特許第6542009号(P6542009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542009
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ用シャフト
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20190628BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20190628BHJP
【FI】
   A63B53/10 A
   A63B102:32
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-74922(P2015-74922)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-193116(P2016-193116A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】393003686
【氏名又は名称】株式会社本間ゴルフ
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】池田 毅
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5626529(US,A)
【文献】 特表2010−502262(JP,A)
【文献】 特開2007−117109(JP,A)
【文献】 特開2000−24153(JP,A)
【文献】 特開平11−206935(JP,A)
【文献】 特開2008−73067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の強化繊維プリプレグよりなる積層構造を備えるゴルフクラブ用シャフトであって、
前記積層構造内に、弾性率及びプリプレグの単位面積当たりのガラス繊維又はカーボン繊維の質量値を示すFAW値、又は前記FAW値のみを異にする剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層の組み合わせよりなる剛性調整用プリプレグ層を設定し、前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層をそれぞれシャフト全長よりも短い長さとし、
前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層を長さ方向端部同士で重ね合わせたことを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、
前記剛性調整用メインストレート層の長さ方向端部及び/又は前記剛性調整用ストレート層の長さ方向端部に、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした斜辺部を設けたことを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、
前記剛性調整用ストレート層の長さを100mm以上とするとともに前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層の重ね合わせ部の長さを50mm以下としたことを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、
シャフトの手元側及び先端側にそれぞれ剛性調整用メインストレート層を配置するとともにその間に剛性調整用ストレート層を配置することにより、端部同士の重ね合わせ部を複数箇所としたことを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに係り、更に詳しくは、複数の強化繊維プリプレグよりなる積層構造を備えるゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からゴルフクラブ用シャフトを製作する際、その剛性を調整する方法として、(1)マンドレルのテーパーを部分的に変える方法、(2)ストレート・パーツの全長を変更する方法、(3)部分的な剛性調整層を設ける方法が知られている。
【0003】
しかしながら上記(1)の方法では、細かな剛性調整は可能であるものの、マンドレルの製作に費用及び時間が必要となる不都合がある。上記(2)の方法では、極端な剛性変更となり、細かな調整が不可能で、しかも軟らかくすることは可能だが、硬くすることが不可能である。上記(3)の方法では、パーツを追加することにより部分的に硬くすることは可能であるが、軟らかくすることが不可能である。
【0004】
また、下記特許文献1に、剛性等を異ならせるシャフトを簡単に作製する方法が以下のように開示されている。
「シャフトの長さ方向の所定の位置で、2分割以上4分割以下に分割されたシャフト分割部材を夫々別個に作製し、これら互いに接合される接合端面の外径を同一として接合状態で段差を発生させないようにし、かつ、これら各シャフト分割部材について夫々剛性あるいは/および径を相違させて複数種類設け、上記シャフト分割部材を任意に組み合わせて接合しているゴルフクラブ用シャフトの製造方法。」
しかしながらこの方法では、1本のシャフトを長さ方向に分割して製作するため、その製作に手間及び時間がかかり過ぎる不都合がある。
【0005】
また、下記特許文献2に、設計自由度の拡大及び剛性設計の容易化を図る方法が以下のように開示されている。
