特許第6542162号(P6542162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542162
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】溶接部材の拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/04 20060101AFI20190628BHJP
   B23K 10/02 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   B23K37/04 D
   !B23K10/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-132454(P2016-132454)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2018-1229(P2018-1229A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】593045020
【氏名又は名称】株式会社北海鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 栄一
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−336964(JP,A)
【文献】 実開昭54−127831(JP,U)
【文献】 特開2000−312989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00 − 37/08
B23K 9/032
B23K 10/02
B23K 26/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部材を負圧吸引する吸引部を形成した吸着盤を備えた溶接部材の拘束装置において、吸着盤の中央部に溝を形成し、該溝を挟んで溶接部材を負圧吸引する吸引部を形成するとともに、溝内にシールドガスを供給するガス供給機構を備え、前記吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気をエジェクタ式負圧発生器に供給して負圧吸引力を生じさせるようにした配管と、圧力計に連なる配管とを接続するとともに、該圧力計に連なる配管を介して、吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気を供給することができるようにしたことを特徴とする溶接部材の拘束装置。
【請求項2】
前記吸引部を、吸着盤の表面の複数箇所に開口する空気出入口と、該空気出入口を中心としてその外周に配設した環状のシールリングとで構成したことを特徴とする請求項1に記載の溶接部材の拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部材の拘束装置に関し、特に、プラズマアーク溶接を行う際に好適に使用できる溶接部材の拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料の溶接方法のうち、プラズマアーク溶接は、プラズマ溶接機に備えたプラズマトーチが発生するエネルギ密度の高いアークとノズル孔から噴出するアルゴン等の動作ガスのガス流量の増減により、熱伝導型溶接やキーホール型溶接(片面突合せ裏波形成溶接)の選択が可能で、TIG溶接やMAG溶接の短所を解決し、生産性や品質を向上する溶接方法として汎用されている。
【0003】
このプラズマアーク溶接は、その反面、自動溶接のため、高い継手精度が必要となり、溶接部材の拘束が不可欠で、設備が大型化し設備コストが高くつくという問題があった。
【0004】
一方、溶接部材を拘束するために、溶接部材を負圧吸引するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−1186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、設備の小型化やプラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドについて配慮したものではなかった。
【0007】
本発明は、上記従来のプラズマアーク溶接の有する問題点に鑑み、設備を小型化することができるとともに、プラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドを可能にした溶接部材の拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の溶接部材の拘束装置は、溶接部材を負圧吸引する吸引部を形成した吸着盤を備えた溶接部材の拘束装置において、吸着盤の中央部に溝を形成し、該溝を挟んで溶接部材を負圧吸引する吸引部を形成するとともに、溝内にシールドガスを供給するガス供給機構を備え、前記吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気をエジェクタ式負圧発生器に供給して負圧吸引力を生じさせるようにした配管と、圧力計に連なる配管とを接続するとともに、該圧力計に連なる配管を介して、吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気を供給することができるようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記吸引部を、吸着盤の表面の複数箇所に開口する空気出入口と、該空気出入口を中心としてその外周に配設した環状のシールリングとで構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶接部材の拘束装置によれば、吸着盤の中央部に溝を形成し、該溝を挟んで溶接部材を負圧吸引する吸引部を形成するとともに、溝内にシールドガスを供給するガス供給機構を備えるようにすることにより、設備を小型化することができるとともに、プラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドを可能にすることができる。
【0012】
また、前記吸引部を、吸着盤の表面の複数箇所に開口する空気出入口と、該空気出入口を中心としてその外周に配設した環状のシールリングとで構成することにより、吸引部によって、溶接部材を確実に拘束することができる。
【0013】
また、前記吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気をエジェクタ式負圧発生器に供給して負圧吸引力を生じさせるようにした配管と、圧力計に連なる配管とを接続するとともに、該圧力計に連なる配管を介して、吸引部の空気出入口に連なる流路に、コンプレッサからの圧縮空気を供給するようにすることにより、負圧吸引力及び正圧開放力をコンプレッサからの圧縮空気により得ることができるとともに、圧力計によって溶接部材の拘束状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の溶接部材の拘束装置の一実施例を示す説明図である。
