(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542236
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20190628BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/34 20060101ALI20190628BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20190628BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20190628BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20190628BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20190628BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20190628BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20190628BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
C07D487/04 142
A61K31/519
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/04
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/06
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/36
A61P27/02
A61P21/02
A61P13/10
A61P3/04
A61P9/10
A61K51/00 100
A61K51/00 200
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-545898(P2016-545898)
(86)(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公表番号】特表2017-502069(P2017-502069A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2015010901
(87)【国際公開番号】WO2015106158
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】61/925,608
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・チアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウイ・ポン
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ジェイ・ビアード
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・トメシュ
【審査官】
石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表平04−503205(JP,A)
【文献】
特表2010−533686(JP,A)
【文献】
特表2010−531342(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/147711(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/104575(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/156756(WO,A1)
【文献】
Masharipov, S. M. et al.,Acylation of 2-guanidinedinebenzimidazole and 2-cyanoamidobenzimidazoles by acid chlorides of unsaturated acids,O'zbekiston Kimyo Jurnali ,2001年,(4),39-41
【文献】
REGISTRY(STN)[online],2013年12月 5日,[検索日 2018.09.11]CAS登録番号 1488130-69-3, 1480367-63-2, 1464177-09-0, 1371193-87-1, 1347086-77-4, 1306165-12-7, 1303672-10-7, 1292030-08-0, 1181955-69-0, 1180428-95-8, 1180151-24-9, 1179430-59-1, 1173045-98-1, 1172963-03-9, 1170380-95-6, 1170246-41-9, 1158418-74-6, 1147357-94-5, 1104077-34-0, 1103955-95-8, 1095881-07-4, 1083186-82-6, 1018285-50-1, 1016777-46-0, 1016760-54-5, 1016683-91-2, 1016518-08-3, 1014583-47-1, 1013244-91-1, 1010210-32-8, 1002853-32-8, 1002852-57-4
【文献】
REGISTRY(STN)[online],2008年 2月11日,[検索日 2018.09.11]CAS登録番号 1002686-85-2, 1002686-48-7, 1001839-85-5, 955738-44-0, 954094-21-4, 954018-17-8, 954018-05-4, 953961-30-3, 925401-73-6, 924426-49-3, 924243-51-6, 923000-30-0, 923000-28-6, 922701-00-6, 922700-76-3, 885902-72-7, 880282-18-8, 847841-19-4, 802964-36-9, 764701-54-4, 762250-52-2, 728941-65-9, 723251-36-3, 638148-03-5, 561294-63-1,, 404586-30-7, 349415-75-4, 333433-38-8, 333413-24-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形または塩形態の、式I:
【化1】
式I
[式中、
(i)R
3は、ハロであり;および
(ii)R
1およびR
2は一緒になってピペラジン環を形成し、該ピペラジンは
場合によりハロゲンで置換されたC
1−6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物。
【請求項2】
前記ピペラジン環が場合によりハロゲンで置換されたC1−6アルキルで置換され、R3がフルオロである、遊離形または塩形態の式Iで示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、遊離形または塩形態の、
【化4】
である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
化学的に結合した放射性核種で放射標識されている、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
放射性核種が、炭素−11、フッ素−18、テクネチウム−99m、インジウム−111およびヨウ素−123から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
以下のいずれか:
【化7】
から選択される、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、請求項4または5に記載の化合物。
【請求項7】
遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物を、製薬上許容し得る希釈剤または担体と組み合わせてまたは配合して含んでなる、医薬組成物。
【請求項8】
CK1阻害により恩恵を受けうる疾患の治療のためのまたは予防的処置、制御または管理のための、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
CK1がCK1δまたはCK1εである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
異常に過剰リン酸化されたTau状態、がん、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、気分障害、抑鬱障害、双極性障害、またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調、認知症、ダウン症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、ピック病、神経原線維型認知症、急性神経疾患および精神障害、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢による記憶障害、ハンチントン舞踏病、眼損傷、網膜症、認知障害、突発性および薬物誘発性パーキンソン病、筋攣縮および振戦を含む筋攣縮を伴う障害、てんかん、ひきつけ、片頭痛、片頭痛頭痛、尿失禁、物質耐性、物質離脱症、鎮痛剤、ニコチン、タバコ、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、および睡眠薬からの離脱症状、精神病、軽度認知障害、健忘認識機能障害、マルチドメイン認識障害、肥満症、統合失調症、不安、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、躁病、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、目の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性および慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性の疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジー、ナルコレプシー、自閉症、アスペルガー病、または哺乳類における行為障害の、治療のためのまたは予防的処置、制御または管理のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
異常に過剰リン酸化されたTau状態がアルツハイマー病であり、概日リズムの脱同調に伴う障害が睡眠障害であり、抑鬱障害が鬱であり、双極性障害が双極性I型または双極性II型障害であり、急性神経疾患および精神障害が、心臓バイパス外科手術および移植、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部損傷、周生期低酸素症、心拍停止後の脳障害または血糖降下薬神経損傷であり、認知障害が統合失調症および双極性障害に伴う認知障害である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
睡眠障害が、睡眠相前進症候群、睡眠相後退症候群、時差ぼけ、または交代勤務睡眠障害である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
