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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542012
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20190628BHJP
   E04H 5/04 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G06F17/50 680B
   E04H5/04ESW
   G06F17/50 612G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-78944(P2015-78944)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-200881(P2016-200881A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153616
【氏名又は名称】株式会社巴コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】中小路 元
(72)【発明者】
【氏名】小田原 史隼
(72)【発明者】
【氏名】石田 交広
(72)【発明者】
【氏名】高木 峻一
【審査官】 田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−322467(JP,A)
【文献】 特開2002−194894(JP,A)
【文献】 特開2011−80905(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3106618(JP,U)
【文献】 特開2010−65411(JP,A)
【文献】 特開2009−8562(JP,A)
【文献】 特開2005−187124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
E04H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に、屋外鉄構の電圧階級毎に設定した代表鉄構の詳細モデルに対する固有値解析から求められた代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1との関係式と、前記各代表鉄構の詳細モデルに対して想定地震波の加速度応答スペクトルから求められた前記各代表鉄構の一次固有周期T1と最大加速度応答値Ax1との関係式と、前記各代表鉄構の詳細モデルに対して実施した時刻歴地震応答解析による応力解析の結果から得られた最大加速度応答値Ax1と前記各代表鉄構の部材の短期許容応力度比σ/fとの関係式とをプログラム化してコンピュータの記憶手段に記憶させる手順と、
記各電圧階級の何れかに属する評価対象とする屋外鉄構である対象鉄構の梁取り付き高さhを入力手段によりコンピュータに入力する手順と、
前記入力手段から入力された前記対象鉄構の梁取り付き高さhを、前記記憶手段に記憶させた前記代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1との関係式に代入して、その一次固有周期t1をコンピュータの演算手段により算定する手順と、
算定された前記対象架構の一次固有周期t1を前記記憶手段に記憶させた前記各代表鉄構の一次固有周期T1と最大加速度応答値Ax1との関係式に代入して、前記対象鉄構で予測される最大加速度応答値ax1をコンピュータの演算手段により算定する手順と、
算定された前記対象架構で予測される最大加速度応答値ax1を前記最大加速度応答値Ax1と前記各代表鉄構の部材の短期許容応力度比σ/fとの関係式に代入して、前記対象鉄構において推定される短期許容応力度比σ/fをコンピュータの演算手段により算定する手順と、
算定された前記対象架構において推定される短期許容応力度比σ/fが1よりも大きいか否かより耐震補強対象かどうかをコンピュータの演算手段により判定する手順と、
を備え、
連の上記手順により、前記評価対象とする屋外鉄構の耐震性を簡易的に評価することを特徴とする変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法。
ここで、部材の短期許容応力度比σ/fとは、部材の短期許容応力度fに対する部材に作用する応力度σの比である。
【請求項2】
請求項1記載の変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法において、各電圧階級の代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1とがほぼ直線比例関係にあることを利用して、前記代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1との関係式として、回帰直線による関係式を前記記憶手段に記憶させ、前記対象鉄構の梁取り付き高さhのみから一次固有周期t1を近似的に求めることによって、想定地震波に対する前記対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定することを特徴とする変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法において、前記屋外鉄構は主柱材と腹材で構成されたトラス構造であり、腹材ではなく、主柱材の最下節の短期許容応力度比σ/fのみを評価することを特徴とする変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所屋外鉄構(以下、屋外鉄構と略す)の耐震性評価を効率的かつ簡易に行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は屋外鉄構の一形態であり、複数のフレームで構成されたもの(以下、単に鉄構1と称す)の一例である。図2は屋外鉄構の別形態で、単独の平面フレームで構成される引留鉄構1aの一例を示す。