「複数の強化繊維を、該強化繊維の軸方向が一方向と該一方向と直交する方向として平織りするとともに、熱硬化性樹脂を含浸してなる二軸平織プリプレグが積層された二軸平織繊維層と、複数の強化繊維を並列させてなる複数の繊維列を、該繊維列の軸方向が、一方向と、該一方向と直交する方向と、これら2軸方向の強化繊維の軸方向に対して斜めに交差する方向と、これら3軸方向の強化繊維の軸方向に対して交差する方向とに配置するとともに、軸方向を同一とする各繊維列間に隙間を空けて管状体の厚み方向に積層し、かつ熱硬化性樹脂を含浸してなる四軸積層プリプレグが積層された四軸積層繊維層と、を備えている」
しかしながらこの方法では、多軸積層プリプレグを使用するため、シャフトの製造コストが高くなると云う不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−70421号公報
【特許文献2】特開2010−221568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のように種々の従来技術が存在するなかで、マンドレルを変更することなく、シャフトの剛性を簡単に、部分的に変更することが可能であり、また、剛性曲線を極端に変化させずに、自然な剛性調整が可能となるゴルフクラブ用シャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるゴルフクラブ用シャフトは、複数の強化繊維プリプレグよりなる積層構造を備えるゴルフクラブ用シャフトであって、前記積層構造内に、弾性率及びプリプレグの単位面積当たりのガラス繊維又はカーボン繊維の質量値を示すFAW値、又は前記FAW値のみを異にする剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層の組み合わせよりなる剛性調整用プリプレグ層を設定し、前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層をそれぞれシャフト全長よりも短い長さとし、前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層を長さ方向端部同士で重ね合わせたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるゴルフクラブ用シャフトは、上記した請求項1記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、前記剛性調整用メインストレート層の長さ方向端部及び/又は前記剛性調整用ストレート層の長さ方向端部に、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした斜辺部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3によるゴルフクラブ用シャフトは、上記した請求項1又は2記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、前記剛性調整用ストレート層の長さを100mm以上とするとともに前記剛性調整用メインストレート層及び前記剛性調整用ストレート層の重ね合わせ部の長さを50mm以下としたことを特徴とする。
【0011】
更にまた、本発明の請求項4によるゴルフクラブ用シャフトは、上記した請求項1、2又は3記載のゴルフクラブ用シャフトにおいて、シャフトの手元側及び先端側にそれぞれ剛性調整用メインストレート層を配置するとともにその間に剛性調整用ストレート層を配置することにより、端部同士の重ね合わせ部を複数箇所としたことを特徴とする。
【0012】
上記構成を備える本発明のゴルフクラブ用シャフトにおいては、複数の強化繊維プリプレグよりなる積層構造内に、弾性率及び/又はFAW値を異にする剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層の組み合わせよりなる剛性調整用プリプレグ層が設けられているため、この剛性調整用組み合わせプリプレグ層内において、剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層の長さ比や重ね合わせ部の位置などを変更することにより、シャフト全体としての剛性を有り様を調整することが可能とされる。FAW値は、プリプレグ1m2当たりに含まれるガラス繊維又はカーボン繊維の質量値(g/m2)である。
【0013】
剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層はそれぞれシャフト全長よりも短い長さとされているため、シャフト全長範囲において、剛性調整用メインストレート層が配置された部位ではこの剛性調整用メインストレート層による剛性が支配的とされ、剛性調整用ストレート層が配置された部位ではこの剛性調整用ストレート層による剛性が支配的とされる。剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層は長さ方向端部同士で重ね合わされているため、この重ね合わせ部で剛性が切り替えられる。したがって重ね合わせ部がヘッド近くの先端側に配置されれば両層による剛性がヘッド近くで切り替えられ、重ね合わせ部がグリップ近くの手元側に配置されれば両層による剛性がグリップ近くで切り替えられる。
【0014】
剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層は弾性率及び/又はFAW値を互いに異にしているため、この弾性率及び/又はFAW値の相違にもとづいて両層による剛性が異なったものとされる。態様としては以下のとおりとなる。
【0015】
(1)弾性率の違いによる作用の違い
(1−1)剛性調整用ストレート層の弾性率が高く、剛性調整用メインストレート層の弾性率が低い場合
この場合、剛性調整用ストレート層によって部分的に剛性が高くなるが、異なる弾性率でFAW値は同じのため、重量(バランスポイント)変化は伴わない。