異常に過剰リン酸化されたTau状態、がん、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、気分障害、抑鬱障害、双極性障害、またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調、認知症、ダウン症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、ピック病、神経原線維型認知症、急性神経疾患および精神障害、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢による記憶障害、ハンチントン舞踏病、眼損傷、網膜症、認知障害、突発性および薬物誘発性パーキンソン病、筋攣縮および振戦を含む筋攣縮を伴う障害、てんかん、ひきつけ、片頭痛、片頭痛頭痛、尿失禁、物質耐性、物質離脱症、鎮痛剤、ニコチン、タバコ、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤および睡眠薬からの離脱症状、精神病、軽度認知障害、健忘認識機能障害、マルチドメイン認識障害、肥満症、統合失調症、不安、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、躁病、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、目の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性および慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性の疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジー、ナルコレプシー、自閉症、アスペルガー病、または哺乳類における行為障害の治療のためのまたは予防的処置、制御または管理のための医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載の遊離形または製薬上許容し得る塩形態の化合物の使用。
【請求項14】
異常に過剰リン酸化されたTau状態がアルツハイマー病であり、概日リズムの脱同調に伴う障害が睡眠障害であり、抑鬱障害が鬱であり、双極性障害が双極性I型または双極性II型障害であり、急性神経疾患および精神障害が、心臓バイパス外科手術および移植、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部損傷、周生期低酸素症、心拍停止後の脳障害または血糖降下薬神経損傷であり、認知障害が統合失調症および双極性障害に伴う認知障害である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
睡眠障害が、睡眠相前進症候群、睡眠相後退症候群、時差ぼけ、または交代勤務睡眠障害である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容が本明細書の一部を構成する、米国仮出願第61/925,608号(出願日:2014年1月9日)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、CK1阻害剤として有用な新規化合物、該化合物を含んでなる医薬組成物、およびCK1を阻害する方法、並びに治療上有効量のCK1阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含んでなるCK1関連障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、認知機能(例えば、記憶および論理的思考)及び行動能力の喪失によって特徴付けられる不可逆の進行性の脳疾患である。ADは全世界で2500万人以上の人が患っていると推定され、2010年の世界アルツハイマーレポートでは年間の社会的コストは604億USドル(世界の総GDPの1%)と報告されている。ADの現在の薬物療法は、単にADの症状を処置することを目的としており、かなり不十分である。ADの現在の薬物療法は疾患の進行には対処してない。疾患の進行を遅らせ(あるいは逆転させ)、その疾患の複数の側面を標的とする、新しい治療薬が早急に必要とされている。
【0004】
研究によれば、ADの原因として、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Tauリン酸化、ガンマ−セクレターゼ(GS)、アポリポタンパク質E(ApoE)及び概日リズムに関与する遺伝子に関する様々な遺伝的素因が示されている。アルツハイマー病におけるTau過リン酸化、過剰なアミロイドβ(Aβ)形成および概日リズムの脱同調の重要性を指摘する強力な証拠がある。また、概日リズムの調節に関与する脳領域である視交叉上核における細胞損失が、ADの認知症ステージの進行と一致するという明確な証拠もある。AD患者は、深刻で且つ進行する認知低下、睡眠障害および情緒不安定状態(agitation)に苦しんでいる。
【0005】
カゼインキナーゼ1は、タンパク質セリン/スレオニンキナーゼの特有のクラスに属し、他のキナーゼファミリーとは遠い関係にある。CK1固有の配列を他のキナーゼファミリーと比較すると、CK1ファミリー以外ではグリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)が最も密接に関連するキナーゼであるが、触媒ドメインにおける同一性はたった20%である。CK1ファミリーには、様々なスプライス変異によって7種類のアイソフォームが存在する。ADにおけるCK1の役割は、最近の報告によって実質的に明らかになっている。Buee et al., Brain Res. Rev.(2000)33(1):95-130; See also Perez et al., Med. Res. Rev.(2010)31(6):924-54。CK1δmRNAは、AD患者の脳の海馬では30倍のレベルに上昇している。Yasojima et al., Brain Res.(2000)865(1):116-20。また、Aβ形成を逆転させるCK1阻害剤の有益な効果も示されている。Flajolet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(2007)104(10):4159-64。Tauの様々なリン酸化形態に関しては、Tauに複数のリン酸化部位が存在し数多くのTauキナーゼが想定される。このプロセスにおける様々なキナーゼの役割は複雑であるが、一般に、ADに関連する普遍的な病理である対らせん状細線維(PHF)の形成と同時に起きる過リン酸化を推し進める、鍵となるプライミングキナーゼの重要性が認識されている。CK1が、プライミング機能を有する「主要なTauキナーゼ」であり、対らせん状細線維(PHF)に関連することは十分に証明されている。Hanger et al., J. Biol. Chem.(2007)282(32):23645-54。最も重要なことに、リン酸化およびまとめて「クロック遺伝子」と考えらているCK1およびCK2によるCLOCK、BMAL-1、およびPer1-3を含む一連の転写因子の調節を介して、概日リズムおよび代謝状態を制御するCK1の根本的な役割についての重要証拠が存在する。Ebisawa T., J. Pharmacol. Sci.(2007)103(2):150-4。CK1δおよびε遺伝子変異体もまた概日リズム変化に関与している。
【0006】
高い特異性を有するCK1阻害剤が開発され、ADに関連する病理におけるCK1の役割の立証に寄与した。強力で選択的な阻害剤の幾つかの例が知られている。齧歯動物およびサルの動物モデルにおいて強力且つ選択的なCK1阻害剤を用いて、概日リズムの相シフトに深い影響を及ぼすことが見出され、体内時計にCK1が関与しているという仮説が実質的に立証されている。Sprouse et al., Psychopharmacology (Berl)(2010)210(4):569-76; Sprouse et al., Psychopharmacology (Berl)(2009)204(4):735-42。したがって、これらの研究はいずれも、ADにおける治療標的としてのCK1の重要な役割を裏付けるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CK1の重要な役割に鑑み、ADおよび他のCK1関連疾患に対する闘いにおいて、さらに強力なおよび選択的なCK1阻害剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CK1阻害剤として有用な新規化合物を提供する。
第1の態様として、本発明は、遊離形または塩形態の、式I
【化1】
式I
[式中、
(i)R
3は、ハロ(例えば、フルオロ)であり;および
(ii)R
1およびR
2は一緒になってピペラジン環を形成し、該ピペラジンはC
1−6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物を提供する。
【0009】
第1の態様の更なる実施形態として、本発明は、式Iで示される以下の化合物を提供する。
1.1. ピペラジン環がC
1−6アルキル(例えば、メチル)で置換された(例えば4−メチルピペラジン−1−イルである)式Iの化合物;
1.2. R
3がフルオロである式Iまたは式1.1の化合物;
1.3.
【化2】
で示される式Iの化合物。
【0010】
第2の態様として、本発明は、遊離形または塩形態の、式II
【化3】
式II
[式中、
(i)R
1、R
2、R
3およびR
4は、H、C
1−6アルキル(例えば、メチル)およびハロ(例えば、クロロ)からなる群から独立に選択され;
(ii)AはC
1−4アルキレン(例えば、メチレンまたはエチレン)であり;
(iii)Bは、場合により−N(H)(R
a)(ここで、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)である)で置換された、単環系または二環系アリールまたはヘテロアリール(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジル)である]
で示される化合物を提供する。
【0011】
第2の態様の更なる実施形態として、本発明は、遊離形または塩形態の、式IIで示される以下の化合物を提供する。
2.1. R
1、R
2、R
3およびR
4は、H、C
1−6アルキル(例えば、メチル)およびハロ(例えば、クロロ)からなる群から独立に選択される式IIの化合物;
2.2. R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にHである、式IIまたは式2.1の化合物;
2.3. R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にC
1−6アルキル(例えば、メチル)である、式IIまたは式2.1または2.2の化合物;
2.4. R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にハロ(例えば、クロロ)である、式IIまたは式2.1〜2.3のいずれかの化合物;
2.5. R
3およびR
4は独立にHまたはメチルである、式IIまたは式2.1〜2.4のいずれかの化合物;
2.6. R
3は、ハロ(例えば、クロロ)またはC
1−6アルキル(例えば、メチル)である、式IIまたは式2.1〜2.5のいずれかの化合物;
2.7. AはC
1−4アルキレン(例えば、メチレンまたはエチレン)である、式IIまたは式2.1〜2.6のいずれかの化合物;
2.8. Aはメチレンである、式IIまたは式2.1〜2.6のいずれかの化合物;
2.9. Aはエチレンである、式IIまたは式2.1〜2.6のいずれかの化合物;
2.10. Bは、場合により−N(H)(R