【0003】
これらの柱2と梁3はトラス構造で構成される。従来、図1及び図2に図示したような屋外鉄構の耐震性評価は、柱2及び梁3のトラスの主材と腹材を認識させた詳細モデルを作成し、想定される地震波について時刻歴地震応答解析を実行して部材検討を行うことが一般的であった。そのため、詳細モデルの作成や、複数の想定される地震波に対する解析結果の整理・分析に夥しい時間と手間とコストが必要であった。
【0004】
また、今後多発が予想される大きな地震への備えとして、特に、既存の屋外鉄構はその耐震性を把握して対策する必要があり、全国多数地点にある変電所の大量の屋外鉄構の耐震性を、効率よく簡易に評価できる方法が求められていた。
構造物の耐震性評価を効率的に行う方法に関する先行技術として、例えば特許文献1乃至特許文献3がある。
【0005】
特許文献1は、既存建物の耐震性能を評価する方法であって、対象建物のデータを入力し、データベースの基礎データを参照して、対象建物の現状の耐震性能評価値を算定するものである。
【0006】
現状の耐震性能評価値として、構造安全性の目安の「構造耐震指標値Is」と資産価値等の目安の「予想最大損失率PML」を算出するが、PML値はIs値を基にして算出される。このIs値は、対象建物毎に構造耐力等の計算をして求める必要があるので、評価対象件数が多いと、多くの時間と手間とコストが必要となる。
【0007】
特許文献2は、評価対象の建物情報及び地理情報を入力し、予め格納された建物の構造データ、地盤データ及び地震波データの中から、前記評価対象の情報に対応するデータを用いて、前記評価対象の建物の地震時における変形状況の解析及び建築地の地盤診断をすることによって、耐震性能を評価するものである。
【0008】
しかし、これらの先行技術は、対象とする個々の建物を個別に解析して評価する方法であり、前記の解決すべき課題である、大量の対象構造物に対して効率良くかつ簡易に耐震性評価をする方法とは言えず、また、そのような方法について示唆するものはない。
【0009】
特許文献3は、想定地震に対する対象建物の損傷度を評価する建物の耐震設計方法である。この方法では、層間変形角と損傷度との関係を規格化建物のカテゴリー毎に、予め、実際の構造モデルの構造実験により導出しておき、評価対象建物に対しては、個別に地震応答解析を実施するが、指定した大きさの地震動について、仮想的な地震波を数千から数万回にわたり入力して、発生する最大層間変形角の発生確率を求めた後、前記層間変形角と損傷度との関係に当てはめて、どの程度の損傷になるかを評価するものである。
【0010】
即ち、評価対象建物の寸法や固有周期等の既知情報のみから推定するものではない。従って、特許文献1及び2と同様に、大量の対象構造物に対して効率良くかつ簡易に耐震性評価をする方法とは言えず、また、そのような方法について示唆するものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−147970号公報
【特許文献2】特開2008−251045号公報
【特許文献3】特許第5653765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、全国多数地点にある変電所に設置され、電圧階級によっても規模や形態が異なる数多くの既設屋外鉄構の耐震性評価を、構造計算や地震応答解析をすることなく簡易に評価する方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の変電所屋外鉄構の耐震性簡易評価方法は、以下の構成からなる(図9に示すフローチャートの番号(1)〜(7)を参照)。
【0014】
先ず事前に、屋外鉄構の各電圧階級に設定した代表鉄構の詳細モデル(例えば、トラス部材まで認識させたモデル)に対する固有値解析から、それら代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1との関係式(例えば、回帰式)を求める((1))。
【0015】
また、前記各代表鉄構の詳細モデルに対して想定地震波の時刻歴地震応答解析による応力解析を実施し、前記各代表鉄構の一次固有周期T1に対して想定地震波の加速度応答スペクトルから求まる最大加速度応答値Ax1((2))と、前記応力解析結果から得られた前記各代表鉄構の部材の短期許容応力度比σ/fとの関係式(例えば、回帰式)を求めておく((3))。これらの関係式はプログラム化してコンピュータの記憶手段(メモリ)に記憶させる。
ここで、部材の短期許容応力度比σ/fとは、部材の短期許容応力度fに対する部材に作用する応力度σの比である。
【0016】
次に、これらの関係式を用いて、
前記各電圧階級に属する評価対象の屋外鉄構(以下、対象鉄構と称す)の梁取り付き高さhからその一次固有周期t1を算定する手順((4))、
前記対象鉄構の一次固有周期t1を用いて想定地震波の加速度応答スペクトルから、前記対象鉄構の最大加速度応答値ax1を予測する手順((5))、
前記対象鉄構の最大加速度応答値ax1から対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定する手順((6))、
短期許容応力度比σ/fが1よりも大きいか否かにより耐震補強対象かどうかを判定する手順((7))、
の一連の手順により対象鉄構の耐震性を簡易的に評価する。
これらの一連の手順は、コンピュータの演算手段(CPU)により行われる。