(1−2)剛性調整用ストレート層の弾性率が低く、剛性調整用メインストレート層の弾性率が高い場合
この場合、剛性調整用ストレート層によって部分的に剛性が低くなるが、異なる弾性率でFAW値は同じのため、重量(バランスポイント)変化は伴わない。
【0016】
(2)FAW値の違いによる作用の違い
(2−1)剛性調整用ストレート層のFAW値が高く、剛性調整用メインストレート層のFAW値が低い場合
この場合、剛性調整用ストレート層によって部分的に剛性が高くなるが、同じ弾性率のため、FAW値違いにより重量(バランスポイント)変化が可能となる。
(2−2)剛性調整用ストレート層のFAW値が低く、剛性調整用メインストレート層のFAW値が高い場合
この場合、剛性調整用ストレート層によって部分的に剛性が低くなるが、同じ弾性率のため、FAW値違いにより重量(バランスポイント)変化が可能となる。
【0017】
剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層はそれぞれ、その長さ方向端部で長さ方向に対し直角にカットした形状であっても良いが、長さ方向端部で長さ方向に対し斜めにカットした斜辺部を備える形状であっても良く、このように斜辺部を設けてこれを両層の重ね合わせ部に配置することにより、急激な剛性変化を防ぐことが可能とされる。
【0018】
1本のシャフトにおいて、剛性調整用メインストレート層によって定められる剛性が剛性調整用ストレート層によって定められる剛性に切り替わっていることを製品特性として明確に表すには、剛性調整用ストレート層に或る程度の長さを設定することが必要とされる。また、剛性調整用メインストレート層によって定められる剛性を剛性調整用ストレート層によって定められる剛性に滑らかに切り替えるには両層の重ね合わせ部に或る程度の長さを設定することが必要とされるが、こちらのほうは、重ね合わせ部の長さが長過ぎると剛性の切り替えが却って不明確になる。そこで前者の、剛性調整用ストレート層の長さについてはこれを100mm未満とすると剛性の切り替えが製品特性として明確に表れないので、100mm以上に設定するのが好適あり、後者の、重ね合わせ部の長さについてはこれを50mmよりも大きくすると剛性の切り替えが不明確になるので、50mm以下、より好ましくは20mm以下、一層好ましくは5〜10mm程度に設定するのが好適である。
【0019】
また、1本のシャフトにおいて、剛性調整用メインストレート層及び剛性調整用ストレート層をどのように配置するかについては、以下の態様が考えられる。
(1)シャフトのヘッド側(先端側)に剛性調整用メインストレート層を配置するとともにシャフトのグリップ側(手元側)に剛性調整用ストレート層を配置する。
(2)シャフトのグリップ側(手元側)に剛性調整用メインストレート層を配置するとともにシャフトのヘッド側(先端側)に剛性調整用ストレート層を配置する。
(3)シャフトのヘッド側(先端側)及びグリップ側(手元側)にそれぞれ剛性調整用メインストレート層を配置し、その間に剛性調整用ストレート層を配置する。

上記(3)では、シャフト長さ方向の複数箇所で剛性が切り替えられるため、シャフト両端部は剛性が同じで中央のみが異なると云う個性的なシャフト構造を提供することが可能とされる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成を備える本発明によれば、以下の効果が発揮される。
【0021】
すなわち上記構成及び作用により、簡単に、部分的に剛性の変更・調整が可能となり、剛性曲線を極端に変化させることなく、自然な曲線の形で変化させることが可能となる。したがって、シャフトの撓り具合が局部的でなく、全体の撓りの中での調整になるため、自然な撓りフィーリングを実現することができる。また、設計自由度が広がり、より細やかな剛性調整が可能となるため、シャフト製作のオーダーに対し素早く対応することが可能とされる。また、シャフトの剛性調整区域をシャフトの手元側、中ほど、先端側、又は1箇所、2箇所以上などにおいて自在に調整することが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係るゴルフクラブ用シャフトを備えるゴルフクラブの正面図
図2】本発明の実施例1に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図3】同シャフトのパターン図
図4】比較例1に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図5】比較例2に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図6】比較試験の結果を示すグラフ図
図7】本発明の実施例2に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図8】比較例3に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図9】比較試験の結果を示すグラフ図
図10】本発明の実施例3に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図11】同シャフトのパターン図
図12】本発明の実施例4に係るゴルフクラブ用シャフトの積層構造を示す説明図
図13】同シャフトのパターン図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、シャフト剛性調整方法に係る。
(2)メインストレート材に0mm以上の重なり部分を設け、剛性調整ストレート材を積層する。重なり部分の幅を50mm以下とし、より好ましくは20mm以下、さらには5〜10mm程度が望ましい。