a)(ここで、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)である)で置換された、モノ−環状または二環系アリールまたはヘテロアリール(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジル)である、式IIまたは式2.1〜2.9のいずれかの化合物;
2.11. Bは単環系または二環系ヘテロアリール(例えば、ピリジル)である、式IIまたは式2.1〜2.9のいずれかの化合物;
2.12. Bはピリジル(例えば、ピリジン−3−イル)である、式IIまたは式2.1〜2.9のいずれかの化合物;
2.13. Bは、場合により−N(H)(R
a)(ここで、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)である)で置換された、単環系または二環系アリール(例えば、フェニルまたはナフチル)である、式IIまたは式2.1〜2.9のいずれかの化合物;
2.14. Bは−N(H)(R
a)であり、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)で置換された、単環系または二環系アリール(例えば、フェニルまたはナフチル)である、式IIまたは式2.1〜2.9のいずれかの化合物;
2.15. (i)R
1、R
2、R
3およびR
4はHであり;
(ii)AはC
1−4アルキレン(例えば、メチレン)であり;
(iii)Bは単環系または二環系ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えばピリジン−3−イル)である、
式IIまたは上記式のいずれかの化合物;
2.16. 以下からなる群:
【化4】
から選択される式IIで示される化合物。
【0012】
第3の態様として、本発明は、遊離形または塩形態の、式III:
【化5】
式III
[式中、
(i)R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは、H、ハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)、ヒドロキシおよび−N(R
4)(R
5)からなる群から独立に選択され;
(ii)R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、アルキニル、即ち、−CCH)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)、からなる群(但し、R
2aはメチルではない)から独立に選択され;
(iii)R
3は、H、ヒドロキシおよび−NH
2からなる群から選択され;
(iv)R
4およびR
5は、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群から独立に選択され;
(v)但し、R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、R
1eおよびR
3がHであるとき、R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHまたは不飽和C
2−4アルキル(例えば、アルキニル)である]
で示される化合物を提供する。
【0013】
第3の態様の更なる実施形態として、本発明は、遊離形または塩形態の、式IIIで示される以下の化合物を提供する:
3.1. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは、H、ハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)、ヒドロキシおよび−N(R
4)(R
5)からなる群から独立に選択される、式IIIの化合物;
3.2. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立にHである、式IIIまたは式3.1の化合物;
3.3. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eがいずれもHであるか、またはR
1a、R
1b、R
1dおよびR
1eがいずれもHであって、R
1cはハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)、ヒドロキシおよび−N(R
4)(R
5)からなる群から選択される、式IIIまたは式3.1の化合物;
3.4. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立にハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)である、式IIIまたは式3.1、3.2または3.3の化合物;
3.5. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立にヒドロキシである、式IIIまたは式3.1〜3.4のいずれかの化合物;
3.6. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立に−N(R
4)(R
5)である、式IIIまたは式3.1〜3.5のいずれかの化合物;
3.7. R
1a、R
1b、R
1dおよびR
1eはHであり、R
1cはハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)、ヒドロキシおよび−N(R
4)(R
5)からなる群から選択される(例えばR
1cはブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、ジメチルアミノまたは−NHC(O)CH
3である)、式IIIの化合物;
3.8. R
4およびR
5は、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル)、およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群から独立に選択される、式IIIまたは式3.6または3.7のいずれかの化合物;
3.9. R
4またはR
5はHである、式IIIまたは式3.6、3.7または3.8の化合物;
3.10. R
4またはR
5は、C
1−4アルキル(例えば、メチル)である、式IIIまたは式3.6〜3.9のいずれかの化合物;
3.11. R
4またはR
5は、C
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)である、式IIIまたは式3.6〜3.10のいずれかの化合物;
3.12. R
4はHであり、R
5は、C
1−4アルキル(例えば、メチル)である、式IIIまたは式3.6〜3.10のいずれかの化合物;
3.13. R
4およびR
5がいずれもC
1−4アルキル(例えば、メチル)である、式IIIまたは式3.6、3.7または3.8の化合物;
3.14. R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは、ハロ(例えば、ブロモまたはフルオロ)、ヒドロキシおよび−N(R
4)(R
5)からなる群から独立に選択される、式IIIまたは式3.1〜3.13のいずれかの化合物;
3.15. R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチルまたはアルキニル、即ち、−CCH)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群から独立に選択され、R
2aはメチルではない、式IIIまたは式3.1〜3.14のいずれかの化合物;
3.16. R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHである、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.17. R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHまたはC
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチルまたはアルキニル、即ち、−CCH)であり、R
2aはメチルではない、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.18. R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHまたはC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)である、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.19. R
2aはHである、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.20. R
2cはC
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチルまたはアルキニル、即ち、−CCH)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群から選択される、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.21. R
2cはC
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチルまたはアルキニル、即ち、−CCH)である、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.22. R
2dはC
1−4アルキル(例えば、アルキニル、即ち、−CCH)である、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.23. R
3は、H、ヒドロキシおよび−NH
2からなる群から選択される、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.24. R
3はHである、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.25. R
3は−OHである、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.26. R
3は−NH
2である、式IIIまたは上記式のいずれかの化合物;
3.27. (i)R
1a、R
1b、R
1dおよびR
1eはHであり、R
1cは−N(R
4)(R
5)であり;
(ii)R
2a、R
2bおよびR
2dはHであり、R
2cはC
1−4アルキル(例えば、エチル)であり;
(iii)R
3はHであり;
(iv)R
4はHであり、R
5は、C
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)である、式IIIで示される化合物;
3.28. 以下のいずれか:
【化6】
から選択される、式IIIで示される化合物。
【0014】
本発明の化合物は、カゼインキナーゼ1(CK1)阻害剤、特にCK1デルタ(CK1δ)および/またはCK1イプシロン(CK1ε)阻害剤、として有用である。CK1δmRNAは、アルツハイマー病患者の脳の海馬では30倍のレベルに上昇している。Aβ形成を逆転するCK1阻害剤の有益な効果も認められている。さらに、CK1は、プライミング機能を有する主要なTauキナーゼであることが示されており、アルツハイマー病に関連する普遍的な病理学である、対らせん状細線維(PHF)に関連している。CK1の過剰発現がアミロイドβ形成を増大する一方、CK1阻害剤はアミロイドβ形成を低減することも示されている。また、CK1が、CLOCK、BMAL-1およびPer1-3を含む一連の転写因子のリン酸化を介して概日リズムおよび代謝状態を制御しているという証拠もある。特に、CK1δおよびCK1εは、概日リズムの変化に関連している。したがって、アルツハイマー病におけるCK1の役割は十分に裏付けられており、本発明のCK1阻害剤は治療薬剤として特に有用である。
