考えられる厚みとして受け取った場合に、当該正常と考えられる厚みt1〜t4から任意の3つを選択する(S507)。なお、S506で3個の厚みが正常と考えられる厚みとして受け取った場合に、選択部205は、これら3個の厚みを次の処理に受け渡す。
【0071】
そして、補正済み厚さ演算部206は、受け取った3個の厚みに基づいて、パスアングル変動が生じていない状態での、測定対象物150の厚さtを演算する(S508)。また、補正済み厚さ演算部206は、パスアングルとなる角度θも算出する。なお、演算手法は上述したので説明を省略する。
【0072】
出力部207は、パスアングル変動が生じていない状態での、測定対象物150の厚さt、及びパスアングルとなる角度θを、外部の装置や、表示装置に出力する(S509)。
【0073】
上述した処理手順により、パスアングル変動が生じていない場合の測定対象物150の厚さtを確認できる。
【0074】
次に、S502で示した、第1の電離箱処理部211における厚みt1の算出手順について説明する。図6は、本実施形態の第1の電離箱処理部211における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0075】
まず、第1の電流検出部202Aが、第1の電離箱121からの電流値を検出する(S601)。
【0076】
次に、第1の厚さ演算部203Aが、検出された電流値から、X線源101から第1の電離箱121方向における、測定対象物150の厚みを算出する(S602)。
【0077】
第1の補正部204Aは、算出された厚みt1に対して、電離箱121の傾きに応じた補正を含む各種補正を行う(S603)。
【0078】
上述した処理手順により、電離箱121の傾きに応じた補正が行われた厚みt1を導出する。なお、図6に示すフローチャートでは、第1の電離箱処理部211の場合について説明したが、第2の電離箱処理部212〜第4の電離箱処理部214も同様の処理を行うものとして説明を省略する。
【0079】
本実施形態の本実施形態のX線厚さ測定装置1は、上述した構成を備えることで、測定対象物150にパスアングル変動が生じているか否かにかかわらず、パスアングル変動が生じていない状態での測定対象物150の厚さを算出できる。これにより厚さの測定精度を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、X線を用いて厚さを測定する場合について説明するが、X線を用いた厚さ測定に制限するものではなく、放射線を用いた厚さ測定であればよく、例えば、γ線を用いて厚さを測定しても良い。
【0081】
さらに、本実施形態では、4つの電離箱から算出された4つの厚みのうち、いずれか3つを使用することで、パスアングル変動が生じていない状態での厚みを測定できる。これにより、4つの電離箱のうち1つの電離箱で異常が生じた場合でも、正確な厚みの測定を可能としている。
【0082】
本実施形態は、上述した演算式を用いて、厚みを測定する例に制限するものではなく、複数の電離箱の測定結果による複数の厚みから、パスアングル変動が生じていない場合の厚みの算出手法であれば、どのような演算式を用いても良い。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…X線厚さ測定装置、100…制御部、101…X線源、111…X線管、121…第1の電離箱、122…第2の電離箱、123…第3の電離箱、124…第4の電離箱、131〜134…AD変換器、150…測定対象物、201…入力部、202A…第1の電流検出部、202B…第2の電流検出部、202C…第3の電流検出部、202D…第4の電流検出部、203A…第1の厚さ演算部、203B…第2の厚さ演算部、203C…第3の厚さ演算部、203D…第4の厚さ演算部、204A…第1の補正部、204B…第2の補正部、204C…第3の補正部、204D…第4の補正部、205…選択部、206…補正済み厚さ演算部、207…出力部、211…第1の電離箱処理部、212…第2の電離箱処理部、213…第3の電離箱処理部、214…第4の電離箱処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6