【0017】
また、本発明では、各電圧階級の代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1とがほぼ直線比例関係にあることを利用して、対象鉄構の梁取り付き高さhのみから一次固有周期t1を近似的に求めることによって、想定地震波に対する前記対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明では、主柱材と腹材で構成されたトラス構造である屋外鉄構において、腹材ではなく、主柱材の最下節の短期許容応力度比σ/fのみを評価するようにしてもよい。
【0019】
表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1との関係、及び代表鉄構の最大加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係はプログラム化し、このプログラムを用いて、想定する地震波に対する対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定する。
【0020】
本発明において、屋外鉄構の電圧階級毎に設定した代表鉄構から求めた各関係式から、想定する地震波に対する対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定できる理由は、下記の通りである。
【0021】
変電所屋外鉄構独特の特性として、各電圧階級の代表鉄構の梁取り付き高さHと一次固有周期T1とはほぼ直線比例関係にあることを、初めて本発明の発明者が明らかにした。また、代表鉄構と同じ電圧階級に属する対象鉄構は、規模(高さやスパン等)が概ね同じであり、それら対象鉄構の一次固有周期t1は代表鉄構の一次固有周期T1に近いものとなるので、代表鉄構の直線比例関係を利用すれば、それら対象鉄構の梁取り付き高さhのみから一次固有周期t1を近似的に求めることが可能となる。
【0022】
即ち、それら対象鉄構の固有値解析を省略できる。そして、一次固有周期t1が求まれば、以下、代表鉄構についてのT1〜Ax1関係(前記手順(5))及びAx1〜σ/f関係(前記手順(6))に当てはめることより、想定する地震波に対する当該対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定することが可能になる。
【0023】
また、腹材ではなく、主柱材の最下節の短期許容応力度比σ/fのみを評価することができるとした理由は以下の通りである。屋外鉄構の柱部は主柱材と腹材で構成されるトラス構造であり、地震動を受けて最も損傷を受け易い部位は、主柱材では最下節もしくは梁取付き部であるが、腹材では部位を特定できない。
【0024】
主柱材と腹材の損傷のどちらを重視するかという観点からは、腹材の損傷よりも、自重を支えている主柱材かつ最下節の損傷の方が屋外鉄構の崩壊に至り易いと考えられるので主柱材の最下節が優先される。また、簡便性も考えれば、屋外鉄構の耐震性簡易評価法としては、主柱材の最下節に限定するのが妥当である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のような手順で耐震性評価を行うので、次のような効果が得られる。
【0026】
(1) 対象鉄構の梁取り付き高ささえ分かれば、想定地震波に対する短期許容応力度比が推定できるので、簡便かつ迅速な耐震性評価方法である。
【0027】
(2) 対象鉄構の耐震性評価のための一連作業において、地震応答解析や構造計算をする必要がない。
【0028】
(3) 耐震余裕度が部材の短期許容応力度比の逆数として求まるので、降伏(損傷)の度合いが同一基準の下、容易に他の対象鉄構と相対比較できる。
【0029】
(4) 以上のように、耐震性評価が極めて効率的かつ簡便にできるので、多くの屋外鉄構に対する耐震対策の優先順位付けが迅速かつ経済的に実施できる。
【0030】
(5) 従って、既設屋外鉄構に対する速やかな耐震補強の促進に寄与し、ひいては地震発生による停電の回避に貢献するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】代表鉄構として想定した鉄構の一例を示す全体斜視図である。
図2】代表鉄構として想定した引留鉄構の一例を示す全体斜視図である。
図3】代表鉄構の梁取り付き高さHと1次固有周期T1との関係を示すグラフである。
図4】一次固有周期に対応する加速度応答スペクトルの一例を示すグラフである。
図5】電圧階級500kVの代表鉄構の主柱材と腹材の加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係とその回帰線を示すグラフである。
図6】電圧階級275kVの代表鉄構の主柱材と腹材の加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係とその回帰線を示すグラフである。
図7】電圧階級154kVの代表鉄構の主柱材と腹材の加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係とその回帰線を示すグラフである。
図8】電圧階級66kVの代表鉄構の主柱材と腹材の加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係とその回帰線を示すグラフである。
図9】本発明の耐震性簡易評価方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面と表に基づいて本発明を説明する。図1は、代表鉄構として想定した鉄構1の全体斜視図である。実際には複数の電線4、4、・・・(図2参照)が接続されているが、省略して図示している。また、図2は、代表鉄構として想定した単独の平面フレームから成る引留鉄構1aの全体斜視図である。