【0015】
したがって、第4の態様として、本発明は、製薬上許容し得る希釈剤または担体と組み合わせてまたは配合して、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、上記の本発明のCK1阻害剤を含んでなる医薬組成物(組成物1)を提供する。
【0016】
第5の態様として、本発明は、CK1、特にCK1δおよび/またはCK1ε、を、本明細書に記載した本発明の化合物または本発明の医薬組成物のいずれかと接触させることを含んでなる、CK1活性を阻害する、例えば、CK1δおよび/またはCK1ε活性を阻害する、方法(方法1)を提供する。
【0017】
第6の態様として、本発明は、それを必要とする対象に、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、上記の本発明のCK1阻害剤、好ましくはCK1δおよび/またはCK1ε阻害剤、の有効量を投与することを含んでなる、CK1阻害により恩恵を受けうる疾患、例えば異常に過剰リン酸化されたTau状態に関連する障害、例えばアルツハイマー病、がん、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、例えば睡眠障害(例えば、睡眠相前進症候群または睡眠相後退症候群、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害)、気分障害、抑鬱障害、例えば鬱、双極性障害(双極性I型および双極性II型障害)またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調、認知症、ダウン症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、ピック病、神経原線維型認知症、急性神経疾患および精神障害(心臓バイパス外科手術および移植、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部損傷、周生期低酸素症、心拍停止後の脳障害、血糖降下薬神経損傷等)、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢による記憶障害、ハンチントン舞踏病、眼損傷、網膜症、認知障害(統合失調症および双極性障害に伴う認知障害を含む)、突発性および薬物誘発性パーキンソン病、筋攣縮および振戦を含む筋攣縮を伴う障害、てんかん、ひきつけ、片頭痛(migraine)、片頭痛(migraine headache)、尿失禁、物質耐性、物質離脱症、鎮痛剤、ニコチン、タバコ、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、および睡眠薬からの離脱症状、精神病、軽度認知障害、健忘認識機能障害、マルチドメイン認識障害、肥満症、統合失調症、不安、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、気分障害、鬱、躁病、双極性障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、目の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性および慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性の疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジー、ナルコレプシー、自閉症、アスペルガー病、および哺乳類における行為障害、等の治療、予防的処置、制御または管理のための方法(方法2)を提供する。
【0018】
第7の態様として、本発明は、CK1阻害により恩恵を受けうる疾患、例えば異常に過剰リン酸化されたTau状態に関連する障害、例えばアルツハイマー病、がん、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、例えば睡眠障害(例えば、睡眠相前進症候群または睡眠相後退症候群、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害)、気分障害、抑鬱障害、例えば、鬱、双極性障害(双極性I型および双極性II型障害)またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調、認知症、ダウン症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、ピック病、神経原線維型認知症、急性神経疾患および精神障害(心臓バイパス外科手術および移植、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部損傷、周生期低酸素症、心拍停止後の脳障害、血糖降下薬神経損傷等)、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢による記憶障害、ハンチントン舞踏病、眼損傷、網膜症、認知障害(統合失調症および双極性障害に伴う認知障害を含む)、突発性および薬物誘発性パーキンソン病、筋攣縮および振戦を含む筋攣縮を伴う障害、てんかん、ひきつけ、片頭痛(migraine)、片頭痛(migraine headache)、尿失禁、物質耐性、物質離脱症、鎮痛剤、ニコチン、タバコ、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、および睡眠薬からの離脱症状、精神病、軽度認知障害、健忘認識機能障害、マルチドメイン認識障害、肥満症、統合失調症、不安、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、気分障害、鬱、躁病、双極性障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、目の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性および慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性の疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジー、ナルコレプシー、自閉症、アスペルガー病、および哺乳類における行為障害、等の治療、予防的処置、制御または管理のために(医薬の製造において)使用するための、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、上記の本発明のCK1阻害剤を、製薬上許容し得る希釈剤または担体と組み合わせてまたは配合して、含有する医薬組成物(組成物1)を提供する。
【0019】
第8の態様では、本発明は、CK1阻害により恩恵を受けうる疾患、例えば異常に過剰リン酸化されたTau状態に関連する障害、例えばアルツハイマー病、がん、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、例えば睡眠障害(例えば、睡眠相前進症候群または睡眠相後退症候群、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害)、気分障害、抑鬱障害、例えば鬱、双極性障害(双極性I型および双極性II型障害)またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調、認知症、ダウン症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、ピック病、神経原線維型認知症、急性神経疾患および精神障害(心臓バイパス外科手術および移植、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部損傷、周生期低酸素症、心拍停止後の脳障害、血糖降下薬神経損傷等)、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢による記憶障害、ハンチントン舞踏病、眼損傷、網膜症、認知障害(統合失調症および双極性障害に伴う認知障害を含む)、突発性および薬物誘発性パーキンソン病、筋攣縮および振戦を含む筋攣縮を伴う障害、てんかん、ひきつけ、片頭痛(migraine)、片頭痛(migraine headache)、尿失禁、物質耐性、物質離脱症、鎮痛剤、ニコチン、タバコ、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、および睡眠薬からの離脱症状、精神病、軽度認知障害、健忘認識機能障害、マルチドメイン認識障害、肥満症、統合失調症、不安、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、気分障害、鬱、躁病、双極性障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、目の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性および慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性の疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジー、ナルコレプシー、自閉症、アスペルガー病、および哺乳類における行為障害等の治療、予防的処置、制御または管理のための(医薬の製造における)、遊離形または製薬上許容し得る塩形態の、上記の本発明のCK1阻害剤の使用を提供する。
【0020】
第6、7および8の態様において、障害は、アルツハイマー病、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、概日リズムの脱同調に伴う障害、例えば睡眠障害、例えば、睡眠相前進症候群または睡眠相後退症候群)、気分障害、抑鬱障害、例えば鬱、双極性障害またはアルツハイマー病に伴う概日リズムの脱同調からなる群から選択される。別の実施形態では、障害はアルツハイマー病である。
【0021】
第9の態様では、本発明は、γ線造影に有用なCK1トレーサー化合物を提供する。γ線造影法に一般的に用いられる方法として、陽電子放出断層撮影(PET)と単一光子放射断層撮影(SPECT)の2つが挙げられる。したがって、本発明のCK1トレーサー化合物は、(i)上記の遊離形または製薬上許容し得る塩形態の本発明のCK1阻害剤;および(ii)該CK1阻害剤に化学的結合した放射性核種を含んでなる。γ線造影に有用な同位体の例としては、炭素−11(11CまたはC11と称する)、フッ素−18(18FまたはF18と称する)、テクネチウム−99m(99mTcまたはTc99mと称する)、インジウム−111(111InまたはIn111と称する)およびヨウ素−123(123IまたはI123と称する)が挙げられる。
【0022】
したがって、第9の態様の更なる実施形態では、放射性核種は、炭素−11(
11CまたはC
11と称する)、フッ素−18(
18FまたはF
18と称する)、テクネチウム−99m(
99mTcまたはTc
99mと称する)、インジウム−111(
111InまたはIn
111と称する)およびヨウ素−123(
123IまたはI
123と称する)から選択され、好ましくは
11Cまたは
18Fである。例えば、本発明のCK1トレーサー化合物は、遊離形または塩形態の、以下のいずれか:
【化7】
から選択される式Iの化合物である。
【0023】
第9の態様の更なる実施形態として、本発明は、以下から選択される化合物のハロニウム塩を含んでなるCK1トレーサー化合物を提供する:
a)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式I:
【化8】
式I
[式中、
(i)R
3はF
18であり;および
(ii)R
1およびR
2は一緒になってピペラジン環を形成し、該ピペラジンはC
1−6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物;
b)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式II:
【化9】
式II
[式中、
(i)R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にF
18またはI
123;
(ii)AはC
1−4アルキレン(例えば、メチレンまたはエチレン);
(iii)Bは、場合により−N(H)(R
a)(ここで、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)である)で置換された、単環系または二環系アリールまたはヘテロアリール(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジル)]
で示される化合物;および
c)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式III:
【化10】
式III
[式中、
(i)R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立にF
18;
(ii)R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、アルキニル、即ち、−CCH)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群(但し、R
2aはメチルではない)から独立に選択され;
(iii)R
3は、H、ヒドロキシおよび−NH
2からなる群から選択され;
(iv)但し、R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、R
1eおよびR
3がHであるとき、R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHまたは不飽和C
2−4アルキル(例えば、アルキニル)である]
で示される化合物。
【0024】
第9の態様の更なる実施形態として、本発明は以下から選択される化合物を含んでなるCK1トレーサー化合物を提供する:
a)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式I:
【化11】
式I
[式中、
(iii)R
3は、F
18であり;および
(iv)R
1およびR
2は一緒になってピペラジン環を形成し、該ピペラジンはC
1−6アルキルで置換されていてもよい]
で示される化合物;
b)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式II:
【化12】
式II
[式中、
(iv)R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にF
18またはI
123;
(v)AはC
1−4アルキレン(例えば、メチレンまたはエチレン);
(vi)Bは、場合により−N(H)(R
a)(ここで、R
aは−C(O)−C
1−6アルキル(例えば、−C(O)CH
3)である)で置換された、単環系または二環系アリールまたはヘテロアリール(例えば、フェニル、ナフチルまたはピリジル);および
で示される化合物;および
c)遊離または塩(例えば、製薬上許容し得る塩)の形態の、式III:
【化13】
式III
[式中、
(v)R
1a、R
1b、R
1c、R
1dおよびR
1eは独立にF
18;
(vi)R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは、H、C
1−4アルキル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、アルキニル、即ち、−CCH)およびC
1−4アルキルカルボニル(例えば、−C(O)−CH
3)からなる群(但し、R
2aはメチルではない)から独立に選択され;
(vii)R
3は、H、ヒドロキシおよび−NH
2からなる群から選択され;
(viii)但し、R
1a、R
1b、R
1c、R
1d、R
1eおよびR
3がHであるとき、R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dは独立にHまたは不飽和C
2−4アルキル(例えば、アルキニル)である]
で示される化合物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記載
本明細書において用いられる用語は、単に具体的な実施形態の説明を目的としたものであって、本発明の範囲の限定を意図するものではないことは理解されよう。
【0026】
特に記載しない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語はすべて、その発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載したのと類似または均等なあらゆる方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法、装置および材料についてここに記載する。
本明細書において言及した刊行物はすべて、本発明に関して用い得る、その刊行物に記載された材料および方法論を説明および開示することを目的として、参照することにより本明細書の一部を構成する。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形「a」「an」および「the」は、その文脈がそうでないことを明確にしていない限り、複数形を包含する。例えば、「抗体」とは、1またはそれ以上の、抗体および当業者に知られているその等価物を意味する。
【0028】
用語「CK1」とは、カゼインキナーゼ1ポリペプチドを意味する。この用語は、ヒトまたは他のいずれかの種に由来する、該ポリペプチドの任意のすべての形態(例えば、相同体(homolog)、部分形態、アイソフォーム、前駆体、全長ポリペプチド、CK1配列を含む融合タンパク質または上記のいずれかの断片が挙げられるがこれらに限定されない)を意味する。数多くのCK1のアイソフォームが同定されており、例えばα、γ1、γ2、γ3、δ、ε1、ε2、およびε3アイソフォームが挙げられるがこれに限定されない。当分野においてCK1およびその様々なアイソフォームが開示されており、当業者にはよく知られている。また、この用語は、ゲノムDNAライブラリー等の任意の種の自然界に存在する供給源並びに発現系を含んでなる遺伝子操作された宿主細胞から単離された、あるいは例えば自動化されたペプチド合成またはそのような方法の組み合わせを用いる化学合成によって製造された、CK1を意味すると考えられる。そのようなポリペプチドの単離および製造のための手段は、当分野において十分に理解されている。
【0029】
特に断らない限り、または文脈からそうでないことが明白でない限り、本明細書において用いられる以下の用語は以下の意味を有する:
a.本明細書において用いられる用語「アルキル」は、好ましくは1〜6個の炭素原子の長さ、場合によっては1〜4炭素原子の長さの、直鎖または分岐鎖であってよい、場合により、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)またはヒドロキシで置換された、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−置換された、飽和または不飽和の、好ましくは飽和の、炭化水素部分である。
b.本明細書において用いられる用語「シクロアルキル」は、好ましくは3〜9個の炭素原子からなり、少なくともそのいくつかは非芳香族の単環系または二環系のまたは架橋を有する環構造を形成し、場合により、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)またはヒドロキシで置換されていてもよい、完全または部分飽和または不飽和の非芳香族性炭化水素部分である。
c.本明細書において用いられる用語「アリール」は、場合により、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)またはヒドロキシで置換された、単環系または二環系の芳香族炭化水素、好ましくはフェニルである。
d.本明細書において用いられる用語「ヘテロアリール」は、芳香族環を構成する原子の1以上が、炭素ではなく、硫黄、酸素または窒素である、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキルまたは、ヒドロキシで置換されていてもよい、単環系または二環系の芳香族部分(例えば、ピリジルまたはチアジアゾリル)である。
e.「場合により置換された」は、置換されたまたは置換されていないことを意図する。
特定の一実施形態では、置換基は置換されていない。別の実施形態では置換基は置換されている。例えば、「ピペラジンは、場合によりC
1−6アルキルで置換され」は、置換されていないピペラジン、C
1−6アルキルで置換されたピペラジンを包含する。
【0030】
用語「本発明のCK1阻害剤」または「本発明の化合物」は、本明細書に開示した化合物のいずれかを意味する。特に、遊離形または塩形態の、式I、IIおよびIIIまたは式1.1〜1.3、2.1〜2.16および3.1〜3.28のいずれかで示される化合物を意味する。これらの化合物は、好ましくCK1を阻害する、特に、実施例14に記載のまたはこれと同様に、CK1δおよび/またはCK1εを、2μM未満、好ましくは500nM未満、より好ましくは100nM未満のKiで、または、実施例15に記載のまたはこれと同様に、10μMにてCK1の50%を阻害する。
【0031】
本発明の化合物は、遊離形または塩形態、例えば酸酸付加塩として存在し得る。本明細書では特に断らない限り、本発明の化合物なる語は、任意の形態の化合物を意味し、例えば遊離または酸付加塩の形態、あるいは化合物が酸性の置換基を含んでいる場合は塩基付加塩の形態である。本発明の化合物は医薬としての使用を意図することから、製薬上許容し得る塩が好ましい。例えば、医薬用途に適していない塩が、本発明の遊離形の化合物またはその製薬上許容し得る塩の単離または精製に有用であることもありので、それらもまた包含される。
【0032】
本発明の化合物は、場合によってはプロドラッグの形態で存在しうる。例えば、化合物がヒドロキシまたはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容し得るエステルを形成し得る。本明細書で用いられる「生理学的に加水分解可能で許容し得る」とは、生理学的条件下で加水分解され、それ自身が投与される用量において生理学的に許容し得る、酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生成することが可能な本発明の化合物のエステルを意味する。このように、この用語は、認識されているとおり、慣用の医薬的プロドラッグ形態を包含する。
【0033】