(3)剛性調整ストレート層は、メインストレート材と弾性率の異なるプリプレグを、斜辺を付けて積層する。
(4)剛性調整ストレート層は、メインストレート材とFAW(g/m2)の異なるプリプレグを、斜辺を付けて積層する。
(5)上記斜辺の角度は20〜90°の範囲とする。尚、斜辺を付けずに積層も可能だが、斜辺を付けることにより急な剛性変化を防ぐことができる。
(6)剛性調整ストレート層の全長は100mm以上とする。
(7)剛性調整ストレート層は、シャフト全長範囲に積層されるどのストレート層にでも適応可能である。
【実施例】
【0024】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0025】
図1に示すゴルフクラブ1はウッドヘッドクラブであって、先端側(下端側すなわちヘッド側)にウッドヘッド21を装着するとともに手元側(グリップ側すなわち上端側)にグリップ31を装着するシャフト11を備え、このシャフト11が以下のような複数の強化繊維プリプレグシートよりなる積層構造を備えるものとされている。ウッドヘッドクラブはこれに代えて、アイアンヘッドクラブであっても良い。
【0026】
実施例1・・・・
実施例1は、シャフトの手元側の剛性を緩やかに下げる態様である。
【0027】
図2は、各プリプレグすなわち積層体を巻回・積層する前のシート状の状態を示し、これらのシートを順次同芯状に巻回・積層して1本のシャフト11を製造する。製造に際してはマンドレルを使用する。
【0028】
図2(a)に示すように先ず、シャフト積層構造の最も内側(内周側)に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向(シャフト軸線に対し平行乃至略平行の方向)に配列したプリプレグシートよりなる先端中補強層12を配置する。この先端中補強層12はシャフト先端部に位置を限定して配置されるもので、このためその長さを短く設定されている。また、この先端中補強層12は図示するように直角三角形状のシートとして成形され、その直角の角部をシャフト先端側に配置している。したがって幅広側のシート端部をシャフト先端側へ向けるとともに幅狭側のシート端部をシャフト手元側を向けて配置されている。プリプレグシートを積層するマンドレル形状によってはこの先端中補強層12を省略することができる。
【0029】
次いで図2(b)及び(c)に示すように、上記先端中補強層12の外側(外周側)に、ガラス繊維又はカーボン繊維をバイアス方向(シャフト軸線に対し斜めに交叉する方向)に配列したプリプレグシートよりなるバイアス層13を配置する。このバイアス層13はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。また、このバイアス層13は図示するように複数(図では2層)が順次配置され、奇数番目のバイアス層13と偶数番目のバイアス層13とではガラス繊維又はカーボン繊維のバイアス方向を反対向きとし、互いに交差させている。
【0030】
次いで図2(d)に示すように、上記バイアス層13の外側に、弾性率及び/又はFAW値を異にする剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bの組み合わせよりなる剛性調整用組み合わせプリプレグ層14を配置する。この組み合わせプリプレグ層14については後述する。
【0031】
次いで図2(e)に示すように、上記組み合わせプリプレグ層14の外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をフープ方向(シャフト軸線に対し直角乃至略直角の方向)に配列したプリプレグシートよりなるフープ層15を配置する。このフープ層15はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。
【0032】
次いで図2(f)及び(g)に示すように、上記フープ層15の外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向に配列したプリプレグシートよりなるストレート層16を配置する。このストレート層16はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。また、このストレート層16は図示するように複数(図では2層)が順次配置されている。
【0033】
次いで図2(h)に示すように、上記ストレート層16の外側であって最も外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向に配列したプリプレグシートよりなる先端補強層17を配置する。この先端補強層17はシャフト先端部に限定して配置されるもので、このためその長さを短く設定されている。また、この先端補強層17は図示するように直角三角形状のシートとして成形され、その直角の角部をシャフト先端側に配置している。したがって幅広側のシート端部をシャフト先端側へ向けるとともに幅狭側のシート端部をシャフト手元側を向けて配置されている。
【0034】
上記図2(d)の組み合わせプリプレグ層14は、弾性率30t、FAW150g/m2の剛性調整用メインストレート層14Aと、弾性率24t、FAW125g/m2の剛性調整用ストレート層(剛性調整用サブストレート層)14Bとを組み合わせたものであって、これら剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bがそれぞれシャフト全長よりも短い長さとされ、剛性調整用メインストレート層14Aがシャフト先端側に配置されるとともに剛性調整用ストレート層14Bがシャフト手元側に配置され、両層14A,14Bが長さ方向端部14Aa,14Ba同士で重ね合わされている。重ね合わされた状態の両層14A,14Bの長さはシャフト全長と同等とされている。剛性調整用メインストレート層14Aは剛性調整用ストレート層14Bよりも長く設定され、これにより図3のパターン図に示すように、両層14A,14Bはその重ね合わせ部Kがシャフト長さ方向中央部よりも手元側に配置されている。また、上記端部14Aa,14Baにそれぞれ、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした形状の斜辺部14Ab,14Bbが設けられている(図はカット前の状態を示し、cut線にてカットされる)。
