【実施例】
【0024】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0025】
図1に示すゴルフクラブ1はウッドヘッドクラブであって、先端側(下端側すなわちヘッド側)にウッドヘッド21を装着するとともに手元側(グリップ側すなわち上端側)にグリップ31を装着するシャフト11を備え、このシャフト11が以下のような複数の強化繊維プリプレグシートよりなる積層構造を備えるものとされている。ウッドヘッドクラブはこれに代えて、アイアンヘッドクラブであっても良い。
【0026】
実施例1・・・・
実施例1は、シャフトの手元側の剛性を緩やかに下げる態様である。
【0027】
図2は、各プリプレグすなわち積層体を巻回・積層する前のシート状の状態を示し、これらのシートを順次同芯状に巻回・積層して1本のシャフト11を製造する。製造に際してはマンドレルを使用する。
【0028】
図2(a)に示すように先ず、シャフト積層構造の最も内側(内周側)に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向(シャフト軸線に対し平行乃至略平行の方向)に配列したプリプレグシートよりなる先端中補強層12を配置する。この先端中補強層12はシャフト先端部に位置を限定して配置されるもので、このためその長さを短く設定されている。また、この先端中補強層12は図示するように直角三角形状のシートとして成形され、その直角の角部をシャフト先端側に配置している。したがって幅広側のシート端部をシャフト先端側へ向けるとともに幅狭側のシート端部をシャフト手元側を向けて配置されている。プリプレグシートを積層するマンドレル形状によってはこの先端中補強層12を省略することができる。
【0029】
次いで
図2(b)及び(c)に示すように、上記先端中補強層12の外側(外周側)に、ガラス繊維又はカーボン繊維をバイアス方向(シャフト軸線に対し斜めに交叉する方向)に配列したプリプレグシートよりなるバイアス層13を配置する。このバイアス層13はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。また、このバイアス層13は図示するように複数(図では2層)が順次配置され、奇数番目のバイアス層13と偶数番目のバイアス層13とではガラス繊維又はカーボン繊維のバイアス方向を反対向きとし、互いに交差させている。
【0030】
次いで
図2(d)に示すように、上記バイアス層13の外側に、弾性率及び/又はFAW値を異にする剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bの組み合わせよりなる剛性調整用組み合わせプリプレグ層14を配置する。この組み合わせプリプレグ層14については後述する。
【0031】
次いで
図2(e)に示すように、上記組み合わせプリプレグ層14の外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をフープ方向(シャフト軸線に対し直角乃至略直角の方向)に配列したプリプレグシートよりなるフープ層15を配置する。このフープ層15はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。
【0032】
次いで
図2(f)及び(g)に示すように、上記フープ層15の外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向に配列したプリプレグシートよりなるストレート層16を配置する。このストレート層16はシャフト全長に亙って配置されるもので、このためその長さを長く設定されている。また、このストレート層16は図示するように複数(図では2層)が順次配置されている。
【0033】
次いで
図2(h)に示すように、上記ストレート層16の外側であって最も外側に、ガラス繊維又はカーボン繊維をストレート方向に配列したプリプレグシートよりなる先端補強層17を配置する。この先端補強層17はシャフト先端部に限定して配置されるもので、このためその長さを短く設定されている。また、この先端補強層17は図示するように直角三角形状のシートとして成形され、その直角の角部をシャフト先端側に配置している。したがって幅広側のシート端部をシャフト先端側へ向けるとともに幅狭側のシート端部をシャフト手元側を向けて配置されている。
【0034】
上記
図2(d)の組み合わせプリプレグ層14は、弾性率30t、FAW150g/m
2の剛性調整用メインストレート層14Aと、弾性率24t、FAW125g/m
2の剛性調整用ストレート層(剛性調整用サブストレート層)14Bとを組み合わせたものであって、これら剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bがそれぞれシャフト全長よりも短い長さとされ、剛性調整用メインストレート層14Aがシャフト先端側に配置されるとともに剛性調整用ストレート層14Bがシャフト手元側に配置され、両層14A,14Bが長さ方向端部14Aa,14Ba同士で重ね合わされている。重ね合わされた状態の両層14A,14Bの長さはシャフト全長と同等とされている。剛性調整用メインストレート層14Aは剛性調整用ストレート層14Bよりも長く設定され、これにより