本発明の範囲に含まれる個別の化合物の幾つかは、二重結合を含んでいてもよい。本発明における二重結合の表記は二重結合のEおよびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに本発明の範囲に含まれる化合物の幾つかは1またはそれ以上の不斉中心を含みうる。本発明は、任意の光学的に純粋な立体異性体、並びに立体異性体の任意の組み合わせの使用を包含する。
【0034】
当業者が認識し得るように、本発明の化合物は、例えば、式IIのアシルグアニジン化合物は、互変異性化を示すことがある。したがって、本発明の化合物は、本明細書に記載した構造(例えば、式2.16の化合物)とそれらの互変異性体(例えば、グアニジンのN−N二重結合がそれぞれ可能な位置に存在する異性体)の両方を意味すると理解される。
【0035】
用語「処置」および「処置する」は、疾患の症状の処置または改善並びにその疾患の原因の処置を包含するものと解される。
【0036】
「対象」とは任意のヒトまたは非ヒト生物を意味する。
【0037】
本明細書においては、CK1阻害活性を有する任意の化合物が有用な治療をもたらすと考えられ、CK1のみを特異的に阻害する化合物だけがそうである必要はない。例えば、混合型CK1阻害剤(例えば、他のアイソフォームは阻害しないが幾つかのCK1のアイソフォームを阻害することができる化合物)は本発明において有用であり得る。好ましくは、本発明の化合物は、他のCK1アイソフォームよりも優先的にCK1δおよび/またはCK1εを阻害する化合物である。
【0038】
本明細書では、可能性のあるCK1阻害剤は、本明細書に開示した化合物の代謝物であってもよいと考えられる。さらに、CK1阻害剤を化学的に置換して、モジュレーターの活性を最適化する、例えば、溶解度を改善する、血液脳関門を通過する送達を改善する、親油性を改善する、および/または細胞毒性を減少することができると考えられる。この手の化学的修飾は、当業者によく知られている慣用的な方法に従い行うことができる。
【0039】
同様に、本明細書においては、CK1タンパク質レベルまたはキナーゼ活性のモニタリングおよび/またはCK1遺伝子発現(mRNAレベル)の検出を、臨床試験法(例えば、本発明の任意の方法に従う与えられた治療レジメの有効性を決定するための)の一部として用いることができる。例えば、慣用の治療を受けているアルツハイマーの患者を評価し、CK1レベル、活性および/または遺伝子発現レベルが所望レベルよりも高い(即ち、対照患者のレベルよりも高いレベル)患者を同定することができる。これらのデータに基づいて、患者の投与レジメンを調整および/または投与薬物の種類を変更することができる。本明細書では、上記のとおり患者のCK1レベルをモニタリングすることで、患者の身体および/または精神状態を数値的に評価することができると考えられる。
【0040】
患者のための治療を最適化するため考慮する因子としては、処置を受ける状態、処置を受ける哺乳類、患者個人の病態、活性化合物の送達部位、活性化合物のタイプ、投与の方法、投与のスケジュール、および医師が知っている他の因子が含まれる。そのような考慮により、投与される活性化合物の治療上有効な量、およびCK1関連障害、好ましくはアルツハイマー病の処置に必要な最小量が決定される。
【0041】
本発明の医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、および当分野において知られている技術を用いて調製する。経口投与形態には、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、スプレー乾燥分散剤(例えば、オイドラギットL100)等が挙げられる。本明細書において用いられる用語「製薬上許容し得る担体」としては、希釈剤(生理食塩水および水性緩衝溶液等)が挙げられる。本発明の化合物は、注射(例えば、皮下または静脈内)、経口投与、吸入、経皮適用、膣内適用、局所適用、鼻内、舌下または直腸投与等の任意の慣用の方法で投与することができる。投与経路によっては、化合物を不活性化し得る、酵素、酸、および他の自然条件による分解から化合物を保護する材料で活性化合物にコーティングを施してもよい。
【0042】
CK1関連障害またはアルツハイマーを含む、異常に過剰リン酸化されたTau状態に関連する障害の処置に有用な本明細書に開示した医薬組成物は、そのような障害の症状を処置するのに治療上有効な量で患者に投与される。「治療上有効な量」は、CK1関連障害またはCK1の阻害により恩恵を受けることができる障害の治療に十分な薬物(例えば、CK1阻害剤)の量である。例えば、治療上有効量のCK1阻害剤は、その状態の進行を完全にまたは部分的に阻害する、あるいはその状態の1またはそれ以上の症状を、少なくとも部分的に、軽減することが示されている量でありうる。治療上有効な量は、予防的に有効な量でもあり得る。治療的に有効な量は、患者の大きさおよび性別、処置される状態、その状態の重篤度及び望まれる結果に依存する。患者が決まっていれば、治療上有効な量は当業者に知られている方法によって決定することができる。
【0043】
治療上有効な投与量は、患者における症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。そのような化合物の毒性および治療上の有効性は、細胞カルチャーまたは実験動物において標準的な医薬的手順により決定することができる。
【0044】
アルツハイマー病を患っている人の身体および/または精神状態の改善は、当業者によく知られている技術(臨床認知症評価法(CDR)、ミニメンタルステートテスト(MMSE)、mini−cog、並びに陽電子放射断層撮影法(PET)、核磁気共鳴映像法(MRI)およびコンピュータ断層撮影法(CT)が挙げられるがこれに限定されない)および技術の組み合わせによって決定することができる。さらなる診断試験としては、様々な生化学的マーカーや活性に関する生体液や組織の試験が挙げられる。
【0045】
CK1阻害剤を単独の治療薬剤として本明細書に開示した方法に用いることができるが、これらを他の活性な薬剤と組み合わせてまたは共投与として用いることもできると考えられる。例えば、1またはそれ以上のCK1阻害剤を、アルツハイマー病の処置に有用であると解っている慣用の医薬と同時に(simultaneously)、順次に(sequentially)、または同時期に(contemporaneously)投与することができる。これらの医薬としては、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばRazadyne(登録商標)(以前はReminyl(登録商標)として知られる)(ガラタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、Aricept(登録商標)(ドネペジル)、およびCognex(登録商標)(タクリン)、並びにNamenda(登録商標)(メマンチン)、N−メチルD−アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、が挙げられる。
【0046】
本発明の阻害物質は医薬組成物として投与することができる。本発明に従って用いるためのこのような医薬組成物は、1またはそれ以上の生理学的に許容し得る担体または賦形剤を用い、慣用的な方法で製剤化することができる。
【0047】
このように、化合物およびそれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物は、吸入または吹送(口または鼻のいずれかを介する)または局所、経口、口腔、非経口または直腸投与により投与するために製剤化することができる。
【0048】
経口投与に関して、医薬組成物は、例えば、製薬上許容し得る賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファー化(pregelatinized)メイズデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはナトリウムデンプングリコール酸塩);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用い、慣用的手段によって調製された錠剤またはカプセルの形態をとりうる。錠剤は当分野でよく知られた方法によってコーティングされていてもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ剤または懸濁液の形態であり得るか、または使用前に水または他の適当なビークルで構成するための乾燥品として存在していてもよい。このような液体調製物は、製薬上許容し得る添加剤、例えば懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビークル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコールまたは分画植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)を用いて、慣用的手段により製造することができる。調製物はさらに、緩衝塩、香料、着色料および甘味料を適宜含有してもよい。
【0049】
経口投与用の調製物は、活性化合物の制御された放出がもたらされるよう適切に製剤化することができる。
【0050】
口腔投与用の組成物は、慣用的に製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとりうる。
【0051】
吸入による投与に関し、本発明に従って用いるための化合物は、適当なプロペラント(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガス)を用い、加圧容器または噴霧器から提供されるエアゾールスプレーの形態で都合良く送達される。加圧されたエアロゾル剤の場合、
単位用量は、計量された量を送達するバルブにより決定される。吸入または吹送に用いるための、カプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチンの)は、本化合物と適当な粉末基剤(ラクトースまたはデンプン等)の混合粉末を含有するように製剤化することができる。
【0052】
化合物は、注射(例えばボーラス投与または連続注入)による非経口投与用に製剤化することができる。注射用の製剤は、単位投与形態(例えば、保存剤を添加した、アンプル、または複数用量の容器)で提供することができる。組成物は、油性または水性ビークル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態をとり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤用成分を含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に適当なビークル(例えば、滅菌発熱性物質除去水)で構成するための粉末形態であってよい。
【0053】
化合物はまた、例えば、慣用の坐薬用基剤(ココアバターまたは他のグリセリド等)を含有する座剤または停留かん腸等の直腸組成物として製剤化してもよい。
【0054】
上記の製剤に加え、さらに本化合物は、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長期作用型製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、本化合物は、適当なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容し得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導体、例えば難溶性の塩、として製剤化することができる。
【0055】