【0035】
本発明による評価方法では、先ず、表1に記載のように、電圧階級66kV〜500kVの4階級について、それぞれ図1及び図2に例示したような形態の代表鉄構(鉄構1もしくは引留鉄構1a)を選定し、トラス構造である柱2及び梁3の主柱材と腹材を認識させた3次元の詳細モデルを作成する。
【0036】
これらの代表鉄構についての固有値解析により代表鉄構の一次固有周期T1を算定し(図3の●印及び○印)、梁付き高さHと一次固有周期T1との関係式を、図3のような回帰直線A、Bとして求める。
【0037】
【表1】
【0038】
図3の例では、
鉄構1の場合(回帰直線A);
T1=k1・H (図3の●印に対応) … (1)
引留鉄構1aの場合(回帰直線B);
T1=k2・H (図3の○印に対応) … (2)
となっている。
【0039】
ここで、k1、k2は比例係数であり、図3に見るように、回帰直線AもしくはBに対するばらつきは少ない。即ち、梁付き高さHの値が大きい(電圧階級が高い)程、一次固有周期T1は長くなり、その関係は直線比例と見做すことができる。
【0040】
次に、表1に例示した数種類の想定地震波を用いて、前記各代表鉄構の時刻暦地震応答解析を実行し、最大加速度応答値Ax1と柱2(主柱材と腹材)の短期許容応力度比σ/fとの関係式を回帰直線として求める。
【0041】
これらの各電圧階級の主柱材と腹材に対する最大加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係を図表化したものが、図5図8(回帰直線Cが●印の鉄構に対応、回帰直線Dが○印の引留鉄構に対応)であり、その関係も直線比例と見做すことができる。
【0042】
以上より各電圧階級の代表鉄構について、梁付き高さHと一次固有周期T1との関係式(上記の式(1)、式(2))、及び最大加速度応答値Ax1と柱2(主柱材と腹材)の短期許容応力度比σ/fとの関係式(図5図8の回帰直線C、D)が明示されたので、これらの関係式を用いて、対象鉄構の短期許容応力度比σ/fを推定することができる。
【0043】
その手順は以下の通りである。
【0044】
(1) 梁取り付き高さがhである対象鉄構の一次固有周期t1を、式(1)もしくは式(2)より算定する。
【0045】
(2) 想定する地震波の加速度応答スペクトル(例えば図4)から前記一次固有周期t1に対応する最大加速度応答値ax1を予測する。
【0046】
(3) 前記対象鉄構が属する電圧階級の代表鉄構の柱2の主柱材と腹材に対する最大加速度応答値Ax1と短期許容応力度比σ/fとの関係(図5図8の回帰直線CもしくはD)より、求まった前記最大加速度応答値ax1に対応する短期許容応力度比σ/fを推定する。
【0047】
以上のようにして、対象鉄構の柱2の主柱材と腹材の短期許容応力度比σ/fが推定され、その耐震余裕度が数値化されるので、短期許容応力度比σ/f>1であれば損傷を受ける可能性が高いと判断される。短期許容応力度比σ/fの値が大きい程、損傷の危険性が高いことを示すので、補強の優先順位を決定する際の重要な指標となる。
【0048】
上記のように、本発明によれば、各電圧階級の代表鉄構について、事前に、梁付き高さHと一次固有周期T1との関係式、及び最大加速度応答値Ax1と柱2(主柱材と腹材)の短期許容応力度比σ/fとの関係式を求めておくことにより、対象鉄構の一次固有周期t1が代表鉄構の一次固有周期T1に近似することを利用して、その対象鉄構の耐震余裕度を極めて容易かつ迅速に判定することができる。
【0049】
しかも、検討対象とすべき数多くの屋外鉄構について、構造計算や地震応答解析をすることなく耐震対策の優先順位を付けられるので、極めて経済的である。
【0050】
なお、上記手順説明では、短期許容応力度比σ/fの推定を主柱材と腹材の両方を対象としたが、本発明では、評価方法は簡易であることを主眼とすることから、耐震性評価で採用する短期許容応力度比σ/fは、柱2の最下節の主柱材に限定することもできる。その理由は、腹材の損傷よりも、自重を支えている主柱材の損傷の方が屋外鉄構の崩壊に至り易いと考えられるためである。
【0051】
以上の対象鉄構の耐震性評価のための一連の作業は、表計算ソフトを用いて簡単に計算表を作成して進めることができる。
【0052】
また、図3図8のような計算図表を予め作成しておき、紙上で視覚(アナログ)的に作業をすることもできる。
【0053】
なお、本発明に関わる図表は、図3図8に示された実施形態に限定されるものではなく、回帰直線で表示される関係式が使い易くなるように工夫することは、耐震性評価作業を効率化する上で更に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、今後、大きな地震の多発が予想される中、全国多数地点にある変電所に設置され、規模や形態が異なる数多くの既設屋外鉄構の耐震性評価を、構造計算や地震応答解析をすることなく、効率良くかつ経済的に実施できる方法であり、既設屋外鉄構に対する速やかな耐震補強の促進に寄与し、ひいては地震発生による停電の回避に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0055】
1:鉄構
1a:引留鉄構
2:柱
3:梁
4:電線
A、C:鉄構の回帰直線
B、D:引留鉄構の回帰直線
H:代表鉄構の梁取り付き高さ
h:対象鉄構の梁取り付き高さ
T1:代表鉄構の1次固有周期
t1:対象鉄構の1次固有周期
Ax1:代表鉄構の最大加速度応答値
ax1:対象鉄構の最大加速度応答値
σ/f:短期許容応力度比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9