図2】同溶接部材の拘束装置の配管の説明図である。
図3】同溶接部材の拘束装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図4】同溶接部材の拘束装置を示し、(a)は図3(b)のA−A断面図、(b)は同B−B断面図、(c)は同C−C断面図、(d)は同D−D断面図である。
図5】同溶接部材の拘束装置の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の溶接部材の拘束装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1図5に、本発明の溶接部材の拘束装置の一実施例を示す。
この溶接部材の拘束装置は、溶接部材を負圧吸引する吸引部11を形成した吸着盤1を備えるようにしたもので、吸着盤1の中央部に溝12を形成し、この溝12を挟んで溶接部材を負圧吸引する吸引部11を形成するとともに、溝12内に、アルゴン等のシールドガスを供給するガス供給機構2を備える。
【0017】
この場合において、吸引部11は、吸着盤1の表面の複数箇所に開口する空気出入口13と、この空気出入口13を中心としてその外周に配設した環状のシールリング14とで構成するようにしている。
これにより、吸引部11によって、溶接部材を確実に拘束することができる。
【0018】
また、吸引部11の空気出入口13に連なる流路15に、コンプレッサ3からの圧縮空気をエジェクタ式負圧発生器4に供給して負圧吸引力を生じさせるようにした配管51と、圧力計6に連なる配管52とを接続するようにしている。
これにより、圧力計6によって溶接部材の拘束状態を確認することができる。
【0019】
ところで、吸引部11の負圧吸引力は、コンプレッサ3からの圧縮空気のエジェクタ式負圧発生器4への供給を停止し、流路15をバルブ(図示省略)を介して大気に開放することで消滅し、溶接部材の拘束状態を解除することができる。
一方、必要に応じて、圧力計6に連なる配管52を介して、吸引部11の空気出入口13に連なる流路15に、コンプレッサ3からの圧縮空気を供給するようにすることができる。
これにより、負圧吸引力及び正圧開放力をコンプレッサ3からの圧縮空気により得るとともに、溶接部材の拘束状態の解除を確実に行うことができる。
【0020】
ガス供給機構2は、配管53を介して、吸着盤1の溝12内に配設した、多数の小孔を形成したシールドガス放出管16に接続し、吸着盤1の溝12内にアルゴン等のシールドガスを供給するようにしている。
【0021】
ところで、本実施例において、吸着盤1の吸着盤1には、溶接を行う溶接部材を支持する架台7を一体に設けるようにしている。
さらに、溶接を行う溶接部材の大きさに応じて、補助架台8を設けることができる。
【0022】
また、溶接を行う溶接部材の大きさに応じて、溶接部材が位置しない吸引部11の空気出入口13には、図4(b)に示すように、ロックボルト18を取り付けて、空気出入口13を塞ぐようにする。
【0023】
また、本実施例において、吸着盤1はユニット化し、溶接を行う溶接部材の大きさに応じて、1〜複数個のユニットを、連結部17を介して、連結して用いるようにしている。
【0024】
この溶接部材の拘束装置は、図5に示すように、吸着盤1の中央部の溝12上に、溶接部材W1、W2を突合せた溶接箇所が位置するように配置した後、コンプレッサ3からの圧縮空気をエジェクタ式負圧発生器4に供給して負圧吸引力を生じさせることにより、溶接部材W1、W2を吸引部11に負圧吸引して溶接部材W1、W2を拘束する。
このとき、圧力計6によって溶接部材W1、W2の拘束状態を確認することができる。
【0025】
そして、拘束した溶接部材W1、W2上に、プラズマアーク溶接機9のレール93を設置し、レール93に沿って台車91を走行させることによって、プラズマトーチ92を溶接部材W1、W2を突合せた溶接箇所上を移行させ、プラズマアーク溶接を行う。
この際、ガス供給機構2から、吸着盤1の溝12内にシールドガスを供給することによって、プラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドを行うようにする。
また、溶接を行う溶接部材W1、W2の大きさに応じて、露出した吸着盤1の溝12の部分や、溶接前の溶接部材W1、W2を突合せた溶接箇所には、溝12内に供給したシールドガスの漏出を防ぐシールテープを貼着し、必要に応じて、貼着したシールテープを剥がしながらプラズマアーク溶接を行うことが望ましい。
【0026】
プラズマアーク溶接を行った後、コンプレッサ3からの圧縮空気のエジェクタ式負圧発生器4への供給を停止し、流路15をバルブ(図示省略)を介して大気に開放したり、圧力計6に連なる配管52を介して、吸引部11の空気出入口13に連なる流路15に、コンプレッサ3からの圧縮空気を供給することにより、溶接部材の拘束状態を解除する。
【0027】
この溶接部材の拘束装置によれば、吸着盤1の中央部に溝12を形成し、この溝12を挟んで溶接部材を負圧吸引する吸引部11を形成するとともに、溝12内にシールドガスを供給するガス供給機構2を備えるようにすることにより、吸着盤1はユニット化し、溶接を行う溶接部材の大きさに応じて、1〜複数個のユニットを、連結部17を介して、連結して用いるようにしたり、溶接部材の拘束装置とプラズマアーク溶接機9とを別体構造にしたことと相俟って、設備を小型化することができるとともに、プラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドを可能にすることができる。
【0028】
以上、本発明の溶接部材の拘束装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の溶接部材の拘束装置は、設備を小型化することができるとともに、プラズマアーク溶接を行う際の溶接部材の裏面側のシールドを可能にすることができることから、プラズマアーク溶接を行う際に溶接部材を拘束する用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 吸着盤
11 吸引部
12 溝
13 空気出入口
14 シールリング
15 流路
16 シールドガス放出管
17 連結部
18 ロックボルト
2 ガス供給機構
3 コンプレッサ
4 エジェクタ式負圧発生器
51 配管
52 配管
53 配管
6 圧力計
7 架台
8 補助架台
9 プラズマアーク溶接機
91 台車
92 プラズマトーチ
93 レール
W1、W2 溶接部材
図1
図2
図3
図4
図5