本発明における使用に適当な医薬組成物としては、活性成分が意図した目的を達成するのに有効な量で含有されている組成物が挙げられる。有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0056】
任意の化合物について、治療上有効量を、はじめに、例えば適当な細胞の細胞カルチャーアッセイ、または動物モデルのいずれかを用いて推定することができる。また、動物モデルを適当な濃度範囲および投与経路を決定するために用いることができる。動物モデルにおいてIC
50(即ち、症状の最大阻害の半数を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように用量を製剤化することができる。このような情報は、ヒトでの有用な用量および投与経路を決定するのに用いられる。
【0057】
CK1阻害剤の治療上有効な用量に関して、治療上の有効性および毒性は、細胞カルチャーまたは実験動物において標準的な医薬的手順、例えば、ED50(その集団の50%において治療上有効である用量)およびLD50(その集団の50%を死亡させる用量)、により決定することができる。毒性と治療効果の間の比が治療指数であり、LD50/ED50として表すことができる。治療指数が大きい医薬組成物が好ましい。細胞カルチャーおよび動物実験から得られたデータは、ヒトでの用量範囲を製剤化するのに用いられる。このような組成物が含有する用量は、好ましくは、毒性がほとんどないか全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。この用量は、この範囲内において、用いる投与形態、患者の重篤度および投与経路によって変化する。
【0058】
正確な用量は、処置を必要としている患者に関わる因子に照らして医師によって決定される。十分なレベルの活性な部分をもたらす、または望ましい効果を維持するように、用量及び投与を調整する。考慮に入れ得る因子としては、その疾患の状態の重篤度、その患者の全身的な健康状態、その患者の年齢、体重、および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する認容性/応答が挙げられる。長期作用型医薬組成物は、その製剤の半減期および排出速度に応じて、3日または4日間毎、毎週、または2週間毎に投与することができる。
【0059】
本発明の実施に際して用いられる用量は、例えば、処置される具体的な疾患または状態、用いるCK1阻害剤、投与方式、および所望の治療に応じて当然変化する。本発明において用いられるCK1阻害剤は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む任意の適当な経路で投与することができるが、経口投与が好ましい。一般に、例えば上記の疾患の処置についての満足できる結果は、約0.01〜10.0mg/kgのオーダー(CK1阻害剤は遊離形または製薬上許容し得る塩形態で提供されるが、遊離形の重量として)の用量での経口投与によって得られると示される。より大きな哺乳類、例えばヒトでは、経口投与で用いられる日用量は、約0.75〜750mg、例えば50〜500mg、の範囲であり、都合良く1日1回または2〜4回に分けて、あるいは持続放出形態で投与される。
経口投与の単位投与形態は、製薬上許容し得る希釈剤または担体と共に、例えば約0.2〜250mg、例えば約0.2または2.0〜50、75、100または200mgのCK1阻害剤を含有し得る。
【0060】
本発明の化合物にはその安定な同位体が包含されることを意図する。例えば、本発明の化合物のある特定の位置で水素原子を重水素に置換し得る。このような同位体を含んでなる化合物の活性は保持され、および/または薬物動態または薬力学特性が変化すると期待される。治療的用途に加え、このような同位体を含んでなり薬物動態または薬力学特性が変化した化合物はまた、同位体を含まない類縁体の薬物動態を測定するのに有用である。
【0061】
さらに、本発明の化合物には、炭素−11(
11CまたはC
11と称する)、フッ素−18(
18FまたはF
18と称する)、テクネチウム−99m(
99mTcまたはTc
99mと称する)、インジウム−111(
111InまたはIn
111と称する)およびヨウ素−123(
123IまたはI
123と称する)、好ましくは(例えばPETまたはSPECTトレーサー化合物として使用するための)
11Cまたは
18F、から選択されるような、化学的結合した放射性核種を有する化合物が包含されることを意図する。放射標識化合物は、例えば以下のとおり調製することができる:
【化14】
【0062】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の限定を何ら意図するものではない。
【実施例】
【0063】
遊離形または塩形態の本発明の化合物は、本明細書に記載および例示した方法を用いて、およびこれと同様の方法により、また化学の分野において知られている方法により製造することができる。このような方法には以下に記載するものが挙げられるがこれに限定されない。本明細書に記載した合成方法の記載において、溶媒、反応の周囲の環境、反応温度、実験の実施時間および処理の手順を含め、記載した反応条件はいずれも、当業者によって容易に認識されるその反応に標準的な条件として選択されるものであると理解される。したがって、より高い温度あるいはより長いまたは短い時間でその反応を行う必要があるかもしれない。有機合成の分野の当業者は、その分子の様々な部分に存在する官能基が、記載された試薬や反応と適合していなければならないことを理解する。これら製造方法の出発物質は、商業的に入手できない場合は、既知の化合物の合成と同様または類似の技術を用いて、化学の技術分野から選択される手順によって製造することができる。本明細書において参照するすべての文献はその全体によって本明細書の一部を構成する。
【0064】
特許請求の範囲に個々におよび/または集合的に記載した、本発明の化合物の合成方法を、以下の一般的な合成スキームおよび/または具体的な実施例に記載する。特に記載しない限り、置換基の意味は上記のとおりである。
【0065】
実施例1:2−(4−フルオロフェニル)−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【化15】
ステップ(a) (Z)−3−クロロ−3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)アクリロニトリル:
3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソ−2−(ピリジン−4−イル)プロパンニトリル(330mg,1.37mmol)を室温にてPOCl
3(5mL)に加えた。混合物を120℃に1時間加熱した後、室温に冷却した。過剰のPOCl
3を減圧下で留去し、残留物をジクロロメタンおよび氷で処理した後、10NのNaOHでアルカリ性にした。有機層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。得られた粗製物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製し、200mgの(Z)−3−クロロ−3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)アクリロニトリルを褐色の油として得た(収率57%)。MS(ESI)m/z 259.1[M+H]
+。
【0066】
ステップ(b) 3−(4−フルオロフェニル)−4−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−5−アミン:
(Z)−3−クロロ−3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)アクリロニトリル(190mg,0.74mmol)のエタノール(5mL)溶液に、ヒドラジン水和物(0.075mL,1.5mmol)を加えた。混合物を100℃に一晩加熱した後、室温に冷却した。溶媒を減圧下で留去して粗製の3−(4−フルオロフェニル)−4−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−5−アミンを赤みがかった固体として得、これを精製することなく次のステップに直接用いた。MS(ESI)m/z 255.1[M+H]
+。
【0067】
ステップ(c) 2−(4−フルオロフェニル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5(4H)−オン:
3−(4−フルオロフェニル)−4−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−5−アミン(61mg,0.24mmol)のDMF(4mL)溶液に、(E)−エチル3−エトキシアクリル酸塩(0.053mL,0.37mmol)、次いでK
2CO
3(47mg,0.24mmol)を加えた。混合物を110℃に9時間加熱した後、室温に冷却した。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して50mgの2−(4−フルオロフェニル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5(4H)−オンを褐色の固体として得た(収率68%)。MS(ESI)m/z 307.1[M+H]
+。
【0068】
ステップ(d) 2−(4−フルオロフェニル)−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン:
2−(4−フルオロフェニル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5(4H)−オン(15mg,0.05mmol)およびK
2CO
3(20.6mg,0.15mmol)をDMF(1.0mL)に懸濁した後、n−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(35.8mg,0.1mmol)を加えた。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。1−メチルピペラジン0.5mLを加え、混合物をさらに2時間攪拌した。溶媒を留去後、得られた残留物を分取TLCにより精製して5mgの2−(4−フルオロフェニル)−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンを褐色の固体として得た(収率26%)。MS(ESI)m/z 389.2[M+H]
+。
【0069】
実施例2:(E)−n−((1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イルアミノ)(アミノ)メチレン)−2−(ピリジン−3−イル)アセトアミド
【化16】
ステップ(a) 1−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)グアニジン:
4mLの濃塩酸にO−フェニレンジアミン(2.2g,20mmol)およびジシアンジアミド(1.7g,20mmol)を加えた。混合物を攪拌しながら加熱還流した。1時間還流した後、混合物を室温に冷却し、次いで、温度を30℃以下に制御しながら注意深く10NのNaOH(5mL)を添加した。生じた沈殿を濾過し、減圧下で乾燥して2.5gの粗製物を黄褐色の粉末として得(収率70%)、これをさらに精製することなく次のステップに用いた。MS(ESI)m/z 176.1[M+H]
+。
【0070】
ステップ(b) (E)−n−((1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イルアミノ)(アミノ)メチレン)−2−(ピリジン−3−イル)アセトアミド:
2mLのDMFに、1−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)グアニジン(175mg,1.0mmol)、2−(ピリジン−3−イル)酢酸(165mg,1.2mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(222μL,1.3mmol)、およびO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU,385mg,1.2mmol)を順に加えた。混合物を室温にて一晩攪拌した。混合物を水(1mL)で処理した後、ジクロロメタンで3回抽出した(3×3mL)。集めた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物を分取TLC、次いでHPLCで精製して最終産物を淡黄色の粉末として得た。MS(ESI)m/z 295.1[M+H]
+。
【0071】
実施例3:(E)−n−((1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イルアミノ)(アミノ)メチレン)−2−(ナフタレン−1−イル)アセトアミド
【化17】
ステップ(b)において2−(ピリジン−3−イル)酢酸の代わりに2−(ナフタレン−1−イル)酢酸を加えたことを除いては、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 344.1[M+H]
+。
【0072】
実施例4:(E)−n−((1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イルアミノ)(アミノ)メチレン)−2−(ピリジン−4−イル)アセトアミド
【化18】
ステップ(b)において2−(ピリジン−3−イル)酢酸の代わりに2−(ピリジン−4−イル)酢酸を加えたことを除いては、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 295.1[M+H]
+。
【0073】
実施例5:2−(4−アセトアミドフェニル)−n−(6−tert−ブチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化19】
ステップ(a) 2−(4−アセタミドフェニル)アセチルイソチオシアネート
2−(4−アセタミドフェニル)酢酸(1.34g,6.9mmol)を20mLのCH
3CNに溶解し、攪拌しながらトリホスゲン(0.69g,0.33mmol)を加えた。DMF6滴をゆっくりと加え、混合物を60℃に1時間加熱した。室温に冷却した後、アンモニウムイソシアネート(1.05g,13.8mmol)を加え、混合物を室温にて一晩攪拌した。粗製の2−(4−アセトアミドフェニル)アセチルイソチオシアネートを、さらに精製することなく直接用いた。
【0074】
ステップ(b) 2−(4−アセトアミドフェニル)−n−(4−tert−ブチルフェニルカルバモチオイル)−アセトアミド
4−tert−ブチルベンゼンアミン(149mg,1.0mmol)を1.0mLのCH
3CNに溶解し、上記で調製した粗製の2−(4−アセトアミドフェニル)アセチルイソチオシアネート(3mL,1.0mmol)を滴加し、黄色の混合物を室温にて攪拌した。1.0時間後、混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して黄色の固体として得た(100mg,収率26%)。MS(ESI)m/z 384.2[M+H]
+。
【0075】
ステップ(c) 2−(4−アセトアミドフェニル)−n−(6−tert−ブチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
2−(4−アセタミドフェニル)−n−(4−tert−ブチルフェニルカルバモチオイル)アセトアミド(38mg,0.1mmol)を、室温にて1.0mLのCH
3SO
3Hと0.2mLの氷酢酸に溶解した。攪拌しながら、臭素3滴を注意深く加えた。赤色の混合物を室温にて1.0時間激しく攪拌した後、氷上に注いで反応をクエンチした。混合物をジクロロメタンで抽出し、有機溶液を乾燥し、濃縮した。得られた残留物を分取TLC(酢酸エチル:ヘキサン=2:1)、次いでHPLCで精製して最終産物を明黄色の粉末(14mg,36%収率)として得た。MS(ESI)m/z 382.1[M+H]
+。
【0076】
実施例6:2−(4−ブロモフェニル)−n−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化20】
ステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに2−(4−ブロモフェニル)酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりにp−トルイジンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 361.1[M+H]
+。
【0077】
実施例7:2−(4−ヒドロキシフェニル)−n−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化21】
ステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに2−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりにp−トルイジンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 299.1[M+H]
+。
【0078】
実施例8:2−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−n−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化22】
ステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに2−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりにp−トルイジンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 326.1[M+H]
+。
【0079】
実施例9:2−(4−アセトアミドフェニル)−n−(6−エチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化23】
ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりに4−エチルベンゼンアミンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 354.1[M+H]
+。
【0080】
実施例10:2−(4−アセトアミドフェニル)−n−(6−アセチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド
【化24】
ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりに1−(4−アミノフェニル)エタノンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 368.1[M+H]
+。
【0081】
実施例11:n−(7−エチニルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−フェニルアセトアミド
【化25】
出発物質としてステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに2−フェニル酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりに3−エチニルベンゼンアミンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 293.1[M+H]
+。
【0082】
実施例12:(S)−2−ヒドロキシ−n−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−フェニルアセトアミド
【化26】
出発物質としてステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに(S)−2−ヒドロキシ−2−フェニル酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりにp−トルイジンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 299.1[M+H]
+。
【0083】
実施例13:(R)−2−アミノ−n−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−フェニルアセトアミド
【化27】
出発物質としてステップ(a)において2−(4−アセトアミドフェニル)酢酸の代わりに(R)−2−アミノ−2−フェニル酢酸を用い、ステップ(b)において4−tert−ブチルベンゼンアミンの代わりにp−トルイジンを用いたことを除いては、実施例5に記載の方法と同様の方法を用いて標題の化合物を製造した。MS(ESI)m/z 298.1[M+H]
+。
【0084】
実施例14:
γ−
33P−ATPを放射性リガンドとして用いることによりキナーゼ阻害アッセイを行った。標的とするキナーゼをヒトCK1δ(登録商標)とした。MilliporeにてATPおよびCK1(登録商標)に対するKmは70〜77μMと測定された。このアッセイに用いたATPの濃度は、ATPに対する見かけのKm15μM以内とした。実験はすべて二重で行った。スタウロスポリンを内部参照阻害剤として用い、そのIC50は3.798μM〜34.18μMの範囲内であった。実施例化合物を最初のスクリーニングでは10μMで、確認アッセイでは1μMで試験した。当業者に知られている方法(本明細書の一部を構成する、Hsien C. Cheng、Journal of Pharmacological and Toxicological Methods (2002) 46:61-71に記載のチェン=プルソフ(Cheng-Prusoff)式等)を用いることにより、IC50値をKi値に変換することができる。
【0085】
実施例15:
反応物の最終容量25μl中、CK1δ(5〜10mU)を8mMのMOPS(pH7.0)、0.2mMのEDTA、200μMのKRRRALS(p)VASLPGL、10mMのMgAcetateおよび[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要な濃度)とインキュベーションした。ATP/Mgミックスを添加することにより反応を開始した。40分間室温にてインキュベーションした後、5μlの3%リン酸溶液を添加することにより反応を止めた。次いで、10μlの反応物をP30フィルターマット(filtermat)上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、乾燥およびシンチレーションカウントに供した。
【0086】
式1.3、2.16および3.28の実施例化合物を、実施例14に記載したとおりにまたは実施例14に記載したのと同様に試験し、全体的に15μM未満のIC
50、その大部分は2μM未満、その多くが500nM未満のIC
50でCK1δおよび/またはCK1εを阻害することが示された、あるいは実施例15に記載したとおりにまたは実施例15に記載したのと同様に試験し、10μMで、70%を超えるCK1δおよび/またはCK1εを阻害することが示された。