【0035】
比較例1・・・・
図4は、上記実施例1に対する比較例1を示し、すなわちこの比較例1では、上記実施例1における図2(d)の組み合わせプリプレグ層14がこれに代えて、図2(f)(g)と同様なストレート層16とされている。
【0036】
比較例2・・・・
図5は、上記実施例1に対する比較例2を示し、すなわちこの比較例2では、上記実施例1における図2(d)の組み合わせプリプレグ層14のうちの剛性調整用ストレート層14Bが省略されている。
【0037】
上記各例の比較・・・・
上記各例におけるシャフト剛性分布の比較試験を行ったところ、図6のグラフ図に示される結果であった。
剛性分布/調子係数計測条件
計測条件:スパン300mm(150mm:150mm) 2mm圧縮荷重
計測機器:シャフトアナライザー
すなわち図6のグラフ図に示されるように、比較例1では剛性調整が行われず、比較例2ではシャフト手元部にて極端に剛性が下がったのに対し、実施例1ではシャフト手元部にて緩やかに剛性が下がることを確認することができた。
【0038】
実施例2・・・・
この実施例2は、シャフトの手元側の剛性を緩やかに上げる態様である。
【0039】
図7は、実施例2を示し、すなわちこの実施例2では、上記実施例1における図2(d)の組み合わせプリプレグ層14がこれに代えて、以下のように設定されている。
【0040】
すなわち、図7(d)の組み合わせプリプレグ層14は、弾性率30t、FAW150g/m2の剛性調整用メインストレート層14Aと、弾性率30t、FAW175g/m2の剛性調整用ストレート層(剛性調整用サブストレート層)14Bとを組み合わせたものとされている(上記実施例1とは弾性率及びFAW値の数値が異なる)。これら剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bはそれぞれシャフト全長よりも短い長さとされ、剛性調整用メインストレート層14Aがシャフト先端側に配置されるとともに剛性調整用ストレート層14Bがシャフト手元側に配置され、両層14A,14Bが長さ方向端部14Aa,14Ba同士で重ね合わされている。重ね合わされた状態の両層14A,14Bの長さはシャフト全長と同等とされている。剛性調整用メインストレート層14Aは剛性調整用ストレート層14Bよりも長く設定され、これにより両層14A,14Bはその重ね合わせ部がシャフト長さ方向中央部よりも手元側に配置されている。また、上記端部14Aa,14Baにそれぞれ、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした形状の斜辺部14Ab,14Bbが設けられている(図はカット前の状態を示し、cut線にてカットされる)。実施例2におけるその他の構成は上記実施例1と同じとされている。
【0041】
比較例1・・・・前述と同じ
比較例3・・・・
図8は、上記実施例2に対する比較例3を示し、すなわちこの比較例3では、上記比較例1に係る図4の手元側に(C’)として剛性調整用ストレート層14Bを追加することにより部分的に剛性を向上させている。
【0042】
上記各例の比較・・・・
上記各例におけるシャフト剛性分布の比較試験を行ったところ、図9のグラフ図に示される結果であった。
剛性分布/調子係数計測条件
計測条件:スパン300mm(150mm:150mm) 2mm圧縮荷重
計測機器:シャフトアナライザー
すなわち図9のグラフ図に示されるように、比較例1では剛性調整が行われず、比較例3ではシャフト手元部にて極端に剛性が上がったのに対し、実施例2ではシャフト手元部にて緩やかに剛性が上がることを確認することができた。
【0043】
実施例3・・・・
上記実施例1及び実施例2では、シャフト手元側で剛性を緩やかに下げる又は上げる態様であったが、シャフト手元側ではなくシャフト先端側で剛性を緩やかに下げる又は上げる態様とする場合には例えば図10に示すように、比較的長い剛性調整用メインストレート層14Aをシャフト手元側に配置するとともに比較的短い剛性調整用ストレート層14Bをシャフト先端側に配置し、これにより図11のパターン図に示すように、両層14A,14Bの重ね合わせ部Kをシャフト長さ方向中央部よりも先端側に配置する。
【0044】
実施例4・・・・
また、シャフト手元側及びシャフト先端側の2箇所でそれぞれ剛性を緩やかに下げる又は上げる態様とすることも考えられ、この場合には例えば図12に示すように、シャフト手元側及びシャフト先端側にそれぞれ剛性調整用メインストレート層14Aを配置するとともにその間に剛性調整用ストレート層14Bを配置し、これにより図13のパターン図に示すように、両層14A,14Bの重ね合わせ部Kをシャフト手元側及びシャフト先端側にそれぞれ配置する。
【符号の説明】
【0045】
1 ゴルフクラブ
11 シャフト
12 先端中補強層
13 バイアス層
14 組み合わせプリプレグ層
14A 剛性調整用メインストレート層
14B 剛性調整用ストレート層
15 フープ層
16 ストレート層
17 先端補強層
21 ヘッド
31 グリップ
K 重ね合わせ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13