図3のパターン図に示すように、両層14A,14Bはその重ね合わせ部Kがシャフト長さ方向中央部よりも手元側に配置されている。また、上記端部14Aa,14Baにそれぞれ、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした形状の斜辺部14Ab,14Bbが設けられている(図はカット前の状態を示し、cut線にてカットされる)。
【0035】
比較例1・・・・
図4は、上記実施例1に対する比較例1を示し、すなわちこの比較例1では、上記実施例1における
図2(d)の組み合わせプリプレグ層14がこれに代えて、
図2(f)(g)と同様なストレート層16とされている。
【0036】
比較例2・・・・
図5は、上記実施例1に対する比較例2を示し、すなわちこの比較例2では、上記実施例1における
図2(d)の組み合わせプリプレグ層14のうちの剛性調整用ストレート層14Bが省略されている。
【0037】
上記各例の比較・・・・
上記各例におけるシャフト剛性分布の比較試験を行ったところ、
図6のグラフ図に示される結果であった。
剛性分布/調子係数計測条件
計測条件:スパン300mm(150mm:150mm) 2mm圧縮荷重
計測機器:シャフトアナライザー
すなわち
図6のグラフ図に示されるように、比較例1では剛性調整が行われず、比較例2ではシャフト手元部にて極端に剛性が下がったのに対し、実施例1ではシャフト手元部にて緩やかに剛性が下がることを確認することができた。
【0038】
実施例2・・・・
この実施例2は、シャフトの手元側の剛性を緩やかに上げる態様である。
【0039】
図7は、実施例2を示し、すなわちこの実施例2では、上記実施例1における
図2(d)の組み合わせプリプレグ層14がこれに代えて、以下のように設定されている。
【0040】
すなわち、
図7(d)の組み合わせプリプレグ層14は、弾性率30t、FAW150g/m
2の剛性調整用メインストレート層14Aと、弾性率30t、FAW175g/m
2の剛性調整用ストレート層(剛性調整用サブストレート層)14Bとを組み合わせたものとされている(上記実施例1とは弾性率及びFAW値の数値が異なる)。これら剛性調整用メインストレート層14A及び剛性調整用ストレート層14Bはそれぞれシャフト全長よりも短い長さとされ、剛性調整用メインストレート層14Aがシャフト先端側に配置されるとともに剛性調整用ストレート層14Bがシャフト手元側に配置され、両層14A,14Bが長さ方向端部14Aa,14Ba同士で重ね合わされている。重ね合わされた状態の両層14A,14Bの長さはシャフト全長と同等とされている。剛性調整用メインストレート層14Aは剛性調整用ストレート層14Bよりも長く設定され、これにより両層14A,14Bはその重ね合わせ部がシャフト長さ方向中央部よりも手元側に配置されている。また、上記端部14Aa,14Baにそれぞれ、シャフト長さ方向に対し斜めにカットした形状の斜辺部14Ab,14Bbが設けられている(図はカット前の状態を示し、cut線にてカットされる)。実施例2におけるその他の構成は上記実施例1と同じとされている。
【0041】
比較例1・・・・前述と同じ
比較例3・・・・
図8は、上記実施例2に対する比較例3を示し、すなわちこの比較例3では、上記比較例1に係る
図4の手元側に(C’)として剛性調整用ストレート層14Bを追加することにより部分的に剛性を向上させている。
【0042】
上記各例の比較・・・・
上記各例におけるシャフト剛性分布の比較試験を行ったところ、
図9のグラフ図に示される結果であった。
剛性分布/調子係数計測条件
計測条件:スパン300mm(150mm:150mm) 2mm圧縮荷重
計測機器:シャフトアナライザー
すなわち
図9のグラフ図に示されるように、比較例1では剛性調整が行われず、比較例3ではシャフト手元部にて極端に剛性が上がったのに対し、実施例2ではシャフト手元部にて緩やかに剛性が上がることを確認することができた。
【0043】
実施例3・・・・
上記実施例1及び実施例2では、シャフト手元側で剛性を緩やかに下げる又は上げる態様であったが、シャフト手元側ではなくシャフト先端側で剛性を緩やかに下げる又は上げる態様とする場合には例えば
図10に示すように、比較的長い剛性調整用メインストレート層14Aをシャフト手元側に配置するとともに比較的短い剛性調整用ストレート層14Bをシャフト先端側に配置し、これにより
図11のパターン図に示すように、両層14A,14Bの重ね合わせ部Kをシャフト長さ方向中央部よりも先端側に配置する。
【0044】
実施例4・・・・
また、シャフト手元側及びシャフト先端側の2箇所でそれぞれ剛性を緩やかに下げる又は上げる態様とすることも考えられ、この場合には例えば
図12に示すように、シャフト手元側及びシャフト先端側にそれぞれ剛性調整用メインストレート層14Aを配置するとともにその間に剛性調整用ストレート層14Bを配置し、これにより
図13のパターン図に示すように、両層14A,14Bの重ね合わせ部Kをシャフト手元側及びシャフト先端側にそれぞれ配置する。